(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108538
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】組電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/293 20210101AFI20240805BHJP
H01G 11/06 20130101ALI20240805BHJP
H01G 11/12 20130101ALI20240805BHJP
H01G 11/78 20130101ALI20240805BHJP
【FI】
H01M50/293
H01G11/06
H01G11/12
H01G11/78
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012960
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】岩田 亮介
(72)【発明者】
【氏名】松田 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】小村 哲司
【テーマコード(参考)】
5E078
5H040
【Fターム(参考)】
5E078AA09
5E078AA10
5E078AB02
5E078AB06
5E078HA05
5E078HA22
5E078HA23
5E078JA02
5E078JA07
5H040AA37
5H040AS07
5H040AT02
5H040NN00
(57)【要約】
【課題】耐熱性に優れかつ二次電池の膨化を吸収できるスペーサを備えた組電池を提供する。
【解決手段】ここで開示される組電池は、所定の配列方向Xに沿って配置された複数の角形二次電池と、配列方向Xにおいて隣り合う角形二次電池の間に配置されたスペーサ200と、を備える。スペーサ200は、第1部分210と第2部分220とを含み、第1部分210は、弾性率が、1MPa以上10MPa以下であり、第2部分220は、多孔質部222を含み、多孔質部222は、次の条件:(1)JIS K 6380(2014年)に基づく耐熱性の区分が、E以上である;(2)配列方向Xの弾性率が、0.02MPa以上0.9MPa以下である;をいずれも満たす材料が、全体の50質量%以上を占めている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の配列方向に沿って配置された複数の角形二次電池と、
前記配列方向において隣り合う前記角形二次電池の間に配置されたスペーサと、
を備える組電池であって、
前記スペーサは、前記配列方向に積層された第1部分と第2部分とを含み、
前記第1部分は、弾性率が、1MPa以上10MPa以下であり、
前記第2部分は、多孔質部を含み、
前記多孔質部は、次の条件:
(1)JIS K 6380(2014年)に基づく耐熱性の区分が、E以上である;
(2)前記弾性率が、0.02MPa以上0.9MPa以下である;
をいずれも満たす材料が、全体の50質量%以上を占めており、
ここで、前記弾性率とは、圧縮速度12kPa/分で、前記配列方向に圧縮荷重が3.9MPaとなるまで圧縮して作成した、圧縮荷重-圧縮率曲線(横軸:圧縮率、縦軸:圧縮荷重)から、圧縮率1~20%の範囲における近似直線の傾きとして求められる値をいう、組電池。
【請求項2】
前記多孔質部は、シリコーンゴムが、全体の50質量%以上を占めている、
請求項1に記載の組電池。
【請求項3】
前記多孔質部を構成する前記材料の前記弾性率が、0.02MPa以上0.2MPa以下である、
請求項1または2に記載の組電池。
【請求項4】
前記多孔質部の空隙率が、25体積%以上である、
請求項1または2に記載の組電池。
【請求項5】
前記多孔質部の空隙率が、50体積%以上である、
請求項1または2に記載の組電池。
【請求項6】
前記第1部分の前記配列方向と直交する面の面積が、前記第2部分の前記配列方向と直交する面の面積以下である、
請求項1または2に記載の組電池。
【請求項7】
前記第1部分の一部が前記第2部分内に配置されている、
請求項1または2に記載の組電池。
【請求項8】
前記第1部分と前記第2部分とが、まとめ部材によって一体化されている、
請求項1または2に記載の組電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両駆動用電源等では、高出力化のために複数の二次電池(単電池)を電気的に接続してなる組電池が広く利用されている。これに関連する従来技術文献として、特許文献1、2が挙げられる。
【0003】
例えば特許文献1には、所定の配列方向に沿って配置された複数の二次電池と、配列方向において隣り合う二次電池の間に配置されたスペーサと、二次電池とスペーサとの間に配置され、二次電池間の熱伝導を抑制する熱伝導抑制部材と、を備える組電池が開示されている。特許文献1には、熱伝導抑制部材が、不織布等からなる繊維シートの繊維間にシリカキセロゲル等の多孔質材が担持された構造の断熱材を含むことで、外部から押圧された場合(例えば拘束機構によって締め付けられた場合等)にも、その構造を安定的に維持できる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6913872号公報
【特許文献2】国際公開第2019/146438号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、車両等に搭載される二次電池では、ますます高容量化が進んでいる。本発明者らの検討によれば、上記技術を高容量化された二次電池を備えた組電池に適用する場合、依然として改善の余地があった。すなわち、高容量化された二次電池は、電池ケース内の活物質の量が増えることにより、充放電サイクルに伴って、膨化しやすくなる。このとき、特許文献1に記載されるように、熱伝導抑制部材が構造を安定的に維持できるもの(言い換えれば、弾性率の高いもの)であると、二次電池の膨化を吸収しにくい。その結果、組電池全体の膨化や二次電池の性能劣化を生じる虞がある。また、高容量化された二次電池は、充放電時及び短絡時に発熱しやすくなっている。そのため、二次電池が発熱しても、その熱が隣接する二次電池に伝わることを高度に抑制することが求められる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、耐熱性に優れかつ二次電池の膨化を吸収できるスペーサを備えた組電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明により、所定の配列方向に沿って配置された複数の角形二次電池と、上記配列方向において隣り合う上記角形二次電池の間に配置されたスペーサと、を備える組電池が開示される。上記スペーサは、上記配列方向に積層された第1部分と第2部分とを含み、上記第1部分は、弾性率が、1MPa以上10MPa以下であり、上記第2部分は、多孔質部を含み、上記多孔質部は、次の条件:1)JIS K 6380(2014年)に基づく耐熱性の区分が、E以上である;(2)上記弾性率が、0.02MPa以上0.9MPa以下である;をいずれも満たす材料が、全体の50質量%以上を占めており、ここで、上記弾性率とは、圧縮速度12kPa/分で、上記配列方向に圧縮荷重が3.9MPaとなるまで圧縮して作成した、圧縮荷重-圧縮率曲線(横軸:圧縮率、縦軸:圧縮荷重)から、圧縮率1~20%の範囲における近似直線の傾きとして求められる値をいう。
【0008】
本発明では、スペーサが、上記弾性率を満たす第1部分と、多孔質部を有する第2部分と、を含んでいるので、充放電時に二次電池が膨張収縮した際にも、二次電池に対して安定して荷重を付与できる。また、第2部分が、上記耐熱性の区分と上記弾性率とを共に満たす材料を主体とする多孔質部を有することで、スペーサが耐熱性と膨化吸収性とを兼ね備えることができる。詳しくは、第2部分が多孔質部を有しない場合や、多孔質部が上記耐熱性の区分を満たさない場合に比べて、相対的に隣接する二次電池に熱が伝わることを抑制できる。また、上記弾性率を満たす第1部分と多孔質部を有する第2部分とでそれぞれ二次電池の膨化を吸収できるため、例えば第2部分が上記弾性率を満たさない場合に比べて、相対的に膨化吸収性を向上することができ、ひいては充放電サイクル後の二次電池の性能劣化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る組電池を模式的に示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2のIII-III線に沿う模式的な縦断面図である。
【
図6】
図6(A)、(B)は、第1実施形態に係る第1部分の模式図であり、
図6(A)は厚み方向と直交する面の平面図、
図6(B)は
図6(A)のVIB-VIB線に沿う縦断面図である。
【
図8】
図8(A)、(B)は、第2実施形態に係る第1部分の模式図であり、
図8(A)は厚み方向と直交する面の平面図、
図8(B)は
図8(A)のVIIIB-VIIIB線に沿う縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、適宜図面を参照しながら、ここに開示される組電池のいくつかの好適な実施形態を説明する。本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、本発明を特徴付けない組電池や角形二次電池の一般的な構成および製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここに開示される組電池は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0011】
なお、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、本明細書において範囲を示す「A~B」の表記は、A以上B以下の意と共に、「好ましくはAより大きい」および「好ましくはBより小さい」の意を包含するものとする。
【0012】
<第1実施形態>
図1は、一実施形態に係る組電池500を模式的に示す斜視図である。組電池500は、配列方向Xに沿って配置された複数の角形二次電池100と、配列方向Xにおいて隣り合う角形二次電池100の間に配置された複数のスペーサ200と、を備えている。組電池500は、ここではさらに拘束機構300を備えている。なお、以下の説明において、図面中の符号L、R、F、Rr、U、Dは、左、右、前、後、上、下を表し、図面中の符号X、Y、Zは、角形二次電池100の厚み方向、厚み方向と直交する長辺方向、厚み方向および長辺方向と直交する上下方向を、それぞれ表すものとする。厚み方向Xは、角形二次電池100の配列方向でもある。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、組電池500の設置形態を何ら限定するものではない。
【0013】
拘束機構300は、複数の角形二次電池100と複数のスペーサ200とに対して、配列方向Xから規定の拘束圧を印加するように構成されている。拘束機構300は、ここでは、一対のエンドプレート310と、一対のサイドプレート320と、複数のビス330とで、構成されている。一対のエンドプレート310は、配列方向Xにおいて複数の角形二次電池100の両端に配置されている。一対のエンドプレート310は、複数の角形二次電池100と複数のスペーサ200とを配列方向Xに挟み込んでいる。一対のエンドプレート310は、金属製であることが好ましい。ただし、一部が樹脂製であってもよい。
【0014】
一対のサイドプレート320は、一対のエンドプレート310を架橋している。一対のサイドプレート320は、金属製であることが好ましい。ただし、一部が樹脂製であってもよい。一対のサイドプレート320は、例えば、拘束荷重が概ね10~15kN程度となるように、複数のビス330によってエンドプレート310に固定されている。これにより、複数の角形二次電池100と複数のスペーサ200とに対して配列方向Xから拘束荷重が付与され、組電池500が一体的に保持されている。ただし、拘束機構の構成はこれに限定されるものではない。拘束機構300は、例えばサイドプレート320にかえて、複数の拘束バンドやバインドバー等を備えていてもよい。
【0015】
複数の角形二次電池100は、一対のエンドプレート310の間に、配列方向X(言い換えれば角形二次電池100の厚み方向X)に沿って並んでいる。複数の角形二次電池100は、拘束機構300で拘束されていることが好ましい。なお、
図1では、図示を省略しているが、組電池500の使用時には、複数の角形二次電池100がバスバー等の導電部材によって電気的に接続される。接続方法は特に制限されず、例えば、直列、並列、あるいは多直列多並列等であってもよい。
【0016】
角形二次電池100は、繰り返し充放電が可能な電池である。なお、本明細書において「二次電池」とは、繰り返し充放電が可能な蓄電デバイス全般を指す用語であって、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池等のいわゆる蓄電池に加えて、リチウムイオンキャパシタや電気二重層キャパシタ等のキャパシタを包含する概念である。また、組電池500を構成する角形二次電池100の形状、サイズ、個数、配置等はここに開示される態様に限定されることなく、適宜変更することができる。
【0017】
図2は、角形二次電池100の斜視図である。
図3は、
図2のIII-III線に沿う模式的な縦断面図である。
図3に示すように、角形二次電池100は、電池ケース10と、電極体20と、正極端子30と、負極端子40と、正極集電部材50と、負極集電部材60と、非水電解液(図示せず)と、を備えている。非水電解液は従来と同様でよく、特に制限はない。角形二次電池100は、ここではリチウムイオン二次電池である。
【0018】
電池ケース10は、電極体20および非水電解液を収容する筐体である。
図2に示すように、電池ケース10は、扁平かつ有底の直方体形状(角形)の外形を有する。電池ケース10の材質は、従来から使用されているものと同じでよく、特に制限はない。電池ケース10は、金属製であることが好ましく、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金等からなることがより好ましい。電池ケース10は、外装体12と、封口板(蓋体)14と、を備えている。電池ケース10は、本実施形態のように、外装体12と封口板14とを備えることが好ましい。
【0019】
外装体12は、
図2に示すように、略矩形状の底壁12aと、底壁12aの長辺から延び相互に対向する一対の長側壁12bと、底壁12aの短辺から延び相互に対向する一対の短側壁12cと、底壁12aに対向する開口12h(
図3参照)と、を備えている。長側壁12bは、スペーサ200と対向する面である。長側壁12bの面積は、短側壁12cの面積よりも大きい。封口板14は、外装体12の開口12hを封口する板状部材である。
図3に示すように、封口板14は、開口12hを塞ぐように外装体12に取り付けられている。封口板14は、外装体12の底壁12aと対向している。封口板14は、略矩形状である。電池ケース10は、外装体12の開口12hの周縁に封口板14が接合(好ましくは溶接接合)されることによって、一体化されている。電池ケース10は、気密に封止(密閉)されている。
【0020】
なお、本明細書において「略矩形状」とは、完全な矩形状(長方形状)に加えて、例えば、矩形状の長辺と短辺とを接続する角部がR状になっている形状や、角部に切り欠きを有する形状等をも包含する用語である。
【0021】
図3に示すように、封口板14には、注液孔15と、排出弁17と、2つの端子引出孔18、19と、が設けられている。封口板14には、注液孔15や排出弁17を設けることが好ましい。注液孔15は、外装体12に封口板14を組み付けた後、非水電解液を注液するためのものである。注液孔15は、封止部材16により封止されている。排出弁17は、電池ケース10内の圧力が所定値以上になったときに破断して、電池ケース10内のガスを外部に排出するように構成されている。端子引出孔18、19は、封口板14を上下方向Zに貫通している。端子引出孔18、19は、それぞれ、封口板14に取り付けられる前の(かしめ加工前の)の正極端子30および負極端子40を挿通可能な大きさの内径を有する。
【0022】
正極端子30は、封口板14の長辺方向Yの一方側の端部(
図2、
図3の左端部)に配置されている。負極端子40は、封口板14の長辺方向Yの他方側の端部(
図2、
図3の右端部)に配置されている。正極端子30および負極端子40は、封口板14に取り付けられていることが好ましい。
図3に示すように、正極端子30および負極端子40は、端子引出孔18、19を挿通して封口板14の内部から外部へと延びている。正極端子30および負極端子40は、ここでは、かしめ加工により、封口板14の端子引出孔18、19を囲む周縁部分に、かしめられている。正極端子30および負極端子40の外装体12の側の端部(
図3の下端部)には、かしめ部30c、40cが形成されている。
【0023】
図3に示すように、正極端子30は、外装体12の内部で、正極集電部材50を介して電極体20の正極集電部23と電気的に接続されている。負極端子40は、外装体12の内部で、負極集電部材60を介して電極体20の負極集電部25と電気的に接続されている。正極端子30は、内部絶縁部材80およびガスケット90によって封口板14と絶縁されている。負極端子40は、内部絶縁部材80およびガスケット90によって封口板14と絶縁されている。
【0024】
図2、
図3に示すように、封口板14の外側の面には、板状の正極外部導電部材32および負極外部導電部材42が取り付けられている。正極外部導電部材32は、正極端子30と電気的に接続されている。負極外部導電部材42は、負極端子40と電気的に接続されている。正極外部導電部材32および負極外部導電部材42は、複数の角形二次電池100を相互に電気的に接続するバスバー等の導電部材が付設される部材である。正極外部導電部材32および負極外部導電部材42は、外部絶縁部材92によって封口板14と絶縁されている。組電池500は、例えば、隣り合う角形二次電池100のうち、一方の角形二次電池100の正極外部導電部材32と、他方の角形二次電池100の負極外部導電部材42とが、バスバー等で電気的に接続されることにより、直列接続される。
【0025】
電極体20は、正極と負極とを有する。電極体20の構成は従来と同様でよく、特に制限はない。また、1つの外装体12の内部に配置される電極体20の数は特に制限されず、複数であってもよい。電極体20は、ここでは、帯状の正極と帯状の負極とがセパレータを介して絶縁された状態で積層され、捲回軸を中心として捲回されて構成されてなる扁平な捲回電極体である。ただし、他の実施形態において、電極体20は、複数枚の方形状の正極と、複数枚の方形状の負極とが、絶縁された状態で積み重ねられてなる積層型電極体であってもよい。
【0026】
図3に示すように、電極体20の捲回軸方向(
図3の長辺方向Y)の一方の端部には、正極集電部23が設けられている。他方の端部には、負極集電部25が設けられている。正極集電部23には、正極集電部材50が取り付けられている。負極集電部25には、負極集電部材60が取り付けられている。正極集電部材50は、正極端子30と電極体20の正極とを電気的に接続する導通経路を構成している。負極集電部材60は、負極端子40と電極体20の負極とを電気的に接続する導通経路を構成している。
【0027】
スペーサ200は、ここでは配列方向Xにおいて複数の角形二次電池100の間にそれぞれ配置されている。すなわち、配列方向Xでは、角形二次電池100とスペーサ200とが交互に並んでいる。ただし、スペーサ200は、配列方向Xに隣り合う少なくとも2つの角形二次電池100の間に配置されていればよく、必ずしも全ての角形二次電池100の間に配置されている必要はない。スペーサ200は、ここでは配列方向Xと直交する一対の面(配列方向Xの両面)が、それぞれ角形二次電池100の長側壁12bと当接(直接接触)している。ただし、角形二次電池100とスペーサ200との間には、他の部材が介在していてもよい。
【0028】
図4は、スペーサ200を模式的に示す斜視図である。
図4に示すように、スペーサ200は、第1部分210と第2部分220とを含んでいる。
図4の第1部分210および第2部分220は、それぞれ外形が平板状である。第1部分210と第2部分220とは、配列方向Xに積層されている。スペーサ200は、ここでは1つの第1部分210と1つの第2部分220との2層構造である。第1部分210は、ここでは、厚み方向Xと直交する一対の面(
図4のY-Z平面)のうち、一方が第2部分220と対向(ここでは当接)し、他方が電池ケース10の長側壁12bと対向(ここでは当接)している。第2部分220は、ここでは、厚み方向Xと直交する一対の面(
図4のY-Z平面)のうち、一方が第1部分210と対向(ここでは当接)し、他方が電池ケース10の長側壁12bと対向(ここでは当接)している。
【0029】
第1部分210と第2部分220とは、一体化されていることが好ましい。特には、まとめ部材によって一体化されていることが好ましい。これにより、第1部分210と第2部分220との積層ずれを防止できる。また、組電池500の生産性や作業性を向上できる。なお、本明細書において「一体化」とは、まとめ部材を用いた着脱自在な固定や着脱不可能な接着等と、まとめ部材を用いない嵌合(機械的な接合)や一体成形等と、を包含する概念である。第1部分210と第2部分220とは、例えば、まとめ部材としてのテープ等で固定されていてもよいし、まとめ部材としての樹脂シートやラミネートフィルム等で全体が覆われてラッピングされていてもよいし、まとめ部材としての接着剤や接着層(両面テープ等)を介して化学的もしくは物理的な力で接着されていてもよいし、まとめ部材を用いずに、嵌合や一体成形によって一部材として加工されていてもよい。
【0030】
図4に示すように、第1部分210と第2部分220とは、ここではY-Z平面の面積が略同じ(加工誤差は許容しうる)である。第1部分210および第2部分220は、それぞれ、Y-Z平面の面積が、電池ケース10の長側壁12b(スペーサ200と対向する面)の面積の50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることが特に好ましい。これにより、ここに開示される技術の効果を高いレベルで発揮できる。
【0031】
図4に示すように、第1部分210の厚みt1は、組電池500に組み付けられて圧縮される前の状態において、角形二次電池100の厚み(厚み方向Xの長さ)の5%以上、例えば5~15%が好ましい。第2部分220の厚みt2は、組電池500に組み付けられて圧縮される前の状態において、角形二次電池100の厚み(厚み方向Xの長さ)の2%以上、例えば2~20%が好ましく、5%以上、例えば5~15%がより好ましい。厚みt1と厚みt2との合計は、角形二次電池100の厚み(厚み方向Xの長さ)の7%以上、例えば7~35%、さらには10%以上、例えば10~30%が好ましい。
【0032】
ただし、第1部分210および第2部分220の形状、サイズ、配置等は、例えば角形二次電池100の形状、サイズ、容量(膨張・収縮の度合い)等に応じて適宜決定することができる。スペーサ200は、例えば、配列方向Xにおいて、第1部分210の両側面に、それぞれ第2部分220が配置された3層構造(第2部分220/第1部分210/第2部分220)を有していてもよいし、これとは逆に、配列方向Xにおいて、第2部分220の両側面に、それぞれ第1部分210が配置された3層構造(第1部分210/第2部分220/第1部分210)を有していてもよい。スペーサ200は、4層以上の構造であってもよいし、第1部分210および第2部分220以外の部分を含んでいてもよい。
【0033】
第1部分210は、弾性率が、後述する所定の範囲を満たし、配列方向Xに弾性変形可能に構成されている。そのため、充電時等に角形二次電池100が膨張して、第1部分210にかかる荷重が大きくなると、第1部分210は圧縮される。一方、放電時等に角形二次電池100が収縮して、第1部分210にかかる荷重が小さくなると、第1部分210は再び元の形状に復帰する。よって、スペーサ200に第1部分210を設けることで、充放電時に角形二次電池100が膨張収縮した際にも、角形二次電池100を所定の拘束荷重で安定的に押圧でき、性能維持に必要な荷重を安定して付与することができる。また、充放電サイクル後に角形二次電池100が膨化した際には、膨化を好適に吸収することができ、後述する第2部分220との相乗効果によって、スペーサ200の膨化吸収性をより良く高めることができる。
【0034】
本実施形態において、第1部分210の弾性率は、1MPa~10MPaである。弾性率は、数値が小さいほど柔らかく、厚み方向X(配列方向X)に弾性変形しやすい。弾性部210の弾性率は、7MPa以下が好ましく、5MPa以下がより好ましく、例えば3.3MPa以下であってもよい。第1部分210の弾性率を所定値以下とすることで、角形二次電池100の充電時や角形二次電池100が膨化した際にスペーサ200が潰れやすくなる。また、角形二次電池100の膨化を吸収しやすくなる。第1部分210の弾性率は、1.5MPa以上であってもよく、3.0MPa以上であってもよい。第1部分210の弾性率を所定値以上とすることで、角形二次電池100の放電時にスペーサ200が形状復帰しやすくなる。また、角形二次電池100が膨化した際に反発して、膨化を抑制しやすくなる。第1部分210の弾性率は、例えば、後述する材質や、構造(例えば、突起部213の個数、大きさ、形状、配置、接触領域CAの面積S)等によって調整できる。
【0035】
なお、本明細書において「弾性率」とは、以下のように求めた値をいう。すなわちまず、厚み方向Xと直交する一対の面がそれぞれ5cm×5cmの正方形状である試験片を用意し、マイクロメータで初期厚み(mm)を測定する。次に、従来公知の圧縮試験装置を用いて、圧縮速度30N/分(12kPa/分)の条件で、試験片の単位面積当たりの圧縮荷重が3.9MPaとなるまで厚み方向Xに試験片を一定の速度で圧縮して、圧縮荷重(MPa)と圧縮後厚み(mm)を測定する。次に、圧縮荷重(MPa)と圧縮後厚み(mm)から、(初期厚み-圧縮後厚み)(mm)/初期厚み(mm)×100で求められる圧縮率(%)を横軸に、圧縮荷重(N/mm
2=MPa)を縦軸に示した圧縮荷重-圧縮率曲線(FSカーブ)を作成する。
図5は、模式的なFSカーブである。そして、
図5に示すように、FSカーブ(横軸:圧縮率、縦軸:圧縮荷重)の圧縮率1~20%の範囲における近似直線Aの傾きを、弾性率(MPa)とする。弾性率は、数値が小さいほど柔らかく、厚み方向X(配列方向X)に弾性変形しやすいことを表している。
【0036】
第1部分210は、上記弾性率の範囲を考慮すると、高分子材料で構成されていることが好ましい。高分子材料としては、例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム(EPM、EPDM)、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ノルボルネンゴム)等のゴム類(熱硬化性エラストマ)が挙げられる。第1部分210は、ゴム製であることが好ましい。なかでも、シリコーンゴム、フッ素ゴム、EPDMが好ましい。
【0037】
図6(A)、(B)は、第1部分210の模式図であり、
図6(A)は、厚み方向X(配列方向X)と直交する後面210Rr(第1のY-Z平面)の平面図、
図6(B)は厚み方向Xの断面図である。
図6(B)に示すように、本実施形態において、第1部分210は、突起構造を有している。第1部分210は、平板状のベース部216と、ベース部216から配列方向Xに突き出た複数の突起部213と、を含んで構成されている。第1部分210を突起構造とすることで、上記したような弾性率の範囲を満たしやすくなり、充放電サイクル後も弾性機能を安定して発揮できる。
【0038】
ベース部216は、
図6(A)、(B)からわかるように、第1部分210の前面(第2のY-Z平面)に沿って広がっている。ベース部216は、ここでは空隙を有しない部分である。ベース部216は、非多孔質な(中実構造の)部分である。
図6(B)に示すように、ベース部216は、ここでは第2部分220と対向する側の面(
図6(B)の前面)に設けられている。ただし、他の実施形態において、ベース部216は、角形二次電池100の長側壁12bと対向する側の面に設けられていてもよい。ベース部216からは、厚み方向X(配列方向X)に沿って複数の突起部213が突き出ている。ベース部216を有することで、第2部分220との位置合わせが容易になり、スペーサ200を一体化する際の生産性や作業性を向上できる。ベース部216の厚み(配列方向Xの長さ)は、0.1mm以上が好ましく、0.3mm以上がより好ましい。ベース部216の厚みは、5mm以下が好ましく、2mm以下がより好ましい。
【0039】
ベース部216の高さ(上下方向Zの長さ)および/または幅(長辺方向Yの長さ)は、角形二次電池100の長側壁12bの高さおよび/または幅と略一致していることが好ましい。これにより、角形二次電池100との位置合わせが容易になり、組電池500の生産性や作業性を向上できる。
【0040】
複数の突起部213は、ベース部216と一体に設けられている。複数の突起部213は、ここではサイズ・形状等が同一である。突起部213は、Y-Z平面に規則的に配置されている。Y-Z平面において、突起部213の間には間隙211が確保されている。突起部213は、ここでは、ベース部216から角形二次電池100の長側壁12bに向かって延びている。突起部213は、ここでは外形が円錐台形状である。突起部213の厚み方向X(配列方向X)の断面形状は、
図6(B)に示すように、台形形状であることが好ましい。これにより、充放電サイクルに伴って突起が倒れて弾性機能が低下することを抑制できる。なお、突起部213は、ここでは非多孔質(中実構造)であるが、内部に空洞(中空)の部分を有していてもよい。
【0041】
図6(B)に示すように、突起部213は、厚み方向X(配列方向X)の先端部分に、角形二次電池100と直接接触(当接)する接触領域CAを有する。
図6(A)に示すように、各突起部213の接触領域CAは、ここでは平面視で円形状である。特に限定されるものではないが、第1部分210の材質がEPDMやシリコーンゴムである場合、1つの突起部213の接触領域CAの面積Sは、1.5mm
2以上が好ましく、さらには3mm
2以上がより好ましい。また、1つの突起部213の接触領域CAの面積Sは100mm
2以下が好ましい。複数の突起部213の面積Sの合計(総面積)は、第1部分210の単位面積(25cm
2)あたり、1.2~18cm
2/25cm
2が好ましく、1.5~15cm
2/25cm
2がより好ましい。面積Sを所定値以上とすることで、弾性機能が低下を抑制できる。面積Sを所定値以下とすることで、第1部分210の弾性率を上記範囲に調整しやすくなる。第1部分210は、例えば後述する第2実施形態にも記載するように、配列方向Xに沿って延びる複数の中空部を有していてもよい。
【0042】
第1部分210は、第2部分220に比べて、耐熱性が低い部分でありうる。第1部分210は、例えばJIS K 6380(2014年)に基づく耐熱性の区分(
図7参照)が、E以下(すなわち、A~Eのいずれか)であり得、例えばD以下(すなわち、A~Dのいずれか)であり得る。
図7に示すように、JIS K 6380(2014年)において、耐熱性は、A~Kの区分に分けられている。Aは耐熱性が最も低く、Kは耐熱性が最も高い。特に、第1部分210の耐熱性の区分が、C以下(上限の試験温度が125℃以下)、B以下(上限の試験温度が100℃以下)の場合、第2部分220を設けることが好ましく、ここに開示される技術の効果が高いレベルで発揮される。
【0043】
第2部分220は、配列方向Xにおいて、第1部分210と角形二次電池100との間に介在される。第1部分210の耐熱性が低い場合、第2部分220を設けることで、充放電時等に角形二次電池100が発熱しても、第1部分210が発熱の影響を受けにくくなる。よって、第1部分210の熱劣化を抑制できる。また、角形二次電池100の温度が上昇しても、その熱が隣接する角形二次電池100に伝わることを抑制できる。
【0044】
図4に示すように、第2部分220は、多孔質部222を含んでいる。これにより、充放電時に角形二次電池100が膨張収縮した際にも、角形二次電池100を所定の拘束荷重で安定的に押圧でき、性能維持に必要な荷重を安定して付与することができる。第2部分220は、ここでは多孔質部222から構成されている。ただし、第2部分220は、多孔質部222以外の部分(例えば、非多孔質な充填部等)を含んでいてもよい。
【0045】
多孔質部222は、ランダムに配置された多数の小さな孔を有する多孔質状(スポンジ状)である。この点が、例えば後述する第2実施形態に記載するような孔構造、すなわち、所定の方向に沿って規則的に配列された複数の中空部を有する構造(例えばハニカム構造)、とは異なっている。多孔質部222は、例えば、直径が2mm以下である孔を、単位体積(12,500mm3)当たり100個以上含むことが好ましい。孔同士は、完全に独立していてもよく一部で連通していてもよいし、例えば3次元網目状に連通していてもよい。
【0046】
本実施形態において、多孔質部222は、所定の耐熱性および弾性を有する材料を主体として構成されている。すなわち、多孔質部222は、(1)JIS K 6380(2014年)に基づく耐熱性の区分(
図7参照)が、E以上である;(2)弾性率が、0.02MPa以上0.9MPa以下である;をいずれも満たす材料を主体として構成されている。これにより、第2部分220内に空気を包含して、耐熱性と膨化吸収性とを兼ね備えることができる。なお、本明細書において「主体」とは、多孔質部222の全体を100質量%としたときに、50質量%以上を占めることをいう。好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上を占めることをいう。以下では、上記(1)、(2)を満たし、50質量%以上を占める材料を「主体材料」ということがある。
【0047】
上記した通り、JIS K 6380(2014年)において、耐熱性は、A~Kの区分に分けられている。Aは耐熱性が最も低く、Kは耐熱性が最も高い。
図7に示すように、耐熱性の区分がE以上であることは、促進老化試験A法AA-2強制循環形熱老化試験機(横風式)を用いて連続72時間熱老化させたとき、下記の(a)~(c)の規定:(a)JIS K 6251に基づく「引張強さ変化率」が、±30%以内;(b)JIS K 6251に基づく「切断時伸び変化率」が、-50%以内;(c)JIS K 6253-2,3に基づく「硬さ変化」が、±15以内;を満足する上限の試験温度が、175℃以上であることを意味している。
【0048】
主体材料の耐熱性の区分をE以上とすることで、第2部分220に高い断熱性を付与でき、例えば角形二次電池100が高容量で発熱性が高い場合であっても、隣接する角形二次電池100に熱が伝わることを抑制できる。また、高温に曝されたときも焼失しにくいため、形状を保持しやすい。したがって、角形二次電池100の連鎖的な発熱を抑えられ、組電池500全体が過度な高温になることを防止できる。上記観点から、耐熱性の区分は、F以上(上限の試験温度が、200℃以上)、さらにはG以上(上限の試験温度が、225℃以上)であることがより好ましい。主体材料の耐熱性の区分は、第1部分210の耐熱性の区分よりもアルファベットが大きい(Kに近い)ことが好ましい。
【0049】
また、主体材料の弾性率が、上記範囲を満たすことで、角形二次電池100が高容量で膨化しやすい場合であっても、適切に膨化を吸収でき、角形二次電池100の正負極間の極間距離が開いて性能劣化(例えばLi析出)することを抑制できる。上記観点から、主体材料の弾性率は、0.5MPa以下が好ましく、0.3MPa以下がより好ましく、0.2MPa以下が特に好ましい。主体材料の弾性率は、第1部分210の弾性率よりも低いことが好ましい。言い換えれば、主体材料(ないし主体材料を含む多孔質部222)は、第1部分210よりも柔らかく、厚み方向Xに弾性変形容易であることが好ましい。なお、主体材料の弾性率は、例えば、後述する材質や構造、空隙率等によって調整できる。
【0050】
主体材料は、上述の弾性率を求めるための圧縮試験後に、2時間静置して、マイクロメータで厚みを測定したときに、2時間静置後の厚みが、初期厚みの-20%以内であることがより好ましい。これにより、充放電サイクルに伴って、角形二次電池100が収縮と膨張とを繰り返す場合に、第2部分220を形状復帰させやすくなる。また、角形二次電池100の膨化を吸収しやすくなる。
【0051】
主体材料は、800℃以上で加熱しても形状が残る材質であることが好ましい。主体材料は、シリコーンゴムやフッ素ゴム等のゴム類であることが好ましい。なかでもシリコーンゴムであることが好ましい。多孔質部222(ここでは、第2部分220と同じ。)は、ゴム製であることが好ましい。多孔質部222は、シリコーンゴムを含むことが好ましい。多孔質部222は、シリコーンゴムが全体の50質量%以上を占めることが好ましく、70質量%以上を占めることがより好ましく、80質量%以上を占めることがさらに好ましく、シリコーンゴムからなる(95質量%以上を占める)ことが特に好ましい。多孔質部222は、他の樹脂材料(例えば、第1部分210の構成材料として例示したような高分子材料)や、無機フィラー(例えば、アルミナ等のセラミック)、各種添加剤等を含んでいてもよい。
【0052】
多孔質部222は、市販品を購入してもよく、従来公知の方法で作製することもできる。シリコーンゴムフォーム(シリコーンスポンジ)は、例えば、シリコーン材料中に化学発泡剤を分散させた状態で加熱することにより、化学発泡剤を熱によって分解させ、分解時に発生したガスで3次元網目状に連通する孔(連続気泡)を形成することによって、作製できる。
【0053】
多孔質部222の空隙率は、20体積%以上が好ましく、25体積%以上がより好ましく、50体積%以上が特に好ましい。これにより、スペーサ200の膨化吸収性を向上できる。また、耐久性の観点から、多孔質部222の空隙率は、95体積%以下、90体積%以下であってもよい。なお、本明細書において「空隙率」とは、水銀ポロシメータの測定によって得られた全細孔容積(cm3)を見かけの体積(cm3)で除して100を掛けた値をいう。
【0054】
好適な一態様では、例えばスペーサ200が組電池500に組み付けられて圧縮された際、第1部分210の一部が、第2部分220内に配置されている。一例において、第1部分210は、1つまたは複数の凸部を有し、第2部分220は、かかる凸部に対応する凹部を有し、第1部分210の凸部が、第2部分220の凹部内に配置されている。より具体的には、例えば、第1部分210の突起部213の一部(第2部分220の近傍部分)が、第2部分220に食い込んでいる。あるいは、他の一例において、上記とは逆に、第2部分220が、1つまたは複数の凸部を有し、第1部分210が、かかる凸部に対応する凹部を有し、第2部分220の凸部が、第1部分210の凹部内に配置されている。より具体的には、例えば、第2部分220の凸部が、第1部分210の突起部213の間(間隙211の部分)に突き刺さっている。これにより、第1部分210と第2部分220との一体性を向上して、積層ズレ防止できる。また、第1部分210と第2部分220とが厚み方向Xに一部重なることで、スペーサ200を薄くすることができ、組電池500の体積エネルギー密度を向上できる。
【0055】
組電池500は各種用途に利用可能であるが、特に高容量が必要となる用途、例えば、乗用車、トラック等の車両に搭載されるモータ用の動力源(駆動用電源)として、好適に用いることができる。車両の種類は特に限定されないが、例えば、プラグインハイブリッド自動車(PHEV;Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、ハイブリッド自動車(HEV;Hybrid Electric Vehicle)、電気自動車(BEV;Battery Electric Vehicle)等が挙げられる。
【0056】
<第2実施形態>
図8(A)、(B)は、弾性部210aの模式図であり、
図8(A)は、厚み方向X(配列方向X)と直交する面(第1のY-Z平面)の平面図、
図8(B)は、
図7(A)のVIIIB-VIIIB線に沿う縦断面図である。第2実施形態は、スペーサが、第1部分210にかえて第1部分210aを含むこと以外、上記した第1実施形態と同様である。第1部分210aは、第1実施形態の第1部分210と同様、外形が平板状である。
図8(A)に示すように、本実施形態の第1部分210aは、孔構造を有している。第1部分210aを孔構造とすることによっても、上記したような弾性率の範囲を満たしやすくなり、充放電サイクル後も弾性機能を安定して発揮できる。また、複数の中空部212が厚み方向X(配列方向X)に沿って延びていることで、例えば複数の中空部212が配列方向Xに対して垂直に延びている場合に比べて、相対的にその構造を安定的に維持でき、弾性機能の低下を抑制できる。
【0057】
第1部分210aは、厚み方向X(配列方向X)に沿って延びる隔壁(リブ)214と、隔壁214によって区画され、厚み方向X(配列方向X)に規則的に配列された複数の中空部212と、を含んで構成されている。第1部分210aは、ここではさらにベース部216aを含んでいる。ベース部216aの性状等は、第1実施形態のベース部216と同様であってよい。ただし、ベース部216aは必須でなく、他の実施形態において省略することもできる。
【0058】
隔壁214は、第1部分210aの骨格を構成している。
図8(A)に示すように、隔壁214は、後面(第1のY-Z平面)に、規則的に設けられている。隔壁214は、厚み方向X(配列方向X)に沿って(
図8(A)の手前側から奥側に)延びている。隔壁214は、複数の中空部212を仕切っている。
【0059】
複数の中空部212は、隔壁214によって区画され、厚み方向X(配列方向X)に沿って規則的に配列されている。複数の中空部212は、ここでは相互に独立している。これらの点が、3次元網目状に連通する空隙を有する多孔質状(スポンジ状)とは異なっている。特に制限されないが、1つの中空部212の大きさ(体積)は、1mm3以上であるとよい。中空部212のY-Z平面視の形状は、ここでは六角形状である。すなわち、中空部212は、厚み方向Xに沿って六角柱形状を有している。
【0060】
図8(B)に示すように、中空部212は、ここでは厚み方向X(配列方向X)の一方の端部(
図8(B)の前側の端部)が閉塞されている。ここでは、中空部212の第2部分220と対向する側の面がベース部216aによって閉塞されている。ベース部216aの厚み(配列方向Xの長さ)はY-Z平面内で均一でなくてもよく、部分的に厚いもしくは薄い部分が存在してもよい。ベース部216aのY-Z平面における面積は隔壁214が存在するY-Z平面における面積以上であってもよい。
【0061】
第1部分210aは、厚み方向Xの断面視において、櫛歯状である。このように中空部212の一方の端部を閉塞することで、第2部分220との一体化が容易となり、作業性を向上できる。一方、
図8(A)に示すように、中空部212は、厚み方向X(配列方向X)の他方の端部(後側の端部)が解放されている。ここでは、角形二次電池100の長側壁12bと対向する側の面が解放されている。第1部分210aは、非貫通孔構造を有する。ただし、ベース部216aを含む、含まないに関わらず、中空部212は、厚み方向X(配列方向X)の両方の端部が解放(開口)された貫通孔であってもよい。中空部212は、多角柱貫通孔構造(より具体的には、六角柱貫通孔構造)であってもよいし、円形貫通孔構造であってもよい。なお、本明細書において「孔構造」とは、厚み方向X(配列方向X)に沿って規則的に配列された複数の中空部212を有する構造体全般をいう。
【0062】
第1部分210aは、ここではハニカム構造を有する。これにより、充放電サイクルを繰り返しても中空部212を維持しやすくなり、充放電サイクル後も弾性機能を安定して発揮できる。なお、本明細書において「ハニカム構造」とは、「孔構造」に包含される構造であって、中空部212のY-Z平面視の形状が六角形状の場合に限定されず、立体図形を隙間なく並べた3次元空間充填全般をいう。
【0063】
厚み方向X(配列方向X)と直交する面(Y-Z平面)において、第1部分210aの全体面積に占める複数の中空部212の合計面積の割合は、0.25以上であることが好ましく、0.35~0.8であることがより好ましい。上記割合を所定値以上とすることにより、角形二次電池100が膨化したときに潰れやすくなり、角形二次電池100の膨化を吸収しやすくなる。上記割合を所定値以下とすることで、中空部212を安定して維持することができ、第1部分210の耐久性を向上できる。
【0064】
なお、本実施形態において、上記した「複数の突起部213の面積Sの合計(総面積)」は、「隔壁214全体の接触領域の総面積S」と読み換えることができる。
【0065】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に限定することを意図したものではない。
【0066】
<組電池の作製1> まず、複数のリチウムイオン二次電池を用意した。次に、第1部分と第2部分とを含むスペーサ(例1~7、比較例1~3)、および第2部分のみからなるスペーサ(比較例4)を用意した。なお、例1~7、比較例1~3において、第1部分と第2部分の厚みは、それぞれ、リチウムイオン二次電池の厚みを1としたときに、0.075倍の厚み(リチウムイオン二次電池の厚みの7.5%)とした。
【0067】
例1~7、比較例1~3のスペーサの第1部分は、表1に示す材質からなり、表1に示す形状を有している。例1~7、比較例1~3のスペーサの第1部分は、それぞれ、表1に示す弾性率を有している。例えば例1~5,7および比較例1~3のスペーサの第1部分は、EPDMで構成され、平板状かつ非多孔質(中実構造)のベース部と、ベース部から厚み方向に延びる複数の突起部と、を含んだ突起構造を有している。例6のスペーサの第1部分は、シリコーンゴムで構成され、かつ厚み方向に沿って延びる隔壁と、隔壁によって区画され、厚み方向に規則的に配列された複数の中空部と、を含んだハニカム構造を有している。
【0068】
例1~7、比較例1~4のスペーサの第2部分は、表1に示す材質からなっている。例1~7、比較例1~4のスペーサの第2部分は、表1に示す空隙率、耐熱性区分、弾性率を有する材料で構成されている。例1~7、比較例2,4のスペーサの第2部分は、多孔質部からなっている。例1~6、比較例4のスペーサの第2部分は、多孔質な平板状のシリコーンゴムフォームからなっている。比較例1のスペーサの第2部分は、非多孔質(中実構造)な平板状のシリコーンゴムからなっている。
【0069】
<組電池の作製2> 次に、リチウムイオン二次電池とスペーサを一対の拘束治具で配列方向に挟み込み、スペーサの厚みが拘束前の80%になるように拘束して、試験電池を作製した。そして、一対の拘束治具の間の距離(初期厚み)を測定した。
【0070】
<サイクル試験> 40℃の温度環境下で、二次電池のSOC(State of Charge)を15%に調整し、0.2Cの充電レートでSOC95%まで定電流定電圧充電をした後、5分間休止し、次いで0.5Cの放電レートでSOC15%まで定電流定電圧放電をした後、90分間休止する充放電を1サイクルとして、これを200サイクル繰り返した。
【0071】
<組電池の厚み変化の評価> サイクル試験後に、再び一対の拘束治具の間の距離(サイクル後厚み)を測定し、初期厚みと比較した。結果を表1に示す。なお、表1では、サイクル後厚みが、初期厚みの1.03倍以内の場合に「◎」、初期厚みの1.03倍を超えて1.05倍以内の場合に「〇」、初期厚みの1.05倍を超えた場合に「×」と示している。なお、上記数値は、1に近いほどスペーサを含む試験電池の膨化が抑えられたことを表している。
【0072】
<Li析出の発生有無の判定> サイクル試験後のリチウムイオン二次電池を解体して、電極体の負極およびセパレータについて、目視でLi析出の発生有無を確認した。結果を表1に示す。
【0073】
<耐類焼性の判定> 組電池において配列方向の中心に位置するリチウムイオン二次電池を局所加熱にて強制的に熱暴走させ、隣接するリチウムイオン二次電池の類焼時間を測定した。結果を表1に示す。なお、表1では、20分以上類焼しなかった(具体的には、発煙および発火が認められなかった)場合に「〇」、20分未満で類焼した(具体的には、発煙および/または発火が認められた)場合に「×」と示している。
【0074】
【0075】
表1に示すように、比較例3,4では、サイクル後厚みが相対的に大きかった。この理由として、比較例3は、スペーサの第2部分の弾性率が15MPaと高かったために、二次電池の膨化を吸収できなかったことが考えられる。また、比較例4は、スペーサが所定の弾性率の第1部分を含まなかったために、二次電池の膨化を吸収できなかったと考えられる。
【0076】
また、表1に示すように、比較例4では、サイクル試験後にLi析出が認められた。この理由としては、スペーサが所定の弾性率の第1部分を含まなかったために、二次電池にかかる荷重が不足し、正負極間の極間距離が増加して、充放電反応が不均一化したことが考えられる。
【0077】
また、表1に示すように、比較例1,2では、相対的に耐類焼性が低かった。この理由として、比較例1は、スペーサの第2部分が多孔質でなかったために、隣接する二次電池に熱が伝わりやすかったことが考えられる。また、比較例2は、スペーサの第2部分の耐熱性区分がBであり、耐熱性が不足していたために、隣接する二次電池に熱が伝わりやすかったことが考えられる。
【0078】
これら比較例に対して、実施例1~7では、サイクル後厚みが相対的に小さく抑えられ、かつLi析出も認められなかった。さらに、耐類焼性も相対的に高かった。この理由としては、スペーサの第1部分が所定の弾性率を満たし、かつ、第2部分が多孔質部を含み、多孔質部が所定の弾性率と耐熱性区分とを満たす材料で構成されていることで、スペーサに耐熱性と膨化吸収性とを付与できたことが考えられる。詳しくは、第2部分が多孔質部を有しない場合や、多孔質部が上記耐熱性の区分を満たさない場合に比べて、相対的に隣接する二次電池に熱が伝わることを抑制でき、また、第2部分が上記弾性率を満たさない場合に比べて、相対的に充放電サイクル後に二次電池の膨化を好適に吸収できたことが考えられる。これらの結果は、ここに開示される技術の意義を示すものである。
【0079】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、上記実施形態は一例に過ぎない。本発明は、他にも種々の形態にて実施することができる。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。請求の範囲に記載の技術には、上記に例示した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上記した実施形態の一部を以下のような変形例に置き換えることも可能であり、上記した実施形態に他の変形例を追加することも可能である。また、その技術的特徴が必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することも可能である。
【0080】
(1)例えば、上記した第1ないし第2実施形態において、第1部分210と第2部分220は、それぞれ外形が平板状であり、厚み方向X(配列方向X)と直交する面(Y-Z平面)の面積が略同じであった。しかしこれには限定されない。第1部分210と第2部分220とは、Y-Z平面の面積が相互に異なっていてもよい。変形例において、第1部分210のY-Z平面の面積は、第2部分220のY-Z平面の面積よりも小さいことが好ましい。第2部分220の面積が大きいと、角形二次電池100の発熱の影響を一層低減でき、第1部分210の熱劣化を高いレベルで抑制できる。
【0081】
(2)例えば、上記した第1実施形態において、第1部分210は突起構造を有していた。複数の突起部213は、外形が円錐台形状であり、各突起部213の接触領域CAは、平面視で円形状であった。しかしこれには限定されない。突起部213の外形は、円柱状や、多角柱状(三角柱状、四角柱状等)等であってもよい。接触領域CAは、平面視で円形状や多角形状等(三角形状、四角形状等)であってもよい。
【0082】
(3)例えば、上記した第2実施形態において、第1部分210aの複数の中空部212は、相互に独立していた。しかしこれには限定されない。複数の中空部212は、隔壁214を貫通する孔部によって連通されていてもよい。言い換えれば、第1部分210aは、複数の中空部212を連通する孔部を有していてもよい。このような態様によれば、複数の中空部212内の空気の出入りがスムーズになり、所謂、吸盤効果による弾性機能の低下を抑制できる。
【0083】
(4)例えば、上記した第2実施形態において、第1部分210aはハニカム構造を有し、第1部分210に含まれる複数の中空部212は、Y-Z平面視での形状が六角形状であった。しかしこれには限定されない。中空部212は、ハニカム構造を有していなくてもよい。中空部212は、ランダムに配置されていてもよい。また、中空部212のY-Z平面視での形状は、六角形状以外の形状、例えば、円形状、三角形状、四角形状等であってもよい。また中空部212は、厚み方向X(配列方向X)の空間の途中が区切られていてもよい。
【0084】
以上の通り、ここで開示される技術の具体的な態様として、以下の各項に記載のものが挙げられる。
項1:所定の配列方向に沿って配置された複数の角形二次電池と、上記配列方向において隣り合う上記角形二次電池の間に配置されたスペーサと、を備える組電池であって、上記スペーサは、上記配列方向に積層された第1部分と第2部分とを含み、上記第1部分は、弾性率が、1MPa以上10MPa以下であり、上記第2部分は、多孔質部を含み、上記多孔質部は、次の条件:1)JIS K 6380(2014年)に基づく耐熱性の区分が、E以上である;(2)上記弾性率が、0.02MPa以上0.9MPa以下である;をいずれも満たす材料が、全体の50質量%以上を占めており、ここで、上記弾性率とは、圧縮速度12kPa/分で、上記配列方向に圧縮荷重が3.9MPaとなるまで圧縮して作成した、圧縮荷重-圧縮率曲線(横軸:圧縮率、縦軸:圧縮荷重)から、圧縮率1~20%の範囲における近似直線の傾きとして求められる値をいう、組電池。
項2:上記多孔質部は、シリコーンゴムが、全体の50質量%以上を占めている、項1に記載の組電池。
項3:上記多孔質部を構成する上記材料の上記弾性率が、0.02MPa以上0.2MPa以下である、項1または項2に記載の組電池。
項4:上記多孔質部の空隙率が、25体積%以上である、項1から項3のいずれか1つに記載の組電池。
項5:上記多孔質部の空隙率が、50体積%以上である、項1から項4のいずれか1つに記載の組電池。
項6:上記第1部分の上記配列方向と直交する面の面積が、上記第2部分の上記配列方向と直交する面の面積以下である、項1から項5のいずれか1つに記載の組電池。
項7:上記第1部分の一部が上記第2部分内に配置されている、項1から項6のいずれか1つに記載の組電池。
項8:上記第1部分と上記第2部分とが、まとめ部材によって一体化されている、項1から項7のいずれか1つに記載の組電池。
【符号の説明】
【0085】
10 電池ケース
20 電極体
100 角形二次電池
200 スペーサ
210、210a 第1部分
212 中空部
213 突起部
214 隔壁
216、216a ベース部
220 第2部分
300 拘束機構
500 組電池