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特開2024-108564医用画像診断装置、医用情報処理装置および医用画像診断方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108564
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】医用画像診断装置、医用情報処理装置および医用画像診断方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/50 20240101AFI20240805BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
A61B6/03 375
A61B5/055 390
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012993
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 和代
(72)【発明者】
【氏名】吉田 真樹
(72)【発明者】
【氏名】塚越 伸介
【テーマコード(参考)】
4C093
4C096
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093AA24
4C093CA33
4C093DA02
4C093EE16
4C093EE30
4C093FF28
4C093FG14
4C096AA11
4C096AA18
4C096AB46
4C096AD14
4C096AD15
4C096DC28
4C096DD14
(57)【要約】
【課題】血管に関する検査を行う際の被検体への負担を低減すること。
【解決手段】実施形態に係る医用画像診断装置は、取得部と、設定部と、撮像部とを備える。取得部は、被検体の第1の部位における血管中の血液に含まれるヘモグロビン量の変化に関する血液情報を取得する。設定部は、血液情報に基づいて被検体の第2の部位に対する造影撮像に関する撮像条件を設定する。撮像部は、撮像条件に基づいて造影撮像を行う。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の第1の部位における血管中の血液に含まれるヘモグロビン量の変化に関する血液情報を取得する取得部と、
前記血液情報に基づいて前記被検体の第2の部位に対する造影撮像に関する撮像条件を設定する設定部と、
前記撮像条件に基づいて前記造影撮像を行う撮像部と
を具備する、医用画像診断装置。
【請求項2】
前記血液情報を解析することによって、前記ヘモグロビン量と時間とを対応付けた時間濃度曲線を生成する解析部
を更に具備し、
前記設定部は、前記時間濃度曲線に基づいて前記撮像条件を設定する、
請求項1に記載の医用画像診断装置。
【請求項3】
前記血液情報は、前記第1の部位を光学撮影して得られた画像であり、
前記解析部は、前記画像を解析することによって、前記時間濃度曲線を生成する、
請求項2に記載の医用画像診断装置。
【請求項4】
前記第1の部位を光学撮影することによって前記画像を取得する光学撮影装置
を更に具備する、
請求項3に記載の医用画像診断装置。
【請求項5】
前記血液情報は、前記第1の部位における血管をセンシングして得られた前記ヘモグロビン量の値を示すセンサ情報であり、
前記解析部は、前記センサ情報に基づいて、前記時間濃度曲線を生成する、
請求項2に記載の医用画像診断装置。
【請求項6】
前記第1の部位における血管をセンシングすることによって前記センサ情報を取得するセンサ
を更に具備する、
請求項5に記載の医用画像診断装置。
【請求項7】
前記時間濃度曲線と、前記被検体の情報を含む検査情報とを対応付けて記憶するメモリ
を更に具備する、
請求項2に記載の医用画像診断装置。
【請求項8】
前記メモリは、所与の時間濃度曲線を記憶し、
前記取得部は、前記メモリから前記所与の時間濃度曲線を取得し、
前記設定部は、前記所与の時間濃度曲線に基づいて前記撮像条件を設定する、
請求項7に記載の医用画像診断装置。
【請求項9】
前記所与の時間濃度曲線は、前記被検体の過去の時間濃度曲線または健常者の典型的な時間濃度曲線である、
請求項8に記載の医用画像診断装置。
【請求項10】
前記撮像条件は、前記ヘモグロビン量の値に関する閾値を含み、
前記被検体の血管へ造影剤を注入した後に、前記ヘモグロビン量の値が前記閾値以上か否かを判定する判定部
を更に具備し、
前記撮像部は、前記ヘモグロビン量の値が前記閾値以上となった時点に基づいて前記造影撮像を行う、
請求項1に記載の医用画像診断装置。
【請求項11】
前記設定部は、前記ヘモグロビン量の値が前記閾値以上となった時点を前記造影撮像の開始時間に設定する、
請求項10に記載の医用画像診断装置。
【請求項12】
前記設定部は、前記ヘモグロビン量の値が前記閾値以上となった時点と、前記第1の部位および前記第2の部位の位置関係とに基づいて、前記造影撮像の開始時間を設定する、
請求項10に記載の医用画像診断装置。
【請求項13】
前記第1の部位における血管は、総頸動脈、橈骨動脈、大腿動脈、膝窩動脈、後脛骨動脈、または足背動脈である、
請求項1に記載の医用画像診断装置。
【請求項14】
前記血液情報は、第1の血液情報であり、
前記取得部は、更に、前記被検体の第3の部位における血管中の血液に含まれるヘモグロビン量の変化に関する第2の血液情報を取得し、
前記設定部は、前記第1の血液情報および前記第2の血液情報に基づいて前記撮像条件を設定する、
請求項1に記載の医用画像診断装置。
【請求項15】
前記第1の血液情報を解析することによって、前記ヘモグロビン量と時間とを対応付けた第1の時間濃度曲線を生成し、前記第2の血液情報を解析することによって、第2の時間濃度曲線を生成する解析部
を更に具備し、
前記設定部は、前記第1の時間濃度曲線および前記第2の時間濃度曲線に基づいて前記撮像条件を設定する、
請求項14に記載の医用画像診断装置。
【請求項16】
前記撮像部は、X線コンピュータ断層撮影または磁気共鳴イメージングを利用して前記造影撮像を行う、
請求項1から請求項15までのいずれか一項に記載の医用画像診断装置。
【請求項17】
被検体の部位における血管中の血液に含まれるヘモグロビン量の変化に関する血液情報を取得する取得部と、
前記血液情報を解析することによって、前記ヘモグロビン量と時間とを対応付けた時間濃度曲線を生成する解析部と、
前記時間濃度曲線と所与の時間濃度曲線とを比較することによって疾病の有無を判定する判定部と
を具備する、医用情報処理装置。
【請求項18】
被検体の第1の部位における血管中の血管に含まれるヘモグロビン量の変化に関する血液情報を取得することと、
前記血液情報に基づいて前記被検体の第2の部位に対する造影撮像に関する撮像条件を設定することと、
前記撮像条件に基づいて前記造影撮像を行うことと
を具備する、医用画像診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、医用画像診断装置、医用情報処理装置および医用画像診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
X線コンピュータ断層撮影装置(X線CT装置)などの医用画像診断装置を用いた検査では、患部の血行の状態や組織の状態、機能状態を知るために、造影剤を用いた撮影が行われる。血管造影剤(以降、単に造影剤と称する)は造影剤注入装置(インジェクタ)を用いて、もしくは注射器によって手動で、患者(被検体)の血管内に注入される。被検体の血管内に注入された造影剤は血流によって患部(検査部位)に到達する。撮像装置は、造影剤の到達時、造影のピーク時、抜けていく様子など観察したいタイミングに合わせて撮影を行う。
【0003】
例えば、造影剤を用いたCT検査では被検体の状態に合わせた最適な造影タイミングで撮影をするために、ボーラストラッキング法やテストインジェクション法などを用いた撮影がおこなわれる。ボーラストラッキング法では、造影剤注入後、弱い線量で間欠撮影しながら造影剤の到達をモニタリングし、本撮影(本スキャン)の開始時間を制御する。また、テストインジェクション法では、本スキャンの前に少量の造影剤を試験的に注入して間欠撮影しながらモニタリングし、造影剤の到達、ピークまでの時間などをあらかじめ確認しおき、本スキャンの撮影開始時間を決める。
【0004】
上記のボーラストラッキング法およびテストインジェクション法で用いられる造影剤は人体への影響が少ない物質で作られているものの、造影剤を排出するための機能が弱っている人には禁忌とされている。また、CT検査で使用されるX線は人体に侵襲的である。よって、臨床現場において、造影剤およびX線照射の双方の減量が望まれている。
【0005】
また、上記のボーラストラッキング法もテストインジェクション法も、画像診断に必要なスキャンや造影剤の使用の他に、スキャンタイミングを合わせるための曝射や追加の造影剤の使用が発生するため、通常のCT検査と比べて被検体に過剰な負荷が生じている。
【0006】
更に、通常はモニタリング位置が一箇所に固定されているため、タイミングを合わせて撮影を開始しても、撮影距離が長い場合にはスキャン位置を移動させた先のスキャンが造影剤を追い越してしまうことがある。そのため、正しいタイミングで撮像ができず、再検査による被検体への余計な負担がかかる恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6-277202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、血管に関する検査を行う際の被検体への負担を低減することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態に係る医用画像診断装置は、取得部と、設定部と、撮像部とを備える。取得部は、被検体の第1の部位における血管中の血液に含まれるヘモグロビン量の変化に関する血液情報を取得する。設定部は、血液情報に基づいて被検体の第2の部位に対する造影撮像に関する撮像条件を設定する。撮像部は、撮像条件に基づいて造影撮像を行う。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態に係る医用画像診断装置と、医用画像診断装置に接続される血液情報取得装置およびインジェクタとを示すブロック図である。
図2図2は、第1の実施形態に係るX線CT装置の構成例を示すブロック図である。
図3図3は、第1の実施形態に係るX線CT装置の第1の実施例を示すフローチャートである。
図4図4は、第1の実施形態における光学撮影装置の設置位置を例示する説明図である。
図5図5は、第1の実施例における被検体周りのセットアップ状況を例示する模式図である。
図6図6は、第1の実施例におけるテストインジェクション中の表示画面を例示する図である。
図7図7は、第1の実施例におけるh-TDCの解析結果を例示する図である。
図8図8は、第1の実施例における造影撮像中の表示画面を例示する図である。
図9図9は、第1の実施形態に係るX線CT装置の第2の実施例を示すフローチャートである。
図10図10は、第2の実施例における被検体周りのセットアップ状況を例示する模式図である。
図11図11は、第2の実施例におけるボーラストラッキングを用いた造影撮像中の表示画面を例示する図である。
図12図12は、第1の実施形態に係るX線CT装置の第3の実施例を示すフローチャートである。
図13図13は、第3の実施例における被検体周りのセットアップ状況を例示する模式図である。
図14図14は、第3の実施例における複数のh-TDCの解析結果を例示する図である。
図15図15は、第2の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の構成例を示すブロック図である。
図16図16は、第3の実施形態に係る医用情報処理装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、医用画像診断装置の実施形態について詳細に説明する。
【0012】
図1は、実施形態に係る医用画像診断装置1と、医用画像診断装置1に接続される血液情報取得装置2およびインジェクタ3とを示すブロック図である。尚、医用画像診断装置1は、血液情報取得装置2およびインジェクタ3の少なくとも一方を備えてもよい。また、医用画像診断システムとして、医用画像診断装置1と、血液情報取得装置2およびインジェクタ3の少なくとも一方とを備えたシステムが実現されてもよい。
【0013】
医用画像診断装置1は、種々の撮像原理により被検体に医用撮像を施して医用画像を収集する。また、医用画像診断装置1は、医用撮像により造影検査を実施可能な装置である。例えば、医用画像診断装置1は、X線コンピュータ断層撮影装置(X線CT装置)、磁気共鳴イメージング装置、超音波診断装置、およびX線診断装置である。尚、医用画像診断装置1は、医用撮像により造影検査の実施を実施可能な装置であれば、これらに限らない。
【0014】
血液情報取得装置2は、被検体の部位における血管中を流れる血液に含まれる赤血球の量(ヘモグロビン量)の変化に関する血液情報を取得する。被検体の部位における血管は、例えば、総頸動脈、橈骨動脈、大腿動脈、膝窩動脈、後脛骨動脈、または足背動脈である。これらの血管は、いずれも体表付近の動脈である。これらの血管が含まれ得る体表の部位は、第1の部位およびモニタリング位置と呼ばれてもよい。ヘモグロビン量の変化は、例えば、血管内を生理食塩水または造影剤が流れることで血管内の血液が薄まることにより起こる。
【0015】
血液情報取得装置2は、例えば、光学センサおよび光学撮影装置である。血液情報取得装置2が光学センサである場合、光学センサは、被検体の部位における血管が存在する位置の体表に接して、或いは体表から離して設置される。光学センサは、血管内の赤血球で反射された特定の波長の光(例えば、緑色の波長の光)の強度を計測する。光学センサを用いて取得される血液情報は、特定の波長の光の強度に対応するヘモグロビン量の値(絶対値または相対値)を示すセンサ情報である。
【0016】
血液情報取得装置2が光学撮影装置である場合、光学撮影装置は、被検体の部位における血管が存在する位置を含む領域を撮影範囲とするように配置される。光学撮影装置は、撮影範囲に含まれる被検体の体表を撮影する。光学撮影装置を用いて取得される血液情報は、被検体の体表を撮影した動画、或いは連続的に撮影した画像である。光学撮影装置で取得された動画、或いは画像は、例えば、医用画像診断装置1によって画像解析されることによって、画素値がヘモグロビン量の値(絶対値または相対値)に変換される。尚、光学撮影装置で取得された動画、或いは画像は、モニタリング画像と呼ばれてもよい。以降の説明では、ヘモグロビン量の値は、平常時を100とした相対値で表すものとする。平常時とは、血管中に血液のみが流れている状態である。
【0017】
なお、血液情報取得装置2は、例えば、光学撮影装置および解析装置を備えてもよい。この場合、血液情報取得装置2は、光学撮影装置によって取得した動画、或いは画像を解析装置で画像解析することによってヘモグロビン量の値に変換する。または、光学撮影装置が解析装置(解析部)を備えてもよい。
【0018】
また、血液情報取得装置2は、被検体の複数の部位にそれぞれ対応する複数の血液情報を取得してもよい。複数の血液情報を取得する場合、用意する血液情報取得装置2は、一つでもよいし二つ以上でもよい。
【0019】
インジェクタ3は、医用画像診断装置1によって設定された注入開始のタイミング(注入タイミング)、注入量、および注入速度に応じて被検体に造影剤を注入する。インジェクタ3は、複数の種類の造影剤を使用する場合や、複数の濃度の造影剤を使用する場合、造影剤の他に生理食塩水を注入する場合には、造影剤および生理食塩水などの異なる液体がそれぞれ収容された複数のシリンジを有してもよい。複数のシリンジを有するインジェクタ3は、例えば、医用画像診断装置1からの指示に応じてシリンジを自動的に選択し、選択されたシリンジに収容された液体(造影剤または生理食塩水など)を被検体に注入するように動作する。
【0020】
以下では、説明を具体的に行うために、第1の実施形態に係る医用画像診断装置をX線CT装置とし、第2の実施形態に係る医用画像診断装置を磁気共鳴イメージング装置とする。また、第3の実施形態では、医用画像診断装置1に含まれる医用情報処理装置のみを用いた動作について説明する。更に、各実施形態に係る血液情報取得装置は、光学撮影装置とする。
【0021】
(第1の実施形態)
図2は、第1の実施形態に係るX線CT装置1Aの構成例を示すブロック図である。尚、図2では説明の都合上、複数の架台装置10が描画されているが、典型的にはX線CT装置1Aが備える架台装置10は1台である。
【0022】
図2のX線CT装置1Aは、架台装置10と、寝台装置30と、コンソール装置(医用情報処理装置)50とを有する。架台装置10は、被検体PをX線コンピュータ断層撮影(X線CT撮像)するための構成を有するスキャン装置(撮像装置)である。寝台装置30は、X線CT撮像の対象となる被検体Pを載置し、被検体Pを位置決めするための搬送装置である。医用情報処理装置50は、架台装置10を制御するコンピュータである。架台装置10と、寝台装置30と、医用情報処理装置50とは互いに通信可能に有線または無線で接続されている。また、X線CT装置1Aは、光学撮影装置2Aおよびインジェクタ3と接続される。
【0023】
X線CT装置1Aの各部のうち、例えば、架台装置10および寝台装置30はCT検査室に設置され、医用情報処理装置50はCT検査室に隣接する制御室に設置される。尚、医用情報処理装置50は、必ずしも制御室に設置されなくてもよい。例えば、医用情報処理装置50は、架台装置10および寝台装置30とともに同一の部屋に設置されてもよい。
【0024】
架台装置10は、X線管11と、X線検出器12と、回転フレーム13と、X線高電圧装置14と、制御装置15と、ウェッジフィルタ16と、コリメータ17と、データ収集回路(DAS:Data Acquisition System)18とを含む。
【0025】
X線管11は、X線を発生する。具体的には、X線管11は、熱電子を発生する陰極と、陰極から飛翔する熱電子を受けてX線を発生する陽極と、陰極と陽極とを保持する真空管とを含む。X線管11は、高圧ケーブルを介してX線高電圧装置14に接続されている。陰極には、X線高電圧装置14によりフィラメント電流が供給される。フィラメント電流の供給により陰極から熱電子が発生する。陰極と陽極との間には、X線高電圧装置14により管電圧が印加される。管電圧の印加により陰極から陽極に向けて熱電子が飛翔して陽極に衝突し、X線が発生する。発生されたX線は、被検体Pに照射される。陰極から陽極に向けて熱電子が飛翔することにより管電流が流れる。
【0026】
X線検出器12は、X線管11から発生され被検体Pを通過したX線を検出し、検出されたX線の線量に対応した電気信号をDAS18に出力する。X線検出器12は、チャネル方向に複数のX線検出素子が配列されたX線検出素子列がスライス方向(列方向)に複数配列された構造を有する。X線検出器12は、例えば、グリッド、シンチレータアレイおよび光センサアレイを有する間接変換型の検出器である。シンチレータアレイは、複数のシンチレータを有する。シンチレータは、入射X線量に応じた光量の光を出力する。グリッドは、シンチレータアレイのX線入射面側に配置され、散乱X線を吸収するX線遮蔽板を有する。なお、グリッドは、コリメータ(1次元コリメータまたは2次元コリメータ)と呼ばれることもある。光センサアレイは、シンチレータからの光をその光量に応じた電気信号に変換する。光センサとしては、例えば、フォトダイオードが用いられる。
【0027】
回転フレーム13は、X線管11とX線検出器12とを回転軸Z回りに回転可能に支持する円環状のフレームである。具体的には、回転フレーム13は、X線管11とX線検出器12とを対向支持する。回転フレーム13は、固定フレーム(図示せず)に回転軸Z回りに回転可能に支持される。制御装置15により回転フレーム13が回転軸Z回りに回転することにより、X線管11とX線検出器12とを回転軸Z回りに回転させる。回転フレーム13の開口部19には、画像視野(FOV:Field Of View)が設定される。
【0028】
なお、本実施形態では、非チルト状態での回転フレーム13の回転軸または寝台装置30の天板33の長手方向をZ軸方向、Z軸方向に直交し床面に対し水平である方向をX軸方向、Z軸方向に直交し床面に対し垂直である方向をY軸方向と定義する。
【0029】
X線高電圧装置14は、高電圧発生装置とX線制御装置とを有する。高電圧発生装置は、変圧器(トランス)および整流器などの電気回路を有し、X線管11に印加する高電圧およびX線管11に供給するフィラメント電流を発生する。X線制御装置は、X線管11に印加する高電圧とX線管11に供給フィラメント電流とを制御する。高電圧発生装置は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であってもよい。X線高電圧装置14は、架台装置10内の回転フレーム13に設けられてもよいし、架台装置10内の固定フレーム(図示しない)に設けられてもよい。
【0030】
ウェッジフィルタ16は、被検体Pに照射されるX線の線量を調節する。具体的には、ウェッジフィルタ16は、X線管11から被検体Pへ照射されるX線の線量が予め定められた分布になるようにX線を減衰する。例えば、ウェッジフィルタ16としては、アルミニウムの金属が加工されることにより形成された金属フィルタが用いられる。ウェッジフィルタ16は、所定のターゲット角度や所定の厚みを有するように加工される。なおウェッジフィルタ16はボウタイフィルタ(bow-tie filter)とも呼ばれる。
【0031】
コリメータ17は、ウェッジフィルタ16を透過したX線の照射範囲を限定する。コリメータ17は、X線を遮蔽する複数の鉛板をスライド可能に支持し、複数の鉛板により形成されるスリットの形態を調節する。なお、コリメータ17は、X線絞りとも呼ばれる。
【0032】
DAS18は、X線検出器12により検出されたX線の線量に応じた電気信号をX線検出器12から読み出し、読み出した電気信号を増幅し、ビュー期間に亘り電気信号を積分することにより当該ビュー期間に亘るX線の線量に応じたデジタル値を有する投影データを収集する。DAS18は、例えば、投影データを生成可能な回路素子を搭載したASICにより実現される。DAS18により生成された投影データは、回転フレーム13に設けられた発光ダイオード(LED)を有する送信機から光通信によって架台装置10の非回転部(例えば、固定フレーム)に設けられた発光ダイオード(LED)を有する受信機に送信され、受信機から医用情報処理装置50へ伝送される。なお、回転フレーム13から架台装置10の非回転部への投影データの送信方式は、前述の光通信に限定されず、非接触型のデータ伝送であれば如何なる方式であってもよい。
【0033】
寝台装置30は、基台31および天板33を備える。基台31は、床面に設置される。基台31は、支持フレームを、床面に対して垂直方向(Y軸方向)に移動可能に支持する構造体である。支持フレームは、基台31の上部に設けられるフレームである。支持フレームは、天板33を中心軸Zに沿ってスライド可能に支持する。天板33は、被検体Pが載置される柔軟性を有する板状構造体である。寝台駆動装置は、寝台装置30に収容される。寝台駆動装置は、被検体Pが載置された天板33を移動させるための動力を発生するモータまたはアクチュエータである。寝台駆動装置は、制御装置15および医用情報処理装置50等による制御に従い作動する。
【0034】
制御装置15は、医用情報処理装置50の処理回路51(後述する)による撮像制御に従いX線CT撮像を実行するためにX線高電圧装置14、DAS18、および寝台装置30を制御する。制御装置15は、CPU(Central Processing Unit)などを有する処理回路と、モータおよびアクチュエータなどの駆動装置とを有する。制御装置15が有する処理回路は、ハードウェア資源として、CPUなどのプロセッサとROMやRAMなどのメモリとを有する。制御装置15は、例えば、医用情報処理装置50に設けられた入力インタフェース54(後述する)からの操作信号に従い架台装置10および寝台装置30を制御する。入力インタフェース54は、架台装置10、および寝台装置30などに設けられてもよい。例えば、制御装置15は、回転フレーム13の回転、架台装置10のチルト、天板33および寝台装置30の動作を制御する。尚、プロセッサは、前記メモリに保存されたプログラムを読み出して実現することで上記制御を実現する。
【0035】
医用情報処理装置50は、処理回路51と、メモリ52と、ディスプレイ53と、入力インタフェース54と、通信インタフェース55とを有する。処理回路51と、メモリ52と、ディスプレイ53と、入力インタフェース54と、通信インタフェース55との間のデータ通信は、バス(BUS)を介して行われる。尚、医用情報処理装置50は架台装置10とは別体として説明するが、架台装置10に医用情報処理装置50が含まれてもよいし、架台装置10に医用情報処理装置50の各構成要素の一部が含まれてもよい。
【0036】
以下では、先にメモリ52、ディスプレイ53、入力インタフェース54、および通信インタフェース55について説明した後、処理回路51を説明する。
【0037】
メモリ52は、種々の情報を記憶するHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、集積回路記憶装置などの記憶装置である。メモリ52は、例えば、撮影データや再構成画像データを記憶する。メモリ52は、HDDやSSDなど以外にも、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、フラッシュメモリなどの可搬性記憶媒体や、RAM(Random Access Memory)などの半導体メモリ素子などとの間で種々の情報を読み書きする駆動装置であってもよい。また、メモリ52の保存領域は、X線CT装置1A内にあってもよいし、ネットワークで接続された外部記憶装置内にあってもよい。例えば、メモリ52は、CT画像や表示画像のデータを記憶する。また、メモリ52は、本実施形態に係る制御プログラムを記憶する。
【0038】
ディスプレイ53は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ53は、処理回路51によって生成された医用画像や、操作者からの各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)などを出力(表示)する。例えば、ディスプレイ53としては、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、有機ELディスプレイ(OELD:Organic Electro Luminescence Display)、プラズマディスプレイまたは他の任意のディスプレイが、適宜、使用可能となっている。また、ディスプレイ53は、架台装置10に設けられてもよい。また、ディスプレイ53は、デスクトップ型でもよいし、医用情報処理装置50本体と無線通信可能なタブレット端末などで構成されてもよい。
【0039】
入力インタフェース54は、操作者からの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路51に出力する。例えば、入力インタフェース54は、撮影データを収集する際の収集条件(これは、撮像条件またはスキャン条件と呼ばれてもよい)や、CT画像を再構成する際の再構成条件、CT画像から後処理画像を生成する際の画像処理条件などを操作者から受け付ける。
【0040】
入力インタフェース54としては、例えば、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、タッチパッド、およびタッチパネルディスプレイが適宜、使用可能となっている。
【0041】
なお、本実施形態において、入力インタフェース54は、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、タッチパッド、およびタッチパネルディスプレイなどの物理的な操作部品を備えるものに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路51へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース54の例に含まれる。入力インタフェース54は、架台装置10に設けられてもよい。また、入力インタフェース54は、医用情報処理装置50本体と無線通信可能なタブレット端末などで構成されてもよい。
【0042】
通信インタフェース55は、有線、無線、またはその両方にて外部装置と通信するための回路である。外部装置は、本実施形態では光学撮影装置2Aおよびインジェクタ3であるが、これに限定されない。外部装置は、例えば、モダリティ、画像処理装置、放射線部門情報管理システム(RIS:Radiological Information System)、病院情報システム(HIS:Hospital Information System)およびPACS(Picture Archiving and Communication System)等のシステムに含まれるサーバ、あるいは他のワークステーション等としてもよい。
【0043】
処理回路51は、入力インタフェース54から出力される入力操作の電気信号に応じてX線CT装置1A全体の動作を制御する。例えば、処理回路51は、ハードウェア資源として、CPUやMPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)などのプロセッサとROMやRAMなどのメモリとを有する。
【0044】
具体的には、処理回路51は、システム制御機能511、取得機能512、解析機能513、設定機能514、判定機能515および表示制御機能516を有する。処理回路51は、メモリに展開されたプログラムを実行するプロセッサにより、システム制御機能511、取得機能512、解析機能513、設定機能514、判定機能515および表示制御機能516を実行する。尚、各機能(システム制御機能511、取得機能512、解析機能513、設定機能514、判定機能515および表示制御機能516)は単一の処理回路で実現される場合に限らない。複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより各機能を実現するものとしてもよい。また、図示しないが、処理回路51は、撮像制御機能、再構成処理機能、および画像処理機能を有する。
【0045】
システム制御機能511は、入力インタフェース54を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、X線CT装置1Aを制御する機能である。具体的には、システム制御機能511により処理回路51は、メモリ52に記憶されている制御プログラムを読み出して処理回路51内のメモリ上に展開し、展開された制御プログラムに従ってX線CT装置1Aの各部を制御する。例えば、処理回路51は、入力インタフェース54を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、撮像の制御および処理回路51の各機能を制御する。また例えば、システム制御機能511は、スキャン範囲、撮像条件などを決定するための被検体Pの2次元の位置決め画像を取得する。尚、位置決め画像は、スキャノ画像(投影画像)またはスカウト画像とも呼ばれる。システム制御機能511は、撮像部の一例である。
【0046】
取得機能512は、造影検査に関するデータを取得する機能である。具体的には、取得機能512により処理回路51は、被検体の部位における血管中の血液に含まれるヘモグロビン量の変化に関する血管情報を取得する。より具体的には、処理回路51は、光学撮影装置2Aから、血液情報としてのモニタリング画像を取得する。また、処理回路51は、光学センサから、血液情報としてのセンサ情報を取得してもよい。また、処理回路51は、メモリ52に記憶されているヘモグロビン量と時間とを対応付けたヘモグロビン時間濃度曲線(h-TDC:hemoglobin-Time Density Curve)を取得してもよい。尚、取得機能512は、取得部の一例である。
【0047】
解析機能513は、血液情報を解析することによって、h-TDCを作成する機能である。例えば、血液情報がモニタリング画像である場合、解析機能513により処理回路51は、モニタリング画像に基づいてh-TDCを作成する。具体的には、処理回路51は、例えば、モニタリング画像全体、或いはモニタリング画像中の関心領域の画素値からヘモグロビン量の値を算出し、ヘモグロビン量の値を時系列で表すことによってh-TDCを作成する。
【0048】
また、血液情報がセンサ情報である場合、処理回路51は、センサ情報に基づいてh-TDCを作成する。具体的には、処理回路51は、例えば、センサ情報であるヘモグロビン量の値を時系列で表すことによってh-TDCを作成する。
【0049】
なお、h-TDCの作成において、脈拍による値の揺れがある場合、処理回路51は、値の揺れを処理せずにそのまま用いてもよいし、脈拍により上下する一振幅の中央値、或いは平均値を用いてもよい。尚、解析機能513は、解析部の一例である。
【0050】
設定機能514は、造影検査に関する撮像条件を設定する機能である。具体的には、設定機能514により処理回路51は、血液情報に基づいて被検体の第2の部位に対する造影撮像に関する撮像条件を設定する。より具体的には、処理回路51は、血液情報から解析されたh-TDCに基づいて撮像条件を設定する。撮像条件は、例えば、造影撮像における本スキャンの開始時間を含む。第2の部位は、例えば、スキャン範囲または造影撮像における関心領域(ROI:Region Of Interest)が指定される部位である。よって、第2の部位は、第1の部位と同じでもよい。尚、設定機能514は、設定部の一例である。
【0051】
更に、設定機能514により処理回路51は、スキャンプランの設定および光学撮影装置2Aに関するモニタリング条件を設定してもよい。スキャンプランは、例えば、h-TDCを用いたスキャンプラン、光学撮影装置2Aを用いたボーラストラッキングのスキャンプラン、および複数のh-TDCを用いたスキャンプランである。光学撮影装置2Aに関するモニタリング条件は、例えば、生理食塩水を用いたテストインジェクションのモニタリング条件および光学撮影装置2Aを用いたボーラストラッキングのモニタリング条件である。
【0052】
判定機能515は、造影検査に関するX線CT装置1Aの動作について種々の判定をする機能である。具体的には、判定機能515により処理回路51は、生理食塩水を用いたテストインジェクションを実施するか否かを判定する。また、処理回路51は、光学撮影装置2Aを用いたボーラストラッキングにおいて、本スキャンを実行するためのスキャン条件を満たすか否かを判定してもよい。尚、判定機能515は、判定部の一例である。
【0053】
表示制御機能516は、処理回路51の各機能または処理における処理途中または処理結果の情報を表示するようにディスプレイ53を制御する機能である。具体的には、表示制御機能516により処理回路51は、光学撮影装置2Aによるモニタリング画像、検査室内の画像、モニタリング情報、h-TDC、位置決め画像、スキャン画像(CT画像)、およびスキャン情報などの少なくとも一つを表示、或いは少なくとも二つ以上を並べて表示させる。
【0054】
撮像制御機能において処理回路51は、X線CT撮像を行うためX線高電圧装置14と制御装置15とDAS18とを制御する。処理回路51は、入力インタフェース54を介したユーザ指示又は自動的に設定された撮像条件(X線CT撮像パラメータ)に従いX線高電圧装置14と制御装置15とDAS18とを制御する。
【0055】
再構成処理機能において処理回路51は、DAS18から出力された投影データに基づいてCT画像を生成する。具体的には、処理回路51は、DAS18から出力された投影データに対して対数変換処理やオフセット補正処理、チャネル間の感度補正処理、ビームハードニング補正等の前処理を施す。そして処理回路51は、前処理後の投影データに対して、フィルタ補正逆投影法や逐次近似再構成法等を用いた再構成処理を施しCT画像を生成する。
【0056】
画像処理機能において処理回路51は、入力インタフェース54を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、再構成処理機能によって生成されたCT画像を、任意断面の断層像や3次元画像に変換する。
【0057】
なお、処理回路51は、医用情報処理装置50に含まれる場合に限らず、複数の医用画像診断装置にて取得されたデータに対する処理を一括して行う統合サーバに含まれてもよい。
【0058】
また、医用情報処理装置50は、単一の装置にて複数の機能を実行するものとして説明した。しかし、それら複数の機能は、複数の装置が個別に実行してもよい。即ち、複数の装置は、処理回路51の各機能を個別に分散して有してもよい。
【0059】
以上、第1の実施形態に係るX線CT装置1Aの構成について説明した。以下、第1の実施形態に係るX線CT装置1Aの第1の実施例について説明する。第1の実施例では、h-TDCを用いたスキャンプランについて説明される。
【0060】
(第1の実施例)
図3は、第1の実施形態に係るX線CT装置1Aの第1の実施例を示すフローチャートである。始めに、X線CT装置1Aは、通信インタフェース55を介して検査予約システム等から検査対象の被検体に関する被検体情報(患者情報)を取得する。被検体情報は、例えば、患者ID、患者名、生年月日、年齢、体重、性別、および検査部位である。また、被検体情報は、検査の計画を示すスキャンプランを含んでもよい。第1の実施例では、被検体情報にh-TDCを用いたスキャンプランが含まれているものとする。また、第1の実施例では、検査部位が頭部であるものとして説明する。検査部位は、撮像が行われる部位であるため撮像部位と呼ばれてもよい。
【0061】
(ステップST101)
被検体情報を取得した後、処理回路51は、設定機能514により、h-TDCを用いたスキャンプランを設定する。h-TDCを用いたスキャンプランには、例えば、生理食塩水を用いたテストインジェクションを実施するか否かの二つのパターンがある。テストインジェクションの実施の可否については、例えば、実施の可否の情報がスキャンプランに含まれていてもよいし、ユーザが実施の可否を指示してもよい。第1の実施例では、スキャンプランにテストインジェクションの実施の可否の情報が含まれているものとする。
【0062】
(ステップST102)
スキャンプランを設定した後、処理回路51は、判定機能515により、生理食塩水を用いたテストインジェクションを実施するか否かを判定する。処理回路51は、スキャンプランにテストインジェクションを実施する旨の情報が含まれている場合、テストインジェクションを実施すると判定し、そうでなければテストインジェクションを実施しないと判定する。テストインジェクションを実施すると判定された場合、処理はステップST103へと進む。テストインジェクションを実施しないと判定された場合、処理はステップST108へと進む。
【0063】
(ステップST103)
テストインジェクションを実施すると判定された後、X線CT装置1Aは、光学撮影装置2Aの位置決めをユーザに通知する。この時、ユーザは、被検体の部位がモニタリング画像に含まれるように光学撮影装置2Aを設置する。以下、光学撮影装置2Aの設置位置について図4を用いて説明する。
【0064】
図4は、第1の実施形態における光学撮影装置2Aの設置位置を例示する説明図である。図4には、検査室Rと、検査室Rに設置されている架台装置10および寝台装置とが示されている。また、寝台装置の天板33には被検体Pが載置されている。また、図4には7つの設置位置Po1からPo7までが例示されている。
【0065】
設置位置Po1は、架台装置10の側面に設置されている状態を示す。設置位置Po2は、架台装置10へ内蔵されている状態を示す。設置位置Po3は、天板33に固定部と共に設置されている状態を示す。設置位置Po4は、寝台装置の床面に固定部と共に設置されている状態を示す。設置位置Po5は、検査室Rの天井に設置されている状態を示す。設置位置Po6は、検査室Rの壁面に設置されている状態を示す。設置位置Po7は、検査室Rの床面に固定部と共に設置されている状態を示す。
【0066】
なお、テストインジェクションの実施に限れば、上記いずれの設置位置においても後述のモニタリング撮影が可能である。また、設置位置は、図4に示した位置に限らない。例えば、光学撮影装置2Aは、テストインジェクション時において、天板33上に載置させてもよい。第1の実施例では、光学撮影装置2Aは、天板33上に載置されるものとする。また、被検体の部位は、例えば、右総頸動脈を撮影可能な右頸部とする。尚、この部位は第1の部位と呼ばれてもよい。
【0067】
(ステップST104)
光学撮影装置2Aの位置決めの後、処理回路51は、設定機能514により、テストインジェクションのモニタリング条件を設定する。テストインジェクションのモニタリング条件は、例えば、光学撮影装置2Aによって取得されるモニタリング画像の関心領域(モニタリング関心領域)の設定を含む。関心領域の設定では、ユーザがモニタリング画像から手動で設定してもよいし、X線CT装置1Aがモニタリング画像を解析して自動で設定してもよい。ここで設定される関心領域は、後述するヘモグロビン量の算出において用いられる。
【0068】
(ステップST105)
テストインジェクションのモニタリング条件が設定された後、X線CT装置1Aは、光学撮影装置2Aによるモニタリング撮影を開始する。モニタリング撮影は、後述する生理食塩水の注入前から開始してもよいし、生理食塩水の注入と同時に開始してもよい。以下、テストインジェクションにおける被検体周りのセットアップ状況について図5を用いて説明する。
【0069】
図5は、第1の実施例における被検体周りのセットアップ状況を例示する模式図である。図5では、光学撮影装置2Aが被検体Pの右頸部を撮影可能な任意の位置に配置されている。光学撮影装置2Aがモニタリング撮影を始めると、医用情報処理装置50は、通信インタフェース55を介してモニタリング画像を随時取得する。
【0070】
(ステップST106)
モニタリング撮影中において、X線CT装置1Aは、インジェクタ3に対して生理食塩水の注入指示を行う。具体的には、モニタリング撮影の準備が完了した後、ユーザが入力インタフェース54を介して任意のタイミングで生理食塩水の注入指示を行う。
【0071】
図5に示すように、まず被検体Pの血管BV1における右腕の静脈に対してインジェクタ3に接続されたチューブに取り付けられた留置針を留置する。インジェクタ3のセッティングが完了した後、X線CT装置1Aからの指示により、生理食塩水が被検体Pに注入される。尚、光学撮影装置2Aは、被検体Pの血管BV2における頸部の動脈の位置を含む撮影を撮影範囲とするように配置されている。
【0072】
(ステップST107)
被検体Pへ生理食塩水が注入された後、処理回路51は、h-TDCを作成する。具体的には、処理回路51は、取得機能512により、モニタリング画像を随時取得する。処理回路51は、解析機能513により、モニタリング画像に基づいてヘモグロビン量の値を算出する。そして、生理食塩水の注入指示を契機として、処理回路51は、ヘモグロビン量の値を時系列で表すことによってh-TDCを作成する。処理回路51は、作成したh-TDCを被検体情報と共にメモリ52などへ記憶する。以下、第1の実施例におけるテストインジェクション中のX線CT装置1Aの表示画面について図6を用いて説明する。
【0073】
図6は、第1の実施例におけるテストインジェクション中の表示画面600を例示する図である。図6の表示画面600は、表示領域を4つに分割しており、それぞれ表示画面600の左上が領域R1、右上が領域R2、左下が領域R3、右下が領域R4となっている。
【0074】
表示画面600の領域R1には光学撮影装置2Aによるモニタリング画像610が表示される。モニタリング画像610には被検体Pの肩から頭部にかけての範囲が写されており、右頸部の右総頸動脈を含む任意の領域にモニタリング関心領域ROImが示されている。
【0075】
表示画面600の領域R2には室内画像620が表示される。室内画像620には被検体Pの状態を把握するために被検体Pの全身が写されている。尚、室内画像620において、光学撮影装置2Aおよびインジェクタ3の図示を省略している。
【0076】
表示画面600の領域R3にはテストインジェクションに関するモニタリング情報630が表示される。モニタリング情報630には、例えば、モニタリング位置(例えば、「右総頸動脈」)、ヘモグロビン濃度(例えば、「70%」)、生理食塩水注入速度(例えば、「1.5mL/s」)、および経過時間(例えば、「16s」)のそれぞれの情報が含まれる。
【0077】
モニタリング情報630に表示されるヘモグロビン濃度は、例えば、モニタリング画像610から算出されたリアルタイムのヘモグロビン量の値である。モニタリング情報630に表示される経過時間は、例えば、生理食塩水の注入開始から現在までの時間である。
【0078】
表示画面600の領域R4にはh-TDCの解析結果640が表示される。解析結果640には、生理食塩水の注入開始から現在までに作成されたh-TDCが含まれる。以下、h-TDCの解析結果について図7を用いて説明する。
【0079】
図7は、第1の実施例におけるh-TDCの解析結果700を例示する図である。図7の解析結果700は、h-TDC710を含む。h-TDC710は、横軸に時間[s]、縦軸にヘモグロビン量[%]を表したグラフである。図7に示したh-TDC710は、例えば、テストインジェクション完了時のグラフである。
【0080】
具体的には、h-TDC710は、被検体Pに生理食塩水が注入された後からグラフが描写される。また、h-TDC710は、時間経過と共にヘモグロビン量が減少し、ヘモグロビン量の減少がピークになった後、ヘモグロビン量が増加している。即ち、このグラフは、従来の横軸に時間、縦軸にCT値を表したグラフである時間濃度曲線(TDC:Time Density Curve)と略同様の形状を有する。
【0081】
更に、解析結果700には、モニタリング位置に生理食塩水が到達した時間Tsと、モニタリング位置のヘモグロビン量が最低になった時点の時間Tp(ピーク時間)とが示されている。尚、時間Tsおよび時間Tpの情報は、h-TDC710に対応付けられていてもよい。
【0082】
(ステップST108)
ステップST102においてテストインジェクションを実施しないと判定された後、処理回路51は、取得機能512により、被検体Pの過去のh-TDCをメモリ52などから読み出す。具体的には、処理回路51は、被検体情報に基づいて被検体Pの過去のh-TDCを読み出す。尚、被検体Pの過去のh-TDCが存在しない、或いは検査部位に対応するh-TDCが存在しない場合、X線CT装置1Aは、テストインジェクションの実施をユーザに提示してもよいし、別のスキャンプランの実施をユーザに提示してもよい。
【0083】
(ステップST109)
ステップST107においてh-TDCを作成した後、或いはステップST108においてh-TDCを読み出した後、処理回路51は、設定機能514により、h-TDCに基づいて造影撮像に関する撮像条件(スキャン条件)を設定する。第1の実施例のスキャン条件は、例えば、被検体に造影剤を注入してから検査部位の本スキャンを実行するまでの待機時間であるスキャン待機時間を含む。
【0084】
スキャン条件の設定に先立って、処理回路51は、スキャン待機時間を算出する。スキャン待機時間は、例えば、h-TDCのピーク時間+調整値で表すことができる。調整値は、例えば、モニタリング位置と撮像部位との位置関係に依存する。即ち、モニタリング位置と撮像部位とが近ければ調整値は相対的に小さくなり、モニタリング位置と撮像部位とが遠ければ調整値は相対的に大きくなる。
【0085】
スキャン待機時間の算出には、例えば、所定の条件に基づいて算出される係数を用いる方法と、機械学習モデルを用いる方法とがある。係数を用いる方法では、処理回路51は、所定の条件に基づいて係数を算出し、例えば、h-TDCのピーク時間に係数を掛け合わせることによりスキャン待機時間(ピーク時間+調整値)を算出する。所定の条件は、例えば、モニタリング位置と撮像部位との関係(例えば、距離、病状、血管の狭窄などの血流の速さに影響を与える障害の有無)、身体的特性(例えば、血圧、心拍、身長、体重、年齢、性別、撮像部位)、注入液(生理食塩水および造影剤)の特性(例えば、注入量、粘性、濃度、温度)、および注入条件(例えば、圧力、針の太さ)のいずれかを含む。
【0086】
機械学習モデルを用いる方法では、処理回路51は、例えば、h-TDCと、第1の部位であるモニタリング位置の情報と、第2の部位である撮像部位の情報との組み合わせと、撮像部位に対応するスキャン待機時間とを対応付けて学習させた学習済みモデルを用いる。学習データセットの別の例としては、例えば、同じモニタリング位置を前提として、入力データをh-TDCとし、出力データをTDCとした組み合わせでもよい。尚、処理回路51は、上記所定の条件および被検体情報の少なくとも一方に基づき、学習済みモデルを用いて算出したスキャン待機時間を更に補正してもよい。
【0087】
(ステップST110)
スキャン条件を設定した後、X線CT装置1Aは、インジェクタ3に対して造影剤の注入指示を行う。具体的には、スキャン条件が設定された後、ユーザが入力インタフェース54を介して任意のタイミングで造影剤の注入指示を行う。
【0088】
(ステップST111)
被検体Pへ造影剤が注入された後、処理回路51は、システム制御機能511により、スキャン待機時間に基づくタイミングで本スキャンを実行する。具体的には、処理回路51は、被検体Pへ造影剤が注入されてからスキャン待機時間が経過した後に本スキャンを開始する。本スキャンは、例えば、処理回路51が自動的に開始させてもよいし、処理回路51が本スキャンまでの時間をカウントダウンしてユーザに開始の合図を促してもよい。ステップST111の処理の後、図3の第1の実施例のフローチャートは終了する。以下、第1の実施形態における造影撮像中のX線CT装置1Aの表示画面について図8を用いて説明する。
【0089】
図8は、第1の実施例における造影撮像中の表示画面800を例示する図である。図8の表示画面800は、表示領域を4つに分割しており、それぞれ表示画面800の左上が領域R1、右上が領域R2、左下が領域R3、右下が領域R4となっている。
【0090】
表示画面800の領域R1には位置決め画像810が表示される。位置決め画像810には被検体Pの頭部の投影画像が写されており、撮像範囲に対応する関心領域ROIが示されている。
【0091】
表示画面800の領域R2には撮影中のCT画像820が表示される。尚、図8の例では本スキャン開始直後であるので、CT画像820には何も表示されていない。
【0092】
表示画面800の領域R3には造影撮像に関するスキャン情報830が表示される。スキャン情報830には、例えば、グラフモニタリング位置(例えば、「右総頸動脈」)、撮影位置(例えば、「頭部」)、グラフ指定時間(例えば、「16.8s」)、造影剤注入速度(例えば、「1.5mL/s」)、本スキャン開始時間(例えば、「20.0s」)、および経過時間(例えば、「0s」)のそれぞれの情報が含まれる。
【0093】
表示画面800の領域R4にはh-TDCの解析結果840が表示される。解析結果840には、テストインジェクションの実施により作成された、或いはメモリ52などから読み出されたh-TDCが含まれる。解析結果840のh-TDCは、例えば、図7のh-TDC710と同様である。また、解析結果840には、時間を指定するための指示子841が含まれる。ユーザは、例えば、指示子841を操作することによって、スキャン待機時間に寄与するh-TDCのピーク時間を自由に設定することができる。尚、解析結果840において、本スキャン開始時間を示す指示子が含まれてもよい。
【0094】
スキャン情報830に表示されるグラフモニタリング位置は、例えば、解析結果840を取得した際のモニタリング位置である。スキャン情報830に表示されるグラフ指定時間は、例えば、解析結果840に含まれる指示子841が示す時間である。スキャン情報830に表示される本スキャン開始時間は、例えば、グラフモニタリング位置、撮影位置、およびグラフ指定時間に基づいて算出された時間である。
【0095】
上記では、テストインジェクションの実施において、光学撮影装置2Aを天板33に載置させる場合を説明した。しかし、この場合では、本スキャンの実行時において、撮像の妨げとなる可能性があるため、光学撮影装置2Aを天板33から待避させる必要がある。もし本スキャンの実行時に光学撮影装置2Aの待避が必要無く、本スキャンの実行中にもモニタリング位置の撮影が可能であれば、処理回路51は、造影撮像時のモニタリング画像を随時取得してもよい。これにより、X線CT装置1Aは、血管中の造影剤の流れの情報を記録することができる。また、X線CT装置1Aは、血液中の造影剤の流れの情報を、別の造影撮像におけるスキャン待機時間の算出に用いることができる。別の造影撮像は、同一の被検体に対して行われてもよいし、異なる被検体に対して行われてもよい。
【0096】
第1の実施例を概括すると、X線CT装置は、被検体の第1の部位における血管中の血液に含まれるヘモグロビン量の変化に関する血液情報を取得し、血液情報に基づいて被検体の第2の部位に対する造影撮像に関する撮像条件を設定し、撮像条件に基づいて造影撮像を行う。血液情報の取得には、光学撮影装置が用いられ、造影剤よりも被検体に負担の少ない生理食塩水によってテストインジェクションが行われる。
【0097】
以上、第1の実施形態に係るX線CT装置1Aの第1の実施例について説明した。以下、第1の実施形態に係るX線CT装置1Aの第2の実施例について説明する。第2の実施例では、光学撮影装置2Aを用いたボーラストラッキングのスキャンプランについて説明される。
【0098】
(第2の実施例)
光学撮影装置2Aを用いたボーラストラッキングは、CT値をモニタリングする通常の手法とは異なり、血管中を流れる造影剤を光学撮影装置2Aでモニタリングする手法である。よって、本明細書では、単に「ボーラストラッキング」と記載した場合、光学撮影装置2Aを用いる手法であるものとする。
【0099】
図9は、第1の実施形態におけるX線CT装置1Aの第2の実施例を示すフローチャートである。初めに、X線CT装置1Aは、通信インタフェース55を介して検査予約システム等から検査対象の被検体に関する被検体情報(患者情報)を取得する。第2の実施例では、被検体情報に光学撮影装置2Aを用いたボーラストラッキングのスキャンプランが含まれているものとする。また、第2の実施例では、第1の実施例と同様に、検査部位(撮像部位)が頭部であり、被検体の第1の部位が右頸部であるものとして説明する。
【0100】
(ステップST201)
被検体情報を取得した後、処理回路51は、設定機能514により、光学撮影装置2Aを用いたボーラストラッキングのスキャンプランを設定する。
【0101】
(ステップST202)
スキャンプランを設定した後、X線CT装置1Aは、光学撮影装置2Aの位置決めをユーザに通知する。第2の実施例では、光学撮影装置2Aは、例えば、図4の設置位置Po2のように、架台装置10に内蔵されているものとする。
【0102】
(ステップST203)
光学撮影装置2Aの位置決めの後、処理回路51は、設定機能514により、ボーラストラッキングのモニタリング条件を設定する。ボーラストラッキングのモニタリング条件は、例えば、光学撮影装置2Aによって取得されるモニタリング画像の関心領域(モニタリング関心領域)の設定を含む。関心領域の設定については、第1の実施例と同様である。
【0103】
(ステップST204)
ボーラストラッキングのモニタリング条件が設定された後、処理回路51は、設定機能514により、ボーラストラッキングを用いた造影撮像に関する撮像条件(スキャン条件)を設定する。第2の実施例のスキャン条件は、例えば、本スキャンを開始するタイミング(本スキャン開始タイミング)、および本スキャン開始タイミングを設定するためのヘモグロビン濃度(本スキャン開始濃度)を含む。
【0104】
本スキャン開始濃度は、例えば、ヘモグロビン濃度の閾値である。処理回路51は、例えば、ヘモグロビン濃度が本スキャン開始濃度を越えた時点に基づいて本スキャン開始タイミングを設定する。本スキャン開始タイミングは、例えば、ヘモグロビン濃度が本スキャン開始濃度に到達した直後(到達直後)、およびヘモグロビン濃度が本スキャン開始濃度に到達してから所定時間後のいずれかを選択することができる。所定時間は、ユーザが指定してもよいし、モニタリング位置と撮像部位とに基づいて処理回路51が算出してもよい。
【0105】
(ステップST205)
スキャン条件を設定した後、X線CT装置1Aは、光学撮影装置2Aによるモニタリング撮影を開始する。モニタリング撮影は、後述する造影剤の注入前から開始してもよいし、造影剤の注入と同時に開始してもよい。以下、ボーラストラッキングにおける被検体周りのセットアップ状況について図10を用いて説明する。
【0106】
図10は、第2の実施例における被検体周りのセットアップ状況を例示する模式図である。図10では、光学撮影装置2Aが架台装置10に内蔵されている。光学撮影装置2Aがモニタリング撮影を始めると、医用情報処理装置50は、通信インタフェース55を介してモニタリング画像を随時取得する。
【0107】
(ステップST206)
モニタリング撮影中において、X線CT装置1Aは、インジェクタ3に対して造影剤の注入指示を行う。具体的には、スキャン条件が設定され、モニタリング撮影の準備が完了した後、ユーザが入力インタフェース54を介して任意のタイミングで造影剤の注入指示を行う。尚、インジェクタ3の被検体Pへのセッティングは第1の実施例と同様であるため説明を省略する。
【0108】
(ステップST207)
被検体Pへ造影剤が注入された後、処理回路51は、h-TDCを作成する。具体的には、処理回路51は、取得機能512により、モニタリング画像を随時取得する。処理回路51は、解析機能513により、モニタリング画像に基づいてヘモグロビン量の値を算出する。そして、造影剤の注入指示を契機として、処理回路51は、ヘモグロビン量の値を時系列で表すことによってh-TDCを作成する。処理回路51は、作成したh-TDCを被検体情報と共にメモリ52などへ記憶する。以下、第2の実施例におけるボーラストラッキングを用いた造影撮像中のX線CT装置1Aの表示画面について図11を用いて説明する。
【0109】
図11は、第2の実施例におけるボーラストラッキングを用いた造影撮像中の表示画面1100を例示する図である。図11の表示画面1100は、表示領域を4つに分割しており、それぞれ表示画面1100の左上が領域R1、右上が領域R2、左下が領域R3、右下が領域R4となっている。
【0110】
表示画面1100の領域R1には位置決め画像1110が表示される。位置決め画像1110には被検体Pの頭部の投影画像が写されており、撮像範囲に対応する関心領域ROIが表示されている。更に、位置決め画像1110には、モニタリング位置(図11では右総頸動脈付近)に対応するモニタリング関心領域ROImが示されている。
【0111】
表示画面1100の領域R2には撮影中のCT画像1120が表示される。尚、図11の例では本スキャンの開始前であるので、CT画像1120には何も表示されていない。
【0112】
表示画面1100の領域R3にはボーラストラッキングを用いた造影撮像に関するスキャン情報1130が表示される。スキャン情報1130には、例えば、本スキャン開始タイミング(例えば、「到達直後」)、モニタリング位置(例えば、「右総頸動脈」)、本スキャン開始濃度(例えば、「70%」)、造影剤注入速度(例えば、1.5mL/s)、および経過時間(例えば、「12s」)のそれぞれの情報が含まれる。
【0113】
表示画面1100の領域R4にはh-TDCの解析結果1140が表示される。解析結果1140には、造影剤の注入開始から現在までに作成されたh-TDCが含まれる。また、解析結果1140には、本スキャン開始濃度である閾値を示す指示子1141が含まれる。ユーザは、例えば、指示子1141を操作することによって、本スキャン開始タイミングに寄与する本スキャン開始濃度を自由に設定することができる。尚、解析結果1140において、本スキャン開始時間を示す指示子が含まれてもよい。
【0114】
(ステップST208)
h-TDCの作成中において、処理回路51は、判定機能515により、現在のヘモグロビン濃度の値がスキャン条件を満たすか否かを判定する。具体的には、処理回路51は、現在のヘモグロビン濃度の値(ヘモグロビン量の値)がスキャン条件に含まれる本スキャン開始濃度(閾値)以上か否かを判定する。処理回路51は、ヘモグロビン量の値が閾値以上の場合、スキャン条件を満たすと判定し、そうでなければスキャン条件を満たさないと判定する。スキャン条件を満たすと判定された場合、処理はステップST209へと進む。スキャン条件を満たさないと判定された場合、処理はステップST208を繰り返す。
【0115】
(ステップST209)
スキャン条件を満たすと判定された後、処理回路51は、システム制御機能511により、本スキャン開始タイミングで本スキャンを開始する。具体的には、処理回路51は、本スキャン開始タイミング「到達直後」であれば、スキャン条件を満たした時点で本スキャンを開始する。本スキャンは、例えば、処理回路51が自動的に開始させてもよいし、処理回路51が本スキャンまでの時間をカウントダウンしてユーザに開始の合図を促してもよい。ステップST209の処理の後、図9の第2の実施例のフローチャートは終了する。
【0116】
なお、第2の実施例において、X線CT装置1Aは、第1の実施例と同様に、血液中の造影剤の流れの情報を記憶してもよい。また、X線CT装置1Aは、血液中の造影剤の流れの情報を、別の造影撮像におけるスキャン待機時間の算出に用いてもよい。
【0117】
第2の実施例を概括すると、X線CT装置は、被検体の第1の部位における血管中の血液に含まれるヘモグロビン量の変化に関する血液情報を取得し、血液情報に基づいて被検体の第2の部位に対する造影撮像に関する撮像条件を設定し、撮像条件に基づいて造影撮像を行う。ボーラストラッキングによる血液情報の取得には、放射線被曝の無い光学撮影装置が用いられる。
【0118】
以上、第1の実施形態に係るX線CT装置1Aの第2の実施例について説明した。以下、第1の実施形態に係るX線CT装置1Aの第3の実施例について説明する。
【0119】
(第3の実施例)
第1の実施例および第2の実施例では、いずれも一つのh-TDCを用いたスキャンプランについて説明した。第3の実施例では、複数のh-TDCを用いたスキャンプランについて説明する。尚、第3の実施例では、複数の血液情報の取得において一台の光学撮影装置を用いる場合について説明するが、複数の光学撮影装置が用いられてもよい。
【0120】
図12は、第1の実施形態に係るX線CT装置の第3の実施例を示すフローチャートである。初めに、X線CT装置1Aは、通信インタフェース55を介して検査予約システム等から検査対象の被検体に関する被検体情報(患者情報)を取得する。第3の実施例では、被検体情報に複数のh-TDCを用いたスキャンプランが含まれているものとする。また、第3の実施例では、検査部位(撮像部位)が下肢(大腿部、下腿部、および足部)であるものとして説明する。
【0121】
第3の実施例において、取得機能512により処理回路51は、被検体の複数の部位に対応する複数の血液情報を取得する。解析機能513により処理回路51は、複数の血液情報をそれぞれ解析することによって、複数のh-TDCを作成する。設定機能514により処理回路51は、複数のh-TDCに基づいて撮像部位に対する造影撮像に関する撮像条件を設定する。尚、複数の部位が二つの場合、それら二つの部位は、それぞれ第1の部位および第3の部位と呼ばれてもよい。また、第2の部位は、撮像部位である。
【0122】
(ステップST301)
被検体情報を取得した後、処理回路51は、設定機能514により、複数のh-TDCを用いたスキャンプランを設定する。複数のh-TDCを用いたスキャンプランには、例えば、生理食塩水を用いたテストインジェクションを実施するか否かの二つのパターンがある。テストインジェクションの実施の可否については、例えば、実施の可否の情報がスキャンプランに含まれていてもよいし、ユーザが実施の可否を指示してもよい。第3の実施例では、スキャンプランにテストインジェクションの実施の可否の情報が含まれているものとする。
【0123】
(ステップST302)
スキャンプランを設定した後、処理回路51は、判定機能515により、生理食塩水を用いたテストインジェクションを実施するか否かを判定する。処理回路51は、スキャンプランにテストインジェクションを実施する旨の情報が含まれている場合、テストインジェクションを実施すると判定し、そうでなければテストインジェクションを実施しないと判定する。テストインジェクションを実施すると判定された場合、処理はステップST303へと進む。テストインジェクションを実施しないと判定された場合、処理はステップST308へと進む。
【0124】
(ステップST303)
テストインジェクションを実施すると判定された後、X線CT装置1Aは、光学撮影装置2Aの位置決めをユーザに通知する。この時、ユーザは、被検体の複数の部位がモニタリング画像に含まれるように光学撮影装置2Aを設置する。例えば、第3の実施例では、光学撮影装置2Aは、図4の設置位置Po2のように、架台装置10に内蔵されているものとする。
【0125】
(ステップST304)
光学撮影装置2Aの位置決めの後、処理回路51は、設定機能514により、テストインジェクションのモニタリング条件を設定する。テストインジェクションのモニタリング条件は、例えば、光学撮影装置2Aによって取得されるモニタリング画像の関心領域(モニタリング関心領域)の設定を含む。関心領域の設定では、ユーザがモニタリング画像から手動で設定してもよいし、X線CT装置1Aがモニタリング画像を解析して自動で設定してもよい。また、第3の実施例では、複数のモニタリング関心領域が設定されるものとする。ここで設定される関心領域は、後述するヘモグロビン量の算出において用いられる。
【0126】
なお、複数のモニタリング関心領域は、一つのモニタリング画像によって設定されてもよいし、複数の光学撮影装置2Aのそれぞれから取得された複数のモニタリング画像によって設定されてもよい。具体的には、撮像領域を下肢とし、モニタリング位置を大腿部の上部および足部とした場合、処理回路51は、下肢全体を含む一つのモニタリング画像から大腿部の上部および足部をそれぞれモニタリング関心領域として設定もよいし、大腿部の上部および足部をそれぞれ含む二つのモニタリング画像からそれぞれモニタリング関心領域を設定してもよい。
【0127】
(ステップST305)
テストインジェクションのモニタリング条件が設定された後、X線CT装置1Aは、光学撮影装置2Aによるモニタリング撮影を開始する。モニタリング撮影は、後述する生理食塩水の注入前から開始してもよいし、生理食塩水の注入と同時に開始してもよい。以下、テストインジェクションにおける被検体周りのセットアップ状況について図13を用いて説明する。
【0128】
図13は、第3の実施例における被検体周りのセットアップ状況を例示する模式図である。図13では、光学撮影装置2Aが架台装置10(図示せず)に内蔵されているものとする。光学撮影装置2Aがモニタリング撮影を始めると、医用情報処理装置50は、通信インタフェース55を介してモニタリング画像を随時取得する。
【0129】
図13のモニタリング画像では、説明の都合上、下肢動脈が通っている部分を破線で示している。図13のモニタリング画像には、被検体Pの下肢が含まれており、大腿部の上部に第1のモニタリング関心領域ROIm1が設定され、足部にモニタリング関心領域ROIm2が設定されている。第1のモニタリング関心領域ROIm1および第2のモニタリング関心領域ROIm2は、いずれも下肢動脈を含む範囲に設定される。尚、実際のモニタリング画像には、下肢動脈の一部或いは全てが写されていない場合がある。
【0130】
(ステップST306)
モニタリング撮影中において、X線CT装置1Aは、インジェクタ3に対して生理食塩水の注入指示を行う。具体的には、モニタリング撮影の準備が完了した後、ユーザが入力インタフェース54を介して任意のタイミングで生理食塩水の注入指示を行う。尚、インジェクタ3の被検体Pへのセッティングは第1の実施例と同様であるため説明を省略する。
【0131】
(ステップST307)
被検体Pへ生理食塩水が注入された後、処理回路51は、複数のh-TDCを作成する。具体的には、処理回路51は、取得機能512により、モニタリング画像を随時取得する。処理回路51は、解析機能513により、モニタリング画像に基づいて、異なるモニタリング位置それぞれのヘモグロビン量の値を算出する。そして、生理食塩水の注入指示を契機として、処理回路51は、異なるモニタリング位置についての複数のh-TDCを作成する。処理回路51は、作成した複数のh-TDCを被検体情報と共にメモリ52などへ記憶する。以下、複数のh-TDCの解析結果について図14を用いて説明する。
【0132】
図14は、第3の実施例における複数のh-TDCの解析結果を例示する図である。図14の解析結果1400は、第1のh-TDC1410および第2のh-TDC1420を含む。第1のh-TDC1410および第2のh-TDC1420は、それぞれ横軸に時間[s]、縦軸にヘモグロビン量[%]を表したグラフである。図14に示した第1のh-TDC1410および第2のh-TDC1420は、例えば、テストインジェクション完了時のグラフである。
【0133】
更に、解析結果1400には、第1のモニタリング位置(例えば、大腿部の上部)に生理食塩水が到達した時間Ts1と、第1のモニタリング位置のヘモグロビン量が最低になった時点の時間Tp1(第1のピーク時間)とが示されている。また、解析結果1400には、第2のモニタリング位置(例えば、足部)に生理食塩水が到達した時間Ts2と、第2のモニタリング位置のヘモグロビン量が最低になった時点の時間Tp2(第2のピーク時間)とが示されている。尚、時間Ts1および時間Tp1の情報は、h-TDC1410に対応付けられていてもよく、時間Ts2および時間Tp2の情報は、h-TDC1420に対応付けられていてもよい。
【0134】
(ステップST308)
ステップST302においてテストインジェクションを実施しないと判定された後、処理回路51は、取得機能512により、被検体Pの過去の複数のh-TDCをメモリ52などから読み出す。具体的には、処理回路51は、被検体情報に基づいて被検体Pの過去の複数のh-TDCを読み出す。尚、被検体Pの過去の複数のh-TDCが存在しない、或いは検査部位に対応する複数のh-TDCが存在しない場合、X線CT装置1Aは、テストインジェクションの実施をユーザに提示してもよいし、別のスキャンプランの実施をユーザに提示してもよい。
【0135】
(ステップST309)
ステップST307において複数のh-TDCを作成した後、或いはステップST308において複数のh-TDCを読み出した後、処理回路51は、設定機能514により、複数のh-TDCに基づいて造影撮像に関する撮像条件(スキャン条件)を設定する。第3の実施例のスキャン条件は、例えば、複数のスキャン待機時間を含む。
【0136】
スキャン条件の設定に先立って、処理回路51は、複数のスキャン待機時間を算出する。第3の実施例では、広い領域の撮像部位を想定しているため、撮像部位をいくつかの領域に分けて、それぞれのスキャン待機時間を算出する。具体的には、処理回路51は、大腿部、下腿部、および足部についての3つのスキャン待機時間を算出する。個々のスキャン待機時間の算出は第1の実施例と略同様であるため説明を省略する。このように複数のスキャン待機時間を算出することにより、X線CT装置1Aは、造影剤が流れてきてないにもかかわらずスキャンを実行してしまうようなスキャンの追い越しを防ぐことができる。
【0137】
また、処理回路51は、ヘリカルスキャンを行う場合に、撮像部位のそれぞれの領域において、異なるスキャン条件を設定してもよい。ここでのスキャン条件は、例えば、天板33の移動速度および回転フレーム13の回転速度である。具体的には、下肢についてヘリカルスキャンを行う場合、処理回路51は、例えば、大腿部、下腿部、および足部のそれぞれで異なるスキャン条件を設定してもよい。
【0138】
(ステップST310)
スキャン条件を設定した後、X線CT装置1Aは、インジェクタ3に対して造影剤の注入指示を行う。具体的には、スキャン条件が設定された後、ユーザが入力インタフェース54を介して任意のタイミングで造影剤の注入指示を行う。
【0139】
(ステップST311)
被検体Pへ造影剤が注入された後、処理回路51は、システム制御機能511により、複数のスキャン待機時間に基づくタイミングで本スキャンを実行する。本スキャンは、例えば、処理回路51が自動的に開始させてもよいし、処理回路51が本スキャンまでの時間をカウントダウンしてユーザに開始の合図を促してもよい。尚、本スキャン開始は、最初に撮像を開始する領域に対する指示のみでもよい。ステップST311の処理の後、図12の第3の実施例のフローチャートは終了する。
【0140】
なお、第3の実施例において、X線CT装置1Aは、第1の実施例および第2の実施例と同様に、血液中の造影剤の流れの情報を記憶してもよい。また、X線CT装置1Aは、血液中の造影剤の流れの情報を、別の造影撮像におけるスキャン待機時間の算出に用いてもよい。
【0141】
第3の実施例を概括すると、X線CT装置は、被検体の第1の部位における血管中の血液に含まれるヘモグロビン量の変化に関する血液情報を取得し、血液情報に基づいて被検体の第2の部位に対する造影撮像に関する撮像条件を設定し、撮像条件に基づいて造影撮像を行う。血液情報の取得には、第1の実施例と同様に、光学撮影装置が用いられ、造影剤よりも被検体の負担の少ない生理食塩水によってテストインジェクションが行われる。また、第3の実施例では、複数の血液情報を取得することにより、スキャン条件を詳細に設定することができるため、広い領域の撮像部位であってもスキャンの追い越しを防ぐことができる。
【0142】
なお、第3の実施例で説明した複数の血液情報は、第2の実施例で説明したボーラストラッキングで用いられてもよい。
【0143】
また、光学撮影装置2A(或いは、血液情報取得装置2)によって、例えばパルスオキシメータ相当の情報(例えば、酸素飽和度)を取得することができれば、X線CT装置1Aは、X線CT撮像時の呼吸(息止め)制御に利用してもよい。
【0144】
以上説明したように、第1の実施形態に係る医用画像診断装置は、被検体の第1の部位における血管中の血液に含まれるヘモグロビン量の変化に関する血液情報を取得し、血液情報に基づいて被検体の第2の部位に対する造影撮像に関する撮像条件を設定し、撮像条件に基づいて造影撮像を行う。
【0145】
従って、第1の実施形態に係る医用画像診断装置は、造影剤を用いたテストインジェクションを不要とすることができ、且つX線を用いたボーラストラッキングも不要とすることができるため、血管に関する検査を行う際の被検体への負担を低減することができる。
【0146】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、X線CT装置について説明した。他方、第2の実施形態では、磁気共鳴イメージング装置について説明する。
【0147】
図15は、第2の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置1Bの構成例を示すブロック図である。図15に示すように、磁気共鳴イメージング装置1Bは、架台装置10-2、寝台装置30-2、傾斜磁場電源21、送信回路23、受信回路25、寝台駆動装置27、シーケンス制御回路29及びコンソール装置(医用情報処理装置)50-2を有する。また、磁気共鳴イメージング装置1Bは、光学撮影装置2Aおよびインジェクタ3と接続される。
【0148】
架台装置10-2は、静磁場磁石41と傾斜磁場コイル43とを有する。静磁場磁石41と傾斜磁場コイル43とは架台装置10-2の筐体に収容されている。架台装置10-2の筐体には中空形状を有するボアが形成されている。架台装置10-2のボア内には送信コイル45と受信コイル47とが配置される。
【0149】
静磁場磁石41は、中空の略円筒形状を有し、略円筒内部に静磁場を発生する。静磁場磁石41としては、例えば、永久磁石、超伝導磁石または常伝導磁石等が使用される。ここで、静磁場磁石41の中心軸をZ軸に規定し、Z軸に対して鉛直に直交する軸をY軸に規定し、Z軸に水平に直交する軸をX軸に規定する。X軸、Y軸及びZ軸は、直交3次元座標系を構成する。
【0150】
傾斜磁場コイル43は、静磁場磁石41の内側に取り付けられ、中空の略円筒形状に形成されたコイルユニットである。傾斜磁場コイル43は、傾斜磁場電源21からの電流の供給を受けて傾斜磁場を発生する。より詳細には、傾斜磁場コイル43は、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸に対応する3つのコイルを有する。当該3つのコイルは、X軸、Y軸、Z軸の各軸に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を形成する。X軸、Y軸、Z軸の各軸に沿う傾斜磁場は合成されて互いに直交するスライス選択傾斜磁場Gs、位相エンコード傾斜磁場Gp及び周波数エンコード傾斜磁場Grが所望の方向に形成される。スライス選択傾斜磁場Gsは、任意に撮像断面(スライス)を決めるために利用される。位相エンコード傾斜磁場Gpは、空間的位置に応じて磁気共鳴信号(以下、MR信号と呼ぶ)の位相を変化させるために利用される。周波数エンコード傾斜磁場Grは、空間的位置に応じてMR信号の周波数を変化させるために利用される。なお、以下の説明においてスライス選択傾斜磁場Gsの傾斜方向はZ軸、位相エンコード傾斜磁場Gpの傾斜方向はY軸、周波数エンコード傾斜磁場Grの傾斜方向はX軸であるとする。
【0151】
傾斜磁場電源21は、シーケンス制御回路29からのシーケンス制御信号に従い傾斜磁場コイル43に電流を供給する。傾斜磁場電源21は、傾斜磁場コイル43に電流を供給することにより、X軸、Y軸及びZ軸の各軸に沿う傾斜磁場を傾斜磁場コイル43により発生させる。当該傾斜磁場は、静磁場磁石41により形成された静磁場に重畳されて被検体Pに印加される。
【0152】
送信コイル45は、例えば、傾斜磁場コイル43の内側に配置され、送信回路23から電流の供給を受けて高周波磁場パルス(以下、RF磁場パルスと呼ぶ)を発生する。
【0153】
送信回路23は、被検体P内に存在する対象プロトンを励起するためのRF磁場パルスを、送信コイル45を介して被検体Pに印加するために、送信コイル45に電流を供給する。RF磁場パルスは、対象プロトンに固有の共鳴周波数で振動し、対象プロトンを励起させる。励起された対象プロトンからMR信号が発生され、受信コイル47により検出される。送信コイル45は、例えば、全身用コイル(WBコイル)である。全身用コイルは、送受信コイルとして使用されても良い。
【0154】
受信コイル47は、RF磁場パルスの作用を受けて被検体P内に存在する対象プロトンから発せられるMR信号を受信する。受信コイル47は、MR信号を受信可能な複数の受信コイルエレメントを有する。受信されたMR信号は、有線又は無線を介して受信回路25に供給される。図15に図示しないが、受信コイル47は、並列的に実装された複数の受信チャネルを有している。受信チャネルは、MR信号を受信する受信コイルエレメント及びMR信号を増幅する増幅器等を有している。MR信号は、受信チャネル毎に出力される。受信チャネルの総数と受信コイルエレメントの総数とは同一であっても良いし、受信チャネルの総数が受信コイルエレメントの総数に比して多くても良いし、少なくても良い。
【0155】
受信回路25は、励起された対象プロトンから発生されるMR信号を、受信コイル47を介して受信する。受信回路25は、受信されたMR信号を信号処理してデジタルのMR信号を発生する。デジタルのMR信号は、空間周波数により規定されるk空間にて表現することができる。よって、以下、デジタルのMR信号をk空間データと呼ぶことにする。k空間データは、有線又は無線を介して医用情報処理装置50-2に供給される。
【0156】
なお、上記の送信コイル45と受信コイル47とは一例に過ぎない。送信コイル45と受信コイル47との代わりに、送信機能と受信機能とを備えた送受信コイルが用いられても良い。また、送信コイル45、受信コイル47及び送受信コイルが組み合わされても良い。
【0157】
架台装置10-2に隣接して寝台装置30-2が設置される。寝台装置30-2は、天板33-2と基台31-2とを有する。天板33-2には被検体Pが載置される。基台31-2は、天板33-2をX軸、Y軸、Z軸各々に沿ってスライド可能に支持する。基台31-2には寝台駆動装置27が収容される。寝台駆動装置27は、シーケンス制御回路29からの制御を受けて天板33-2を移動する。寝台駆動装置27は、例えば、サーボモータやステッピングモータ等の如何なるモータ等を含んでも良い。
【0158】
シーケンス制御回路29は、ハードウェア資源として、CPU(Central Processing Unit)あるいはMPU(Micro Processing Unit)のプロセッサとROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリとを有する。シーケンス制御回路29は、処理回路51等により決定された撮像プロトコルに基づいて傾斜磁場電源21、送信回路23及び受信回路25を同期的に制御し、当該撮像プロトコルに応じたパルスシーケンスに従い被検体Pに磁気共鳴イメージングを用いた撮像(MR撮像)を実行し、被検体Pに関するk空間データを収集する。
【0159】
図15に示すように、医用情報処理装置50-2は、処理回路51、メモリ52、ディスプレイ53、入力インタフェース54及び通信インタフェース55を有するコンピュータである。
【0160】
処理回路51は、ハードウェア資源としてCPU等のプロセッサを有する。処理回路51は、磁気共鳴イメージング装置1Bの中枢として機能する。例えば、処理回路51は、各種プログラムの実行によりシステム制御機能511、取得機能512、解析機能513、設定機能514、判定機能515及び表示制御機能516を有する。尚、図示しないが、処理回路51は、各種プログラムの実行により画像再構成機能及び画像処理機能を有する。
【0161】
画像再構成機能において処理回路51は、各種スキャンにより収集されたk空間データに基づいてMR画像を再構成する。なお、再構成手法については特に限定しない。
【0162】
画像処理機能において処理回路51は、MR画像に種々の画像処理を施す。例えば、処理回路51は、ボリュームレンダリングや、サーフェスレンダリング、画素値投影処理、MPR(Multi-Planer Reconstruction)処理、CPR(Curved MPR)処理等の画像処理を施す。
【0163】
システム制御機能511は、入力インタフェース54を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、磁気共鳴イメージング装置1Bを制御する機能である。具体的には、システム制御機能511により処理回路51は、メモリ52に記憶されている制御プログラムを読み出して処理回路51内のメモリ上に展開し、展開された制御プログラムに従って磁気共鳴イメージング装置1Bの各部を制御する。例えば、処理回路51は、入力インタフェース54を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、処理回路51の各機能を制御する。
【0164】
表示制御機能516は、処理回路51の各機能または処理における処理途中または処理結果の情報を表示するようにディスプレイ53を制御する機能である。具体的には、表示制御機能516により処理回路51は、光学撮影装置2Aによるモニタリング画像、検査室内の画像、モニタリング情報、h-TDC、位置決め画像、スキャン画像(MR画像)、およびスキャン情報などの少なくとも一つを表示、或いは少なくとも二つ以上を並べて表示させる。
【0165】
なお、処理回路51は、医用情報処理装置50-2に含まれる場合に限らず、複数の医用画像診断装置にて取得されたデータに対する処理を一括して行う統合サーバに含まれてもよい。
【0166】
メモリ52は、種々の情報を記憶するHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、集積回路記憶装置などの記憶装置である。メモリ52は、例えば、撮影データや再構成画像データを記憶する。メモリ52は、HDDやSSDなど以外にも、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、フラッシュメモリなどの可搬性記憶媒体や、RAM(Random Access Memory)などの半導体メモリ素子などとの間で種々の情報を読み書きする駆動装置であってもよい。また、メモリ52の保存領域は、磁気共鳴イメージング装置1B内にあってもよいし、ネットワークで接続された外部記憶装置内にあってもよい。例えば、メモリ52は、MR画像や表示画像のデータを記憶する。また、メモリ52は、本実施形態に係る制御プログラムを記憶する。
【0167】
入力インタフェース54は、操作者からの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路51に出力する。例えば、入力インタフェース54は、撮影データを収集する際の収集条件(これは、撮像条件またはスキャン条件と呼ばれてもよい)や、MR画像を再構成する際の再構成条件、MR画像から後処理画像を生成する際の画像処理条件などを操作者から受け付ける。
【0168】
なお、取得機能512、解析機能513、設定機能514、判定機能515、ディスプレイ53、および通信インタフェース55は、第1の実施形態と略同様のため説明を省略する。
【0169】
また、医用情報処理装置50-2は、単一の装置にて複数の機能を実行するものとして説明した。しかし、それら複数の機能は、複数の装置が個別に実行してもよい。即ち、複数の装置は、処理回路51の各機能を個別に分散して有してもよい。
【0170】
以上、第2の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置1Bの構成について説明した。尚、磁気共鳴イメージング装置1Bによる造影検査の実施例は、基本的にはX線CT装置による造影検査と略同様の手順で実施されるため、説明を省略する。
【0171】
以上説明したように、第2の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置は、被検体の第1の部位における血管中の血液に含まれるヘモグロビン量の変化に関する血液情報を取得し、血液情報に基づいて被検体の第2の部位に対する造影撮像に関する撮像条件を設定し、撮像条件に基づいて造影撮像を行う。
【0172】
従って、第2の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置は、造影剤を用いたテストインジェクションを不要とすることができるため、血管に関する検査を行う際の被検体への負担を低減することができる。また、第2の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置は、光学撮影装置を用いたボーラストラッキングを行うことにより、MRI検査における比吸収率(SAR:Specific Absorption Ration)を低減することができる。
【0173】
(第3の実施形態)
第1の実施形態および第2の実施形態では、医用画像診断装置について説明した。他方、第3の実施形態では、医用情報処理装置について説明する。
【0174】
図16は、第3の実施形態に係る医用情報処理装置50-3の構成例を示すブロック図である。医用情報処理装置50-3は、処理回路51、メモリ52、ディスプレイ53、入力インタフェース54及び通信インタフェース55を有するコンピュータである。また、医用情報処理装置50-3は、光学撮影装置2Aおよびインジェクタ3と接続される。
【0175】
処理回路51は、ハードウェア資源としてCPU等のプロセッサを有する。処理回路51は、医用情報処理装置50-3の中枢として機能する。例えば、処理回路51は、各種プログラムの実行によりシステム制御機能511、取得機能512、解析機能513、判定機能515及び表示制御機能516を有する。
【0176】
システム制御機能511は、入力インタフェース54を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、医用情報処理装置50-3を制御する機能である。具体的には、システム制御機能511により処理回路51は、メモリ52に記憶されている制御プログラムを読み出して処理回路51内のメモリ上に展開し、展開された制御プログラムに従って医用情報処理装置50-3を制御する。例えば、処理回路51は、入力インタフェース54を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、処理回路51の各機能を制御する。
【0177】
取得機能512は、血流検査に関するデータを取得する機能である。ここでの血流検査は、造影剤を使用しない検査を示す。具体的には、取得機能512により処理回路51は、被検体の部位における血管中の血液に含まれるヘモグロビン量の変化に関する血液情報を取得する。より具体的には、処理回路51は、光学撮影装置2Aから、血液情報としてのモニタリング画像を取得する。また、処理回路51は、光学センサから、血液情報としてのセンサ情報を取得してもよい。尚、取得機能512は、取得部の一例である。
【0178】
解析機能513は、血液情報を解析することによって、h-TDCを作成する機能である。尚、解析機能513の詳細は、第1の実施形態と略同様であるため説明を省略する。
【0179】
判定機能515は、血流検査に関する解析結果について種々の判定をする機能である。具体的には、判定機能515により処理回路51は、異なるh-TDCを比較することによって疾病の有無を判定する。より具体的には、処理回路51は、例えば、直近の血流検査において作成されたh-TDCと所与のh-TDCとを比較する。所与のh-TDCは、例えば、健常者の典型的なh-TDC、および過去に生成された被検体Pのh-TDCである。このような比較により、処理回路51は、例えば、血流の状態(例えば、遅延)に基づいて、血流の到達が遅れる疾病(例えば、閉塞性動脈硬化症(ASO:arterioSclerosis obliterans)および静脈瘤)である可能性の有無を判定することができる。
【0180】
なお、医用情報処理装置50-3は、被検体の特定の部位に関する異なるh-TDCの比較に限らず、被検体の異なる部位に関する異なるh-TDCの比較を行ってもよい。具体的には、医用情報処理装置50-3は、光学撮影装置2Aを自由に一つ以上配置することにより、被検体の異なる部位に関する異なるh-TDCを作成することができるため、例えば、それら異なるh-TDCを比較することによって全身の血行状態を把握することもできる。
【0181】
また、医用情報処理装置50-3は、作成したh-TDCを用いて肺機能の評価・推定をしてもよい。例えば、医用情報処理装置50-3は、被検体への酸素吸入の前後でh-TDCを作成し、それら二つのh-TDCを比較することによって酸素吸収効率を算出してもよい。
【0182】
また、光学撮影装置2A(或いは、血液情報取得装置2)によって、例えばパルスオキシメータ相当の情報(例えば、酸素飽和度)を取得することができれば、医用情報処理装置50-3は、酸素飽和度を解析結果として肺機能の評価・推定をしてもよい。
【0183】
また、医用情報処理装置50-3は、作成したh-TDCに基づいて任意の医用画像診断装置の撮像条件を決定してもよい。
【0184】
以上説明したように、第3の実施形態に係る医用情報処理装置は、被検体の部位における血管中の血液に含まれるヘモグロビン量の変化に関する血液情報を取得し、血液情報を解析することによって、ヘモグロビン量と時間とを対応付けた時間濃度曲線を生成し、生成した時間濃度曲線と所与の時間濃度曲線とを比較することによって疾病の有無を判定する。
【0185】
従って、第3の実施形態に係る医用情報処理装置は、造影剤およびX線を用いずに血流検査を行うことができるため、血管に関する検査を行う際の被検体への負担を低減することができる。
【0186】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、血管に関する検査を行う際の被検体への負担を低減することができる。
【0187】
なお、上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))などの回路を意味する。プロセッサが例えばCPUである場合、プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。一方、プロセッサが例えばASICである場合、プログラムが記憶回路に保存される代わりに、当該機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれる。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、図における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0188】
加えて、実施形態に係る各機能は、前記処理を実行するプログラムをワークステーション等のコンピュータにインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても実現することができる。このとき、コンピュータに前記手法を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク(ハードディスクなど)、光ディスク(CD-ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記憶媒体に格納して頒布することも可能である。
【0189】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0190】
以上の実施形態に関し、発明の一側面及び選択的な特徴として以下の付記を開示する。
【0191】
(付記1)
被検体の第1の部位における血管中の血液に含まれるヘモグロビン量の変化に関する血液情報を取得する取得部と、
前記血液情報に基づいて前記被検体の第2の部位に対する造影撮像に関する撮像条件を設定する設定部と、
前記撮像条件に基づいて前記造影撮像を行う撮像部と
を具備する、医用画像診断装置。
【0192】
(付記2)
前記血液情報を解析することによって、前記ヘモグロビン量と時間とを対応付けた時間濃度曲線を生成する解析部
を更に具備し、
前記設定部は、前記時間濃度曲線に基づいて前記撮像条件を設定してもよい。
【0193】
(付記3)
前記血液情報は、前記第1の部位を光学撮影して得られた画像であり、
前記解析部は、前記画像を解析することによって、前記時間濃度曲線を生成してもよい。
【0194】
(付記4)
前記第1の部位を光学撮影することによって前記画像を取得する光学撮影装置
を更に具備してもよい。
【0195】
(付記5)
前記血液情報は、前記第1の部位における血管をセンシングして得られた前記ヘモグロビン量の値を示すセンサ情報であり、
前記解析部は、前記センサ情報に基づいて、前記時間濃度曲線を生成してもよい。
【0196】
(付記6)
前記第1の部位における血管をセンシングすることによって前記センサ情報を取得するセンサ
を更に具備してもよい。
【0197】
(付記7)
前記時間濃度曲線と、前記被検体の情報を含む検査情報とを対応付けて記憶するメモリ
を更に具備してもよい。
【0198】
(付記8)
前記メモリは、所与の時間濃度曲線を記憶し、
前記取得部は、前記メモリから前記所与の時間濃度曲線を取得し、
前記設定部は、前記所与の時間濃度曲線に基づいて前記撮像条件を設定してもよい。
【0199】
(付記9)
前記所与の時間濃度曲線は、前記被検体の過去の時間濃度曲線または健常者の典型的な時間濃度曲線であってもよい。
【0200】
(付記10)
前記撮像条件は、前記ヘモグロビン量の値に関する閾値を含み、
前記被検体の血管へ造影剤を注入した後に、前記ヘモグロビン量の値が前記閾値以上か否かを判定する判定部
を更に具備し、
前記撮像部は、前記ヘモグロビン量の値が前記閾値以上となった時点に基づいて前記造影撮像を行ってもよい。
【0201】
(付記11)
前記設定部は、前記ヘモグロビン量の値が前記閾値以上となった時点を前記造影撮像の開始時間に設定してもよい。
【0202】
(付記12)
前記設定部は、前記ヘモグロビン量の値が前記閾値以上となった時点と、前記第1の部位および前記第2の部位の位置関係とに基づいて、前記造影撮像の開始時間を設定してもよい。
【0203】
(付記13)
前記第1の部位における血管は、総頸動脈、橈骨動脈、大腿動脈、膝窩動脈、後脛骨動脈、または足背動脈であってもよい。
【0204】
(付記14)
前記血液情報は、第1の血液情報であり、
前記取得部は、更に、前記被検体の第3の部位における血管中の血液に含まれるヘモグロビン量の変化に関する第2の血液情報を取得し、
前記設定部は、前記第1の血液情報および前記第2の血液情報に基づいて前記撮像条件を設定してもよい。
【0205】
(付記15)
前記第1の血液情報を解析することによって、前記ヘモグロビン量と時間とを対応付けた第1の時間濃度曲線を生成し、前記第2の血液情報を解析することによって、第2の時間濃度曲線を生成する解析部
を更に具備し、
前記設定部は、前記第1の時間濃度曲線および前記第2の時間濃度曲線に基づいて前記撮像条件を設定してもよい。
【0206】
(付記16)
前記撮像部は、X線コンピュータ断層撮影または磁気共鳴イメージングを利用して前記造影撮像を行ってもよい。
【0207】
(付記17)
被検体の部位における血管中の血液に含まれるヘモグロビン量の変化に関する血液情報を取得する取得部と、
前記血液情報を解析することによって、前記ヘモグロビン量と時間とを対応付けた時間濃度曲線を生成する解析部と、
前記時間濃度曲線と所与の時間濃度曲線とを比較することによって疾病の有無を判定する判定部と
を具備する、医用情報処理装置。
【0208】
(付記18)
被検体の第1の部位における血管中の血管に含まれるヘモグロビン量の変化に関する血液情報を取得することと、
前記血液情報に基づいて前記被検体の第2の部位に対する造影撮像に関する撮像条件を設定することと、
前記撮像条件に基づいて前記造影撮像を行うことと
を具備する、医用画像診断方法。
【符号の説明】
【0209】
1 医用画像診断装置
1A X線CT装置
1B 磁気共鳴イメージング装置
2 血液情報取得装置
2A 光学撮影装置
3 インジェクタ
10,10-2 架台装置
11 X線管
12 X線検出器
13 回転フレーム
14 X線高電圧装置
15 制御装置
16 ウェッジフィルタ
17 コリメータ
18 DAS
19 開口部
21 傾斜磁場電源
23 送信回路
25 受信回路
27 寝台駆動装置
29 シーケンス制御回路
30,30-2 寝台装置
31,31-2 基台
33,33-2 天板
41 静磁場磁石
43 傾斜磁場コイル
45 送信コイル
47 受信コイル
50,50-2,50-3 医用情報処理装置
51 処理回路
511 システム制御機能
512 取得機能
513 解析機能
514 設定機能
515 判定機能
516 表示制御機能
52 メモリ
53 ディスプレイ
54 入力インタフェース
55 通信インタフェース
600,800,1100 表示画面
610 モニタリング画像
620 室内画像
630 モニタリング情報
640,700,840,1140,1400 解析結果
810,1110 位置決め画像
820,1120 CT画像
830,1130 スキャン情報
841,1141 指示子
BV 血管
P 被検体
Po1,Po2,Po3,Po4,Po5,Po6,Po7 設置位置
R 検査室
R1,R2,R3,R4 領域
ROI 関心領域
ROIm モニタリング関心領域
Tp,Tp1,Tp2,Ts,Ts1,Ts2 時間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16