(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108578
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】複合樹脂粒子、発泡粒子、及び発泡成形体
(51)【国際特許分類】
C08J 9/16 20060101AFI20240805BHJP
C08L 23/10 20060101ALI20240805BHJP
C08L 23/04 20060101ALI20240805BHJP
C08L 25/04 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
C08J9/16 CES
C08J9/16 CET
C08L23/10
C08L23/04
C08L25/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013015
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大脇 皓樹
【テーマコード(参考)】
4F074
4J002
【Fターム(参考)】
4F074AA20
4F074AA24
4F074AA32
4F074AA98
4F074AB03
4F074AC02
4F074AD01
4F074AD13
4F074AD19
4F074AG10
4F074BA39
4F074CA34
4F074CA38
4F074CA42
4F074CA49
4F074CC04X
4F074CC04Y
4F074CC04Z
4F074CC10X
4F074CC22X
4F074CC47Y
4F074CC47Z
4F074DA02
4F074DA32
4F074DA33
4F074DA35
4F074DA36
4F074DA47
4F074DA59
4J002BB03W
4J002BB11X
4J002BC02Y
4J002GN00
(57)【要約】
【課題】本発明は、より高強度のポリプロピレン製発泡成形体の提供を目的とする。
【解決手段】本発明は、ポリプロピレン系樹脂、低密度ポリエチレン、及びポリスチレン系樹脂を含有する、複合樹脂粒子であって、低密度ポリエチレンの含有量が、ポリプロピレン系樹脂含有量100質量部に対して15~500質量部である、複合樹脂粒子に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系樹脂、低密度ポリエチレン、及びポリスチレン系樹脂を含有する、複合樹脂粒子であって、
低密度ポリエチレンの含有量が、ポリプロピレン系樹脂含有量100質量部に対して15~500質量部である、複合樹脂粒子。
【請求項2】
前記複合樹脂粒子の全質量に対し、前記ポリプロピレン系樹脂の含有量が5~50質量%であり、前記低密度ポリエチレンの含有量が5~35質量%であり、前記ポリスチレン系樹脂の含有量が40~90質量%である、請求項1に記載の複合樹脂粒子。
【請求項3】
DSCにより測定される前記低密度ポリエチレンの融点が105℃~115℃である、請求項1又は2に記載の複合樹脂粒子。
【請求項4】
下記方法で特定される前記複合樹脂粒子の表面吸光度比が、1.0~5.0の範囲内である、請求項1又は2に記載の複合樹脂粒子。
(表面吸光度比)
複合樹脂粒子の表面をATR法により赤外分光分析することで得られる赤外線吸収スペクトルから1380cm-1の吸光度(D1380)及び698cm-1の吸光度(D698)を算出し、D698/D1380の数式に適用して得られる数値を表面吸光度比とする。
【請求項5】
前記低密度ポリエチレンのMFRが1.5g/分以下であり、及び/又は、前記ポリプロピレン系樹脂がランダムポリプロピレンである、請求項1又は2に記載の複合樹脂粒子。
【請求項6】
複合樹脂粒子における前記低密度ポリエチレンの含有量が、前記ポリプロピレン系樹脂含有量100質量部に対して15~80質量部である、請求項1又は2に記載の複合樹脂粒子。
【請求項7】
カーボン成分を含有する、請求項1又は2に記載の複合樹脂粒子。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の複合樹脂粒子からなる発泡粒子。
【請求項9】
嵩密度が、10kg/m3~200kg/m3である、請求項8に記載の発泡粒子。
【請求項10】
請求項8に記載の発泡粒子からなる発泡成形体。
【請求項11】
密度が、20kg/m3~50kg/m3である、請求項10に記載の発泡成形体。
【請求項12】
請求項10に記載の発泡成形体を含有する自動車用部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合樹脂粒子、発泡粒子、発泡成形体等に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリスチレン系樹脂からなる発泡成形体は、剛性、断熱性、軽量性、耐水性及び発泡成形性に優れるが、耐薬品性及び耐衝撃性が低いことが知られている。これを補うため、ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂との複合樹脂粒子から得られた複合樹脂発泡成形体が利用されている。複合樹脂粒子は、一般には、ポリエチレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂の基材樹脂を種粒子(核粒子とも称される)とし、種粒子にスチレン系単量体を添加後、この単量体を重合することで製造されている。この重合はシード重合とも称される。複合樹脂粒子は、一般的には、発泡ガスが配合された後に発泡(予備発泡とも称される)させられて発泡した粒子(発泡粒子)となり、発泡粒子を型枠に充填し加熱することによって発泡成形体が製造される。
【0003】
複合樹脂粒子を構成するポリオレフィン系樹脂の種類を変えることで複合樹脂発泡成形体の特性を変更できる。例えば、ポリプロピレン系樹脂を使用すると耐熱性が向上する。耐熱性が高い複合樹脂発泡成形体は自動車用部材を中心として需要があり、ポリプロピレン系樹脂及びポリスチレン系樹脂からなる複合樹脂粒子から得られた耐熱性に優れた複合樹脂発泡成形体が使用されていた(特許文献1)。しかし、発泡成形に利用される蒸気の圧力が高くないと発泡が不十分となり所望の形状、密度等の特性を備えた成形体が得られにくい。発泡成形に要する蒸気の圧力が高いと成形に要するエネルギーが多く必要となり、さらにその圧力に対応した成形機を使用する必要があり、その結果、成形に要するコストが高くなっていた。
【0004】
このため、ポリプロピレンを使用した複合樹脂発泡粒子の発泡成形に利用される蒸気の圧力を低下させることを目的として、ポリプロピレンにエチレン-酢酸ビニル共重合体を配合したポリプロピレン(PP)-エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)を基材樹脂及び種粒子とし、種粒子にスチレン単量体を含浸及び重合させた、PP-EVA-PS複合樹脂粒子が開発されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4718645号公報
【特許文献2】国際公開第2022/202680号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載された複合樹脂粒子から発泡粒子を製造し、この発泡粒子を使用して型内発泡成形すると、発泡成形時の蒸気圧を従来よりも低くできる。しかし、本発明者は、発泡成形体の自動車部材等の用途において、より高強度のポリプロピレン製発泡成形体の供給が望まれることに気付いた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、ポリプロピレン系樹脂及び低密度ポリエチレン含有する種粒子から得られる複合樹脂粒子を使用することによって、発泡成形時の蒸気圧を低くでき、かつ、圧縮強度の高い型内発泡成形体を得られること等を見出し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明は、代表的には以下の態様を包含する。
項1.
ポリプロピレン系樹脂、低密度ポリエチレン、及びポリスチレン系樹脂を含有する、複合樹脂粒子であって、
低密度ポリエチレンの含有量が、ポリプロピレン系樹脂含有量100質量部に対して15~500質量部である、複合樹脂粒子。
項2.
前記複合樹脂粒子の全質量に対し、前記ポリプロピレン系樹脂の含有量が5~50質量%であり、前記低密度ポリエチレンの含有量が5~35質量%であり、前記ポリスチレン系樹脂の含有量が40~90質量%である、項1に記載の複合樹脂粒子。
項3.
DSCにより測定される前記低密度ポリエチレンの融点が105℃~115℃である、項1又は2に記載の複合樹脂粒子。
項4.
下記方法で特定される前記複合樹脂粒子の表面吸光度比が、1.0~5.0の範囲内である、項1~3のいずれかに記載の複合樹脂粒子。
(表面吸光度比)
複合樹脂粒子の表面をATR法により赤外分光分析することで得られる赤外線吸収スペクトルから1380cm-1の吸光度(D1380)及び698cm-1の吸光度(D698)を算出し、D698/D1380の数式に適用して得られる数値を表面吸光度比とする。
項5.
前記低密度ポリエチレンのMFRが1.5g/分以下であり、及び/又は、前記ポリプロピレン系樹脂がランダムポリプロピレンである、項1~4のいずれかに記載の複合樹脂粒子。
項6.
複合樹脂粒子における前記低密度ポリエチレンの含有量が、前記ポリプロピレン系樹脂含有量100質量部に対して15~80質量部である、項1~5のいずれかに記載の複合樹脂粒子。
項7.
カーボン成分を含有する、項1~6のいずれかに記載の複合樹脂粒子。
項8.
項1~7のいずれかに記載の複合樹脂粒子からなる発泡粒子。
項9.
嵩密度が、10kg/m3~200kg/m3である、項8に記載の発泡粒子。
項10.
項8又は9に記載の発泡粒子からなる発泡成形体。
項11.
密度が、20kg/m3~50kg/m3である、項10に記載の発泡成形体。
項12.
項10又は11に記載の発泡成形体を含有する自動車用部材。
【発明の効果】
【0009】
本発明の複合樹脂粒子及び発泡粒子によれば、低蒸気圧の媒体(例:水蒸気)であっても高い熱融着率で発泡成形が可能なため、発泡成形に要するエネルギーを小さくできる。つまり、低蒸気圧での成形性に優れる(低蒸気圧での発泡成形であっても発泡粒子の融着率が高い)。このため、発泡成形に要する設備を簡略化でき、発泡成形に要するコストを低減できる。
これに加えて、本発明の複合樹脂粒子及び発泡粒子によれば、圧縮強度に優れる発泡成形体を提供できる。
また、本発明の複合樹脂粒子及び発泡粒子によれば、耐熱性に優れた(換言すると低加熱寸法変化率の)発泡成形体を提供できる。
また、本発明の複合樹脂粒子及び発泡粒子によれば、難燃性に優れた発泡成形体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書中、語句「含有する」は、語句「から本質的になる」、及び語句「からなる」を包含することを意図して用いられる。
本明細書中、語句「発泡」は、特に断りがない限り、「型内発泡」を意図して用いられる。
本明細書中、語句「MB」は、特に断りがない限り、「マスターバッチ」を意図して用いられる。
【0011】
複合樹脂粒子は、代表的には基材樹脂粒子(種粒子)にスチレン系単量体を含浸させ、含侵したスチレン系単量体を重合することによって得られる。基材樹脂はポリプロピレン系樹脂及び低密度ポリエチレンを少なくとも含有する。種粒子におけるポリプロピレン系樹脂及び低密度ポリエチレンの合計含有量は、種粒子の総質量に対し、例えば80~100質量%、85~100質量%、90~100質量%、95~100質量%、100質量%等であってよい。
【0012】
(ポリプロピレン系樹脂;PP)
ポリプロピレン系樹脂としては、特に限定されず、公知の樹脂が使用できる。ポリプロピレン系樹脂としては、ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー等が挙げられ、成形性が高い(つまり低蒸気圧での発泡粒子の融着性が高いために発泡成形できる及び発泡時の発泡倍率が高くなりやすい)点でランダムコポリマーが好適である。
ポリプロピレン系樹脂としては、リサイクル品、例えば梱包材等として使用されたポリプロピレン系樹脂を回収し、リサイクルされたリサイクル樹脂を使用することもできる。
【0013】
コポリマーは、プロピレン以外のオレフィン(例えばエチレン、ブテン等)を含有するものであってよい。ランダムコポリマーとしては、エチレン-プロピレンランダム共重合体、プロピレン-ブテンランダム共重合体、エチレン-プロピレン-ブテンランダム共重等を挙げることができる。ブロックコポリマーとしては、エチレン-プロピレンブロック共重合体、プロピレン-ブテンブロック共重合体、エチレン-プロピレン-ブテンブロック共重等を挙げることができる。
プロピレン以外のオレフィンに由来する成分のコポリマー中における割合は、例えば0.01~10質量%、0.01~8質量%、0.1~8質量%、0.2~8質量%等とすることができ、好ましくは1~8質量%、より好ましくは2~7質量%である。
ポリプロピレン系樹脂としては市販の樹脂を使用できる。例えば、プライムポリマー社、サンアロマー社、住友化学社等から入手可能である。
【0014】
ポリプロピレン系樹脂の融点は特に限定されないが、例えば130~165℃とでき、130~150℃が好適であり、130~145℃がより好適である。融点が前記範囲内であると、低蒸気圧での成形性に優れる点又は発泡時の発泡倍率が高くなりやすい点で有利である。融点は実施例に記載された方法で特定できる。
【0015】
ポリプロピレン系樹脂のメルトマスフローレート(本明細書中、MFRとも称する。)は特に限定されないが、0.1g/10分~20.0g/10分が好適であり、1g/10分~10g/10分がより好適であり、4g/10分~8g/10分が特に好適である。MFRが前記範囲内であると、低蒸気圧での成形性に優れる点で有利である。MFRは実施例に記載された方法で特定できる。
【0016】
ポリプロピレン系樹脂は、880kg/m3~950kg/m3の密度を有してよい。密度がこの範囲内であると、発泡成形体の強度が向上する点および成形加工性の点で有利である。密度は、890kg/m3~930kg/m3が好ましく、890kg/m3~920kg/m3がより好ましく、890kg/m3~910kg/m3が特に好ましい。密度が前記範囲内であると、低蒸気圧での成形性に優れる点及び発泡成形体の強度が向上する点で有利である。密度は次の方法で特定できる。
(ポリプロピレン系樹脂の密度)
ポリプロピレン系樹脂の密度は、JIS K6922-1:1998に準拠して密度勾配管法で測定する。
【0017】
基材樹脂又は種粒子におけるポリプロピレン系樹脂の含有割合は、種粒子の総質量に対して、例えば10~90質量%、10~88質量%、10~85質量%、10~80質量%、10~75質量%、30~90質量%、30~80質量%、30~75質量%、40~90質量%、40~80質量%、40~75質量%、50~90質量%、50~80質量%、50~75質量%等とでき、50~80質量%がより好適であり、60~80質量%が特に好適である。
【0018】
複合樹脂粒子におけるポリプロピレン系樹脂の含有割合は、複合樹脂粒子の総質量に対して、例えば5~50質量%とでき、5~30質量%が好適であり、5~25質量%がより好適であり、10~25質量%が特に好適である。
基材樹脂、種粒子、又は複合樹脂粒子におけるポリプロピレン系樹脂の含有割合が前記範囲内であると、発泡成形体の耐熱性の点、発泡成形体の強度が向上する点、及び発泡成形体が十分な難燃性を備える点で有利である。
【0019】
(低密度ポリエチレン;LDPE)
本明細書において、低密度ポリエチレンには、例えば、短鎖分岐と長鎖分岐を有しており、したがって、その分子構造は明確な主鎖をほとんど持たないもの(非直鎖状の低密度ポリエチレン(nL-LDPE))、短鎖分岐を有しており(若干の長鎖分岐を有することもある)、したがってその分子構造は主鎖を有し、やや直鎖状であるもの(直鎖状低密度ポリエチレン(L-LDPE))が包含される。低密度ポリエチレンは、低蒸気圧での成形性に優れる点及び発泡成形体の強度が向上する点で、前者の低密度ポリエチレンが直鎖状低密度ポリエチレンよりも有利である。
低密度ポリエチレンとしては、リサイクル品、例えば梱包材等として使用された低密度ポリエチレンを回収し、リサイクルされたリサイクル樹脂を使用することもできる。
【0020】
低密度ポリエチレンは、ポリプロピレン系樹脂と混練又は溶融混練されて基材樹脂を形成する。基材樹脂は所望のサイズの粒子に切断されて種粒子となる。
【0021】
低密度ポリエチレンの密度は、910~940kg/m3等であってよく、910~930kg/m3が好適であり、910~929kg/m3がより好適であり、910~926kg/m3が特に好適である。密度がこの範囲内であると、低蒸気圧での成形性に優れる点で有利である。
【0022】
低密度ポリエチレンの融点は、100~120℃、105~116℃等であってよく、105~115℃が好適であり、105~113℃がより好適である。融点がこの範囲内であると、低蒸気圧での成形性に優れる点で有利である。融点はDSCにより特定されるものとする。具体的には、実施例に記載された方法で特定できる。
【0023】
低密度ポリエチレンのメルトマスフローレート(MFR)は、8.0g/10分以下、1.5g/10分以下、0.2~8.0g/10分、0.2~1.5g/10分、0.2~1.4g/10分、0.3~1.5g/10分等であってよく、0.2~1.4g/10分が好適であり、0.2~1.3g/10分がより好適であり、0.2~1.0g/10分が特に好適である。MFRがこの範囲内であると、複合樹脂粒子の形状を球状にし、結果として成形加工における金型への発泡粒子の充填性を向上させる点で有利である。MFRは実施例に記載された方法で特定できる。
【0024】
基材樹脂又は種粒子における低密度ポリエチレンの含有割合は、基材樹脂又は種粒子の総質量に対して、例えば10~90質量%、12~90質量%、15~90質量%、20~90質量%、25~90質量%、10~70質量%、20~70質量%、25~70質量%、10~60質量%、20~60質量%、25~60質量%、10~50質量%、20~50質量%、25~50質量%等とでき、20~50質量%がより好適であり、20~40質量%が特に好適である
【0025】
複合樹脂粒子における低密度ポリエチレンの含有割合は、複合樹脂粒子の総質量に対して、例えば5~35質量%、5~30質量%等とでき、5~25質量%が好適であり、5~20質量%が特に好適である。
【0026】
基材樹脂、種粒子、又は複合樹脂粒子における低密度ポリエチレンの含有割合が前記範囲内であると、低蒸気圧での成形性に優れる点、発泡成形体の耐熱性が高い点、発泡成形体の強度が向上する点、及び発泡成形体の難燃性が高い点で有利である。
【0027】
基材樹脂、種粒子又は複合樹脂粒子における低密度ポリエチレン含有量は、ポリプロピレン系樹脂含有量100質量部に対して、例えば15~500質量部、15~300質量部、15~200質量部、15~100質量部等とでき、15~80質量部が好適であり、30~75質量部がより好適であり、30~65質量部が特に好適である。
低密度ポリエチレンの含有量が前記範囲内であると、発泡成形体の強度が向上する点で有利である。
【0028】
(他の樹脂)
基材樹脂又は種粒子には、低蒸気圧での成形性及び発泡成形体の強度を損なわない範囲の量であれば、ポリプロピレン系樹脂及び低密度ポリエチレンに加え、他の樹脂が含有されてもよいし、含有されなくてもよい。他の樹脂としては、アクリル酸エチルエステル共重合体、高密度ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリエステル系樹脂等が挙げられる。
基材樹脂又は種粒子における他の樹脂の含有量は、ポリプロピレン系樹脂及び低密度ポリエチレンの合計質量に対し、例えば0.1~30質量%であり、0.2~20質量%が好適であり、0.3~10質量%がより好適である。
【0029】
(カーボン成分)
基材樹脂又は種粒子には、ポリプロピレン系樹脂及び低密度ポリエチレンに加え、カーボン成分が含有されてもよい。カーボン成分としては、例えば、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック(CB)、黒鉛、炭素繊維などが挙げられる。
【0030】
基材樹脂又は種粒子に添加されるカーボン成分は、粒子状であることが好ましく、その平均粒子径は、5nm~100nmであってよく、15nm~35nmが好適である。なお、カーボン成分の平均粒子径は、電子顕微鏡により観察された粒子の直径の平均値である。ただし、カーボン成分がカーボンブラックであるときは、カーボンブラックの平均粒子径は、カーボンブラックの集合体を構成する小さな球状(微結晶による輪郭を有し、分離できない)成分を電子顕微鏡写真にて測定、算出した粒子の直径の平均値である。
【0031】
基材樹脂、種粒子又は複合樹脂粒子におけるカーボン成分の含有量は、ポリプロピレン系樹脂及び低密度ポリエチレンの合計質量に対し、例えば0.1~8質量%であり、0.2~7質量%が好適であり、0.3~7質量%がより好適である。
複合樹脂粒子中のカーボン成分の配合量が前記範囲内であると、十分な黒色を備え、十分な強度を備え、及び十分な耐熱性を備えた発泡成形体の製造に有利である。
【0032】
カーボン成分は、カーボンマスターバッチ(カーボンMB)をポリプロピレン系樹脂及び低密度ポリエチレンに配合することによって、樹脂に加えられることが好ましい。カーボンMBはカーボンブラックが樹脂に分散されたものである。当該樹脂としてはエチレン系樹脂であってよい。カーボンMBに含有されるエチレン系樹脂は、例えば高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等であってよく、1種単独又は2種以上組み合わせてよい。
【0033】
カーボンMBの配合量は、基材樹脂又は種粒子に含有されるカーボンブラックの量(例えば、前記の範囲の量)に対応する量であってよい。例えば、種粒子に含有されるカーボン成分を5gとする場合、カーボンブラックを10質量%含有するカーボンMBを50g配合する。
カーボンMBとして市販品を使用できる。例えば、大日精化工業社、株式会社ENEOS NUC、DIC株式会社等から入手可能である。
【0034】
(無機成分)
基材樹脂又は種粒子には、ポリプロピレン系樹脂及び低密度ポリエチレンに加え、無機成分(カーボン成分を除く)が含有されてもよい。種粒子に無機成分が含有されていると、気泡が微細化しやすくなる。無機成分としては、タルク、シリカ、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸亜鉛等の無機系気泡調整剤が挙げられ、タルク、シリカは気泡サイズが均質化しやすい点で好適である。
基材樹脂、種粒子又は複合樹脂粒子における無機成分は、ポリプロピレン系樹脂及び低密度ポリエチレンの合計質量に対し、例えば0.01~5質量%とでき、0.1~1質量%が好適である。
無機成分は、ポリプロピレン系樹脂と低密度ポリエチレンを混合する際に添加されてもよいし、ポリプロピレン系樹脂と低密度ポリエチレンが混合された混合樹脂に添加されてもよい。
【0035】
(他の成分)
基材樹脂又は種粒子には、ポリプロピレン系樹脂、低密度ポリエチレン及び上記の材料の他に、他の成分が含有されてもよい。他の成分としては、着色剤、核剤、安定剤、充填材(補強材)、高級脂肪酸金属塩、帯電防止剤、滑剤、天然又は合成油、ワックス、紫外線吸収剤、耐候安定剤、防曇剤、坑ブロッキング剤、スリップ剤、被覆剤、中性子遮蔽剤等が挙げられる。基材樹脂又は種粒子に他の成分が含有される場合、その含有量は、基材樹脂又は種粒子の総質量に対して、0.001~10質量%であってよく、0.001~5質量%以下が好適であり、0.001~3質量%がより好適である。
【0036】
(種粒子の製造方法)
種粒子は、発泡成形体形成用の種粒子の製造に用いられる公知の方法により得ることができる。例えば、基材樹脂(ポリプロピレン系樹脂、低密度ポリエチレン等)を、押出機中で溶融混練して押出すことでストランドを得、得られたストランドを、空気中でカット、水中でカット、又は加熱しつつカットすることで、造粒する方法が挙げられる。樹脂は押出機に投入される前に、ミキサーにより混合されてもよい。
【0037】
種粒子の形状は公知の形状であればよいが、円筒状、楕円球状(卵状)又は球状であることが好ましい。また形状は、種粒子から得られる発泡粒子の金型への充填性がよい点から、楕円球状又は球状であることがより好ましい。
種粒子は、0.5~1.4mmの平均粒子径を有していることが好ましい。
【0038】
(複合樹脂粒子)
複合樹脂粒子は、樹脂成分として、基材樹脂に由来するポリプロピレン系樹脂及び低密度ポリエチレン、並びにスチレン系単量体に由来するポリスチレン系樹脂を少なくとも含有する。複合樹脂粒子におけるポリプロピレン系樹脂、低密度ポリエチレン、及びポリスチレン系樹脂の合計含有量は、複合樹脂粒子の総質量に対し、例えば80~100質量%、85~100質量%、90~100質量%、95~100質量%等であってよい。
【0039】
ポリスチレン系樹脂としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、t-ブチルスチレン等のスチレン系単量体に由来する重合体が挙げられる。更に、スチレン系重合体は、スチレン系単量体と、スチレン系単量体と共重合可能な他の単量体とから形成される重合体であってもよい。他の単量体としては、ジビニルベンゼンのような多官能性単量体や、(メタ)アクリル酸ブチルのような構造中にベンゼン環を含まない(メタ)アクリル酸エステル等が例示される。これら他の単量体に由来する樹脂成分は、スチレン系重合体中に5質量%を超えない範囲で含有されてもよい。
【0040】
複合樹脂粒子におけるポリスチレン系樹脂の含有量は、複合樹脂粒子の全質量に対し、例えば40~90質量%、45~90質量%、50~90質量%等とでき、55~80質量%が好適であり、60~80質量%がより好適である。ポリスチレン系樹脂の含有量を前記範囲内とすることにより、低蒸気圧での成形性に優れる点、耐熱性に優れる点で有利である。
【0041】
(複合樹脂粒子の表面吸光度比)
表面吸光度比を得るためには、先ず、複合樹脂粒子の表面をATR法で赤外分光分析する。得られる赤外線スペクトルから1380cm-1の吸光度(D1380)及び698cm-1の吸光度(D698)を得る。得られた吸光度をD698/D1380の数式に適用して算出される値が表面吸光度比である。具体的には実施例に記載の方法で特定される。D698は、ポリスチレン系樹脂に含まれるベンゼン環の面外変角振動に由来する吸収スペクトルに対応する吸光度である。このため、D698は、複合樹脂粒子の表面におけるポリスチレン系樹脂の割合を反映する。D1380は、ポリプロピレン系樹脂に含まれるメチル基に由来する吸収スペクトル対応する吸光度である。このため、D1380は、複合樹脂粒子の表面におけるポリプロピレン系樹脂の割合を反映する。
【0042】
表面吸光度比は、1.0~6.0、1.0~5.0等であってよく、1.5~5.0が好適であり、1.5~4.0がより好適であり、1.5~3.5が特に好適である。表面吸光度比が前記の範囲内であると、発泡成形体の成形加工性が向上し低圧で成形できる点で有利である。
【0043】
(難燃剤)
複合樹脂粒子は難燃剤を含有してもよい。また、複合樹脂粒子は難燃剤を含まずとも比較的高い遅燃性を有するため、難燃剤を含まなくてもよい。
【0044】
難燃剤としては、公知のハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、無機系難燃剤等が挙げられる。難燃剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。複合樹脂粒子が難燃剤を含有する場合、難燃剤としては、臭素系難燃剤、塩素系難燃剤、塩素臭素含有難燃剤等のハロゲン系難燃剤が、少量で高い難燃性を発泡成形体に付与できる観点から好ましい。
【0045】
ハロゲン系難燃剤としては、例えば、テトラブロモビスフェノールA、その誘導体(例えばテトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA-ビス(アリルエーテル))、トリアリルイソシアヌレート6臭素化物、トリス(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌレート、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン等が挙げられる。
【0046】
一般に、ハロゲン系難燃剤を含有すると、発泡成形体の難燃性が向上する一方で、発泡成形体の耐熱性が低下する傾向が見られる。しかし、本発明の発泡成形体は、ハロゲン系難燃剤を含有しても、低い加熱寸法変化率を備え、したがって十分な耐熱性を有する。
【0047】
難燃剤は、難燃剤を除いた複合樹脂粒子の質量に対して、例えば1.5~6.0質量%とでき、1.5~4.0質量%が好適であり、2.0~3.5質量%がより好適である。難燃剤の含有量が前記範囲内にあると、発泡成形体の難燃性と耐熱性とを高い水準で両立できる点で有利である。
【0048】
複合樹脂粒子は、難燃剤を含有する場合、難燃助剤を含むことが好ましい。難燃助剤を含むことで、難燃剤によりもたらされる難燃性をより高めることができる。難燃助剤としては、ジクミルパーオキサイド(DCP)、クメンヒドロパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド等の有機過酸化物、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン(別名ビスクミル)、3,4-ジメチル-3,4-ジフェニルヘキサン等が挙げられる。
難燃助剤は、難燃剤100質量部に対して、例えば50質量部以下、好適には10~40質量部、より好適には15~25質量部の量で含まれていることが好ましい。難燃助剤の含有量が前記範囲内にあると、発泡成形体の強度及び耐熱性の低下が抑制される。
【0049】
複合樹脂粒子の形状は公知の形状であればよいが、円筒状、略球状及び球状が好適であり、複合樹脂粒子から形成される発泡粒子の金型への充填性が良好な点で、略球状又は球状がより好ましい。
複合樹脂粒子の平均粒子径は、発泡粒子の金型への充填性が良好な点で、0.6mm~1.8mmが好適である。
【0050】
(複合樹脂粒子の製造方法)
複合樹脂粒子の製造方法としては、上で説明した複合樹脂粒子を得ることができれば特に限定されず、一般的に用いられているシード重合法であってよい。例えば、水性媒体中で、重合開始剤の存在下又は非存在下に、種粒子にスチレン系単量体を含浸させた後、当該単量体の重合温度に加熱することにより複合樹脂粒子を得ることができる。
【0051】
シード重合法を利用した複合樹脂粒子の製造方法の例を下記する。
まず、水性媒体中に、種粒子と、スチレン系単量体と、必要に応じて重合開始剤とを分散させる。なお、重合開始剤を使用する場合は、スチレン系単量体と重合開始剤とを予め混合して用いてもよい。
【0052】
重合開始剤としては、一般にスチレン系単量体の懸濁重合用の開始剤として用いられているものを好適に使用できる。例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-t-ブチルパーオキシヘキサン、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチル-パーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物等である。これらの重合開始剤は1種又は2種以上を使用できる。なお、ジクミルパーオキサイドは、難燃助剤としても作用し得る。
【0053】
重合開始剤の使用量は、スチレン系単量体100質量部に対して、0.01~0.9質量部が好ましく、0.1~0.5質量部がより好ましい。
【0054】
水性媒体としては、水、水と水溶性溶媒(例えば、低級アルコール)との混合媒体が挙げられる。
【0055】
水性媒体には、必要に応じて分散剤を添加してもよい。分散剤としては、特に限定されず、公知のものをいずれも使用できる。具体的には、リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸ナトリウム、酸化マグネシウム等の難溶性無機物が挙げられる。水性媒体には、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムのような界面活性剤を添加してもよい。
【0056】
次に、得られた分散液をスチレン系単量体が実質的に重合しない温度(例えば80~130℃)に加熱してスチレン系単量体を種粒子に含浸させる。種粒子にスチレン系単量体を含浸させる時間は特に制限されず、例えば1分~24時間等とできるが、20分~4時間が好適であり、30分~2時間がより好適である。
【0057】
次いで、スチレン系単量体の重合を行う。重合は、特に限定されないが、115~150℃、好ましくは120~140℃で、1.5時間~5時間行うことが好ましい。重合は、通常、加圧可能な密閉容器中で行われる。なお、スチレン系単量体の含浸と重合とを複数回(例えば2回、3回、4回等)に分けて行うことが好ましい。複数回に分けることで、最初のスチレン系単量体の重合では、得られる複合樹脂粒子の形状を球状化でき、2回目以降のスチレン系単量体の重合では、複合化されるポリスチレンの量を調整できる。また、重合開始剤の分解温度を考慮して、スチレン系単量体を種粒子に含浸させた後に重合を開始するのではなく、スチレン系単量体を含浸させながら重合を行ってもよい。
重合を複数回に分ける場合、2回目以降の重合工程において、スチレン系単量体を、種粒子100質量部に対して0.001~0.1質量部/秒の速度で投入しつつ重合を行うことが好適である。
【0058】
スチレン系単量体使用量は、種粒子質量/スチレン単量体使用量が10/90~60/40となる量が好適である。ここで、複合樹脂粒子中のポリスチレン系樹脂の含有量は、スチレン系単量体の使用量に対応した量である。このため、複合樹脂粒子における種粒子の含有質量/複合樹脂粒子におけるポリスチレン系樹脂の含有質量は、10/90~60/40が好適である。スチレン系単量体使用量又はポリスチレン系樹脂含有質量が前記範囲内であると、低蒸気圧での成形性に優れる点、発泡成形体の強度が向上する点で有利である。前記範囲は、10/90~55/45であってよく、10/90~50/50がより好適であり、20/80~45/55がさらに好適であり、20/80~40/60が特に好適である。
【0059】
難燃剤又は、難燃剤及び難燃助剤を含有する複合樹脂粒子は、難燃剤又は、難燃剤及び難燃助剤を、スチレン系単量体と共に種粒子に含浸させる方法、重合後の粒子に含浸させる方法等により製造できる。
【0060】
(発泡性粒子)
発泡性粒子は、上記複合樹脂粒子と発泡剤を含む。
発泡剤としては、例えば、プロパン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、n-ヘキサン、イソヘキサン等の有機系ガス、二酸化炭素、窒素、ヘリウム、アルゴン、空気等の無機系ガスを使用できる。これら発泡剤は、単独もしくは2種以上混合して用いることができる。有機系ガスとしては、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタンのいずれか又はこれらの組み合わせが好適である。
発泡性粒子における発泡剤の含有量は、複合樹脂粒子100質量部に対して、5~25質量部が好適である。
【0061】
発泡性粒子を予備発泡させた発泡粒子は、ガスの抜けにより発泡成形性が低下するため、発泡粒子製造から発泡粒子を成型用金型に充填するまでの時間を長く確保できないことがあった。しかし、発泡剤としてn-ペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、n-ヘキサン、イソヘキサン等を使用すると、発泡粒子からのガスの抜けが抑制されるため、発泡粒子製造から発泡粒子を成型用金型に充填するまでの時間をより長くできる。このため、本発明の発泡粒子がn-ペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、n-ヘキサン、イソヘキサン等を発泡剤として含有する場合、充填までの時間を長くできるとともに、これら発泡剤残存によって発泡成形体の難燃性が低下しても所望の難燃性を確保できる利点を有する。つまり、本発明の複合樹脂粒子を採用することによって、発泡剤種及び量の選択の自由度が高くなる。
【0062】
発泡性粒子は、例えば、重合中若しくは重合終了後の複合樹脂粒子に発泡剤を含浸することで得ることができる。含浸は、それ自体公知の方法により行うことができる。例えば、重合中での含浸は、重合反応を密閉式の容器中で行い、容器中に発泡剤を圧入することにより行うことができる。重合終了後の含浸は、例えば、複合樹脂粒子が投入された密閉式の容器中に、発泡剤を圧入することにより行うことができる。
【0063】
(発泡粒子)
発泡粒子(一般には、予備発泡粒子と称されることもある。)は、複合樹脂粒子を予備的に発泡させた粒子である。例えば、発泡剤を含浸した発泡性粒子を発泡させることにより発泡粒子が得られる。本発明の複合樹脂粒子から製造された発泡粒子は、低蒸気圧の媒体(例:水蒸気)で発泡粒子同士が融着するため、発泡成形に要するエネルギーを小さくでき、また、発泡成形に要する設備を簡略化でき、したがって発泡成形に要するコストを低減できる。
【0064】
発泡粒子の嵩密度は、例えば10kg/m3~200kg/m3とでき、15kg/m3~200kg/m3が好適であり、20kg/m3~100kg/m3がより好適であり、20kg/m3~50kg/m3が更に好適である。嵩密度がこの範囲内にあると、発泡成形体の強度が高い点及び発泡成形体が軽量になる点で有利である。
【0065】
発泡粒子の形状は球状又は略球状であることが好ましい。その平均粒子径は、1.0mm~9.0mmであることが好ましく、2.0mm~6.4mmであることがより好ましい。
【0066】
発泡粒子は、発泡性粒子を、公知の方法で所望の嵩密度に発泡させることで得ることができる。発泡は、ゲージ圧で、好ましくは0.05MPa~0.20MPa、より好ましくは0.06MPa~0.15MPa、より一層好ましくは0.06MPa~0.10MPaの加熱蒸気を使用して発泡性粒子を発泡させることにより得ることができる。
【0067】
(発泡成形体)
発泡成形体は、発泡粒子の融着体から構成された発泡体であり、例えば、上記発泡粒子を発泡成形させて得られる。発泡成形体は、上記複合樹脂粒子を原料として使用することにより、低蒸気圧で製造され、高い強度を有し、十分な耐熱性と難燃性を備えたものとなる。
【0068】
発泡成形体の密度は、15kg/m3~200kg/m3が好適であり、20kg/m3~100kg/m3がより好適であり、20kg/m3~50kg/m3がさらに好適である。密度が前記範囲内にあると、軽量性と強度の双方に優れる。発泡成形体の密度は実施例に記載された方法で特定できる。
【0069】
発泡成形体の25%圧縮強度は、例えば1.70MPa以上、1.80MPa以上、1.89MPa以上、1.90MPa以上、1.70MPa~2.50MPa等であってよく、1.80MPa~2.50MPaが好適であり、1.89MPa~2.50MPaがさらに好適であり、1.89MPa~2.00MPaがより一層好適であり、1.90MPa~2.00MPaが特に好適である。25%圧縮強度は実施例に記載された方法で特定できる。
【0070】
発泡成形体の加熱寸法変化率は、1.5%以下であれば寸法変化が小さく、耐熱性を有すると評価でき、1.1%以下であれば優れた耐熱性を有すると評価できる。加熱寸法変化率は、例えば1.5%以下、1.2%以下、1.1%以下、0.5~1.5%、0.5~1.2%等とでき、0.5~1.1%が好適である。加熱寸法変化率は実施例に記載された方法で特定できる。
【0071】
発泡成形体の難燃性は、米国自動車安全基準FMVSS 302で、特に実施例に記載された方法で特定される燃焼速度が80mm/分以下であることが好ましく、40mm/分以下であることがより好ましく、0mm/分(自己消火性)であることがさらに好ましい。
【0072】
発泡成形体は、発泡粒子を発泡成形機の金型内に充填し、加熱して発泡粒子を発泡させながら、発泡粒子同士を熱融着させることで得ることができる。加熱用の媒体としては水蒸気が好適に使用できる。
【0073】
本発明の発泡粒子は、低圧(例:ゲージ圧0.05MPa~0.16MPa、0.05MPa~0.15MPa、0.05MPa~0.12MPa、又は0.05MPa~0.11MPa、0.05MPa~0.10MPa)の媒体(例:水蒸気)でも十分に発泡及び融着するため、発泡成形に要するエネルギーを小さくでき、発泡成形に要する設備を簡略化でき、その結果、発泡成形に要するコストを低減できる(つまり、生産性に優れる)。
各製造工程における工程温度、工程圧力及び工程時間のようなその他の製造条件は、使用する製造設備、原料等に従って適宜設定される。
【0074】
発泡成形体は、例えば、自動車用部材、緩衝材、梱包材、建築資材、靴の部材、スポーツ用品等に用いることができる。具体的には、自転車、車椅子等のタイヤ芯材;自動車、鉄道車両、飛行機等の輸送機器の内装材、シート芯材、衝撃吸収部材(例;バンパーの芯材)、振動吸収部材等;シューズのミッドソール部材、インソール部材又はアウトソール部材;ラケット、バット等のスポーツ用品の打具類の芯材;パッド、プロテクター等のスポーツ用品の防具類;パッド、プロテクター等の医療、介護、福祉又はヘルスケア用品;防舷材;フロート;玩具;床下地材;壁材;ベッド;クッション;電子部品、各種工業資材、食品等の搬送容器等に用いることができる。
好適には、自動車の内装材、衝撃吸収部材、振動吸収部材、又は部品梱包材である。
【実施例0075】
以下、実施例等によって本発明の一実施態様を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
実施例等における各種物性等の特定方法を下記する。
【0076】
(ポリプロピレン系樹脂及び低密度ポリエチレンのメルトマスフローレート(MFR))
MFRは、JIS K6922-1:1998に準拠して、190℃、2.16kgの荷重下で測定した。
【0077】
(樹脂の融点)
樹脂の融点は、JIS K7122:1987「プラスチックの転移熱測定方法」記載の方法により測定した。即ち、示差走査熱量計装置RDC220型(セイコー電子工業社製)を用い、測定容器に試料を7mg充填して、窒素ガス流量30mL/分のもと、室温から220℃の間で10℃/Lの昇温及び降温スピードにより昇温、降温及び昇温し、2回目の昇温時のDSC曲線の融解ピーク温度を融点とした。また、融解ピークが2つ以上ある場合は、低い側のピーク温度を融点とした。
【0078】
(複合樹脂粒子の表面吸光度比(RS))
複合樹脂粒子の表面吸光度比(D698/D1380)を下記の要領で測定した。
10個の複合樹脂粒子を無作為に選択した。各粒子表面をATR法赤外分光分析にて赤外吸収スペクトルを得た。この分析では、試料測定面から1μmまでの深さの範囲の赤外吸収スペクトルが得られた。
各赤外吸収スペクトルから吸光度比(D698/D1380)をそれぞれ算出した。吸光度比は、最小の吸光度比と最大の吸光度比を除外し、残余8個の吸光度比の相加平均を表面吸光度比(RS)とした。
【0079】
前記した吸光度の特定方法は、より詳細には次のとおりである。
測定試料表面の赤外分光分析を下記条件にて実施し、赤外吸収スペクトルを得た。
得られた赤外吸収スペクトルから、D698とD1380のピーク高さを求め、標準試料を用いて作成した検量線からポリスチレン系樹脂比率を算出した。
【0080】
赤外分光分析条件
・測定装置:Thermo SCIENTIFIC社製の「Nicolet iS5」フーリエ変換赤外分光光度計及びThermo SCIENTIFIC社製の一回反射型水平状ATR Smart-iTR。
・ATRクリスタル:Ge(角度=45°)。
・測定法:一回反射型ATR法。
・測定波数領域:4000cm-1~675cm-1。
・測定深度の波数依存性:補正せず。
・検出器:重水素化硫酸トリグリシン(DTGS)検出器およびKBrビームスプリッター。
・分解能:4cm-1。
・積算回数:16回(バックグランド測定時も同様)。
【0081】
赤外吸収スペクトルから得られる吸光度D698は、スチレン系樹脂に含まれるベンゼン環の面外変角振動に由来する波数698cm-1±5cm-1の領域の吸収スペクトルに対応する吸光度である。吸光度D698は、1130cm-1と880cm-1を結ぶ直線をベースラインとした場合の710cm-1と685cm-1間の最大吸光度を意味する。この吸光度の測定では、698cm-1で他の吸収スペクトルが重なっている場合でもピーク分離は実施しない。
また、赤外吸収スペクトルから得られる吸光度D1380は、ポリプロピレン系樹脂に含まれるCH3メチル対称変角振動に由来する波数1380cm-1±5cm-1の領域の吸収スペクトルに対応する吸光度である。吸光度D1380は、1410cm-1と1275cm-1を結ぶ直線をベースラインとした場合の1400cm-1と1350cm-1間の最大吸光度を意味する。この吸光度の測定では、1380cm-1で他の吸収スペクトルが重なっている場合でもピーク分離は実施しない。
【0082】
標準試料の作成
標準試料(ポリスチレン系樹脂/ポリプロピレンとポリエチレン系樹脂の混合物)は、組成割合が下記比率になるように作製した。なおポリプロピレンとポリエチレン系樹脂の混合物における混合比はポリプロピレン/ポリエチレン系樹脂比を8/2とした。
組成割合(ポリスチレン/ポリプロピレンとポリエチレン系樹脂の混合物;質量比):2/8、4/6、5/5、6/4、7/3、8/2、9/1
これを小型射出成形機にて下記条件に加熱混練して、直径が25mmでかつ高さが2mmの円柱状に成形することによって標準試料を得た。
なお、小型射出成形機としては、例えば、CSI社から商品名「CS-183」で販売されているものを用い、例えば、下記の条件で成形できる。
射出成形条件:加熱温度200~250℃、混練時間10分
【0083】
検量線の作成
前記標準試料の表面を赤外分光分析にて実施し、赤外吸収スペクトルを得た。
各測定において得られた赤外吸収スペクトルから、前記比率の標準試料の吸光度比を前記測定装置、測定条件で測定し、ポリスチレン系樹脂比率(質量%)と吸光度比(D698/D1380)の関係をグラフ化することで、検量線とした。
【0084】
(複合樹脂粒子のL/D)
複合樹脂粒子のL/Dは下記の要領で測定した。
先ず、複合樹脂粒子の最大長さL1を測定した。そして、最大長さL1を測定するにあたって特定された複合樹脂粒子の表面の二点を結ぶ直線を想定し、この直線に対して直交する方向において、複合樹脂粒子の最大長さL2を測定した。下記式に基づいて複合樹脂粒子のL/Dを算出した。
L/D=L1/L2
【0085】
(発泡粒子の嵩密度)
発泡粒子をメスシリンダに500cm3の目盛りまで充填した。但し、メスシリンダを水平方向から目視し、発泡粒子が一粒でも500cm3の目盛りに達していれば、充填を終了した。次に、メスシリンダ内に充填した発泡粒子の質量を小数点以下2位の有効数字で秤量し、その質量をW(g)とした。次式により発泡粒子の嵩密度を算出する。
嵩密度(kg/m3)=(W/500)×1000
【0086】
(発泡成形体の成形性;水蒸気圧)
複合樹脂発泡粒子を発泡成形機の300mm×400mm×30mmの金型内に充填し、水蒸気により加熱して複合樹脂発泡粒子を発泡させながら、複合樹脂発泡粒子同士を熱融着させた。水蒸気による加熱(50秒間)の際、水蒸気の蒸気圧力を0.07MPaとした場合から0.25MPaとした場合まで0.01MPa刻みで変化させた場合のそれぞれについて、得られた発泡成形体の融着率を求めた。融着率が90%以上となった最も低い蒸気圧力値(最低蒸気圧力値)で成形性を評価した。なお、低い蒸気圧力で融着良好な発泡成形体が得られると、成形設備を簡便とでき、また、製造エネルギーを低減できるため、低製造コストとなり、生産性が向上する。
0.15MPa以下、好ましくは0.10MPa以下の蒸気圧力で融着率90%以上の発泡成形体が得られれば、低い蒸気調圧で融着良好な発泡成形体が得られることから、成形性が良好となり、高い生産性をもたらす。
【0087】
(発泡成形体の融着率)
縦400mm×横300mmの上面を有し、厚み30mmの直方体形状の発泡成形体の上面に、カッターで横方向に沿って長さ300mm、深さ約5mmの切り込み線を入れ、この切り込み線に沿って発泡成形体を2分割して破断面を観察した。破断面において50個以上の発泡粒子を含む任意の範囲を設定し、この範囲内において発泡粒子の表面ではなく内部で破断している発泡粒子(強く熱融着した発泡粒子)の数(a)と、発泡粒子同士の界面で破断している発泡粒子(弱く熱融着した発泡粒子)の数(b)を数え、下記式により融着率(%)を算出した。
融着率(%)=(a/(a+b))×100
【0088】
(発泡成形体の密度)
発泡成形体(成形後、50℃で4時間以上乾燥させたもの)から切り出した試験片(75mm×300mm×35mm)の質量(a)と体積(b)をそれぞれ有効数字3桁以上になるように測定し、式(a)/(b)により発泡成形体の密度(kg/m3)を求めた。
【0089】
(発泡成形体の25%圧縮強度)
JIS K7220:2006「硬質発泡プラスチック-圧縮特性の求め方」記載の方法により圧縮強度を測定した。すなわち、テンシロン万能試験機(オリエンテック社製、UCT-10T)を用いて、50mm×50mm×25mmのサイズの試験体(上面表皮あり)について、圧縮速度10mm/分として25%圧縮時(10mm変位時)の圧縮強度を測定した。
【0090】
(発泡成形体の加熱寸法変化率)
発泡成形体の加熱寸法変化率をJIS K 6767:1999「発泡プラスチック-ポリエチレン-試験方法」記載のB法にて測定した。発泡成形体から縦150mm×横150mm×高さ20mmの試験片を切り出した。前記試験片の表面に、縦方向に指向する長さ50mmの直線を3本、互いに平行に50mm間隔毎に記入すると共に、横方向に指向する長さ50mmの直線を3本、互いに平行に50mm間隔毎に記入した。その後、試験片を80℃の熱風循環式乾燥機の中に168時間に亘って放置した後に取出し、標準状態(20±2℃、湿度65±5%)の場所にて1時間に亘って放置した。次に、試験片の表面に記入した6本の直線の長さをそれぞれ測定し、6本の直線の長さの相加平均値L1を算出した。下記の式に基づいて変化度Sを算出し、変化度Sの絶対値を加熱寸法変化率(%)とした。
S=100×(L1-50)/50
【0091】
(発泡成形体の燃焼速度と難燃性)
燃焼速度(mm/分)は、米国自動車安全基準FMVSS 302に準拠した方法で測定した。試験片(嵩発泡倍数40倍)は、350mm×100mm×12mm(厚み)とし、少なくとも350mm×100mmの二面には表皮が存在した。
難燃性は燃焼速度に基づき、0mm/分、40mm/分以下、80mm/分以下、80mm/分超と分類した。測定開始点に達する前に消火した場合は燃焼速度を0mm/分とし自己消化性と評価した。
【0092】
(ポリプロピレン系樹脂)
実施例等において使用したポリプロピレン系樹脂(PP)は次のとおりである。ポリプロピレン系樹脂の物性を表1に示す。
F744NP:PPのランダムコポリマー(プライムポリマー社製、エチレン含有量7質量%)
S-131:PPのランダムコポリマー(住友化学社製、エチレン含有量5質量%)
【0093】
【0094】
(低密度ポリエチレン及びその他の樹脂)
実施例等において使用した低密度ポリエチレン(LDPE)及びその他の樹脂は次のとおりである。これら樹脂の物性を表2に示す。
M1703:低密度ポリエチレン(旭化成社製)
M2713:低密度ポリエチレン(旭化成社製)
F2270:低密度ポリエチレン(旭化成社製)
EF0505:エチレン-酢酸ビニル共重合体(旭化成社製、酢酸ビニル含有量4.7質量%)
2500:高密度ポリエチレン(東ソー社製)
【0095】
【0096】
(カーボン成分)
実施例等において、カーボン成分は、カーボンマスターバッチ(カーボンMB)を他の樹脂に添加することにより加えた。
10H381:カーボンマスターバッチ(大日精化工業社製、商品名:PPRM-10H381、カーボンブラックを45質量%含有、直鎖状低密度ポリエチレンを55質量%含有)
【0097】
実施例等において使用した他の材料を下記する。
TAIC-6B:トリス(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌレート(日本化成社製)
ビスクミル:2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン(化薬ヌーリオン社製、品番パーカドックス30)
【0098】
実施例1
[種粒子の作製]
ポリプロピレン系樹脂(A)としてのF744NPと低密度ポリエチレン(B)としてのM1703と、カーボンMB(C)としての10H381を71:17.8:11.2の質量比でタンブラーミキサーに投入して10分間混合し樹脂混合物(基材樹脂)を得た。
得られた樹脂混合物を押出機に供給して温度230~250℃で溶融混練し、水中カット方式により造粒して楕円球状(卵状)に切断し、低密度ポリエチレンで改質されたポリプロピレン系樹脂粒子(種粒子、平均質量0.6mg)を得た。
【0099】
[複合樹脂粒子の作製]
(第1工程)
内容積5リットルの攪拌機付オートクレーブに、ピロリン酸マグネシウム40g(分散剤)、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.6g(界面活性剤)、純水2kgを投入し分散用媒体を得た。分散用媒体に30℃で種粒子600gを分散させて10分間保持し、次いで70℃に昇温して懸濁液を得た。さらに、この懸濁液を70℃に保持しつつ、スチレン単量体300gにジクミルパーオキサイド0.6g(重合開始剤)を溶解させた液を30分かけて滴下した後、30分間保持することで、種粒子中にスチレン単量体を含浸させた。含浸後、140℃に昇温し、この温度で2時間重合(第1重合)させた。
【0100】
(第2工程)
次に、122℃に降温した反応液中に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3gを純水20gに分散させた分散液を10分かけて滴下した。次いで、スチレン単量体1100gに、ジクミルパーオキサイド(重合開始剤)を5g溶解させた液を、種粒子100質量部に対し0.02質量部/秒に相当する速度で滴下した。滴下後、122℃で1時間保持することで、改質ポリプロピレン系樹脂粒子中にスチレン単量体を含浸させた。含浸後、140℃に昇温し、この温度で3時間保持して重合(第2重合)させた。
【0101】
この反応液中に、難燃剤としてのTAIC-6Bの60gと、難燃助剤としてビスクミルの20gとを投入した。投入後、反応系の温度を140℃に昇温し、3時間攪拌を続けることで難燃剤含有複合樹脂粒子(種粒子質量とポリスチレン質量の比30:70)を作製した。次いで、30℃以下まで冷却し、オートクレーブから複合樹脂粒子を取り出した。得られた複合樹脂粒子を各種試験に供した。結果を表3に示す。
【0102】
[発泡性粒子の作製]
内容積5リットルの攪拌機付オートクレーブに、複合樹脂粒子2kg(100質量部)、水2kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.0g(界面活性剤)を投入した。さらに、発泡剤としてイソペンタン300g(520mL、複合樹脂粒子100質量部あたり15質量部)を投入した後、70℃に昇温し、4時間攪拌を続けることで発泡性粒子を得ることができた。その後、30℃以下まで冷却し、冷却完了後にオートクレーブを除圧し、直ちに蒸留水で界面活性剤を洗浄し、脱水及び乾燥することで発泡性粒子を得た。
【0103】
[発泡粒子の作製]
得られた発泡性樹脂粒子を内容積50Lの撹拌機付円筒型予備発泡機に投入し、撹拌しながら0.02MPaの水蒸気で加熱して、嵩密度25kg/m3の発泡粒子(一般的には予備発泡粒子と称される場合もある。)を作製した。
【0104】
[発泡成形体の作製]
得られた発泡粒子を1日間23℃に放置した後、発泡ビーズ自動成形機(DABOジャパン社製、DPM-7454)の成形用金型(長さ400mm×幅300mm×厚み30mm)に充填し、前記した「発泡成形体の成形性;水蒸気圧」の方法にしたがって最低蒸気圧力値を評価した結果、最低蒸気圧力値が0.08MPaであった。
次に、同じ発泡粒子を使用し、最低蒸気圧力値で、同様にして、各種評価用の発泡成形体を得た。具体的には、前記した金型内に最低蒸気圧力値(0.08MPa)の水蒸気を50秒間導入して発泡粒子を加熱及び発泡させた後、発泡成形体の最高面圧が0.01MPaに低下するまで冷却することで、密度25kg/m3の発泡成形体を得た。
得られた発泡成形体を各種試験に供した。加熱寸法変化率は1.1%であり、発泡成形体は十分な耐熱性を備えていた。他の試験結果を表3に示す。
【0105】
実施例2
[種粒子の作製]
ポリプロピレン系樹脂(A)、低密度ポリエチレン(B)、及びカーボンMB(C)の使用量を62.2:26.6:11.2(質量比)へ変更したことを除き、実施例1と同様にして種粒子を製造した。
【0106】
[複合樹脂粒子の作製]
(第1工程)
内容積5リットルの攪拌機付オートクレーブに、ピロリン酸マグネシウム40g(分散剤)、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.6g(界面活性剤)、純水2kgを投入し分散用媒体を得た。分散用媒体に30℃で種粒子800gを分散させて10分間保持し、次いで70℃に昇温して懸濁液を得た。さらに、この懸濁液を70℃に保持しつつ、スチレン単量体400gにジクミルパーオキサイド0.8g(重合開始剤)を溶解させた液を30分かけて滴下した後、30分間保持することで、種粒子中にスチレン単量体を含浸させた。含浸後、140℃に昇温し、この温度で2時間重合(第1重合)させた。
【0107】
(第2工程)
次に、122℃に降温した反応液中に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3gを純水20gに分散させた分散液を10分かけて滴下した。次いで、スチレン単量体800gに、ジクミルパーオキサイド(重合開始剤)を5g溶解させた液を、種粒子100質量部に対し0.02質量部/秒に相当する速度で滴下した。滴下後、122℃で1時間保持することで、改質ポリプロピレン系樹脂粒子中にスチレン単量体を含浸させた。含浸後、140℃に昇温し、この温度で3時間保持して重合(第2重合)させた。ることで、複合樹脂粒子(種粒子質量とポリスチレン質量の比40:60)を作製した。
【0108】
この反応液中に、難燃剤としてのTAIC-6Bの60gと、難燃助剤としてビスクミルの20gとを投入した。投入後、反応系の温度を140℃に昇温し、3時間攪拌を続けることで難燃剤含有複合樹脂粒子を作製した。次いで、30℃以下まで冷却し、オートクレーブから複合樹脂粒子を取り出した。得られた複合樹脂粒子を各種試験に供した。結果を表3に示す。
【0109】
[発泡性粒子、発泡粒子及び発泡成形体の作製]
得られた複合樹脂粒子を使用したことを除き、実施例1と同様にして発泡性粒子、発泡粒子及び発泡成形体を得た。最低蒸気圧力値は0.09MPaであった。
次に、同じ発泡粒子を使用し、最低蒸気圧力値の水蒸気を使用して、同様にして、各種評価用の発泡成形体を得た。具体的には、前記した金型内に最低蒸気圧力値の水蒸気を50秒間導入して発泡粒子を加熱及び発泡させた後、発泡成形体の最高面圧が0.01MPaに低下するまで冷却することで、密度25kg/m3の発泡成形体を得た。
最低蒸気圧力値で成形して得られた発泡成形体を各種試験に供した。加熱寸法変化率は1.1%であり、発泡成形体は十分な耐熱性を備えていた。他の試験結果を表3に示す。
【0110】
実施例3~6、8~9、比較例1~4
表3~5に示した樹脂種、樹脂量、第2工程におけるスチレン単量体投入速度及び温度、ガス種、難燃助剤添加量としたことを除き、種粒子:PS質量比が30:70の場合は実施例1と同様にして、同質量比が40:60の場合は実施例2と同様にして、発泡性粒子、発泡粒子及び発泡成形体を得た。
各発泡成形体製造時の最低蒸気圧力値は表3~5に示したとおりである。
各種評価用の発泡成形体を各種試験に供した。実施例3~6、8~9の加熱寸法変化率は、各々、0.9%、1.4%、0.8%、1.2%、0.8%、0.9%であり、発泡成形体は十分な耐熱性を備えていた。他の試験結果を表3~5に示す。
なお、ポリプロピレン系樹脂(A)、低密度ポリエチレン(B)、及びカーボンMB(C)に加えて他の樹脂(D)を使用する場合(比較例1~3)では、ポリプロピレン系樹脂(A)と低密度ポリエチレン(B)とカーボンMB(C)と他の樹脂(D)を表5に示した質量比でタンブラーミキサーに投入して10分間混合し樹脂混合物(基材樹脂)を得た。
【0111】
実施例7
[種粒子の作製]
ポリプロピレン系樹脂(A)、低密度ポリエチレン(B)、及びカーボンMB(C)の使用量を70:30:0(質量比)へ変更したことを除き、実施例1と同様にして種粒子を製造した。
【0112】
[複合樹脂粒子の作製]
(第1工程)
内容積5リットルの攪拌機付オートクレーブに、ピロリン酸マグネシウム40g(分散剤)、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.6g(界面活性剤)、純水2kgを投入し分散用媒体を得た。分散用媒体に30℃で種粒子400gを分散させて10分間保持し、次いで70℃に昇温して懸濁液を得た。さらに、この懸濁液を70℃に保持しつつ、スチレン単量体200gにジクミルパーオキサイド0.4g(重合開始剤)を溶解させた液を30分かけて滴下した後、30分間保持することで、種粒子中にスチレン単量体を含浸させた。含浸後、140℃に昇温し、この温度で2時間重合(第1重合)させた。
【0113】
(第2工程)
次に、122℃に降温した反応液中に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3gを純水20gに分散させた分散液を10分かけて滴下した。次いで、スチレン単量体1400gに、ジクミルパーオキサイド(重合開始剤)を8g溶解させた液を、種粒子100質量部に対し0.02質量部/秒に相当する速度で滴下した。滴下後、122℃で1時間保持することで、改質ポリプロピレン系樹脂粒子中にスチレン単量体を含浸させた。含浸後、140℃に昇温し、この温度で3時間保持して重合(第2重合)させることで、複合樹脂粒子(種粒子質量とポリスチレン質量の比40:60)を作製した。
【0114】
この反応液中に、難燃剤としてのTAIC-6Bの60gと、難燃助剤としてビスクミルの10gとを投入した。投入後、反応系の温度を140℃に昇温し、3時間攪拌を続けることで難燃剤含有複合樹脂粒子を作製した。次いで、30℃以下まで冷却し、オートクレーブから複合樹脂粒子を取り出した。得られた複合樹脂粒子を各種試験に供した。結果を表4に示す。
【0115】
[発泡性粒子、発泡粒子及び発泡成形体の作製]
得られた複合樹脂粒子を使用したことを除き、実施例1と同様にして発泡性粒子、発泡粒子及び発泡成形体を得た。最低蒸気圧力値は0.08MPaであった。
最低蒸気圧力値で成形して得られた発泡成形体を各種試験に供した。加熱寸法変化率は1.3%であり、発泡成形体は十分な耐熱性を備えていた。他の試験結果を表4に示す。
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
表3~5中の用語の意味は次のとおりである。
A:B質量比;ポリプロピレン系樹脂(A)と低密度ポリエチレン(B)の質量比
A:B:C:D質量比;ポリプロピレン系樹脂(A)と低密度ポリエチレン(B)とカーボンMB(C)と他の樹脂(D)の質量比
種粒子:PS質量比;ポリプロピレン系樹脂(A)、低密度ポリエチレン(B)、カーボンMB(C)、及びその他樹脂(D)の合計質量とポリスチレン質量の比
難燃剤添加量;ポリプロピレン系樹脂(A)、低密度ポリエチレン(B)、カーボンMB(C)、他の樹脂(D)及びポリスチレンの合計質量に対する難燃剤の添加割合(質量%)
難燃助剤添加量;ポリプロピレン系樹脂(A)、低密度ポリエチレン(B)、カーボンMB(C)、他の樹脂(D)及びポリスチレンの合計質量に対する難燃助剤の添加割合(質量%)
ガス種のA;発泡剤としてのブタン(ノルマルブタン:イソブタン=7:3(容積比))
ガス種のB;発泡剤としてのイソペンタン