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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108572
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】運転支援装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240805BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20240805BHJP
   B60W 30/08 20120101ALI20240805BHJP
【FI】
G08G1/16 D
G08G1/09 D
B60W30/08
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013004
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 周平
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA31
3D241BB31
3D241CE01
3D241CE04
3D241CE05
5H181AA01
5H181BB20
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF27
5H181FF32
5H181LL01
5H181LL04
5H181LL06
5H181LL09
5H181LL15
(57)【要約】
【課題】信号機のある交差点を通過する前に、車両の進行方向に関係する範囲における障害物の検出を開始することができる運転支援装置を提供する。
【解決手段】運転支援装置は、車両の前方の信号機と、信号機の灯色と、信号機までの距離とを繰り返し検出する信号機検出部と、信号機における車両の進行方向を特定する進行方向特定部と、信号機の灯色と、信号機における車両の進行方向とに応じて、信号機のある交差点における障害物の検出範囲を設定する障害物検出範囲設定部(設定部)と、障害物検出範囲設定部が設定した検出範囲に存在する障害物を検出する障害物検出部と、車両が交差点に進入する手前から、交差点の道路線形と、信号機の灯色と、障害物検出部が検出した障害物の状態と、に基づいて、車両の走行状態を制御する車両制御部(制御部)と、を備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前方の信号機と、当該信号機の灯色と、前記信号機までの距離とを繰り返し検出する信号機検出部と、
前記信号機における前記車両の進行方向を特定する進行方向特定部と、
前記信号機の灯色と、当該信号機における前記車両の進行方向と、に応じて、前記信号機のある交差点における障害物の検出範囲を設定する設定部と、
前記設定部が設定した検出範囲に存在する障害物を検出する障害物検出部と、
前記車両が前記交差点に進入する手前から、前記交差点の道路線形と、前記信号機の灯色と、前記障害物検出部が検出した障害物の状態と、に基づいて、前記車両の走行状態を制御する制御部と、を備える、
運転支援装置。
【請求項2】
前記障害物検出部は、前記車両が前記信号機から所定距離手前の地点に到達した際に、前記障害物の検出を開始する、
請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記交差点において、少なくとも、前記車両を停止させるかまたは通過させるかの判断と、前記車両の進行方向と車速との制御を行う、
請求項1または請求項2に記載の運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、車両を走行させる際に、運転者のアクセル操作や操舵操作の支援を行う運転支援装置が実用化されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、車両の進行方向の周囲環境を認識して、車両の走行制御を行う運転支援装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-189883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された運転支援装置にあっては、信号機の灯色を検出することによって交差点の通過判断を行い、車両が交差点に進入した後で、進行方向の障害物の検出を行っている。したがって、車両が交差点に進入した後で、進行方向の障害物を検出して、車両が急減速するおそれがあった。
【0006】
本発明の目的は、信号機のある交差点を通過する前に、車両の進行方向に関係する範囲における障害物の検出を開始することができる運転支援装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、本発明に係る運転支援装置は、車両の前方の信号機と、当該信号機の灯色と、前記信号機までの距離とを繰り返し検出する信号機検出部と、前記信号機における前記車両の進行方向を特定する進行方向特定部と、前記信号機の灯色と、当該信号機における前記車両の進行方向と、に応じて、前記信号機のある交差点における障害物の検出範囲を設定する設定部と、前記設定部が設定した検出範囲に存在する障害物を検出する障害物検出部と、前記車両が前記交差点に進入する手前から、前記交差点の道路線形と、前記信号機の灯色と、前記障害物検出部が検出した障害物の状態と、に基づいて、前記車両の走行状態を制御する制御部と、を備える。
【0008】
この構成によれば、信号機のある交差点を通過する前に、車両の進行方向に関係する範囲の障害物の検出を行うことができるため、車両の進行方向における障害物の状態を先読みすることができる。これによって、交差点を通過する際に、障害物の検出が遅れるのを防止することができる。また、障害物の検出範囲を限定することができるため、計算負荷を低減することができる。
【0009】
また、本発明に係る運転支援装置において、前記障害物検出部は、前記車両が前記信号機から所定距離手前の地点に到達した際に、前記障害物の検出を開始する。
【0010】
この構成によれば、交差点に進入する前から、車両の進行方向に応じた範囲の障害物の検出を開始することができる。そのため、運転支援装置は、余裕を持って車両の走行制御を行うことができる。
【0011】
また、本発明に係る運転支援装置において、前記制御部は、前記交差点において、少なくとも、前記車両を停止させるかまたは通過させるかの判断と、前記車両の進行方向と車速との制御を行う。
【0012】
この構成によれば、交差点において車両を円滑に制御することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、信号機のある交差点を通過する前に、車両の進行方向に関係する範囲における障害物の検出を開始することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、交差点を直進する際における、実施形態の運転支援装置の動作内容を説明する図である。
図2図2は、交差点を右折する際における、実施形態の運転支援装置の動作内容を説明する図である。
図3図3は、交差点を左折する際における、実施形態の運転支援装置の動作内容を説明する図である。
図4図4は、障害物の検出範囲の位置を特定する方法を説明する図である。
図5図5は、実施形態の運転支援装置のハードウエア構成の一例を示すハードウエアブロック図である。
図6図6は、実施形態の運転支援装置の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
図7図7は、実施形態の運転支援装置が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0016】
まず、図1から図3を用いて、本発明の実施形態の運転支援装置の動作概要を説明する。図1は、交差点を直進する際における、実施形態の運転支援装置の動作内容を説明する図である。図2は、交差点を右折する際における、実施形態の運転支援装置の動作内容を説明する図である。図3は、交差点を左折する際における、実施形態の運転支援装置の動作内容を説明する図である。
【0017】
(運転支援装置の動作概要)
本実施形態の運転支援装置8を搭載する車両1は、自身が走行する道路環境を認識して、障害物がない場合には、先行車両6との間に予め設定された車間距離を保持した状態で、設定車速以下の速度で走行する。また、運転支援装置8が、車両1の進行方向に障害物を検出した場合には、車両1を減速、停止させる、または障害物回避を行わせて、障害物との衝突を回避する。このように、運転支援装置8が動作した状態で走行していることを自動運転と呼ぶことにする。
【0018】
即ち、運転支援装置8は、走行環境に応じて、車両1のアクセル操作、ブレーキ操作、操舵操作を代行する。
【0019】
特に、本実施形態の運転支援装置8は、車両1の進路に応じて、前方の道路環境の先読みを行うものである。
【0020】
図1は、運転支援装置8を搭載した車両1が、前方の交差点2を直進する場合の様子を示している。
【0021】
交差点2では、片側1車線の2本の道路が直角に交差している。各道路の走行車線には、交差点2の進入箇所に、停止線5が描画されている。また、各道路には、例えば交差点2の奥側に、信号機3a、信号機3b、信号機3c、信号機3dがそれぞれ設置されている。更に、各道路には、交差点2の手前側に、横断歩道4a、横断歩道4b、横断歩道4c、横断歩道4dが描画されている。
【0022】
運転支援装置8を搭載した車両1は、予め、カーナビゲーションシステム等によって、運転目的地が設定された状態で走行している。したがって、運転支援装置8は、前方の交差点2における進行方向(図1における矢印A)を、予めわかった状態で動作している。
【0023】
運転支援装置8は、車両1の周囲の障害物の状態を検出しながら、車両1を走行させる。障害物は、例えば、道路を走行している自動車、停車している自動車、自転車、オートバイ、歩行者、道路上の落下物等、多岐にわたる。
【0024】
運転支援装置8は、車両1の全周囲の障害物を検出するのが望ましいが、障害物を検出する際の計算負荷をできるだけ低減させるために、車両1が進行する方向に応じて、必要十分な範囲のみで障害物検出を行う。
【0025】
例えば、車両1が交差点2を直進することが分かっている場合、運転支援装置8は、図1に示す検出範囲10a、検出範囲10b、検出範囲10c、検出範囲10d、検出範囲10e、検出範囲10fについて、障害物の検出を行う。検出範囲10a、検出範囲10b、検出範囲10c、検出範囲10d、検出範囲10e、検出範囲10fは、交差点2を直進する車両1の運転に影響を及ぼす可能性がある障害物の存在範囲を示す。
【0026】
検出範囲10aは、車両1が走行している車線を含む前方の領域である。検出範囲10aには、例えば先行車両6が存在する可能性がある。
【0027】
検出範囲10bは、交差点2の手前の横断歩道4aを含む領域である。検出範囲10bには、横断歩道4aを横断中の歩行者や、横断歩道4aの横断を開始しようとする歩行者が存在する可能性がある。
【0028】
検出範囲10cは、交差点2の奥の横断歩道4bを含む領域である。検出範囲10cには、横断歩道4bを横断中の歩行者や、横断歩道4bの横断を開始しようとする歩行者が存在する可能性がある。
【0029】
検出範囲10dは、交差点2における、車両1の右側面側の走行車線を含む領域である。検出範囲10dには、自動車、自転車、オートバイ等が存在する可能性がある。
【0030】
検出範囲10eは、交差点2における、車両1の左側面側の走行車線を含む領域である。検出範囲10eには、自動車、自転車、オートバイ等が存在する可能性がある。
【0031】
検出範囲10fは、交差点2において、車両1の走行車線に対する対向車線で右折待ちの車両が存在する可能性がある領域である。検出範囲10fには、右折待ちの自動車、オートバイ等が存在する可能性がある。
【0032】
なお、運転支援装置8が各検出範囲の位置を特定する方法については後述する(図4参照)。
【0033】
また、車両1が交差点2を右折することが分かっている場合、運転支援装置8は、図2に示す検出範囲10a、検出範囲10b、検出範囲10d、検出範囲10e、検出範囲10g、検出範囲10hについて、障害物の検出を行う。検出範囲10a、検出範囲10b、検出範囲10d、検出範囲10e、検出範囲10g、検出範囲10hは、交差点2を右折する車両1の運転に影響を及ぼす可能性がある障害物の存在範囲を示す。
【0034】
検出範囲10a,10b,10d,10eは、図1で説明した通りである。
【0035】
検出範囲10gは、交差点2の奥側における、車両1の走行車線に対する対向車線を含む領域である。検出範囲10gには、交差点2に進入する自動車、自転車、オートバイ等が存在する可能性がある。
【0036】
検出範囲10hは、横断歩道4dを含む領域である。検出範囲10hには、横断歩道4dを横断中の歩行者や、横断歩道4dの横断を開始しようとする歩行者が存在する可能性がある。
【0037】
また、車両1が交差点2を左折することが分かっている場合、運転支援装置8は、図3に示す検出範囲10a、検出範囲10b、検出範囲10d、検出範囲10f、検出範囲10iについて、障害物の検出を行う。検出範囲10a、検出範囲10b、検出範囲10d、検出範囲10f、検出範囲10iは、交差点2を左折する車両1の運転に影響を及ぼす可能性がある障害物の存在範囲を示す。
【0038】
検出範囲10a,10b,10d,10fは、図1で説明した通りである。
【0039】
検出範囲10iは、横断歩道4cを含む領域である。検出範囲10iには、横断歩道4hを横断中の歩行者や、横断歩道4cの横断を開始しようとする歩行者が存在する可能性がある。
【0040】
なお、図1から図3において、各検出範囲を示す領域は楕円で表現しているが、楕円に限定されるものではない。即ち、各検出範囲を示す領域は、例えば矩形で表現してもよい。
【0041】
また、図1から図3は、交差点2が十字路の形状を有する場合を示すものであるが、運転支援装置8は、その他の形状の交差点2についても同様に、車両1の進行方向に応じた障害物の検出範囲を示す情報を有している。
【0042】
(障害物の検出範囲の位置の特定方法)
図4を用いて、運転支援装置8が、前述した各検出範囲の位置を特定する方法を説明する。図4は、障害物の検出範囲の位置を特定する方法を説明する図である。
【0043】
運転支援装置8は、後述するカメラ22、ライダ24、GPSレシーバ25、高精度地図データベース26(図5参照)等を用いて、車両1の周囲の障害物の位置を特定する。障害物の位置は、例えば、車両1からの距離と、車両1の進行方向に対する偏角とで特定することができる。
【0044】
図4は、図1で説明した検出範囲10dを例にあげて、その位置を特定する方法を説明する図である。
【0045】
検出範囲10dの位置は、予め高精度地図データベース26に記憶されているとする。
【0046】
車両1の現在位置は、例えばGPS測位によって、随時検出される。
【0047】
運転支援装置8は、検出された車両1の現在位置と、前方の交差点2における検出範囲10dとの相対位置関係を算出する。その結果、検出範囲10dは、図4に示すように、車両1の進行方向の距離Daから距離Dbの範囲にあり、車両1の進行方向に対する偏角が、偏角θaから偏角θbの範囲にあることがわかる。
【0048】
そして、運転支援装置8は、当該範囲にある障害物のみを選択的に検出する。より具体的には、運転支援装置8が検出した障害物の、車両1からの距離Dが、Da<D<Dbであって、尚且つ、車両1の進行方向からの偏角θが、θa<θ<θbである場合に、検出された障害物は、検出範囲10d内に存在すると判断する。
【0049】
運転支援装置8は、車両1の現在位置が更新される都度、前述した処理を行って、時刻とともに変化する検出範囲10dの位置の特定を続ける。
【0050】
(運転支援装置のハードウエア構成)
図5を用いて、運転支援装置8のハードウエア構成を説明する。図5は、実施形態の運転支援装置のハードウエア構成の一例を示すハードウエアブロック図である。
【0051】
運転支援装置8は、車両1の各部を制御するために、複数のECU(Electronic Control Unit)を備えている。各ECUは、マイコン(マイクロコントローラユニット)を備える。マイコンには、CPUと、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリ、およびDRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリが内蔵されている。
【0052】
複数のECUには、操舵ECU13、駆動ECU15、制動ECU17が含まれる。操舵ECU13、駆動ECU15、制動ECU17は、バス12によって、CAN(Controller Area Network)通信プロトコルによる通信、つまりCAN通信が可能に接続されている。
【0053】
操舵ECU13は、車両1の操舵装置14を制御する制御部である。操舵装置14は、例えば電動モータのトルクをステアリング機構に付与する電動パワーステアリング装置である。ステアリング機構は、たとえば、ラックアンドピニオン式のステアリングギヤを含み、電動モータのトルクによりラック軸が車幅方向に移動すると、そのラック軸の移動に伴って左右の操向輪が左右に転舵するように構成されている。
【0054】
駆動ECU15は、車両1の駆動装置16を制御する制御部である。駆動装置16は、エンジンを駆動源として備える構成であってもよいし、モータを駆動源として備える構成であってもよいし、エンジンおよびモータの両方を駆動源として備える構成であってもよい。駆動装置16には、必要に応じて、駆動源からの駆動力を変速して出力する変速機が含まれる。
【0055】
制動ECU17は、車両1の制動装置18を制御する制御部である。制動装置18は、油圧式であってもよいし、電動式であってもよい。油圧式の制動装置18は、ブレーキアクチュエータを備え、このブレーキアクチュエータの機能により、各車輪に設けられたブレーキのホイールシリンダに油圧が分配され、その油圧により各ブレーキから駆動輪を含む車輪に制動力が付与される。
【0056】
また、前述した複数のECUには、自動運転機能のための制御部として、自動運転ECU11、カメラECU21、ライダECU23等が含まれる。
【0057】
自動運転ECU11は、自動運転制御の制御中枢である。自動運転ECU11は、自身が備えるCPUに、制御プログラムを実行させることによって、運転支援装置8を統括的に制御する。自動運転ECU11は、操舵ECU13、駆動ECU15、制動ECU17とCAN通信可能に接続されている。自動運転ECU11が有する具体的な機能については後述する(図6参照)。
【0058】
自動運転ECU11には、例えば、イーサネット(登録商標)規格のバス20を介して、カメラECU21と、ライダECU23と、GPSレシーバ25と、高精度地図データベース26と、モニタ27と、スピーカ28とが接続されている。
【0059】
カメラECU21は、バス20を介して、自動運転ECU11と通信可能に接続されている。カメラECU21には、カメラ22が接続されている。カメラ22は、車両1の前方の視野範囲22aの静止画を所定のフレームレートで連続して撮影する。カメラECU21には、カメラ22から連続して出力される静止画の画像信号が入力される。カメラECU21は、カメラ22から入力される画像信号を、自動運転ECU11に出力する。そして、自動運転ECU11は、カメラECU21から取得した画像信号を分析することによって、車両1の前方の道路線形や信号機3の状態、或いは障害物等を認識する。なお、カメラ22はモノクロカメラであってもよいし、カラーカメラであってもよい。また、カメラ22は、単眼カメラであってもよいし、ステレオカメラであってもよい。
【0060】
ライダECU23は、バス20を介して、自動運転ECU11と通信可能に接続されている。ライダECU23には、複数のライダ24が接続されている。ライダ24は、探索範囲にレーザ光を照射し、探索範囲内に存在する物体からの反射光を光センサで受光して、その反射光の強度、即ち物体までの距離に応じた検出信号を出力する。ライダ24は、例えば、車両1のフロントバンパの左端、中央および右端ならびにリヤバンパの左端、中央および右端にそれぞれ配置されている。ライダECU23には、複数のライダ24から出力される検出信号が入力される。ライダECU23は、複数のライダ24から取得した検出信号を処理して、その処理により得られたデータを自動運転ECU11に送信する。具体的には、ライダECU23は、複数のライダ24から入力された検出信号を処理して、各ライダ24の方向における物体の存在位置を画像化する。なお、運転支援装置8は、ライダECU23の他に、レーダECU、およびレーダECUに接続されたミリ波レーダを備えてもよい。一般に、ミリ波レーダはライダ24よりも測距距離が長いため、近距離の測距はライダ24で行い、遠距離の測距はミリ波レーダで行うようにしてもよい。
【0061】
GPSレシーバ25は、複数のGPS(Global Positioning System)衛星からの測位信号を受信する受信機である。GPSレシーバ25が受信した複数の測位信号は、GPSレシーバ25から自動運転ECU11に入力される。自動運転ECU11は、複数の測位信号から、車両1の現在位置と進行方向とを推定する。なお、GPSレシーバ25自身が、車両1の現在位置と進行方向とを推定する機能を有し、GPSレシーバ25が推定した現在位置と進行方向とが自動運転ECU11に入力される構成であってもよい。なお、GPSレシーバ25の代わりに、同様の機能を有するGNSS(Global Navigation Satellite System)レシーバを備えてもよい。
【0062】
高精度地図データベース26は、例えば、道路の幅および勾配などの情報や、区画線、路肩の線、交差点、踏切、停止線、横断歩道、信号機、標識などの地物の情報を含むデータである。自動運転ECU11は、GPSレシーバ25からの測位信号に基づいて推定した車両1の現在位置と、高精度地図データベース26の内容とを照合することによって、車両1の道路上の位置を特定する。なお、高精度地図データベース26は、自動運転ECU11のマイコンに内蔵された不揮発性メモリに記憶されてもよいし、自動運転ECU11に接続された非図示のHDD(Hard Disk Drive)などに記憶されてもよい。
【0063】
モニタ27は、自動運転ECU11が生成した、運転支援装置8の動作状態に係る図形情報やテキスト情報を表示することによって、運転者に通知する。モニタ27は、例えば液晶モニタや有機ELモニタである。
【0064】
スピーカ28は、自動運転ECU11が生成した、運転支援装置8の動作状態に係る音や音声を出力することによって、運転者に通知する。スピーカ28は、例えば、注意喚起に係る情報や警報に係る情報を出力する。
【0065】
なお、自動運転ECU11は、交差点2の形状、および当該交差点2における車両1の進行方向毎に、図1から図3で説明したような、障害物の検出範囲が登録されたテーブルを記憶している。
【0066】
運転支援装置8は、更に、図5に非図示の車速センサ等の各種センサも備える。また、図5に示すハードウエア構成は一例であって、同様の機能を実現するための様々な変形が可能である。また、同様の機能を実現するために、異なるセンサやアクチェータが備えられてもよい。
【0067】
(運転支援装置の機能構成)
図6を用いて、運転支援装置8の機能構成を説明する。図6は、実施形態の運転支援装置の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。なお、図6の機能ブロック図は、自動運転ECU11が、本実施形態の内容を実現するために必要な最小限の構成を示す。
【0068】
運転支援装置8の自動運転ECU11は、自身が備えるCPUに制御プログラムを実行させることによって、図6に示す信号機検出部31と、進行方向特定部32と、障害物検出範囲設定部33と、障害物検出部34と、車両制御部35とを機能部として実現する。なお、自動運転ECU11が備えるこれらの機能の一部または全てが、専用のハードウエアによって実現されてもよい。
【0069】
信号機検出部31は、車両1の前方の信号機3と、信号機3の灯色と、信号機3までの距離とを繰り返し検出する。
【0070】
信号機検出部31は、例えば、カメラ22が撮像した画像を、深層学習によって生成された信号機認識モデルと照合させることによって、画像の中に信号機3が写っているか、信号機3が写っている場合は、その灯色(青色、黄色または赤色)を検出する。また、信号機検出部31は、測位された車両1の現在位置および進行方向を、高精度地図データベース26と照合することによって、車両1から信号機3(交差点2)までの距離を推定する。なお、信号機検出部31は、前述した処理を繰り返し行うことによって、車両1と交差点2との位置関係を随時更新する。
【0071】
また、信号機検出部31は、信号機3の灯色が黄色である場合に、車両1が、黄色点灯中に信号機3を通過可能であるかを判定する。信号機検出部31は、例えば、車両1から信号機3(交差点2)までの距離を、信号機3の青色の灯色が消灯してから赤色の灯色が点灯するまでの約2秒間で進行することができるかによって、車両1が、黄色点灯中に信号機3を通過可能であるかを判定する。
【0072】
また、信号機検出部31は、車両1から信号機3(正確には交差点2)までの距離が所定距離以内であるかを判定する。所定距離の値は、例えば、カメラ22やライダ24の仕様に基づいて、運転支援装置8が、交差点2の周囲の障害物の検出を行うことが可能な距離に設定される。所定距離の値は固定値でもよいし、車両1の車速が大きいほど、長い所定距離を設定してもよい。
【0073】
更に、信号機検出部31は、車両1が、信号機3のある交差点2を通過したかを判定する。信号機検出部31は、例えば、車両1と検出された信号機3との距離を随時監視することによって、車両1が、信号機3のある交差点2を通過したかを判定する。
【0074】
進行方向特定部32は、信号機検出部31が検出した信号機3における車両1の進行方向を特定する。
【0075】
進行方向特定部32は、具体的には、予め設定されている車両1の走行経路に基づいて、直近の信号機3(交差点2)における車両1の進行方向を特定する。なお、進行方向特定部32が行う具体的な処理の内容は、カーナビゲーションシステムの経路案内機能によって、広く公知となっている。
【0076】
障害物検出範囲設定部33は、信号機検出部31が検出した信号機3の灯色と、信号機3における車両1の進行方向と、に応じて、信号機3のある交差点2における障害物の検出範囲を設定する。なお、障害物検出範囲設定部33は、本開示における設定部の一例である。
【0077】
障害物検出範囲設定部33は、具体的には、自動運転ECU11が記憶している、障害物の検出範囲が登録されたテーブルから、交差点2の形状と当該交差点2における車両1の進行方向とに該当するデータを読み出して、障害物の検出範囲を設定する。
【0078】
障害物検出部34は、障害物検出範囲設定部33が設定した検出範囲に存在する障害物を検出する。
【0079】
障害物検出部34は、具体的には、障害物検出範囲設定部33が読み出した障害物の検出範囲と、車両1の現在位置とから、図4で説明したように、車両1から見た、障害物の検出範囲の相対位置を特定する。そして、障害物検出部34は、ライダ24やカメラ22によって、特定された検出範囲内の、自動車、自転車、オートバイ、歩行者、道路上の落下物等の障害物を検出する。
【0080】
車両制御部35は、車両1が交差点2に進入する手前から、交差点2の道路線形と、信号機3の灯色と、障害物検出部34が検出した障害物の状態と、に基づいて、車両1の走行状態を制御する。なお、車両制御部35は、本開示における制御部の一例である。
【0081】
車両制御部35は、具体的には、信号機3の灯色が赤色の場合には、停止線5の位置、または先行車両6の手前で車両1を停止させる速度制御(停止制御)を行う。また、車両制御部35は、信号機3の灯色が青色または黄色の場合には、予め決められた走行経路に沿って車両1を走行させる、速度制御および操舵制御を行う。その際、車両1の進行方向に障害物が存在することが検出された場合には、車両制御部35は、車両1を障害物の手前で停止させる速度制御(停止制御)を行う。
【0082】
(運転支援装置が行う処理の流れ)
図7を用いて、運転支援装置8が行う処理の流れを説明する。図7は、実施形態の運転支援装置が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0083】
信号機検出部31は、信号機3を検出したかを判定する(ステップS11)。信号機3を検出したと判定される(ステップS11:Yes)とステップS12に進む。一方、信号機3を検出したと判定されない(ステップS11:No)とステップS11を繰り返す。
【0084】
ステップS11において、信号機3が検出されたと判定されると、信号機検出部31は、信号機3の灯色は青色かを判定する(ステップS12)。信号機3の灯色は青色であると判定される(ステップS12:Yes)とステップS13に進む。一方、信号機3の灯色は青色であると判定されない(ステップS12:No)とステップS14に進む。
【0085】
ステップS12において、信号機3の灯色は青色であると判定されると、進行方向特定部32は、信号機3のある交差点2における車両1の進行方向を特定する(ステップS13)。その後、ステップS17に進む。
【0086】
一方、ステップS12において、信号機3の灯色は青色であると判定されないと、信号機検出部31は、信号機3の灯色は黄色かを判定する(ステップS14)。信号機3の灯色は黄色であると判定される(ステップS14:Yes)とステップS15に進む。一方、信号機3の灯色は黄色であると判定されない(ステップS14:No)、即ち、信号機3の灯色が赤色である場合は、ステップS16に進む。
【0087】
ステップS14において、信号機3の灯色は黄色であると判定されると、信号機検出部31は、信号機3が黄色点灯中に、車両1が信号機3を通過可能であるかを判定する(ステップS15)。車両1が信号機3を通過可能であると判定される(ステップS15:Yes)とステップS13に進む。一方、車両1が信号機3を通過可能であると判定されない(ステップS15:No)とステップS16に進む。
【0088】
ステップS14において、信号機3の灯色は黄色であると判定されないか、若しくは、ステップS15において、車両1が信号機3を通過可能であると判定されないと、車両制御部35は、車両1を信号機3のある交差点2の停止線5の位置で停止させる停止制御を行う(ステップS16)。その後、運転支援装置8は、図7の処理を終了する。なお、実際には、運転支援装置8は、自動運転によって目的地に到着するまで、図7の処理を継続して実行する。
【0089】
また、車両1の前方に先行車両6が存在する場合には、ステップS16において、車両制御部35は、車両1を先行車両6の手前で停止させる。
【0090】
ステップS13に戻り、信号機検出部31は、車両1から交差点2までの距離が所定距離以内であるかを判定する(ステップS17)。車両1から交差点2までの距離が所定距離以内であると判定される(ステップS17:Yes)とステップS18に進む。一方、車両1から交差点2までの距離が所定距離以内であると判定されない(ステップS17:No)とステップS17の判定を繰り返す。
【0091】
ステップS17において、車両1から交差点2までの距離が所定距離以内であると判定されると、障害物検出範囲設定部33は、交差点2の周辺に、交差点2の形状と、交差点2における車両1の進行方向とに応じて、障害物の検出範囲を設定する(ステップS18)。
【0092】
続いて、障害物検出部34は、障害物検出範囲設定部33が設定した検出範囲における障害物を検出する(ステップS19)。
【0093】
障害物検出部34は、ステップS19の処理結果に基づいて、検出範囲内に障害物があるかを判定する(ステップS20)。検出範囲内に障害物があると判定される(ステップS20:Yes)とステップS21に進む。一方、検出範囲内に障害物があると判定されない(ステップS20:No)とステップS22に進む。
【0094】
ステップS20において、検出範囲内に障害物があると判定されると、車両制御部35は、車両1の減速制御を行う(ステップS21)。このとき、車両1と障害物との接触が差し迫っていると判定された場合は、車両制御部35は、車両1を停止させる。その後、ステップS23に進む。
【0095】
一方、ステップS20において、検出範囲内に障害物があると判定されないと、車両制御部35は、予め設定された経路に沿って、車両1の自動運転を継続させる(ステップS22)。その後、ステップS23に進む。
【0096】
ステップS21またはステップS22に続いて、信号機検出部31は、車両1が交差点2を通過したかを判定する(ステップS23)。車両1が交差点2を通過したと判定される(ステップS23:Yes)と、運転支援装置8は、図7の処理を終了する。一方、車両1が交差点2を通過したと判定されない(ステップS23:No)とステップS19に戻って、前述した処理を繰り返す。
【0097】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、実施形態の運転支援装置8は、車両1の前方の信号機3と、当該信号機3の灯色と、信号機3までの距離とを繰り返し検出する信号機検出部31と、信号機3における車両1の進行方向を特定する進行方向特定部32と、信号機3の灯色と、信号機3における車両1の進行方向と、に応じて、信号機3のある交差点2における障害物の検出範囲を設定する障害物検出範囲設定部33(設定部)と、障害物検出範囲設定部33が設定した検出範囲に存在する障害物を検出する障害物検出部34と、車両1が交差点2に進入する手前から、交差点2の道路線形と、信号機3の灯色と、障害物検出部34が検出した障害物の状態と、に基づいて、車両1の走行状態を制御する車両制御部35(制御部)と、を備える。したがって、信号機3のある交差点2を通過する前に、車両1の進行方向に関係する範囲の障害物の検出を行うことができるため、車両1の進行方向における障害物の状態を先読みすることができる。これによって、交差点2を通過する際に、障害物の検出が遅れるのを防止することができる。また、障害物の検出範囲を限定することができるため、計算負荷を低減することができる。
【0098】
また、実施形態の運転支援装置8において、障害物検出部34は、車両1が信号機3から所定距離手前の地点に到達した際に、障害物の検出を開始する。したがって、交差点2に進入する前から、車両1の進行方向に応じた範囲の障害物の検出を開始することができる。そのため、運転支援装置8は、余裕を持って車両1の走行制御を行うことができる。
【0099】
また、実施形態の運転支援装置8において、車両制御部35(制御部)は、交差点2において、少なくとも、車両1を停止させるかまたは通過させるかの判断と、車両1の進行方向と車速との制御を行う。したがって、交差点2において車両1を円滑に制御することができる。
【0100】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、前述した実施の形態は、例として提示したものであり、本発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能である。また、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。また、この実施の形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0101】
1 車両
2 交差点
3a,3b,3c,3d 信号機
4a,4b,4c,4d 横断歩道
5 停止線
6 先行車両
8 運転支援装置
10a,10b,10c,10d,10e,10f,10g,10h,10i 検出範囲
31 信号機検出部
32 進行方向特定部
33 障害物検出範囲設定部(設定部)
34 障害物検出部
35 車両制御部(制御部)
D,Da,Db 距離
θ,θa,θb 偏角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7