(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108543
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】コオロギの飼育方法、コオロギ用飼料及び機能性コオロギ
(51)【国際特許分類】
A23K 10/22 20160101AFI20240805BHJP
A23K 50/90 20160101ALI20240805BHJP
A23K 10/37 20160101ALI20240805BHJP
A23K 10/32 20160101ALI20240805BHJP
A01K 67/033 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
A23K10/22
A23K50/90
A23K10/37
A23K10/32
A01K67/033 502
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012969
(22)【出願日】2023-01-31
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ウェブサイトの掲載日 令和4年6月9日,ウェブサイトのアドレス http://www.miyabo.co.jp/acricketi/ https://www.miyabo.co.jp/acricketi/about/ http://www.miyabo.co.jp/acricketi/evidence/ https://www.miyabo.co.jp/acricketi/event/ https://acricketi.thebase.in/ 〔刊行物等〕インスタグラムの掲載日 令和4年7月20日,インスタグラムのアドレス https://www.instagram.com/acricketi_official/ 〔刊行物等〕宮崎日日新聞 令和4年9月22日付日刊,第7面 〔刊行物等〕宮崎日日新聞 令和5年1月1日付日刊,第11面 〔刊行物等〕読売新聞 令和5年1月10日付日刊,第23面 〔刊行物等〕納品日 令和4年7月7日,宮崎県内のペットショップ
(71)【出願人】
【識別番号】309025513
【氏名又は名称】株式会社宮防
(74)【代理人】
【識別番号】100189854
【弁理士】
【氏名又は名称】有馬 明美
(72)【発明者】
【氏名】村社 英秋
【テーマコード(参考)】
2B005
2B150
【Fターム(参考)】
2B005EA03
2B150AA20
2B150AB02
2B150CA02
2B150CA11
2B150CD16
2B150CE02
2B150CE03
2B150DD01
2B150DD38
(57)【要約】
【課題】コオロギの幼虫、成虫に簡便に給餌することができるコオロギの飼育方法及びコオロギ用飼料、さらに、それらにより飼育された機能性コオロギを提供する。
【解決手段】ちりめんじゃこの乾燥粉末が0.1%から50%配合されたコオロギ用飼料3をコオロギCに給餌させた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ちりめんじゃこの乾燥粉末が0.1%から50%配合された飼料をコオロギに給餌させることを特徴とするコオロギの飼育方法。
【請求項2】
前記飼料は、小麦ブランまたはトウモロコシを主とする配合飼料に前記ちりめんじゃこの乾燥粉末を配合させたことを特徴とする請求項1に記載のコオロギの飼育方法。
【請求項3】
前記飼料は、芳香性食品の乾燥粉末が0.05%以上配合されることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のコオロギの飼育方法。
【請求項4】
前記芳香性食品は、パンであることを特徴とする請求項3に記載のコオロギの飼育方法。
【請求項5】
前記芳香性食品は、バジル、イタリアンパセリ、チモシー、柑橘類の少なくともいずれか1つであることを特徴とする請求項3に記載のコオロギの飼育方法。
【請求項6】
前記飼料は、い草ござの上に散布されて給餌されていることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のコオロギの飼育方法。
【請求項7】
ちりめんじゃこの乾燥粉末が0.1%から50%配合されていることを特徴とするコオロギ用飼料。
【請求項8】
前記飼料は、小麦ブランまたはトウモロコシを主とする配合飼料に前記ちりめんじゃこの乾燥粉末を配合させたことを特徴とする請求項7に記載のコオロギ用飼料。
【請求項9】
前記飼料は、芳香性食品の乾燥粉末が0.05%以上配合されることを特徴とする請求項8に記載のコオロギ用飼料。
【請求項10】
前記芳香性食品は、パンであることを特徴とする請求項9に記載のコオロギ用飼料。
【請求項11】
前記芳香性食品は、バジル、イタリアンパセリ、チモシー、柑橘類の少なくともいずれか1つであることを特徴とする請求項9に記載のコオロギ用飼料。
【請求項12】
い草ござの上にちりめんじゃこの乾燥粉末が0.1%から50%且つ芳香性食品の乾燥粉末が0.05%以上配合される飼料を散布した給餌手段と、給水手段と、隠蔽手段とを配置した飼育装置の内部で飼育され、
必要時に、前記い草ござ、前記給水手段、前記隠蔽手段、前記飼育装置の壁面、前記飼育装置の床面、及び、機能性コオロギの少なくとも一つが次亜塩素酸水で殺菌される、
ことにより得られる、体重100g当たり550mg以上のカルシウムを含有することを特徴とする機能性コオロギ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コオロギの飼育方法、それに用いられるコオロギ用飼料、及び、それらにより飼育された機能性コオロギに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、飼育されているトカゲやカメレオン等の爬虫類生物には、カルシウム不足に起因する代謝性骨疾患の発症を防ぐため、カルシウム剤を直接ふりかけたコオロギが餌として与えられている。しかしこの方法では、コオロギからカルシウムが脱落し爬虫類に適量のカルシウムの摂取をさせることが難しかった。そこで、コオロギ体内のカルシウム量を増加させるコオロギの飼育が行われている。
【0003】
このような技術として、例えば、特許文献1に示されるような餌料用コオロギの飼育、繁殖方法が開発されている。特許文献1に示される餌料用コオロギの飼育、繁殖方法は、産卵用媒体が入れられた産卵容器、給水手段、隠蔽手段等を収容した上部開口構造の飼育装置の内部でコオロギの成虫を飼育し、成虫の産卵後は産卵容器を別の飼育装置に移して孵化させ、幼虫を飼育するものである。そして、カルシウムを含有する煮干をコオロギに給餌する際は、幼虫でも食べられるように水に浸してやわらかくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-191834号公報(第2頁~第4頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示される飼育設備及び飼育方法は簡単であるため、誰でも容易にコオロギの飼育、繁殖ができるという点で有効である。しかしながら、特許文献1にあっては、水に浸した煮干は腐りやすく長時間の保存ができないため、給餌の都度煮干を水に浸す必要があり、その上、水に浸してやわらかくするには時間がかかることから、給餌が煩雑になるという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、コオロギの幼虫、成虫に簡便に給餌することができるコオロギの飼育方法及びコオロギ用飼料、さらに、それらにより飼育された機能性コオロギを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明のコオロギの飼育方法は、
ちりめんじゃこの乾燥粉末が0.1%から50%配合された飼料をコオロギに給餌させることを特徴としている。
この特徴によれば、ちりめんじゃこの乾燥粉末が配合された飼料は、幼虫、成虫を問わずコオロギは所望の量の飼料を食べることが確認された。このようにして、コオロギに動物性たんぱく質を補い共食いを減少させると共に、コオロギにカルシウム及びビタミンDを摂取させることが簡便にできる。
【0008】
前記飼料は、小麦ブランまたはトウモロコシを主とする配合飼料に前記ちりめんじゃこの乾燥粉末を配合させたことを特徴としている。
この特徴によれば、飼料に小麦ブランまたはトウモロコシが配合されるため、さらに高い栄養成分をコオロギに摂取させることができる。
【0009】
前記飼料は、芳香性食品の乾燥粉末が0.05%以上配合されることを特徴としている。
この特徴によれば、コオロギの嗜好性の高い芳香性食品を飼料に配合させることにより、コオロギの給餌量を増やすことができる。
【0010】
前記芳香性食品は、パンであることを特徴としている。
この特徴によれば、パンはコオロギの嗜好性が高いことが確認され、コオロギの給餌量を増やすことができる。
【0011】
前記芳香性食品は、バジル、イタリアンパセリ、チモシー、柑橘類の少なくともいずれか1つであることを特徴としている。
この特徴によれば、バジル、イタリアンパセリ、チモシー、柑橘類はコオロギの嗜好性が高いことが確認され、コオロギの給餌量を増やすことができる。
【0012】
前記飼料は、い草ござの上に散布されて給餌されていることを特徴としている。
この特徴によれば、い草ござが、飼料とコオロギの糞尿との接触により発生する腐敗臭や、糞尿より発生するアンモニア臭等の悪臭、湿気を吸収し飼育装置内の衛生環境を良好に保つため、飼育装置内のコオロギの生存率を高めることができる。また、い草ござはその表面及び裏面に凹凸があり滑りにくいため、コオロギが飼料に集まっても餌がい草ござの上に留まりこぼれにくく、い草ござもずれにくい。また、い草ござはコオロギにより餌と一緒に食べられることが少ないため、い草ござの交換の頻度を下げることができる。
【0013】
本発明のコオロギ用飼料は、
ちりめんじゃこの乾燥粉末が0.1%から50%配合されていることを特徴としている。
この特徴によれば、ちりめんじゃこ粉末が配合された飼料は、幼虫、成虫を問わずコオロギは所望の量の飼料を食べることが確認された。これにより、コオロギに所望量のカルシウム及びビタミンDを摂取させることができる。
【0014】
前記飼料は、小麦ブランまたはトウモロコシを主とする配合飼料に前記ちりめんじゃこの乾燥粉末を配合させたことを特徴としている。
この特徴によれば、飼料に小麦ブランまたはトウモロコシが配合されるため、さらに高い栄養成分をコオロギに摂取させることができる。
【0015】
前記飼料は、芳香性食品の乾燥粉末が0.05%以上配合されることを特徴としている。
この特徴によれば、コオロギの嗜好性の高い芳香性食品を飼料に配合させることにより、コオロギの給餌量を増やすことができる。
【0016】
前記芳香性食品は、パンであることを特徴としている。
この特徴によれば、パンはコオロギの嗜好性が高いことが確認され、コオロギの給餌量を増やすことができる。
【0017】
前記芳香性食品は、バジル、イタリアンパセリ、チモシー、柑橘類の少なくともいずれか1つであることを特徴としている。
この特徴によれば、バジル、イタリアンパセリ、チモシー、柑橘類はコオロギの嗜好性の高いことが確認され、コオロギの給餌量を増やすことができる。
【0018】
本発明の機能性コオロギは、
い草ござの上にちりめんじゃこの乾燥粉末が0.1%から50%且つ芳香性食品の乾燥粉末が0.05%以上配合される飼料を散布した給餌手段と、給水手段と、隠蔽手段とを配置した飼育装置の内部で飼育され、
必要時に、前記い草ござ、前記給水手段、前記隠蔽手段、前記飼育装置の壁面、前記飼育装置の床面、及び、機能性コオロギの少なくとも一つが次亜塩素酸水で殺菌される、
ことにより得られ、体重100g当たり550mg以上のカルシウムを含有することを特徴としている。
この特徴によれば、機能性コオロギのカルシウム含有量が高いため、爬虫類生物等に与える生き餌として好適であると共に、機能性食品として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施例1におけるコオロギの飼育装置を示す斜視図である。
【
図2】実施例1におけるコオロギの飼育装置を示す断面図である。
【
図3】実施例1における試験区B1~B4の飼育期間とコオロギの生存数との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係るコオロギの飼育方法、コオロギ用飼料及び機能性コオロギを実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例0021】
実施例1に係るコオロギの飼育方法、コオロギ用飼料及び機能性コオロギにつき、
図1から
図3を参照して説明する。以下、
図2紙面左側をコオロギの飼育装置の正面側(前方側)、紙面右側をコオロギの飼育装置の背面側(後方側)、正面から見た左右方向をコオロギの飼育装置の左右側として説明する。また、
図2においては、コオロギ飼育装置の断面図のみを表示し、コオロギの表示は省略した。
【0022】
図1および
図2に示されるように、本実施例のコオロギの飼育方法に用いられるコオロギの飼育装置1(以下、単に飼育装置1という)は、上方が開口した飼育容器2と、飼育容器2の床面に敷かれた下敷き9と、シェルター5と、シェルター5の上に敷かれたい草ござ4と、給水容器6と、産卵床8が充填された産卵容器7と、から主に構成され、い草ござ4の上にコオロギ用飼料3が散布されてコオロギCに給餌される。また、飼育対象となるコオロギCが飼育装置1の内部に収容されている。本実施例では、コオロギCとして、爬虫類生物等の給餌に好適であるフタホシコオロギ及びヨーロッパイエコオロギを用いた。
【0023】
図1および
図2に示されるように、飼育容器2は、左右の長さ約40cm,前後の長さ約70cm,高さ約20cmの略直方体構造をした半透明の箱体である。本実施例では、飼育容器2として、市販の樹脂製のコンテナケースを用いた。コオロギCを飼育する場合は、飼育容器2からコオロギCが脱出することを防ぐため、例えば細かい通気孔を設けた蓋を飼育容器2に被せるとよい(図示略)。
【0024】
図1および
図2に示されるように、い草ござ4の上には粉末状のコオロギ用飼料3が散布されている。コオロギ用飼料3には、ちりめんじゃこの乾燥粉末、芳香性食品の乾燥粉末、小麦ブランの乾燥粉末またはトウモロコシの乾燥粉末、大豆油かすの乾燥粉末、菜種油かすの乾燥粉末が配合されている。粉末は形状は粒状、鱗片状、線状であってよく、代表長10mm以下のものが個数基準で90%以上であってよい。なお、代表長は各粉体の最大の長さを意味する。コオロギCは雑食性であることから、これら動物性及び植物性の原料をコオロギ用飼料3として用いることができる。
【0025】
ちりめんじゃこは、カタクチイワシ、マイワシ、ウルメイワシ、シロウオ等のイワシ類の稚魚(しらす)を茹でた後、乾燥させた食品である。なお一般的に、水揚げ後茹でる前のイワシ類の稚魚を生しらす、生しらすを茹でたものを釜揚げしらす、釜揚げしらすの乾燥の程度がちりめんじゃこより低いものをしらす干しというが、本実施例では、生しらす、釜揚げしらす及びしらす干しも、ちりめんじゃこに含まれるものとする。
【0026】
次に、ちりめんじゃこに含まれる栄養成分について説明する。ちりめんじゃこには、栄養成分として、たんぱく質、カルシウム、ビタミンDが豊富に含まれている。これらの数値を表1に示す。
【0027】
【0028】
表1に示されるように、ちりめんじゃこには、ちりめんじゃこ可食部100g当たり、たんぱく質が40.5g(豚もも肉100gに含まれるたんぱく質量の約2倍)、カルシウムが520mg(牛乳200mlに含まれるカルシウム量の約2.2倍)、ビタミンDが61μg(卵黄に含まれるビタミンD量の約10倍)含まれている。
【0029】
ちりめんじゃこは豊富な栄養成分を有するためコオロギCの餌として好適である。しかし、ちりめんじゃこをそのままコオロギCに給餌しても、成虫、幼虫共ちりめんじゃこをほとんど食べなかった。これは硬さによるものと推測される。ちりめんじゃこを乾燥粉末にし、その粉末のままでの給餌を試みたところ、驚くことに、コオロギCの成虫、幼虫共にこれらを食べることが確認された。また、ちりめんじゃこの乾燥粉末は長期保存が可能であることも好適である。
【0030】
次に、ちりめんじゃこの乾燥粉末の製造方法について説明する。本実施例では、乾燥粉末にするちりめんじゃことして、市場に出回らない規格外の大きさや鮮度であるちりめんじゃこ(50%以上がカタクチイワシ)が用いられる。ちりめんじゃこを、粉末にする前に好適な状態になるまで乾燥させる。また、冷凍状態で仕入れたちりめんじゃこは、解凍させた後好適な状態になるまで乾燥させる。乾燥させたちりめんじゃこは、汎用の製粉機を用いて粉末にされた後、篩を用いて分級される。このとき、ちりめんじゃこの乾燥粉末の粒径は、好ましくは0.001~0.5mmであり、より好ましくは0.01~0.2mmである。ちりめんじゃこを乾燥粉末とすることにより、コオロギCの成虫、幼虫共にそれらを食べることが確認された。また、ちりめんじゃこの乾燥粉末は長期保存が可能であることが確認された。
【0031】
次に、芳香性食品について説明する。ここで芳香性食品とは、コオロギCの嗜好性の高い芳香性を有する食品をいう。芳香性食品の乾燥粉末をコオロギ用飼料3に含有させることにより、コオロギCを誘引し、コオロギCの給餌量を増やすことができる。芳香性食品としては、バジル、イタリアンパセリ、チモシー等のハーブ類や柑橘類が好ましく、また、パンはより好ましいことが確認された。
【0032】
本実施例では、芳香性食品として、食パン残渣の乾燥粉末が用いられる。具体的には、食パンの耳を乾燥機を用いて温度65℃で4時間乾燥させた後、汎用の製粉機を用いて粉末にした。このとき、食パンの乾燥粉末の粒径は、好ましくは0.001~0.5mmであり、より好ましくは0.05~0.2mmである。食パンを乾燥粉末とすることにより食パンそのままよりもさらに芳香性が増加するため、コオロギCを誘引する効果が増大し、コオロギCの給餌量をさらに増やすことができる。
【0033】
次に、小麦ブラン、大豆油かす、菜種油かす、トウモロコシについて説明する。小麦ブラン(小麦ふすま)には、食物繊維、ビタミンB1,ビタミンB6,ビタミンE,マグネシウム、鉄分、亜鉛等が多く含まれている。大豆油かす、菜種油かすには、たんぱく質が多く含まれている。トウモロコシには、炭水化物が多く含まれている。これら小麦ブラン、大豆油かす、菜種油かす、トウモロコシは、汎用の製粉機を用いて粒径0.001~1mmの粉末にされる。
【0034】
次に、コオロギ用飼料3の配合割合について説明する。コオロギ用飼料3には、ちりめんじゃこの乾燥粉末が0.1~50%,芳香性食品の乾燥粉末が0.05%以上含まれることが好ましい。ちりめんじゃこの乾燥粉末の配合割合を高くすると共に、芳香性食品の乾燥粉末をちりめんじゃこの乾燥粉末の配合割合の半分以上とすることで、コオロギCの給餌量を増加させカルシウム摂取量を増加させることができる。本実施例では、ちりめんじゃこの乾燥粉末が30%,芳香性食品の乾燥粉末が14%,小麦ブランの乾燥粉末が30%,大豆油かすの乾燥粉末が4%,菜種油かすの乾燥粉末が4%,トウモロコシが18%含まれたコオロギ用飼料3を用いた(表2参照)。
【0035】
【0036】
本実施例のコオロギ用飼料3をコオロギCに給餌することで、次のような効果が認められる。すなわち、ちりめんじゃこの乾燥粉末から豊富なたんぱく質(動物性たんぱく質)を摂取できることから、コオロギCの成長を促すことができると共に、動物性たんぱく質不足による共食いを減少させることができる。また、ちりめんじゃこの乾燥粉末から豊富なカルシウムを摂取できることから、コオロギCの成長を促すことができると共に、爬虫類生物等に給餌する生き餌としてカルシウム含有量の高いコオロギCを飼育することができる。また、ちりめんじゃこの乾燥粉末からビタミンDを摂取できることから、コオロギCの体内でのカルシウムの吸収率を高めることができる。
【0037】
図1および
図2に示されるように、下段側のシェルター5の上部略全体には、い草ござ4が敷設されている(下段側のシェルター5と上段側のシェルター5との間にも、い草ござ4が敷設されている)。い草は単子葉植物イグサ科の植物であり、吸湿性能や、アンモニア、インドール、トリメチルアミン等悪臭の原因物質を吸着する消臭性能を有している。そのため、い草ござ4は、コオロギCの糞尿から生じるアンモニア臭や湿気を吸収し、飼育装置1内、特に上段側のシェルター5に形成されている空間52内の衛生環境を良好にし、コオロギCの生存率を高めることができる。また、コオロギCは、餌の付近に糞尿をすることが多い。そのため、い草ござ4の上にコオロギ用飼料3を散布することにより、糞尿とコオロギ用飼料3との接触によって生じる腐敗臭を効果的にい草ござ4に吸収させることができる。
【0038】
また、い草ござ4の表面及び裏面には、い草の織目からなる細かな凹凸が形成されている。そのため、い草ござ4の上に散布されたコオロギ用飼料3にコオロギCが一斉に集まっても、コオロギ用飼料3がこぼれにくくい草ござ4の上に留まりやすいと共に、コオロギCもい草ござ4の上から滑って落下しにくい。また、い草ござ4は下段側のシェルター5の上部からずれにくいことから、コオロギ用飼料3がい草ござ4の上からこぼれることが少ない。
【0039】
また、い草ござ4は、紙などに比べコオロギCによってコオロギ用飼料3と共に食べられることが少ないため傷みにくく、交換頻度が少なくて済む。
【0040】
図1および
図2に示されるように、飼育装置1の内部には、凸部51を上方に向けたシェルター5が上下二段に配置されている。これによりコオロギCは凸部51の裏側に形成された空間52に隠れることができるため、飼育装置1内での共食いを減少させることができる。また、シェルター5が上下二段に配置されることにより空間52が増加するため、飼育するコオロギCの数量を増やすことができる。
【0041】
また、先に述べたとおり、下段側のシェルター5の上部略全体には、い草ござ4が敷設されている(下段側のシェルター5と上段側のシェルター5との間にも、い草ござ4が敷設されている)。これにより、何らかの理由により上段側のシェルター5または下段側のシェルター5が動いた場合であっても互いに重なることがないため、上段側のシェルター5の空間52と下段側のシェルター5の凸部51との間にコオロギCが挟まれて死ぬことを防ぐことができる。
【0042】
また、上段側のシェルター5の前後方向の長さは下段側のシェルター5の前後方向の長さよりも短く、上段側のシェルター5は下段側のシェルター5の後方に配置されている。これにより、下段側のシェルター5の前方上部に敷設されているい草ござ4の上部にコオロギ用飼料3を散布できる場所を確保することができる。
【0043】
本実施例では、シェルター5として、使用済みとなった紙製の鶏卵用ケースが用いられる。これにより、コオロギCの糞尿を吸収し、飼育装置1内、特に空間52内の衛生環境を良好に保つことができる。また、紙製の鶏卵用ケースであるシェルター5は軽量であるため、コオロギCを飼育装置1の外部に取り出す場合は、コオロギが付着したシェルター5ごと容易に取り出すことができる。
【0044】
図1および
図2に示されるように、飼育装置1の内部には、給水容器6が下段側のシェルター5の前端に接して配置されている。これにより、上段側のシェルター5やい草ござ4の上からコオロギCが給水容器6に移動しやすくなる。また、孔が開けられた給水容器6の蓋には給水布61が挿通され、給水布61の一端は給水容器6内の水Wに浸されると共に他端は蓋の外部に出されている。これにより、コオロギCは毛細管現象により給水容器6の内部から給水布61の他端に伝わってきた水Wを摂取することができる。本実施例では、給水容器6として、市販のタッパー容器を用いた。なお、コオロギCが幼虫であって給水容器6の上部に上って給水することが難しい場合には、給水容器6の代わりに水を含ませた給水用スポンジを用いてもよい(図示略)。また、給水用スポンジに孔を開け紐を通してもよい(図示略)。これにより、給水用スポンジの孔から外部へ出た紐を通じて最後まで給水用スポンジから給水することができる。スポンジを飼育装置1内に配置するときは、スポンジから下敷き9に水が浸透することを防ぐため、給水用スポンジの下に樹脂製の板等を敷くとよい(図示略)。
【0045】
図1および
図2に示されるように、飼育装置1の内部には、産卵床8が充填された産卵容器7が下段側のシェルター5の前端に接して配置されている。これにより、上段側のシェルター5やい草ござ4の上からコオロギCが産卵床8に移動しやすくなる。本実施例では、産卵床8として、バーミキュライトを適度に混和した土を用いた。バーミキュライトは保湿効果が高いため、土に混和することにより産卵床8内の水分量を好適なものとし、コオロギの卵の死滅を防ぐことができる。また、産卵容器7として、市販のタッパー容器を用いた。
【0046】
図1および
図2に示されるように、飼育装置1の床は、全面が下敷き9で覆われている。これにより、コオロギCの糞尿やこぼれたコオロギ用飼料3により飼育装置1の床面が直接汚れることを防ぐことができる。本実施例では、下敷き9として、紙製のシートを用いた。
【0047】
次に、コオロギCの飼育方法について説明する。飼育装置1は、28℃~30℃に温度管理された飼育室に載置される(図示略)。飼育室内は、空気清浄機を用いて換気されている。飼育装置1には、適当数のコオロギCの成虫が収容される。コオロギ用飼料3はい草ござ4の上に散布される。コオロギ用飼料3の給餌は毎日行われる。給水容器6内の水の交換は2日に1回行われる。やがて、コオロギCのメスは、産卵容器7内の産卵床8に産卵を始める。一定期間経過後、産卵された産卵容器7は別の飼育装置1に移される。このとき、後に孵化したばかりのコオロギCの幼虫が隠れやすくするため、産卵容器7の下にシェルター5を配置するとよい。一方、元の飼育装置1には新たな産卵容器7が入れられ、コオロギCの飼育が継続される。
【0048】
産卵容器7を収容した別の飼育装置1は、28℃~30℃に温度管理された飼育室に載置される(図示略)。飼育室内は、空気清浄機を用いて換気されている。産卵容器7が別の飼育装置1に移されてから約5~10日経過すると産卵容器7内の卵が孵化する。孵化したコオロギCの幼虫には、成虫の場合と同様、い草ござ4の上にコオロギ用飼料3を散布して給餌する。なお、い草ござ4については、給餌の当初から用いる必要はなく、幼虫の成長に伴い糞尿の量が増加してから用いてもよい。幼虫への給水には、水を含ませた給水用スポンジを用いる(図示略)。このとき、幼虫の成長に応じて、給水用スポンジの大きさや個数を調整するとよい。幼虫は脱皮を繰り返すことにより成長し、孵化後約40日で成虫になり、その後約2月生存する。
【0049】
コオロギCの幼虫が成虫になるまでの期間は、糞量の増加に加え、脱皮による抜け殻の落下が起こるため、これらをこまめに取り除く。また、一週間ごとに飼育装置1内全体の清掃を行う。具体的には、汚れた下敷き9の交換を行い、次亜塩素酸水を飼育容器2の内壁面及び床面、い草ござ4、給水容器6、産卵容器7、産卵床8、コオロギCにそれぞれ噴霧することで殺菌及び消臭を行う。また、給水布61、給水用スポンジ及び紐については、次亜塩素酸水を用いて洗濯することで殺菌及び消臭を行う。これにより、飼育装置1内の衛生環境を良好に保ちコオロギCの生存率を高めることができる。なお、本実施例では、次亜塩素酸水としてジアバルス(登録商標)を用いた。
【0050】
次に、本実施例により飼育されたコオロギCに含有されるカルシウム量の測定結果について説明する。カルシウム量の測定に先立ち、試験区A1,対照区A1を設定した。すなわち、試験区A1では、コオロギCの孵化後から、表2に記載の本実施例のコオロギ用飼料3を用いて飼育を行った。対照区A1では、コオロギCの孵化後から、表2に記載のちりめんじゃこの乾燥粉末が含まれていない飼料を用いて飼育を行った。カルシウム量の測定には、試験区A1,対照区A1共に、50日齢のコオロギC1検体の粉末を用いた。測定の前処理として、試験区A1,対照区A1共に、コオロギ検体の粉末1gに、硝酸(1.38)6mlと過酸化水素水1mlを加え、高速試料分解装置にて分解後、200mlに定容した。カルシウム量の測定は、島津製作所製高周波プラズマ発光分析装置ICPS-7500を用いて、誘導結合プラズマ発光分析法により行った。試験区A1,対照区A1それぞれの検体のカルシウム量の測定結果を表3に示す。
【0051】
【0052】
表3に示されるように、本実施例のコオロギ用飼料3を給餌して飼育した試験区A1のコオロギCのカルシウム量は、603(mg/100g)であった。これは、ちりめんじゃこの乾燥粉末が含まれていない飼料を給餌して飼育した対照区A1のコオロギCのカルシウム量496(mg/100g)の約1.2倍であった。このことから、ちりめんじゃこの乾燥粉末を30%含有するコオロギ用飼料を給餌して飼育されたコオロギCは、多くのカルシウムを含むことから、爬虫類生物等の生き餌等の機能性コオロギとして好適である。
【0053】
次に、い草ござ4及びちりめんじゃこの乾燥粉末がコオロギCの生存数に与える影響について説明する。コオロギCの生存数の測定に先立ち、試験区B1~B4を設定した。すなわち、試験区B1~B4全て、20日齢のコオロギC200匹を各飼育装置1に収容してそれぞれ飼育を開始した。試験区B1では、紙の上にちりめんじゃこの乾燥粉末が含まれていない飼料(表2参照)を散布してコオロギCに給餌した。試験区B2では、い草ござ4の上にちりめんじゃこの乾燥粉末が含まれていない飼料(表2参照)を散布してコオロギCに給餌した。試験区B3では、い草ござ4の上に本実施例のコオロギ用飼料3(表2参照)を散布してコオロギCに給餌した。試験区4では、紙の上に本実施例のコオロギ用飼料3(表2参照)を散布してコオロギCに給餌した。各試験区のコオロギCの飼育は令和4年8月23日から9月14日にかけて行われ、8月23日、9月6日、9月9日、9月14日の各期日におけるコオロギCの生存数をカウントした。
図2に各試験区におけるコオロギCの生存数の変化を示すグラフを、表4に各試験区における各期日のコオロギCの生存数を示す。
【0054】
【0055】
図2及び表4に示されるように、試験区B1と試験区B2とを比較すると、コオロギCにちりめんじゃこの乾燥粉末が含まれていない飼料を給餌した場合では、い草ござ4を用いた試験区B2の方が、9月6日、9月9日、9月14日の各期日において生存数が多かった。このことから、い草ござ4が腐敗臭、アンモニア臭、湿気等を吸収することで飼育装置1内の衛生環境が良好なものとなり、コオロギCの生存数が多くなったものと考えられる。また、試験区B3と試験区B4とを比較すると、コオロギCにちりめんじゃこの乾燥粉末を30%含有する飼料を与えた場合では、い草ござ4を用いた試験区B3の方が、9月6日、9月9日、9月14日の各期日おいて生存数が多く、特に9月14日の生存数は試験区B4の生存数の2倍以上であった。このことから、い草ござ4とちりめんじゃこの乾燥粉末との相乗効果により、コオロギCの生存数がさらに多くなったものと考えられる。
【0056】
次に、コオロギ粉末の大腸菌群検査及び一般生菌検査について説明する。検査に先立ち、試験区C1,C2及び対照区C1,C2を設定した。すなわち、試験区C1,C2では、1日間絶食させた40日齢のコオロギCを20時間冷蔵することで仮死状態にした後、濃度200ppmの次亜塩素酸水に1分間浸漬し、さらに沸騰水中で10分間煮沸した。検体試料液には、煮沸後のコオロギCを粉末にし、蒸留水を加えて調製したものを用いた。対照区C1,C2では、1日間絶食させた40日齢のコオロギCを20時間冷蔵することで仮死状態にした後、沸騰水中で10分間煮沸した。検体試料液には、煮沸後のコオロギCを粉末にし、蒸留水を加えて調製したものを用いた。なお、試験区C1,C2では、次亜塩素酸水としてジアバルス(登録商標)が用いられた。
【0057】
大腸菌群検査及び一般生菌検査は、試験区C1,C2及び対照区C1,C2全て、検体試料液をキッコーマンバイオケミファ社製イージープレートを用いて培養した後コロニー数を計測することにより行われた。各検査の培養条件は、大腸菌群検査が、培養温度35±1℃,培養時間24±1時間、一般生菌検査が、培養温度35±1℃,培養時間48±2時間である。
【0058】
試験区C1,C2及び対照区C1,C2の検体試料液について行った大腸菌群及び一般生菌の検査結果を表5に示す。
【0059】
【0060】
表5に示されるように、試験区C1,C2では大腸菌群は検出されなかった。また、試験区C1における一般生菌数は5.0×103個であり、対照区C1の一般生菌数2.2×105個の約0.1%という結果となった。これらのことから、次亜塩素酸水(ジアバルス)は、大腸菌群及び一般生菌に対して高い殺菌効果を有することが認められた。これにより、コオロギC、飼育装置1の内部等を次亜塩素酸水(ジアバルス)で殺菌することにより良好な衛生環境が保たれるとともに粉末作成時の安全性を高めることができる。
【0061】
次に、給水用スポンジの大腸菌群検査について説明する。検査に先立ち、試験区D1及び対照区D1を設定した。すなわち、試験区D1では、使用済みの給水用スポンジを水洗いした後、濃度200ppmの次亜塩素酸水に1分間浸漬した。検体試料液には、給水用スポンジを取り出した後の次亜塩素酸水を用いた。対照区D1では、使用済みの給水用スポンジを水洗いした後、蒸留水に1分間浸漬した。検体試料液には、給水用スポンジを取り出した後の蒸留水を用いた。なお、試験区D1では、次亜塩素酸水としてジアバルスが用いられた。
【0062】
大腸菌群検査は、試験区D1及び対照区D1共に、検体試料液をキッコーマンバイオケミファ社製イージープレートを用いて培養した後コロニー数を計測することにより行った。大腸菌群検査の培養条件は、培養温度35±1℃,培養時間24±1時間である。
【0063】
試験区D1及び対照区D1の検体試料液について行った大腸菌群検査結果を表6に示す。
【0064】
【0065】
表6に示されるように、試験区D1では大腸菌群は25×10¹であった。一方、対照区D1では多数の大腸菌群が検出され測定不能であった。これらのことから、次亜塩素酸水(ジアバルス)は、1分間の浸漬でも大腸菌群に対して高い殺菌効果を有することが認められた。これにより、給水用スポンジを次亜塩素酸水(ジアバルス)で殺菌することにより良好な衛生環境が保たれコオロギの生存率を高めることができる。
【0066】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0067】
例えば、前記実施例では、飼育対象としてフタホシコオロギおよびヨーロッパイエコオロギを用いたが、これに限らず、タイワンオオコオロギ等他のコオロギを飼育対象としてもよい。