(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108593
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】移動装置、移動装置の制御装置、移動装置の制御方法、移動システム、および移動型作業ロボット
(51)【国際特許分類】
G05D 1/43 20240101AFI20240805BHJP
【FI】
G05D1/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013033
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000236160
【氏名又は名称】株式会社テクノ菱和
(71)【出願人】
【識別番号】502181595
【氏名又は名称】株式会社ゼネテック
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】滝口 陽介
(72)【発明者】
【氏名】唐木 千岳
(72)【発明者】
【氏名】菅田 大助
(72)【発明者】
【氏名】武石 義人
(72)【発明者】
【氏名】松本 光弘
(72)【発明者】
【氏名】山許 修一
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA01
5H301BB10
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301FF05
5H301FF11
5H301GG08
5H301GG09
5H301GG10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】移動装置の使用者が容易に走行ルートの設定を行うことができる移動装置、および移動型作業ロボットを提供する。
【解決手段】移動装置の制御部20は、マップPを作成するマップ生成部22と、マップPを記憶するマップ記憶部21aと、撮像画像からマーカMを検出するマーカ検出部24aと、マップPにおけるマーカMの座標を抽出するマーカ座標抽出部24eと、移動装置の現在位置から前記マーカの座標に至る走行経路を演算する走行経路演算部25と、走行部を駆動する駆動条件を計算する駆動条件演算部26と、マップPを消去するマップ消去部23とを含み、マップ消去部23は、移動装置がマーカMに到達した後に、マップ記憶部21aに記憶されているマップPを消去し、マップPが消去された後に、マップ生成部22が、移動装置の現在位置を含む新たなマップPを作成する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を撮像する撮像部と、装置本体を移動させる走行部と、動作開始ボタンを有する移動装置であって、
前記移動装置の制御部は、
前記移動装置の現在位置を含む、所定の範囲のマップを作成するマップ生成部と、
前記マップを記憶するマップ記憶部と、
前記撮像部が撮像した撮像画像から、マーカを検出するマーカ検出部と、
前記マップにおける前記マーカの座標を抽出するマーカ座標抽出部と、
前記マップにおける前記移動装置の現在位置から前記マーカの座標に至る走行経路を演算する走行経路演算部と、
前記走行経路演算部が演算した走行経路に基づいて、前記走行部を駆動する駆動条件を計算する駆動条件演算部と、
前記マップ記憶部に記憶されている前記マップを消去するマップ消去部と、
を含み、
前記マップ消去部は、前記移動装置が前記マーカに到達した後に、前記マップ記憶部に記憶されている前記マップを消去し、
前記マップが消去された後に、前記マップ生成部が、前記移動装置の現在位置を含む新たな前記マップを作成する移動装置。
【請求項2】
前記移動装置の前記制御部は、
前記マーカに含まれる識別図形と識別情報を関連付けて記憶するマーカ情報記憶部と、
前記識別図形を抽出する識別図形抽出部と、
前記マーカ情報記憶部に記憶されている前記識別図形と前記識別情報に基づいて、前記識別図形抽出部が抽出した前記識別図形が表す前記識別情報を判断する識別情報判断部と、をさらに含み、
前記マーカ情報記憶部には、前記識別図形と前記識別情報に関連付けて、前記マーカを探索していく順序に関する順序情報が記憶されている、請求項1記載の移動装置。
【請求項3】
前記識別情報における前記移動装置の走行動作を記憶する走行動作記憶部をさらに含み、
前記駆動条件演算部は、前記走行動作に応じて、前記移動装置の前記駆動条件を計算する請求項2記載の移動装置。
【請求項4】
前記移動装置は、前記マーカを探索するための探索条件を記憶する探索条件記憶部をさらに含み、
前記探索条件は、前記撮像部の撮像範囲を広げるような前記移動装置の移動条件であり、
前記駆動条件演算部は、前記動作開始ボタンが押下されて前記移動装置の動作が開始したときに、前記探索条件に基づいて、前記移動装置の前記駆動条件を計算する請求項1又は2記載の移動装置。
【請求項5】
前記移動装置は、前記マーカを再度探索するための再探索条件を記憶する再探索条件記憶部をさらに含み、
前記再探索条件は、前記移動装置を一時停止させる条件を含み、
前記駆動条件演算部は、前記探索条件に基づいた探索において前記マーカが検出されなかった場合に、前記再探索条件に基づいて、前記移動装置の前記駆動条件を計算する請求項4記載の移動装置。
【請求項6】
前記移動装置は、
前記移動装置の動作状態を知らせるための出力を行う報知部と、
前記報知部の出力パターンと、前記移動装置の前記駆動条件と、を関連付けた報知条件を記憶する報知条件記憶部と、
前記駆動条件演算部が決定した前記駆動条件に基づいて、前記報知部を制御する条件を決定する報知条件決定部と、
をさらに含む、請求項1又は2記載の移動装置。
【請求項7】
前記移動装置は、前記マップにおける、移動中の前記移動装置の現在地座標を演算する現在地取得部をさらに有し、
前記マーカ検出部が、前記移動装置の移動中においても、前記撮像部が撮像した撮像画像から前記マーカを検出し、
前記マーカ座標抽出部は、前記マップにおける前記マーカの座標を更新し、
前記走行経路演算部は、前記移動装置の現在地座標と、更新された前記マーカ座標に基づいて走行経路を再演算し、
前記駆動条件演算部は、前記走行経路演算部が再演算した走行経路に基づいて、前記走行部を駆動する駆動条件を計算するよう構成された請求項1又は2記載の移動装置。
【請求項8】
前記移動装置の移動中において、前記マーカ検出部が前記撮像部により撮像された撮像画像から前記マーカを検出できない場合、前記移動装置は、最後に前記マーカが検出された時に求めた走行経路および駆動条件に基づいて、走行動作を完了するよう構成される請求項7記載の移動装置。
【請求項9】
画像を撮像する撮像部と、装置本体を移動させる走行部と、動作開始ボタン有する移動装置の制御装置であって、
前記制御装置は、
前記移動装置の現在位置を含む、所定の範囲のマップを作成するマップ生成部と、
前記マップを記憶するマップ記憶部と、
前記撮像部が撮像した撮像画像から、マーカを検出するマーカ検出部と、
前記マップにおける前記マーカの座標を抽出するマーカ座標抽出部と、
前記マップにおける前記移動装置の現在位置から前記マーカの座標に至る走行経路を演算する走行経路演算部と、
前記走行経路演算部が演算した走行経路に基づいて、前記走行部を駆動する駆動条件を計算する駆動条件演算部と、
前記マップ記憶部に記憶されている前記マップを消去するマップ消去部と、
を含み、
前記マップ消去部は、前記移動装置が前記マーカに到達した後に、前記マップ記憶部に記憶されている前記マップを消去し、
前記マップが消去された後に、前記マップ生成部が、前記移動装置の現在位置を含む新たな前記マップを作成する移動装置の制御装置。
【請求項10】
画像を撮像する撮像部と、装置本体を移動させる走行部と、動作開始ボタン有する移動装置を、コンピュータ又は電子回路で制御する方法であって、
前記コンピュータ又は前記電子回路が、
前記移動装置の現在位置を含む、所定の範囲のマップを作成するマップ生成処理と、
前記マップを記憶するマップ記憶処理と、
前記撮像部が撮像した撮像画像から、マーカを検出するマーカ検出処理と、
前記マップにおける前記マーカの座標を抽出するマーカ座標抽出処理と、
前記マップにおける前記移動装置の現在位置から前記マーカの座標に至る走行経路を演算する走行経路演算処理と、
前記走行経路演算処理にて演算した走行経路に基づいて、前記走行部を駆動する駆動条件を計算する駆動条件演算処理と、
記憶されている前記マップを消去するマップ消去処理と、
を実行し、
前記移動装置が前記マーカに到達した後に、記憶されている前記マップを消去し、
前記マップが消去された後に、前記移動装置の現在位置を含む新たな前記マップを作成する移動装置の制御方法。
【請求項11】
請求項2記載の移動装置と、
前記識別図形を含む前記マーカを複数備えた移動システムであって、
前記移動装置は、
前記マーカ検出部が検出した前記マーカに含まれる前記識別図形を、前記識別図形抽出部が抽出し、
前記識別情報判断部が、抽出された前記識別図形の前記識別情報を判断し、
前記マーカ情報記憶部に記憶された、前記識別情報に関連付けられた前記順序情報に基づいて、ターゲットとなる前記マーカを認識するように構成された、移動システム。
【請求項12】
前記マーカの前記識別図形は、複数の正方形が二次元に配列されたマトリクス構造を有する図形であり、
前記識別図形は、非線対称な図形である請求項11記載の移動システム。
【請求項13】
複数の前記マーカはそれぞれ異なる前記識別図形を有し、
異なる前記識別図形は、それぞれ線対称の関係となる図形が除外されている請求項12記載の移動システム。
【請求項14】
請求項1又は2に記載の移動装置と、
前記移動装置に載置された所定の作業を行うロボットと、を含み、
前記制御部および前記ロボットは、それぞれ通信部を有し、
前記制御部は、前記マーカに到達すると前記ロボットに作業開始信号を送信し、
前記ロボットは、前記制御部に作業終了信号を送信するよう構成されている移動型作業ロボット。
【請求項15】
前記ロボットが、環境測定を行う測定ユニットである、請求項11記載の移動型作業ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象領域を移動する移動装置、移動装置の制御装置、移動装置の制御方法、移動システム、および移動型作業ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、対象空間の掃除、管理対象に対するロボットによる作業、荷物の運搬、又はサービス業務などにおいて、無人で目的の移動を達成する移動装置の開発が進んでいる。このような移動装置では、室内における自装置の位置を把握して移動するために、予め対象室内のマップが記録されている。又は、LiDARセンサやカメラを用いた物体検知により対象領域のマップを自動作成する移動装置も知られている。
【0003】
マップを用いない場合、移動装置を対象領域の所定のルートに従って磁気誘導を用いて移動させるために、対象領域に磁気テープを事前に設置することがある。この場合には、移動装置は、固定された走行ルート上を自動走行する。
【0004】
他にも、移動装置の制御において、停止や回転などの移動装置の動作に関する情報を含むマーカを対象室内に適宜配置することもある。移動装置は、搭載されたカメラなどの撮像部でそのマーカを撮像し、マーカに含まれる情報に基づいて移動装置の動作を制御する。このようなマーカの一つとしては、対象領域に設置される旗状のサインポストがあげられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005‐275899号公報
【特許文献2】特開2014-021624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
対象領域のマップを用いた移動装置の制御においては、地図情報の入力などにおいてロボット技術者や熟練した使用者による作業が必要となる。特に、初めて対象領域において移動装置を走行させる場合には、ロボット技術者と使用者の打ち合わせが不可欠となり手間と時間がかかる。すなわち、専門知識をもたない移動装置の使用者が、単独で所望の走行ルートを迅速かつ容易に設定することは難しい。また、マップを用いた移動装置では、無線通信を用いた測位を行う場合、固定機設置位置によっては測位できないエリアが生じる可能性がある。また、測位精度にも影響を及ぼすため、固定機設置位置の入念な設計と、マップ上の位置と実際の位置の正確な一致が必要となる。
【0007】
磁気テープを用いた走行ルートの設定では、磁気テープの事前設置が不可欠であり、また走行ルートが固定されてしまう。例えばクリーンルーム等の清浄空間においては、磁気テープの設置自体が難しい場合もある。サインポストを用いて走行ルートの設定を行う場合には、走行ルートに沿って多数のサインポストを設置する必要があり、使用者に各サインポストの動作内容と使用方法を理解する負担が生じる。また、サインポストそのものが、移動装置の障害物となる可能性も否定できない。
【0008】
本発明は、上述したような従来技術の問題点を解決するために提案されたものである。その目的は、移動装置の使用者が容易に走行ルートの設定を行うことができる移動装置、移動装置の制御装置、移動装置の制御方法、移動システム、および移動型作業ロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の移動装置は、以下のような特徴を有している。
(1)画像を撮像する撮像部と、装置本体を移動させる走行部と、動作開始ボタン有する移動装置であって、前記移動装置の制御部は、前記移動装置の現在位置を含む、所定の範囲のマップを作成するマップ生成部と、前記マップを記憶するマップ記憶部と、前記撮像部が撮像した撮像画像から、マーカを検出するマーカ検出部と、前記マップにおける前記マーカの座標を抽出するマーカ座標抽出部と、前記マップにおける前記移動装置の現在位置から前記マーカの座標に至る走行経路を演算する走行経路演算部と、前記走行経路演算部が演算した走行経路に基づいて、前記走行部を駆動する駆動条件を計算する駆動条件演算部と、前記マップ記憶部に記憶されている前記マップを消去するマップ消去部と、を含み、前記マップ消去部は、前記移動装置が前記マーカに到達した後に、前記マップ記憶部に記憶されている前記マップを消去し、前記マップが消去された後に、前記マップ生成部が、前記移動装置の現在位置を含む新たな前記マップを作成する。
【0010】
(2)前記移動装置の前記制御部は、前記マーカに含まれる識別図形と識別情報を関連付けて記憶するマーカ情報記憶部と、前記識別図形を抽出する識別図形抽出部と、前記マーカ情報記憶部に記憶されている前記識別図形と前記識別情報に基づいて、前記識別図形抽出部が抽出した前記識別図形が表す前記識別情報を判断する識別情報判断部と、をさらに含み、前記マーカ情報記憶部には、前記識別図形と前記識別情報に関連付けて、前記マーカを探索していく順序に関する順序情報が記憶されていても良い。
【0011】
(3)前記識別情報における前記移動装置の走行動作を記憶する走行動作記憶部をさらに含み、前記駆動条件演算部は、前記走行動作に応じて、前記移動装置の前記駆動条件を計算しても良い。
【0012】
(4)前記移動装置は、前記マーカを探索するための探索条件を記憶する探索条件記憶部をさらに含み、前記探索条件は、前記撮像部の撮像範囲を広げるような前記移動装置の移動条件であり、前記駆動条件演算部は、前記動作開始ボタンが押下されて前記移動装置の動作が開始したときに、前記探索条件に基づいて、前記移動装置の前記駆動条件を計算しても良い。
【0013】
(5)前記移動装置は、前記マーカを再度探索するための再探索条件を記憶する再探索条件記憶部をさらに含み、前記再探索条件は、前記移動装置を一時停止させる条件を含み、前記駆動条件演算部は、前記探索条件に基づいた探索において前記マーカが検出されなかった場合に、前記再探索条件に基づいて、前記移動装置の前記駆動条件を計算しても良い。
【0014】
(6)前記移動装置は、前記移動装置の動作状態を知らせるための出力を行う報知部と、前記報知部の出力パターンと、前記移動装置の前記駆動条件と、を関連付けた報知条件を記憶する報知条件記憶部と、前記駆動条件演算部が決定した前記駆動条件に基づいて、前記報知部を制御する条件を決定する報知条件決定部と、をさらに含んでいても良い。
【0015】
(7)前記移動装置は、前記マップにおける、移動中の前記移動装置の現在地座標を演算する現在地取得部をさらに有し、前記マーカ検出部が、前記移動装置の移動中においても、前記撮像部が撮像した撮像画像から前記マーカを検出し、前記マーカ座標抽出部は、前記マップにおける前記マーカの座標を更新し、前記走行経路演算部は、前記移動装置の現在地座標と、更新された前記マーカ座標に基づいて走行経路を再演算し、前記駆動条件演算部は、前記走行経路演算部が再演算した走行経路に基づいて、前記走行部を駆動する駆動条件を計算しても良い。
【0016】
(8)前記移動装置の移動中において、前記マーカ検出部が前記撮像部により撮像された撮像画像から前記マーカを検出できない場合、前記移動装置は、最後に前記マーカが検出された時に求めた走行経路および駆動条件に基づいて、走行動作を完了するよう構成しても良い。
【0017】
また、上記の発明は、移動装置の制御装置および移動装置制御方法の発明としての態様を含む。また、以下の移動システムおよび移動型作業ロボットの態様を含み得る。
【0018】
(1)上記の移動装置と、前記識別図形を含む前記マーカを複数備えた移動システムであって、前記移動装置は、前記マーカ検出部が検出した前記マーカに含まれる前記識別図形を、前記識別図形抽出部が抽出し、前記識別情報判断部が、抽出された前記識別図形の前記識別情報を判断し、前記マーカ情報記憶部に記憶された、前記識別情報に関連付けられた前記順序情報に基づいて、ターゲットとなる前記マーカを認識するように構成されていても良い。
【0019】
(2)前記マーカの前記識別図形は、複数の正方形をした画素が二次元に配列されたマトリクス構造を有する図形であり、前記識別図形は、非線対称な図形であっても良い。
【0020】
(3)複数の前記マーカはそれぞれ異なる前記識別図形を有し、異なる前記識別図形は、それぞれ線対称の関係となる図形が除外されていても良い。
【0021】
(4)上記の移動装置と、前記移動装置に載置された所定の作業を行うロボットと、を含み、前記制御部および前記ロボットは、それぞれ通信部を有し、前記制御部は、前記マーカに到達すると前記ロボットに作業開始信号を送信し、前記ロボットは、前記制御部に作業終了信号を送信するよう構成されていても良い。
【0022】
(5)前記ロボットが、環境測定を行う測定ユニットであっても良い。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば自動走行装置の使用者が容易に走行ルートの設定を行うことができる移動装置、移動装置の制御装置、移動装置の制御方法、移動システム、および移動型作業ロボットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】第1の実施形態にかかる移動システムに含まれるマーカの例を示す構成図である。
【
図2】(a)および(b)ともにマーカの識別図形を説明するための図である。
【
図3】第1の実施形態にかかる移動装置の外観を示す側面図であり、かつ他の実施形態の作業ロボットの外観を示す側面図である。
【
図4】第1の実施形態にかかる移動装置の制御部の構成の一例を示すブロック図である
【
図5】第1の実施形態にかかる移動装置が生成するマップの一例を示す模式図である。
【
図7】制御部の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図8】(a)~(d)において移動装置がマーカに移動する動作をマップ上で説明するための模式図である。
【
図9】第9の実施形態にかかる移動装置の制御部の構成の一例を示すブロック図である。
【
図10】走行経路演算の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図11】走行経路演算部が障害物を回避するために演算する走行経路を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[第1の実施形態]
(移動システム概要)
本発明に係る移動システムの実施形態について図面を参照しつつ説明する。移動システムは、被検出体としてのマーカMと、このマーカMを読み取ることで、装置本体の移動を実行する移動装置1を含み構成されている。
【0026】
(マーカ)
移動システムに含まれるマーカMについて、
図1および
図2を参照して説明する。
図1の例では矩形のマーカMが示されているが、マーカMを他の形状としても良い。マーカMは、識別図形M1と、識別図形M1を囲むように設けられた枠M2と、を含んで良い。ただし、枠M2を設けずに識別図形M1そのものをマーカMとして捉えることもできる。
【0027】
識別図形M1は、複数の正方形が二次元に配列されたマトリクス構造を有する図形である。識別図形M1に含まれる正方形は、例えば白又は黒で表される。識別図形M1は、撮像画像からコンピュータ解析が容易な図形とすることが好ましい。識別図形M1としては、ARマーカ、二次元バーコード、バーコード、カメレオンコードなどを適用することで識別図形M1の検出精度を高めることができる。識別図形M1は、白黒のパターンで、識別情報を表現するように構成されている。この識別図形M1が、後述するマーカ検出部24aにより検出される検出対象である。
【0028】
移動システムにおいて、複数のマーカMは、それぞれ異なる識別図形M1を含み、異なる識別情報を表現するように構成される。識別情報としては、数字やアルファベットなど任意の文字や記号を用いることができる。例えば、複数のマーカMは、それぞれの識別図形M1が例えば1~20など任意の数字を表現するように構成すると良い。
【0029】
ここで、マーカMが有する識別図形M1は、非線対称な図形とすることが好ましい。非線対称な識別図形M1とは、対称の軸で折り重ねた時に、少なくとも一部が重なり合わない図形である。これにより、移動装置1が、鏡など鏡面状の物体に写り込んだマーカMを、マーカMと誤認識することがない。
【0030】
また、複数のマーカMが有する各識別図形M1は、線対称の関係となる図形を除外することが好ましい。例えば、数字の7として、
図2の(a)の識別図形M1を採用した場合には、線対称の関係となる
図2(b)の図形は他のマーカMの識別図形M1として採用しない。これにより、移動装置1が、鏡など鏡面状の物体に写り込んだマーカMを、他の数字を表すマーカMと誤認識することがない。
【0031】
枠M2は、識別図形M1の周囲を囲むように設けられた余白である。枠M2に含まれる各画素は、例えば白で表される。ただし、枠M2は識別図形M1の色と明度差が大きく、識別図形M1の識別が容易となるような色であれば良い。
図1の例では枠M2を画定するために、枠M2の外周に黒線を付しているが実際には黒線を設ける必要はない。枠M2は、マーカMの寸法を30×30cmとする場合には、20mm程度設けられていると良い。
【0032】
枠M2を設けることにより、黒系の床やモザイク模様の床などにマーカMを配置した場合であっても、移動装置1がマーカMを確実に検出する。枠M2は、識別図形M1を隣接する類似色から保護するために設けられており、マーカMとして機能する必要はない。例えば白い枠M2を含めてマーカMとして検出するように構成した場合には、白い床上に配置されたマーカMを認識できなくなる可能性がある。従って、移動装置1は、枠M2を含めてマーカMとして検出するのではなく、識別図形M1のみを検出するように構成することが好ましい。ただし、識別図形M1と枠M2の双方を含めてマーカMとする構成を排除する意図はない。
【0033】
マーカMは、樹脂、プラスチック、ポリプロピレンの平板とすることができる。ただし、紙などに識別図形M1および枠M2を印刷してマーカMとしても良い。移動装置1がマーカMの図形を確定しやすくするために、マーカMは、照明などの光を反射しない素材を用いることが好ましい。マーカMに、表面加工を施しても良い。例えば、マーカMを樹脂などの平板とする場合には、表面にエンボス加工を行うと良い。例えば、紙にマーカMを印刷する場合には、マットコート印刷を用いたり、低反射ラミネートマットでラミネート加工したりしても良い。
【0034】
平板状のマーカMは床置きすることが可能であるため、マーカMが移動装置1の移動の障害物とならず良い。マーカMは、例えばマーカMが正方形の場合には30×30cm程度の大きさとすると良い。ただし、移動装置1がマーカMを検出可能な大きさであればよく、マーカMの寸法は適宜変更可能である。
【0035】
(移動装置)
移動装置1は、例えば室内等において、対象領域を自律走行する装置である。移動装置1は、装置本体を移動させる走行部を有する。移動装置1は移動以外の動作を行うように構成できる。例えば、対象領域内を移動しつつ、対象領域の環境測定を行うように構成しても良い。他にも、対象領域の掃除、荷物の積み降ろし、バルブの開閉等、様々な動作を行うロボットと組み合わせ得る。
【0036】
図3は、移動装置1の外観を示す側面図である。
図4は、移動装置1の構成例を示すブロック図である。
図3に示す通り、移動装置1は、箱型の筐体100を有する。筐体100は、移動装置1の構成部を収容する箱型の筐体100aと、移動装置1に搭載されるロボットを収容する箱型の筐体100bを含んでいても良い。以下の説明では、筐体100aおよび筐体100bを併せて、筐体100と表現する場合もある。
【0037】
移動装置1は、筐体100aの下面側に設けられた一対の駆動輪である走行部101が移動機構102により駆動されることで自走可能に構成されている。移動機構102は、移動装置1の走行に必要な車輪の回転駆動を行う。移動機構102は、例えば、車輪を駆動するモータや車輪の向きを変更するアクチュエータなどで構成して良い。移動装置1の車輪は、オムニホイールやメカナムホイールであってもよい。
【0038】
図3および4に示す通り、移動装置1は、撮像部10、障害物検出部11、報知部12、および制御部20を有する。なお、移動装置1には、移動装置1の動作を開始するための動作開始ボタンBが設けられている。動作開始ボタンBは使用者が押下可能に構成され、移動装置1の本体に設けることができる。また、動作開始ボタンBは、例えばリモートコントローラに設けられていても良い。いずれの場合であっても、移動装置1は、使用者が動作開始ボタンBを押下したことを契機に、所定の動作を開始するように構成されている。
【0039】
(撮像部)
図3に示す通り、撮像部10は、本実施形態では筐体100の外面に取り付けられている。ただし、筐体100の内部に収容し、筐体100に穴を設けて対象領域を撮像する構成としても良い。また、本実施形態では、撮像部10は対象領域の床面に置かれたマーカMを撮像することを想定している。そのため、撮像部10は、対象領域の床面を鳥瞰するように、筐体100の上面に取り付けられている。
【0040】
撮像部10は、マーカMを撮像して撮像画像を生成する。撮像部10は、不図示の光学系および撮像素子を備えるカメラと、カメラを制御する撮影制御部と含む。撮像素子は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal-oxide Semiconductor)等のイメージセンサであって良い。撮像素子は、光学系を通過した光学像をデジタル信号に変換する素子である。
【0041】
撮像部10としては、マーカMを撮像可能なカメラであれば適用可能であり、例えばWEBカメラを用いても良い。撮像部10としては、画角は水平90°以上、対角98°以上、画質は850万画素以上のカメラを用いることが好ましい。レンズ性能を考慮の上、オートフォーカス機能を有するカメラを採用しても良い。撮像部10で得られた画像は、後述する制御部20の画像処理部24に出力される。撮像部10としては、画像処理部24による画像処理で撮像した画像から情報を識別できる程度に、マーカMを撮像可能なカメラを用いる。
【0042】
(障害物検出部)
障害物検出部11は、移動装置1の進行方向にある障害物を検出するセンサである。障害物検出部11は、移動装置1の前面に設けられて良い。障害物検出部11としては、超音波センサ、光学式ToF(Time-of-Flight)センサ、ステレオカメラ式深度センサ、レーダーセンサなどを用いることができる。
【0043】
この中でも、対象領域がクリーンルーム内にある場合には、クリーンルームに存在するSUSなどの鏡面物質を考慮すると、低コストかつ信頼性が高い超音波センサを用いることが好ましい。超音波センサは、超音波を送信し、障害物から反射されて戻ってくるエコーを探知することで障害物を検出するセンサである。なお、障害物検出部11として、障害物に接触したことを検出するバンパセンサなどを設けても良い。また、対象領域が倉庫内である場合には、ダンボールが置かれている可能性があることを考慮すると、RiDARセンサを用いることが好ましい。障害物検出部11は、障害物を検出すると障害物を検出した旨の信号を、制御部20に送信する。
【0044】
(報知部)
報知部12は、移動装置1の動作状態を使用者に知らせるための出力を行う構成部である。報知部12は、例えば、光を発光する発光部12aと、音声信号を出力する音声出力部12bを採用することができる。ただし、制御部20に接続されたディスプレイなどの出力部Oに、移動装置1の動作状態を表示する場合、出力部Oを報知部12として捉えて良い。
【0045】
発光部12aは、LED(Light Emitting Diode)、LD(LASER Diode)等により構成される。発光部12aは、
図3に示す通り、移動装置1の表面部に取り付けることが好ましい。発光部12aは、制御部20側からの制御によって、移動装置1の動作状態に合わせた発光パターンで光を発光する。
【0046】
動作状態には、移動装置1が移動している走行状態、移動装置1がマーカMを探索している探索状態、移動装置1がマーカMを発見した発見状態、移動装置1に搭載されたロボットが動作している作業状態、移動装置1の前に障害物があるエラー状態、移動装置1が走行動作を完了した終了状態などの状態がある。
【0047】
音声出力部12bは、例えば、不図示のDAコンバーター、アンプ、スピーカー等含む。このような音声出力部12bは、音声信号をアナログの音声出力信号に変換してスピーカーから音声を出力する。音声出力部12bが出力する音声は、電子音、音楽、予め録音された人の音声などあって良い。音声出力部12bは、制御部20側からの制御によって、移動装置1の動作状態に合わせた音声を出力する。
【0048】
(制御部)
図4に示す通り、制御部20は、CPUやメモリを含み所定のプログラムで動作するコンピュータや専用の電子回路で構成されている。制御部20には、入力部Iや出力部Oが接続可能に構成されている。予め制御部20に設定されている情報を用いて移動装置1を制御する場合には、使用者は入力部Iを介した入力を行う必要はない。
【0049】
また、移動装置1は、使用者が動作開始ボタンBを押下したことを契機に動作開始し、それ以降は自動で走行動作を行う。そのため、使用者がマウスやキーボードなど入力部Iを介して操作を行う必要がない。また、報知部12により移動装置1の動作状態が理解できるため、ディスプレイなどの出力部Oを接続して、移動装置1の出力内容を確認する必要はない。移動装置1は、移動装置1の技術者が使用するために、入力部Iや出力部Oが接続可能に構成されていれば十分であると言える。ただし、使用者のために入力部Iや出力部Oを接続する構成を排除する意図はない。
【0050】
この制御部20は、移動装置1の制御装置として捉えることができる。また、制御部20の処理をコンピュータが実行する移動装置1の制御方法として捉えることもでき、制御方法の各処理をコンピュータに実行させる移動装置1の制御プログラムとして捉えても良い。なお、ハードウェアでの処理範囲や、プログラムを含むソフトウェアでの処理範囲に関しても適宜設定可能であり、特定の態様に限定されない。
【0051】
制御部20には、撮像部10、障害物検出部11、報知部12、および移動機構102が接続されている。制御部20は、記憶部21、マップ生成部22、マップ消去部23、画像処理部24、走行経路演算部25、駆動条件演算部26、移動機構制御部27、報知条件決定部28、報知制御部29を含む。
【0052】
(記憶部)
記憶部21は、移動装置1の走行動作に必要な各種の情報を記憶する記憶部である。記憶部21は、マップ記憶部21a、探索条件記憶部21b、再探索条件記憶部21c、マーカ情報記憶部21d、走行動作記憶部21e、ターゲット位置記憶部21f、走行経路記憶部21g、報知条件記憶部21hを含む。
【0053】
(マップ記憶部)
マップ記憶部21aは、マップ生成部22が作成したマップPを記憶する記憶部である。マップPは、マップ生成部22により生成される。マップPとは、移動装置1の現在位置を含む、所定の範囲のマップPであり、例えば数m四方のマップPとすると良い。すなわち、従来の移動装置のように、技術者が用意した対象領域全域のマップを、予め記憶する構成とは異なる。マップ記憶部21aに記憶されているマップPは、マップ消去部23により消去可能に構成されている。また、マップ記憶部21aは、マップPが消去された後に、新たなマップPを記憶することができる。
【0054】
(探索条件記憶部)
探索条件記憶部21bは、移動装置1がマーカMを探索するための探索条件を記憶する記憶部である。探索条件は、移動装置1の撮像部10を移動させて、撮像範囲を広げるような移動装置1の移動条件である。例えば、探索条件は、移動装置1の動作がスタートされた時に、移動装置1が配置されている場所において、移動装置1を360度、所定のスピードで水平回転させるような条件である。ただし、撮像部10によりターゲットのマーカMが撮像された場合には、360度に達していなくとも移動装置1の水平回転を停止可能に構成できる。移動装置1は、例えば16度/sec以下の回転スピードで回転することで、撮像部10によるマーカMの撮像を行う。
【0055】
なお、移動装置1は、マーカMを探索するために必ずしも360度回転する必要はない。例えば、移動装置1の前方にのみ次のマーカMが配置されるような使い方をする場合には、回転角度を180度としても良い。また、移動装置1の探索動作は水平回転に限定されず、円形の進路を進む旋回であっても良い。
【0056】
(再探索条件記憶部)
再探索条件記憶部21cは、移動装置1がマーカMを再度探索するための再探索条件を記憶する記憶部である。再探索条件は、移動装置1が探索条件記憶部21bに記憶されている探索条件を用いた探索によりマーカMを発見できなかった場合に、移動装置1が再度マーカMを探索するための条件である。再探索条件は、移動装置1を一時停止させるような条件であることが好ましい。例えば、再探索条件は、移動装置1を45度回転させるたびに一時停止することを8回繰り返すことで、移動装置1を360度水平回転させるような条件である。
【0057】
移動装置1の移動中は、撮像部10により撮像される画像にブレが生じるためマーカMを発見できない可能性がある。従って、たとえば45度回転する度に一時停止することで、停止時に撮像部10がより鮮明な画像を撮像し得る。なお、移動装置1を一時停止させるタイミングは、45度毎に一度である必要はない。使用される撮像部10の視野角を考慮し、停止毎の撮像で360度全方位を網羅可能な角度とすれば良い。なお、1m進んでから一時停止を含む水平回転を行う、というような再探索条件を設定することもできる。
【0058】
(マーカ情報記憶部)
マーカ情報記憶部21dは、マーカMに含まれる識別図形M1と、識別情報が関連付けられて記憶されている記憶部である。マーカ情報記憶部21dには、例えば
図1に示すマーカMに含まれる識別図形M1と、数字の1が関連付けられて記憶されている。マーカ情報記憶部21dには、移動システムにおいて用いられる異なる識別図形M1を有するマーカMの数だけ、対応する識別情報が関連付けられて記憶されている。
【0059】
また、識別図形M1と識別情報に、さらに移動装置1が複数のマーカMを探索していく順序に関する順序情報が関連付けられて記憶されている。順序情報は、例えば、識別情報として1を有するマーカMから昇順で識別情報として20を有するマーカMまで探索を行うというような情報である。マーカ情報記憶部21dは、マーカMのサイズや形状が記憶することができる。例えば、マーカ情報記憶部21dは、マーカMのサイズが30×30cmの正方形である、というような情報を記憶する。
【0060】
(走行動作記憶部)
走行動作記憶部21eは、マーカMの識別図形M1が表現する識別情報における移動装置1の走行動作が記憶されている。例えば、走行動作記憶部21eには、以下の数字と走行動作が関連づけられて記憶されている。
1~20:所定の動作を行い、次のマーカMを探して移動する。
98:隣接して配置されたマーカMにおける所定の動作をスキップする。
99:隣接して配置されたマーカMにおいて所定の動作を行った後、処理を終了する。
【0061】
走行動作記憶部21eは、マーカMの識別図形M1に対応する走行動作以外の走行動作を記憶可能に構成されている。例えば、障害物検出部11が障害物を検出した場合には、直ちに移動装置1の走行を停止する、というような走行動作を記憶することができる。また、検出された障害物が除去された場合には、移動装置1の走行を再開するというような走行動作を記憶して良い。
【0062】
(ターゲット位置記憶部)
ターゲット位置記憶部21fは、後述のマーカ座標抽出部24eが抽出した、マップ記憶部21aに記憶されているマップPにおけるターゲットのマーカMの座標を記憶する記憶部である。ターゲット位置記憶部21fに記憶されている情報は、走行経路演算部25により取得され、移動装置1が実際に走行する経路の演算に用いられる。
【0063】
(走行経路記憶部)
走行経路記憶部21gは、走行経路演算部25が演算した走行経路を記憶する記憶部である。走行経路記憶部21gに記憶されている情報は、駆動条件演算部26により取得され、移動機構102を駆動する駆動条件の演算に用いられる。
【0064】
(報知条件記憶部)
報知条件記憶部21hは、報知部12である発光部12aの発光パターンや音声出力部12bの出力パターンを、移動装置1の駆動条件に関連付けた報知条件として記憶する記憶部である。すなわち、報知条件記憶部21hは、移動装置1の複数の動作状態に対して、それぞれ報知条件を記憶している。報知条件記憶部21hが記憶する報知条件の一例を、以下の表1に示す。
【表1】
【0065】
表1に記載の通り、報知条件は、移動装置1の動作状態に対して報知部12がどのような報知動作を行うかを予め登録したものである。発光部12aに関しては、発光する色、点灯態様、点灯時間等を記憶すると良い。音声出力部12bに関しては、出力する音声、音量、繰り返し回数、出力時間等を記憶すると良い。音声は、メロディー、人間の声、電子音等、種々の音声を採用することができる。
【0066】
(マップ生成部)
マップ生成部22は、移動装置1の現在位置を含む、所定の範囲のマップPを作成する処理部である。マップ生成部22は、移動装置1の動作が開始されたときに、新たなマップPを生成するように構成されている。また、マップ生成部22は、マップ消去部23がマップ記憶部21aに記憶されているマップPを消去するたびに、新たなマップPを生成するように構成されている。マップ生成部22は、例えば、
図5に示すように、移動装置1を中心座標(x0,y0)とする、矩形のマップPを生成する。ただし、移動装置1を必ずしもマップPの中心に配置する必要はなく、実際の移動装置1の動作や運用を考慮の上、移動装置1をマップP内の所定位置に含めれば良い。
【0067】
上記の説明では、マップ生成部22は、移動装置1を中心座標(x0,y0)とする、矩形のマップPを生成するとした。ただし、所定の寸法の矩形のマップPにおいて、移動装置1を中心座標(x0,y0)に配置してマップPを生成しても良い。すなわち、マップ生成部22は、移動装置1の位置を基準にマップPそのものを生成するよう構成でき、または生成したマップP上に移動装置1等を再配置することでマップPを生成しても良い。
【0068】
図5の例では、8m×8mの正方形のマップPを生成した例を示す。マップPの大きさは、撮像部10の撮像距離を考慮の上、適宜決定することができる。
図5のマップPは、4m程度の撮影距離を有する撮像部10を用いた場合を想定して、マップPの範囲を8m×8mに設定しているが、マップPの寸法はこれに限定されない。マップ生成部22が生成したマップPは、マップ記憶部21aにより記憶される。
【0069】
(マップ消去部)
マップ消去部23は、マップ記憶部21aに記憶されているマップ生成部22が生成したマップPを消去する処理部である。マップ消去部23は、移動装置1がターゲットとするマーカMに到達した後に、その時にマップ記憶部21aに記憶されているマップPを消去するように構成されている。マップ消去部23がマップPを削除するタイミングは、移動装置1がマーカMに到達した後に、次のマーカMの探索を開始するために新たなマップPを生成する前であればいつでも良い。例えば、移動装置1にロボットが搭載されている場合には、マーカMに到達した時点でマップPを消去しても良く、ロボットの作業が完了した後にマップPを消去しても良い。
【0070】
上記の説明では、マップ消去部23は、マップPを消去するように構成している。ただし、予め設定されている矩形のマップPにおいて、移動装置1やマーカMの位置座標を削除することも、マップPの消去に含まれる。従って、移動装置1がターゲットとするマーカMに到達した後に、移動装置1やマーカMの位置座標を消去し、移動装置1の座標を中心座標(x0,y0)に再配置することで、マップ消去部23によるマップ記憶部21aに記憶されているマップPの消去と、マップ生成部22による新たなマップPの作成を行うことができる。
【0071】
(画像処理部)
画像処理部24は、撮像部10が撮像した画像について画像処理を行う処理部である。画像処理部24は、マーカ検出部24aと、識別図形抽出部24bと、識別情報判断部24c、識別情報判定部24d、マーカ座標抽出部24eと、を含む。
【0072】
(マーカ検出部)
マーカ検出部24aは、撮像画像からマーカMの識別図形M1を検出する処理部である。マーカ検出部24aは、撮像画像に対してノイズ除去等の画像処理を行って良い。マーカ検出部24aは、識別図形M1を検出可能に構成されていればよく、例えば周知のARマーカ検出技術を採用することができる。マーカ検出部24aは、複数のマーカMが隣接して配置されている場合には、一組のマーカMとしてそれぞれのマーカMに含まれる識別図形M1を検出可能に構成されている。例えば、隣接する2つのマーカMの間隔が50cm以内の場合に、マーカ検出部24aは2つの識別図形M1を一組のマーカMとして検出することができる。
【0073】
(識別図形抽出部)
識別図形抽出部24bは、検出されたマーカMの識別図形M1を抽出する処理部である。識別図形抽出部24bは、マーカ検出部24aが検出したマーカMから識別図形M1を抽出する。識別図形抽出部24bは、マーカMから抽出した識別図形M1を、識別情報判断部24cに送信する。
【0074】
(識別情報判断部)
識別情報判断部24cは、マーカ情報記憶部21dに記憶されている識別図形M1と識別情報に基づいて、識別図形抽出部24bが抽出した識別図形M1が表す識別情報を判断する処理部である。識別情報判断部24cは、例えば、
図2(a)に示す識別図形M1の識別情報が、数字の7であるということを判断する。
【0075】
(識別情報判定部)
識別情報判定部24dは、識別情報判断部24cが判断した識別情報に関連付けられた走行動作またはマーカ情報を判断する処理部である。識別情報判定部24dは、走行動作記憶部21eに記憶されている識別情報に関連付けられた走行動作を判断することができる。また、移動装置1の走行動作がターゲットのマーカMを探す動作を含む場合には、識別情報判断部24cが判断した識別情報が、移動装置1が探し出すべきターゲットのマーカMの識別情報であるか否かを判定することができる。例えば、マーカ情報記憶部21dに数字の識別情報が記憶され、移動装置1が、番号が小さい識別情報を含むマーカMから、順次マーカMを探索するよう構成された場合を想定する。このとき、移動装置1が探索すべきマーカMが識別情報として1を有するマーカMである場合、識別情報判定部24dは、識別情報判断部24cが判断した識別情報が、1であるか否かを判定する。
【0076】
(マーカ座標抽出部)
マーカ座標抽出部24eは、マーカ検出部24aが検出したマーカMの座標を演算する処理部である。具体的には、マーカ座標抽出部24eは、識別情報判定部24dによりターゲットのマーカMであると判断されたマーカMの座標を抽出する。マーカ座標抽出部24eは、マップ記憶部21aに記憶されているマップPにおいて、移動装置1の座標を(x0、y0)としたときの、マーカMの座標を抽出する。
【0077】
マーカ座標抽出部24eは、マーカ情報記憶部21dに記憶されているマーカMのサイズや形状など、及び撮像画像と撮像画像から抽出した識別図形M1に基づいて、検出したマーカMの中心座標を求める。また、マーカ座標抽出部24eは、撮像画像における床面に置かれたマーカMに対して距離複比による射影変換などの技術を用いて、正面から撮像したマーカMとした上でマーカMの座標を抽出する構成とすることができる。マーカ座標抽出部24eが抽出したマーカMの座標は、ターゲット位置記憶部21fに記憶される。
【0078】
(走行経路演算部)
走行経路演算部25は、識別情報判定部24dによりターゲットのマーカMであると判断されたマーカMまでの走行経路を求める演算部である。走行経路演算部25は、マップ記憶部21aに記憶されているマップPにおける、移動装置1の現在位置から、ターゲット位置記憶部21fに記憶されているマーカMの座標に至る走行経路を演算する。
【0079】
走行経路演算部25は、ターゲットのマーカMに対して、移動装置1が正面を向く状態から走行経路を演算する構成とすることができる。マーカMに対して移動装置1が正面を向く状態からの走行経路は、ほぼ直進のみの走行経路となる。従って、廊下等、対象領域の幅に制限がある場合に好適な走行経路の演算となる。
【0080】
ただし、移動装置1の正面がターゲットのマーカMに対向していない状態から走行を開始し、移動装置1を回転させながら走行するような走行経路を演算しても良い。対象領域の幅に特に制限がない場合には、撮像部10がターゲットのマーカMを検出した状態から移動装置2の走行を開始することで、移動の開始を素早く行うことができて良い。
【0081】
(駆動条件演算部)
駆動条件演算部26は、移動機構102を駆動する駆動条件を計算する演算部である。移動装置1の動作が開始されたとき、駆動条件演算部26は、探索条件記憶部21bに記憶されている探索条件に基づいて、移動機構102を駆動する条件を演算する。また、探索条件に基づいたマーカMの探索において、移動装置1がマーカMを発見できなかった場合には、駆動条件演算部26は、再探索条件記憶部21cに記憶されている再探索条件に基づいて、移動機構102を駆動する条件を演算する。
【0082】
また、駆動条件演算部26は、ターゲットのマーカMが検出された場合には、ターゲットのマーカMと、移動装置1の正面が対向するように、移動装置1を回転させるような駆動条件を演算することができる。このとき駆動条件演算部26は、ターゲット位置記憶部21fに記憶されているマーカMの座標に対して、移動装置1が正面を向くような駆動条件を計算する。さらに、駆動条件演算部26は、走行動作記憶部21eに記憶されている走行動作と、走行経路記憶部21gに記憶されている走行経路に応じて、移動機構102を駆動する条件など、移動装置1の駆動条件を決定する。駆動条件演算部26は、決定した駆動条件を、移動機構制御部27および報知条件決定部28に出力する。
【0083】
(移動機構制御部)
移動機構制御部27は、駆動条件演算部26が決定した駆動条件に基づいて、移動機構102を制御する処理部である。移動機構制御部27は、駆動条件に基づいて、移動機構102に駆動信号を出力する。
【0084】
(報知条件決定部)
報知条件決定部28は、駆動条件演算部26が決定した駆動条件に基づいて、報知部12を制御する条件を決定する処理部である。報知条件決定部28は、報知条件記憶部21hに記憶されている報知条件を参照し、入力された駆動条件に対応する報知条件を決定する。報知条件決定部28は、決定した報知条件を、報知制御部29に出力する。
【0085】
(報知制御部)
報知制御部29は、報知条件決定部28が決定した報知条件に基づいて、報知部12を制御する処理部である。報知制御部29は、決定された報知条件に基づいて、報知部12に報知信号を出力する。
【0086】
[動作]
本実施形態の移動システムの動作を以下に説明する。移動システムの使用者は、移動装置1の動作をスタートする前に、任意の数のマーカMを対象領域内の任意位置に配置する。以下の説明では、使用者が
図6に示すようにマーカMを配置した場合を例に、具体的な動作を説明する。なお、
図6に示すマーカMは、各マーカMの上にそれぞれの識別情報を数字で表した簡易的な表示とする。また、図中斜線で示す部分は、柱などの障害物を示している。
【0087】
(移動装置への情報の事前入力)
移動システムの管理者は、移動装置1に対して、入力部Iを介してマーカ情報を入力し、マーカ情報記憶部21dに保存しても良い。マーカ情報は、マーカMの識別図形M1と、識別図形M1に関連付けられた識別情報を含む。また、探索に用いる順序情報、マーカMのサイズや形状に関する情報を含んでよい。ただし、これらのマーカ情報は、移動装置1のマーカ情報記憶部21dに予め記憶されているものを用いても良い。
【0088】
本例では、少なくとも1~20、98、99の識別情報に関連付けられた識別図形M1をそれぞれ有するマーカMに関するマーカ情報がマーカ情報記憶部21dに記憶されている。また、探索に用いる順序情報として、識別情報として1を有するマーカMから昇順で識別情報として20を有するマーカMまで探索行うことがマーカ情報記憶部21dに記憶されている。
【0089】
(移動装置の動作)
(マップの生成・マーカの検出と移動・マップの消去)
移動装置1の動作について、
図7のフローチャートおよび
図8のマップPを用いて以下に説明する。なお、
図8のマップPは、動作の説明を助けることを目的としているため、装置やマーカMの大きさなどの寸法は、実際の縮尺と異なる。ここでは、移動装置1に室内環境測定を行う測定ユニットが搭載され、移動装置1がマーカMに到達する度に環境測定が行われる場合を例に説明する。移動装置1の動作開始に際し、使用者が行うオペレーションは、移動装置1の動作を開始するための動作開始ボタンBを押下することのみである。
【0090】
使用者により移動装置1の動作が開始されると、移動装置1の制御部20において、マップ生成部22が、移動装置1の現在位置を含む、所定の範囲のマップPを作成する(ステップS01)。例えば、
図8(a)に示すように、移動装置1を中心座標(x0,y0)とする、8m×8mの正方形のマップPを作製し、マップ記憶部21aに記憶する。
【0091】
マップPの記憶が完了すると、駆動条件演算部26は、探索条件記憶部21bに記憶されている探索条件に基づいて、移動機構102を駆動する条件を決定する。探索条件が、移動装置1を360度、所定のスピードで水平回転させるような条件である場合、移動装置1は、その場で360度水平回転を行いながら、撮像部10による撮像を行う(ステップS02)。
【0092】
撮像部10が撮像した撮像画像に基づいて、マーカ検出部24aがマーカMの識別図形M1を検出すると(ステップS03 YES)、識別図形抽出部24bが、検出されたマーカMの識別図形M1を抽出する(ステップS04)。抽出された識別図形M1に基づいて、識別情報判断部24cが、検出されたマーカMの識別情報を判別する。なお、マーカ検出部24aがマーカMの識別図形M1を検出しない場合(ステップS03 NO)には、ステップS02に戻り、移動装置1は探索条件に基づく動作を続ける。
【0093】
図6のようにマーカMを配置し、移動装置1の動作を開始した場合、マーカ検出部24aは、
図8(b)に示すように、撮像部10の撮像画像から、識別情報として1、5、99、4を有するマーカMの識別図形M1を検出する可能性がある。探索条件としては、識別情報として1を有するマーカMから順次探査していくことが記憶されている。そのため、識別情報判断部24cが判断した識別情報に基づいて、識別情報判定部24dは、検出したマーカMの識別情報が1であるか否かを判断する(ステップS05)。識別情報判定部24dが、検出したマーカMがターゲットのマーカMではないと判断した場合(ステップS05 NO)、ステップS02に戻り、移動装置1は探索条件に基づく動作を続ける。
【0094】
識別情報判定部24dが、検出したマーカMが、識別情報として1を有するターゲットのマーカMであると判断した場合(ステップS05 YES)、マーカ座標抽出部24eは、ターゲットのマーカMの座標を抽出する(ステップS06)。マーカ座標抽出部24eは、演算したマーカMの座標をターゲット位置記憶部21fに記憶する。なお、探索条件記憶部21bに記憶されている探索条件に基づく探索でターゲットのマーカMが発見されない場合において、再探索条件記憶部21cに記憶されている再探索条件に基づく探索を行うフローを追加することができる。
【0095】
駆動条件演算部26は、ターゲットのマーカMが検出された場合には、
図8(c)に示すようにターゲットのマーカMと、移動装置1の正面が対向するように、移動装置1を回転させるような駆動条件を演算することができる(ステップS07)。そして、駆動条件演算部26が演算した駆動条件に基づき、移動機構制御部27が移動機構102等を制御することにより、移動装置1とマーカMを対向させる位置まで、回転させる。
【0096】
そして、走行経路演算部25が、移動装置1の現在位置から、マーカ座標抽出部24eが抽出したマーカMの座標に至る走行経路を演算する。
図8(c)の例では、移動装置1がマーカMに向かって直進するような走行経路が演算される(ステップS08)。走行経路演算部25が演算した走行経路は、走行経路記憶部21gに記憶される。
【0097】
駆動条件演算部26は、走行経路記憶部21gに記憶されている走行経路に基づいて、移動機構102を駆動する駆動条件を計算する(ステップS08)。そして、移動機構制御部27が、駆動条件演算部26が決定した駆動条件に基づいて、移動機構102を制御することにより、移動機構102により駆動輪である走行部101が回転され、移動装置1が前進する(ステップS09)。
図6の例では、識別情報として1を有するマーカMの近傍には、他のマーカMは配置されていない(ステップS10 NO)。
【0098】
走行動作記憶部21eには、識別情報として1~20を有するマーカMの走行動作として、環境測定を行い、次の数字のマーカMを探して移動することが記憶されている。よって、移動装置1は、
図8(d)に示すように識別情報として1を有するマーカMまでの移動を完了すると、移動装置1に搭載されたユニットが環境測定を開始する(ステップS11)。
【0099】
ここで、識別情報として1を有するマーカMの近傍には、他のマーカMは配置されていない(ステップS12 NO)。環境測定が完了した旨の信号をユニットから受信すると、移動装置1のマップ消去部23は、マップ記憶部21aに記憶されているマップPを消去する(ステップS13)。そして、探索順序に基づき、ターゲットとなるマーカMの識別情報を2にインクリメントし(ステップS14)、ステップS01に戻る。移動装置1の現在位置は、識別情報として1を有するマーカM上にある。よって、ステップS01では、この移動装置1を中心座標(x0、y0)とする、新たなマップPが生成される。
【0100】
(動作のスキップ)
図6に示す通り、識別情報として1を有するマーカMから、識別情報として3を有するマーカMに至る直線経路には、障害物が存在する。そのような場合に、識別情報として2、98を有するマーカMを隣接して配置することで、マーカ検出部24aに一組のマーカMとして検出させることで、環境測定を行わない中継点とする例を説明する。
【0101】
図6の例では、識別情報として2を有するマーカMに隣接するように、識別情報として98を有するマーカMが配置されている。走行動作記憶部21eには、識別情報として98を有するマーカMの走行動作として、隣接して配置されたマーカMにおける所定の動作をスキップすることが記憶されている。ステップS03において、マーカ検出部24aが識別情報として2を有するマーカMと識別情報として98を有するマーカMを一組のマーカMとして検出した場合、ステップS10はYESとなり、移動装置1は環境測定を行わない。
【0102】
識別情報として2を有するマーカMの近傍には、識別情報として98を有するマーカMを除いて、他のマーカMは配置されていない(ステップS12 NO)。よって、移動装置1のマップ消去部23は、マップ記憶部21aに記憶されているマップPを消去する(ステップS13)。そして、探索順序に基づき、ターゲットとなるマーカMの識別情報を3にインクリメントし(ステップS14)、ステップS01に戻る。識別情報として3および4を有するマーカMにおける動作は、上記識別情報として1を有するマーカMにおける動作と同様であるため、その説明は省略する。
【0103】
(動作の終了)
図6に示す通り、識別情報として5、99を有するマーカMを隣接して配置することで、走行動作の終了点とする例を説明する。識別情報として5を有するマーカMに隣接するように、識別情報として99を有するマーカMが配置されている。走行動作記憶部21eには、識別情報として99を有するマーカMの走行動作として、隣接して配置されたマーカMにおいて所定の動作を行った後、処理を終了することが記憶されている。
【0104】
ステップS03において、マーカ検出部24aが識別情報として5を有するマーカMと識別情報として99を有するマーカMを一組のマーカMとして検出すると、以下の動作が行われる。識別情報として5を有するマーカMの近傍には、識別情報として99を有するマーカMを除いて、他のマーカMは配置されていない(ステップS10 NO)よって、移動装置1に搭載されたユニットは、環境測定を開始する(ステップS11)。そして、識別情報として99を有するマーカMが検出されているため(ステップS12 YES)、環境測定が完了すると移動装置1は停止する。
【0105】
(報知動作)
上記の移動装置1の動作説明においては、説明を省略したが、駆動条件演算部26は決定した駆動条件を、報知条件決定部28に出力している。そして、報知条件決定部28は、駆動条件演算部26が決定した駆動条件に基づいて、報知部12を制御する条件を決定し、報知制御部29に出力する。報知制御部29は、決定された報知条件に基づいて、報知部12に報知信号を出力するため、発光部12aおよび音声出力部12bは、移動装置1の動作状態に合わせた報知を行う。
【0106】
[作用効果]
以上のような本実施形態の移動装置1の作用効果は、以下の通りである。
(1)画像を撮像する撮像部10と、装置本体を移動させる走行部101と、動作開始ボタンBを有する移動装置1であって、移動装置1の制御部20は、移動装置1の現在位置を含む、所定の範囲のマップPを作成するマップ生成部22と、マップPを記憶するマップ記憶部21aと、撮像部10が撮像した撮像画像から、マーカMを検出するマーカ検出部24aと、マップPにおけるマーカMの座標を抽出するマーカ座標抽出部24eと、マップPにおける移動装置1の現在位置から前記マーカの座標に至る走行経路を演算する走行経路演算部25と、走行経路演算部25が演算した走行経路に基づいて、走行部101を駆動する駆動条件を計算する駆動条件演算部26と、マップ記憶部21aに記憶されているマップPを消去するマップ消去部23と、を含み、マップ消去部23は、移動装置1がマーカMに到達した後に、マップ記憶部21aに記憶されているマップPを消去し、マップPが消去された後に、マップ生成部22が、移動装置1の現在位置を含む新たなマップPを作成する。
【0107】
上記構成を有する移動装置1では、使用者は対象領域の所望の位置にマーカMを配置し、移動装置1の動作開始ボタンBを押下するだけで、移動装置1がマーカMを検出して自動でマーカM上に移動することが可能である。よって、移動装置1の使用者が容易に走行ルートの設定を行うことができる移動装置1を提供することが可能となる。
【0108】
また、従来の移動装置では、対象領域全域のマップを予め登録し、移動装置の位置と目的地の位置を対象領域のマップ上で把握し、移動装置の走行経路を決定するのが一般的であった。しかし、この方法では、マップを予め規定する必要があるため、登録したマップ外の領域において移動装置が移動することができなかった。また、広い範囲のマップを登録すると、走行経路の決定において制御部は膨大な演算処理を行う必要が生じ、演算に時間を要していた。これを解決するには、高性能なコンピュータを移動装置に搭載する必要があった。
【0109】
一方、本実施形態の移動装置1では、マップ生成部22が移動装置1の現在位置を含む、所定の範囲のマップPを作成する。マップPは、例えば数m四方のマップである。そのため、対象領域全域のマップが登録されている場合と比較して、走行経路の演算負荷は軽くなる。
【0110】
また、移動装置1がマーカMに到達した後に、マップ消去部23がマップ記憶部21aに記憶されているマップPを削除し、マップ生成部22が移動後の移動装置1の現在位置に基づいて新たなマップPを作成する。すなわち、移動装置1は、マーカMに到達する度にマップPをリセットするため、複数のマーカMを対象領域内に配置することで、コンピュータの性能の制限を受けずに対象領域の広さを設定することができる。もちろん、複数のマーカMを用いる場合も、使用者は、対象領域の所望の位置に複数のマーカMを配置し、移動装置1の動作開始ボタンBを押下するだけでよく、走行ルート設定の負担が生じない。
【0111】
(2)移動装置1の制御部20は、前記マーカMに含まれる識別図形M1と識別情報を関連付けて記憶するマーカ情報記憶部21dと、識別図形M1を抽出する識別図形抽出部24bと、マーカ情報記憶部21dに記憶されている識別図形M1と識別情報に基づいて、識別図形抽出部24bが抽出した識別図形M1が表す識別情報を判断する識別情報判断部24cと、をさらに含み、マーカ情報記憶部21dには、識別図形M1と識別情報に関連付けて、マーカMを探索していく順序に関する順序情報が記憶されている。
【0112】
本実施形態の移動システムでは、マーカMとして、それぞれ異なる識別図形M1を含むマーカMを複数採用することができる。識別情報によりマーカMの探索順序等を決定した場合には、使用者は、所望の探索順序となるようにマーカMを対象領域に配置し、移動装置1の走行動作を開始するという容易な手順で、移動装置1を対象領域内で移動させることが可能となる。
【0113】
(3)識別情報における移動装置1の走行動作を記憶する走行動作記憶部21eをさらに含み、駆動条件演算部26は、走行動作に応じて、移動装置1の駆動条件を計算する。
【0114】
移動装置1において、識別図形M1の識別情報から行うべき走行動作を決定し、識別情報に基づく走行動作を移動装置1が行う構成とすることで、移動装置1に種々の走行動作を行わせることが可能となる。移動装置1に搭載されたロボットの制御や、移動装置1の走行停止などの操作や設定を使用者が行う必要がない。従って、使用者は、移動装置1の動作開始ボタンBを押下した後に現場を離れても良く、使用者の負担をさらに軽減することができる。
【0115】
(4)移動装置1は、マーカMを探索するための探索条件を記憶する探索条件記憶部21bをさらに含み、探索条件は、撮像部10の撮像範囲を広げるような移動装置1の移動条件であり、駆動条件演算部26は、動作開始ボタンBが押下されて移動装置1の動作が開始したときに、探索条件に基づいて、移動装置1の駆動条件を計算する。
【0116】
例えば、移動装置1の背面側にターゲットのマーカMが配置されている場合、撮像部10の撮像範囲にターゲットのマーカMが入らないことがある。このような時に、探索条件に基づいて移動装置1を制御することにより、撮像部10の撮像範囲を広げることが可能となり、マーカMを確実に検出することができる。使用者は移動開始時の移動装置1の位置や向きなどを考慮せずに、自由にマーカMを対象領域に配置することが可能となり、走行ルートの設定を容易とすることができる。
【0117】
(5)移動装置1は、マーカMを再度探索するための再探索条件を記憶する再探索条件記憶部21cをさらに含み、再探索条件は、移動装置1を一時停止させる条件を含み、駆動条件演算部26は、探索条件に基づいた探索においてマーカMが検出されなかった場合に、再探索条件に基づいて、移動装置1の駆動条件を計算する。
【0118】
移動装置1の移動中は、撮像部10により撮像される画像の鮮明度が下がる。従って、移動装置1の水平回転探索による探索時に、例えば45度回転する度に一時停止することで、停止時に撮像部10がより鮮明な画像を撮像し得る。再探索条件に一時停止を含めることで、撮像部10としてWEBカメラなどの安価なカメラを採用することが可能となり、移動装置1の低コスト化を図ることができる。
【0119】
(6)移動装置1は、移動装置1の動作状態を知らせるための出力を行う報知部12と、報知部12の出力パターンと、移動装置1の駆動条件と、を関連付けた報知条件を記憶する報知条件記憶部21hと、駆動条件演算部26が決定した駆動条件に基づいて、報知部12を制御する条件を決定する報知条件決定部28と、をさらに含む。
【0120】
上述の通り、使用者が移動装置1の動作開始ボタンBを押下したことを契機に、移動装置1は自動で走行動作を行う。動作中の移動装置1を見るだけでは、移動装置1がどのような動作状態にあるかを、使用者が把握することが難しい。そこで、移動装置1に報知部12を設け、移動装置1の動作状態に併せて所定の出力パターンにて出力することで、使用者が移動装置1の動作状態を容易に把握することが可能となる。
【0121】
(7)マーカMの識別図形M1は、複数の正方形をした画素が二次元に配列されたマトリクス構造を有する図形であり、識別図形M1は、非線対称な図形である。
【0122】
マーカMの識別図形M1を非線対称な図形とすることで、移動装置1が、鏡など鏡面状の物体に写り込んだマーカMを、マーカMと誤認識することを防止することができる。よって、移動装置1のマーカ検出精度を高めることができる。
【0123】
(8)複数のマーカMはそれぞれ異なる識別図形M1を有し、異なる識別図形M1は、それぞれ線対称の関係となる図形が除外されている。
【0124】
複数のマーカMのそれぞれの識別図形M1を秘泉対称の関係とすることで、移動装置1が鏡など鏡面状の物体に写り込んだマーカMを、他の数字を表すマーカMと誤認識することを防止することができる。よって、移動装置1のマーカ検出精度を高めることができる。
【0125】
[第2の実施形態]
第2の実施形態に係る移動装置1について図面を参照しつつ説明する。なお、第1の実施形態の移動装置と同一の構成、機能については同一の符号を付してその説明は省略する。本実施形態では、
図9に示す通り、移動装置1にはモーションセンサ13が設けられ制御部20に接続されている。また、制御部20は、現在地取得部201を含む。
【0126】
また、本実施形態では、移動機構102が、回転数取得部102aを含む。回転数取得部102aは、走行部101の車輪の回転数を計測するように構成されている。移動機構102は、取得した車輪の回転数を、制御部20の現在地取得部201に出力する。
【0127】
モーションセンサ13は、慣性センサ(3軸加速度センサと3軸角速度センサ)と3軸地磁気センサを組み合わせた9軸センサとすることができる。モーションセンサ13は、移動装置1が移動したときに生じる加速度を検出することが好ましく、少なくとも3軸加速度センサおよび3軸角速度センサを備えていれば良い。ただし、移動装置1の自己位置推定に用いられるセンサであれば、いずれのセンサも採用できる。モーションセンサ13で検出された値は、制御部20の現在地取得部201に出力される。
【0128】
現在地取得部201は、マップ記憶部21aに記憶されているマップPにおける、移動中の移動装置1の座標を演算する処理部である。例えば、現在地取得部201は、回転数取得部102aから得た車輪の回転数に基づいて、移動装置1の自己位置を演算可能に構成されている。具体的には、現在地取得部201は、予め入力されている車輪の半径や車輪距離等の情報を利用し、車輪の回転数から移動装置1の移動距離や回転角度等の移動情報を演算可能に構成されている。現在地取得部201は、移動装置1の移動情報に基づいて、マップP上の移動装置1の現在地座標を求める。
【0129】
車輪の回転数で測位を行う場合、例えば床の摩擦等により回転数あたりの進む距離が変化する可能性がある。そこで、現在地取得部201は、車輪の回転数に加え、例えば、モーションセンサ13が検出した加速度を用いて現在地座標を演算するように構成しても良い。現在地取得部201は、加速度を積分することにより移動装置1の現在地座標を求めることができる。このモーションセンサ13で検出した値による現在地座標の演算結果を反映することで、車輪の回転数のみの場合に比べて、現在地座標の演算の精度が高まる。
【0130】
具体的には、車輪の回転数がモーションセンサ13の値より大きい場合には、モーションセンサ13の値を使用することで、車輪の空転による誤差をなくすことができる。また、車輪の回転数がモーションセンサ13の値より小さい場合には、車輪の回転数の値を使用することで、モーションセンサの誤差や異常値をフィルタリングすることができる。
【0131】
現在地取得部201は、演算結果である移動装置1の現在地座標を、走行経路演算部25に出力する。なお、上記の例では、車輪の回転数と加速度から移動装置1の現在地座標を求める例を示したが、現在地取得部201が移動装置1の現在地座標の演算に用いる情報はこれらに限定されない。
【0132】
ここで、走行経路演算部25は、移動装置1の現在地座標に加え、随時更新されるターゲットのマーカMの座標を取得するように構成されている。すなわち、移動装置1は、初回の走行経路・駆動条件の演算後に移動装置1がターゲットのマーカMに移動する間も、随時更新されるターゲットのマーカMの座標と、移動装置1の現在地座標に基づいて、粗走行経路を演算可能に構成されている。
【0133】
図10に、走行経路の再演算に関するフローチャートを示す。ターゲットのマーカMを検出すると、ステップS08において、走行経路演算部25が、移動装置1の現在位置から、マーカ座標抽出部24eが抽出したマーカMの座標に至る走行経路を演算する。そして、駆動条件演算部26は、走行経路記憶部21gに記憶されている走行経路に基づいて、移動機構102を駆動する駆動条件を計算する。この駆動条件に基づいて、移動装置1は、ターゲットのマーカMに向かって移動を開始する(ステップS09)。
【0134】
移動装置1の移動中、撮像部10が随時撮像する撮像画像に対して画像処理部24が画像処理を続ける。すなわち、マーカ検出部24aによるマーカMの検出、識別図形抽出部24bによる識別図形M1の抽出、識別情報判断部24cによる識別情報の判別、識別情報判定部24dによる識別情報の判定、が行われる。識別情報判定部24dにより、ターゲットのマーカMであると判断された場合(ステップS20 YES)、マーカ座標抽出部24eは、ターゲットのマーカMの座標を抽出する(ステップS21)。マーカ座標抽出部24eは、演算したマーカMの座標により、ターゲット位置記憶部21fに記憶されている既存のマーカMの座標を更新する。
【0135】
そして、ステップS08に戻り、走行経路演算部25は、現在地取得部201から取得した移動装置1の現在位置座標と、ターゲット位置記憶部21fに記憶されている更新されたマーカMの座標に基づいて、走行経路の演算を行う。移動装置1はターゲットのマーカMの移動中においても、撮像部10の撮像画像にターゲットのマーカMが存在する限りは、ステップS08、ステップS09、ステップS20のYES、ステップS21を繰り返す。
【0136】
一方、移動装置1がターゲットのマーカMに接近すると、ターゲットのマーカMが撮像部10の撮像範囲に収まらなくなる。すると、画像処理部24において、ターゲットのマーカMが検出されなくなる(ステップS20 NO)。ターゲットのマーカMが検出されなくなると、移動装置1は直前に演算した駆動条件に基づいて、ターゲットのマーカMに対する移動を完了する。すなわち、最後にターゲットのマーカMが検出された時に求めた走行経路および駆動条件に基づいて、走行動作を完了する。
【0137】
[その他の実施の形態]
(1)上記実施形態で説明した通り、移動装置1は、所定の作業を行うロボットを載置することで、様々な動作を行う移動型作業ロボットとして構成することもできる。例えば、
図3に示すように、室内の環境測定を行う測定ユニットを搭載することもできる。
図3の例では、移動装置1の筐体100aの上に、さらにユニット用の筐体100bが設けられている。この筐体100bの中に、環境測定を行う測定ユニットが設けられている。
【0138】
また、筐体100bの上部には、筐体100bの内部とつながる円筒状のパイプ103が設けられている。測定ユニットは、パイプ103を介してユニット内に気体を導入し、環境測定を行うように構成されている。
【0139】
移動装置1に作業ロボットが搭載される場合には、移動装置1の制御部20および作業ロボットの双方が、制御信号の送受信が可能な通信部を有するように構成される。通信部は、無線通信を行っても良く、また有線通信であっても良い。移動装置1の通信部は、マーカMごとに作業ロボット(ここでは測定ユニット)の通信部に作業開始信号を送信する。作業開始信号を受信した測定ユニットは、環境測定を開始する。
【0140】
環境測定が終わると、測定ユニットの通信部は、移動装置1の通信部に作業終了信号を送信する。作業終了信号を受信した移動装置1は、次のマーカMに向けて移動を開始する。このように構成することで、所望の作業を行いつつ、走行経路を移動する移動型作業ロボットを得ることができる。このような移動型作業ロボットの使用者は、作業を行いたい位置にマーカMを配置するだけで良いため、ロボットの技術者を介さずとも、容易かつ迅速に作業ルートの設定を行うことができる。
【0141】
(2)室内の環境測定を行う測定ユニットの一例としては、パーティクルカウンター、温湿度センサ、CO2センサ、ガス濃度センサを組み込んだ測定ユニットがある。測定ユニットは、例えばパーティクルカウンターにより微粒子測定の結果に基づき、室内の清浄度を演算する演算部を含んでいて良い。測定ユニットは、自動で各測定結果を一覧表にまとめた測定結果報告書を作成するように構成され、この測定報告書を保存する記憶部を含んでいても良い。このような測定ユニットを移動装置1に搭載して移動型作業ロボットとすることで、従来作業者が測定プローブを持って対象室内を移動して行っていた環境測定を、自動で行うことが可能となる。人手で行う測定では、作業者自身からの発塵により室内を汚染させる可能性があるが、移動型作業ロボットを用いた測定を行う場合にはそのような汚染を低減できる。
【0142】
(3)上記実施形態では、移動装置1には動作開始ボタンBが設けられているが、移動装置1の緊急停止ボタンなど、他の動作ボタンを設けても良い。移動装置1は、動作開始ボタンBの押下により動作完了まで自動で走行動作が進められるため、使用者の意思で移動装置1の動作を停止することができない。そこで、移動装置1に緊急停止ボタンを設け、緊急停止ボタンが押下された場合には全ての走行動作を停止するように構成することが好ましい。
【0143】
(4)上記実施形態では、検出したマーカMの識別図形M1が、マーカ情報記憶部21dに記憶されている探索順序に基づいたターゲットのマーカMの識別図形M1で有るか否かを、識別情報判定部24dが判断する構成とした。すなわち、撮像部10の撮像画像にマーカMが映っている場合には、マーカ検出部24aが識別図形M1を検出して、随時識別情報を判断する構成である。ただし、マーカ情報記憶部21dに記憶されている順序情報と識別情報に基づいて、ターゲットとなる識別図形M1を予め決定する構成としても良い。この場合には、マーカ検出部24aが検出した識別図形M1が、ターゲットとなる識別図形M1と一致する場合に、検出されたマーカMをターゲットのマーカMと認識する構成とすることができる。
【0144】
(5)上記実施形態では、走行動作記憶部21eには、障害物検出部11が障害物を検出した場合には、走行動作を停止する、という走行動作と、検出された障害物が除去された場合には、移動装置1の走行を再開するというような走行動作が記憶されているとした。ただし、移動装置1はマップPに基づいて移動するため、障害物検出部11が障害物を検出した場合には、走行経路を再度演算することもできる。
【0145】
すなわち、障害物検出部11が障害物を検出した場合には、走行動作記憶部21eに記憶されている走行動作に基づいて、走行動作を停止する。そして、走行経路演算部25が、障害部を回避してマーカMの座標に至るような走行経路を演算する構成としても良い。
【0146】
障害物回避の走行経路を
図11を例に説明する。例えば移動装置1が、ターゲットのマーカMに向かって移動中に、人が走行経路に立ち入ったとする。そのとき、走行経路演算部25は、例えば障害物を避けるために右に90度水平回転してから、前進する経路を演算する(図中1の経路)。しかし、右方向に進み続けた結果、壁がマップの範囲外に至るように存在することが明らかとなると、走行経路演算部25は、180度水平回転してから前進する経路を演算する(図中2の経路)。そして、マップ内に壁の途切れ眼を発見すると、右に90度水平回転してから前進する経路を演算する(図中3の経路)。最後に、走行経路演算部25は、マーカ位置を随時更新しながら、マーカMに到達する経路を演算する(図中4の経路)。
【0147】
このように、移動装置1の撮像部10の視野にターゲットのマーカMが入らなくなったとしても、マップPにおけるマーカMの座標がターゲット位置記憶部21fに記憶されている。従って、走行経路演算部25は、記憶されているマーカMの座標と、現在地取得部201が取得した現在地座標と、に基づいて、新たな走行経路を演算することができる。
【符号の説明】
【0148】
1 :移動装置
10 :撮像部
11 :障害物検出部
12 :報知部
12a :発光部
12b :音声出力部
13 :モーションセンサ
20 :制御部
21 :記憶部
21a :マップ記憶部
21b :探索条件記憶部
21c :再探索条件記憶部
21d :マーカ情報記憶部
21e :走行動作記憶部
21f :ターゲット位置記憶部
21g :走行経路記憶部
21h :報知条件記憶部
22 :マップ生成部
23 :マップ消去部
24 :画像処理部
24a :マーカ検出部
24b :識別図形抽出部
24c :識別情報判断部
24d :識別情報判定部
24e :マーカ座標抽出部
25 :走行経路演算部
26 :駆動条件演算部
27 :移動機構制御部
28 :報知条件決定部
29 :報知制御部
100 :筐体
100a :筐体
100b :筐体
101 :走行部
102 :移動機構
102a :回転数取得部
103 :パイプ
201 :現在地取得部
B :動作開始ボタン
I :入力部
O :出力部
M :マーカ
M1 :識別図形
M2 :枠
P :マップ