(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108529
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】導電性組成物、および積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 65/00 20060101AFI20240805BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20240805BHJP
B32B 7/025 20190101ALI20240805BHJP
C08K 5/136 20060101ALI20240805BHJP
C08K 5/13 20060101ALI20240805BHJP
H01B 1/20 20060101ALI20240805BHJP
H01B 1/12 20060101ALI20240805BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
C08L65/00
B32B27/18 J
B32B7/025
C08K5/136
C08K5/13
H01B1/20 A
H01B1/12 F
H01B13/00 503Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012949
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000214250
【氏名又は名称】ナガセケムテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 隆裕
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
5G301
5G323
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
【課題】本発明は、導電性と表面張力を両立した導電性組成物を提供する。
【解決手段】ポリチオフェン系導電性高分子、ならびに、ハロゲン原子、アルコキシ基、およびアルキル基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有するフェノール化合物を含む、導電性組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリチオフェン系導電性高分子、ならびに、ハロゲン原子、アルコキシ基、およびアルキル基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有するフェノール化合物を含む、導電性組成物。
【請求項2】
ポリチオフェン系導電性高分子100重量部に対して、前記フェノール化合物を0.1~60重量部含む、請求項1に記載の導電性組成物。
【請求項3】
ポリチオフェン系導電性高分子100重量部に対して、少なくとも1つの置換基を有するフェノール化合物を0.1~60重量部含む、導電性組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つの置換基が、ハロゲン原子、アルコキシ基、またはアルキル基である、請求項3に記載の導電性組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つの置換基が、フェノール化合物のメタ位またはパラ位における置換基である、請求項1または3に記載の導電性組成物。
【請求項6】
表面張力が40mN/m以上である、請求項1または3に記載の導電性組成物。
【請求項7】
前記ポリチオフェン系導電性高分子が、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とドーパントとの複合体である、請求項1または3に記載の導電性組成物。
【請求項8】
さらに樹脂バインダーを含む、請求項1または3に記載の導電性組成物。
【請求項9】
基材上に、請求項1または3に記載の導電性組成物の塗膜を形成する工程、および前記塗膜を乾燥させる工程を含む、積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性組成物、および積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
帯電防止フィルムとして、基材フィルム表面に導電性組成物からなる塗膜を形成させた積層体が用いられている。導電性組成物の塗布は、大型の印刷機を用いて、オフセット印刷やグラビア印刷、フレキソ印刷等の方法で行われる。
【0003】
これらの印刷機には、余分な導電性組成物をかき取るドクターブレードが備えられているが、従来の導電性組成物は、印刷時にドクターブレードに乗り上げてしまい、乗り上げた過剰な導電性組成物やその乾燥物によって、均一な塗布が行えないことがあった。これは、導電性組成物に含まれる、導電性向上剤などの添加剤により、導電性組成物の表面張力が低下したことが原因と考えられた。導電性向上剤を使用すると、組成物の導電性を向上できるが、表面張力は低下する傾向がある。導電性組成物において導電性と表面張力はトレードオフの関係にあり、両者を高い値で維持することは困難と考えられていた。
【0004】
特許文献1には、導電性向上剤としてエチレングリコール等を含む、導電性組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、導電性と表面張力を両立した導電性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、所定のフェノール化合物を使用したとき、またはフェノール化合物を所定量使用したときに、導電性と表面張力を両立した導電性組成物を得られることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、ポリチオフェン系導電性高分子、ならびに、ハロゲン原子、アルコキシ基、およびアルキル基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有するフェノール化合物を含む、導電性組成物に関する。
【0009】
導電性組成物は、ポリチオフェン系導電性高分子100重量部に対して、前記フェノール化合物を0.1~60重量部含むことが好ましい。
【0010】
また、本発明は、ポリチオフェン系導電性高分子100重量部に対して、少なくとも1つの置換基を有するフェノール化合物を0.1~60重量部含む、導電性組成物に関する。
【0011】
前記少なくとも1つの置換基が、ハロゲン原子、アルコキシ基、またはアルキル基であることが好ましい。
【0012】
前記少なくとも1つの置換基が、フェノール化合物のメタ位またはパラ位における置換基であることが好ましい。
【0013】
表面張力が40mN/m以上であることが好ましい。
【0014】
前記ポリチオフェン系導電性高分子が、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とドーパントとの複合体であることが好ましい。
【0015】
さらに樹脂バインダーを含むことが好ましい。
【0016】
また、本発明は、基材上に、前記導電性組成物の塗膜を形成する工程、および前記塗膜を乾燥させる工程を含む、積層体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の導電性組成物は、導電性と表面張力を両立できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<<導電性組成物(1)>>
本発明の第1の実施形態に係る導電性組成物は、ポリチオフェン系導電性高分子、ならびに、ハロゲン原子、アルコキシ基、およびアルキル基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有するフェノール化合物を含むことを特徴とする。
【0019】
<ポリチオフェン系導電性高分子>
ポリチオフェン系導電性高分子は、分子内に、導電性に優れるチオフェン環を少なくとも1つ含む導電性高分子である。ポリチオフェン系導電性高分子としては、ポリ(3,4-二置換チオフェン)が好ましく、ポリ(3,4-ジアルコキシチオフェン)又はポリ(3,4-アルキレンジオキシチオフェン)が特に好ましい。ポリ(3,4-ジアルコキシチオフェン)又はポリ(3,4-アルキレンジオキシチオフェン)としては、以下の式(I):
【0020】
【0021】
で示される反復構造単位からなる陽イオン形態のポリチオフェンが好ましい。ここで、R1及びR2は相互に独立して水素原子又はC1-4のアルキル基を表すか、又は、R1及びR2が結合している場合にはC1-4のアルキレン基を表す。C1-4のアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基等が挙げられる。また、R1及びR2が結合している場合、C1-4のアルキレン基としては、特に限定されないが、例えば、メチレン基、1,2-エチレン基、1,3-プロピレン基、1,4-ブチレン基、1-メチル-1,2-エチレン基、1-エチル-1,2-エチレン基、1-メチル-1,3-プロピレン基、2-メチル-1,3-プロピレン基等が挙げられる。これらの中では、メチレン基、1,2-エチレン基、1,3-プロピレン基が好ましく、1,2-エチレン基がより好ましい。C1-4のアルキル基、及び、C1-4のアルキレン基は、その水素の一部が置換されていてもよい。C1-4のアルキレン基を有するポリチオフェンとしては、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)が特に好ましい。
【0022】
ポリチオフェン系導電性高分子は、ドーパントとの複合体であってもよい。ドーパントとしては、導電性、化学的安定性、および、低温かつ短時間で帯電防止層を形成でき生産性に優れる点で、ポリ陰イオンを用いることが好ましい。ポリ陰イオンは、ポリチオフェン環とイオン対をなすことにより複合体を形成し、ポリチオフェン環を水中に安定に分散させることができる。ポリ陰イオンとしては、特に限定されないが、例えば、カルボン酸ポリマー類(例えば、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、ポリメタクリル酸等)、スルホン酸ポリマー類(例えば、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸等)等が挙げられる。これらのカルボン酸ポリマー類、スルホン酸ポリマー類はまた、ビニルカルボン酸類及びビニルスルホン酸類と他の重合可能なモノマー類、例えば、アクリレート類、スチレン、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル化合物との共重合体であってもよい。これらの中では、ポリスチレンスルホン酸が特に好ましい。
【0023】
ポリスチレンスルホン酸は、重量平均分子量が1000~2000000であることが好ましく、2000~500000であることがより好ましい。分子量がこの範囲外のポリスチレンスルホン酸を使用すると、ポリチオフェン系導電性高分子の水に対する分散安定性が低下する場合がある。なお、重量平均分子量はゲル透過クロマトグラフィー(GPC)にて測定した値である。
【0024】
ポリチオフェン系導電性高分子の平均粒子径は、0.1~1000nmが好ましく、0.5~100nmがより好ましく、1~10nmがさらに好ましく、1~5nmが特に好ましい。上記範囲内では、導電性組成物により形成される塗膜が、優れた導電性を示す傾向がある。なお、本発明における平均粒子径は、動的光散乱法により測定したときの累積体積50%における粒径(D50)である。
【0025】
ポリチオフェン系導電性高分子の導電率は、0.5~2000S/cmが好ましく、100~2000S/cmがより好ましく、200~2000S/cmがさらに好ましい。上記範囲内では、導電性組成物により形成される塗膜が、優れた導電性を示す傾向がある。
【0026】
導電性組成物中の、ポリチオフェン系導電性高分子の含有量は、全固形分中1~99重量%が好ましく、2~99重量%がより好ましい。また、導電性組成物が後述の樹脂バインダーを含む場合、ポリチオフェン系導電性高分子の含有量は、全固形分中1~20%が好ましく、2~10%がより好ましい。上記範囲内では十分な導電性を発揮できる。
【0027】
<フェノール化合物>
本実施態様で用いるフェノール化合物は、ハロゲン原子、アルコキシ基、およびアルキル基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する。これらのフェノール化合物は、ポリチオフェン系導電性高分子の導電性を向上する効果に優れるため、組成物中での含有量が少量であっても、組成物に高い導電性をもたらす。
【0028】
前記フェノール化合物の構造は、下記一般式(1)で表される。
【化2】
一般式(1)において、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、およびアルキル基からなる群から選択される1以上であるが、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5のうち少なくとも1以上は、ハロゲン原子、アルコキシ基、およびアルキル基からなる群から選択される1以上である。
【0029】
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられ、塩素、臭素が好ましい。
【0030】
アルコキシ基は、直鎖状であってもよく、分枝状であってもよい。アルコキシ基の炭素数は1~10が好ましく、1~3がより好ましい。アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブトキシ基、iso-ブトキシ基、n-ペントキシ基、2,2-ジメチルプロポキシ基、n-ヘキトキシ基、n-へプトキシ基、n-オクトキシ基等が挙げられる。なかでも、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。アルコキシ基は、置換基を有していてもよい。
【0031】
アルキル基は、直鎖状であってもよく、分枝状であってもよい。アルキル基の炭素数は1~10が好ましく、1~3がより好ましい。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等が挙げられる。なかでも、メチル基、エチル基が好ましい。アルキル基は、置換基を有していてもよい。
【0032】
ハロゲン原子、アルコキシ基、およびアルキル基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基の位置は、フェノール化合物の水酸基を基準として、オルト位、メタ位、パラ位のいずれであってもよいが、メタ位、パラ位が好ましい。
【0033】
ハロゲン原子、アルコキシ基、およびアルキル基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有するフェノール化合物の具体例としては、3-フルオロフェノール、3-クロロフェノール、3-ブロモフェノール、3-ヨードフェノール、4-フルオロフェノール、4-クロロフェノール、4-ブロモフェノール、4-ヨードフェノール、3-メトキシフェノール、3-エトキシフェノール、4-メトキシフェノール、4-エトキシフェノールが挙げられる。これらの中でも3-クロロフェノール、3-メトキシフェノール、4-メトキシフェノールが好ましい。
【0034】
ハロゲン原子、アルコキシ基、およびアルキル基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有するフェノール化合物の、導電性組成物中の含有量は、0.001~10重量%が好ましく、0.01~5重量%がより好ましい。また、ポリチオフェン系導電性高分子の固形分100重量部に対して、前記フェノール化合物を0.1~60重量部含むことが好ましく、0.5~60重量部含むことがより好ましく、1~60重量部含むことがさらに好ましい。上記範囲内であると、十分な導電性と表面張力を維持できる。
【0035】
ハロゲン原子、アルコキシ基、およびアルキル基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有するフェノール化合物は、沸点が180℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましく、210℃以上であることがさらに好ましい。沸点の上限は特に限定されないが、一般的に300℃である。導電性組成物に含まれる前記フェノール化合物は、塗膜形成時の加熱により蒸散するが、その際にポリチオフェン系導電性高分子の配向を制御することで、塗膜の導電性を向上させると推測されるが、本発明の範囲はこの機構に限定されない。
【0036】
<導電性組成物の性状および製造方法>
導電性組成物の表面張力は、40mN/m以上が好ましく、45mN/m以上がより好ましく、50mN/m以上がさらに好ましい。表面張力がこれらの範囲であるときに、印刷機を用いた塗膜形成時に、塗膜を均一に形成できる傾向がある。
【0037】
導電性組成物の固形分率は特に限定されないが、0.1~50重量%が好ましく、0.5~30重量%がより好ましく、1~20重量%がさらに好ましい。固形分率が上記範囲内であると、十分な導電性を発揮でき、導電性塗膜の塗工性や保存安定性が良好となる傾向がある。導電性組成物の固形分率は、後述する高沸点溶媒や希釈剤の配合量により調節できる。
【0038】
導電性組成物は、ポリチオフェン系導電性高分子、フェノール化合物、および必要に応じて後述の任意成分を、任意の順序で混合することにより得られる。
【0039】
<任意成分>
導電性組成物は、ポリチオフェン系導電性高分子、ならびに、ハロゲン原子、アルコキシ基、およびアルキル基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有するフェノール化合物に加えて、樹脂バインダー、高沸点溶媒、希釈剤、架橋剤、触媒、界面活性剤及び/又はレベリング剤、水溶性酸化防止剤等を含有していてもよい。
【0040】
樹脂バインダーとしては、例えばアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂が挙げられる。これらの樹脂バインダーはポリチオフェン系導電性高分子との相溶性が高く、また、これらの樹脂バインダーを含む導電性組成物からなる導電性塗膜は、基材に対する親和性が良好である。さらに、樹脂バインダーは水分散性樹脂であることが好ましい。水分散性樹脂は、樹脂に親水性の官能基が付与された結果分散化されたものであってもよいし、乳化剤により強制的に分散化されたものであってもよい。これらの樹脂バインダーは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
アクリル系樹脂としては、例えば(メタ)アクリル系樹脂、ビニルエステル系樹脂等が挙げられる。これらのアクリル樹脂は、例えば、カルボキシル基、酸無水物基、スルホン酸基、燐酸基などの酸基を有する重合性単量体を構成モノマーとして含む重合体であってもよく、例えば、酸基を有する重合性単量体の単独又は共重合体、酸基を有する重合性単量体と共重合性単量体との共重合体等が挙げられる。
【0042】
(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル系単量体を主たる構成モノマー(例えば、50モル%以上)として含んでいれば共重合性単量体と重合していてもよく、この場合、(メタ)アクリル系単量体及び共重合性単量体のうち、少なくとも一方が酸基を有していればよい。(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、酸基を有する(メタ)アクリル系単量体[(メタ)アクリル酸、スルホアルキル(メタ)アクリレート、スルホン酸基含有(メタ)アクリルアミド等]又はその共重合体、酸基を有していてもよい(メタ)アクリル系単量体と、酸基を有する他の重合性単量体[他の重合性カルボン酸、重合性多価カルボン酸又は無水物、ビニル芳香族スルホン酸等]及び/又は共重合性単量体[例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、芳香族ビニル単量体等]との共重合体、酸基を有する他の重合体単量体と(メタ)アクリル系共重合性単量体[例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル等]との共重合体、ロジン変性ウレタンアクリレート、特殊変性アクリル樹脂、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレートエマルジョン等が挙げられる。
【0043】
これらの(メタ)アクリル系樹脂の中では、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル重合体(アクリル酸-メタクリル酸メチル共重合体等)、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル-スチレン共重合体(アクリル酸-メタクリル酸メチル-スチレン共重合体等)等が好ましい。
【0044】
ポリウレタン系樹脂としては、イソシアネート基を有する化合物とヒドロキシル基を有する化合物を共重合させて得られた高分子化合物であれば特に限定されず、例えば、エステル・エーテル系ポリウレタン、エーテル系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタン、カーボネート系ポリウレタン、アクリル系ポリウレタン等が挙げられる。
【0045】
ポリエステル系樹脂としては、2以上のカルボキシル基を分子内に有する化合物と、2以上のヒドロキシル基を有する化合物とを重縮合して得られた高分子化合物であれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等が挙げられる。
【0046】
スチレン系樹脂は、スチレンを主成分とする樹脂であれば特に限定されず、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)等が挙げられる。
【0047】
エポキシ系樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、フェノールノボラック型、ベンゼン環を多数有した多官能型であるテトラキス(ヒドロキシフェニル)エタン型又はトリス(ヒドロキシフェニル)メタン型、ビフェニル型、トリフェノールメタン型、ナフタレン型、オルソノボラック型、ジシクロペンタジエン型、アミノフェノール型、脂環式等のエポキシ樹脂、シリコーンエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0048】
酢酸ビニル系樹脂は、酢酸ビニルの重合により得られる樹脂であれば特に限定されず、例えばポリ酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
【0049】
塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニルの重合により得られる樹脂であれば特に限定されず、例えばポリ塩化ビニル、エチレン塩化ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
【0050】
シリコーン系樹脂としては、下記式(2)により表されるアルコキシシランのモノマー同士が縮合することで形成される、シロキサン結合(Si-O-Si)を1分子内に1個以上有するアルコキシシランオリゴマーが挙げられる。アルコキシシランオリゴマーの構造は特に限定されず、直鎖状であってもよく、分岐状でもよい。また、アルコキシシランオリゴマーは、式(2)により表される化合物を単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
SiR4(2)
(式中、Rは、水素、水酸基、炭素数1~4のアルコキシ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基である。但し、4つのRのうち少なくとも1個は炭素数1~4のアルコキシ基又は水酸基である)
【0051】
フッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、テフロン(登録商標)、ポリフッ化ビニル等が挙げられる。
【0052】
導電性組成物の全固形分における樹脂バインダーの固形分の割合は、70~99.9重量%が好ましく、80~99重量%がより好ましく、85~99重量%がさらに好ましい。また、樹脂バインダーの固形分の含有量は、ポリチオフェン系導電性高分子の固形分100重量部に対して400~9900重量部が好ましく、800~4900重量部がより好ましい。この範囲内では、導電性塗膜に十分な強度と導電性を持たせることができる。
【0053】
高沸点溶媒は、沸点が110℃以上の溶媒のことを指し、沸点は130℃以上が好ましく、150℃以上がより好ましい。沸点の上限は一般的に300℃である。高沸点溶媒を配合することにより、導電性組成物の導電性を向上することができる。高沸点溶媒の具体例としては、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、γ-ブチロラクトン、N-メチルピロリドン等のアミド化合物;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリグリセリン等のヒドロキシル基含有化合物;イソホロン、プロピレンカーボネート、シクロヘキサノン、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル、オルト酢酸メチル、オルトギ酸エチル等のカルボニル基含有化合物;ジメチルスルホキシド等のスルホ基を有する化合物等が挙げられる。高沸点溶媒の配合量は、前述した導電性組成物の固形分率を実現できる配合量とすればよいが、導電性組成物中、5~40重量%が好ましく、5~20重量%がより好ましい。
【0054】
希釈剤としては、特に限定されず、例えば、水;メタノール、エタノール、2-プロパノール、1-プロパノール等のアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類;エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルアセテート類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル等のプロピレングリコールエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールエーテルアセテート類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン(o-、m-、あるいはp-キシレン)、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素類:酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類:ハロゲン類、アセトニトリル、水とこれらの有機溶媒との混合溶媒(含水有機溶媒)、2種以上の有機溶媒の混合溶媒等が挙げられる。これらの中では沸点が110℃以下の希釈剤が好ましく、水、アルコール類、グリコールエーテル類がより好ましく、水と親水性有機溶媒との混合溶媒が好ましい。希釈剤は、導電性組成物を用いて形成される導電性塗膜中には残留しないことが好ましい。希釈剤の配合量は、前述した導電性組成物の固形分率を実現できる配合量とすればよいが、導電性組成物中、1~99.9重量%が好ましく、10~99重量%がより好ましい。導電性組成物の液体成分中、水の配合量は20~100重量%が好ましく、50~100重量%がより好ましく、75~100重量%がさらに好ましく、95~100重量%が特に好ましい。
【0055】
また、高沸点溶媒と希釈剤は併用してもよい。高沸点溶媒と希釈剤を併用する場合、希釈剤の使用量は、高沸点溶媒100重量部に対して100~100000重量部が好ましく、500~50000重量部がより好ましく、2200~3000重量部がさらに好ましい。
【0056】
架橋剤としては、特に限定されないが、例えば、メラミン系、カルボジイミド系、オキサゾリン系、エポキシ系、イソシアネート系、アクリレート系等の架橋剤が挙げられる。導電性組成物が架橋剤を含有する場合、その含有量は特に限定されないが、導電性組成物中30重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましい。導電性組成物が熱硬化性のバインダー及び架橋剤を含有する場合、熱硬化性のバインダーを架橋させるための触媒としては、特に限定されず、例えば、光重合開始剤や熱重合開始剤等が挙げられる。
【0057】
導電性組成物に界面活性剤及び/又はレベリング剤を配合することにより、導電性組成物のレベリング性を向上させることができ、均一な導電性塗膜を形成できる。
【0058】
界面活性剤は、レベリング性向上効果を有するものであれば特に限定されず、例えば、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性シロキサン、ポリエーテルエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性アクリル基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性アクリル基含有ポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリエステル変性ポリジメチルシロキサン等のシロキサン系化合物;パーフルオロアルキルカルボン酸等のフッ素系化合物;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等のポリエーテル系化合物;ヤシ油脂肪酸アミン塩等のカルボン酸;リン酸エステル、アルキルエーテル硫酸塩、ソルビタン脂肪酸エステル、スルホン酸エステル、コハク酸エステル等のエステル系化合物;アルキルアリールスルホン酸アミン塩、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム等のスルホン酸塩化合物;ラウリルリン酸ナトリウム等のリン酸塩化合物;ヤシ油脂肪酸エタノールアマイド等のアミド化合物;アクリル系化合物等が挙げられる。
【0059】
レベリング剤としては、例えば、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性シロキサン、ポリエーテルエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性アクリル基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性アクリル基含有ポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリエステル変性ポリジメチルシロキサン等のシロキサン系化合物;パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノール等のフッ素系化合物;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、プロピレンオキシド重合体、エチレンオキシド重合体等のポリエーテル系化合物;ヤシ油脂肪酸アミン塩、ガムロジン等のカルボン酸;ヒマシ油硫酸エステル類、リン酸エステル、アルキルエーテル硫酸塩、ソルビタン脂肪酸エステル、スルホン酸エステル、コハク酸エステル等のエステル系化合物;アルキルアリールスルホン酸アミン塩、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム等のスルホン酸塩化合物;ラウリルリン酸ナトリウム等のリン酸塩化合物;ヤシ油脂肪酸エタノールアマイド等のアミド化合物;アクリル系化合物等が挙げられる。
【0060】
導電性組成物が界面活性剤及び/又はレベリング剤を含有する場合、導電性組成物の全固形分に対する固形分量は0.01~5重量%が好ましく、0.01~1重量%がより好ましい。
【0061】
導電性組成物に水溶性酸化防止剤を配合することにより、導電性塗膜の耐熱性、耐湿熱性を向上させることができる。水溶性酸化防止剤としては、還元性の水溶性酸化防止剤、非還元性の水溶性酸化防止剤等が挙げられる。導電性組成物が水溶性酸化防止剤を含有する場合、その含有量は、導電性組成物中、1~20重量%が好ましく、5~10重量%がより好ましい。
【0062】
<<導電性組成物(2)>>
本発明の第2の実施形態に係る導電性組成物は、ポリチオフェン系導電性高分子100重量部に対して、少なくとも1つの置換基を有するフェノール化合物を0.1~60重量部含むことを特徴とする。
【0063】
<フェノール化合物>
本実施態様で用いるフェノール化合物は、ポリチオフェン系導電性高分子の導電性を向上する効果に優れており、組成物中での含有量が少量であっても、組成物に高い導電性をもたらす。
【0064】
本実施態様で用いるフェノール化合物の構造は、下記一般式(1)で表される。
【化3】
一般式(1)において、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5は、それぞれ独立に、水素原子、または任意の置換基であってよいが、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5のうち少なくとも1つは、置換基である。置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、ニトロ基が挙げられる。
【0065】
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられ、塩素、臭素が好ましい。
【0066】
アルコキシ基は、直鎖状であってもよく、分枝状であってもよい。アルコキシ基の炭素数は1~10が好ましく、1~3がより好ましい。アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブトキシ基、iso-ブトキシ基、n-ペントキシ基、2,2-ジメチルプロポキシ基、n-ヘキトキシ基、n-へプトキシ基、n-オクトキシ基等が挙げられる。なかでも、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。アルコキシ基は、置換基を有していてもよい。
【0067】
アルキル基は、直鎖状であってもよく、分枝状であってもよい。アルキル基の炭素数は1~10が好ましく、1~3がより好ましい。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等が挙げられる。なかでも、メチル基、エチル基が好ましい。アルキル基は、置換基を有していてもよい。
【0068】
ハロゲン原子、アルコキシ基、およびアルキル基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基の位置は、フェノール化合物の水酸基を基準として、オルト位、メタ位、パラ位のいずれであってもよいが、メタ位、パラ位が好ましい。
【0069】
前記フェノール化合物の具体例としては、3-フルオロフェノール、3-クロロフェノール、3-ブロモフェノール、3-ヨードフェノール、4-フルオロフェノール、4-クロロフェノール、4-ブロモフェノール、4-ヨードフェノール、3-メトキシフェノール、3-エトキシフェノール、4-メトキシフェノール、4-エトキシフェノール、ピロカテコール、ヒドロキノン、レシルシノール、フロログルシノール、トリヒロドキシベンゼン、ヘキサヒドロキシベンゼン、ヒドロキシ安息香酸が挙げられる。これらの中でも3-クロロフェノール、3-メトキシフェノール、4-メトキシフェノール、ピロカテコールが好ましい。
【0070】
前記フェノール化合物は、沸点が180℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましく、210℃以上であることがさらに好ましい。沸点の上限は特に限定されないが、一般的に300℃である。導電性組成物に含まれる前記フェノール化合物は、塗膜形成時の加熱により蒸散するが、その際にポリチオフェン系導電性高分子の配向を制御することで、塗膜の導電性を向上させる。
【0071】
ポリチオフェン系導電性高分子の固形分100重量部に対する前記フェノール化合物の含有量は、0.1~60重量部であるが、0.5~60重量部が好ましく、1~60重量部がさらに好ましい。上記範囲内であると、十分な導電性と表面張力を維持できる。また、前記フェノール化合物の、導電性組成物中の含有量は、0.001~10重量%が好ましく、0.01~5重量%がより好ましい。
【0072】
本発明の第2の実施形態に係る導電性組成物において、導電性組成物の性状および製造方法、ポリチオフェン系導電性高分子及び任意成分の種類並びに配合量は、第1の実施形態に係る導電性組成物について前述した通りである。
【0073】
<<積層体の製造方法>>
本発明の積層体の製造方法は、基材上に、前記第1の実施形態、または第2の実施形態の導電性組成物の塗膜を形成する工程、および前記塗膜を乾燥させる工程を含むことを特徴とする。
【0074】
基材の材質としては、例えば、ガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリスチレン樹脂、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリサルホン(PSF)樹脂、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂、銅やアルミに代表される金属等が挙げられる。
【0075】
基材の形状は特に限定されないが、フィルム状であることが好ましい。基材の厚みは、10~10000μmであることが好ましく、25~5000μmであることがより好ましい。また、基材の全光線透過率は、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。
【0076】
塗膜は、導電性組成物を基材上に塗布することにより形成される。塗布方法としては特に限定されず公知の方法を用いることができ、例えば、ブレードコート法、バーコート法、グラビアコート法、ロールコート法、バーコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、キャスティング法、ダイコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ドクターコート法、スリットコート法、凸版(活版)印刷法、孔版(スクリーン)印刷法、平版(オフセット)印刷法、凹版(グラビア)印刷法、スプレー印刷法、インクジェット印刷法、タンポ印刷法等を用いることができる。
【0077】
基材上に、前記導電性組成物の塗膜を形成する前に、あらかじめ基材の表面に表面処理を施してもよい。表面処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、イトロ処理、火炎処理等が挙げられる。また、導電性組成物は、基材表面に直接塗布してもよいし、プライマー層等の別の層をあらかじめ基材上に設けた後で、当該層の上に塗布してもよい。
【0078】
基材上に形成された塗膜を乾燥させることにより、塗膜に含まれる揮発成分が除去され、積層体が得られる。乾燥方法としては加熱乾燥が好ましく、例えば送風オーブン、赤外線オーブン、真空オーブン等を用いた方法が挙げられる。加熱乾燥時の温度条件は、60~200℃が好ましく、80~180℃がより好ましい。加熱処理の処理時間は、特に限定されないが、0.1~20分間が好ましく、1~5分間がより好ましい。
【0079】
<<積層体>>
前記方法により製造される積層体は、基材、および基材上に形成された導電性塗膜からなる。
【0080】
導電性塗膜の表面抵抗率は、1.0×101~9.9×1010Ω/□が好ましく、1.0×101~1.0×109Ω/□がより好ましい。表面抵抗率は、基材フィルム上に形成された膜厚0.1μmの導電性塗膜について、実施例に記載の方法により測定される値である。
【0081】
導電性塗膜の厚みは0.01~100μmが好ましく、0.01~10μmがより好ましく、0.01~2μmがさらに好ましい。なお、導電性塗膜の膜厚は、導電性組成物の固形分と基材への塗布量から算出される。
【0082】
積層体は、導電性に優れるため、偏光板、表面保護フィルム、透明導電性フィルム、帯電防止フィルム、導電性ハードコート、導電性粘着剤などの用途に好適に用いられる。
【実施例0083】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。以下、「部」又は「%」は特記ない限り、それぞれ「重量部」又は「重量%」を意味する。
【0084】
(1)使用材料
(1-1)ポリチオフェン系導電性高分子
・ポリチオフェン系導電性高分子(ヘレウス社製、Clevios PH1000、固形分率1.1重量%)
・ポリチオフェン系導電性高分子(ヘレウス社製、Clevios P、固形分率1.3重量%)
【0085】
(1-2)少なくとも1つの置換基を有するフェノール化合物
表1で示すフェノール化合物を用いた。
【0086】
【0087】
また、表1における一般式(1)を以下に示す。
【化4】
【0088】
(1-3)水酸基を有する化合物
・エチレングリコール
(1-4)溶媒
・水
(1-5)バインダー
・アクリル樹脂(東亞合成株式会社製、ジュリマーFC-80、固形分率30%、ガラス転移温度50℃)
【0089】
(2)導電性組成物の製造と、積層体の製造(実施例1~12、比較例1~3)
表2に記載した重量比で各成分を混合し、導電性組成物を作製した。溶媒量は、組成物全体の固形分が1重量%となるように調整した。導電性組成物を、ポリエステル樹脂製の基材フィルム(東レ株式会社製、ルミラーT60)の片面にバーコート法で塗布し、送風乾燥機を用いて120℃で5分乾燥させることにより、基材フィルム上に塗膜を形成した。塗膜の膜厚は、バーコータの番手を適宜選択することにより、0.1μmとなるように調整した。
【0090】
実施例1~12、比較例1~3で得られた導電性組成物の表面張力と、塗膜の表面抵抗率を、後述する方法により評価した。結果を表2に示す。
【0091】
【0092】
比較例1~2では、特許文献1に記載されているエチレングリコールを使用した。比較例1では導電性組成物の表面張力が低く、比較例2では塗膜の表面抵抗率が高く、比較例1~2のいずれにおいても導電性と表面張力を両立できなかった。比較例3では導電性が低かった。実施例1~11では、導電性と表面張力の両方を向上することができた。また、同一のポリチオフェン系導電性高分子を用いた実施例12と比較例3を比較すると、比較例3では、必要な表面張力を維持する一方で導電性が発現しなかったが、実施例12は導電性と表面張力を両立できた。
【0093】
(3)評価方法
(3-1)導電性組成物の表面張力
導電性組成物の25℃における表面張力を、懸滴法により接触角計(協和界面科学株式会社製、DMo-502)を用いて測定した。
【0094】
(3-2)表面抵抗率
塗膜の表面抵抗率は、抵抗率計(三菱ケミカル株式会社製、ハイレスターUP(MCP-HT450型))のUAプローブおよび(三菱ケミカル株式会社製、ロレスターGP(MCP-T600型))のESPプローブを用いて測定した。塗膜の表面にプローブを押し当て、印加電圧10Vにて10秒間保った際の表面抵抗率を求めた。
【0095】
本開示(1)はポリチオフェン系導電性高分子、ならびに、ハロゲン原子、アルコキシ基、およびアルキル基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有するフェノール化合物を含む、導電性組成物である。
【0096】
本開示(2)はポリチオフェン系導電性高分子100重量部に対して、前記フェノール化合物を0.1~60重量部含む、本開示(1)に記載の導電性組成物である。
【0097】
本開示(3)はポリチオフェン系導電性高分子100重量部に対して、少なくとも1つの置換基を有するフェノール化合物を0.1~60重量部含む、導電性組成物である。
【0098】
本開示(4)は前記少なくとも1つの置換基が、ハロゲン原子、アルコキシ基、またはアルキル基である、本開示(3)に記載の導電性組成物である。
【0099】
本開示(5)は前記少なくとも1つの置換基が、フェノール化合物のメタ位またはパラ位における置換基である、本開示(1)~(4)のいずれかに記載の導電性組成物である。
【0100】
本開示(6)は表面張力が40mN/m以上である、本開示(1)~(5)のいずれかに記載の導電性組成物である。
【0101】
本開示(7)は前記ポリチオフェン系導電性高分子が、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とドーパントとの複合体である、本開示(1)~(6)のいずれかに記載の導電性組成物である。
【0102】
本開示(8)はさらに樹脂バインダーを含む、本開示(1)~(6)のいずれかに記載の導電性組成物である。
【0103】
本開示(9)は基材上に、本開示(1)~(6)のいずれかに記載の導電性組成物の塗膜を形成する工程、および前記塗膜を乾燥させる工程を含む、積層体の製造方法である。