(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108524
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】端部フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 55/20 20060101AFI20240805BHJP
B29C 55/08 20060101ALI20240805BHJP
B29C 55/12 20060101ALI20240805BHJP
B65H 35/02 20060101ALI20240805BHJP
B65H 18/08 20060101ALI20240805BHJP
B29L 7/00 20060101ALN20240805BHJP
【FI】
B29C55/20
B29C55/08
B29C55/12
B65H35/02
B65H18/08
B29L7:00
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012942
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003845
【氏名又は名称】弁理士法人籾井特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中原 歩夢
(72)【発明者】
【氏名】荻野 真悠子
【テーマコード(参考)】
3F055
4F210
【Fターム(参考)】
3F055AA05
3F055FA17
4F210AA12
4F210AA21
4F210AA24
4F210AA28
4F210AG01
4F210QA02
4F210QC03
4F210QC05
4F210QG01
4F210QG18
4F210QL02
4F210QL15
4F210QL16
4F210QW21
4F210QW36
4F210QW45
(57)【要約】
【課題】端部フィルムの破断を抑制でき、端部フィルムを円滑に製造できる端部フィルムの製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の実施形態による端部フィルムの製造方法は、長尺状の樹脂フィルムにおける幅方向の両端部のそれぞれをクリップによって把持した状態で、該樹脂フィルムを長尺方向と交差する方向に延伸して、延伸フィルムを調製する工程と;該延伸フィルムから該クリップの把持跡を含む両端部のそれぞれを切断して、該把持跡を含む第1の端部フィルムと、中間フィルムとに分離する工程と;該中間フィルムの幅方向における両端部をさらに切断して、第2の端部フィルムと、製品フィルムとに分離する工程と、を含んでいる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の樹脂フィルムにおける幅方向の両端部のそれぞれをクリップによって把持した状態で、前記樹脂フィルムを長尺方向と交差する方向に延伸して、延伸フィルムを調製する工程と、
前記延伸フィルムから前記クリップの把持跡を含む両端部のそれぞれを切断して、前記把持跡を含む第1の端部フィルムと、中間フィルムとに分離する工程と、
前記中間フィルムの幅方向における両端部のそれぞれを切断して、第2の端部フィルムと、製品フィルムとに分離する工程と、を含む、端部フィルムの製造方法。
【請求項2】
巻取部材が前記第2の端部フィルムを巻き取る工程を、さらに含む、請求項1に記載の端部フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端部フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種産業製品に幅広く利用される延伸フィルムは、樹脂フィルムを延伸して製造される。例えば、長尺状の樹脂フィルムの幅方向両端部をクリップによって把持した状態で、樹脂フィルムを長尺方向と交差する方向に延伸する、延伸フィルムの製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような延伸フィルムの製造方法では、延伸フィルムの幅方向の両端部にクリップの把持跡が生じる。そのため、一般的には、延伸フィルムから当該把持跡を含む端部を切断して廃棄する。
近年、環境負荷の低減の観点から、各種産業製品の製造時に生じる廃棄物の再利用が望まれている。そこで、特許文献1に記載の延伸フィルムの製造方法において、延伸フィルムから切断した端部を端部フィルムとして回収して、有効利用することが検討されている。しかし、端部フィルムを回収するときに、端部フィルムが破断して、端部フィルムの回収が煩雑となる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、端部フィルムの破断を抑制でき、端部フィルムを円滑に製造できる端部フィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1]本発明の実施形態による端部フィルムの製造方法は、長尺状の樹脂フィルムにおける幅方向の両端部のそれぞれをクリップによって把持した状態で、該樹脂フィルムを長尺方向と交差する方向に延伸して、延伸フィルムを調製する工程と;該延伸フィルムから該クリップの把持跡を含む両端部のそれぞれを切断して、該把持跡を含む第1の端部フィルムと、中間フィルムとに分離する工程と;該中間フィルムの幅方向における両端部のそれぞれを切断して、第2の端部フィルムと、製品フィルムとに分離する工程と;を含んでいる。
[2]上記[1]に記載の端部フィルムの製造方法は、巻取部材が上記第2の端部フィルムを巻き取る工程を、さらに含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態によれば、端部フィルムの破断を抑制でき、端部フィルムを円滑に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本発明の1つの実施形態による端部フィルムの製造方法を説明するための概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。また、図面は説明をより明確にするため、実施の形態に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0009】
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内位相差(Re)
「Re(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した面内位相差である。例えば、「Re(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した面内位相差である。Re(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Re(λ)=(nx-ny)×dによって求められる。
(3)角度
本明細書において角度に言及するときは、特に明記しない限り、当該角度は時計回りおよび反時計回りの両方の方向の角度を包含する。
【0010】
A.端部フィルムの製造方法の概略
図1は本発明の1つの実施形態による端部フィルムの製造方法を説明するための概略構成図であり;
図2は
図1の延伸フィルムの平面図であり;
図3は
図1の中間フィルムの平面図である。
【0011】
本発明の実施形態による端部フィルムの製造方法は、延伸工程と、第1切断工程と、第2切断工程とを、この順に含んでいる(
図1参照)。延伸工程では、長尺状の樹脂フィルム1における幅方向の両端部のそれぞれをクリップによって把持した状態で、樹脂フィルム1を長尺方向と交差する方向に延伸して、延伸フィルム2を調製する。第1切断工程では、延伸フィルム2からクリップの把持跡41を含む両端部のそれぞれを切断して、把持跡41を含む第1の端部フィルム4と、中間フィルム3とに分離する(
図2参照)。第2切断工程では、中間フィルム3の幅方向における両端部のそれぞれを切断して、第2の端部フィルム5と、製品フィルム6とに分離する(
図3参照)。
本発明者らは、端部フィルムを回収(製造)するときに、クリップの把持跡がクラックの起点となり、端部フィルムの破断の原因となることを発見した。そこで、端部フィルムの回収手段について鋭意検討した結果、クリップの把持跡を含む端部フィルムと、クリップの把持跡を含まない端部フィルムとを分けて、それらを適切な手段で回収することで、各端部フィルムの破断を抑制し得ることを見出した。具体的には、延伸フィルム2からクリップの把持跡41を含む両端部を切断して、クリップの把持跡41を含む第1の端部フィルム4と中間フィルム3とに分離した後、中間フィルム3の幅方向両端部をさらに切断して、第2の端部フィルム5と製品フィルム6とに分離する。これによって、第1の端部フィルム4および第2の端部フィルム5のそれぞれを、適切な手段により回収できる。その結果、端部フィルム(第1の端部フィルムおよび第2の端部フィルム)の破断を抑制できながら、端部フィルムを円滑に製造(回収)できる。言い換えれば、本発明の実施形態による端部フィルムの製造方法は、端部フィルムの回収方法である。
【0012】
第1の端部フィルム4は、任意の適切な手段により回収できる。1つの実施形態において、端部フィルムの製造方法は、第1の端部フィルム4を回収する回収工程をさらに含んでいる。第1の端部フィルム4は、相対的に硬くて脆いクリップの把持跡41を含んでいる。そのため、回収工程では、第1の端部フィルム4を巻き取ることなく回収する。これによって、第1の端部フィルムが破断することを抑制できる。
【0013】
第2の端部フィルム5は、任意の適切な手段により回収できる。1つの実施形態において、端部フィルムの製造方法は、第1の巻取部材8が第2の端部フィルム5を巻き取る第1巻取工程をさらに含んでいる。第2の端部フィルム5は、クリップの把持跡41を実質的に含んでいない。そのため、第1巻取工程では、第2の端部フィルム5を巻き取っても、第2の端部フィルム5の破断を抑制できる。その結果、第2の端部フィルム5をロール状に円滑に回収でき、第2の端部フィルム5がロール状に巻回された端部フィルムロール100を円滑に製造できる。端部フィルムロール100では、第2の端部フィルム5が、第1の巻取部材8の径方向に積層されている。
【0014】
回収された端部フィルム(第1の端部フィルムおよび第2の端部フィルムのそれぞれ)は、単独で流通可能な物品であり、産業上利用可能であって、代表的には、再生樹脂原料として用いられる。
再生樹脂原料は、任意の適切な樹脂製品の製造に利用できる。樹脂製品として、例えば、位相差フィルムなどの光学フィルム;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロンなどの熱可塑性樹脂から構成される包装材料などが挙げられる。これら樹脂製品のなかでは、好ましくは光学フィルムが挙げられ、より好ましくは位相差フィルムが挙げられる。つまり、回収された端部フィルムは、光学フィルム(代表的には位相差フィルム)の原料として好適に用いられ得る。
【0015】
以下では、端部フィルムの製造方法の各工程の詳細について説明する。
【0016】
B.延伸工程
図1に示すように、延伸工程では、長尺状の樹脂フィルム1を、代表的には延伸装置10によって延伸する。
【0017】
B-1.延伸対象の樹脂フィルム
樹脂フィルム1は、本明細書において延伸工程前のフィルムをいう。樹脂フィルム1として、任意の適切なフィルムを採用し得る。樹脂フィルム1は、上記のように、長尺状を有している。樹脂フィルム1の各方向における寸法は、任意の適切な値が採用され得る。樹脂フィルム1の幅(長尺方向と直交する方向の寸法)は、例えば500mm以上、好ましくは700mm以上であり、例えば2500mm以下、好ましくは2000mm以下である。樹脂フィルム1の厚みは、例えば40μm以上、好ましくは60μm以上であり、例えば200μm以下、好ましくは180μm以下である。
【0018】
樹脂フィルム1を構成する樹脂材料として、例えば、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、セルロースエステル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエステルカーボネート系樹脂、オレフィン系樹脂、および、ポリウレタン系樹脂が挙げられる。なお、(メタ)アクリル系樹脂とは、アクリル系樹脂および/またはメタクリル系樹脂をいう。これら樹脂材料は、単独でまたは組み合わせて使用できる。
【0019】
樹脂フィルム1を構成する樹脂材料のなかでは、好ましくは、ポリカーボネート(PC)系樹脂、シクロオレフィン(COP)系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、および、ポリエステル系樹脂(代表的には、ポリエチレンテレフタレート(PET))が挙げられ、より好ましくはPC系樹脂が挙げられる。このような樹脂材料が用いられていると、第1巻取工程において第2の端部フィルムをより安定して回収できる。
【0020】
PC系樹脂として、例えば、ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むPC系樹脂が挙げられる。ジヒドロキシ化合物の具体例として、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-エチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-n-プロピルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-n-ブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-sec-ブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-イソブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-tert-ブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-tert-ブチル-6-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロポキシ)フェニル)フルオレンが挙げられる。PC系樹脂は、上記ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の他に、イソソルビド、イソマンニド、イソイデット、スピログリコール、ジオキサングリコール、ジエチレングリコール(DEG)、トリエチレングリコール(TEG)、ポリエチレングリコール(PEG)、シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、トリシクロデカンジメタノール(TCDDM)、ビスフェノール類などのジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含んでいてもよい。
【0021】
上記したPC系樹脂の詳細は、例えば特開2012-67300号公報および特許第3325560号に記載されている。当該特許文献の記載は、本明細書に参考として援用される。
【0022】
B-2.延伸装置
1つの実施形態において、樹脂フィルム1は、延伸装置10を通過するように、長尺方向に搬送されている。そのため、樹脂フィルム1を搬送しながら延伸でき、延伸フィルム2を連続的に調製できる。
【0023】
延伸装置10は、図示しないが、樹脂フィルム1の幅方向の端部を把持可能なクリップを備えている。延伸装置10は、代表的にはテンター延伸装置である。延伸装置10は、樹脂フィルム1における幅方向の両端部のそれぞれをクリップによって把持(代表的には挟持)した状態で、樹脂フィルム1を長尺方向と交差する方向に延伸する。延伸方向は、樹脂フィルム1の長尺方向と実質的に直交する方向(例えば、長尺方向に対して90°±1°)であってもよく、樹脂フィルム1の長尺方向および幅方向の両方と交差する方向であってもよい。
【0024】
延伸工程の詳細は、例えば、特許第7096940号公報、特開2004-226686号公報、国際公開第2007/111313号に記載されている。当該特許文献の記載は、本明細書に参考として援用される。
【0025】
これによって、
図2に示すように、長尺状の延伸フィルム2が調製される。延伸工程における幅方向の延伸倍率(延伸フィルムの幅/樹脂フィルムの幅)は、例えば1.1以上、好ましくは1.5以上であり、例えば6.0以下、好ましくは4.0以下である。
【0026】
延伸フィルム2における幅方向の両端部のそれぞれには、クリップの把持跡41が形成されている。クリップの把持跡41は、延伸フィルム2における把持跡41以外の部分よりも、硬くて脆い。
【0027】
延伸フィルム2は、代表的には、上記した延伸方向に遅相軸を有してる。延伸フィルム2の遅相軸は、幅方向において軸ずれする場合がある。より詳細には、延伸フィルム2の遅相軸の方向は、幅方向端部において、所望の角度からずれやすい。当該軸ずれは、代表的には、延伸フィルム2の幅方向中央部では実質的に発現せず、幅方向端部に近づくほど大きくなる。図示例の延伸フィルム2では、幅方向中央部において、遅相軸が上記した延伸方向と実質的に平行(例えば、軸ずれが0°±1°未満)である。また、延伸フィルム2の幅方向端部において、遅相軸は上記した延伸方向と交差(例えば、軸ずれが1°~3°)していてもよい。
【0028】
C.第1切断工程および回収工程
図1に示すように、第1切断工程では、上記した延伸フィルム2からクリップの把持跡41を含む両端部を、代表的には切断装置7によって切断する。1つの実施形態において、延伸フィルム2は、切断装置7を通過するように、長尺方向に搬送される。これによって、延伸フィルム2を連続的に切断できる。延伸フィルム2は、好ましくは、搬送ローラなどのローラ部材と接触することなく、第1切断工程に供される。
【0029】
切断装置7は、任意の適切な構成を有し得る。図示例では、切断装置7は、ギアカッタ71と、対向ローラ72と、を備えている。ギアカッタ71と対向ローラ72とは、互いに対向している。ギアカッタ71および対向ローラ72のそれぞれは、回転可能である。ギアカッタ71は、ギアカッタ71と対向ローラ72との間を通過する延伸フィルム2に、第1切断線21を形成できる(
図2参照)。
【0030】
図2に示すように、切断装置7は、代表的には、延伸フィルム2に2つの第1切断線21を形成する。第1切断線21は、延伸フィルム2の長尺方向に沿って延びている。2つの第1切断線21は、延伸フィルム2の幅方向において互いに所定の間隔を空けて形成され、かつ、2つの第1切断線21のそれぞれは、延伸フィルム2の幅方向においてクリップの把持跡41から所定の間隔を空けて形成される。
【0031】
以上によって、延伸フィルム2から、延伸フィルム2の幅方向の両端部に対応する2つの第1の端部フィルム4が得られる。2つの第1の端部フィルム4のそれぞれは、クリップの把持跡41を含んでいる。また、2つの第1の端部フィルム4が切断された延伸フィルム2は、中間フィルム3として構成される。つまり、第1切断工程において、延伸フィルム2は、2つの第1の端部フィルム4と、中間フィルム3とに分離される。2つの第1の端部フィルム4および中間フィルム3のそれぞれは、長尺状を有している。
【0032】
第1の端部フィルム4の幅は、第1の端部フィルム4がクリップの把持跡41の全体を含んでいれば、特に制限されない。第1の端部フィルム4の幅は、延伸フィルム2の幅を100%としたときに、例えば0.1%以上、好ましくは0.5%以上であり、例えば30%以下、好ましくは25%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下、とりわけ好ましくは1%以下である。第1の端部フィルム4の幅は、例えば2mm以上、好ましくは10mm以上であり、例えば600mm以下、好ましくは500mm以下、より好ましくは200mm以下、さらに好ましくは100mm以下、とりわけ好ましくは20mm以下である。
第1の端部フィルムの幅が上記下限以上であると、第1の端部フィルムにクリップの把持跡の全体を安定して含めることができる。第1の端部フィルムの幅が上記上限以下であると、中間フィルムのサイズを十分に確保でき、ひいては、後述する製品フィルムの歩留まりの向上を図ることができる。
【0033】
第1の端部フィルム4におけるクリップの把持跡41が占める面積割合は、例えば1%以上、好ましくは5%以上であり、例えば95%以下、好ましくは75%以下である。把持跡が占める面積割合が上記範囲であると、第1の端部フィルムに回収可能な可撓性を付与することができ、第1の端部フィルムを円滑に回収できる。
【0034】
このような第1の端部フィルム4は、上記した回収工程によって回収される。なお、第1の端部フィルム4は、再利用せずに廃棄してもよい。
【0035】
D.第2切断工程
図1に示すように、第2切断工程は、第1切断工程の後に実施される。第2切断工程では、第1切断工程で得られた中間フィルム3の幅方向両端部を、代表的には切断装置7によって切断する。1つの実施形態において、中間フィルム3は、切断装置7を通過するように、長尺方向に搬送される。これによって、中間フィルム3を連続的に切断できる。第2切断工程で用いられる切断装置7は、第1切断工程で用いられる切断装置7と同様に説明できる。なお、第1切断工程で用いられる切断装置7を第1切断装置7aとし、第2切断工程で用いられる切断装置7を第2切断装置7bとして区別する場合がある。
【0036】
図3に示すように、第2切断装置7bは、代表的には、中間フィルム3に2つの第2切断線22を形成する。第2切断線22は、中間フィルム3の長尺方向に沿って延びている。2つの第2切断線22は、中間フィルム3の幅方向において互いに所定の間隔を空けて形成され、かつ、2つの第2切断線22のそれぞれは、中間フィルム3の幅方向端縁から所定の間隔を空けて形成される。
【0037】
以上によって、中間フィルム3から、中間フィルム3の幅方向の両端部に対応する2つの第2の端部フィルム5が得られる。また、2つの第2の端部フィルム5が切断された中間フィルム3は、製品フィルム6として構成される。つまり、第2切断工程において、中間フィルム3は、2つの第2の端部フィルム5と、製品フィルム6とに分離される。2つの第2の端部フィルム5のそれぞれは、中間フィルム3のうち上記した軸ずれが相対的に大きい部分を含んでいてもよい。これによって、製品フィルム6における軸ずれを低減できる。2つの第2の端部フィルム5および製品フィルム6のそれぞれは、長尺状を有している。
【0038】
第2の端部フィルム5の幅は、特に制限されない。第2の端部フィルム5の幅は、代表的には、第1の端部フィルム4の幅よりも大きい。第1の端部フィルム4の幅に対する第2の端部フィルム5の幅の比(第2の端部フィルムの幅/第1の端部フィルムの幅)は、例えば1.0を超過し、好ましくは1.1以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは20以上であり、例えば30以下、好ましくは25以下である。
第2の端部フィルムの幅/第1の端部フィルムの幅が上記範囲であると、相対的に再利用が容易な第2の端部フィルムの割合を増やすことができる。
【0039】
第2の端部フィルム5の幅は、中間フィルム3の幅方向の寸法を100%としたときに、例えば0.5%以上、好ましくは1.0%以上、より好ましくは5.0%以上、さらに好ましくは10.0%以上であり、例えば30%以下、好ましくは25%以下、より好ましくは20%以下である。第2の端部フィルム5の幅方向の寸法は、例えば10mm以上、好ましくは20mm以上、より好ましくは100mm以上、さらに好ましくは200mm以上であり、例えば600mm以下、好ましくは500mm以下、より好ましくは300mm以下である。
第2の端部フィルムの幅が上記下限以上であると、第2の端部フィルムが上記した軸ずれが相対的に大きい部分を十分に含み得る。そのため、製品フィルムにおける軸ずれをより安定して低減できる。
【0040】
E.第1巻取工程
図1に示すように、第2切断工程で得られた第2の端部フィルム5は、上記した第1巻取工程において、第1の巻取部材8によって巻き取られる。第1の巻取部材8は、代表的には、第2の端部フィルム5の幅方向と実質的に平行な軸線を中心として回転可能である。なお、
図1では、便宜上、1つの第1の巻取部材8を図示しているが、実際には、第1の巻取部材8は、第2の端部フィルム5と同数(すなわち2つ)設けられる。第1の巻取部材8は、任意の適切な構成を有し得る。第1の巻取部材8は、代表的には、円柱形状を有している。
【0041】
第2切断装置7bから第1の巻取部材85に向かう第2の端部フィルム5の搬送速度(ライン速)は、例えば50mm/s以上、好ましくは80mm/s以上であり、例えば1600mm/s以下、好ましくは1150mm/s以下である。第2の端部フィルムのライン速が上記範囲であると、第2の端部フィルムに掛かる張力を好適な範囲に調整でき、第2の端部フィルムの破断をより一層抑制できる。
【0042】
F.第2巻取工程
第2切断工程で得られた製品フィルム6は、任意の適切な手段により回収される。1つの実施形態において、端部フィルムの製造方法は、第2の巻取部材9が製品フィルム6を巻き取る第2巻取工程をさらに含んでいる。第2巻取工程では、製品フィルム6を第2の巻取部材9に巻回して回収する。そのため、製品フィルム6がロール状に巻回された製品フィルムロール101を製造できる。製品フィルムロール101では、製品フィルム6が、第2の巻取部材9の径方向に積層されている。なお、第2の巻取部材9は、第1の巻取部材8と同様に説明できる。
【0043】
製品フィルム6は、代表的には、遅相軸を有する位相差フィルムとして構成される。製品フィルム6の屈折率は、nx>nyの関係を示す。
1つの実施形態において、製品フィルム6は、λ/4板として機能する。製品フィルムがλ/4板として機能する場合、製品フィルム6の面内位相差Re(550)は、例えば100nm~180nm、好ましくは135nm~155nmである。
別の実施形態において、位相差フィルムは、λ/2板として機能する。製品フィルムがλ/2板として機能する場合、製品フィルム6の面内位相差Re(550)は、例えば230nm~310nm、好ましくは250nm~290nmである。
【0044】
製品フィルム6の波長依存性は特に制限されない。製品フィルム6は、好ましくは、逆分散の波長依存性を示す。製品フィルム6のRe(450)/Re(550)は、好ましくは0.8以上1.0未満であり、より好ましくは0.8~0.95である。また、製品フィルム6のRe(550)/Re(650)は、好ましくは0.8以上1.0未満であり、より好ましくは0.8~0.97である。
【0045】
製品フィルム6の光弾性係数の絶対値は、例えば、2×10-12(m2/N)~100×10-12(m2/N)であり、好ましくは、5×10-12(m2/N)~50×10-12(m2/N)である。
【実施例0046】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。各特性の測定方法は以下の通りである。なお、特に明記しない限り、実施例および比較例における「部」および「%」は質量基準である。
【0047】
<<延伸フィルムの調製>>
<調製例1>
特開2022-150732号公報の製造例9と同様にして、PC系樹脂から構成される樹脂フィルムを調製し、当該樹脂フィルムを延伸して、PC系樹脂から構成される延伸フィルムを調製した。延伸フィルムの幅は、2000mmであった。延伸フィルムの厚みは、48μmであった。延伸フィルムの幅方向の両端部のそれぞれには、クリップの把持跡が形成されていた。
【0048】
<調製例2>
PC系樹脂から構成される樹脂フィルムをPETから構成される樹脂フィルム(東レ社製、品番「50U48」)に変更したこと以外は、特開2022-150732号公報の製造例9と同様にして、PETから構成される延伸フィルムを調製した。延伸フィルムの幅は、2000mmであった。延伸フィルムの厚みは、50μmであった。延伸フィルムの幅方向の両端部のそれぞれには、クリップの把持跡が形成されていた。
【0049】
<調製例3>
PC系樹脂から構成される樹脂フィルムをアクリル系樹脂から構成される樹脂フィルム(カネカ社製、製品名「HTX-Z」)に変更したこと以外は、特開2022-150732号公報の製造例9と同様にして、アクリル系樹脂から構成される延伸フィルムを調製した。延伸フィルムの幅は、2000mmであった。延伸フィルムの厚みは、40μmであった。延伸フィルムの幅方向の両端部のそれぞれには、クリップの把持跡が形成されていた。
【0050】
<調製例4>
PC系樹脂から構成される樹脂フィルムをCOP系樹脂から構成される樹脂フィルム(日本ゼオン社製、品番「ZF16」)に変更したこと以外は、特開2022-150732号公報の製造例9と同様にして、COP系樹脂から構成される延伸フィルムを調製した。延伸フィルムの幅は、2000mmであった。延伸フィルムの厚みは、40μmであった。延伸フィルムの幅方向の両端部のそれぞれには、クリップの把持跡が形成されていた。
【0051】
[実施例1]
調製例1で得られたPC系樹脂から構成される延伸フィルムを、スリッター(第1切断装置)によって切断して、2つの第1の端部フィルムと中間フィルムとに分離した。2つの第1の端部フィルムのそれぞれの幅は、10mmであった(延伸フィルムの幅を100%としたときに0.5%)。中間フィルムの幅は、1980mmであった。そして、第1の端部フィルムを回収ボックスに詰め込み回収した。
【0052】
次いで、中間フィルムを、スリッター(第2切断装置)に搬送して、2つの第2の端部フィルムと製品フィルムとに分離した。2つの第2の端部フィルムのそれぞれの幅は、240mmであった(中間フィルムの幅を100%としたときに12.1%)。製品フィルムの幅は、1500mmであった。
【0053】
次いで、円柱形状の第1の巻取部材によって、第2の端部フィルムを巻き取った。第2の端部フィルムのライン速は、350mm/sであった。巻き取り回数(端部フィルムロールにおける積層数)は、7000であった。その後、回収した第2の端部フィルムを目視で観察した。その結果を表1に示す。
【0054】
[実施例2]
調製例1で得られたPC系樹脂から構成される延伸フィルムを、調製例2で得られたPETから構成される延伸フィルムに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、第1の端部フィルムおよび第2の端部フィルムを回収した。回収された第2の端部フィルムを目視で観察し、破断の有無を確認した。その結果を表1に示す。
【0055】
[実施例3]
調製例1で得られたPC系樹脂から構成される延伸フィルムを、調製例3で得られたアクリル系樹脂から構成される延伸フィルムに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、端部フィルムを回収した。回収された第2の端部フィルムを目視で観察し、破断の有無を確認した。その結果を表1に示す。
【0056】
[実施例4]
調製例1で得られたPC系樹脂から構成される延伸フィルムを、調製例4で得られたCOP系樹脂から構成される延伸フィルムに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、端部フィルムを回収した。回収された第2の端部フィルムを目視で観察し、破断の有無を確認した。その結果を表1に示す。
【0057】
[比較例1]
調製例1で得られたPC系樹脂から構成される延伸フィルムを、スリッター(第1切断装置)によって切断して、2つの端部フィルムと製品フィルムとに分離して、第2切断工程を実施しなかった。2つの端部フィルムのそれぞれの幅は、250mmであった。製品フィルムの幅は、1500mmであった。
【0058】
次いで、円柱形状の巻取部材によって、端部フィルムの巻き取りを試みた。しかし、端部フィルムに破断が生じた。その結果を表1に示す。端部フィルムのライン速は、350mm/sであった。
【0059】
[比較例2]
調製例1で得られたPC系樹脂から構成される延伸フィルムを、スリッター(第1切断装置)によって切断して、2つの端部フィルムと製品フィルムとに分離した。2つの端部フィルムのそれぞれの幅は、250mmであった。製品フィルムの幅は、1500mmであった。
【0060】
次いで、端部フィルムを、スリッター(第2切断装置)に搬送して、第1の端部フィルムと第2の端部フィルムとに分離した。第1の端部フィルムの幅は、0.5mmであった。第2の端部フィルムの幅は、249.5mmであった。しかし、第2切断装置から排出される第1の端部フィルムおよび/または第2の端部フィルムに破断が確認された。その結果を表1に示す。
【0061】
【0062】
[評価]
表1から明らかなように、まず、延伸フィルムからクリップの把持跡を含む第1の端部フィルムを切断し、その後に、中間フィルムから第2の端部フィルムを切断することで、第1の端部フィルムおよび第2の端部フィルムのそれぞれ(特に第2の端部フィルム)の破断を抑制でき、それら端部フィルムを円滑に回収(製造)できることがわかる。
本発明の端部フィルムの製造方法は、各種産業製品の原料として再利用可能な端部フィルムを製造できる。端部フィルムは、特に、光学フィルムの再生樹脂原料として好適に用いられる。