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特開2024-108554コンクリート構造物の施工方法、トンネルの施工方法
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  • 特開-コンクリート構造物の施工方法、トンネルの施工方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108554
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】コンクリート構造物の施工方法、トンネルの施工方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/10 20060101AFI20240805BHJP
   E21D 11/38 20060101ALI20240805BHJP
   E04G 21/02 20060101ALI20240805BHJP
   E04B 1/62 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
E21D11/10 Z
E21D11/38 Z
E04G21/02 103A
E04B1/62 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012983
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】宮田 佳和
(72)【発明者】
【氏名】名倉 健二
(72)【発明者】
【氏名】宇野 昌利
(72)【発明者】
【氏名】田中 博一
【テーマコード(参考)】
2D155
2E001
2E172
【Fターム(参考)】
2D155LA06
2E001DH35
2E001EA02
2E001FA30
2E001GA06
2E172AA05
2E172AA12
2E172DA00
2E172DB13
2E172DD04
(57)【要約】
【課題】コンクリートの打継面の湿潤状態を保つことなく施工が可能なコンクリート構造物の施工方法、およびそのコンクリート構造物の施工方法を用いたトンネルの施工方法を提供する。
【解決手段】先打ちコンクリートを打設した後、前記先打ちコンクリートの打継面に、水分散系ポリエステルを主成分とする材料からなるコンクリートの付着低減剤を塗布し、前記付着低減剤を塗布した前記打継面に接するよう後打ちコンクリートを打設する、コンクリート構造物の施工方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先打ちコンクリートを打設した後、前記先打ちコンクリートの打継面に、水分散系ポリエステルを主成分とする材料からなるコンクリートの付着低減剤を塗布し、前記付着低減剤を塗布した前記打継面に接するよう後打ちコンクリートを打設する、コンクリート構造物の施工方法。
【請求項2】
請求項1に記載のコンクリート構造物の施工方法を用いたトンネルの施工方法であって、
前記先打ちコンクリートおよび前記後打ちコンクリートが、隣り合って打設されるトンネル覆工コンクリートである、トンネルの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物の施工方法、およびそのコンクリート構造物の施工方法を用いたトンネルの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルなどのコンクリート構造物の施工方法としては、型枠の設置、コンクリートの打設、型枠の移動・解体を繰り返して構築していく方法が知られている。この施工方法を用いたコンクリート構造物の施工の具体例としては、例えば、トンネルの覆工コンクリートの施工が挙げられる。覆工コンクリートの施工では、先打ちコンクリートを打設し、所定時間経過後に、後打ちコンクリートを打設する。そのため、先打ちコンクリートと後打ちコンクリートの継ぎ目に目地部が形成される。
【0003】
覆工コンクリートでは、施工後に目地部の周辺にひび割れが発生する場合がある。これは、先打ちコンクリートと後打ちコンクリートが施工時に密着することに起因すると考えられる。先打ちコンクリートと後打ちコンクリートが施工時に密着することにより、温度変化や乾燥による、先打ちコンクリートと後打ちコンクリートの収縮変形が拘束される。これにより、収縮変形による引張応力が発生し、目地部にトンネル周方向のひび割れが発生する。なお、先打ちコンクリートと後打ちコンクリートが密着しているとは、外力を加えても、先打ちコンクリートと後打ちコンクリートが容易に剥離しない程度に、先打ちコンクリートと後打ちコンクリートが強固に接着していることを言う。
【0004】
目地に沿ったひび割れの発生を防ぐために、先打ちコンクリートを打設した後、先打ちコンクリートの打継面に、ひび割れ防止剤を塗布し、ひび割れ防止剤を塗布した打継面に接するよう後打ちコンクリートを打設する方法が知られている。ひび割れ防止剤としては、40質量%~77質量%の脂肪酸含有化合物と、2質量%~5質量%の安定化剤と、1質量%~3質量%の界面活性剤と、1質量%5~52質量%の水とを含むものが用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-35283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のひび割れ防止剤は、打設した先打ちコンクリートの打継面が乾燥した後、その打継面に塗布する必要があった。また、特許文献1に記載のひび割れ防止剤を用いた場合、ひび割れ防止剤を塗布した後、コンクリートの打継面が湿潤状態で後打ちコンクリートを打設する必要があった。
トンネルの覆工コンクリートの施工では、セントルと呼ばれる移動式の型枠が用いられる。覆工コンクリートを打ち込んだ翌日(十数時間後)には型枠を外し(脱型し)、隣の打込み箇所に型枠を移動し、設置する。型枠を設置する直前に、コンクリートの打継面にひび割れ防止剤を塗布するため、コンクリートの打継面は湿潤状態になっている。コンクリートの打継面が乾燥するまで待つことは施工性に劣り、工程にも影響を及ぼす。
また、次の覆工コンクリートの打込みは、先行コンクリートの打込みの翌日から数日後になるため、コンクリートの打継面の湿潤状態を保つことが難しい。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、コンクリートの打継面の湿潤状態を保つことなく施工が可能なコンクリート構造物の施工方法、およびそのコンクリート構造物の施工方法を用いたトンネルの施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]先打ちコンクリートを打設した後、前記先打ちコンクリートの打継面に、水分散系ポリエステルを主成分とする材料からなるコンクリートの付着低減剤を塗布し、前記付着低減剤を塗布した前記打継面に接するよう後打ちコンクリートを打設する、コンクリート構造物の施工方法。
[2][1]に記載のコンクリート構造物の施工方法を用いたトンネルの施工方法であって、
前記先打ちコンクリートおよび前記後打ちコンクリートが、隣り合って打設されるトンネル覆工コンクリートである、トンネルの施工方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コンクリートの打継面の湿潤状態を保つことなく施工が可能なコンクリート構造物の施工方法、およびそのコンクリート構造物の施工方法を用いたトンネルの施工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】曲げ付着強度試験体の作製に用いられる鋼製型枠体を示す写真である。
図2】各付着低減剤を用いた場合の曲げ付着強度の材齢による変化を示す図である。
図3】各付着低減剤の無塗布に対する強度比の材齢による変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態によるコンクリート構造物の施工方法、およびそのコンクリート構造物の施工方法を用いたトンネルの施工方法について説明する。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0012】
[コンクリート構造物の施工方法]
本実施形態のコンクリート構造物の施工方法は、先打ちコンクリートを打設した後、前記先打ちコンクリートの打継面に、水分散系ポリエステルを主成分とする材料からなるコンクリートの付着低減剤を塗布し、前記付着低減剤を塗布した前記打継面に接するよう後打ちコンクリートを打設する。言い換えれば、本実施形態のコンクリート構造物の施工方法は、コンクリート組成物を用いて先打ちコンクリートを打設する工程(以下、「工程A」と言う。)と、先打ちコンクリートの打継面に、水分散系ポリエステルを主成分とする材料からなるコンクリートの付着低減剤を塗布する工程(以下、「工程B」と言う。)と、付着低減剤を塗布した先打ちコンクリートの打継面に接するよう後打ちコンクリートを打設する工程(以下、「工程C」と言う。)とを有する。
【0013】
「先打ちコンクリート、後打ちコンクリート」
本実施形態における先打ちコンクリートおよび後打ちコンクリートは、コンクリート組成物を成形してなるものである。
【0014】
(コンクリート組成物)
コンクリート組成物は、セメントと、水と、を含有する。
コンクリート組成物としては、例えば、コンクリート、モルタル、セメントミルク等が挙げられる。
コンクリートとは、セメントと細骨材(砂)と粗骨材(砂利(砕石))とを混合し、水で練ったものである。
モルタルとは、セメントと細骨材(砂)とを混合し、水で練ったものである。
セメントミルクとは、セメントを水だけで練ったものである。
【0015】
セメントとは、石灰石、粘土、珪石、酸化鉄原料等を主原料とした、水による化学反応で硬化する粉体のことである。
細骨材とは、直径5mm以下の砂である。
粗骨材とは、直径5mm超の砂利(砕石)である。粗骨材の直径は、25mm以下が好ましい。
【0016】
コンクリートにおけるセメントと細骨材と粗骨材との混合割合は、コンクリートに求められる強度に応じて適宜決定できる。セメントと細骨材と粗骨材との混合割合は、質量比で、例えば、セメント1に対して、細骨材2~3、粗骨材4~6であることが好ましい。
【0017】
モルタルにおけるセメントと細骨材との混合割合は、モルタルに求める強度に応じて適宜決定できる。セメントと細骨材との混合割合は、質量比で、例えば、セメント1に対して、細骨材2~4であることが好ましい。
【0018】
コンクリートにおける水の含有量は、コンクリート全量に対して、6質量%以上15質量%以下であることが好ましい。
モルタルにおける水の含有量は、モルタル全量に対して、10質量%以上15質量%以下であることが好ましい。
セメントミルクにおける水の含有量は、セメントミルク全量に対して、30質量%以上40質量%以下であることが好ましい。
【0019】
「工程A」
工程Aでは、まず、コンクリート構造物を施工する所定の位置に、所望のコンクリート形状を有する型枠を設置する。
次いで、設置した型枠内に、上記のコンクリート組成物を流し込み、先打ちコンクリートを打設する。
【0020】
「工程B」
工程Bでは、まず、所定時間を経た先打ちコンクリートから型枠を取り外す。
次いで、先打ちコンクリートの打継面に、水分散系ポリエステルを主成分とする材料からなるコンクリートの付着低減剤を塗布する。なお、先打ちコンクリートの打継面とは、先打ちコンクリートに続いて打設する後打ちコンクリートの一端面と接する面のことである。
【0021】
(コンクリートの付着低減剤)
コンクリートの付着低減剤(以下、「付着低減剤」と言う。)としては、水分散系ポリエステルを主成分とする材料であって、例えば、特許第3162477号公報に記載の、
「(イ)次式(特許第3162477号公報に示す段落0012の化学式5)で表されるジオール成分(式中、Rはエチレン又はプロピレン基を表し、x、yはそれぞれ1以上の整数であり、かつx+yの平均値は2~7である。)、
(ロ)脂肪族ジオール、および(ハ)三価以上の多価アルコールよりなる群から選ばれる一種以上のアルコール成分と、
(ニ)二価のカルボン酸、その酸無水物又はその低級アルキルエステル、および
(ホ)三価以上の多価カルボン酸、その酸無水物又はその低級アルキルエステルよりなる群から選ばれる一種以上の酸成分とを共縮重合して得られる酸価が3~70KOHmg/gのポリエステル樹脂を、
ケトン系溶剤に溶解させ、中和剤を加えて該ポリエステル樹脂のカルボキシル基をイオン化し、次いで水を加えた後、ケトン系溶剤を留去して水系に転相したものである自己分散型水系ポリエステル樹脂組成物」を用いることができる。
【0022】
この自己分散型水系ポリエステル樹脂組成物の製造に用いられるポリエステル樹脂は、アルコール成分とカルボン酸、その酸無水物またはその低級アルキルエステル等の酸性分を原料モノマーとして製造するものであり、さらに詳しくは、特許第3162477号公報の段落0011~段落0022に記載されているので、ここでは説明を省略する。
水分散系ポリエステルを主成分とする材料からなる付着低減剤は、水に分散したポリエステルで、内部可塑剤の導入によって弾性を有する膜を低温(例えば5~40℃)で形成される高分子素材であり、pHが7~9、粘度が30mPa・s~100mPa・s(25℃の条件)、平均粒径が90nm~120nmの特性値を有している。
【0023】
また、付着低減剤は、先打ちコンクリートの打設面の面積の25%以上100%以下の範囲で塗布することが好ましい。前記打設面に対して付着低減剤を塗布する面積が上記の範囲であれば、ひび割れ防止の効果が得られる。
【0024】
先打ちコンクリートの打継面に対して付着低減剤を塗布する方法は、特に限定されないが、例えば、ローラーや手押しポンプ噴霧器等を用いて塗布する方法が用いられる。
【0025】
「工程C」
工程Cでは、先打ちコンクリートに隣接する位置に、所望のコンクリート形状を有する型枠を設置する。
次いで、設置した型枠内に、付着低減剤を塗布した先打ちコンクリートの打継面に接するように、上記のコンクリート組成物を流し込み、後打ちコンクリートを打設する。
所定時間を経た後、型枠を取り外すことにより、後打ちコンクリートが得られる。
【0026】
本実施形態のコンクリート構造物の施工方法によれば、先打ちコンクリートを打設した後、前記先打ちコンクリートの打継面に、水分散系ポリエステルを主成分とする材料からなるコンクリートの付着低減剤を塗布し、前記付着低減剤を塗布した前記打継面に接するよう後打ちコンクリートを打設するため、コンクリートの打継面の湿潤状態を保つことなく、先打ちコンクリートと後打ちコンクリートの打継部(目地部)において、先打ちコンクリートと後打ちコンクリートが密着するのを抑制できる。その結果、先打ちコンクリートと後打ちコンクリートの打継部(目地部)において、収縮変形による引張応力が発生することを抑制し、前記の打継部におけるひび割れを抑制することができる。従って、本実施形態のコンクリート構造物の施工方法は、ひび割れ防止のための作業の施工性を高めることができ、その作業時間を短縮することもできる。
【0027】
本実施形態のコンクリート構造物の施工方法は、例えば、トンネルの施工にも用いることができ、トンネル覆工コンクリートの打継部(目地部)に沿ってひび割れが発生するのを抑制することができる。また、本実施形態のコンクリート構造物の施工方法は、トンネルの施工に限らず、橋梁地覆、砂防堰堤、防潮堤防、ケーソン工の施工等のコンクリート構造物の施工にも用いることができる。
【0028】
[トンネルの施工方法]
本実施形態のトンネルの施工方法は、本実施形態のコンクリート構造物の施工方法を用いたトンネルの施工方法であって、先打ちコンクリートおよび後打ちコンクリートが、隣り合って打設されるトンネル覆工コンクリートである。
【0029】
本実施形態のトンネルの施工方法によれば、本実施形態のコンクリート構造物の施工方法を用いるため、先打ちコンクリートと後打ちコンクリートの打継部(目地部)におけるひび割れを抑制することができる。従って、本実施形態のトンネルの施工方法は、ひび割れ防止のための作業の施工性を高めることができ、その作業時間を短縮することもできる。
【実施例0030】
以下、実験例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実験例に限定されるものではない。
【0031】
[コンクリート組成物]
実験例にて用いたコンクリート組成物の材料を表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
実験例にて用いたコンクリート組成物の配合を表2に示す。
コンクリート組成物の練混ぜは、20℃の環境下の室内で、強制2軸練りのミキサを用いて行った。最初に、ミキサ内に、セメントと、細骨材と、粗骨材とを投入して10秒間空練りした後、混和剤入りの水を投入して30秒間練混ぜ、ケレン作業の後、さらに30秒間撹拌した。
【0034】
【表2】
【0035】
[先打ちコンクリートの打設]
曲げ付着強度試験体の打設前の準備として、初期養生室に鋼製型枠体を並べて、図1の写真に示すような、仕切り板を鋼製型枠の長手方向の中央に設置した。仕切り板としては、厚さ5mmのスチレンボードを100mm×20mmに加工したものを用いた。予め120mm×100mmに加工した木製型枠の化粧面に、仕切り板を20mm間隔で貼り付けて、凹凸打継ぎ面を形成した。コンクリートの打設時に仕切り板がずれないように、木製型枠の化粧面の裏側を木材で固定した。
曲げ付着強度試験体の作製1日目に、鋼製型枠体における仕切り板を介した一方の空間に先打ちコンクリートを打設した。コンクリートは2層打ちとし、1層目を詰めて棒で20回(1回/cm)、仕切り板の近傍はスチレンボードに当たって剥がれや欠けがないように丁寧に突いた。その後、型枠の外側をプラスチックハンマーで叩いて振動を加えて脱泡し、同様の操作を繰り返して2層目も形成し、打設面を均してから、コンクリートを養生した。
【0036】
[コンクリートの付着低減剤の塗布]
先打ちコンクリートの打設から18時間後に仕切り板を脱型した。
仕切り板の脱型後、先打ちコンクリートの凹凸打継面にコンクリートの付着低減剤を塗布した。
付着低減剤は、いずれの材料も原料のまま用いた。
自己分散型水系ポリエステル樹脂組成物の塗布量を200g/mまたは100g/mとした。
先打ちコンクリートを横置きに(鋼製型枠体の長さ方向が水平方向となるように)したまま、刷毛を用いて、凹凸打継面に付着低減剤を塗布した。
【0037】
[後打ちコンクリートの打設]
鋼製型枠体における仕切り板を介した一方の空間に先打ちコンクリートを打設してから18時間後に仕切り板の取外し、48時間後に他方の空間に後打ちコンクリートの打設を行い、先打ちコンクリートに後打ちコンクリートを打ち継いだ。事前に、余分なコンクリートが先打ちコンクリート上に乗らないように、先打ちコンクリートの凹凸打継ぎ面を養生した。先打ちコンクリートと同様の方法で、後打ちコンクリートを打設し、曲げ付着強度試験体を作製した。
【0038】
[曲げ付着強度試験]
付着性を確認するために、500kNアムスラー型万能試験機を用いて、JIS A 1106「コンクリートの曲げ強度試験方法」に従って、3等分点による強度試験を実施し、曲げ付着強度を算出した。試験実施時は、実際の状況に近付けるために、凹凸が縦方向になるように試験体を設置し、試験体に荷重を掛けた。
先打ちコンクリートを打設してから18時間後に仕切り板を取り外した。先打ちコンクリートを打設してから48時間後に後打ちコンクリートを打設して、先打ちコンクリートと後打ちコンクリートを打継ぎした。先打ちコンクリートを打設してから120時間後に脱型と封かん養生を行った。その後、先打ちコンクリートを打設してから7日、28日、91日の材齢で曲げ付着強度試験を実施した。
【0039】
自己分散型水系ポリエステル樹脂組成物の塗布量を200g/mまたは100g/mとした場合の曲げ付着強度の材齢による変化を図2に、自己分散型水系ポリエステル樹脂組成物の塗布量を200g/mまたは100g/mとした場合の無塗布に対する強度比の材齢による変化を図3に示す。
図2図3に示す結果から、材齢7日では、自己分散型水系ポリエステル樹脂組成物を用いた場合の曲げ付着強度は、無塗布の場合とほぼ同等であった。
材齢91日では、自己分散型水系ポリエステル樹脂組成物を用いた場合、無塗布に対する強度比が30%未満であり、長期材齢において、先打ちコンクリートと後打ちコンクリートの密着を抑制する効果が優れていた。
【0040】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
図1
図2
図3