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  • 特開-リサイクルチップの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108526
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】リサイクルチップの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 55/20 20060101AFI20240805BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20240805BHJP
【FI】
B29C55/20
B29L7:00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012944
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003845
【氏名又は名称】弁理士法人籾井特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中原 歩夢
(72)【発明者】
【氏名】荻野 真悠子
【テーマコード(参考)】
4F210
【Fターム(参考)】
4F210AG01
4F210AJ08
4F210AR12
4F210QA02
4F210QC03
4F210QC06
4F210QC07
4F210QG01
4F210QG18
4F210QL02
4F210QW21
4F210QW45
(57)【要約】
【課題】優れた搬送性を有し、リサイクルペレットの原料として好適に用いることができるリサイクルチップを円滑に製造できるリサイクルチップの製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の実施形態によるリサイクルチップの製造方法は、長尺状の樹脂フィルムにおける幅方向の両端部のそれぞれをクリップによって把持した状態で、該樹脂フィルムを長尺方向と交差する方向に延伸して、延伸フィルムを調製する工程と;該延伸フィルムから該クリップの把持跡を含む両端部のそれぞれを切断して、該把持跡を含む端部フィルムを得る工程と;該端部フィルムを、最大長さの平均が1mm以上25mm以下の複数の小片状に粉砕する工程と;を含んでいる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の樹脂フィルムにおける幅方向の両端部のそれぞれをクリップによって把持した状態で、前記樹脂フィルムを長尺方向と交差する方向に延伸して、延伸フィルムを調製する工程と、
前記延伸フィルムから前記クリップの把持跡を含む両端部のそれぞれを切断して、前記把持跡を含む端部フィルムを得る工程と、
前記端部フィルムを、最大長さの平均が1mm以上25mm以下である複数の小片状に粉砕する工程と、を含む、リサイクルチップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リサイクルチップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種産業製品に幅広く利用される延伸フィルムは、樹脂フィルムを延伸して製造される。例えば、長尺状の樹脂フィルムの幅方向両端部をクリップによって把持した状態で、樹脂フィルムを長尺方向と交差する方向に延伸する、延伸フィルムの製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような延伸フィルムの製造方法では、延伸フィルムの幅方向の両端部にクリップの把持跡が生じる。そのため、一般的には、延伸フィルムから当該把持跡を含む端部を切断して廃棄する。
近年、環境負荷の低減の観点から、各種産業製品の製造時に生じる廃棄物の再利用が望まれている。そこで、特許文献1に記載の延伸フィルムの製造方法において、延伸フィルムから切断した端部を端部フィルムとして回収して、有効利用することが検討されている。しかし、回収された端部フィルムは破断しやすく、搬送が困難となる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7096940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、優れた搬送性を有するリサイクルチップであって、リサイクルペレットの原料として好適に用いることができるリサイクルチップを円滑に製造できるリサイクルチップの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1]本発明の実施形態によるリサイクルチップの製造方法は、長尺状の樹脂フィルムにおける幅方向の両端部のそれぞれをクリップによって把持した状態で、該樹脂フィルムを長尺方向と交差する方向に延伸して、延伸フィルムを調製する工程と;該延伸フィルムから該クリップの把持跡を含む両端部のそれぞれを切断して、該把持跡を含む端部フィルムを得る工程と;該端部フィルムを、最大長さの平均が1mm以上25mm以下である複数の小片状に粉砕する工程と;を含んでいる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態によれば、優れた搬送性を有し、リサイクルペレットの原料として好適に用いることができるリサイクルチップを円滑に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の1つの実施形態によるリサイクルチップの製造方法を説明するための概略構成図である。
図2図2は、図1の延伸フィルムの平面図である。
図3図3は、図1の端部フィルムを破砕して得られるリサイクルチップの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。また、図面は説明をより明確にするため、実施の形態に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0009】
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内位相差(Re)
「Re(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した面内位相差である。例えば、「Re(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した面内位相差である。Re(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Re(λ)=(nx-ny)×dによって求められる。
(3)角度
本明細書において角度に言及するときは、特に明記しない限り、当該角度は時計回りおよび反時計回りの両方の方向の角度を包含する。
【0010】
A.リサイクルチップの製造方法の概略
図1は本発明の1つの実施形態によるリサイクルチップの製造方法を説明するための概略構成図であり;図2図1の延伸フィルムの平面図であり;図3図1の端部フィルムを破砕して得られるリサイクルチップの概略図である。
【0011】
本発明の実施形態によるリサイクルチップの製造方法は、延伸工程と、切断工程と、破砕工程とを、この順に含んでいる(図1参照)。延伸工程では、長尺状の樹脂フィルム1における幅方向の両端部のそれぞれをクリップによって把持した状態で、樹脂フィルム1を長尺方向と交差する方向に延伸して、延伸フィルム2を調製する。切断工程では、延伸フィルム2からクリップの把持跡22を含む両端部のそれぞれを切断して、把持跡22を含む端部フィルム3を得る。破砕工程では、端部フィルム3を複数の小片状に粉砕して、リサイクルチップ9を得る(図3参照)。複数のリサイクルチップ9(小片)の最大長さLの平均は、1.0mm以上であり、好ましくは2.0mm以上、より好ましくは4.0mm以上であり、25mm以下、好ましくは20mm以下、より好ましくは10.0mm以下、さらに好ましくは8.0mm以下、とりわけ好ましくは6.0mm以下である。
本発明者らは、端部フィルムを搬送するときに、クリップの把持跡がクラックの起点となり、端部フィルムの破断の原因となることを発見した。そこで、クリップの把持跡を含む端部フィルムを小片状に粉砕して、得られたリサイクルチップを搬送することを検討した。すると、リサイクルチップの最大長さの平均が特定の値以上であれば、リサイクルチップを円滑に搬送できることを見出した。具体的には、クリップの把持跡22を含む端部フィルム3を、最大長さLの平均が上記下限以上となるように複数の小片状に粉砕した。これによって得られたリサイクルチップ9は、搬送部材(代表的には配管)に貼りつくことが抑制されており、円滑に搬送することができる。また、リサイクルチップ9の最大長さLの平均が上記上限以下であるので、リサイクルチップを原料として製造されるリサイクルペレットに、気泡が混入することを抑制できる。
【0012】
製造されたリサイクルチップは、上記のように、優れた搬送性を有しており、リサイクルペレットの原料として好適に用いることができる。リサイクルチップは、単独で流通可能な物品であり、産業上利用可能である。
リサイクルペレットは、任意の適切な樹脂製品の製造に利用できる。樹脂製品として、例えば、位相差フィルムなどの光学フィルム;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロンなどの熱可塑性樹脂から構成される包装材料などが挙げられる。これら樹脂製品のなかでは、好ましくは光学フィルムが挙げられ、より好ましくは位相差フィルムが挙げられる。つまり、リサイクルチップは、光学フィルム(代表的には位相差フィルム)の製造に好適に用いられ得る。
【0013】
以下では、リサイクルチップの製造方法の各工程の詳細について説明する。
【0014】
B.延伸工程
図1に示すように、延伸工程では、長尺状の樹脂フィルム1を、代表的には延伸装置7によって延伸する。
【0015】
B-1.延伸対象の樹脂フィルム
樹脂フィルム1は、本明細書において延伸工程前のフィルムをいう。樹脂フィルム1として、任意の適切なフィルムを採用し得る。樹脂フィルム1は、上記のように、長尺状を有している。樹脂フィルム1の各方向における寸法は、任意の適切な値が採用され得る。樹脂フィルム1の幅(長尺方向と直交する方向の寸法)は、例えば500mm以上、好ましくは700mm以上であり、例えば2500mm以下、好ましくは2000mm以下である。樹脂フィルム1の厚みは、例えば40μm以上、好ましくは60μm以上であり、例えば200μm以下、好ましくは180μm以下である。
【0016】
樹脂フィルム1を構成する樹脂材料として、例えば、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、セルロースエステル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエステルカーボネート系樹脂、オレフィン系樹脂、および、ポリウレタン系樹脂が挙げられる。なお、(メタ)アクリル系樹脂とは、アクリル系樹脂および/またはメタクリル系樹脂をいう。これら樹脂材料は、単独でまたは組み合わせて使用できる。
【0017】
樹脂フィルム1を構成する樹脂材料のなかでは、好ましくは、ポリカーボネート(PC)系樹脂、シクロオレフィン(COP)系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、および、ポリエステル系樹脂(代表的には、ポリエチレンテレフタレート(PET))が挙げられ、より好ましくはPC系樹脂が挙げられる。このような樹脂材料が用いられていると、端部フィルムを破砕装置まで安定して搬送できる。
【0018】
PC系樹脂として、例えば、ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むPC系樹脂が挙げられる。ジヒドロキシ化合物の具体例として、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-エチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-n-プロピルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-n-ブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-sec-ブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-イソブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-tert-ブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-tert-ブチル-6-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロポキシ)フェニル)フルオレンが挙げられる。PC系樹脂は、上記ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の他に、イソソルビド、イソマンニド、イソイデット、スピログリコール、ジオキサングリコール、ジエチレングリコール(DEG)、トリエチレングリコール(TEG)、ポリエチレングリコール(PEG)、シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、トリシクロデカンジメタノール(TCDDM)、ビスフェノール類などのジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含んでいてもよい。
【0019】
上記したPC系樹脂の詳細は、例えば特開2012-67300号公報および特許第3325560号に記載されている。当該特許文献の記載は、本明細書に参考として援用される。
【0020】
B-2.延伸装置
1つの実施形態において、樹脂フィルム1は、延伸装置7を通過するように、長尺方向に搬送されている。そのため、樹脂フィルム1を搬送しながら延伸でき、延伸フィルム2を連続的に調製できる。
【0021】
延伸装置7は、図示しないが、樹脂フィルム1の幅方向の端部を把持可能なクリップを備えている。延伸装置7は、代表的にはテンター延伸装置である。延伸装置7は、樹脂フィルム1における幅方向の両端部のそれぞれをクリップによって把持(代表的には挟持)した状態で、樹脂フィルム1を長尺方向と交差する方向に延伸する。延伸方向は、樹脂フィルム1の長尺方向と実質的に直交する方向(例えば、長尺方向に対して90°±1°)であってもよく、樹脂フィルム1の長尺方向および幅方向の両方と交差する方向であってもよい。
【0022】
延伸工程の詳細は、例えば、特許第7096940号公報、特開2004-226686号公報、国際公開第2007/111313号に記載されている。当該特許文献の記載は、本明細書に参考として援用される。
【0023】
これによって、図2に示すように、長尺状の延伸フィルム2が調製される。延伸工程における幅方向の延伸倍率(延伸フィルムの幅/樹脂フィルムの幅)は、例えば1.1以上、好ましくは1.5以上であり、例えば6.0以下、好ましくは4.0以下である。
【0024】
延伸フィルム2における幅方向の両端部のそれぞれには、クリップの把持跡22が形成されている。クリップの把持跡22は、延伸フィルム2における把持跡22以外の部分よりも、硬くて脆い。
【0025】
延伸フィルム2は、代表的には、上記した延伸方向に遅相軸を有してる。延伸フィルム2の遅相軸は、幅方向において軸ずれする場合がある。より詳細には、延伸フィルム2の遅相軸の方向は、幅方向端部において、所望の角度からずれやすい。当該軸ずれは、代表的には、延伸フィルム2の幅方向中央部では実質的に発現せず、幅方向端部に近づくほど大きくなる。図示例の延伸フィルム2では、幅方向中央部において、遅相軸が上記した延伸方向と実質的に平行(例えば、軸ずれが0°±1°未満)である。また、延伸フィルム2の幅方向端部において、遅相軸は上記した延伸方向と交差(例えば、軸ずれが1°~3°)していてもよい。
【0026】
C.切断工程
図1に示すように、切断工程では、上記した延伸フィルム2からクリップの把持跡22を含む両端部を、代表的には切断装置5によって切断する。1つの実施形態において、延伸フィルム2は、切断装置5を通過するように、長尺方向に搬送される。これによって、延伸フィルム2を連続的に切断できる。延伸フィルム2は、好ましくは、搬送ローラなどのローラ部材と接触することなく、切断工程に供される。
【0027】
切断装置5は、任意の適切な構成を有し得る。図示例では、切断装置5は、ギアカッタ51と、対向ローラ52と、を備えている。ギアカッタ51と対向ローラ52とは、互いに対向している。ギアカッタ51および対向ローラ52のそれぞれは、回転可能である。ギアカッタ51は、ギアカッタ51と対向ローラ52との間を通過する延伸フィルム2に、切断線21を形成できる(図2参照)。
【0028】
図2に示すように、切断装置5は、代表的には、延伸フィルム2に2つの切断線21を形成する。切断線21は、延伸フィルム2の長尺方向に沿って延びている。2つの切断線21は、延伸フィルム2の幅方向において互いに所定の間隔を空けて形成され、かつ、2つの切断線21のそれぞれは、延伸フィルム2の幅方向においてクリップの把持跡22から所定の間隔を空けて形成される。
【0029】
以上によって、延伸フィルム2から、延伸フィルム2の幅方向の両端部に対応する2つの端部フィルム3が得られる。2つの端部フィルム3のそれぞれは、クリップの把持跡22を含んでいる。また、2つの端部フィルム3が切断された延伸フィルム2は、製品フィルム4として構成される。つまり、切断工程において、延伸フィルム2は、代表的には、2つの端部フィルム3と、製品フィルム4とに分離される。2つの端部フィルム3および製品フィルム4のそれぞれは、長尺状を有している。
【0030】
端部フィルム3の幅は、端部フィルム3がクリップの把持跡22の全体を含んでいれば、特に制限されない。端部フィルム3の幅は、延伸フィルム2の幅を100%としたときに、例えば0.5%以上、好ましくは1.0%以上、より好ましくは5.0%以上、さらに好ましくは10.0%以上であり、例えば30%以下、好ましくは25%以下、より好ましくは20%以下である。端部フィルム3の幅は、例えば10mm以上、好ましくは20mm以上、より好ましくは100mm以上、さらに好ましくは200mm以上であり、例えば600mm以下、好ましくは500mm以下、より好ましくは300mm以下である。
端部フィルムの幅が上記下限以上であると、端部フィルムにクリップの把持跡の全体を安定して含めることができ、かつ、延伸フィルムのうち上記した軸ずれが相対的に大きい部分を端部フィルムに含めることができる。その結果、製品フィルムにクリップの把持跡が残存することを抑制でき、かつ、製品フィルムにおける軸ずれを低減できる。端部フィルムの幅が上記上限以下であると、製品フィルムの歩留まりの向上を図ることができる。
【0031】
端部フィルム3におけるクリップの把持跡22が占める面積割合は、例えば1%以上、好ましくは5%以上であり、例えば95%以下、好ましくは75%以下である。
把持跡が占める面積割合が上記範囲であると、延伸フィルムのうち上記した軸ずれが相対的に大きい部分を端部フィルムに十分に含め得る。そのため、製品フィルムにおける軸ずれをより安定して低減できる。
【0032】
D.破砕工程
図1に示すように、破砕工程では、延伸フィルム2から切断された端部フィルム3を、代表的には破砕装置8によって、上記したサイズの小片状に破砕する。これによって、端部フィルム3を連続的に破砕でき、複数のリサイクルチップ9を円滑に製造できる。
【0033】
端部フィルム3は、代表的には、巻取部材に巻き取られることなく、破砕工程に供される。端部フィルム3は、任意の適切な方法により、破砕装置8に搬送される。端部フィルム3の搬送方法として、例えばエアー搬送が挙げられる。なお、2つの端部フィルム3を1つの破砕装置8に搬送して破砕してもよく、2つの端部フィルム3のそれぞれを、別々の破砕装置8に搬送して破砕してもよい。破砕装置8は、特に制限されず、任意の適切な構成を有し得る。破砕装置8として、代表的にはマルチカッターが挙げられる。
【0034】
1つの実施形態において、破砕工程では、端部フィルム3を段階的に破砕する。詳しくは、まず、端部フィルム3を、最大長さの平均が例えば50mm~100mmの複数の小片状に一次破砕(粗カット)する。次いで、得られた一次破砕片をさらに破砕して、最大長さLの平均が上記範囲内である複数のリサイクルチップ9(小片)を得る。これによって、破砕装置につまりが生じることを抑制できる。
【0035】
図3に示すように、複数のリサイクルチップ9のそれぞれは、端部フィルム3が破砕されて製造されるので、所定の厚みを有している。リサイクルチップ9は、厚み方向から見て任意の適切な形状を有し得る。リサイクルチップ9の厚み方向から見た形状として、例えば、三角形、四角形、五角形、六角形以上の多角形、円形、楕円形が挙げられ、好ましくは多角形が挙げられ、より好ましくは四角形が挙げられる。
【0036】
リサイクルチップ9の1つあたりの質量は、例えば5mg以上、好ましくは10mg以上であり、例えば100mg以下、好ましくは70mg以下である。
複数のリサイクルチップ9の嵩密度は、例えば5mg/cm以上、好ましくは10mg/cm以上であり、例えば50mg/cm以下、好ましくは30mg/cm以下である。
リサイクルチップの嵩密度が上記下限以上であれば、リサイクルチップからリサイクルペレットを製造したときに、リサイクルペレットに気泡が混入することを安定して抑制できる。リサイクルチップの嵩密度が上記上限以下であれば、リサイクルチップの搬送性のさらなる向上を図ることができる。
【0037】
リサイクルチップ9は、上記のように、リサイクルペレットの製造に用いることができる。1つの実施形態では、リサイクルチップ9は、ペレット製造装置にエアー搬送される。より詳しくは、リサイクルチップ9は、エアー搬送装置によって、ペレット製造装置に搬送される。エアー搬送装置は、任意の適切な構成を有し得る。エアー搬送装置は、圧送方式であってもよく、吸引方式であってもよい。エアー搬送装置は、図示しないが、ホッパーと、配管と、気流発生器と、を備えている。ホッパーには、リサイクルチップ9が投入可能である。配管は、ホッパーと輸送先(代表的にはペレット製造装置)とを接続している。気流発生器は、配管の内部にホッパーから輸送先に向かう気流を発生可能である。気流発生器は、任意の適切な構成を有し得る。気流発生装置として、例えば、ブロア、コンプレッサが挙げられる。このようなエアー搬送装置によってリサイクルチップを輸送しても、リサイクルチップの最大長さの平均が上記下限以上であるので、リサイクルチップがエアー搬送装置に貼りつくことを抑制でき、リサイクルチップを円滑に搬送することができる。
【0038】
ペレット製造装置は、任意の適切な構成を有し得る。ペレット製造装置は、ストランドカット方式であってもよく、ホットカット方式であってもよい。ペレット製造装置は、供給されたリサイクルチップを溶融して、所定のサイズを有するリサイクルペレットを製造する。このように製造されるリサイクルペレットでは、原料となるリサイクルチップの最大長さの平均が上記上限以下であるので、気泡率が十分に低減されている。
【0039】
リサイクルペレットの気泡率は、例えば10体積%以下、好ましくは3体積%以下、より好ましくは0体積%である。なお、気泡率は、顕微鏡による観察と解析によって測定できる。リサイクルペレットの気泡率が上記上限以下であれば、リサイクルペレットを種々の樹脂製品(代表的には光学フィルム)の製造に好適に採用し得る。
リサイクルペレットは、リサイクルチップよりも大きくてもよく、リサイクルチップよりも小さくもよく、リサイクルチップと同程度のサイズであってもよい。リサイクルペレットは、任意の適切な形状を有し得る。1つの実施形態において、リサイクルペレットは、円柱形状を有している。リサイクルペレットの最大長さの平均は、例えば1.0mm以上5.0mm以下である。リサイクルペレットの1つあたりの質量は、例えば5mg以上25mg以下である。
【0040】
E.巻取工程
図1に示すように、上記した切断工程で得られた製品フィルム4は、任意の適切な手段により回収される。1つの実施形態において、リサイクルチップの製造方法は、巻取部材6が製品フィルム4を巻き取る巻取工程をさらに含んでいる。巻取工程では、製品フィルム4を巻取部材6に巻回して回収する。そのため、製品フィルム4がロール状に巻回された製品フィルムロール100を製造できる。
【0041】
巻取部材6は、任意の適切な構成を有し得る。巻取部材6は、例えば円柱形状を有している。巻取部材6は、代表的には、端部フィルム3の幅方向と実質的に平行な軸線を中心として回転可能である。
【0042】
製品フィルム4は、代表的には、遅相軸を有する位相差フィルムとして構成される。製品フィルム4の屈折率は、nx>nyの関係を示す。
1つの実施形態において、製品フィルム4は、λ/4板として機能する。製品フィルムがλ/4板として機能する場合、製品フィルム4の面内位相差Re(550)は、例えば100nm~180nm、好ましくは135nm~155nmである。
別の実施形態において、位相差フィルムは、λ/2板として機能する。製品フィルムがλ/2板として機能する場合、製品フィルム4の面内位相差Re(550)は、例えば230nm~310nm、好ましくは250nm~290nmである。
【0043】
製品フィルム4の波長依存性は特に制限されない。製品フィルム4は、好ましくは、逆分散の波長依存性を示す。製品フィルム4のRe(450)/Re(550)は、好ましくは0.8以上1.0未満であり、より好ましくは0.8~0.95である。また、製品フィルム4のRe(550)/Re(650)は、好ましくは0.8以上1.0未満であり、より好ましくは0.8~0.97である。
【0044】
製品フィルム4の光弾性係数の絶対値は、例えば、2×10-12(m/N)~100×10-12(m/N)であり、好ましくは、5×10-12(m/N)~50×10-12(m/N)である。
【実施例0045】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。各特性の測定方法は以下の通りである。なお、特に明記しない限り、実施例および比較例における「部」および「%」は質量基準である。また、実施例および比較例における各特性の測定方法は以下の通りである。
【0046】
(1)リサイクルチップの嵩密度
実施例および比較例で得られたリサイクルチップの嵩密度を、ハイドロメーターによって測定した。その結果を表1に示す。
【0047】
(2)リサイクルチップの搬送性
実施例および比較例で得られたリサイクルチップを吸引方式のエアー搬送装置に投入して、リサイクルチップの搬送性を、端材投入量に対して搬送されたリサイクルチップの量によって観測し、下記の基準で評価した。その結果を表1に示す。
〇(優) :95質量%以上
△(良) :80質量%以上95質量%未満
×(不可):80質量%未満
【0048】
(3)リサイクルチップから製造されるリサイクルペレットの気泡
実施例および比較例で得られたリサイクルチップから、溶融押出によってリサイクルペレットを製造した。得られたリサイクルペレットを顕微鏡観察して、リサイクルペレットにおける気泡を下記の基準で評価した。その結果を表1に示す。
〇(優) :ペレット全体積中における気泡の占める割合が10%以下
×(不可):ペレット全体積中における気泡の占める割合が10%を超過
【0049】
<<延伸フィルムの調製>>
<調製例1>
特開2022-150732号公報の製造例9と同様にして、PC系樹脂から構成される樹脂フィルムを調製し、当該樹脂フィルムを延伸して、PC系樹脂から構成される延伸フィルムを調製した。延伸フィルムの幅は、2000mmであった。延伸フィルムの厚みは、48μmであった。延伸フィルムの幅方向の両端部のそれぞれには、クリップの把持跡が形成されていた。
【0050】
<調製例2>
PC系樹脂から構成される樹脂フィルムをPETから構成される樹脂フィルム(東レ社製、品番「50U48」)に変更したこと以外は、特開2022-150732号公報の製造例9と同様にして、PETから構成される延伸フィルムを調製した。延伸フィルムの幅は、2000mmであった。延伸フィルムの厚みは、50μmであった。延伸フィルムの幅方向の両端部のそれぞれには、クリップの把持跡が形成されていた。
【0051】
<調製例3>
PC系樹脂から構成される樹脂フィルムをアクリル系樹脂から構成される樹脂フィルム(カネカ社製、製品名「HTX-Z」)に変更したこと以外は、特開2022-150732号公報の製造例9と同様にして、アクリル系樹脂から構成される延伸フィルムを調製した。延伸フィルムの幅は、2000mmであった。延伸フィルムの厚みは、40μmであった。延伸フィルムの幅方向の両端部のそれぞれには、クリップの把持跡が形成されていた。
【0052】
<調製例4>
PC系樹脂から構成される樹脂フィルムをCOP系樹脂から構成される樹脂フィルム(日本ゼオン社製、品番「ZF16」)に変更したこと以外は、特開2022-150732号公報の製造例9と同様にして、COP系樹脂から構成される延伸フィルムを調製した。延伸フィルムの幅は、2000mmであった。延伸フィルムの厚みは、40μmであった。延伸フィルムの幅方向の両端部のそれぞれには、クリップの把持跡が形成されていた。
【0053】
[実施例1、2および比較例1、2]
調製例1で得られたPC系樹脂から構成される延伸フィルムを、スリッター(切断装置)によって切断して、2つの端部フィルムと製品フィルムとに分離した。2つの端部フィルムのそれぞれの幅は、250mmであった(延伸フィルムの幅を100%としたときに12.5%)。製品フィルムの幅は、1500mmであった。
【0054】
次いで、端部フィルムをマルチカッター(破砕装置)によって小片状に破砕して、複数のリサイクルチップを得た。各実施例および各比較例におけるリサイクルチップの最大長さの平均を表1に示す。
【0055】
[実施例3]
調製例1で得られたPC系樹脂から構成される延伸フィルムを、調製例2で得られたPETから構成される延伸フィルムに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、複数のリサイクルチップを得た。
【0056】
[実施例4]
調製例1で得られたPC系樹脂から構成される延伸フィルムを、調製例2で得られたPETから構成される延伸フィルムに変更したこと以外は、実施例2と同様にして、複数のリサイクルチップを得た。
【0057】
[実施例5]
調製例1で得られたPC系樹脂から構成される延伸フィルムを、調製例3で得られたアクリル系樹脂から構成される延伸フィルムに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、複数のリサイクルチップを得た。
【0058】
[実施例6]
調製例1で得られたPC系樹脂から構成される延伸フィルムを、調製例4で得られたCOP系樹脂から構成される延伸フィルムに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、複数のリサイクルチップを得た。
【0059】
[比較例3]
調製例1で得られたPC系樹脂から構成される延伸フィルムを、調製例2で得られたPETから構成される延伸フィルムに変更したこと以外は、比較例2と同様にして、複数のリサイクルチップを得た。
【0060】
【表1】
【0061】
[評価]
表1から明らかなように、リサイクルチップの最大長さの平均が上記下限以上であれば、リサイクルチップの搬送性の向上を図ることができ、リサイクルチップの最大長さの平均が上記上限以下であれば、リサイクルペレットに気泡が混入することを抑制できることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明のリサイクルチップの製造方法は、各種産業製品の原料として再利用可能なリサイクルチップを製造できる。リサイクルチップは、特に、光学フィルムの製造に用いられるリサイクルペレットに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0063】
1 樹脂フィルム
2 延伸フィルム
22 クリップの把持跡
3 端部フィルム
9 リサイクルチップ
図1
図2
図3