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  • 特開-端部フィルムの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108527
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】端部フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 55/20 20060101AFI20240805BHJP
   B29C 55/08 20060101ALI20240805BHJP
   B29C 55/12 20060101ALI20240805BHJP
   B65H 37/04 20060101ALI20240805BHJP
   B65H 35/02 20060101ALI20240805BHJP
   B65H 18/08 20060101ALI20240805BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20240805BHJP
【FI】
B29C55/20
B29C55/08
B29C55/12
B65H37/04 A
B65H35/02
B65H18/08
B29L7:00
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012945
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003845
【氏名又は名称】弁理士法人籾井特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中原 歩夢
(72)【発明者】
【氏名】荻野 真悠子
【テーマコード(参考)】
3F055
3F108
4F210
【Fターム(参考)】
3F055AA05
3F055FA17
3F108GB01
3F108HA04
4F210AA12
4F210AA21
4F210AA24
4F210AA28
4F210AG01
4F210QA02
4F210QC03
4F210QC05
4F210QG01
4F210QG08
4F210QG15
4F210QG18
4F210QG20
4F210QL02
4F210QL15
4F210QL16
4F210QW21
4F210QW36
4F210QW45
(57)【要約】
【課題】破断を抑制できる端部フィルムを円滑に製造できる端部フィルムの製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の実施形態による端部フィルムの製造方法は、長尺状の樹脂フィルムにおける幅方向の両端部のそれぞれをクリップによって把持した状態で、該樹脂フィルムを長尺方向と交差する方向に延伸して、延伸フィルムを調製する工程と;該延伸フィルムの幅方向における該クリップの把持跡の内側に、該延伸フィルムの長尺方向に延びる補強テープを貼り付ける工程と;該延伸フィルムの幅方向における該補強テープの内側に、該延伸フィルムの長尺方向に延びる切断線を形成して、該把持跡および補強テープを含む端部フィルムを得る工程と;を含んでいる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の樹脂フィルムにおける幅方向の両端部のそれぞれをクリップによって把持した状態で、前記樹脂フィルムを長尺方向と交差する方向に延伸して、延伸フィルムを調製する工程と、
前記延伸フィルムの幅方向における前記クリップの把持跡の内側に、前記延伸フィルムの長尺方向に延びる補強テープを貼り付ける工程と、
前記延伸フィルムの幅方向における前記補強テープの内側に、前記延伸フィルムの長尺方向に延びる切断線を形成して、前記把持跡および補強テープを含む端部フィルムを得る工程と、を含んでいる、端部フィルムの製造方法。
【請求項2】
巻取部材が前記端部フィルムを巻き取る工程を、さらに含む、請求項1に記載の端部フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端部フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種産業製品に幅広く利用される延伸フィルムは、樹脂フィルムを延伸して製造される。例えば、長尺状の樹脂フィルムの幅方向両端部をクリップによって把持した状態で、樹脂フィルムを長尺方向と交差する方向に延伸する、延伸フィルムの製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような延伸フィルムの製造方法では、延伸フィルムの幅方向の両端部にクリップの把持跡が生じる。そのため、一般的には、延伸フィルムから当該把持跡を含む端部を切断して廃棄する。
近年、環境負荷の低減の観点から、各種産業製品の製造時に生じる廃棄物の再利用が望まれている。そこで、特許文献1に記載の延伸フィルムの製造方法において、延伸フィルムから切断した端部を端部フィルムとして回収して、有効利用することが検討されている。しかし、端部フィルムを回収するときに、端部フィルムが破断して、端部フィルムを円滑に回収できない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7096940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、破断を抑制できる端部フィルムを円滑に製造できる端部フィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1]本発明の実施形態による端部フィルムの製造方法は、長尺状の樹脂フィルムにおける幅方向の両端部のそれぞれをクリップによって把持した状態で、該樹脂フィルムを長尺方向と交差する方向に延伸して、延伸フィルムを調製する工程と;該延伸フィルムの幅方向における該クリップの把持跡の内側に、該延伸フィルムの長尺方向に延びる補強テープを貼り付ける工程と;該延伸フィルムの幅方向における該補強テープの内側に、該延伸フィルムの長尺方向に延びる切断線を形成して、該把持跡および補強テープを含む端部フィルムを得る工程と;を含んでいる。
[2]上記[1]に記載の端部フィルムの製造方法において、巻取部材が上記端部フィルムを巻き取る工程を、さらに含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態によれば、破断を抑制できる端部フィルムを円滑に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の1つの実施形態による端部フィルムの製造方法を説明するための概略構成図である。
図2図2は、図1の延伸フィルムの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。また、図面は説明をより明確にするため、実施の形態に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0009】
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内位相差(Re)
「Re(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した面内位相差である。例えば、「Re(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した面内位相差である。Re(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Re(λ)=(nx-ny)×dによって求められる。
(3)角度
本明細書において角度に言及するときは、特に明記しない限り、当該角度は時計回りおよび反時計回りの両方の方向の角度を包含する。
【0010】
A.端部フィルムの製造方法の概略
図1は本発明の1つの実施形態による端部フィルムの製造方法を説明するための概略構成図であり;図2図1の延伸フィルムの平面図である。
【0011】
本発明の実施形態による端部フィルムの製造方法は、延伸工程と、貼付工程と、切断工程と、この順に含んでいる(図1参照)。延伸工程では、長尺状の樹脂フィルム1における幅方向の両端部のそれぞれをクリップによって把持した状態で、樹脂フィルム1を長尺方向と交差する方向に延伸して、延伸フィルム2を調製する。貼付工程では、延伸フィルム2の幅方向におけるクリップの把持跡22の内側に、延伸フィルム2の長尺方向に延びる補強テープ5を貼り付ける(図2参照)。切断工程では、延伸フィルム2の幅方向における補強テープ5の内側に、延伸フィルム2の長尺方向に延びる切断線21を形成して、クリップの把持跡22および補強テープ5を含む端部フィルム3を得る。
本発明者らは、端部フィルムを回収(製造)するときに、クリップの把持跡がクラックの起点となり、端部フィルムの破断の原因となることを発見した。そこで、端部フィルムの回収手段について鋭意検討した結果、延伸フィルムの所定位置に補強テープを貼り付けた後に、当該延伸フィルムを切断して端部フィルムを得ると、クリップの把持跡にクラックが生じても、端部フィルムの破断を抑制できることを見出した。具体的には、延伸フィルム2の幅方向におけるクリップの把持跡22の内側に補強テープ5を貼り付けた後に、延伸フィルム2の幅方向における補強テープ5の内側に切断線21を形成して、端部フィルム3を得る。このような端部フィルム3では、クリップの把持跡22にクラックが生じても、補強テープ5によってクラックの進行を抑制できる。そのため、破断が抑制された端部フィルム3を円滑に製造(回収)できる。言い換えれば、本発明の実施形態による端部フィルムの製造方法は、端部フィルムの回収方法である。
【0012】
1つの実施形態において、端部フィルムの製造方法は、第1の巻取部材7が端部フィルム3を巻き取る第1巻取工程をさらに含んでいる。上記のように、端部フィルム3が補強テープ5によって補強されているので、端部フィルム3を破断させずに、端部フィルム3を巻き取ることができる。これにより、端部フィルム3をロール状に円滑に回収でき、端部フィルム3がロール状に巻回された端部フィルムロール100を円滑に製造できる。端部フィルムロール100では、端部フィルム3が、第1の巻取部材7の径方向に積層されている。
【0013】
回収された端部フィルムは、単独で流通可能な物品であり、産業上利用可能であって、代表的には、再生樹脂原料として用いられる。
再生樹脂原料は、任意の適切な樹脂製品の製造に利用できる。樹脂製品として、例えば、位相差フィルムなどの光学フィルム;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロンなどの熱可塑性樹脂から構成される包装材料などが挙げられる。これら樹脂製品のなかでは、好ましくは光学フィルムが挙げられ、より好ましくは位相差フィルムが挙げられる。つまり、回収された端部フィルムは、光学フィルム(代表的には位相差フィルム)の原料として好適に用いられ得る。
なお、端部フィルムは、補強テープが貼り付けられた状態で、再生樹脂原料として用いられてもよく、補強テープがはく離された後に、再生樹脂原料として用いられてもよい。
【0014】
以下では、端部フィルムの製造方法の各工程の詳細について説明する。
【0015】
B.延伸工程
図1に示すように、延伸工程では、長尺状の樹脂フィルム1を、代表的には延伸装置9によって延伸する。
【0016】
B-1.延伸対象の樹脂フィルム
樹脂フィルム1は、本明細書において延伸工程前のフィルムをいう。樹脂フィルム1として、任意の適切なフィルムを採用し得る。樹脂フィルム1は、上記のように、長尺状を有している。樹脂フィルム1の各方向における寸法は、任意の適切な値が採用され得る。樹脂フィルム1の幅(長尺方向と直交する方向の寸法)は、例えば500mm以上、好ましくは700mm以上であり、例えば2500mm以下、好ましくは2000mm以下である。樹脂フィルム1の厚みは、例えば40μm以上、好ましくは60μm以上であり、例えば200μm以下、好ましくは180μm以下である。
【0017】
樹脂フィルム1を構成する樹脂材料として、例えば、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、セルロースエステル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエステルカーボネート系樹脂、オレフィン系樹脂、および、ポリウレタン系樹脂が挙げられる。なお、(メタ)アクリル系樹脂とは、アクリル系樹脂および/またはメタクリル系樹脂をいう。これら樹脂材料は、単独でまたは組み合わせて使用できる。
【0018】
樹脂フィルム1を構成する樹脂材料のなかでは、好ましくは、ポリカーボネート(PC)系樹脂、シクロオレフィン(COP)系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、および、ポリエステル系樹脂(代表的には、ポリエチレンテレフタレート(PET))が挙げられ、より好ましくはPC系樹脂が挙げられる。このような樹脂材料が用いられていると、第1巻取工程において端部フィルムをより安定して回収できる。
【0019】
PC系樹脂として、例えば、ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むPC系樹脂が挙げられる。ジヒドロキシ化合物の具体例として、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-エチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-n-プロピルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-n-ブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-sec-ブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-イソブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-tert-ブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-tert-ブチル-6-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロポキシ)フェニル)フルオレンが挙げられる。PC系樹脂は、上記ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の他に、イソソルビド、イソマンニド、イソイデット、スピログリコール、ジオキサングリコール、ジエチレングリコール(DEG)、トリエチレングリコール(TEG)、ポリエチレングリコール(PEG)、シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、トリシクロデカンジメタノール(TCDDM)、ビスフェノール類などのジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含んでいてもよい。
【0020】
上記したPC系樹脂の詳細は、例えば特開2012-67300号公報および特許第3325560号に記載されている。当該特許文献の記載は、本明細書に参考として援用される。
【0021】
B-2.延伸装置
1つの実施形態において、樹脂フィルム1は、延伸装置9を通過するように、長尺方向に搬送されている。そのため、樹脂フィルム1を搬送しながら延伸でき、延伸フィルム2を連続的に調製できる。
【0022】
延伸装置9は、図示しないが、樹脂フィルム1の幅方向の端部を把持可能なクリップを備えている。延伸装置9は、代表的にはテンター延伸装置である。延伸装置9は、樹脂フィルム1における幅方向の両端部のそれぞれをクリップによって把持(代表的には挟持)した状態で、樹脂フィルム1を長尺方向と交差する方向に延伸する。延伸方向は、樹脂フィルム1の長尺方向と実質的に直交する方向(例えば、長尺方向に対して90°±1°)であってもよく、樹脂フィルム1の長尺方向および幅方向の両方と交差する方向であってもよい。
【0023】
延伸工程の詳細は、例えば、特許第7096940号公報、特開2004-226686号公報、国際公開第2007/111313号に記載されている。当該特許文献の記載は、本明細書に参考として援用される。
【0024】
これによって、図2に示すように、長尺状の延伸フィルム2が調製される。延伸工程における幅方向の延伸倍率(延伸フィルムの幅/樹脂フィルムの幅)は、例えば1.1以上、好ましくは1.5以上であり、例えば6.0以下、好ましくは4.0以下である。
【0025】
延伸フィルム2における幅方向の両端部のそれぞれには、クリップの把持跡22が形成されている。クリップの把持跡22は、延伸フィルム2における把持跡22以外の部分よりも、硬くて脆い。
【0026】
延伸フィルム2は、代表的には、上記した延伸方向に遅相軸を有してる。延伸フィルム2の遅相軸は、幅方向において軸ずれする場合がある。より詳細には、延伸フィルム2の遅相軸の方向は、幅方向端部において、所望の角度からずれやすい。当該軸ずれは、代表的には、延伸フィルム2の幅方向中央部では実質的に発現せず、幅方向端部に近づくほど大きくなる。図示例の延伸フィルム2では、幅方向中央部において、遅相軸が上記した延伸方向と実質的に平行(例えば、軸ずれが0°±1°未満)である。また、延伸フィルム2の幅方向端部において、遅相軸は上記した延伸方向と交差(例えば、軸ずれが1°~3°)していてもよい。
【0027】
C.貼付工程
図1に示すように、1つの実施形態では、長尺方向に搬送される延伸フィルム2に、長尺状の補強テープ5が連続的に貼り付けられる。図示例では、長尺状の補強テープ5は、ロール状に巻回される補強フィルムロール102として構成され、補強フィルムロール102から引き出されて、延伸フィルム2に貼り付けられる。なお、延伸フィルム2は、好ましくは、他の工程に供されることなく、延伸工程後(代表的には延伸工程の直後)に貼付工程に供される。より詳しくは、延伸フィルム2は、搬送ローラなどのローラ部材と接触することなく、貼付工程に供される。
【0028】
補強テープ5は、図示しないが、基材と、接着層と、を備えている。
基材を構成する材料として、任意の適切な樹脂材料が挙げられる。当該樹脂材料として、例えば、上記した樹脂フィルム1を構成する樹脂材料と同様のものが挙げられ、好ましくはポリエステル系樹脂が挙げられ、より好ましくはPETが挙げられる。基材の樹脂材料は、単独でまたは組み合わせて使用できる。補強テープ5の基材は、樹脂フィルム1と同一の樹脂材料から構成されていてもよく、樹脂フィルム1と異なる樹脂材料から構成されていてもよい。
基材の厚みは、例えば20μm以上、好ましくは30μm以上、より好ましくは50μm以上であり、例えば150μm以下、好ましくは100μm以下である。
【0029】
補強テープ5は、接着層によって、延伸フィルム2に貼り付けられる。接着層は、接着剤層であってもよく、粘着剤層であってもよい。1つの実施形態において、接着層は、粘着剤層である。粘着剤層は、粘着剤から構成される。粘着剤として、任意の適切なものが採用され得る。粘着剤として、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、ポリエーテル系粘着剤が挙げられる。粘着剤は、単独でまたは組み合わせて使用できる。
接着層の厚みは、例えば5μm以上、好ましくは10μm以上であり、例えば40μm以下、好ましくは30μm以下である。
【0030】
補強テープ5のはく離力(はく離角度90°)は、例えば2.4mN/mm以上、好ましくは20mN/mm以上であり、例えば320mN/mm以下、好ましくは250mN/mmである。補強テープのはく離力は、オートグラフによるはく離強度測定によって測定できる。補強テープのはく離力が上記下限以上であれば、切断工程および/または第1巻取工程において、補強テープが延伸フィルムからはく離することを抑制できる。補強テープのはく離力が上記上限以下であれば、回収した端部フィルムから、必要に応じて、補強テープをはく離し得る。
【0031】
図2に示すように、補強テープ5の幅は、延伸フィルム2の幅を100%としたときに、例えば0.5%以上、好ましくは1.5%以上であり、例えば5.0%以下、好ましくは3.0%以下である。補強テープ5の幅は、例えば15mm以上、好ましくは30mm以上であり、例えば100mm以下、好ましくは60mm以下である。補強テープの幅が上記範囲であれば、端部フィルムの破断をより安定して抑制できる。
【0032】
補強テープ5は、上記したように、延伸フィルム2の幅方向におけるクリップの把持跡22の内側に貼り付けられる。代表的には、2つの補強テープ5のそれぞれは、対応するクリップの把持跡22と隣り合うように延伸フィルム2に貼り付けられ、延伸フィルム2の長尺方向の全体にわたって延びている。補強テープ5は、延伸フィルム2の幅方向において、クリップの把持跡22と隣接していてもよく、クリップの把持跡22に対して間隔を空けて位置していてもよい。
延伸フィルム2の幅方向における補強テープ5とクリップの把持跡22との間の間隔は、例えば0mm以上、好ましくは20mm以上であり、例えば100mm以下、好ましくは80mm以下である。補強テープとクリップの把持跡との間の間隔が上記下限以上であれば、補強テープをクリップの把持跡と重ならないように円滑に貼り付けでき、かつ、端部フィルムの破断を安定して抑制できる。補強テープとクリップの把持跡との間の間隔が上記上限以下であれば、後述する製品フィルムの歩留まりの向上を図ることができる。
【0033】
D.切断工程
図1に示すように、切断工程では、補強テープ5が貼り付けられた延伸フィルム2から、補強テープ5およびクリップの把持跡22を含む両端部を、代表的には切断装置6によって切断する。1つの実施形態において、延伸フィルム2は、切断装置6を通過するように、長尺方向に搬送される。これによって、延伸フィルム2を連続的に切断できる。
【0034】
切断装置6は、任意の適切な構成を有し得る。図示例では、切断装置6は、ギアカッタ61と、対向ローラ62と、を備えている。ギアカッタ61と対向ローラ62とは、互いに対向している。ギアカッタ61および対向ローラ62のそれぞれは、回転可能である。ギアカッタ61は、ギアカッタ61と対向ローラ62との間を通過する延伸フィルム2に、切断線21を形成できる(図2参照)。
【0035】
図2に示すように、切断装置6は、代表的には、延伸フィルム2に2つの切断線21を形成する。切断線21は、延伸フィルム2の長尺方向に沿って延びている。2つの切断線21は、延伸フィルム2の幅方向において互いに所定の間隔を空けて形成される。
【0036】
2つの切断線21のそれぞれは、上記したように、延伸フィルム2の幅方向における補強テープ5の内側に形成される。言い換えれば、切断線21は、延伸フィルム2の幅方向において、補強テープ5に対して、クリップの把持跡22の反対側に位置している。切断線21は、延伸フィルム2の幅方向において、補強テープ5に隣接していてもよく、補強テープ5に対して間隔を空けて位置していてもよい。
【0037】
延伸フィルム2の幅方向における切断線21と補強テープ5との間の間隔は、例えば0mm以上、好ましくは50mm以上、より好ましくは100mm以上、さらに好ましくは200mm以上であり、例えば500mm以下、好ましくは400mm以下、さらに好ましくは300mm以下である。切断線と補強テープとの間の間隔が上記下限以上であれば、切断線を円滑に形成できる。切断線と補強テープとの間の間隔が上記上限以下であれば、延伸フィルムのうち上記した軸ずれが相対的に大きい部分を端部フィルムに含めることができる。
【0038】
1つの実施形態では、延伸フィルム2の幅方向において、切断線21と補強テープ5との間の間隔が、補強テープ5とクリップの把持跡22との間の間隔よりも大きい。延伸フィルム2の幅方向において、切断線21と補強テープ5との間の間隔は、補強テープ5とクリップの把持跡22との間の間隔に対して、例えば1倍以上、好ましくは5倍以上、より好ましくは8倍以上であり、例えば20倍以下、好ましくは15倍以下である。
切断線と補強テープとの間の間隔が、補強テープと把持跡との間の間隔に対して、上記下限以上であれば、延伸フィルムのうち上記した軸ずれが相対的に大きい部分を端部フィルムに安定して含めることができる。切断線と補強テープとの間の間隔が、補強テープと把持跡との間の間隔に対して、上記上限以下であれば、製品フィルムの歩留まりの向上を安定して図ることができる。
【0039】
以上によって、延伸フィルム2から、延伸フィルム2の幅方向の両端部に対応する2つの端部フィルム3が得られる。2つの端部フィルム3のそれぞれは、延伸フィルム2の幅方向端部に由来するフィルム本体であって、クリップの把持跡22を含むフィルム本体と;フィルム本体に貼り付けられる補強テープ5と;を含んでいる。また、2つの端部フィルム3が切断された延伸フィルム2は、製品フィルム4として構成される。つまり、切断工程において、延伸フィルム2は、代表的には、2つの端部フィルム3と、製品フィルム4とに分離される。2つの端部フィルム3および製品フィルム4のそれぞれは、長尺状を有している。
【0040】
端部フィルム3の幅は、任意の適切な値が採用され得る。端部フィルム3の幅は、延伸フィルム2の幅を100%としたときに、例えば3.0%以上、好ましくは5.0%以上、より好ましくは10.0%以上であり、例えば30%以下、好ましくは25%以下、より好ましくは20%以下である。端部フィルム3の幅は、例えば60mm以上、好ましくは100mm以上、より好ましくは200mm以上であり、例えば600mm以下、好ましくは500mm以下、より好ましくは300mm以下である。
端部フィルムの幅が上記下限以上であると、延伸フィルムのうち上記した軸ずれが相対的に大きい部分を端部フィルムにより一層安定して含めることができ、製品フィルムにおける軸ずれを低減できる。端部フィルムの幅が上記上限以下であると、製品フィルムの歩留まりのさらなる向上を図ることができる。
【0041】
端部フィルム3の幅を100%としたときに、補強テープ5の幅は、例えば1.0%以上、好ましくは5.0%以上、より好ましくは10%以上であり、例えば50%以下、好ましくは30%以下である。
端部フィルム3におけるクリップの把持跡22が占める面積割合は、例えば0.5%以上、好ましくは1.0%以上であり、例えば10%以下、好ましくは8%以下である。
補強テープの幅および/または把持跡が占める面積割合が上記範囲であると、クリップの把持跡においてクラックが生じても、クラックが補強テープよりも進行することを抑制でき、端部フィルムが破断することを安定して抑制できる。
【0042】
E.第1巻取工程
図1に示すように、第1巻取工程では、第1の巻取部材7が、延伸フィルム2から切断装置6によって切断された端部フィルム3を巻き取る。これによって、端部フィルム3を連続的に回収でき、端部フィルムロール100を製造できる。第1の巻取部材7は、代表的には、端部フィルム3の幅方向と実質的に平行な軸線を中心として回転可能である。なお、図1では、便宜上、1つの第1の巻取部材7を図示しているが、実際には、第1の巻取部材7は、端部フィルム3と同数(すなわち2つ)設けられる。第1の巻取部材7は、任意の適切な構成を有し得る。第1の巻取部材7は、代表的には、円柱形状を有している。
【0043】
切断装置6から第1の巻取部材7に向かう端部フィルム3の搬送速度(ライン速)は、例えば50mm/s以上、好ましくは80mm/s以上であり、例えば1600mm/s以下、好ましくは1150mm/s以下である。端部フィルムのライン速が上記範囲であると、端部フィルムに掛かる張力を好適な範囲に調整でき、端部フィルムの破断をより一層抑制できる。
【0044】
F.第2巻取工程
切断工程で得られた製品フィルム4は、任意の適切な手段により回収される。1つの実施形態において、端部フィルムの製造方法は、第2の巻取部材8が製品フィルム4を巻き取る第2巻取工程をさらに含んでいる。第2巻取工程では、製品フィルム4を第2の巻取部材8に巻回して回収する。そのため、製品フィルム4がロール状に巻回された製品フィルムロール101を製造できる。製品フィルムロール101では、製品フィルム6が、第2の巻取部材8の径方向に積層されている。なお、第2の巻取部材8は、第1の巻取部材7と同様に説明できる。
【0045】
製品フィルム4は、代表的には、遅相軸を有する位相差フィルムとして構成される。製品フィルム4の屈折率は、nx>nyの関係を示す。
1つの実施形態において、製品フィルム4は、λ/4板として機能する。製品フィルムがλ/4板として機能する場合、製品フィルム4の面内位相差Re(550)は、例えば100nm~180nm、好ましくは135nm~155nmである。
別の実施形態において、位相差フィルムは、λ/2板として機能する。製品フィルムがλ/2板として機能する場合、製品フィルム4の面内位相差Re(550)は、例えば230nm~310nm、好ましくは250nm~290nmである。
【0046】
製品フィルム4の波長依存性は特に制限されない。製品フィルム4は、好ましくは、逆分散の波長依存性を示す。製品フィルム4のRe(450)/Re(550)は、好ましくは0.8以上1.0未満であり、より好ましくは0.8~0.95である。また、製品フィルム4のRe(550)/Re(650)は、好ましくは0.8以上1.0未満であり、より好ましくは0.8~0.97である。
【0047】
製品フィルム4の光弾性係数の絶対値は、例えば、2×10-12(m/N)~100×10-12(m/N)であり、好ましくは、5×10-12(m/N)~50×10-12(m/N)である。
【実施例0048】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。各特性の測定方法は以下の通りである。なお、特に明記しない限り、実施例および比較例における「部」および「%」は質量基準である。
【0049】
<<延伸フィルムの調製>>
<調製例1>
特開2022-150732号公報の製造例9と同様にして、PC系樹脂から構成される樹脂フィルムを調製し、当該樹脂フィルムを延伸して、PC系樹脂から構成される延伸フィルムを調製した。延伸フィルムの幅は、2000mmであった。延伸フィルムの厚みは、48μmであった。延伸フィルムの幅方向の両端部のそれぞれには、クリップの把持跡が形成されていた。
【0050】
<調製例2>
PC系樹脂から構成される樹脂フィルムをPETから構成される樹脂フィルム(東レ社製、品番「50U48」)に変更したこと以外は、特開2022-150732号公報の製造例9と同様にして、PETから構成される延伸フィルムを調製した。延伸フィルムの幅は、2000mmであった。延伸フィルムの厚みは、50μmであった。延伸フィルムの幅方向の両端部のそれぞれには、クリップの把持跡が形成されていた。
【0051】
<調製例3>
PC系樹脂から構成される樹脂フィルムをアクリル系樹脂から構成される樹脂フィルム(カネカ社製、製品名「HTX-Z」)に変更したこと以外は、特開2022-150732号公報の製造例9と同様にして、アクリル系樹脂から構成される延伸フィルムを調製した。延伸フィルムの幅は、2000mmであった。延伸フィルムの厚みは、40μmであった。延伸フィルムの幅方向の両端部のそれぞれには、クリップの把持跡が形成されていた。
【0052】
<調製例4>
PC系樹脂から構成される樹脂フィルムをCOP系樹脂から構成される樹脂フィルム(日本ゼオン社製、品番「ZF16」)に変更したこと以外は、特開2022-150732号公報の製造例9と同様にして、COP系樹脂から構成される延伸フィルムを調製した。延伸フィルムの幅は、2000mmであった。延伸フィルムの厚みは、40μmであった。延伸フィルムの幅方向の両端部のそれぞれには、クリップの把持跡が形成されていた。
【0053】
[実施例1]
調製例1で得られたPC系樹脂から構成される延伸フィルムの幅方向におけるクリップの把持跡の内側に、長尺状の補強テープを貼り付けた。補強フィルムは、PETから構成される基材と、アクリルモノマーから構成される粘着剤層と、を備えていた。基材の厚みは、38μmであり、粘着剤層の厚みは、15μmであった。補強テープの幅は、50mmであった(延伸フィルムの幅を100%としたときに2.5%)。また、延伸フィルムの幅方向におけるクリップの把持跡と補強テープとの間の間隔は、20mmであった。
【0054】
次いで、補強テープが貼り付けられた延伸フィルムの内側に、スリッター(切断装置)によって、切断線を形成した。延伸フィルムの幅方向における切断線と補強テープとの間の間隔は、220mmであった(補強テープとクリップの把持跡との間の間隔に対して、11倍)。これによって、延伸フィルムを、2つの端部フィルムと製品フィルムとに分離した。2つの端部フィルムムのそれぞれの幅は、250mmであった(延伸フィルムの幅を100%としたときに12.5%)。製品フィルムの幅は、1500mmであった。
【0055】
次いで、円柱形状の巻取部材によって、端部フィルムを巻き取った。端部フィルムのライン速は、350mm/sであった。巻き取り回数(端部フィルムロールにおける積層数)は、7000であった。これによって、端部フィルムを回収した。回収された端部フィルムを目視で観察したところ、端部フィルムは破断していなかった。
【0056】
[実施例2]
調製例1で得られたPC系樹脂から構成される延伸フィルムを、調製例2で得られたPETから構成される延伸フィルムに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、端部フィルムを回収した。回収された端部フィルムを目視で観察したところ、端部フィルムは破断していなかった。
【0057】
[実施例3]
調製例1で得られたPC系樹脂から構成される延伸フィルムを、調製例3で得られたアクリル系樹脂から構成される延伸フィルムに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、端部フィルムを回収した。回収された端部フィルムを目視で観察したところ、端部フィルムは破断していなかった。
【0058】
[実施例4]
調製例1で得られたPC系樹脂から構成される延伸フィルムを、調製例4で得られたCOP系樹脂から構成される延伸フィルムに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、端部フィルムを回収した。回収された端部フィルムを目視で観察したところ、端部フィルムは破断していなかった。
【0059】
[比較例1]
調製例1で得られたPC系樹脂から構成される延伸フィルムに補強テープを貼り付けることなく、延伸フィルムをスリッター(切断装置)によって切断して、2つの端部フィルムと、製品フィルムとに分離した。2つの端部フィルムのそれぞれの幅は、250mmであり、端部フィルムの最大厚みは、130μmであった。製品フィルムの幅は、1500mmであった。
【0060】
次いで、円柱形状の巻取部材によって、端部フィルムの巻き取りを試みた。しかし、端部フィルムに破断が生じて、巻き取りが困難であった。端部フィルムのライン速は、350mm/sであった。
【0061】
[評価]
延伸フィルムに補強テープを貼り付けた後に、切断線を形成して端部フィルムを得ると、端部フィルムの破断を抑制できることがわかる。特に、端部フィルムを破断させることなく、端部フィルムを巻き取り可能であることが確認される。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の端部フィルムの製造方法は、各種産業製品の原料として再利用可能な端部フィルムロールを製造できる。端部フィルムロールとして回収される端部フィルムは、特に、光学フィルムの再生樹脂原料として好適に用いられる。
【符号の説明】
【0063】
1 樹脂フィルム
2 延伸フィルム
21 切断線
22 クリップの把持跡
3 端部フィルム
5 補強テープ
7 巻取部材
図1
図2