(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010858
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】搬送システム
(51)【国際特許分類】
B65G 54/02 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
B65G54/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112407
(22)【出願日】2022-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】川本 耀平
(72)【発明者】
【氏名】並河 三央
(72)【発明者】
【氏名】浅野 耕一
【テーマコード(参考)】
3F021
【Fターム(参考)】
3F021AA05
3F021BA02
3F021CA06
3F021DA02
(57)【要約】
【課題】搬送ステージへの電力供給を遮断した場合においても搬送装置の意図しない挙動を抑制することが可能な搬送システムを提供する。
【解決手段】搬送システム100は、搬送ステージ10と、搬送装置60と、制御部80と、を備え、搬送装置60は永久磁石を有し、搬送ステージ10は磁力発生部26を有し、搬送ステージ10は、磁力発生部26に供給される電力をそれぞれ独立して遮断可能な電力遮断予定区画及び待避区画を有し、電力遮断予定区画は、電力遮断が予定されている区画であり、待避区画32は、電力供給の継続が予定されている区画であり、制御部80は、電力遮断が予定されている電力遮断予定区画から、電力供給の継続が予定されている待避区画32へと搬送装置60を待避させる制御を実行する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送ステージと、物品を保持し前記搬送ステージ上を移動する搬送装置と、前記搬送装置の移動を含む制御を行う制御部と、を備える搬送システムであって、
前記搬送装置は、永久磁石を有し、
前記搬送ステージは、磁力を電力により発生させる磁力発生部を有し、
前記磁力発生部と前記永久磁石との相互作用により前記搬送装置が浮上及び移動するようになっており、
前記搬送ステージは、前記磁力発生部に供給される電力をそれぞれ独立して遮断可能な電力遮断予定区画及び待避区画を有し、
前記電力遮断予定区画は、電力遮断が予定されている区画であり、
前記待避区画は、電力供給の継続が予定されている区画であり、
前記制御部は、前記電力遮断予定区画から前記待避区画へと前記搬送装置を待避させる制御を実行する、搬送システム。
【請求項2】
前記搬送ステージは、前記磁力発生部に供給される電力をそれぞれ独立して遮断可能な作業区画と移動経路区画とを有し、
前記搬送ステージは、前記作業区画を複数有するとともに各作業区画には作業装置が設けられ、
前記移動経路区画は、前記作業区画どうしを繋いでおり、
前記移動経路区画の、前記作業区画を繋ぐ方向に対して直交する方向における最小寸法が、前記搬送装置の平面寸法における最短長の2倍超である請求項1に記載の搬送システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記待避区画に待避後の前記搬送装置が前記永久磁石の反発により前記搬送ステージから逸脱しないような位置関係となるように前記搬送装置を待避させる制御を実行する請求項1又は2に記載の搬送システム。
【請求項4】
前記搬送装置は、識別情報を有しており、
前記制御部は、前記識別情報によりそれぞれの前記搬送装置を識別する制御を実行する請求項1から3のいずれか一項に記載の搬送システム。
【請求項5】
前記電力遮断予定区画における電力の遮断事由が解消した場合に、前記制御部は、前記識別情報に基づいて、前記搬送装置の各々を待避させる直前の位置に復帰させる制御を実行する請求項4に記載の搬送システム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の搬送システムを用いて物品に対して作業を行って前記物品の完成品を生産する方法であって、
前記搬送ステージは、前記磁力発生部に供給される電力をそれぞれ独立して遮断可能な作業区画と移動経路区画とを有し、
前記搬送ステージは、前記作業区画を複数有するとともに各作業区画には作業装置が設けられ、
前記移動経路区画は、前記作業区画どうしを繋いでおり、
前記作業装置により、前記物品に対して順次に作業を行うことによって、前記完成品が生産されるようになっており、
前記作業区画毎に、作業の停止要因と、当該作業区画が前記電力遮断予定区画となるか否かと、の対応付けがなされており、
前記電力遮断予定区画から前記待避区画へと前記搬送装置を待避させた後で、当該電力遮断予定区画への電力供給を遮断する生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送システム、及び、生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、搬送ステージ(同文献の作業領域)と、物品を保持し搬送ステージに沿って移動する搬送装置(同文献の可動式ステージ)と、を備え、搬送装置は、搬送ステージから加えられる磁力によって当該搬送装置を浮上及び移動させるための永久磁石を有し、搬送ステージは、搬送装置を当該搬送ステージから浮上させ移動させるための磁力を電力により発生させる磁力発生部を有する搬送システム(同文献の変位装置)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した搬送システムにおいて、搬送ステージへの電力供給を遮断した場合、搬送装置が永久磁石の磁力により意図しない挙動をすることがある。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、搬送ステージへの電力供給を遮断した場合においても、搬送装置の意図しない挙動を抑制することが可能な搬送システムに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、搬送ステージと、物品を保持し前記搬送ステージ上を移動する搬送装置と、前記搬送装置の移動を含む制御を行う制御部と、を備える搬送システムであって、前記搬送装置は、永久磁石を有し、前記搬送ステージは、磁力を電力により発生させる磁力発生部を有し、前記磁力発生部と前記永久磁石との相互作用により前記搬送装置が浮上及び移動するようになっており、前記搬送ステージは、前記磁力発生部に供給される電力をそれぞれ独立して遮断可能な電力遮断予定区画及び待避区画を有し、前記電力遮断予定区画は、電力遮断が予定されている区画であり、前記待避区画は、電力供給の継続が予定されている区画であり、前記制御部は、前記電力遮断予定区画から前記待避区画へと前記搬送装置を待避させる制御を実行する搬送システムに関する。
【0007】
また、本発明は、本発明の搬送システムを用いて物品に対して作業を行って前記物品の完成品を生産する方法であって、前記搬送ステージは、前記磁力発生部に供給される電力をそれぞれ独立して遮断可能な作業区画と移動経路区画とを有し、前記搬送ステージは、前記作業区画を複数有するとともに各作業区画には作業装置が設けられ、前記移動経路区画は、前記作業区画どうしを繋いでおり、前記作業装置により、前記物品に対して順次に作業を行うことによって、前記完成品が生産されるようになっており、前記作業区画毎に、作業の停止要因と、当該作業区画が前記電力遮断予定区画となるか否かと、の対応付けがなされており、前記電力遮断予定区画から前記待避区画へと前記搬送装置を待避させた後で、当該電力遮断予定区画への電力供給を遮断する生産方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、制御部は、電力遮断が予定されている電力遮断予定区画から、電力供給の継続が予定されている待避区画へと、搬送装置を待避させるので、電力遮断予定区画への電力供給を遮断した場合においても、搬送装置の意図しない挙動を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る搬送システムの模式的な平面図である。
【
図2】
図2(a)は第1実施形態における完成品の正面図であり、
図2(b)は
図2(a)に示す状態からキャップ部が取り外された状態を示す。
【
図3】
図3(a)は第1実施形態における搬送装置の斜視図であり、
図3(b)は搬送装置の永久磁石の斜視図である。
【
図4】
図4(a)は第1実施形態におけるセグメントの斜視図であり、
図4(b)はセグメントの磁力発生部の斜視図である。
【
図5】第1実施形態に係る搬送システムのブロック図である。
【
図6】第1実施形態に係る搬送システムの模式的な平面図であり、搬送装置の移動経路の一例を示す。
【
図7】第1実施形態における第1作業区画及びその周辺構造を示す模式的な平面図であり、搬送装置の移動経路の一例を示す。
【
図8】第1実施形態に係る搬送システムの模式的な平面図であり、搬送装置が作業区画から待避する際の移動経路の一例を示す。
【
図9】第1実施形態に係る搬送システムの模式的な平面図であり、搬送装置が作業区画に復帰する際の移動経路の一例を示す。
【
図10】
図10(a)、
図10(a)及び
図10(c)の各々は、待避区画に待避した複数の搬送装置の配置の例を示す模式的な平面図である。
【
図11】第1実施形態の変形例1に係る搬送システムの模式的な平面図であり、搬送装置の移動経路の一例を示す。
【
図12】第1実施形態の変形例2に係る搬送システムの模式的な平面図であり、搬送装置の移動経路の一例を示す。
【
図13】第2実施形態に係る搬送システムの模式的な平面図であり、搬送装置が作業区画から待避する際の移動経路の一例を示す。
【
図14】第2実施形態に係る搬送システムの模式的な平面図であり、
図13に示す状態から待避区画への搬送装置の待避が完了した状態を示す。
【
図15】第2実施形態に係る搬送システムのブロック図である。
【
図16】第2実施形態の変形例に係る搬送システムの模式的な平面図であり、搬送装置が作業区画から待避する際の移動経路の一例を示す。
【
図17】第2実施形態の変形例に係る搬送システムの模式的な平面図であり、
図16に示す状態から搬送装置を配置した状態の一例を示す。
【
図18】第2実施形態の変形例に係る搬送システムの模式的な平面図であり、
図17に示す状態から搬送装置が作業区画に復帰する過程の一例を示す。
【
図19】第3実施形態における第1作業区画及びその周辺構造を示す模式的な平面図であり、搬送装置が第1作業区画から待避する際の移動経路の一例を示す。
【
図20】第3実施形態に係る搬送システムの模式的な平面図であり、
図19に示す状態から待避区画への搬送装置の待避が完了した状態を示す。
【
図21】第3実施形態における第1作業区画及びその周辺構造を示す模式的な平面図であり、搬送装置が第1作業区画に復帰する際の移動経路の一例を示す。
【
図22】第3実施形態における第1作業区画及びその周辺構造を示す模式的な平面図であり、
図21に示す状態から第1作業区画への搬送装置の復帰が完了した状態を示す。
【
図23】第3実施形態の変形例における第1作業区画及びその周辺構造を示す模式的な平面図であり、搬送装置が第1作業区画に復帰する際の移動経路の一例を示す。
【
図24】第3実施形態の変形例における第1作業区画及びその周辺構造を示す模式的な平面図であり、
図23に示す状態から第1作業区画への搬送装置の復帰が完了した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜に省略する。
【0011】
〔第1実施形態〕
先ず、
図1から
図10を用いて第1実施形態を説明する。
図1及び
図5等に示すように、本実施形態に係る搬送システム100は、搬送ステージ10と、物品を保持し搬送ステージ10上を移動する搬送装置60と、搬送装置60の移動の制御を含む制御動作を行う制御部80と、を備える。
図3に示すように、搬送装置60は、搬送ステージ10から加えられる磁力によって当該搬送装置60を浮上及び移動させるための永久磁石を有する。なお、本実施形態の場合、搬送装置60は、それぞれ複数の永久磁石を含む磁石アレイを複数有する(後述する磁石アレイ70a、70b、70c、70d)。
図4に示すように、搬送ステージ10は、磁力を電力により発生させる磁力発生部26を有し、磁力発生部26と永久磁石との相互作用により搬送装置60が当該搬送ステージ10上を浮上及び移動するようになっている。なお、本明細書では、搬送装置60を浮上させるための力、あるいは移動させるための力を、電力により発生する磁界と搬送装置60が有する永久磁石との相互作用により発生させることを、簡単に「磁力を電力により発生させる」と述べ、電力により上記の磁界を生じさせるための電磁石(の組み合わせ)を磁力発生部26と称する。
搬送ステージ10は、磁力発生部26に供給される電力をそれぞれ独立して遮断可能な電力遮断予定区画及び待避区画32を有する。
電力遮断予定区画は、電力遮断が予定されている区画であり、待避区画32は、電力供給の継続が予定されている区画である。
また、制御部80は、電力遮断予定区画から待避区画32へと搬送装置60を待避させる制御が可能である。
【0012】
本実施形態によれば、制御部80は、電力遮断が予定されている電力遮断予定区画から、電力供給の継続が予定されている待避区画32へと、搬送装置60を待避させる制御を実行する。これにより、電力遮断予定区画への電力供給を遮断した場合においても、搬送装置60の永久磁石の磁力による搬送装置60の意図しない挙動を抑制することが可能となる。
ここで、搬送装置60の意図しない挙動とは、作業者が身につけた金属部品や工具が搬送装置60に引き寄せられることや、搬送装置60どうしが反発することなどである。
【0013】
以下では、搬送システム100の各構成要素の位置関係などを説明するに際し、
図1等に示すX方向を左右方向と称し、
図1等に示すY方向を前後方向と称する場合がある。また、左右方向(X方向)における一方(
図1における左方)を左(左方)と称し、他方(
図1における右方)を右(右方)と称し、前後方向(Y方向)における一方(
図1における下方)を前(前方)と称し、他方(
図1における上方)を後(後方)と称する場合がある。
【0014】
搬送システム100は、例えば、物品に対して順次に作業を行って当該物品の完成品200(
図2(a))を生産する生産方法(詳細後述)に用いられる。
本実施形態の場合、
図2(a)に示すように、搬送システム100を用いて生産される完成品200は、容器本体210と、容器本体210に対して着脱可能に装着されたキャップ部240と、を備える。
図2(b)に示すように、容器本体210は、内容物251及び金属球252を収容する収容部230と、収容部230の上端に装着された吐出部220と、を備えて構成されている。
収容部230は、上下方向を軸方向とする筒状の胴部231と、胴部231の下端を閉塞している底部232と、を有する。収容部230の上端(胴部231の上端)には開口が形成されている。
吐出部220は、吐出口221を上端に有する筒状の口頸部222と、口頸部222の基端から周囲に張り出している肩部223と、を有する。吐出部220は、肩部223が収容部230の上端の開口を閉塞するようにして、収容部230に装着されている。口頸部222の下部は、外周面にネジ山が形成された雄ネジ部となっている。口頸部222の上部は、上方に向けて縮径している。
キャップ部240は、口頸部222に対して着脱可能に螺合する雌ネジ部である装着部241と、装着部241の周囲を覆っている筒部243と、装着部241及び筒部243の上端を閉塞している閉塞部242と、を有する。
内容物251は、特に限定されないが、一例として、リキッドファンデーション、ネイルカラー又は日焼け止め等の液状化粧料である。
金属球252は、内容物251を攪拌するためのものである。容器本体210を振ることによって、金属球252により内容物251を攪拌し、内容物251が含有する顔料、パール剤及び酸化チタン等を液体中に良好に分散させることができる。金属球252を構成する金属材料は特に限定されないが、一例として、ステンレス鋼である。
なお、ここで説明した完成品200は一例であり、搬送システム100を用いて生産される完成品200は、その他のものであってもよい。
【0015】
搬送ステージ10の磁力発生部26によって搬送装置60を浮上及び移動させる動作原理は、特許文献1に記載の固定子ステージのコイルによって可動式ステージを浮上及び移動させる動作原理と同様である。
図1、
図6及び
図7等に示すように、搬送ステージ10は、複数のセグメント20によって構成されている。なお、ここでいうセグメントとは、個々に電力が供給されて磁力を発生させる最小単位を構成するハードウェアのことを意味している。本実施形態の場合、区画(電力遮断予定区画、待避区画32、及び後述する作業区画、移動経路区画34)とは、1つのセグメント20又は複数のセグメント20の集合体によって構成される仮想的な領域である。
セグメント20は、例えば、前後方向(
図1に示すY方向)及び左右方向(
図1に示すX方向)に並んで配置されている。搬送装置60は、搬送ステージ10上において、任意の方向(少なくとも、X方向及びY方向における任意の方向)に水平方向に移動可能となっている。また、搬送ステージ10上において、搬送装置60が移動開始地点から目標地点に到達するまでの移動経路(道筋)は、必ずしも一義的に定められるものではなく、他の搬送装置60の動きや配置等に応じて任意の経路に適宜変更できるようになっていてもよい。
なお、
図1、
図6~
図9は、便宜的に、隣り合うセグメント20の間に間隙が存在するような図としているが、実際には実質的に隙間無く並べられている。
図4に示すように、複数のセグメント20の各々は、例えば、平板状に形成されているとともに水平に配置(板面が鉛直方向を向くように配置)されている本体部21と、本体部21に内蔵されている磁力発生部26と、を備えている。磁力発生部26は、複数(例えば4つ)のコイル26a~26dを備えて構成されている。
本体部21の平面視の形状ひいてはセグメント20の平面視の形状は、例えば略正方形状であり、当該正方形状の二辺がそれぞれX方向に延在しており、当該正方形状の残りの二辺がそれぞれY方向に延在している。本実施形態ではセグメント20の平面視の形状は正方形状である。
各セグメント20の本体部21の上面は略同一平面上に配置されているので、各本体部21の集合体の上面は実質的に段差がなくフラットな状態となっている。搬送装置60は、当該本体部21の上面(すなわちセグメント20の上面)から浮上し、当該上面上を移動する。
4つのコイル26a~26dは、平面視において、略矩形環状に配置されている。より詳細には、4つのコイル26a~26dのうち、2つのコイル26a、26cの各々の軸心はX方向に延在しており、当該2つのコイル26a、26cは互いに平行に配置されている。4つのコイル26a~26dのうち、残り2つのコイル26b、26dの各々の軸心はY方向に延在しており、当該2つのコイル26b、26dは互いに平行に配置されている。
搬送システム100において、制御部80の制御下で各セグメント20の磁力発生部26(複数のコイル26a~26d)に電力が供給されることによって、X方向及びY方向の双方に磁力が発生する。この磁力によって、搬送装置60を各セグメント20の上面(本体部21の上面)から浮上させるとともに、当該搬送装置60を水平方向に移動させることが可能である。
各セグメント20上における搬送装置60の移動方向は、当該セグメント20が備える複数のコイル26a~26dへの電力の供給の仕方(組み合わせ等)に応じて変化する。これにより、各セグメント20上において、前、後、左、右のうち選択された所望の方向等に搬送装置60を移動させることができる。
また、各セグメント20上において、各搬送装置60は略同等の高さに浮上する。より詳細には、搬送装置60が浮上する高さは、例えば約1mm以上5mm以下であり、本実施形態では約2mmである。
【0016】
図3に示すように、本実施形態の搬送装置60は、平板状に形成されている搬送装置本体66と、搬送装置本体66の上面に設けられており物品を保持する一対の物品保持部67と、搬送装置本体66に内蔵されている複数の磁石アレイ70a、70b、70c、70dと、を備えている。
搬送装置本体66は水平に配置されており、その板面は鉛直方向を向いている。
搬送装置本体66の平面視の形状ひいては搬送装置60の平面視の形状は、例えば、略正方形状であり、当該正方形状の二辺がそれぞれX方向に延在しており、当該正方形状の残りの二辺がそれぞれY方向に延在している。本実施形態では搬送装置60の平面視の形状は正方形状であり、その一辺の長さは120mmである。
物品は、例えば、一対の物品保持部67によって挟持されることによって、当該搬送装置本体66の上面において自立した状態で保持される。本実施形態の場合、1つの搬送装置60によって1つの物品が保持及び搬送される。
本発明において、搬送装置60は、物品保持部67を備えていなくてもよい。この場合、物品は、搬送装置60上に単に載置された状態で搬送されてもよい。
各磁石アレイ70a~70dは、それぞれ複数の永久磁石を備えて構成されている。磁石アレイ70a~70dは、平面視において、略矩形環状に配置されている。より詳細には、磁石アレイ70a~70dのうち、2つの磁石アレイ70a、70cはそれぞれX方向に延在しており、当該2つの磁石アレイ70a、70cは互いに平行に配置されている。磁石アレイ70a~70dのうち、残り2つの磁石アレイ70b、70dはそれぞれY方向に延在しており、当該2つの磁石アレイ70b、70dは互いに平行に配置されている。
本発明において、搬送装置60が有する磁石アレイの数は上記の例に限定されず、
図10(c)に示す例のように、搬送装置60が1つの磁石アレイ70eを備えていてもよい。
【0017】
搬送ステージ10の平面寸法は、搬送装置60の平面寸法よりも大きい。一方、搬送ステージ10を構成する個々のセグメント20の平面寸法は、搬送装置60の平面寸法よりも大きくてもよいし、同等であってもよく、又は当該平面寸法よりも小さくてもよい。
本実施形態の場合、セグメント20の平面寸法は、搬送装置60の平面寸法よりも大きい。一例として、セグメント20の一辺の長さは、搬送装置60の一辺の長さの2倍超である。
【0018】
ここで、搬送ステージ10に供給される電力が遮断されると、搬送ステージ10上の複数の搬送装置60が磁力発生部26から受ける磁力が消失する。このような状態では、近接する搬送装置60の永久磁石が反発し、搬送装置60が意図しない方向に移動してしまう可能性がある。
本実施形態の場合、制御部80は、電力遮断予定区画の電力を遮断する前に、当該電力遮断予定区画内の搬送装置60を、電力供給が継続される待避区画32に待避させる制御を実行する。このため、近接する搬送装置60の永久磁石が反発してしまうことを抑制できる。
【0019】
図1及び
図6等に示すように、搬送ステージ10は、磁力発生部26に供給される電力をそれぞれ独立して遮断可能な作業区画と移動経路区画とを有する。搬送ステージ10は、作業区画を複数有するとともに各作業区画には作業装置90が設けられ、移動経路区画は、作業区画どうしを繋いでいる。
より詳細には、本実施形態の場合、搬送ステージ10は、2つの作業区画(
図1に示す第1作業区画41及び第2作業区画51)と、第1作業区画41と第2作業区画51とを繋ぐ移動経路区画34と、を有する。
また、移動経路区画34は、搬送装置60に物品(本実施形態の場合、収容部230)を供給する物品供給部35と、搬送装置60から完成品200が取り出される完成品取出部37と、を有する。
図6に示すように、一例として、搬送装置60は、物品供給部35において供給された物品(収容部230)を、移動経路区画34を介して作業区画(第1作業区画41又は第2作業区画51)に搬送する。作業区画では、物品に対して順次に処理を行って完成品200を生産するための各工程(詳細後述)を行う。更に、搬送装置60は、作業区画において生産された完成品200を、移動経路区画34を介して完成品取出部37に搬送する。そして、完成品取出部37において完成品200が搬送装置60から取り出された後は、当該搬送装置60は、完成品取出部37から再び物品供給部35に移動する。
【0020】
図1等に示す例では、移動経路区画34において、複数のセグメント20が格子状に配置されている。より詳細には、この格子状に配置されたセグメント20は、例えば、Y方向において3行配置されている。後ろから1行目(以下、第1移動経路34a)及び2行目(以下、第2移動経路34b)には、それぞれ11個のセグメント20がX方向に並んで配置されている。後ろから3行目には、4個のセグメント20がX方向に並んで配置されており、このうち2個のセグメント20が、移動経路区画34の左端部に配置されているとともにそれぞれ物品供給部35を構成している。残りの2個のセグメント20が、移動経路区画34の右端部に配置されているとともにそれぞれ完成品取出部37を構成している。すなわち、実質的に2つの作業区画を繋ぐのは、それぞれセグメント20を1行・11個配置した第1移動経路34aと第2移動経路34bである。
第1移動経路34aの左端部は、第1作業区画41と接続されており、当該第1移動経路34aの右端部は、第2作業区画51と接続されている。第2移動経路34bの左端部は、物品供給部35と接続されており、第2移動経路34bの右端部は、完成品取出部37と接続されている。
【0021】
図1に示すように、各物品供給部35に対して、搬送装置60に物品(収容部230)を供給する物品供給装置95が設けられる(併設される)。なお、本明細書において「併設される」とは、物品供給部35を構成するセグメント20の側方且つ外部に物品供給装置95の少なくとも一部分が存在することを意味している。本実施形態の場合、物品供給装置95の大部分が、対応する物品供給部35を構成するセグメント20(ひいては移動経路区画34)の外部に存在する。物品供給装置95は、併設されているセグメント20に位置する搬送装置60に対する作業を行う。
2つの物品供給部35のうち、一方の物品供給部35において当該物品供給部35と対応する物品供給装置95によって搬送装置60上に供給された物品は、当該搬送装置60によって第1作業区画41へと搬送される。同様に、他方の物品供給部35において当該物品供給部35と対応する物品供給装置95によって搬送装置60上に供給された物品は、当該搬送装置60によって第2作業区画51へと搬送される。
同様に、各完成品取出部37には、搬送装置60から完成品200を取り出す完成品取出装置96が設けられる。
【0022】
なお、
図6においては、一方の物品供給部35から第1作業区画41を経由して完成品取出部37に移動するまでの搬送装置60の移動経路の一例と、他方の物品供給部35から第2作業区画51を経由して完成品取出部37に移動するまでの搬送装置60の移動経路の一例と、完成品取出部37から物品供給部35に戻るまでの搬送装置60の移動経路の一例と、をそれぞれ矢印で示している。
また、
図6~
図9においては、物品供給装置95及び完成品取出装置96の図示を省略している。
【0023】
ここで、移動経路区画34は、物品供給部35に移動する前の搬送装置60が待機する物品供給待機部36と、完成品取出部37に移動する前の搬送装置60が待機する完成品取出待機部38と、を有する。
これにより、各搬送装置60は、完成品取出部37から物品供給部35に戻る過程において待機したり、作業区画(第1作業区画41又は第2作業区画51)から完成品取出部37に移動する過程において待機したりすることができる。
図6に示す例では、第2移動経路34bの中間部(左端部と右端部との間の部分)が物品供給待機部36を構成している。また、第2移動経路34bの右端部が完成品取出待機部38を構成している。
【0024】
本実施形態の場合、一例として、各作業区画(第1作業区画41及び第2作業区画51)において、物品に対して、金属球252を収容部230に投入する金属球投入工程と、収容部230に内容物251を充填する充填工程と、収容部230に吐出部220を装着する(打栓する)打栓工程と、吐出部220にキャップ部240を装着するキャッパ工程と、をこの順に行う。これにより、各作業区画において完成品200が生産される。すなわち、物品に対して上記の各工程が行われることによって、当該物品が完成品200となる。
【0025】
より詳細には、
図1に示すように、第1作業区画41には、作業装置90として、金属球投入装置91と、充填装置92と、打栓装置93と、キャッピング装置94と、が設けられる(併設される)。なお、
図6~
図9においては、金属球投入装置91、充填装置92、打栓装置93及びキャッピング装置94の図示を省略している。
第1作業区画41は、金属球投入装置91が設けられる(併設される)金属球投入部42bと、充填装置92が設けられる(併設される)充填部43bと、打栓装置93が設けられる(併設される)打栓部44bと、キャッピング装置94が設けられる(併設される)キャッパ部45bと、を有する。
本実施形態の場合、作業装置90の大部分が作業区画の外部に存在する。作業装置90は、併設されているセグメント20に位置する搬送装置60が保持している物品に対する作業を行う。
物品供給部35から第1作業区画41に移動した搬送装置60は、金属球投入部42b、充填部43b、打栓部44b及びキャッパ部45bの順に移動する。これにより、物品に対して上記の金属球投入工程、充填工程、打栓工程及びキャッパ工程がこの順に行われ、完成品200が生産される。
【0026】
本実施形態の場合、一例として、第1作業区画41は、10個のセグメント20によって構成されている。これらセグメント20は、中央の2行一列が空白となっている4行3列の格子状に配置されている。
図7に示す例では、10個のセグメント20のうち、最も左側の列の前から2番目の行に配置されているセグメント20が金属球投入部42bを構成しており、最も左側の列の最も後ろの行に配置されているセグメント20が充填部43bを構成している。また、最も右側の列の最も後ろの行に配置されているセグメント20が打栓部44bを構成しており、最も右側の列の前から2番目の行に配置されているセグメント20がキャッパ部45bを構成している。
【0027】
図7等に示すように、第1作業区画41は、金属球投入部42bに移動する前の搬送装置60が待機する金属球投入待機部42aと、充填部43bに移動する前の搬送装置60が待機する充填待機部43aと、打栓部44bに移動する前の搬送装置60が待機する打栓待機部44aと、キャッパ部45bに移動する前の搬送装置60が待機するキャッパ待機部45aと、を更に有する。
図7に示す例では、金属球投入部42bを構成しているセグメント20の前側に隣接しているセグメント20が金属球投入待機部42aを構成しており、充填部43bを構成しているセグメント20の前側に隣接しているセグメント20が充填待機部43aを構成しており、打栓部44bを構成しているセグメント20の左側に隣接しているセグメント20が打栓待機部44aを構成しており、キャッパ部45bを構成しているセグメント20の後側に隣接しているセグメント20がキャッパ待機部45aを構成している。
第1作業区画41において、搬送装置60は、金属球投入待機部42a、金属球投入部42b、充填待機部43a、充填部43b、打栓待機部44a、打栓部44b、キャッパ待機部45a及びキャッパ部45bの順に移動する。
【0028】
ここで、制御部80は、次工程までの搬送装置60の待機時間が最小となるように、及び、各作業装置90のアイドルタイムが最小となるように、作業区画内に存在する搬送装置60の数やその動作を制御することが好ましい。
例えば、本実施形態のように第1作業区画41が4つの作業部(金属球投入部42b~キャッパ部45b)と4つの待機部(金属球投入待機部42a~キャッパ待機部45a)とを有する場合、制御部80は、各作業部及び各待機部において少なくとも1つ以上の搬送装置60が存在するように、すなわち第1作業区画41において合計8つ以上の搬送装置60が存在するように各搬送装置60を制御することが好ましい。
図6及び
図7では、第1作業区画41において、8つ(以下、第1搬送装置61a、61b、61c、61d、61e、61f、61g、61h)が存在する例を示す。
【0029】
図6に示すように、第2作業区画51は、第1作業区画41と左右対称に構成されている。したがって、第2作業区画51には、作業装置90として、金属球投入装置91と、充填装置92と、打栓装置93と、キャッピング装置94と、が設けられている(併設されている)。また、第2作業区画51は、第1作業区画41と同様に、金属球投入待機部52a、金属球投入部52b、充填待機部53a、充填部53b、打栓待機部54a、打栓部54b、キャッパ待機部55a及びキャッパ部55bを有する。
また、制御部80は、第1作業区画41と同様に、次工程までの搬送装置60の待機時間が最小となるように、及び、各作業装置90のアイドルタイムが最小となるように、第2作業区画51内に存在する搬送装置60(例えば
図6等に示す第2搬送装置63a~63h)の数やその動作を制御する。
第2搬送装置63a~63hは、金属球投入待機部52a、金属球投入部52b、充填待機部53a、充填部53b、打栓待機部54a、打栓部54b、キャッパ待機部55a及びキャッパ部55bの順に移動する。
【0030】
なお、本発明において、複数の作業区画にそれぞれ設けられている作業装置90の種類は上記の例に限定されず、作業装置90として、印字装置、外観検査装置、ラベリング装置及びパッキング装置などが設けられていてもよい。
また、本発明において、複数の作業区画にそれぞれ設けられている作業装置90の数は上記の例に限定されず、生産する完成品200の種類等に応じて適宜設定することができる。
【0031】
ここで、
図6等に示すように、移動経路区画34の、作業区画を繋ぐ方向に対して直交する方向における最小寸法は、搬送装置60の平面寸法における最短長の2倍超である。
これにより、移動経路区画34において、少なくとも2つの搬送装置60が並走動作やすれ違い動作を行うことが可能である。また、移動経路区画34において、一の搬送装置60が他の搬送装置60を追い越す追い越し動作や、一の搬送装置60が他の搬送装置60を回避(迂回)して進行する回避動作も可能である。更に、移動経路区画34における搬送装置60のUターン動作も可能である。
より詳細には、本実施形態の場合、セグメント20及び搬送装置60は平面視の形状が正方形状であり、セグメント20の一辺の長さ(すなわちX方向及びY方向の寸法)は、搬送装置60の一辺の長さの2倍超である。
また、移動経路区画34はセグメント20を格子状に配置して構成される。すなわち、移動経路区画34のX方向及びY方向における最小寸法はセグメント20の一辺の長さを下回ることが無い。そのため、移動経路区画34の、搬送装置60の移動経路に対して直交する方向(すなわちX方向及びY方向)における最小寸法は、搬送装置60の平面寸法における最短長の2倍超である。
そして、本実施形態では移動経路区画34に、上述のようにセグメント20がX方向に複数並んで配置されている。本実施形態におけるセグメント20の平面視の形状は正方形状であり、また、各セグメント20の一辺の長さ(X方向の寸法)は、搬送装置60の一辺の長さの2倍超である。よって、X方向において、移動経路区画34の寸法は、搬送装置60の最短長L2の2倍超である。
また、本実施形態の場合、移動経路区画34は、X方向において第1作業区画41と第2作業区画51とを繋いでいる。実質的に2つの作業区画を繋ぐのは、それぞれセグメント20を1行・複数個配置した第1移動経路34aと第2移動経路34bであるので、Y方向において、第1移動経路34a及び第2移動経路34bはそれぞれ1個のセグメント20で構成される。第1移動経路34a及び第2移動経路34bの各々のY方向の寸法(セグメント20の一辺の長さ)は、搬送装置60の最短長L2の2倍超である。また、Y方向において、移動経路区画34の最小寸法W1(
図6参照)(第1移動経路34aの寸法と第2移動経路34bの寸法との合計値)は、搬送装置60の最短長L2の寸法の4倍超である。
このような構成によれば、第1作業区画41から完成品取出部37に向かう搬送装置60と、物品供給部35から第2作業区画51に向かう搬送装置60と、完成品取出部37から物品供給待機部36に向かう搬送装置60と、が同タイミングで上記の各動作を効率よく行うことができる。
【0032】
また、本実施形態の場合、作業区画(第1作業区画41及び第2作業区画51)の搬送装置60の移動経路に対して直交する方向の寸法は、搬送装置60の平面寸法における最短長の2倍超である。
これにより、作業区画においても、各搬送装置60が上記の追い越し動作及び回避動作等を行うことができるので、搬送装置60は、各工程で待機している別の搬送装置60を追い越して(回避して)移動することができる。より詳細には、本実施形態の場合、作業区画の搬送装置60の移動経路に対して直交する方向(すなわちX方向及びY方向)の最小寸法(
図6に示すW2、W3)は、セグメント20の一辺の長さであり、上述のように当該一辺の長さは搬送装置60の最短長L2(一辺の長さ)の2倍超である。
また、
図6等では、作業区画において、1個のセグメント20に1つの搬送装置60が待機している例を図示しているが、1個のセグメント20において、少なくとも2つの搬送装置60が上記の各動作を行うことが可能である。本実施形態の場合、1個のセグメント20(すなわち1つの作業部又は1つの待機部)において、4つまでの搬送装置60が上記の各動作を行うことが可能である。また、作業区画の各セグメント20では、作業装置90による作業動作に供されている搬送装置60に加えて、その工程の作業終了後の搬送装置60、又は当該作業装置90による作業待ちの搬送装置60を同一セグメント20上に配置してもよい。
【0033】
本実施形態の場合、搬送システム100は、通常モードとから待避モードの間を移行可能である。通常モードから待避モードに移行すると、制御部80は、電力遮断が予定されている電力遮断予定区画から、電力供給の継続が予定されている待避区画32へと、搬送装置60を待避させる制御を実行する。
なお、本発明において、通常モードから待避モードへの移行は、作業者による操作をトリガとして行われてもよいし、電力遮断予定区画における電力の遮断事由の発生を制御部80が検知することをトリガとして行われてもよい。
また、
図5に示すように、搬送システム100は、制御部80に加えて、作業者による操作を受け付ける操作部84と、完成品200の生産数や物品に対する作業の進捗情報等を表示する液晶表示装置などの表示部86と、搬送装置60の後述する識別情報等を記憶する記憶部82と、を備えている。
更に、
図5に示すように、搬送システム100は、対応する区画に対して個別に電力遮断を行う複数の電力遮断部(本実施形態の場合、第1電力遮断部85a、第2電力遮断部85b及び第3電力遮断部85c)を備えている。
第1電力遮断部85aは、電源85から移動経路区画34への電力供給を遮断する。第2電力遮断部85bは、電源85から第1作業区画41への電力供給を遮断する。第3電力遮断部85cは、電源85から第2作業区画51への電力供給を遮断する。
本実施形態の場合、各電力遮断部(第1電力遮断部85a、第2電力遮断部85b及び第3電力遮断部85c)は、作業者による遮断操作を受け付けて、対応する区画への電力供給を遮断する。
【0034】
本実施形態の場合、第1作業区画41又は第2作業区画51において電力の遮断事由が発生したと作業者が判断した場合、作業者は、操作部84に対してそれぞれ所要の操作を行う。換言すれば、第1作業区画41又は第2作業区画51が電力遮断予定区画となった場合に、作業者は、操作部84に対してそれぞれ所要の操作を行う。より詳細には、作業者は、電力の遮断事由が発生した作業区画の作業を停止させる操作を行うとともに、待避区画32へと搬送装置60を待避させるための操作を行う。
すると、搬送システム100は、通常モードから待避モードへ移行し、制御部80は、第1作業区画41又は第2作業区画51に存在している複数の搬送装置60をすべて移動経路区画34に待避させる待避動作を行う。すなわち、移動経路区画34が待避区画32となる。すべての搬送装置60の待避動作が完了したら、作業者は電力遮断予定区画と対応する電力遮断部に対し遮断操作を行って、当該電力遮断予定区画への電力供給を遮断する。一方、待避区画32への電力供給は継続される。
その後、第1作業区画41又は第2作業区画51において電力の遮断事由が解消したら、作業者は電力遮断予定区画と対応する電力遮断部によって、当該電力遮断予定区画への電力供給を再開させる。
そして、作業者によって操作部84に対する操作(搬送装置60の復帰操作)が行われると、搬送システム100は、待避モードから通常モードへ移行し、制御部80は、待避区画32内の複数の搬送装置60を電力遮断予定区画に復帰させる復帰動作を行う。
【0035】
このように、本実施形態の場合、待避モードにおいて、第1作業区画41と第2作業区画51とのうちいずれか一方が電力遮断予定区画となり、移動経路区画34が待避区画32となる。
このような構成によれば、第1作業区画41(又は第2作業区画51)において電力の遮断事由が生じたとしても、第2作業区画51(又は第1作業区画41)において完成品200の生産を継続しつつ、第1作業区画41(又は第2作業区画51)における遮断事由に対する対処を行うことができる。
また、待避モードでは、移動経路区画34を待避区画32として用いるので、搬送システム100をよりコンパクトに構成することができる。
【0036】
より詳細には、第1作業区画41が電力遮断予定区画となる場合、待避モードにおいて、制御部80は、第1作業区画41内の搬送装置60(第1搬送装置61a~第1搬送装置61h)を待避区画32(移動経路区画34)へと待避させる制御を実行する。搬送装置60の待避動作が完了したら、作業者は、第2電力遮断部85bに対して遮断操作を行うことによって第1作業区画41への電力供給を遮断する。一方、作業者は、第1電力遮断部85a及び第3電力遮断部85cに対しては遮断操作を行わず、これにより、第2作業区画51及び移動経路区画34(待避区画32)への電力供給は継続される。
第2作業区画51が電力遮断予定区画となる場合、待避モードにおいて、制御部80は、第2作業区画51内の搬送装置60(第2搬送装置63a~第2搬送装置63h)を待避区画32(移動経路区画34)へと待避させる制御を実行する。搬送装置60の待避動作が完了したら、作業者は、第3電力遮断部85cに対して遮断操作を行うことによって第2作業区画51への電力供給を遮断する。一方、作業者は、第1電力遮断部85a及び第2電力遮断部85bに対しては遮断操作を行わず、これにより、第1作業区画41及び移動経路区画34(待避区画32)への電力供給は継続される。
【0037】
ここで、制御部80は、待避区画32に待避後の搬送装置60が永久磁石の反発により搬送ステージ10から逸脱しないような位置関係となるように搬送装置60を待避させる制御を実行する。
より詳細には、例えば、搬送装置60における永久磁石の配置領域75は、平面視において矩形をなし(
図10参照)、制御部80は、隣り合う搬送装置60における隣接する永久磁石どうしが矩形のいずれかの辺に対して直交する方向(本実施形態の場合、X方向及びY方向)に視たときに互いに重ならないように、搬送装置60を待避させる制御を実行する。なお、ここで「矩形をなしている」とは、平面視において、永久磁石の配置領域75は、矩形環状又は中実の矩形状のどちらでもよく、少なくとも外周縁の形状が矩形であることを意味している。また、本発明において、永久磁石の配置領域75が矩形である場合においては、搬送装置60の平面視の形状は正方形状に限定されず、六角形や円形等であってもよい。
又は、制御部80は、隣り合う搬送装置60の中心間距離が、搬送装置60の平面視の対角寸法よりも大きくなるように、搬送装置60を待避させる制御を実行する。なお、ここでいう搬送装置60の中心とは、当該搬送装置60の平面視の形状における中心60aである。また、ここでいう対角寸法とは、搬送装置60の四隅がR面取りされている場合は、そのRが無い場合の(つまり外接する矩形を仮想した場合の)対角寸法を意味している。
このような構成によれば、待避区画32に待避後の搬送装置60が永久磁石の反発により搬送ステージ10から逸脱してしまうことを抑制できる。
【0038】
本実施形態の場合、
図10に示すように、搬送装置60における永久磁石の配置領域75は、平面視において矩形環状をなしており、当該矩形環状の二辺がそれぞれX方向に延在しており、当該矩形環状の残りの二辺がそれぞれY方向に延在している。また、永久磁石の配置領域75は、平面視において搬送装置60の中央部に位置している。なお、
図10においては、各搬送装置60に便宜的に右上がりのハッチングを付している。
そして、制御部80は、搬送装置60を千鳥状の配置となるように待避させる。
より詳細には、制御部80は、斜めY方向に隣り合う搬送装置60の位置関係について、永久磁石の配置領域75のいずれかの辺に対して直交する方向(本実施形態の場合、X方向及びY方向)に視たときに、これらの搬送装置60における隣接する永久磁石どうしが互いに重ならない配置とする。
一方、制御部80は、X方向に隣り合う搬送装置60の位置関係について、これらの搬送装置60の中心間距離L1が、搬送装置60の平面視の対角寸法L3よりも大きくなる配置とする(
図10参照)。一例として、X方向に隣り合う搬送装置60の中心間距離L1は、対角寸法L3の1.41倍以上であることが好ましい。また、斜めY方向に隣り合う搬送装置60の中心間距離L4は、対角寸法L3の1.25倍以上であることが好ましい。
このように、本実施形態の場合、制御部80は、隣り合う搬送装置60の位置関係について、これらの搬送装置60における隣接する永久磁石どうしが矩形のいずれかの辺に対して直交する方向(本実施形態の場合、X方向及びY方向)に視たときに互いに重ならない配置、又はこれらの搬送装置60の中心間距離が、搬送装置60の平面視の対角寸法よりも大きくなる配置とする。
ただし、本発明において、永久磁石の配置領域75が円形(又は円環状)である場合においては、各搬送装置60の位置関係について、隣り合う搬送装置60の中心間距離が、搬送装置60の平面視の対角寸法よりも大きくなるように配置されることが好ましい。
また、本発明において、隣り合う搬送装置60は、少なくとも永久磁石の反発により搬送ステージ10から逸脱しないような位置関係であればよく、隣り合う搬送装置60の位置関係について、これらの搬送装置60の辺が重複しないような千鳥状の配置となっていてもよいし(
図10(a)参照)、これらの搬送装置60の辺の一部分(例えば辺全体の1/4以下の部分)どうしが重複するような配置となっていてもよい(
図10(b)及び
図10(c)参照)。
なお、本実施形態の場合、1個のセグメント20に対して最大2つの搬送装置60を待避させることができる。
【0039】
また、制御部80は、待避区画32に待避させた複数の搬送装置60の中心間距離が、搬送装置60の平面寸法における最短長L2よりも長くなるように、複数の搬送装置60を待避区画32に待避させる制御を実行してもよい。
これにより、隣り合う搬送装置60の離間距離を十分に確保し、これら搬送装置60の永久磁石の磁場(磁力)による影響が少ない位置で各搬送装置60を待避区画32で待機させることができる。
【0040】
なお、本発明において、搬送装置60が移動する際にも、搬送装置60の中心間距離L1、L4が、搬送装置60の平面寸法における最短長L2よりも長い状態を維持させることが好ましい。このようにすることにより、近接する各搬送装置60の永久磁石の磁場(磁力)の影響によって、各搬送装置60が振動してしまうことなどを抑制できる。ただし、搬送装置60がすれ違う際には、近接する搬送装置60の永久磁石の磁場(磁力)の影響は小さいため、当該搬送装置60の中心間距離L1、L4は、搬送装置60の平面寸法における最短長L2と略同じ長さとなってもよい。
【0041】
更に、本実施形態の場合、搬送装置60は、識別情報を有している。そして、制御部80は、識別情報によりそれぞれの搬送装置60を識別する制御を実行する。
これにより、複数の搬送装置60を作業区画から待避区画32に待避させた後においても、制御部80が、各搬送装置60の識別情報に基づいて、作業区画における各搬送装置60の位置、作業区画における各工程の進捗等を判別することができる。よって、作業区画での作業を再開する際に、待避した搬送装置60を対応する位置に速やかに復帰させ、各工程をスムーズに開始することができる。このため、物品の仕掛品の手直し作業や廃棄が発生することを抑制できる。
識別情報は、例えば、二次元バーコードやバーコードであってもよいし、識別情報を読み取り可能に記憶している識別情報記憶部(RFID等)に記憶されている情報であってもよい。また、識別情報は、搬送装置60が有する磁石アレイ70a~70dの配列であってもよいし、搬送装置60における特定の部分の形状(個々の搬送装置60に固有の形状)などであってもよい。
【0042】
また、電力遮断予定区画における電力の遮断事由が解消した場合に、制御部80は、識別情報に基づいて、搬送装置60の各々を待避させる直前の位置に復帰させる制御を実行する。
これにより、待避させる直前の状態から、完成品200の生産を再開することができる。
なお、ここでいう「遮断事由が解消した場合」とは、本実施形態の場合、遮断事由に対する対処が完了し、作業者が電力遮断予定区画への電力供給を再開させ、且つ、作業者が操作部84への操作(復帰操作)を行った場合を意味している。
【0043】
次に、搬送システム100を用いて物品に対して作業を行って完成品200を生産する方法(以下、本方法と称する場合がある)の一例を説明する。
本方法は、搬送装置60に物品(収容部230)を供給する物品供給工程と、金属球252を収容部230に投入する金属球投入工程と、収容部230に内容物251を充填する充填工程と、収容部230に吐出部220を装着する(打栓する)打栓工程と、吐出部220にキャップ部240を装着するキャッパ工程と、完成品200を搬送装置60から取り出す完成品取出工程と、をこの順に行う。
【0044】
先ず、物品供給工程では、物品供給装置95は、物品供給待機部36から物品供給部35に移動した搬送装置60上に、(内部が空の)収容部230を搭載する。
2つの物品供給部35のうち、一方の物品供給部35において収容部230が供給された搬送装置60は、第2移動経路34b及び第1移動経路34aを経由して第1作業区画41に向けて移動する。
2つの物品供給部35のうち、他方の物品供給部35において収容部230が供給された搬送装置60は、第2移動経路34b及び第1移動経路34aを経由して後方に移動し、更に第1移動経路34aに沿って第2作業区画51に向けて移動する。
【0045】
次に、金属球投入工程では、第1作業区画41に移動した搬送装置60は、金属球投入待機部42aにおいて、1つ前の搬送装置60が保持する収容部230への金属球252の投入が完了するのを待機した後に、金属球投入部42bへ移動する。
金属球投入部42bでは、金属球投入装置91が、収容部230の内部へ金属球252を投入する。収容部230への金属球252の投入が完了したら、搬送装置60は金属球投入部42bから充填待機部43aへと移動する。
【0046】
次に、充填工程では、充填待機部43a上の搬送装置60は、1つ前の搬送装置60が保持する収容部230への内容物251の充填が完了するのを待機した後に、充填部43bへ移動する。
充填部43bでは、充填装置92が、収容部230の内部へ内容物251を充填する。収容部230への内容物251の充填が完了したら、搬送装置60は充填部43bから打栓待機部44aへと移動する。
【0047】
次に、打栓工程では、打栓待機部44a上の搬送装置60は、1つ前の搬送装置60が保持する収容部230に対する吐出部220の打栓が完了するのを待機した後に、打栓待機部44aへ移動する。
打栓待機部44aでは、打栓装置93が、収容部230に対して吐出部220を打栓する。この段階で、物品は(金属球252の投入及び内容物251の充填が完了した)容器本体210となっている。収容部230に対する吐出部220の打栓が完了したら、搬送装置60は打栓部44bからキャッパ待機部45aへと移動する。
【0048】
次に、キャッパ工程では、キャッパ待機部45a上の搬送装置60は、1つ前の搬送装置60が保持する容器本体210へのキャップ部240の装着が完了するのを待機した後に、キャッパ部45bへ移動する。
キャッパ部45bでは、キャッピング装置94が、容器本体210の吐出部220に対してキャップ部240を装着する。これにより、完成品200が得られる。吐出部220に対するキャップ部240の装着が完了したら、搬送装置60はキャッパ部45bから完成品取出部37へと移動する。
なお、第2作業区画51においても、金属球投入工程~キャッパ工程は、第1作業区画41と同様に行われるため、第2作業区画51での動作の説明は省略する。
【0049】
完成品取出工程では、完成品取出装置96は、完成品取出待機部38から完成品取出部37に移動した搬送装置60上の完成品200を、当該搬送装置60から取り出す。取り出された完成品200は、不図示の別の搬送システムへと搬送され当該完成品200に対する次の各工程が行われる。
【0050】
ここで、本実施形態に係る搬送システム100では、作業区画毎に、作業の停止要因と、当該作業区画が電力遮断予定区画となるか否かと、の対応付けがなされている。換言すれば、複数種類の停止要因の各々について、作業区画への電力遮断が必要となるか否かが対応付けられており、且つ、このような対応付けが、作業区画毎にそれぞれ設定されている。
また、複数の作業区画のうち、ある作業区画(第1作業区画41又は第2作業区画51)において、電力遮断が必要となる停止要因が発生したことを、例えば作業者が判断した場合、上述のように作業者は、この作業区画の作業を停止させるとともに、待避区画32へと搬送装置60を待避させるための操作を行う。すると、制御部80は、停止要因が発生した作業区画(電力遮断予定区画)から待避区画32へと搬送装置60を待避させる制御を実行する。その後、作業者は、作業区画の電力を遮断する。
以上の説明で分かるように、電力遮断予定区画及び待避区画32は、停止要因に応じてその都度異なる、言い換えるとその場所や範囲が変化することになる。
【0051】
なお、本発明において、発生した停止要因の内容によっては、電力遮断予定区画内の搬送装置60を待避区画32へと待避させるのみで、当該電力遮断予定区画への電力供給は継続される場合がある。このような停止要因としては、例えば、生産する完成品200や内容物251の種類を変更する場合などが挙げられる。
また、電力遮断予定区画への電力供給の遮断が必要な停止要因としては、例えば、作業装置90のメンテナンス、作業装置90の洗浄及び生産する完成品200の品種切替作業などが挙げられる。
【0052】
以下では、待避モードにおいて、第1搬送装置61a~61hが第1作業区画41から待避区画32に待避する際の動作の一例を説明する。
図8及び
図9に示すように、本実施形態の場合、金属球投入待機部42aに位置する第1搬送装置61aと、金属球投入部42bに位置する第1搬送装置61bと、充填待機部43aに位置する第1搬送装置61cと、充填部43bに位置する第1搬送装置61dとは、この順に待避区画32に向けて反時計回りに移動し、待避区画32で待機する。
一方、キャッパ部45bに位置する第1搬送装置61hと、キャッパ待機部45aに位置する第1搬送装置61gと、打栓部44bに位置する第1搬送装置61fと、打栓待機部44aに位置する第1搬送装置61eとは、この順に待避区画32に向けて時計回りに移動し、待避区画32で待機する。ただし、第1搬送装置61hが完成品200を保持している場合は、第1搬送装置61hは待避区画32ではなく物品供給部35に向けて移動する。
【0053】
また、
図9に示すように、第1搬送装置61a~61dが第1作業区画41に復帰する際には、第1搬送装置61dと、第1搬送装置61cと、第1搬送装置61bと、第1搬送装置61aとは、この順に第1作業区画41に向けて時計回りに移動する(待避する際とは逆方向に移動する)。また、第1搬送装置61e、第1搬送装置61fと、第1搬送装置61gと、第1搬送装置61hとは、この順に第1作業区画41に向けて反時計回りに移動する(待避する際とは逆方向に移動する)。
【0054】
ここで、本実施形態の場合、第1搬送装置61a~第1搬送装置61gが待避区画32に待避している状態において、第2搬送装置63a~第2搬送装置63hは、待避している第1搬送装置61a~第1搬送装置61gを避けつつ移動経路区画34を通って第2作業区画51に移動し、当該第2作業区画51での作業は継続する。
すなわち、第1作業区画41における完成品200の生産が停止している間も、第2作業区画51において完成品200の生産を継続させることができるので、完成品200の生産をより効率的に行うことができる。
【0055】
また、本実施形態の場合、上述のように、搬送装置60は、識別情報を有している。そして、制御部80は、待避区画32に待避した搬送装置60が保持している物品に対して実施された作業の進捗情報を、識別情報とそれぞれ紐付けて記憶部82に記憶する。
そして、作業区画での作業を再開する際には、紐付けた情報を利用して、搬送装置60を、待避させる直前の位置に復帰させ、その後、作業を再開する。
このような構成によれば、物品の仕掛品の手直し作業や廃棄が発生することを抑制できる。
本実施形態の場合、制御部80は、作業の進捗情報を識別情報とそれぞれ紐付けて記憶部82に記憶する。
【0056】
なお、本実施形態の場合、第2作業区画51において、第2搬送装置63a~第2搬送装置63hは、第1搬送装置61a~第1搬送装置61hの待避動作を左右反転した動きで移動するため、その詳細な説明を省略する。ただし、本発明において、第2搬送装置63a~第2搬送装置63hの待避動作は、第1搬送装置61a~第1搬送装置61hの待避動作とは異なる動作であってもよい。
【0057】
このように、本方法は、本実施形態に係る搬送システム100を用いて物品に対して作業を行って物品の完成品200を生産する方法であって、搬送ステージ10は、磁力発生部26に供給される電力をそれぞれ独立して遮断可能な作業区画と移動経路区画とを有し、搬送ステージ10は、作業区画を複数有するとともに各作業区画には作業装置90が設けられ、移動経路区画は、作業区画どうしを繋いでおり、作業装置90により、物品に対して順次に作業を行うことによって、完成品200が生産されるようになっており、作業区画毎に、作業の停止要因と、当該作業区画が電力遮断予定区画となるか否かと、の対応付けがなされており、電力遮断予定区から待避区画32へと搬送装置60を待避させた後で、当該電力遮断予定区画への電力供給を遮断する。
【0058】
また、本方法では、移動経路区画34の、作業区画を繋ぐ方向に対して直交する方向における最小寸法が、搬送装置60の移動方向に対して直交する移動経路区画34の幅方向の寸法が、搬送装置60の平面寸法における最短長の2倍超であり、移動経路区画34の一部分が待避区画32である。一部の作業区画(本実施形態の場合、第1作業区画41又は第2作業区画51)の作業が停止し、他の作業区画の作業が継続するとともに、搬送装置60が、作業が停止する作業区画から待避区画32に待避している状態において、待避区画32に退避している搬送装置60とは別の搬送装置60は、待避区画32に待避している搬送装置60を避けつつ移動経路区画34を通って他の作業区画に移動し、他の作業区画での作業は継続する。
【0059】
<第1実施形態の変形例>
次に、
図11及び
図12を用いて、第1実施形態の変形例1、2を説明する。なお、
図11及び
図12において、搬送装置60の移動経路の一例を矢印で示している。また、
図11及び
図12においては、金属球投入装置91、充填装置92、打栓装置93及びキャッピング装置94の図示を省略している。
【0060】
本発明において、第1作業区画41及び第2作業区画51の稼働状況等に応じて、移動経路区画34における完成品取出待機部38を構成するセグメント20を適宜変更することができる。
より詳細には、例えば、
図11に示すように変形例1では、第1移動経路34aの右から3番目のセグメント20を、第2作業区画51に向けて移動する搬送装置60が待機する物品供給待機部36として用いてもよい。これにより、第2作業区画51から完成品取出部37に向けて移動する搬送装置60(第2搬送装置63a~第2搬送装置63h)の移動経路を良好に確保することができる。
【0061】
また、例えば、
図12に示すように変形例2では、第1移動経路34aの右端のセグメント20を、第2作業区画51に向けて移動する搬送装置60が待機する物品供給待機部36として用いてもよい。これにより、第1作業区画41から物品供給部35に向けて移動する搬送装置60(第1搬送装置61a~第1搬送装置61h)の移動経路を良好に確保することができる。
【0062】
〔第2実施形態〕
次に、
図13から
図15を用いて、第2実施形態を説明する。なお、
図13及び
図14(b)において、搬送装置60の移動経路の一例を矢印で示している。また、
図13及び
図14においては、金属球投入装置91、充填装置92、打栓装置93及びキャッピング装置94の図示を省略している。
【0063】
本実施形態の場合、
図13及び
図14に示すように、待避モードにおいて、キャッパ部45bに位置する第1搬送装置61hが前方に移動し第1作業区画41から待避区画32(移動経路区画34)に待避する一方で、金属球投入待機部42aに位置する第1搬送装置61aと、金属球投入部42bに位置する第1搬送装置61bと、充填待機部43aに位置する第1搬送装置61cと、充填部43bに位置する第1搬送装置61dと、打栓待機部44aに位置する第1搬送装置61eと、打栓部44bに位置する第1搬送装置61fと、キャッパ待機部45aに位置する第1搬送装置61gと、がこの順に反時計回りに第1作業区画41から待避区画32(移動経路区画34)に待避する。
このような構成によっても、第1搬送装置61hが完成品200を保持している場合、当該第1搬送装置61hを速やかに完成品取出部37へ移動させることができる。
【0064】
更に、
図15に示すように、本実施形態の場合、制御部80は、各電力遮断部(第1電力遮断部85a~第3電力遮断部85c)に対する動作制御も行う。
より詳細には、搬送システム100は、電力を遮断するトリガ信号を取得する信号取得部と、上記の電力遮断部(第1電力遮断部85a~第3電力遮断部85c)と、を備えている。本実施形態の場合、制御部80が信号取得部としての機能を担う。ただし、搬送システム100は、制御部80とは別に信号取得部を備えていてもよい。例えば、搬送システム100が、作業装置90からのエラー信号を無線通信で取得し制御部80に送信する無線通信部を備える場合、この無線通信部は信号取得部としての機能を担う。
信号取得部(制御部80)がトリガ信号を取得すると、制御部80は、電力遮断予定区画から待避区画32へと搬送装置60を待避させた後に、電力遮断予定区画に対する電力遮断を電力遮断部に実行させる。
ここでいうトリガ信号としては、作業者が操作部84に対して所定の操作を行った場合にその旨を検出した操作部84から出力される操作検出信号、ライトカーテン、レーザースキャナなどのエリアセンサにより人間を検知した場合に出力されるセンサ検知信号、充填装置92等の作業装置90でエラーが発生した場合に出力されるエラー信号等が挙げられる。
【0065】
<第2実施形態の変形例>
次に、
図16から
図18を用いて、第2実施形態の変形例を説明する。なお、
図16から
図18において、搬送装置60の移動経路の一例を矢印で示している。
【0066】
本変形例の場合、搬送システム100を用いて物品の完成品200を生産する方法は、
図16及び
図17に示すように、待避区画32に待避させた搬送装置60を、それぞれ対応する作業区画に優先順位に従って復帰させるのに要する時間が最短となるように、待避区画32において搬送装置60を配置する工程を備える。
このような構成によれば、待避区画32から搬送装置60を待避させる際には、各搬送装置60が最短経路で待避することを最優先としつつ、作業区画における停止要因が解消された後は、複数の搬送装置60を所望の順序ですみやかに作業区画に復帰させることができる。
より詳細には、本方法において工程毎に作業に要する時間は異なる。そこで、待避区画32に待避した複数の搬送装置60のうち、作業に要する時間が最も長い工程の仕掛品を保持する搬送装置60を優先して復帰させる。これにより、作業に要する時間が最も長い工程での作業を優先的に再開させ、作業区画における完成品200の生産の復旧を全体としてより効率的に進めることができる。なお、ここで、「作業に要する時間が最も長い工程」とは、「工程毎での単位時間あたりの処理個数が最も少ないもの」を意味している。
【0067】
本実施形態の場合、充填工程、キャッパ工程、打栓工程、金属球投入工程の順に作業に要する時間が長い。そして、待避区画32において、制御部80は、この順で各工程での作業を再開させることができるように各搬送装置60を配置する。
したがって、
図17及び
図18に示すように、先ず、制御部80は、充填工程の仕掛品を保持する第1搬送装置61c及び第1搬送装置61dをそれぞれ復帰させ、充填工程での作業を優先的に再開させる。より詳細には、待避モードに移行する直前において充填部43bに位置していた第1搬送装置61dを最初に当該充填部43bに復帰させる。続けて、待避モードに移行する直前において充填待機部43aに位置していた第1搬送装置61cを当該充填待機部43aに復帰させる。
次に、
図18に示すように、制御部80は、作業に要する時間が充填工程の次に長いキャッパ工程の仕掛品を保持する第1搬送装置61g及び第1搬送装置61hをそれぞれ復帰させ、キャッパ工程での作業を再開させる。続けて、打栓工程、金属球投入工程の順にそれぞれ対応する搬送装置60を復帰させ、打栓工程及び金属球投入工程での作業もそれぞれこの順に再開させる。
このように、本実施形態によれば、所望の優先順位に従って各工程での作業を効率よく再開できるように、待避区画32に搬送装置60を配置することができる。これにより、作業区画における完成品200の生産の復旧を全体としてより効率的に進めることができる。
なお、充填工程の進捗状況によっては(例えば別の工程で待機している搬送装置60が多い等)、充填工程ではなく、その他の工程(例えば、キャッパ工程)での作業を優先して再開した方が、完成品200の生産の復旧を全体としてより効率的に進めることができる場合がある。その場合は、制御部80は、例に挙げたキャッパ工程での作業を優先して再開できるように搬送装置60を配置する。
また、本発明において、上記のように作業に要する時間が長い工程順に作業を再開させるのではなく、作業に要する時間が最も長い工程での作業を再開させた後に、この工程の前後の工程での作業を続けて再開させるように搬送装置60を配置してもよい。
【0068】
なお、各搬送装置60を配置する際には、
図16等に示すように、作業が継続している作業区画(例えば第2作業区画51)と物品供給部35との間の搬送ルートを確保できるように配置することが好ましい。或いは、作業が継続している作業区画(第2作業区画51)の近傍に物品を搭載した搬送装置60を複数待機させた状態で、物品供給装置95の稼働を停止させ、待避区画32において各搬送装置60を配置することが好ましい。
【0069】
〔第3実施形態〕
次に、
図19から
図22を用いて、第3実施形態を説明する。なお、
図19から
図22において、搬送装置60の移動経路の一例を矢印で示している。また、
図19から
図22において、金属球投入装置91、充填装置92、打栓装置93及びキャッピング装置94の図示を省略している。
【0070】
本実施形態の場合、
図19等に示すように、第1作業区画41は、格子状に配置されている複数(例えば16個)のセグメント20によって構成されている。より詳細には、この格子状に配置されたセグメント20は、Y方向において4行配置されており、各行には、それぞれ4個のセグメント20がX方向に並んで配置されている。
【0071】
本実施形態において、作業区画(第1作業区画41)から待避区画32に搬送装置60を待避する際には、制御部80は、先ず、金属球投入待機部42aに位置する第1搬送装置61aと、金属球投入部42bに位置する第1搬送装置61bと、キャッパ待機部45aに位置する第1搬送装置61gと、キャッパ部45bに位置する第1搬送装置61hと、を待避区画32に待避させる制御を実行する(
図19参照)。
続いて、制御部80は、金属球投入待機部42aに位置する第1搬送装置61aと、金属球投入部42bに位置する第1搬送装置61bと、キャッパ待機部45aに位置する第1搬送装置61gと、キャッパ部45bに位置する第1搬送装置61hと、を待避区画32に待避させる制御を実行する(
図20参照)。
これにより、各搬送装置60(第1搬送装置61a~第1搬送装置61h)を、最短経路で第1作業区画41から待避区画32に待避させることができる。
すべての搬送装置60が待避区画32に待避した状態において、第1搬送装置61c、第1搬送装置61d、第1搬送装置61e及び第1搬送装置61fの各々は、第1搬送装置61a、第1搬送装置61b、第1搬送装置61g及び第1搬送装置61hよりも第1作業区画41側に配置される。
【0072】
また、
図21及び
図22に示すように、第1搬送装置61a~第1搬送装置61hが第1作業区画41に復帰する際には、当該第1搬送装置61a~第1搬送装置61は待避する際とは逆方向に移動する。これにより、各搬送装置60(第1搬送装置61a~第1搬送装置61h)を、最短経路で待避区画32から第1作業区画41に復帰させることができる。
【0073】
<第3実施形態の変形例>
次に、
図23及び
図24を用いて、第3実施形態の変形例を説明する。なお、
図23及び
図24において、搬送装置60の移動経路の一例を矢印で示している。また、
図23及び
図24において、金属球投入装置91、充填装置92、打栓装置93及びキャッピング装置94の図示を省略している。
【0074】
図23及び
図24に示すように、本変形例の場合、待避区画32に待避した第1搬送装置61a~第1搬送装置61hは、千鳥状に配置された状態を維持しつつ、第1作業区画41の中央部にまとまって復帰する。そして、第1搬送装置61a~第1搬送装置61hは、第1作業区画41の中央部から、待避する直前の各々の位置にそれぞれ最短経路で復帰する。
このような構成によっても、搬送装置60の各々を、待避する直前の位置にスムーズに復帰させ、作業区画での作業を速やかに再開することができる。
【0075】
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成される限りにおける種々の変形、改良等の態様も含む。
【0076】
例えば、本発明において、搬送システム100における移動経路区画34、第1作業区画41及び第2作業区画51の配置は上記の例に限定されず、第1作業区画41及び第2作業区画51の双方が移動経路区画34の左端部側(又は右端部側)に位置していてもよい。また、例えば、前後方向において、後から第1作業区画41、移動経路区画34、第2作業区画51の順に配置されていてもよい。
【0077】
また、本発明において、電力遮断予定区画、待避区画32、作業区画及び移動経路区画34を構成するセグメント20の数や配列は上記の例に限定されず、生産する物品の大きさや工程の数に応じて適宜設定することができる。
【0078】
また、上記においては、一部の作業区画が電力遮断予定区画となり、移動経路区画34が待避区画32となる例を説明したが、本発明はこの例に限定されず、すべての作業区画が電力遮断予定区画となってもよい。また、一部の作業区画が電力遮断予定区画となり、他の作業区画が待避区画32となってもよい。
また、本発明において、移動経路区画34が電力遮断予定区画となり、作業区画が待避区画32となってもよい。また、移動経路区画34の一部領域が電力遮断予定区画となり、その他の領域が待避区画32となってもよい。
【0079】
また、本発明において、搬送ステージ10は、複数のセグメント20に分割せず1枚のパネルによって構成されており、当該1枚のパネルにおいて電力をそれぞれ独立して遮断可能な電力遮断予定区画及び待避区画32を設けてもよい。
【符号の説明】
【0080】
10 搬送ステージ
20 セグメント
26 磁力発生部
32 待避区画
34 移動経路区画
41 第1作業区画(作業区画)
42a 金属球投入待機部
42b 金属球投入部
43a 充填待機部
43b 充填部
44a 打栓待機部
44b 打栓部
45a キャッパ待機部
45b キャッパ部
51 第2作業区画(作業区画)
52a 金属球投入待機部
52b 金属球投入部
53a 充填待機部
53b 充填部
54a 打栓待機部
54b 打栓部
55a キャッパ待機部
55b キャッパ部
60 搬送装置
70a、70b、70c、70d、70e 磁石アレイ(それぞれ複数の永久磁石を含む)
75 配置領域
80 制御部
82 記憶部
90 作業装置
91 金属球投入装置
92 充填装置
93 打栓装置
94 キャッピング装置
95 物品供給装置
96 完成品取出装置
100 搬送システム
200 完成品
210 容器本体
220 吐出部
230 収容部
240 キャップ部
251 内容物
252 金属球