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特開2024-108584制御方法、プログラム、制御装置およびシステム
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  • 特開-制御方法、プログラム、制御装置およびシステム 図1
  • 特開-制御方法、プログラム、制御装置およびシステム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108584
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】制御方法、プログラム、制御装置およびシステム
(51)【国際特許分類】
   G05D 23/19 20060101AFI20240805BHJP
【FI】
G05D23/19 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013022
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(74)【代理人】
【識別番号】100172236
【弁理士】
【氏名又は名称】岩木 宣憲
(72)【発明者】
【氏名】津端 創
【テーマコード(参考)】
5H323
【Fターム(参考)】
5H323BB12
5H323CA01
5H323CA08
5H323CB22
5H323CB25
5H323CB32
5H323CB33
5H323CB42
5H323CB43
5H323CB44
5H323CB45
5H323DA01
5H323DA04
5H323DB11
5H323DB13
5H323DB15
(57)【要約】
【課題】無駄なエネルギー消費を抑制可能なシステムの制御方法を提供すること。
【解決手段】それぞれ異なる対象を加熱可能な複数の加熱装置と、複数の加熱装置により加熱される複数の対象を冷却可能な1つの冷却装置とを有する少なくとも1つの加熱冷却機構を含むシステムの制御方法であって、複数の対象の各々における冷却装置の操作量を取得し、取得された複数の冷却操作量のうち、最大の冷却操作量である最大冷却操作量を冷却装置に出力し、出力された最大冷却操作量で冷却装置を制御する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ異なる対象を加熱可能な複数の加熱装置と、複数の前記加熱装置により加熱される複数の前記対象を冷却可能な1つの冷却装置とを有する加熱冷却機構を少なくとも1つ含むシステムの制御方法であって、
複数の前記対象の各々における前記冷却装置の操作量を取得し、
取得された複数の前記冷却装置の操作量のうち、最大の前記冷却装置の操作量である最大冷却操作量を前記冷却装置に出力し、
出力された前記最大冷却操作量で前記冷却装置を制御する、制御方法。
【請求項2】
複数の前記対象の各々において、
出力された前記最大冷却操作量と取得された前記冷却装置の操作量とに基づいて、前記最大冷却操作量の出力による冷却を取得された前記冷却装置の操作量の出力による冷却にするために必要な前記加熱装置の操作量である第1加熱操作量を算出し、
算出された前記第1加熱操作量を前記加熱装置に出力する、請求項1に記載の制御方法。
【請求項3】
複数の前記対象の各々における前記加熱装置の操作量である第2加熱操作量を取得し、
出力された前記最大冷却操作量と取得された前記冷却装置の操作量との差分に基づいて算出される操作量を第3加熱操作量とすると、前記第2加熱操作量に前記第3加熱操作量を加算した操作量を前記第1加熱操作量として算出する、請求項2に記載の制御方法。
【請求項4】
前記第1加熱操作量が前記加熱装置の操作量の上限値を超える場合、前記第2加熱操作量への前記第3加熱操作量の加算を停止する、請求項3に記載の制御方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項6】
それぞれ異なる対象を加熱可能な複数の加熱装置と、複数の前記加熱装置により加熱される複数の前記対象を冷却可能な1つの冷却装置とを有する加熱冷却機構を少なくとも1つ含むシステムを制御可能な制御装置であって、
複数の前記対象の各々における前記冷却装置の操作量を取得可能な取得部と、
取得された複数の前記冷却装置の操作量のうち、最大の前記冷却装置の操作量である最大冷却操作量を前記冷却装置に出力して、前記冷却装置を制御可能な冷却制御部と
を備える、制御装置。
【請求項7】
出力された前記最大冷却操作量と取得された前記冷却装置の操作量とに基づいて、複数の前記対象の各々において前記最大冷却操作量の出力による冷却を取得された前記冷却装置の操作量の出力による冷却にするために必要な前記加熱装置の操作量である第1加熱操作量を算出可能な算出部と、
複数の前記対象の各々において算出された前記第1加熱操作量を前記加熱装置に出力して、前記加熱装置を制御可能な加熱制御部と
を備える、請求項6に記載の制御装置。
【請求項8】
前記取得部は、
複数の前記対象の各々における前記加熱装置の操作量である第2加熱操作量を取得可能に構成され、
前記算出部は、
出力された前記最大冷却操作量と取得された前記冷却装置の操作量との差分に基づいて第3加熱操作量を算出し、
前記第2加熱操作量に前記第3加熱操作量を加えた操作量を前記第1加熱操作量として算出するように構成されている、請求項7に記載の制御装置。
【請求項9】
前記算出部は、
前記第1加熱操作量が前記加熱装置の操作量の上限値を超える場合、前記第2加熱操作量への前記第3加熱操作量の加算を停止するように構成されている、請求項8に記載の制御装置。
【請求項10】
それぞれ異なる対象を加熱可能な複数の加熱装置と、複数の前記加熱装置により加熱される複数の前記対象を冷却可能な1つの冷却装置とを有する少なくとも1つの加熱冷却機構と、
請求項6~9のいずれかに記載の制御装置と
を備える、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御方法、プログラム、制御装置およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、温度制御部位を加熱する加熱手段と、液体からなる冷媒を循環させて温度制御部位を冷却する冷却手段とを備える温度制御システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-187758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、特許文献1の温度制御システムにおいて、複数の加熱手段を1つの冷却手段で冷却するように構成した場合、2つの加熱手段の制御にあわせて1つの冷却手段を制御することは困難であるため、常に冷媒を循環させることが考えられる。この場合、例えば、冷却の必要がない温度制御部位が冷却されると、加熱手段により冷却された温度制御部位を加熱しなければならず、無駄にエネルギーを使用するおそれがある。
【0005】
本開示は、無駄なエネルギー消費を抑制可能なシステムの制御方法、プログラム、制御装置およびシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様の制御方法は、
それぞれ異なる対象を加熱可能な複数の加熱装置と、複数の前記加熱装置により加熱される複数の前記対象を冷却可能な1つの冷却装置とを有する加熱冷却機構を少なくとも1つ含むシステムの制御方法であって、
複数の前記対象の各々における前記冷却装置の操作量を取得し、
取得された複数の前記冷却装置の操作量のうち、最大の前記冷却装置の操作量である最大冷却操作量を前記冷却装置に出力し、
出力された前記最大冷却操作量で前記冷却装置を制御する。
【0007】
本開示の一態様のプログラムは、
前記態様の制御方法をコンピュータに実行させる。
【0008】
本開示の一態様の制御装置は、
それぞれ異なる対象を加熱可能な複数の加熱装置と、複数の前記加熱装置により加熱される複数の前記対象を冷却可能な1つの冷却装置とを有する加熱冷却機構を少なくとも1つ含むシステムを制御可能な制御装置であって、
複数の前記対象の各々における前記冷却装置の操作量を取得可能な取得部と、
取得された複数の前記冷却装置の操作量のうち、最大の前記冷却装置の操作量である最大冷却操作量を前記冷却装置に出力して、前記冷却装置を制御可能な冷却制御部と
を備える。
【0009】
本開示の一態様のシステムは、
それぞれ異なる対象を加熱可能な複数の加熱装置と、複数の前記加熱装置により加熱される複数の前記対象を冷却可能な1つの冷却装置とを有する少なくとも1つの加熱冷却機構と、
前記態様の制御装置と
を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、無駄なエネルギー消費を抑制可能なシステムの制御方法、プログラム、制御装置およびシステムを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の一実施形態のシステムの一部を示す平面図。
図2図1のシステムの構成を示すブロック図。
図3】第3加熱操作量の算出方法の一例を説明するための第1のグラフ。
図4】第3加熱操作量の算出方法の一例を説明するための第2のグラフ。
図5】第3加熱操作量の算出方法の一例を説明するための第3のグラフ。
図6】第3加熱操作量の算出方法の一例を説明するための第4のグラフ。
図7図1のシステムの制御方法の一例を説明するためのフローチャート。
図8図1のシステムの変形例を示す平面図。
図9図8のシステムの構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の一例を添付図面に従って説明する。以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、本開示の適用物、および、本開示の用途を制限することを意図するものではない。添付図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは必ずしも合致していない。
【0013】
本開示の一実施形態の制御装置1は、それぞれ異なる対象を加熱可能な複数の加熱装置と、複数の加熱装置により加熱される複数の対象を冷却可能な1つの冷却装置とを有する加熱冷却機構を少なくとも1つ含むシステム100を制御可能に構成されている。
【0014】
図1に、システム100の一例を示す。図1のシステム100は、1つの加熱冷却機構101を含む。加熱冷却機構101は、7つの加熱装置(第1加熱装置111、第2加熱装置112、第3加熱装置113、第4加熱装置114、第5加熱装置115、第6加熱装置116、第7加熱装置117)と、1つの冷却装置120とを有している。
【0015】
第1加熱装置111~第7加熱装置117は、例えば、ヒータで構成されている。第1加熱装置111は、第1対象131を加熱可能に構成されている。第1対象131は、一例として、プローバまたはCVD装置の略円形のステージにおける略中央に位置する部分である。第2加熱装置112~第7加熱装置117は、第2対象132、第3対象133、第4対象134、第5対象135、第6対象136および第7対象137をそれぞれ加熱可能に構成されている。第2対象132~第7対象137は、第1対象131の径方向の外側に隣接しかつ周方向に相互に隣接するステージの部分である。
【0016】
冷却装置120は、例えば、冷媒を冷却可能な熱交換器と、第1対象131~第7対象137の全てを通るように構成された配管と、配管を介して冷媒を循環させるためのポンプとを含む。
【0017】
制御装置1は、例えば、図2に示すように、プロセッサ11、記憶部12および通信部13を含む。プロセッサ11は、CPU、MPU、GPU、DSP、FPGA、ASIC等を含む。記憶部12は、例えば、内部記録媒体または外部記録媒体で構成されている。内部記録媒体は、不揮発メモリ等を含む。外部記録媒体は、ハードディスク(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)、光ディスク装置等を含む。通信部13は、例えば、サーバおよびセンサ等の外部装置との間でデータの送受信を行うための通信回路または通信モジュールを含む。
【0018】
本実施形態では、システム100は、7つの温度センサ(第1温度センサ141、第2温度センサ142、第3温度センサ143、第4温度センサ144、第5温度センサ145、第6温度センサ146および第7温度センサ147)と、入力装置150とを含む。制御装置1は、第1温度センサ141~第7温度センサ147から出力されるデータと、入力装置150から出力されるデータとに基づいて、第1加熱装置111~第7加熱装置117および冷却装置120を制御可能に構成されている。第1温度センサ141~第7温度センサ147は、それぞれ第1対象131~第7対象137の温度を検出可能に構成されている。入力装置150は、例えば、第1対象131~第7対象137の目標温度を入力可能に構成されている。第1温度センサ141~第7温度センサ147から出力された温度情報を含むデータと、入力装置150から出力された目標温度を含むデータとは、通信部13を介して制御装置1に入力され、記憶部12に記憶される。
【0019】
制御装置1は、図2に示すように、取得部21、冷却制御部22、算出部23および加熱制御部24を含む。冷却制御部22、算出部23および加熱制御部24は、例えば、記憶部12に記憶されている所定のプログラムをプロセッサ11が実行することにより実現される。
【0020】
取得部21は、例えば記憶部12に記憶されているデータから、次に示す情報を取得可能に構成されている。
・複数の対象の各々における冷却装置120の操作量(以下、冷却操作量という。)。各対象の冷却操作量は、例えば、第1温度センサ141~第7温度センサ147で検出された第1対象131~第7対象137の温度に基づいて、制御装置1または外部装置で算出される。各対象の冷却操作量が外部装置で算出された場合、例えば、各対象の冷却操作量を含むデータは、通信部13を介して制御装置1に入力され、記憶部12に記憶される。各対象の冷却操作量は、例えば、所定のサンプリング時間毎に取得される。
・取得された複数の冷却操作量のうち、最大の冷却操作量である「最大冷却操作量」が出力された場合に、複数の対象の各々における加熱装置の操作量である「第2加熱操作量」。
【0021】
冷却制御部22は、取得された複数の冷却操作量のうち、最大の冷却操作量である最大冷却操作量を冷却装置120に出力して、最大冷却操作量で冷却装置を制御可能に構成されている。
【0022】
算出部23は、出力された最大冷却操作量と取得された冷却操作量とに基づいて、第1加熱装置111~第7加熱装置117の各々に対して、対応する第1加熱操作量を算出可能に構成されている。第1加熱操作量は、複数の対象(本実施形態では、第1対象131~第7対象137)の各々において最大冷却操作量の出力による冷却を取得された冷却装置の操作量の出力による冷却にするために必要な加熱装置の操作量である。
【0023】
例えば、算出部23は、第2加熱操作量に第3加熱操作量を加えた操作量を第1加熱操作量として算出する。第2加熱操作量は、第1対象131~第7対象137の各々における第1加熱装置111~第7加熱装置117の操作量である。第2加熱操作量は、例えば、第1操作量を出力する以前の任意のタイミングで取得される。第3加熱操作量は、出力された最大冷却操作量と取得された冷却操作量との差分に基づいて算出される操作量である。第3加熱操作量の加算は、例えば、サンプリング時間毎に行われる。
【0024】
第3加熱操作量は、例えば、出力された最大冷却操作量と取得された冷却操作量との差分に係数をかけて、算出される。係数としては、例えば、下記に示す加熱能力および冷却能力の比が用いられる。図3図6において、「n」は、対象の序数を示す。
・加熱の最大昇温傾きRhn=C1の傾き/B1と、冷却の最大降温傾きRcn=C2の傾き/B2との比(Rhn/Rcn)(図3および図4参照)。
・加熱のシステムゲインKhn=A1/B1と、冷却のシステムゲインKcn=A2/B2との比(Khn/Kcn)(図5および図6参照)。
【0025】
図3および図4には、加熱操作量をステップ状に変化させたときの温度変化を表す波形が示されている。この波形はステップ応答波形と呼ばれ、この応答波形から温度制御対象の特性を調べることができる。例えば、加熱の最大傾きRhn(=C1の傾き/B1)が示す主要な特性は、ステップ状の加熱操作量を対象に印加した際に、加熱操作量の何倍の速さで昇温するかを表す加熱時の応答速度である。加熱のシステムゲインKhn(=A1/B1)が示す主要な特性は、ステップ状の加熱操作量を対象に印加した際に、加熱操作量の何倍の温度まで上昇するかを表す加熱能力の高さである。図5および図6には、冷却操作量をステップ状に変化させたときの温度変化を表す波形が示されている。図5および図6の波形についても、図3および図4の波形と同様のことが言える。
【0026】
第3加熱操作量は、例えば、モデルを用いて算出することもできる。モデルには、例えば、数式モデルと、機械学習モデルとが含まれる。
【0027】
数式モデルを用いて第3加熱操作量を算出する場合の一例を下記に示す。下記の数式モデルを用いて、PVheatとPVcoolとが一致するようにMVheatを算出し、第3加熱操作量を算出する。下記の数式モデルにおいて、「MVcoolMAX-MVcool」が、「出力された最大冷却操作量と取得された冷却操作量との差分」であり、「PVheat」が、「第3加熱操作量」である。下記の数式モデルにおいて、Kは、加熱のシステムゲインであり、印加された加熱操作量を何倍に増幅するかを表す加熱能力の高さを示している。T1h、T2h、は加熱時の応答速度を多項式で表現した際の係数を示している。Kは、冷却のシステムゲインであり、印加された冷却操作量を何倍に増幅するかを表す冷却能力の高さを示している。T1c、T2c、は冷却時の応答速度を多項式で表現した際の係数を示している。
・加熱の数式モデル
・冷却の数式モデル
【0028】
機械学習モデルを用いて第3加熱操作量を算出する場合の一例を下記に示す。下記の機械学習モデルを用いて、PVheatとPVcoolとが一致するようにMVheatを算出し、第3加熱操作量を算出する。下記の数式モデルにおいて、「MVcoolMAX-MVcool」が、「出力された最大冷却操作量と取得された冷却操作量との差分」であり、「PVheat」が、「第3加熱操作量」である。機械学習モデルは、例えば、ニューラルネットワーク、または、ランダムフォレストを含む。
・加熱の機械学習モデル
・冷却の機械学習モデル
【0029】
算出部23は、第1加熱操作量が加熱装置の操作量の上限値(例えば、100%)を超える場合(言い換えると、第1加熱操作量が飽和する場合)、第2加熱操作量への第3加熱操作量の加算を停止する。これは、例えば、制御装置1がPID制御により第1加熱装置111~第7加熱装置117を制御している場合、PID演算における偏差積分の積分を停止することで実行される。第1加熱操作量が加熱装置の操作量の上限値を超えた場合、各加熱装置に出力される第1加熱操作量には、例えば、加熱装置の操作量の上限値を第1加熱操作量とする飽和処理が施される。
【0030】
加熱制御部24は、算出された第1加熱操作量を加熱装置に出力して、第1加熱操作量で加熱装置を制御可能に構成されている。
【0031】
図7を参照して、システム100の制御方法の一例を説明する。ここでは、第1加熱装置111~第7加熱装置117および冷却装置120を制御して、第1対象131~第7対象137の温度を設定された目標温度で維持する場合について説明する。図7に示す制御方法は、一例として、制御装置1のプロセッサ11が記憶部12に記憶されている所定のプログラムを実行することで実施される。
【0032】
システム100の制御が開始され、第1対象131~第7対象137の温度が設定された目標温度を超えると、制御装置1は、第1対象131~第7対象137の各々における冷却操作量を取得する(ステップS1)。
【0033】
各対象の冷却操作量が取得されると、冷却制御部22は、取得された複数の冷却操作量のうち、最大の冷却操作量である最大冷却操作量を冷却装置120に出力し、最大冷却操作量で冷却装置120を制御する(ステップS3)。
【0034】
冷却装置120が最大冷却操作量で制御されると、算出部23は、出力された最大冷却操作量と取得された冷却操作量とに基づいて、第1加熱操作量を算出する(ステップS3)。第1加熱操作量は、第1加熱装置111~第7加熱装置117の各々に対して算出される。
【0035】
第1加熱操作量が算出されると、加熱制御部24は、第1加熱装置111~第7加熱装置117の各々に対して、対応する第1加熱操作量を出力して、第1加熱操作量で第1加熱装置111~第7加熱装置117を制御する(ステップS4)。第1加熱操作量での第1加熱装置111~第7加熱装置117の制御は、例えば、第1対象131~第7対象137の温度が設定された目標温度に到達するまで実行される。
【0036】
第1加熱装置111~第7加熱装置117が制御されると、制御装置1は、システム100の制御を終了するか否かを判定する(ステップS5)。例えば、入力装置150から終了信号が出力された場合、制御装置1は、システム100の制御を終了すると判定する。システム100の制御を終了すると判定された場合、システム100の制御方法が終了する。システム100の制御を終了すると判定されなかった場合、ステップS1に戻り、第1対象131~第7対象137の各々における冷却操作量が取得される。
【0037】
本開示の制御方法によれば、次のような効果を発揮できる。
【0038】
本開示の制御方法は、それぞれ異なる対象を加熱可能な複数の加熱装置と、複数の加熱装置により加熱される複数の対象を冷却可能な1つの冷却装置とを有する少なくとも1つの加熱冷却機構を含むシステム100の制御方法であって、以下の構成を備える。このような構成により、必要なときに冷却装置を制御できるので、無駄なエネルギー消費を抑制できる。
・複数の対象の各々における冷却装置の操作量を取得する。
・取得された複数の冷却操作量のうち、最大の冷却操作量である最大冷却操作量を冷却装置に出力する。
・出力された最大冷却操作量で冷却装置を制御する。
【0039】
最大冷却操作量で冷却装置が操作されると、冷却操作量が最大となった対象以外の対象が冷却され過ぎるおそれがある。本開示の制御方法は、以下の構成を備えるので、最大冷却操作量で冷却装置が操作されたことによる各対象の温度低下をキャンセルすることができる。
・複数の対象の各々において、出力された最大冷却操作量と取得された冷却操作量とに基づいて、最大冷却操作量の出力による冷却を取得された冷却装置の操作量の出力による冷却にするために必要な加熱装置の操作量である第1加熱操作量を算出する。
・複数の対象の各々において、算出された第1加熱操作量を加熱装置に出力する。
【0040】
本開示の制御方法は、以下の構成を備える。このような構成により、最大冷却操作量で冷却装置が操作されたことによる各対象の温度低下をより確実にキャンセルすることができる。
・複数の対象の各々における加熱装置の操作量である第2加熱操作量を取得する。
・出力された最大冷却操作量と取得された冷却操作量との差分に基づいて算出される操作量を第3加熱操作量とすると、第2加熱操作量に第3加熱操作量を加算した操作量を第1加熱操作量として算出する。
【0041】
本開示の制御方法は、以下の構成を備える。このような構成により、無駄な処理の実行を防止できる。
・第1加熱操作量が加熱装置の操作量の上限値を超える場合、第2加熱操作量への第3加熱操作量の加算を停止する。
【0042】
本開示の制御方法は、コンピュータに実行させることができる。本開示には、本開示の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラム、および、本開示の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを記憶するコンピュータ可読性の記憶媒体が含まれる。
【0043】
本開示の制御装置1によれば、次のような効果を発揮できる。
【0044】
制御装置1は、それぞれ異なる対象を加熱可能な複数の加熱装置と、複数の加熱装置により加熱される複数の対象を冷却可能な1つの冷却装置とを有する少なくとも1つの加熱冷却機構を含むシステム100を制御可能な制御装置1であって、取得部21と、冷却制御部22とを備える。取得部21は、複数の対象の各々における冷却操作量を取得可能に構成されている。冷却制御部22は、取得された複数の冷却操作量のうち、最大の冷却操作量である最大冷却操作量を冷却装置に出力して、冷却装置を制御可能に構成されている。このような構成により、必要なときに冷却装置を制御できるので、無駄なエネルギー消費を抑制できる。
【0045】
制御装置1が、算出部23と、加熱制御部24とを備える。算出部23は、出力された最大冷却操作量と取得された冷却操作量とに基づいて、複数の対象の各々において最大冷却操作量の出力による冷却を取得された前記冷却装置の操作量の出力による冷却にするために必要な加熱装置の操作量である第1加熱操作量を算出可能に構成されている。加熱制御部24は、算出された第1加熱操作量を加熱装置に出力して、加熱装置を制御可能に構成されている。このような構成により、最大冷却操作量で冷却装置が操作されたことによる各対象の温度低下をキャンセルすることができる。
【0046】
取得部21が、複数の対象の各々における加熱装置の操作量である第2加熱操作量を取得可能に構成されている。算出部23は、出力された最大冷却操作量と取得された冷却操作量との差分に基づいて第3加熱操作量を算出し、第2加熱操作量に第3加熱操作量を加えた操作量を第1加熱操作量として算出するように構成されている。このような構成により、最大冷却操作量で冷却装置が操作されたことによる各対象の温度低下をより確実にキャンセルすることができる。
【0047】
算出部23は、第1加熱操作量が加熱装置の操作量の上限値を超える場合、第2加熱操作量への第3加熱操作量の加算を停止するように構成されている。このような構成により、無駄な処理の実行を防止できる。
【0048】
本開示のシステム100は、それぞれ異なる対象を加熱可能な複数の加熱装置と、複数の加熱装置により加熱される複数の対象を冷却可能な1つの冷却装置と、制御装置1とを備える。このような構成により、必要なときに冷却装置を制御できるので、無駄なエネルギー消費を抑制できるシステム100を実現できる。
【0049】
本開示の制御方法、制御装置1およびシステム100は、次のように構成することができる。
【0050】
図7に示すフローチャートにおいて、ステップS3およびステップS4は省略することができる。
【0051】
制御装置1を構成する各部は、その全てが1つの機器に設けられていてもよいし、複数の機器に分割して設けられていてもよい。例えば、温調器が、取得部21、冷却制御部22、算出部23および加熱制御部24の全てを備えていてもよいし、温調器が、取得部21、冷却制御部22および算出部23を備え、PLCが加熱制御部24を備えていてもよい。
【0052】
システム100は、1つの加熱冷却機構101を含む場合に限らない。例えば、図8および図9に示すように、システム100は、2つの加熱冷却機構(第1加熱冷却機構102および第2加熱冷却機構103)を含んでいてもよい。第1加熱冷却機構102は、第2加熱装置112、第3加熱装置113および第7加熱装置117と、第1冷却装置121とを有する。第2加熱冷却機構103は、第4加熱装置114、第5加熱装置115および第6加熱装置116と、第2冷却装置122とを有する。1つの加熱冷却機構に含まれる加熱装置は、複数であればよい。
【0053】
加熱装置は、ヒータに限らず、システム100の設計等に応じて、対象を加熱可能な任意の冷却装置を採用できる。冷却装置も同様に、熱交換器、配管およびポンプで構成されている場合に限らず、システム100の設計等に応じて、複数の対象を冷却可能な任意の冷却装置を採用できる。
【0054】
システム100は、各対象の温度を検出可能な第1温度センサ141~第7温度センサ147を含む場合に限らない。例えば、システム100は、複数または全ての対象の温度を検出可能な1以上の任意の数の温度センサを含んでいてもよい。
【0055】
以上、図面を参照して本開示における種々の実施形態を詳細に説明したが、最後に、本開示の種々の態様について説明する。なお、以下の説明では、一例として、参照符号も添えて記載する。
【0056】
本開示の第1態様の制御方法は、
それぞれ異なる対象を加熱可能な複数の加熱装置と、複数の前記加熱装置により加熱される複数の前記対象を冷却可能な1つの冷却装置とを有する少なくとも1つの加熱冷却機構を含むシステム100の制御方法であって、
複数の前記対象の各々における前記冷却装置の操作量を取得し、
取得された複数の前記冷却装置の操作量のうち、最大の前記冷却装置の操作量である最大冷却操作量を前記冷却装置に出力し、
出力された前記最大冷却操作量で前記冷却装置を制御する。
【0057】
本開示の第2態様の制御方法は、第1態様の制御方法において、
複数の前記対象の各々において、
出力された前記最大冷却操作量と取得された前記冷却装置の操作量とに基づいて、前記最大冷却操作量の出力による冷却を取得された前記冷却装置の操作量の出力による冷却にするために必要な前記加熱装置の操作量である第1加熱操作量を算出し、
算出された前記第1加熱操作量を前記加熱装置に出力する。
【0058】
本開示の第3態様の制御方法は、第2態様の制御方法において、
複数の前記対象の各々における前記加熱装置の操作量である第2加熱操作量を取得し、
出力された前記最大冷却操作量と取得された前記冷却装置の操作量との差分に基づいて算出される操作量を第3加熱操作量とすると、前記第2加熱操作量に前記第3加熱操作量を加算した操作量を前記第1加熱操作量として算出する。
【0059】
本開示の第4態様の制御方法は、第3態様の制御方法において、
前記第1加熱操作量が前記加熱装置の操作量の上限値を超える場合、前記第2加熱操作量への前記第3加熱操作量の加算を停止する。
【0060】
本開示の第5態様のプログラムは、
第1態様~第4態様のいずれかに記載の制御方法をコンピュータに実行させる。
【0061】
本開示の第6態様の制御装置1は、
それぞれ異なる対象を加熱可能な複数の加熱装置と、複数の前記加熱装置により加熱される複数の前記対象を冷却可能な1つの冷却装置とを有する少なくとも1つの加熱冷却機構を含むシステム100を制御可能な制御装置であって、
複数の前記対象の各々における前記冷却装置の操作量を取得可能な取得部21と、
取得された複数の前記冷却装置の操作量のうち、最大の前記冷却装置の操作量である最大冷却操作量を前記冷却装置に出力して、前記冷却装置を制御可能な冷却制御部22と
を備える。
【0062】
本開示の第7態様の制御装置1は、第6態様の制御装置1において、
出力された前記最大冷却操作量と取得された前記冷却装置の操作量とに基づいて、複数の前記対象の各々において前記最大冷却操作量の出力による冷却を取得された前記冷却装置の操作量の出力による冷却にするために必要な前記加熱装置の操作量である第1加熱操作量を算出可能な算出部23と、
複数の前記対象の各々において算出された前記第1加熱操作量を前記加熱装置に出力して、前記加熱装置を制御可能な加熱制御部24と
を備える。
【0063】
本開示の第8態様の制御装置1は、第7態様の制御装置1において、
前記取得部21は、
複数の前記対象の各々における前記加熱装置の操作量である第2加熱操作量を取得可能に構成され、
前記算出部23は、
出力された前記最大冷却操作量と取得された前記冷却装置の操作量との差分に基づいて第3加熱操作量を算出し、
前記第2加熱操作量に前記第3加熱操作量を加えた操作量を前記第1加熱操作量として算出するように構成されている。
【0064】
本開示の第9態様の制御装置1は、第8態様の制御装置1において、
前記算出部23は、
前記第1加熱操作量が前記加熱装置の操作量の上限値を超える場合、前記第2加熱操作量への前記第3加熱操作量の加算を停止するように構成されている。
【0065】
本開示の第10態様のシステム100は、
それぞれ異なる対象を加熱可能な複数の加熱装置と、複数の前記加熱装置により加熱される複数の前記対象を冷却可能な1つの冷却装置とを有する少なくとも1つの加熱冷却機構と、
第6態様~第9態様のいずれかに記載の制御装置1と
を備える。
【0066】
前記様々な実施形態または変形例のうちの任意の実施形態または変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。また、実施形態同士の組み合わせまたは実施例同士の組み合わせまたは実施形態と実施例との組み合わせが可能であると共に、異なる実施形態または実施例の中の特徴同士の組み合わせも可能である。
【0067】
本開示は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本開示の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本開示は、例えば、プローバまたはCVD装置に適用できる。
【符号の説明】
【0069】
1 制御装置
11 プロセッサ
12 記憶部
13 通信部
21 取得部
22 冷却制御部
23 算出部
24 加熱制御部
100 システム
101 加熱冷却機構
102 第1加熱冷却機構
103 第2加熱冷却機構
111 第1加熱装置
112 第2加熱装置
113 第3加熱装置
114 第4加熱装置
115 第5加熱装置
116 第6加熱装置
117 第7加熱装置
120 冷却装置
121 第1冷却装置
122 第2冷却装置
131 第1対象
132 第2対象
133 第3対象
134 第4対象
135 第5対象
136 第6対象
137 第7対象
141 第1温度センサ
142 第2温度センサ
143 第3温度センサ
144 第4温度センサ
145 第5温度センサ
146 第6温度センサ
147 第7温度センサ
150 入力装置
図1
図2
図3
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図9