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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010854
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】光ファイバ長尺体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/44 20060101AFI20240118BHJP
   G02B 6/255 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
G02B6/44 301A
G02B6/255
G02B6/44 331
G02B6/44 301B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112401
(22)【出願日】2022-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤本 一成
【テーマコード(参考)】
2H036
2H250
【Fターム(参考)】
2H036KA02
2H036KA04
2H036MA11
2H036PA14
2H250AB02
2H250AC37
2H250BA03
2H250BA06
2H250BA18
2H250BA32
2H250BB02
2H250BB33
2H250BC02
2H250BD13
2H250BD17
2H250BD18
(57)【要約】
【課題】スクリーニングされた同一種の光ファイバ素線を相互に接続してファイバ長手方向に連結した光ファイバ長尺体およびその製造方法を提供する。
【解決手段】同一種の光ファイバ素線の一方と他方との接続部130が、一方の光ファイバ素線110におけるガラスファイバ111と他方の光ファイバ素線120におけるガラスファイバ121とを相互のファイバ端面で突き合わせて融着した融着部分131と、融着部分131を含む周辺部位を紫外線硬化樹脂で被覆した樹脂被覆部分132とから形成され、樹脂被覆部分132のヤング率が、半径方向の内側から外側に向けて大きくなるように構成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリーニングされた同一種の光ファイバ素線を相互に接続してファイバ長手方向に連結した光ファイバ長尺体であって、
前記同一種の光ファイバ素線の一方と他方との接続部が、前記一方の光ファイバ素線におけるガラスファイバと前記他方の光ファイバ素線におけるガラスファイバとを相互のファイバ端面で突き合わせて融着した融着部分と、前記融着部分を含む周辺部位を紫外線硬化樹脂で被覆した樹脂被覆部分とから形成され、
前記樹脂被覆部分のヤング率が、半径方向の内側から外側に向けて大きくなるように構成されている、光ファイバ長尺体。
【請求項2】
前記樹脂被覆部分が、硬化後のヤング率が異なる2以上の紫外線硬化樹脂によって形成されている、請求項1に記載の光ファイバ長尺体。
【請求項3】
前記樹脂被覆部分が、前記ガラスファイバの外周面と接する紫外線硬化樹脂で形成された内層と、前記内層の外周面に接しつつ露出する紫外線硬化樹脂で形成された外層との2層から構成され、
前記内層が、前記外層のヤング率よりも低いヤング率となる紫外線硬化樹脂で形成されている、請求項2に記載の光ファイバ長尺体。
【請求項4】
スクリーニングされた同一種の光ファイバ素線を相互に接続してファイバ長手方向に連結した光ファイバ長尺体の製造方法であって、
前記同一種の光ファイバ素線の一方の既存被覆層と前記同一種の光ファイバ素線の他方の既存被覆層とをそれぞれ除去する既存被覆層除去工程と、
前記既存被覆層が除去された前記一方の光ファイバ素線におけるガラスファイバと前記既存被覆層が除去された前記他方の光ファイバにおけるガラスファイバとを相互のファイバ端面で突き合わせて融着してファイバ長手方向に連結するガラスファイバ融着工程と、
前記一方の光ファイバ素線におけるガラスファイバと前記他方の光ファイバ素線におけるガラスファイバとが融着した融着部分を含む周辺部位を紫外線硬化樹脂で被覆して樹脂被覆部分を形成する再被覆工程とを備え、
前記再被覆工程が、前記融着部分を含む周辺部位に軟質紫外線硬化樹脂を塗布する軟質樹脂塗布ステップと、前記軟質紫外線硬化樹脂に紫外線を照射して前記軟質紫外線硬化樹脂を硬化させて前記ガラスファイバと接する内層を形成する内層形成ステップと、前記内層の外周に前記軟質紫外線硬化樹脂の硬化後のヤング率より硬化後のヤング率が高い硬質紫外線硬化樹脂を塗布する硬質樹脂塗布ステップと、前記硬質紫外線硬化樹脂に紫外線を照射して前記硬質紫外線硬化樹脂を硬化させて前記内層の外周面に接しつつ露出する外層を形成する外層形成ステップとを有している、光ファイバ長尺体の製造方法。
【請求項5】
スクリーニングされた同一種の光ファイバ素線を相互に接続してファイバ長手方向に連結した光ファイバ長尺体の製造方法であって、
前記同一種の光ファイバ素線の一方の既存被覆層と前記同一種の光ファイバ素線の他方の既存被覆層とをそれぞれ除去する既存被覆層除去工程と、
前記既存被覆層が除去された前記一方の光ファイバ素線におけるガラスファイバと前記既存被覆層が除去された前記他方の光ファイバにおけるガラスファイバとを相互のファイバ端面で突き合わせて融着してファイバ長手方向に連結するガラスファイバ融着工程と、
前記一方の光ファイバ素線におけるガラスファイバと前記他方の光ファイバ素線におけるガラスファイバとが融着した融着部分を含む周辺部位を紫外線硬化樹脂で被覆して樹脂被覆部分を形成する再被覆工程とを備え、
前記再被覆工程が、前記融着部分を含む周辺部位に紫外線硬化樹脂を塗布する樹脂塗布ステップと、前記紫外線硬化樹脂に紫外線を照射して前記紫外線硬化樹脂を硬化させて前記ガラスファイバと接する内層を形成する内層形成ステップと、前記内層の外周に前記紫外線硬化樹脂を塗布する樹脂再塗布ステップと、前記内層の外周に塗布された前記紫外線硬化樹脂に紫外線を照射して前記内層の外周に塗布された前記紫外線硬化樹脂を硬化させて前記内層の外周面に接しつつ露出する前記内層よりもヤング率の高い外層を形成する外層形成ステップとを有している、光ファイバ長尺体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2本の光ファイバを接続して1本の光ファイバを製造する光ファイバの製造方法として、被覆層を部分的に除去してガラスファイバを露出させ、露出した2本の光ファイバを融着接続して1本となった光ファイバのファイバ接続部を樹脂にて再被覆(リコート)する光ファイバ接続方法が知られている。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-264848号公報(特に、図2参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した光ファイバ接続方法では、2本が接続された光ファイバのファイバ接続部近傍には被覆層を除去した際の除去粉や除去工具の微粉が付着しているため、これらの粉体によりガラスファイバに細かい傷がつくことがあり、傷のついたガラスファイバに樹脂を単純に被覆すると光ファイバに対してスクリーニングを行った際に光ファイバが破断してしまう虞がある。
【0005】
そこで、本発明は、前述したような従来技術の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、スクリーニングされた同一種の光ファイバ素線を相互に接続してファイバ長手方向に連結した光ファイバ長尺体およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の光ファイバ長尺体は、スクリーニングされた同一種の光ファイバ素線を相互に接続してファイバ長手方向に連結した光ファイバ長尺体であって、前記同一種の光ファイバ素線の一方と他方との接続部が、前記一方の光ファイバ素線におけるガラスファイバと前記他方の光ファイバ素線におけるガラスファイバとを相互のファイバ端面で突き合わせて融着した融着部分と、前記融着部分を含む周辺部位を紫外線硬化樹脂で被覆した樹脂被覆部分とから形成され、前記樹脂被覆部分のヤング率が、半径方向の内側から外側に向けて大きくなるように構成されている。
また、本開示の光ファイバ長尺体の製造方法は、スクリーニングされた同一種の光ファイバ素線を相互に接続してファイバ長手方向に連結した光ファイバ長尺体の製造方法であって、前記同一種の光ファイバ素線の一方の既存被覆層と前記同一種の光ファイバ素線の他方の既存被覆層とをそれぞれ除去する既存被覆層除去工程と、前記既存被覆層が除去された前記一方の光ファイバ素線におけるガラスファイバと前記既存被覆層が除去された前記他方の光ファイバにおけるガラスファイバとを相互のファイバ端面で突き合わせて融着してファイバ長手方向に連結するガラスファイバ融着工程と、前記一方の光ファイバ素線におけるガラスファイバと前記他方の光ファイバ素線におけるガラスファイバとが融着した融着部分を含む周辺部位を紫外線硬化樹脂で被覆して樹脂被覆部分を形成する再被覆工程とを備え、前記再被覆工程が、前記融着部分を含む周辺部位に軟質紫外線硬化樹脂を塗布する軟質樹脂塗布ステップと、前記軟質紫外線硬化樹脂に紫外線を照射して前記軟質紫外線硬化樹脂を硬化させて前記ガラスファイバと接する内層を形成する内層形成ステップと、前記内層の外周に前記軟質紫外線硬化樹脂の硬化後のヤング率より硬化後のヤング率が高い硬質紫外線硬化樹脂を塗布する硬質樹脂塗布ステップと、前記硬質紫外線硬化樹脂に紫外線を照射して前記硬質紫外線硬化樹脂を硬化させて前記内層の外周面に接しつつ露出する外層を形成する外層形成ステップとを有している。
さらに、本開示の光ファイバ長尺体の製造方法は、スクリーニングされた同一種の光ファイバ素線を相互に接続してファイバ長手方向に連結した光ファイバ長尺体の製造方法であって、前記同一種の光ファイバ素線の一方の既存被覆層と前記同一種の光ファイバ素線の他方の既存被覆層とをそれぞれ除去する既存被覆層除去工程と、前記既存被覆層が除去された前記一方の光ファイバ素線におけるガラスファイバと前記既存被覆層が除去された前記他方の光ファイバにおけるガラスファイバとを相互のファイバ端面で突き合わせて融着してファイバ長手方向に連結するガラスファイバ融着工程と、前記一方の光ファイバ素線におけるガラスファイバと前記他方の光ファイバ素線におけるガラスファイバとが融着した融着部分を含む周辺部位を紫外線硬化樹脂で被覆して樹脂被覆部分を形成する再被覆工程とを備え、前記再被覆工程が、前記融着部分を含む周辺部位に紫外線硬化樹脂を塗布する樹脂塗布ステップと、前記紫外線硬化樹脂に紫外線を照射して前記紫外線硬化樹脂を硬化させて前記ガラスファイバと接する内層を形成する内層形成ステップと、前記内層の外周に前記紫外線硬化樹脂を塗布する樹脂再塗布ステップと、前記内層の外周に塗布された前記紫外線硬化樹脂に紫外線を照射して前記内層の外周に塗布された前記紫外線硬化樹脂を硬化させて前記内層の外周面に接しつつ露出する前記内層よりもヤング率の高い外層を形成する外層形成ステップとを有している。
なお、ここでいう「スクリーニング」とは、「光ファイバ素線に一定の張力を与えて光ファイバ素線が破断するか否かの検査」という意味である。
また、「同一種の光ファイバ素線」とは、「ファイバ断面形態およびファイバ特性がほぼ同一の光ファイバ素線」という意味であることはいうまでもない。
【発明の効果】
【0007】
上記によれば、スクリーニングされた同一種の光ファイバ素線を相互に接続してファイバ長手方向に連結した光ファイバ長尺体を破断しにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の光ファイバ長尺体の側面図である。
図2図1のII拡大図である。
図3図2のIII-III断面における光ファイバ長尺体の断面図である。
図4】本開示の光ファイバ長尺体の製造方法の第1実施形態を示すフローチャートである。
図5図4に示す再被覆工程を示すフローチャートである。
図6A図4に示す既存被覆層除去工程を説明する図である。
図6B図4に示すガラスファイバ融着工程を説明する図である。
図6C図4に示すガラスファイバ融着工程により製造された光ファイバ長尺体の側面図である。
図6D図5に示す軟質樹脂塗布ステップを説明する図である。
図6E図5に示す内層形成ステップにより内層が形成された状態の光ファイバ長尺体の側面図である。
図6F図5に示す硬質樹脂塗布ステップを説明する図である。
図6G】本開示の第1実施形態により製造された光ファイバ長尺体の側面図である。
図7】本開示の光ファイバ長尺体の製造方法の第2実施形態を示すフローチャートである。
図8図7に示す再被覆工程を示すフローチャートである。
図9A図8に示す樹脂塗布ステップを説明する図である。
図9B図8に示す内層形成ステップにより内層が形成された状態の光ファイバ長尺体の側面図である。
図9C図8に示す樹脂再塗布ステップを説明する図である。
図9D】本開示の第2実施形態により製造された光ファイバ長尺体の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様の内容を列記して説明する。
本開示の光ファイバ長尺体は、(1)スクリーニングされた同一種の光ファイバ素線を相互に接続してファイバ長手方向に連結した光ファイバ長尺体であって、前記同一種の光ファイバ素線の一方と他方との接続部が、前記一方の光ファイバ素線におけるガラスファイバと前記他方の光ファイバ素線におけるガラスファイバとを相互のファイバ端面で突き合わせて融着した融着部分と、前記融着部分を含む周辺部位を紫外線硬化樹脂で被覆した樹脂被覆部分とから形成され、前記樹脂被覆部分のヤング率が、半径方向の内側から外側に向けて大きくなるように構成されている。
このように樹脂被覆部分のヤング率が、半径方向の内側から外側に向けて大きくなるように構成されていることにより、樹脂被覆部分のガラスファイバと接触する領域が柔らかくなって光ファイバ長尺体に加わった側圧によりガラスファイバに加わる応力が低減されるため、ガラスファイバに傷がつきにくくなり、スクリーニングを行った際に光ファイバ長尺体を破断しにくくすることができる。
【0010】
上記の光ファイバ長尺体において、(2)前記樹脂被覆部分が、硬化後のヤング率が異なる2以上の紫外線硬化樹脂によって形成されている。
これにより、紫外線硬化樹脂を硬化させる紫外線の照射条件を変更せずに樹脂被覆部分のヤング率を半径方向の内側から外側に向けて大きくすることが可能となるため、紫外線硬化樹脂を硬化させる条件を変えることなく、スクリーニングを行った際に光ファイバ長尺体を破断しにくくすることができる。
【0011】
上記の光ファイバ長尺体において、(3)前記樹脂被覆部分が、前記ガラスファイバの外周面と接する紫外線硬化樹脂で形成された内層と、前記内層の外周面に接しつつ露出する紫外線硬化樹脂で形成された外層との2層から構成され、前記内層が、前記外層のヤング率よりも低いヤング率となる紫外線硬化樹脂で形成されている。
これにより、硬化後のヤング率が異なる2種類の紫外線硬化樹脂を用意するだけ樹脂被覆部分のヤング率が半径方向の内側から外側に向けて大きくなるため、簡単な被覆構造でスクリーニングを行った際に光ファイバ長尺体を破断しにくくすることができる。
【0012】
本開示の光ファイバ長尺体の製造方法は、(4)スクリーニングされた同一種の光ファイバ素線を相互に接続してファイバ長手方向に連結した光ファイバ長尺体の製造方法であって、前記同一種の光ファイバ素線の一方の既存被覆層と前記同一種の光ファイバ素線の他方の既存被覆層とをそれぞれ除去する既存被覆層除去工程と、前記既存被覆層が除去された前記一方の光ファイバ素線におけるガラスファイバと前記既存被覆層が除去された前記他方の光ファイバにおけるガラスファイバとを相互のファイバ端面で突き合わせて融着してファイバ長手方向に連結するガラスファイバ融着工程と、前記一方の光ファイバ素線におけるガラスファイバと前記他方の光ファイバ素線におけるガラスファイバとが融着した融着部分を含む周辺部位を紫外線硬化樹脂で被覆して樹脂被覆部分を形成する再被覆工程とを備え、前記再被覆工程が、前記融着部分を含む周辺部位に軟質紫外線硬化樹脂を塗布する軟質樹脂塗布ステップと、前記軟質紫外線硬化樹脂に紫外線を照射して前記軟質紫外線硬化樹脂を硬化させて前記ガラスファイバと接する内層を形成する内層形成ステップと、前記内層の外周に前記軟質紫外線硬化樹脂の硬化後のヤング率より硬化後のヤング率が高い硬質紫外線硬化樹脂を塗布する硬質樹脂塗布ステップと、前記硬質紫外線硬化樹脂に紫外線を照射して前記硬質紫外線硬化樹脂を硬化させて前記内層の外周面に接しつつ露出する外層を形成する外層形成ステップとを有している。
このように再被覆工程が、融着部分を含む周辺部位に軟質紫外線硬化樹脂を塗布する軟質樹脂塗布ステップと、軟質紫外線硬化樹脂に紫外線を照射して軟質紫外線硬化樹脂を硬化させてガラスファイバと接する内層を形成する内層形成ステップと、内層の外周に軟質紫外線硬化樹脂の硬化後のヤング率より硬化後のヤング率が高い硬質紫外線硬化樹脂を塗布する硬質樹脂塗布ステップと、硬質紫外線硬化樹脂に紫外線を照射して硬質紫外線硬化樹脂を硬化させて内層の外周面に接しつつ露出する外層を形成する外層形成ステップとを有していることにより、樹脂被覆部分のガラスファイバと接触する領域が柔らかくなって光ファイバ長尺体に加わった側圧によりガラスファイバに加わる応力が低減されるため、ガラスファイバに傷がつきにくくなり、スクリーニングを行った際に光ファイバ長尺体を破断しにくくすることができる。
【0013】
本開示の光ファイバ長尺体の製造方法は、(5)スクリーニングされた同一種の光ファイバ素線を相互に接続してファイバ長手方向に連結した光ファイバ長尺体の製造方法であって、前記同一種の光ファイバ素線の一方の既存被覆層と前記同一種の光ファイバ素線の他方の既存被覆層とをそれぞれ除去する既存被覆層除去工程と、前記既存被覆層が除去された前記一方の光ファイバ素線におけるガラスファイバと前記既存被覆層が除去された前記他方の光ファイバにおけるガラスファイバとを相互のファイバ端面で突き合わせて融着してファイバ長手方向に連結するガラスファイバ融着工程と、前記一方の光ファイバ素線におけるガラスファイバと前記他方の光ファイバ素線におけるガラスファイバとが融着した融着部分を含む周辺部位を紫外線硬化樹脂で被覆して樹脂被覆部分を形成する再被覆工程とを備え、前記再被覆工程が、前記融着部分を含む周辺部位に紫外線硬化樹脂を塗布する樹脂塗布ステップと、前記紫外線硬化樹脂に紫外線を照射して前記紫外線硬化樹脂を硬化させて前記ガラスファイバと接する内層を形成する内層形成ステップと、前記内層の外周に前記紫外線硬化樹脂を塗布する樹脂再塗布ステップと、前記内層の外周に塗布された前記紫外線硬化樹脂に紫外線を照射して前記内層の外周に塗布された前記紫外線硬化樹脂を硬化させて前記内層の外周面に接しつつ露出する前記内層よりもヤング率の高い外層を形成する外層形成ステップとを有している。
このように再被覆工程が、融着部分を含む周辺部位に紫外線硬化樹脂を塗布する樹脂塗布ステップと、紫外線硬化樹脂に紫外線を照射して紫外線硬化樹脂を硬化させてガラスファイバと接する内層を形成する内層形成ステップと、内層の外周に紫外線硬化樹脂を塗布する樹脂再塗布ステップと、内層の外周に塗布された紫外線硬化樹脂に紫外線を照射して内層の外周に塗布された紫外線硬化樹脂を硬化させて内層の外周面に接しつつ露出する内層よりもヤング率の高い外層を形成する外層形成ステップとを有していることにより、樹脂被覆部分のガラスファイバと接触する領域が柔らかくなって光ファイバ長尺体に加わった側圧によりガラスファイバに加わる応力が低減されるため、ガラスファイバに傷がつきにくくなり、スクリーニングを行った際に光ファイバ長尺体を破断しにくくすることができる。
【0014】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示に係る光ファイバ長尺体およびその製造方法の具体例について説明する。
【0015】
<1.光ファイバ長尺体の構造>
まず、図1から図3に基づき、本開示に係る光ファイバ長尺体の製造方法により製造された本開示に係る光ファイバ長尺体について説明する。
図1は本開示の光ファイバ長尺体の製造方法で製造された光ファイバ長尺体の側面図であり、図2図1のII拡大図であり、図3図2のIII-III断面における光ファイバ長尺体の断面図である。
【0016】
本開示に係る光ファイバ長尺体100は、図1に示すように、スクリーニング済の第1の光ファイバ素線(一方の光ファイバ素線)110とスクリーニング済の第2の光ファイバ素線(他方の光ファイバ素線)120とが相互に接続されている。
すなわち、光ファイバ長尺体100は、第1の光ファイバ素線110と第2の光ファイバ素線120とが、ファイバ長手方向に連結されて形成されている。
【0017】
そして、この第1の光ファイバ素線110と第2の光ファイバ素線120との接続部130は、図2に示すように、第1の光ファイバ素線110におけるガラスファイバのファイバ端面と第2の光ファイバ素線120におけるガラスファイバのファイバ端面とを突き合わせて融着した融着部分131と、この融着部分131および融着部分131の周辺部位を紫外線硬化樹脂で被覆した樹脂被覆部分132とから形成されている。
なお、第1の光ファイバ素線110と第2の光ファイバ素線120とは、ファイバ断面形態およびファイバ特性がほぼ同一となっている。
【0018】
樹脂被覆部分132は、図3に示すように、ガラスファイバの外周面と接する紫外線硬化樹脂で形成された内層132aと、この内層132aの外周面に接しつつ露出する紫外線硬化樹脂で形成された外層132bとの2層から構成されている。
なお、図3に示すように、ガラスファイバ(融着部分131)の直径は樹脂被覆部分132の内層132aの厚みDiおよび外層132bの厚みDoより大きく、樹脂被覆部分132の内層132aの厚みDiは外層132bの厚みDoよりも大きくなっている。
【0019】
また、樹脂被覆部分132の外層132bのヤング率は、樹脂被覆部分132の内層132aのヤング率より大きくなっている。
すなわち、樹脂被覆部分132のヤング率は、半径方向の内側から外側に向けて大きくなっている。
なお、樹脂被覆部分132において、外層132bのヤング率は例えば30MPa以上が好ましく、内層132aのヤング率は例えば10MPa以下が好ましい。
【0020】
このように構成される光ファイバ長尺体100は、樹脂被覆部分132のヤング率が、半径方向の内側から外側に向けて大きくなるように構成されていることにより、樹脂被覆部分132のガラスファイバと接触する領域が柔らかくなって光ファイバ長尺体100に加わった側圧によりガラスファイバに加わる応力が低減されるため、ガラスファイバに傷がつきにくくなり、スクリーニングを行った際に光ファイバ長尺体100を破断しにくくすることができる。
また、ガラスファイバと接触する領域を柔らかくする一方で樹脂被覆部分132の表面のヤング率を大きくすることが可能となるため、樹脂被覆部分132の耐外傷性を向上させることができる。
【0021】
そして、内層132aが、外層132bのヤング率よりも低いヤング率となる紫外線硬化樹脂で形成されていることにより、硬化後のヤング率が異なる2種類の紫外線硬化樹脂を用意するだけで樹脂被覆部分132のヤング率が半径方向の内側から外側に向けて大きくなるため、簡単な被覆構造でスクリーニングを行った際に光ファイバ長尺体100を破断しにくくすることができる。
【0022】
<2.光ファイバ長尺体の製造方法の第1実施形態>
次に、上述した光ファイバ長尺体100の製造方法の第1実施形態について、図4から図6Gに基づいて説明する。
図4は本開示の光ファイバ長尺体の製造方法の第1実施形態を示すフローチャートであり、図5図4に示す再被覆工程を示すフローチャートであり、図6A図4に示す既存被覆層除去工程を説明する図であり、図6B図4に示すガラスファイバ融着工程を説明する図であり、図6C図4に示すガラスファイバ融着工程により製造された光ファイバ長尺体の側面図であり、図6D図5に示す軟質樹脂塗布ステップを説明する図であり、図6E図5に示す内層形成ステップにより内層が形成された状態の光ファイバ長尺体の側面図であり、図6F図5に示す硬質樹脂塗布ステップを説明する図であり、図6Gは本開示の第1実施形態により製造された光ファイバ長尺体の側面図である。
【0023】
本開示に係る光ファイバ長尺体の製造方法の第1実施形態は、図4に示すように、既存被覆層除去工程S110と、ガラスファイバ融着工程S120と、再被覆工程S130とを備えている。
【0024】
既存被覆層除去工程S110は、図6Aに示すように、スクリーニング済の第1の光ファイバ素線110の既存被覆層111とスクリーニング済で第1の光ファイバ素線110と同一種の第2の光ファイバ素線120の既存被覆層121とを、被覆除去工具Rによりそれぞれ除去し、有機溶媒下で超音波洗浄を行う。
【0025】
ガラスファイバ融着工程S120は、図6Bに示すように、既存被覆層111が除去された第1の光ファイバ素線110におけるガラスファイバ112と、既存被覆層121が除去された第2の光ファイバ素線120におけるガラスファイバ122とを相互のファイバ端面で突き合わせた状態で融着工具Sにより融着させて、図6Cに示すような第1の光ファイバ素線110と第2の光ファイバ素線120とがファイバ長手方向で連結した光ファイバ長尺体100を製造する。
【0026】
再被覆工程S130は、図6Gに示すような、第1の光ファイバ素線110におけるガラスファイバ112と第2の光ファイバ素線120におけるガラスファイバ122とが融着した光ファイバ長尺体100の融着部分131を含む周辺部位を紫外線硬化樹脂で被覆した樹脂被覆部分132を形成する。
そして、この再被覆工程S130は、図5に示すように、軟質樹脂塗布ステップS131と、内層形成ステップS132と、硬質樹脂塗布ステップS133と、外層形成ステップS134とを有している。
【0027】
再被覆工程S130の軟質樹脂塗布ステップS131は、図6Dに示すように、融着部分131を含む周辺部位に軟質紫外線硬化樹脂SRを塗布する。
【0028】
再被覆工程S130の内層形成ステップS132は、融着部分131を含む周辺部位に塗布された軟質紫外線硬化樹脂SRに紫外線を照射して硬化させてガラスファイバ112、122と接する図6Eに示すような内層132aを形成する。
【0029】
再被覆工程S130の硬質樹脂塗布ステップS133は、図6Fに示すように、内層132aの外周に軟質紫外線硬化樹脂SRの硬化後のヤング率より硬化後のヤング率が高い硬質紫外線硬化樹脂HRを塗布する。
【0030】
再被覆工程S130の外層形成ステップS134は、硬質紫外線硬化樹脂HRに紫外線を照射して硬化させて内層132aの外周面に接しつつ露出する図6Gに示すような外層132bを形成して樹脂被覆部分132を作製する。
なお、外層形成ステップS134における硬質紫外線硬化樹脂HRへの紫外線の照射量は、内層形成ステップS132における軟質紫外線硬化樹脂SRへの紫外線の照射量とほぼ等しくなっている。
【0031】
このように構成される光ファイバの製造方法の第1実施形態によれは、再被覆工程S130が、融着部分131を含む周辺部位に軟質紫外線硬化樹脂SRを塗布する軟質樹脂塗布ステップS131と、軟質紫外線硬化樹脂SRに紫外線を照射して軟質紫外線硬化樹脂SRを硬化させてガラスファイバ112、122と接する内層132aを形成する内層形成ステップS132と、内層132aの外周に軟質紫外線硬化樹脂SRの硬化後のヤング率より硬化後のヤング率が高い硬質紫外線硬化樹脂HRを塗布する硬質樹脂塗布ステップS133と、硬質紫外線硬化樹脂HRに紫外線を照射して硬質紫外線硬化樹脂HRを硬化させて内層132aの外周面に接しつつ露出する外層を形成する外層形成ステップS134とを有していることにより、樹脂被覆部分132のガラスファイバ112、122と接触する領域が柔らかくなって光ファイバ長尺体100に加わった側圧によりガラスファイバ112、122に加わる応力が低減されるため、ガラスファイバ112、122に傷がつきにくくなり、スクリーニングを行った際に光ファイバ長尺体100を破断しにくくすることができる。
【0032】
<3.光ファイバ長尺体の製造方法の第2実施形態>
次に、上述した光ファイバ長尺体100の製造方法の第2実施形態について、図7から図9Dに基づいて説明する。
図7は本開示の光ファイバ長尺体の製造方法の第2実施形態を示すフローチャートであり、図8図7に示す再被覆工程を示すフローチャートであり、図9A図8に示す樹脂塗布ステップを説明する図であり、図9B図8に示す内層形成ステップにより内層が形成された状態の光ファイバ長尺体の側面図であり、図9C図8に示す樹脂再塗布ステップを説明する図であり、図9Dは本開示の第2実施形態により製造された光ファイバ長尺体の側面図である。
【0033】
本開示に係る光ファイバの製造方法の第2実施形態も、第1実施形態の製造方法と同様に、図7に示すような、既存被覆層除去工程S210と、ガラスファイバ融着工程S220と、再被覆工程S230とを備えている。
ここで、既存被覆層除去工程S210およびガラスファイバ融着工程S220は、第1実施形態の製造方法と同様の工程であるため説明を省略する。
【0034】
再被覆工程S230は、図9Dに示すような、第1の光ファイバ素線110におけるガラスファイバ112と第2の光ファイバ素線120におけるガラスファイバ122とが融着した光ファイバ長尺体100の融着部分131を含む周辺部位を紫外線硬化樹脂で被覆した樹脂被覆部分132を形成する。
そして、この再被覆工程S230は、図8に示すように、樹脂塗布ステップS231と、内層形成ステップS232と、樹脂再塗布ステップS233と、外層形成ステップS234とを有している。
【0035】
再被覆工程S230の樹脂塗布ステップS231は、図9Aに示すように、融着部分131を含む周辺部位に紫外線硬化樹脂UVRを塗布する。
【0036】
再被覆工程S230の内層形成ステップS232は、融着部分131を含む周辺部位に塗布された紫外線硬化樹脂UVRに紫外線を照射して硬化させてガラスファイバ112、122と接する図9Bに示すような内層132aを形成する。
【0037】
再被覆工程S230の樹脂再塗布ステップS233は、図9Cに示すように、内層132aの外周に樹脂塗布ステップS231で使用した紫外線硬化樹脂と同じ紫外線硬化樹脂UVRを再度塗布する。
【0038】
再被覆工程S230の外層形成ステップS234は、内層132aの外周に塗布された紫外線硬化樹脂UVRに紫外線を照射して内層132aの外周に塗布された紫外線硬化樹脂UVRを硬化させて内層132aの外周面に接しつつ露出する内層132aよりもヤング率の高い図9Dに示すような外層132bを形成して樹脂被覆部分132を作製する。
なお、外層形成ステップS234における紫外線硬化樹脂UVRへの紫外線の照射量は紫外線の強度を増加する、または照射時間を長くすることなどにより、内層形成ステップS232における紫外線硬化樹脂UVRへの紫外線の照射量よりも大きくなっている。
【0039】
さらに、外層形成ステップS234における紫外線の照射時に内層132aの硬化が進行しないようにするため、例えば、紫外線硬化樹脂UVRは紫外線の透過を抑制する材料(顔料等)を含んでもよい。
または、紫外線光源と光ファイバ長尺体100の接続部130との間に内層132aへの紫外線照射を遮断するマスクを配置し、接続部130の中心軸を中心に光ファイバ長尺体100を回転させながら紫外線を照射してもよい。
【0040】
このように構成される光ファイバの製造方法の第2実施形態によれは、再被覆工程S230が、融着部分131を含む周辺部位に紫外線硬化樹脂UVRを塗布する樹脂塗布ステップS231と、紫外線硬化樹脂UVRに紫外線を照射して紫外線硬化樹脂UVRを硬化させてガラスファイバ112、122と接する内層を形成する内層形成ステップS232と、内層132aの外周に紫外線硬化樹脂UVRを塗布する樹脂再塗布ステップS233と、内層132aの外周に塗布された紫外線硬化樹脂UVRに紫外線を照射して内層132aの外周に塗布された紫外線硬化樹脂UVRを硬化させて内層132aの外周面に接しつつ露出する内層132aよりもヤング率の高い外層を形成する外層形成ステップS234とを有していることにより、樹脂被覆部分132のガラスファイバ112、122と接触する領域が柔らかくなって光ファイバ長尺体100に加わった側圧によりガラスファイバ112、122に加わる応力が低減されるため、ガラスファイバ112、122に傷がつきにくくなり、スクリーニングを行った際に光ファイバ長尺体100を破断しにくくすることができる。
【0041】
[変形例]
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記に限定されるものではない。
また、前述した実施形態が備える各要素は技術的に可能である限り組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【0042】
例えば、上述した光ファイバ長尺体では、樹脂被覆部分が内層と外層との2層から構成されていたが、樹脂被覆部分は、ヤング率が半径方向の内側から外側に向けて大きくなっていれば3層以上で構成されていてもよい。
なお、樹脂被覆部分の各層は、同一の紫外線硬化樹脂で形成されてもよいし、硬化後のヤング率が異なる2以上の紫外線硬化樹脂によって形成されてもよい。
樹脂被覆部分が、硬化後のヤング率が異なる2以上の紫外線硬化樹脂によって形成されていることにより、紫外線硬化樹脂を硬化させる紫外線の照射条件を変更せずに樹脂被覆部分のヤング率を半径方向の内側から外側に向けて大きくすることが可能となるため、紫外線硬化樹脂を硬化させる条件を変えることなく、スクリーニングを行った際に光ファイバ長尺体を破断しにくくすることができる。
【符号の説明】
【0043】
100 ・・・ 光ファイバ長尺体
110 ・・・ 第1の光ファイバ素線(一方のファイバ素線)
111 ・・・ 既存被覆層
112 ・・・ ガラスファイバ
120 ・・・ 第2の光ファイバ素線(他方のファイバ素線)
121 ・・・ 既存被覆層
122 ・・・ ガラスファイバ
130 ・・・ 接続部
131 ・・・ 融着部分
132 ・・・ 樹脂被覆部分
132a・・・ 内層
132b・・・ 外層

Di ・・・ 内層の厚み
Do ・・・ 外層の厚み
R ・・・ 被覆除去工具
S ・・・ 融着工具
SR ・・・ 軟質紫外線硬化樹脂
HR ・・・ 硬質紫外線硬化樹脂
UVR ・・・ 紫外線硬化樹脂
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D