(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108555
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡成形品
(51)【国際特許分類】
C08J 9/04 20060101AFI20240805BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20240805BHJP
B65D 81/34 20060101ALI20240805BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
C08J9/04 101
C08J9/04 CFD
B32B27/36
B65D81/34 U
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012984
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103975
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 治
【テーマコード(参考)】
3E013
3E086
4F074
4F100
【Fターム(参考)】
3E013AA10
3E013AB01
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4F100JK10
(57)【要約】
【課題】 本発明は、加熱された状態において応力が加えられても変形し難い熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡成形品を提供する。
【解決手段】 本発明の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡成形品は、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡体を含む発泡層を有し、上記熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡体は、熱可塑性ポリエステル系樹脂を含み、上記発泡層において、何れか一方の表面部の結晶化度と中間部の結晶化度との差が15%以下であることを特徴とする。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡体を含む発泡層を有し、
上記熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡体は、熱可塑性ポリエステル系樹脂を含み、
上記発泡層において、何れか一方の表面部の結晶化度と中間部の結晶化度との差が15%以下であることを特徴とする熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡成形品。
【請求項2】
発泡層において、両方の表面部の結晶化度と中間部の結晶化度との差が15%以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡成形品。
【請求項3】
片面又は両面に熱可塑性樹脂非発泡シートが積層一体化されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡成形品。
【請求項4】
熱可塑性ポリエステル系樹脂は、285℃下でのGC/MSで発生するエステル系化合物及びエーテル系化合物の総量が、熱可塑性ポリエステル系樹脂の全量に対して1000ppm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡成形品。
【請求項5】
熱可塑性ポリエステル系樹脂のカルボキシ末端基の量が100当量/トン以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡成形品。
【請求項6】
熱可塑性ポリエステル系樹脂中の酢酸の含有量が、熱可塑性ポリエステル系樹脂の全量に対して100ppm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡成形品。
【請求項7】
熱可塑性ポリエステル系樹脂の数平均分子量が5000以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡成形品。
【請求項8】
無機物の含有量が7質量%以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡成形品。
【請求項9】
容器であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、惣菜、冷凍食品、コーヒーなどの飲食料品が熱可塑性樹脂製容器に収容された状態で販売されている。飲食料品の購入者は、飲食料品を熱可塑性樹脂製容器に収容した状態のまま、電子レンジを用いて飲食料品を加熱して食することが多くなっている。特に、近年は、コロナ禍の影響で、スーパーマーケットやコンビニエンスストアーにて購入した飲食料品を電子レンジを用いて加熱して自宅にて食する機会が多くなっている。
【0003】
また、従来から、食品を収容する熱可塑性樹脂製容器として熱可塑性ポリスチレン系樹脂が用いられているが、近年の環境保全の観点から代替素材への切り換えが進められている。
【0004】
代替素材の一つとして、リサイクル性に優れており、天然材料を用いて製造されたバイオマス原料も普及し始めていることから熱可塑性ポリエステル系樹脂が注目されている。
【0005】
特許文献1には、熱可塑性ポリエステル系樹脂と、無機系結晶化促進剤及び有機系結晶化促進剤から選択される1種以上の結晶化促進剤とを含有し、所定の測定方法で測定される結晶化時間が14分以下である熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シート及びこの発泡シートを用いた食品包装容器が提案されている。
【0006】
特許文献2には、熱可塑性ポリエステル系樹脂の発泡層を含む発泡樹脂容器であって、結晶化熱量の絶対値が1~5mJ/mgであり、所定の式で算出される結晶化度が20%以上である発泡樹脂容器が提案されている。
【0007】
特許文献3には、90%以上のセルが閉鎖セル(DIN ISO4590)であるポリエステル樹脂発泡シートであって、前記発泡シートを形成するポリエステル樹脂のカルボキシル末端基(CEG、Carboxyl End Group)の当量が100meq/g未満であるポリエステル発泡シートが提案されている。
【0008】
特許文献4には、テレフタル酸とエチレングリコールを主成分とするポリエステル樹脂(A)と変性ポリオレフィン樹脂(C)を含有する樹脂組成物であって、樹脂組成物中のポリエステル樹脂(A)の含有量が85~99.5質量%であり、変性ポリオレフィン樹脂(C)の含有量が0.5~15質量%であり、樹脂組成物の極限粘度が0.8~1.2、290℃におけるメルトフローレートが3.5~5.5g/10分、カルボキシル末端基濃度が30当量/t以下であるポリエステル樹脂組成物及びこのポリエステル樹脂組成物を用いて成形されている発泡成形品が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2018-90761号公報
【特許文献2】特開2004-323554号公報
【特許文献3】特表2022-533926号公報
【特許文献4】特開2018-111812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一方、熱可塑性樹脂製容器に収容した飲食料品を電子レンジで加熱した場合、熱可塑性樹脂製容器を把持し、電子レンジから取り出して所望の場所に移動させる。この時、加熱された食品を円滑に移動させるためには、把持した熱可塑性樹脂製容器が変形しないことが求められる。
【0011】
しかしながら、特許文献1~4に記載されている熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡容器は、加熱された食品による熱と、食品自体の重みとによって、容易に変形するという問題点を有しており、電子レンジを用いて食品を加熱した場合においても変形を生じ難い耐熱性に優れた発泡容器が所望されている。
【0012】
本発明は、加熱された状態において応力が加えられても変形し難い(耐熱性に優れた)熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡成形品を提供する。
【0013】
本発明は、例えば、電子レンジを用いて飲食料品を加熱した場合、加熱された飲食料品による熱と、飲食料品自体の重みにもかかわらず変形し難い熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡容器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡成形品は、
熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡体を含む発泡層を有し、
上記熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡体は、熱可塑性ポリエステル系樹脂を含み、
上記熱可塑性ポリエステル系樹脂は、285℃下でのGC/MSで発生するエステル系化合物及びエーテル系化合物の総量が、熱可塑性ポリエステル系樹脂の全量に対して1000ppm以下である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡成形品は、加熱された状態にて荷重が加えられた場合にあっても変形し難い。
【0016】
したがって、本発明の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡成形品は、飲食料品を収容するための容器として好適に用いることができる。この容器に収容された飲食料品を電子レンジなどを用いて加熱した場合、容器は、加熱された食品の熱及び質量が加わっても変形し難く、食品を安定的に収容した状態にて所望場所まで円滑に移動させることができる。
【0017】
なお、本発明において、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡成形品の変形とは、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡成形品に加わっている荷重などの応力を除去した後も熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡成形品が元の状態に復元しない状態をいう。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡成形品(以下、単に「発泡成形品」ということがある)は、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡体を含む発泡層を有している。発泡層において、何れか一方の表面部の結晶化度と中間部の結晶化度との差が15%以下である。
【0019】
なお、発泡成形品における発泡層の表面部とは、発泡成形品の発泡層の表面とこの表面から深さ0.2mmの部分との間にある部分をいう。例えば、発泡成形品が容器である場合、発泡成形品の発泡層の表面とは、容器の内面(収容部を形成している面)及び外面をいう。発泡成形品が発泡シートの熱成形品である場合、発泡成形品の発泡層の表面とは、発泡成形品の原反となる発泡シートの発泡層の主面(最も面積の大きな面とこの面とは反対側の面)に対応する表面をいう。表面からの深さとは、表面に対して直交する方向の深さをいう。発泡成形品の発泡層の中間部とは、発泡成形品から発泡層の両方の表面部を除いた発泡層の残余部分をいう。
【0020】
発泡成形品の発泡層において、何れか一方又は双方の表面部の結晶化度と中間部の結晶化度との差が15%以下であると、発泡成形品は、加熱された状態にて荷重が加えられた場合にあっても変形し難く、優れた耐熱性を有している。
【0021】
発泡成形品において、表面部の結晶化度と中間部の結晶化度との差を15%以内として発泡層の厚み方向の結晶化度を同程度とし、熱収縮率が厚み方向に同程度となるようにしている。発泡成形品において、その厚み方向の熱収縮率を同程度とすることによって、加熱された状態にて応力が加えられた場合にあっても、熱収縮率が大きく変化する界面部分が生じてせん断応力が生じて部分的に機械的強度が低下することを防止している。したがって、発泡成形品は、優れた機械的強度を維持し、変形などの破損が生じないという優れた効果を奏する。
【0022】
発泡成形品において、発泡層の何れか一方の表面部の結晶化度と、発泡層の中間部の結晶化度との差は、15%以下であり、14%以下が好ましく、13%以下がより好ましく、12%以下がより好ましく、7%以下がより好ましい。
【0023】
発泡成形品において、発泡層における両方の表面部の結晶化度と、発泡層の中間部の結晶化度との差は、15%以下が好ましく、14%以下がより好ましく、13%以下がより好ましく、12%以下がより好ましく、7%以下がより好ましい。
【0024】
発泡成形品における発泡層の表面部の結晶化度は、10%以上が好ましく、12%以上がより好ましく、14%以上がより好ましい。発泡成形品における発泡層の表面部の結晶化度は、40%以下が好ましく、35%以下がより好ましく、30%以下がより好ましい。表面部の結晶化度を上記範囲内とすることによって、発泡成形品に優れた耐熱性を付与することができると共に、脆性を改善することができる。
【0025】
発泡成形品における発泡層の中間部の結晶化度は、10%以上が好ましく、12%以上がより好ましく、14%以上がより好ましい。発泡成形品における発泡層の中間部の結晶化度は、40%以下が好ましく、35%以下がより好ましく、30%以下がより好ましい。表面部の結晶化度を上記範囲内とすることによって、発泡成形品に優れた耐熱性を付与することができると共に、脆性を改善することができる。
【0026】
発泡成形品全体の結晶化度は、10%以上が好ましく、12%以上がより好ましく、14%以上がより好ましい。発泡成形品全体の結晶化度は、40%以下が好ましく、35%以下がより好ましく、30%以下がより好ましい。表面部の結晶化度を上記範囲内とすることによって、発泡成形品に優れた耐熱性を付与することができると共に、脆性を改善することができる。
【0027】
発泡成形品について、表面部、中間部、及び、発泡成形品全体の結晶化度は、下記の要領で測定された値をいう。
【0028】
結晶化度を測定する部分に応じて下記の要領で試料5~6mgを作製する。
【0029】
発泡層の表面部の結晶化度を測定する場合は、発泡成形品における発泡層の表面と表面から深さ0.2mmの部分との間にある部分を0.2mmスラーサー又は剃刀を用いてスライスして試料を作製する。
【0030】
中間部の結晶化度を測定する場合は、発泡成形品の発泡層から上述の要領で表面部を全面的に除去し、発泡層の残存部分から試料を切り出して作製する。
【0031】
発泡成形品全体の結晶化度を測定する場合は、発泡成形品の厚み方向の全体が含まれるように試料を切り出して作製する。
【0032】
得られた試料に基づいて下記測定装置を用いて、下記測定条件下にてJIS K7122にしたがってDSC測定を行い、結晶化熱量を求める。
(測定装置)
DSC装置:示差走査熱量計装置 DSC7000X型(日立ハイテクサイエンス社製) (測定条件)
試料量:5.5±0.5mg
リファレンス(アルミナ)量:5mg
窒素ガス流量:20mL/min
試験数:2
【0033】
上記で得られたDSC曲線の融解熱量及び結晶化熱量を用いて、下記式に基づいて結晶化度を算出する。
結晶化度(%)
=[{融解熱量の絶対値(J/g)-結晶化熱量の絶対値(J/g)}
/完全結晶化熱量(J/g)]×100
【0034】
発泡成形品としては、特に限定されず、例えば、飲食料品の包装用容器、調味料の包装用容器、弁当箱、果物容器、野菜容器などの飲食料品の包装用容器、精密機器の包装材、電気製品の緩衝用の包装材、日用品などが挙げられる。
【0035】
発泡成形品の発泡層の厚みは、0.2~8.0mmが好ましく、0.3~7.0mmがより好ましい。発泡シートの厚みが0.2mm以上であると、発泡成形品の強度を向上させることができる。発泡層の厚みが8.0mm以下であると、発泡成形品は、その厚み方向の結晶化度を同程度に容易に調整することができ、加熱状況下においても優れた機械的強度を有し、優れた耐熱性を有する。
【0036】
発泡成形品の発泡層の発泡倍率は、1.5~6.0倍が好ましく、2.0~5.0倍がより好ましい。発泡シートの発泡倍率が1.5倍以上であると、発泡成形品の断熱性が向上する。発泡シートの発泡倍率が6.0倍以下であると、発泡成形品の機械的強度が向上する。なお、発泡層の発泡倍率は、発泡層を構成している合成樹脂全体の見掛けの密度の逆数とする。
【0037】
発泡成形品は、その発泡層の片面又は両面に熱可塑性樹脂非発泡シートが積層一体化されていてもよい。熱可塑性樹脂非発泡シートが積層一体化されていると、発泡成形品に加えられた熱が、熱可塑性樹脂非発泡シートを介して伝熱し拡散した状態で発泡層に伝えることができる。その結果、発泡成形品に部分的に結晶化度が高い部分が生成されることを低減し、発泡成形品は、加熱状況下においても優れた機械的強度を有し、優れた耐熱性を有する。
【0038】
上記熱可塑性非発泡シートとしては、発泡層の表面に積層一体化させることができればよい。熱可塑性非発泡シートを構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、上述の熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂などが挙げられる。
【0039】
なお、発泡成形品は、添加剤が含有されていてもよい。このような添加剤としては、例えば、界面活性剤、着色剤、収縮防止剤、難燃剤、滑剤、劣化防止剤などが挙げられる。
【0040】
発泡成形品は、汎用の方法を用いて製造することができる。例えば、発泡成形品は、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シート(以下、単に「発泡シート」ということがある)を汎用の方法を用いて種々の形状に熱成形することによって製造することができる。
【0041】
熱成形方法としては、公知の成形方法を用いることができ、例えば、真空成形及び圧空成形、又は、これらの応用としてのフリードローイング成形、プラグ・アンド・リッジ成形、リッジ成形、マッチド・モールド成形、ストレート成形、ドレープ成形、リバースドロー成形、エアスリップ成形、プラグアシスト成形、プラグアシストリバースロード成形などが挙げられる。なお、発泡シートの熱成形前に、発泡シートを任意の温度に加熱して発泡シートを軟化させてもよい(予備加熱工程)。予備加熱工程において、発泡シートの表面温度は、120~130℃が好ましい。
【0042】
発泡シートは、必要に応じて、熱成形時又は熱成形後に加熱されて結晶化処理が施されてもよい。発泡シートに結晶化処理が施されることによって、熱可塑性ポリエステル系樹脂の一部が結晶化される。結晶化処理の方法は、公知の要領で行なわれればよく、例えば、熱成形に用いられる金型を熱可塑性ポリエステル系樹脂の結晶化温度以上に加熱すればよい。
【0043】
発泡シートを熱成形することによって発泡成形品を製造する場合、原反となる発泡シートは、特に限定されない。発泡シートに結晶化処理を施す時に、発泡シートを緩やかに加熱することによって、表面部の結晶化度と中間部の結晶化度との差を15%以下にすることができる。発泡シートとしては、熱成形時間を短縮することができ且つ結晶化度を容易に制御することができるので、後述する発泡シートを用いることが好ましい。
【0044】
後述する発泡シートは、汎用の要領にて厚み方向の結晶化度が同程度となるように、しかも、適切な結晶化度に容易に結晶化させることができる。したがって、得られる発泡成形品は、優れた耐熱性を有しており、加熱状態下での応力の付加にもかかわらず変形し難いと共に、脆性も改善され、割れの発生も低減化することができる。
【0045】
上記発泡成形品を熱成形するための原反となる発泡シートとしては、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡体を含む発泡層を有し、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡体は、熱可塑性ポリエステル系樹脂を含むことが好ましい。
【0046】
熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡体を構成している熱可塑性ポリエステル系樹脂としては、285℃下でのGC/MSで発生するエステル系化合物及びエーテル系化合物の総量(以下、単に「エステル系化合物及びエーテル系化合物」ということがある)が、熱可塑性ポリエステル系樹脂の全量に対して1000ppm以下であることが好ましい。
【0047】
熱可塑性ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンフラノエート(PEF)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、テレフタル酸とエチレングリコールとシクロヘキサンジメタノールの共重合体などが挙げられる。熱可塑性ポリエステル系樹脂は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂(PTT)などの芳香族熱可塑性ポリエステル系樹脂が好ましく、ポリエチレンテレフタレート(PET)がより好ましい。なお、熱可塑性ポリエステル系樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0048】
熱可塑性ポリエステル系樹脂としては、いわゆるバイオポリエチレンテレフタレート(バイオPET)、バイオポリエチレンフラノエート(バイオPEF)などの植物由来のポリエステル系樹脂でもよい。また、熱可塑性ポリエステル系樹脂としては、いわゆるリサイクル原料でもよい。リサイクル原料としては、例えば、発泡成形品の製造工程で生じるスケルトン、使用後の回収品などが挙げられる。スケルトンは、発泡シートを熱成形して発泡成形品を成形する際に、熱成形後の発泡シートから発泡成形品を打ち抜いた後に生じる残部である。リサイクル原料としては、発泡シートと同じ樹脂組成のものが好ましい。
【0049】
植物由来のポリエステル系樹脂は、植物原料(例えば、サトウキビ、トウモロコシなど)を由来とするポリマーである。「植物原料を由来とするポリマー」とは、植物原料から合成され又は抽出されたポリマーが挙げられる。また、例えば、「植物原料を由来とするポリマー」とは、植物原料から合成され又は抽出されたモノマーが重合されたポリマーが挙げられる。「植物原料から合成され又は抽出されたモノマー」には、植物原料から合成され又は抽出された化合物を原料として合成されたモノマーが含まれる。植物由来の熱可塑性ポリエステル系樹脂は、モノマー単位の一部が「植物原料を由来とするモノマー単位」である熱可塑性ポリエステル系樹脂を含む。
【0050】
熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡体を構成している合成樹脂中における熱可塑性ポリエステル系樹脂の含有量は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がより好ましく、99質量%以上がより好ましく、100質量%がより好ましい。
【0051】
熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡体に含まれている熱可塑性ポリエステル系樹脂は、285℃下でのGC/MSで発生するエステル系化合物及びエーテル系化合物の総量が、熱可塑性ポリエステル系樹脂の全量に対して1000ppm以下であることが好ましい。
【0052】
発明者が鋭意検討した結果、明確に解明されていないが、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡体に含まれている熱可塑性ポリエステル系樹脂の結晶化処理時において、低分子量のエステル系化合物及びエーテル系化合物が結晶核剤の作用を奏し、熱可塑性ポリエステル系樹脂の結晶化を促進させると考えられる。
【0053】
低分子量のエステル系化合物及びエーテル化合物は、熱可塑性ポリエステル系樹脂に比して移動して凝集しやすく、この凝集物が結晶核剤となって熱可塑性ポリエステル系樹脂の結晶化を促進させていると考えられる。
【0054】
また、発泡シートに加えられた熱は、吸熱され、内部に伝わりにくい。したがって、発泡シート及びこの発泡シートを熱成形して得られる熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡成形品(以下、単に「発泡成形品」ということがある)は、低分子量のエステル系化合物及びエーテル系化合物を結晶核剤として、表面部の結晶化が内部の結晶化に比して進行し、表面部の結晶化度が内部の結晶化度に比して高くなりやすい。
【0055】
発泡シート及び発泡成形品において、その厚み方向に結晶化度が不均一であると、結晶化度の不均一化に起因して、厚み方向に熱収縮率も不均一化する。発泡シート及び発泡成形品において、その厚み方向に熱収縮率が不均一化すると、加熱された状態にて応力が加えられると、熱収縮率が大きく変化する界面部分において、せん断応力が生じる。その結果、発泡シート及び発泡成形品の機械的強度が低下して変形などの破損を生じる。
【0056】
そこで、発泡シート及び発泡成形品の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡体の熱可塑性ポリエステル系樹脂について、好ましくは、285℃下でのGC/MSで発生するエステル系化合物及びエーテル系化合物の総量を熱可塑性ポリエステル系樹脂の全量に対して1000ppm以下にする。このように構成すると、発泡シート及び発泡成形品は、加熱によって、その表面部が内部に比して過度に結晶化が進行しないようにして、厚み方向の結晶化度を概ね同一とし又はその状態を維持し、加熱状態において応力が加えられた場合にあっても変形の生じがたい優れた耐熱性を有している。
【0057】
発泡シート及び発泡成形品において、加熱によって表面部が過度に結晶化することを防止して、発泡シート及び発泡成形品の脆性を改善することができる。
【0058】
熱可塑性ポリエステル系樹脂を285℃下でのGC/MSで発生するエステル系化合物及びエーテル系化合物は、熱可塑性ポリエステル系樹脂を285℃に加熱して生じる分解物であって、低分子量成分である。エステル系化合物及びエーテル系化合物には、ポリマーは含まれず、熱可塑性ポリエステル系樹脂が分解して生成されたモノマー成分及びオリゴマー成分である。エステル系化合物及びエーテル系化合物の分子量は、400以下が好ましく、200以下がより好ましい。
【0059】
エステル系化合物は、熱可塑性ポリエステル系樹脂が熱分解して生成した化合物と、熱可塑性ポリエステル系樹脂が熱分解して生成した成分がエステル反応を生じて生成した化合物と、熱可塑性ポリエステル系樹脂を架橋反応させる架橋剤が熱分解して生成した成分がエステル反応を生じて生成した化合物とを含み、分子中にエステル結合(-COO-)を含む。エステル系化合物としては、例えば、ピロメリット酸テトラメチルエステルなどが挙げられる。
【0060】
エーテル系化合物は、熱可塑性ポリエステル系樹脂が熱分解して生成した化合物と、熱可塑性ポリエステル系樹脂が熱分解して生成した成分が反応して生成した化合物と、熱可塑性ポリエステル系樹脂を架橋反応させる架橋剤が熱分解して生成した成分が反応して生成した化合物とを含み、分子中にエステル結合(-O-)を含む。エーテル系化合物としては、例えば、2、2―ジメトキシプロパンなどが挙げられる。
【0061】
発泡シートにおいて、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡体を構成している熱可塑性ポリエステル系樹脂において、285℃下でのGC/MSで発生するエステル系化合物及びエーテル系化合物の総量は、熱可塑性ポリエステル系樹脂の全量に対して、1000ppm以下が好ましく、900ppm以下がより好ましく、800ppm以下がより好ましく、750ppm以下がより好ましく、400ppm以下がより好ましく、300ppm以下がより好ましく、190ppm以下がより好ましい。
【0062】
発泡成形品において、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡体を構成している熱可塑性ポリエステル系樹脂において、285℃下でのGC/MSで発生するエステル系化合物及びエーテル系化合物の総量は、熱可塑性ポリエステル系樹脂の全量に対して、1000ppm以下が好ましく、900ppm以下がより好ましく、800ppm以下がより好ましく、750ppm以下がより好ましく、400ppm以下がより好ましく、300ppm以下がより好ましく、190ppm以下がより好ましい。
【0063】
熱可塑性ポリエステル系樹脂において、上記エステル系化合物及びエーテル系化合物の総量は、例えば、(1)エステル系化合物及びエーテル系化合物の含有量の少ない架橋剤を用いる方法、(2)後述する架橋剤の水分量を予め低減し、押出機で溶融混錬して熱可塑性ポリエステル系樹脂の架橋反応をさせる方法、(3)押出機の先端の吐出口(例えば、ダイの吐出口)から押出発泡された直後の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡体の表面温度下げる方法、(4)押出機の先端の吐出口(例えば、ダイの吐出口)から押出発泡させるときの発泡性組成物のせん断速度を下げる方法などを用いることによって低減化することができる。
【0064】
発泡シート及び発泡成形品において、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡体を構成している熱可塑性ポリエステル系樹脂における285℃下でのGC/MSで発生するエステル系化合物及びエーテル系化合物の総量は、下記の要領で測定された値をいう。
【0065】
発泡シート又は発泡成形品の発泡層の中央部から試料0.5gを切り取り、10mL遠沈管に採取し、アセトン5mL加え混合する。遠沈管を振とうした後、遠沈管内の溶液試料の上澄み液1μLを直接GC/MSに注入して下記測定条件にて測定する。検出ピークの面積値合計を100%とした時の各成分の面積値割合から算出する。
【0066】
装置 日本電子社製 ガスクロマトグラフ質量分析計 JMS-Q1000GC
カラム Agilent Technologies社製 DB-1(1.0μm×0.25mmφ×60m)
カラム温度 40℃(3min)昇温15℃/min→200℃昇温25℃/min→285℃(17.93min)
注入温度 285℃
注入量 1μL
Flow He=1.0mL/min
Run time 35min
Split ratio 1:10
Detector voltage -1400V
Interface temp. 250℃
Ion source temp. 250℃
Ionization current 300μA
Ionization energy 70eV
Monitoring mass SCAN(M/Z=20~500)
【0067】
発泡シートにおいて、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡体を構成している熱可塑性ポリエステル系樹脂のカルボキシ末端基の量は、100当量/トン以下であることが好ましく、80当量/トン以下がより好ましく、70当量/トン以下がより好ましく、60当量/トン以下がより好ましく、57当量/トン以下がより好ましく、50当量/トン以下がより好ましい。
【0068】
発泡成形品において、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡体を構成している熱可塑性ポリエステル系樹脂のカルボキシ末端基の量は、100当量/トン以下であることが好ましく、80当量/トン以下がより好ましく、70当量/トン以下がより好ましく、60当量/トン以下がより好ましく、57当量/トン以下がより好ましく、50当量/トン以下がより好ましい。
【0069】
熱可塑性ポリエステル系樹脂中のカルボキシ末端基は、後述する架橋剤による熱可塑性ポリエステル系樹脂の架橋を阻害する。架橋剤による熱可塑性ポリエステル系樹脂の架橋が阻害されると、熱可塑性ポリエステル系樹脂は結晶化しやすくなる。また、発泡シート及び発泡成形品に加えられた熱は内部に伝わりにくいため、発泡シート及び発泡成形品の結晶化が内部よりも表面部において促進され、その結果、厚み方向の結晶化度及び熱収縮率が不均一となり、発泡シート及び発泡成形品の機械的強度が低下して変形などの破損を生じる。
【0070】
熱可塑性ポリエステル系樹脂中におけるカルボキシ末端基の量を100当量/トン以下とすることによって、後述する架橋剤による熱可塑性ポリエステル系樹脂の架橋が阻害されるのを低減し、熱可塑性ポリエステル系樹脂の結晶化処理などの加熱時において、表面部の結晶化が内部の結晶化に比して過度に促進されることを抑制している。発泡シート及び発泡成形品において、その厚み方向の結晶化度が同程度となるように又はその状態を維持し、加熱状態下での応力の付加にもかかわらず、変形などの破損を低減し、発泡シート及び発泡成形品に優れた耐熱性を付与することができる。
【0071】
発泡シート及び発泡成形品において、加熱によって、表面部が過度に結晶化することを防止して、発泡シート及び発泡成形品の脆性を改善することができる。
【0072】
熱可塑性ポリエステル系樹脂中におけるカルボキシ末端基の量は、例えば、(1)後述する架橋剤の水分量を予め低減し、押出機で溶融混錬して熱可塑性ポリエステル系樹脂の架橋反応をさせる方法、(2)押出機の先端の吐出口(例えば、ダイの吐出口)から押出発泡された直後の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡体の表面温度を下げる方法、(3)押出機の先端の吐出口(例えば、ダイの吐出口)から押出発泡させるときの発泡性組成物のせん断速度を下げる方法などを用いることによって低減化することができる。
【0073】
なお、発泡シート及び発泡成形品において、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡体を構成している熱可塑性ポリエステル系樹脂のカルボキシ末端基の量は、下記の要領で測定された値をいう。
【0074】
発泡シート又は発泡成形品の発泡層の中央部から0.4gの試験片を採取し、ハサミで細かく裁断する。次に、試験片をベンジルアルコール10mLに供給し、ベンジルアルコールをアルミブロックヒーターで180℃にて10分加熱して試験片をベンジルアルコールに溶解させ、放冷後にベンジルアルコールにクロロホルム10mLを加えて試料液を作製する。試料液にフェノーレッド試薬を加え、滴定装置を用いて0.1N水酸化ナトリウム溶液で滴定し、終点までに要した滴定量から、熱可塑性ポリエステル系樹脂中のカルボキシ末端基の量を求める。
【0075】
発泡シートにおいて、熱可塑性ポリエステル系樹脂中の酢酸の含有量は、熱可塑性ポリエステル系樹脂の全量に対して100ppm以下が好ましく、80ppm以下がより好ましく、55ppm以下がより好ましく、40ppm以下がより好ましく、30ppm以下がより好ましい。
【0076】
発泡成形品において、熱可塑性ポリエステル系樹脂中の酢酸の含有量は、熱可塑性ポリエステル系樹脂の全量に対して100ppm以下が好ましく、80ppm以下がより好ましく、55ppm以下がより好ましく、40ppm以下がより好ましく、30ppm以下がより好ましい。
【0077】
熱可塑性ポリエステル系樹脂中の酢酸は、熱可塑性ポリエステル系樹脂の水酸基と反応するため、架橋剤による熱可塑性ポリエステル系樹脂の架橋を阻害する。架橋剤による熱可塑性ポリエステル系樹脂の架橋が阻害されると、上述の通り、発泡シート及び発泡成形品において、厚み方向の結晶化度及び熱収縮率が不均一となり、機械的強度が低下して変形などの破損を生じる。
【0078】
熱可塑性ポリエステル系樹脂中の酢酸の含有量を熱可塑性ポリエステル系樹脂の全量に対して100ppm以下とすることによって、発泡シート及び発泡成形品において、その厚み方向の結晶化度が同程度となるように又はその状態を維持し、加熱状態下での応力の付加にもかかわらず、変形などの破損を低減し、発泡シート及び発泡成形品に優れた耐熱性を付与することができる。
【0079】
発泡シート及び発泡成形品において、加熱によって、表面部が過度に結晶化することを防止して、発泡シート及び発泡成形品の脆性を改善することができる。
【0080】
なお、発泡シート及び発泡成形品において、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡体を構成している熱可塑性ポリエステル系樹脂中の酢酸の含有量は、下記の要領で測定された値をいう。
【0081】
発泡シート又は発泡成形品の発泡層の中央部から試料2gを採取する。次に、試料2gを専用容器に供給し、凍結粉砕装置(日本分析工業社製 凍結粉砕装置 商品名「JFC-300」)を用いて試料を凍結粉砕して粉末状にして凍結粉砕試料を作製する。凍結粉砕の条件は、液体窒素浸せき予備冷却時間を10分、振とう粉砕時間を30分とする。
【0082】
凍結粉砕試料約1gを洗浄済みの50mL容アイボーイに精秤する。次に、冷凍粉砕試料にイオン交換水50mLを注加して、よく混合して混合水を作製する。この混合水に超音波洗浄抽出を約10分間に亘って施す。混合水を水系0.20μmクロマトディスクでろ過した後、IC測定して酢酸イオン量を測定し、この酢酸イオン量を酢酸の含有量とする。
【0083】
[溶出イオン量測定(IC)]
装置:東ソー社IC IC-2001
測定元素 :CH3COO、NO3 Column TSKGEL superIC-AZ
Column temp. 40℃
Pump Injec.temp. R.T. Solven 3.2mM Na2CO3 + 1.9mM NaHCO3
Flow Rate 0.8mL/min
Run time 17min
Injec. Volume 30μL Detector 電気伝導度検出器
【0084】
発泡シートにおいて、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡体を構成している熱可塑性ポリエステル系樹脂の数平均分子量は、5000以上が好ましく、6000以上がより好ましく、7000以上がより好ましく、8000以上がより好ましく、9000以上がより好ましい。
【0085】
発泡シートにおいて、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡体を構成している熱可塑性ポリエステル系樹脂の数平均分子量は、20000以下が好ましく、18000以下がより好ましく、15000以下がより好ましく、12000以下がより好ましく、10000以下がより好ましい。
【0086】
発泡成形品において、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡体を構成している熱可塑性ポリエステル系樹脂の数平均分子量は、5000以上が好ましく、6000以上がより好ましく、7000以上がより好ましく、8000以上がより好ましく、9000以上がより好ましい。
【0087】
発泡成形品において、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡体を構成している熱可塑性ポリエステル系樹脂の数平均分子量は、20000以下が好ましく、18000以下がより好ましく、15000以下がより好ましく、12000以下がより好ましく、10000以下がより好ましい。
【0088】
熱可塑性ポリエステル系樹脂の数平均分子量を5000以上とすることによって、熱可塑性ポリエステル系樹脂のカルボキシ末端基の量を低減化することができ、上述の通り、発泡シート及び発泡成形品において、その厚み方向の結晶化度が同程度となるように又はその状態を維持し、加熱状態下での応力の付加にもかかわらず、変形などの破損を低減することができる。
【0089】
更に、熱可塑性ポリエステル系樹脂の数平均分子量を5000以上とすることによって、発泡シートの製造工程において、熱可塑性ポリエステル系樹脂の分解を低減化して上述したエステル系化合物及びエーテル系化合物の他、酢酸の生成を低減することができる。その結果、上述の通り、発泡シート及び発泡成形品に優れた耐熱性を付与することができる。
【0090】
また、熱可塑性ポリエステル系樹脂の数平均分子量を20000以下とすることによって、発泡シートの熱成形性を向上させ、発泡シートの熱成形時に熱可塑性ポリエステル系樹脂に加えられるせん断応力を緩和し、熱可塑性ポリエステル系樹脂の分解を低減化して上述したエステル系化合物及びエーテル系化合物の他、酢酸の生成を低減することができる。その結果、上述の通り、発泡シート及び発泡成形品に優れた耐熱性を付与することができる。
【0091】
発泡シートにおいて、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡体を構成している熱可塑性ポリエステル系樹脂のZ平均分子量は、150000以上が好ましく、170000以上がより好ましく、190000以上がより好ましく、200000以上がより好ましい。
【0092】
発泡シートにおいて、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡体を構成している熱可塑性ポリエステル系樹脂のZ平均分子量は、1000000以下が好ましく、800000以下がより好ましく、700000以下がより好ましく、500000以下がより好ましい。
【0093】
発泡成形品において、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡体を構成している熱可塑性ポリエステル系樹脂のZ平均分子量は、150000以上が好ましく、170000以上がより好ましく、190000以上がより好ましく、200000以上がより好ましい。
【0094】
発泡成形品において、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡体を構成している熱可塑性ポリエステル系樹脂のZ平均分子量は、1000000以下が好ましく、800000以下がより好ましく、700000以下がより好ましく、500000以下がより好ましい。
【0095】
熱可塑性ポリエステル系樹脂のZ平均分子量を150000以上とすることによって、熱可塑性ポリエステル系樹脂のカルボキシ末端基の量を低減化させることができ、上述の通り、発泡シート及び発泡成形品において、その厚み方向の結晶化度が同程度となるように又はその状態を維持して、加熱状態下での応力の付加にもかかわらず、変形などの破損を低減することができる。
【0096】
更に、熱可塑性ポリエステル系樹脂のZ平均分子量を150000以上とすることによって、発泡シートの製造工程において、熱可塑性ポリエステル系樹脂の分解を低減化して上述したエステル系化合物及びエーテル系化合物の他、酢酸の生成を低減化することができる。その結果、上述の通り、発泡シート及び発泡成形品に優れた耐熱性を付与することができる。
【0097】
また、熱可塑性ポリエステル系樹脂のZ平均分子量を500000以下とすることによって、発泡シートの熱成形性を向上させ、発泡シートの熱成形時に熱可塑性ポリエステル系樹脂に加えられるせん断応力を緩和し、熱可塑性ポリエステル系樹脂の分解を低減化して上述したエステル系化合物及びエーテル系化合物の他、酢酸の生成を低減化することができる。その結果、上述の通り、発泡シート及び発泡成形品に優れた耐熱性を付与することができる。
【0098】
なお、熱可塑性ポリエステル系樹脂の数平均分子量及びZ平均分子量の含有量は、下記の要領で測定された値をいう。
【0099】
発泡シート又は発泡成形品の中央部から試料5gを採取する。この試料に溶媒をHFIP0.5mL、クロロホルム0.5mLの順に加え軽く振とうし、5時間放置する。溶解確認後に10mLになるまでクロロホルムを加えて希釈し軽く振とうし、非水系0.45μmシリンジフィルター(島津ジーエルシー社製)でろ過して測定する。
浸漬時間:24.0±2.0hr(完全溶解)
比較試料:SRM706a及びMS-311、TR-8580
(測定装置)
GPC装置:東ソー社製、HLC-8320GPC(RI検出器・UV検出器内蔵)
ガードカラム:TOSOH TSK ガードカラム Hxl-H(6.0mmI.D.×4cm)×1本
カラム(リファレンス):TOSOH TSKgel SuperH-RC(6.0mmI.D.×15cm)×2本
カラム(サンプル):TOSOH TSKgel GMHxl(7.8mmI.D.×30cm)×2本
(測定条件)
カラム温度:40℃
検出器温度:40℃
ポンプ注入部温度:40℃
溶媒:クロロホルム
流量(リファレンス):0.5mL/min
流量(サンプル):1.0mL/min
実行時間:26min
データ集積時間:10~25min
データ間隔:500msec
注入容積:15μL(試料とTR-8580)/50μL(ShodexA・B、SRM706a、MS-311)
検出器:UV=254nm
【0100】
発泡シート中における無機物の含有量は、7質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。発泡成形品中における無機物の含有量は、7質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。無機物としては、特に限定されないが、例えば、タルク、酸化スズ、スメクタイト、ベントナイト、ドロマイト、セリサイト、長石粉、カオリン、マイカ、モンモリロナイトなどが挙げられる。
【0101】
発泡シート中における無機物の含有量が7質量%以下であると、発泡シートの製造時に熱可塑性ポリエステル系樹脂に加えられるせん断応力を緩和し、熱可塑性ポリエステル系樹脂の分解を低減化して上述したエステル系化合物及びエーテル系化合物の他、酢酸の生成を低減化することができる。その結果、上述の通り、発泡シート及び発泡成形品に優れた耐熱性を付与することができる。
【0102】
発泡シート中に無機物が存在していると、発泡シートに加えられた熱が無機物に吸収され、無機物の周囲にある熱可塑性ポリエステル系樹脂が過度に結晶化されることがある。したがって、発泡シート中の無機物の含有量を低減化することによって、熱可塑性ポリエステル系樹脂を全体的に均一に結晶化させ、発泡シート及び発泡成形品に優れた耐熱性を付与することができる。
【0103】
発泡成形品において、発泡成形品が加熱されると、発泡成形品に加えられた熱が無機物に吸収され、無機物の周囲とこれ以外の熱可塑性ポリエステル系樹脂の加熱度合いが相違して膨張度合いが相違し、膨張度合いが大きく相違する界面において機械的強度が低下して、発泡成形品の変形が生じることがある。したがって、発泡成形品中の無機物の含有量を低減化することによって、発泡成形品の耐熱性を向上させることができる。
【0104】
なお、発泡シート及び発泡成形品中における無機物の含有量は、下記の要領で測定された値をいう。
【0105】
発泡シート又は発泡成形品から試料1.0g採取し、下記測定装置を用いて、下記測定条件のもと、灰分量を求め、発泡シート又は発泡成形品中の無機物の含有量を測定する。
(測定装置)
・マイクロウェーブ式マッフル炉 Phoenix(CEM社製)
・分析用電子天秤 GR-200(エー・アンド・デイ社製)
(灰化方法)
・試料1.0gを入れた容器を上記装置に入れ、下記条件にて30分灰化する。
灰化条件:DWELL TIME=30min、OPERATING TEMP=800 ℃
(算出方法)
無機物量(質量%)=100×{(灰化後の容器重量)-(容器のみの重量)}
/{試料(発泡シート又は発泡成形品の質量=1.0g)}
【0106】
[熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートの製造方法]
次に、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートの製造方法について説明する。発泡シートの製造方法は、公知の製造方法を用いることができる。
【0107】
発泡シートの製造方法としては、例えば、熱可塑性ポリエステル系樹脂、架橋剤及び発泡剤を含む発泡性組成物を押出機にて溶融混練する溶融混練工程と、押出機の先端の吐出口から発泡性組成物を押出発泡する発泡工程とを含む発泡シートの製造方法が挙げられる。なお、押出機は、短軸押出機又は二軸押出機であってもよい。押出機は、複数の押出機を接続してなるタンデム型押出機であってもよい。
【0108】
原料となる熱可塑性ポリエステル系樹脂の極限粘度(IV値)は、0.50~2.00が好ましく、0.80~1.50がより好ましい。熱可塑性ポリエステル系樹脂の極限粘度が上記範囲内であると、発泡シートの製造工程において、熱可塑性ポリエステル系樹脂の分解を低減し、発泡シートを厚み方向に均一に結晶化させることができる。
【0109】
なお、熱可塑性ポリエステル系樹脂の極限粘度は、テトラクロロエタンとフェノールとが1対1の体積割合で混合された混合溶剤を用い、この溶剤100ccに1.0gの熱可塑性ポリエステル系樹脂を溶解させて樹脂溶液を作り、この樹脂溶液の20℃における粘度を測定し、この粘度に基づいて算出される。
【0110】
発泡性組成物中の熱可塑性ポリエステル系樹脂は、押出機内において架橋剤によって架橋される。架橋剤としては、熱可塑性ポリエステル系樹脂を架橋させることができれば、特に限定されない。架橋剤としては、例えば、分子中に複数個のカルボン酸無水物基(-CO-O-CO-)を有している化合物(例えば、無水ピロメリット酸などのカルボン酸二無水物など)、多官能エポキシ化合物、オキサゾリン化合物などが挙げられ、分子中に複数個のカルボン酸無水物基を有している化合物が好ましい。発泡シートの厚み方向の結晶化度が概ね同程度となるように結晶化を図ることができるので、カルボン酸二無水物がより好ましく、無水ピロメリット酸がより好ましい。
【0111】
架橋剤中に含まれている水分量は、0.1質量%以下であることが好ましい。0.07質量%以下がより好ましく、0.05質量%以下がより好ましく、0.01質量%以下がより好ましい。
【0112】
架橋剤中の水分量が0.1質量%以下であると、熱可塑性ポリエステル系樹脂の加熱分解を低減し、熱可塑性ポリエステル系樹脂のカルボキシ末端基の量を低減化させることができる。また、架橋剤が分子中に複数個のカルボン酸無水物基を有している化合物を含む場合、この化合物の自己開環を低減し、熱可塑性ポリエステル系樹脂のカルボキシ末端基の量を低減化させることができる。熱可塑性ポリエステル系樹脂のカルボキシ末端基の量を低減化させて、上述の通り、発泡シート及びこの発泡シートを熱成形して得られる発泡成形品は、加熱状況下においても優れた機械的強度を有し、優れた耐熱性を有する。
【0113】
なお、架橋剤中の水分量は、下記の要領にて測定された値をいう。ブレンダーに原料となる架橋剤をバイアル管(島津ジーエルシー社製 10mLスクリューバイアル)に1~2g採取し、蓋(島津ジーエルシー社製 銀色スクリューキャップセプタム付き)をする。また、この際、架橋剤のみの水分量を測定するため、バイアル管にブレンダー前の空気を採取し同様に蓋をしたこれをブランクとする。
【0114】
水分率は、試料を三菱化学アナリテック社製「CA-200」カールフィッシャー水分測定装置及び「VA-236S」水分気化装置にセットして測定する。測定時の陽極液、陰極液にはそれぞれ三菱ケミカル社製アクアミクロンAX、アクアミクロンCXUを使用する。測定温度は128℃とする。キャリアガスはN2を用いる。キャリアガスの流量は250mL/minとする。試料の試験回数は3回とする。試料採取場所の空気のみでの水分量を2回測定し、その平均値をブランク値とする。各測定結果からブランク値を減算し、試料質量で徐して試料の水分量(質量%)を算出する。試料の水分量(質量%)を次式で算出した。最終結果として、3回の測定結果を相加平均して試料の水分量(質量%)とする。
架橋剤中の水分量(質量%)
=[実測水分量(μg)-ブランク水分量(μg)]
÷1000000÷試料重量(g)×100
【0115】
架橋剤中の酢酸の含有量は、架橋剤の全量に対して1000ppm以下が好ましく、700ppm以下がより好ましく、500ppm以下がより好ましい。なお、架橋剤中の酢酸の含有量は、架橋剤2gを試料としたこと以外は、熱可塑性ポリエステル系樹脂中の酢酸の含有量の測定方法と同様の要領で測定される。
【0116】
架橋剤中の酢酸は、熱可塑性ポリエステル系樹脂の水酸基と反応するため、架橋剤による熱可塑性ポリエステル系樹脂の架橋を阻害する。架橋剤による熱可塑性ポリエステル系樹脂の架橋が阻害されると、上述の通り、発泡シート及び発泡成形品において、厚み方向の結晶化度及び熱収縮率が不均一となり、機械的強度が低下して変形などの破損を生じる。
【0117】
架橋剤中の酢酸の含有量を架橋剤の全量に対して1000ppm以下とすることによって、発泡シート及び発泡成形品において、その厚み方向の結晶化度が同程度となるように又はその状態を維持して、加熱状態下での応力の付加にもかかわらず、変形などの破損を低減することができる。
【0118】
得られる発泡シート及び発泡成形品において、表面部が過度に結晶化することを防止して、発泡シート及び発泡成形品の脆性を改善することができる。
【0119】
架橋剤は、エステル系化合物及びエーテル系化合物の総量が、架橋剤の全量に対して1000ppm以下であることが好ましく、800ppm以下であることがより好ましい。架橋剤において、エステル系化合物及びエーテル系化合物の総量が1000ppm以下であると、発泡シート及び発泡成形品は、結晶化処理などの加熱によって、厚み方向の結晶化度を同程度とし又は結晶化度を同程度に維持することができ、加熱状態において応力が加えられた場合にあっても変形の生じがたい優れた耐熱性が付与される。得られる発泡シート及び発泡成形品において、表面部が過度に結晶化することを防止して、発泡シート及び発泡成形品の脆性を改善することができる。
【0120】
なお、架橋剤において、エステル系化合物及びエーテル系化合物の総量は、架橋剤0.5gを試料として用いること以外は、上述した、発泡シート中のエステル系化合物及びエーテル系化合物の総量の測定方法と同様の要領で測定される。
【0121】
発泡性組成物中における架橋剤の含有量は、熱可塑性ポリエステル系樹脂100質量部に対して0.05質量部以上が好ましく、0.08質量部以上がより好ましい。発泡性組成物中における架橋剤の含有量は、熱可塑性ポリエステル系樹脂100質量部に対して0.5質量部以下が好ましく、0.3質量部以下がより好ましい。架橋剤の含有量が0.05質量部以上であると、熱可塑性ポリエステル系樹脂の架橋を全体的に均一に行なうことができ、発泡シートをその厚み方向に同程度に結晶化させることができる。よって、発泡シート及びこの発泡シートを熱成形して得られる発泡成形品は、加熱状況下においても優れた機械的強度を有し、優れた耐熱性を有する。
【0122】
発泡剤としては、熱可塑性ポリエステル系樹脂を発泡させることができれば、特に限定されない。発泡剤としては、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ヘキサンなどの飽和脂肪族炭化水素、ジメチルエーテルなどのエーテル類、塩化メチル、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1-ジフルオロエタン、モノクロロジフルオロメタンなどのフロン、二酸化炭素、窒素などが挙げられ、ジメチルエーテル、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、二酸化炭素、窒素が好ましい。発泡剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0123】
なお、押出機に供給する発泡剤の量は、製造しようとする発泡シートの発泡倍率に応じて適宜、調整されればよい。
【0124】
溶融状態の発泡性組成物を押出機の先端の吐出口から押出発泡させることによって発泡シートを製造することができる。なお、発泡性組成物は、押出機に接続したサーキュラーダイから円筒状に押出発泡した後、押出方向に切断することによってシート状としてもよいし、押出機から発泡性組成物をシート状に押出発泡してもよい。
【0125】
押出機の先端の吐出口(ダイ)から押出発泡させる時の発泡性組成物のせん断速度は、7500s-1以下であることが好ましい。6500s-1以下であることがより好ましく、6000s-1以下であることがより好ましい。5000s-1以下であることがより好ましく、4000s-1以下であることがより好ましい。発泡性組成物のせん断速度が7500s-1以下であると、熱可塑性ポリエステル系樹脂の分解による酢酸の発生を低減し、発泡シート及び発泡成形品に優れた耐熱性を付与し、加熱状態下での応力の付加にもかかわらず、変形などの破損を低減することができる。
【0126】
なお、発泡性組成物の上記せん断速度は、押出機の先端の吐出口の面積及び発泡性組成物の吐出量に基づいて算出することができる。発泡性組成物の上記せん断速度は、押出発泡時の発泡性組成物の温度や、押出機の先端の吐出口の開口度合いを調整することによって制御することができる。
【0127】
また、押出機の先端の吐出口から押出発泡された直後の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡体の表面温度は、310℃以下が好ましく、305℃以下がより好ましく、300℃以下がより好ましい。押出機の先端の吐出口から押出発泡された直後の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡体の表面温度は、275℃以上が好ましい。熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡体の上記表面温度が310℃以下であると、熱可塑性ポリエステル系樹脂の分解による酢酸の発生を低減し、発泡シート及び発泡成形品に優れた耐熱性を付与し、加熱状態下での応力の付加にもかかわらず、発泡シート及び発泡成形品の変形などの破損を低減することができる。熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡体の上記表面温度が275℃以上であると、押出発泡後の冷却工程における冷却装置(例えば、マンドレルなど)との摩擦抵抗を低減し、発泡シートに切断などの損傷が生じることを防止して、発泡シートの表面性を向上させることができる。
【0128】
発泡シートの片面又は両面に熱可塑性樹脂非発泡シートを積層一体化させる場合、公知の方法が用いられればよい。発泡シートの表面に熱可塑性樹脂非発泡シートを積層一体化させる方法としては、例えば、(1)発泡シートと熱可塑性樹脂非発泡シートを共押出によって積層一体化させる方法、(2)発泡シートと熱可塑性樹脂非発泡シートをそれぞれ製造した後、発泡シートの表面に熱可塑性樹脂非発泡シートを熱融着により又は接着剤を介して積層一体化させる方法などが挙げられる。
【0129】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本実施例に何ら限定されるものでない。
【実施例0130】
実施例及び比較例において、下記の化合物を用いた。
(熱可塑性ポリエステル系樹脂)
・ポリエチレンテレフタレート(遠東新世紀社製 商品名「CH611」、IV値:1.06)
【0131】
(架橋剤)
・無水ピロメリット酸1(PMDA1、濮陽盛華徳加工社製、エステル系化合物及びエーテル系化合物の総量:700ppm、酢酸の含有量:0ppm)
・無水ピロメリット酸2(PMDA2、ダイセル社製、エステル系化合物及びエーテル系化合物の総量:300ppm、酢酸の含有量:1200ppm)
【0132】
(実施例1~9、比較例1~4)
ポリエチレンテレフタレートを100℃にて16時間乾燥させた。タルク(気泡調整剤)を130℃にて16時間乾燥させた。
【0133】
アルミ袋(エーディーワイ社製 商品名「MBY-92100」)に架橋剤10kg及び除湿剤(豊田化工社製 N(シロ)100G)を10袋投入し、ヒートシールにてアルミ袋を密閉した後、25℃にて表1に示した乾燥時間に亘って静置して乾燥させた。乾燥後の架橋剤に含まれている水分量を表1に示した。乾燥時間が「0時間」である場合は、上記乾燥工程は行なわなかったことを意味する。比較例4においては、除湿剤を用いることなく、架橋剤を100℃に維持した乾燥機内に4時間静置することによって乾燥させた。また、乾燥前の架橋剤について、エステル系化合物及びエーテル系化合物の総量(エステル・エーテル総量)、並びに、酢酸の含有量(酢酸量)を表1に示した。
【0134】
短軸押出機(スクリュー径:φ90mm)を用意し、短軸押出機の先端にサーキュラーダイ(口径:35mm)を取り付けた。押出機の最高設定温度を285℃とした。表1に示した所定量のポリエチレンテレフタレート、タルク及び架橋剤を混合した上で、短軸押出機(スクリュー径:φ90mm)に供給して溶融混練した。更に、押出機中に265℃に設定したゾーンからブタンガスを表1に示した流量にて注入した。押出機内にて溶融混練された、ポリエチレンテレフタレート、架橋剤及びブタンを含む発泡性組成物をサーキュラーダイの吐出口から押出発泡させて、円筒状のポリエチレンテレフタレート発泡体を製造し、このポリエチレンテレフタレート発泡体を連続的にマンドレルに供給して冷却した。冷却されたポリエチレンテレフタレート発泡体を切り開いてポリエチレンテレフタレート発泡シート(厚み:1.2mm、坪量:330g/m2、幅665mm)を得た。
を得た。
【0135】
押出機からの発泡性組成物の吐出量を表1に示した。押出機のサーキュラーダイの吐出口から押出発泡させた時の発泡性組成物のせん断速度を表1に示した。サーキュラーダイから吐出口から押出発泡させた直後のポリエチレンテレフタレート発泡体の表面温度(PET発泡体の表面温度)を表1に示した。
【0136】
得られたポリエチレンテレフタレート発泡シートについて、発泡層を構成しているポリエチレンテレフタレート中に含まれている、エステル系化合物及びエーテル系化合物の総量(エステル・エーテル総量)、カルボキシ末端基の量(カルボキシ末端基量)、酢酸の含有量(酢酸量)、無機物の含有量(無機物量)を上述の要領で測定し、その結果を表1に示した。
【0137】
得られたポリエチレンテレフタレート発泡シートについて、発泡層を構成しているポリエチレンテレフタレートの数平均分子量及びZ平均分子量を上述の要領で測定し、その結果を表1に示した。
【0138】
得られたポリエチレンテレフタレート発泡シートを150℃のヒーター槽に供給して90秒間予備加熱した。ポリエチレンテレフタレート発泡シートの表面温度は125℃であった。
【0139】
予備加熱されたポリエチレンテレフタレート発泡シートを180℃に加熱された雌雄型間に供給し、雄型側から圧縮空気を供給して、ポリエチレンテレフタレート発泡シートを雌型に密着させた後、雌雄型を6秒間、型締めして発泡シートを真空圧空成形して容器状の発泡成形品を得た。発泡成形品は、上端が開口した有底筒状に形成されており、上端開口端縁の全周には外方に向かってフランジ部が形成されていた。
【0140】
得られた発泡成形品の発泡層について、表面部、中間部、及び、発泡成形品全体の結晶化度を上述の要領で測定し、その結果を表1に示した。発泡層の両表面部の結晶化度は、同一であった。発泡成形体の発泡層において、表面部の結晶化度と中間部の結晶化度の差(結晶度の差)を表1に示した。
【0141】
得られた発泡成形品について、冷凍落下試験及びレンジアップ試験を下記の要領で測定し、その結果を表1に示した。
【0142】
得られた発泡成形品について、発泡層を構成しているポリエチレンテレフタレート中に含まれている、エステル系化合物及びエーテル系化合物の総量(エステル・エーテル総量)、カルボキシ末端基の量(カルボキシ末端基量)、酢酸の含有量(酢酸量)、無機物の含有量(無機物量)を上述の要領で測定し、その結果を表1に示した。
【0143】
得られた発泡成形品について、発泡層を構成しているポリエチレンテレフタレートの数平均分子量及びZ平均分子量を上述の要領で測定し、その結果を表1に示した。
【0144】
(冷凍落下試験)
得られた発泡成形品に250ccの水を入れた後、発泡成形品を-25℃の冷凍庫に24h静置した。しかる後、発泡成形品の上端開口部を両手で把持し、高さ1mから発泡整形品を落下させた。落下後の発泡成形品の状態を目視で確認し、以下のように評価した。
【0145】
A・・・発泡成形品に割れは発生していなかった。
B・・・発泡成形品に割れが生じていたが、割れは、発泡成形品の厚み方向に貫通して
いなかった。
C・・・発泡成形品にその厚み方向に貫通する割れが生じていた。
D・・・発泡成形品が複数片に粉砕し、発泡成形品内の氷が飛散した。
【0146】
(レンジアップ試験)
得られた発泡成形品に植物油100ccを供給し、発泡成形品の上端開口部をポリエチレン製フィルムによって密封した。植物油を収容した発泡成形品を電子レンジを用いて1500wの出力にて1分間、加熱した。しかる後、発泡成形品のフランジ部を片手で持ち上げ、以下の評価基準に基づいて評価した。
【0147】
A・・・発泡成形品を変形なく持ち上げることができた。
B・・・発泡成形品に反りが発生するものの、発泡成形品を変形なく持ち上げることが
できた。発泡成形品から全ての植物油を除去すると、発泡成形品は元の状態に
復元した。
C・・・発泡成形品に反りが発生するものの、発泡成形品内の植物油をこぼすことなく
、発泡成形品を変形なく持ち上げることができた。発泡成形品から全ての植物
油を除去すると、発泡成形品は元の状態に復元した。
D・・・発泡成形品の収容部が変形して内外方向に反転し、収容部内の植物油がこぼれ
た。発泡成形品から全ての植物油を除去しても、発泡成形品は元の状態に復元
しなかった。
【0148】
本発明は、熱成形性に優れており、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡成形品に容易に熱成形することができる。得られた発泡成形品は、加熱された状態にて荷重が加えられた場合にあっても変形し難く、食品を収容するための発泡容器として好適に用いることができる。