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特開2024-108596スポット溶接方法及びスポット溶接装置
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  • 特開-スポット溶接方法及びスポット溶接装置 図1
  • 特開-スポット溶接方法及びスポット溶接装置 図2
  • 特開-スポット溶接方法及びスポット溶接装置 図3
  • 特開-スポット溶接方法及びスポット溶接装置 図4
  • 特開-スポット溶接方法及びスポット溶接装置 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108596
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】スポット溶接方法及びスポット溶接装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 11/11 20060101AFI20240805BHJP
【FI】
B23K11/11 530
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013036
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100155457
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】森田 智也
【テーマコード(参考)】
4E165
【Fターム(参考)】
4E165AB02
4E165BA08
4E165BB02
4E165BB14
(57)【要約】
【課題】大判の板組みのうちその外縁部から遠く離れた箇所にも、点状の溶接部を低コストにかつ精度良く形成することを可能にする。
【解決手段】複数の金属板を重ね合わせた板組み20に金属板同士を接合する点状の溶接部を形成するスポット溶接方法である。相対的に接近及び離反移動可能に同軸配置された一対の電極5,6により、絶縁層13を介して重ね合わせた第1及び第2導電部材11,12を挟持すると共に、第1及び第2導電部材11,12のそれぞれに一体に設けた凸部11c,12cを板組み20(の一方面)に押し当てた状態で一対の電極5,6間に通電し、板組み20のうち凸部11c,12cの対向領域に溶接部を形成する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の金属板を重ね合わせた板組みに前記金属板同士を接合する点状の溶接部を形成するスポット溶接方法であって、
相対的に接近及び離反移動可能に同軸配置された一対の電極により、絶縁層を介して重ね合わせた第1及び第2導電部材を挟持すると共に、前記第1及び第2導電部材のそれぞれに一体に設けた凸部を前記板組みに押し当てた状態で一対の電極間に通電することにより、前記板組みのうち前記凸部の対向領域に前記溶接部を形成することを特徴とするスポット溶接方法。
【請求項2】
複数の金属板を重ね合わせた板組みに前記金属板同士を接合する点状の溶接部を形成するスポット溶接装置であって、
同軸上で相対的に接近及び離反移動する一対の電極を有する溶接ガンと、一対の電極に挟持される延長治具と、を備え、
前記延長治具は、絶縁層を介して重ね合わされた第1及び第2導電部材を有し、
前記第1及び第2導電部材のそれぞれに一体に設けた凸部を前記板組みに押し当てた状態で前記延長治具を挟持した一対の電極間に通電したとき、前記板組みのうち前記凸部の対向領域に前記溶接部が形成されることを特徴とするスポット溶接装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポット溶接方法及びスポット溶接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼板等の金属板を2枚以上重ね合わせた板組みにおいて金属板同士を接合するための方法の一つに抵抗スポット溶接(以下、単に「スポット溶接」と言う。)がある。スポット溶接は、金属板同士を迅速にかつ強固に接合可能であることに加え、外観品質に悪影響が及び難いという特長を有することから、例えば、自動車部品や家電製品などといった接合強度と外観品質とを両立させる必要がある製品を製造する際に重用されている。
【0003】
スポット溶接には、板組みを挟んで対向配置した一対の電極を板組みに押し当てた状態で上記一対の電極間に通電することにより、金属板同士の接触部に点状の溶接部を形成するダイレクトスポット溶接(例えば特許文献1)や、直列に配した一対の電極を板組みの一面(板厚方向の一方側に配置された金属板)に押し当てた状態で上記一対の電極間に通電することにより、金属板同士の接触部に複数の溶接部を同時に形成するシリーズスポット溶接(例えば特許文献2)などといった様々な方式がある。
【0004】
ダイレクトスポット溶接は、「Cガン」や「Xガン」等、一対の電極を同軸上で相対的に接近及び離反移動可能な状態で保持した溶接ガンを用いて実施されるのが一般的であり、汎用的な溶接方法として広く利用されている。これに対し、シリーズスポット溶接は、複数の溶接部を同時に形成できて溶接作業工程の短縮化に寄与できる、板組みを挟んで一対の電極を対向配置することが難しい溶接箇所にも溶接部を精度良く形成できる、などというダイレクトスポット溶接にはない利点がある。なお、上記の難溶接箇所の一例として、自動車のボデーを構成する板組みのような大判の板組みのうち、その外縁部から遠く離れた箇所を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-172949号公報
【特許文献2】特開2008-55437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のとおり、シリーズスポット溶接には、ダイレクトスポット溶接にはない利点があるものの、これを実施するに当たっては、上記の「Cガン」や「Xガン」などといった汎用的な溶接ガン(規格品)を使用できず、板組みの構成等に応じた専用の溶接ガンを使用する必要があることから、設備投資が嵩むという問題がある。
【0007】
また、シリーズスポット溶接を溶接ロボットを用いて自動で実施する際には、板組みの外側に設置した溶接ロボットのロボットアームが伸縮、屈曲、旋回等の三次元動作をすることによってアーム先端に装着した溶接ガンが板組みの溶接箇所の近傍に配置される。このため、板組みのうちその外縁部(換言すると、ロボット設置位置)から遠く離れた箇所を溶接する場合には、溶接ロボットの設置位置から遠く離れた位置で溶接ガンが支持される関係上、長寸のロボットアームを具備した溶接ロボットを使用する必要が生じる。またこの場合、溶接ロボット(ロボットアーム)の故障を未然に防止し、所望の溶接精度を安定的に確保するには、ロボットアームの荷重負荷能力を高める必要も生じる。これらの点からも設備投資が嵩むという問題がある。
【0008】
一方、ダイレクトスポット溶接であっても、大型のガンアームを有する溶接ガンを使用すれば、上記のような難溶接箇所にも溶接部を形成可能ではあるものの、ガンアームの撓みにより、電極を板組みに対して強く押し当てることができず、溶接不良が生じる可能性がある。
【0009】
以上のような課題に鑑み、本発明は、例えば自動車のボデーを構成する板組みのような大判の板組みにおいてその外縁部から遠く離れた箇所にも、点状の溶接部を低コストにかつ精度良く形成することを可能にする技術手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、溶接ガンとして、ダイレクトスポット溶接に用いられる「Cガン」や「Xガン」などの汎用的な溶接ガンを使用することを前提とし、その上で、溶接ガンとは別に設けた治具(導電部材)を用いて溶接ガンの電極と板組みの溶接箇所(溶接予定箇所)とを電気的に接続可能にすれば上記の目的を達成し得ると考え、本発明を創案するに至った。
【0011】
上記の目的を達成するために創案された本発明は、複数の金属板を重ね合わせた板組みに金属板同士を接合する点状の溶接部を形成するスポット溶接方法であって、相対的に接近及び離反移動可能に同軸配置された一対の電極により、絶縁層を介して重ね合わせた第1及び第2導電部材を挟持すると共に、第1及び第2導電部材のそれぞれに一体に設けた凸部を板組みに押し当てた状態で一対の電極間に通電することにより、板組みのうち上記凸部の対向領域に溶接部を形成することを特徴とする。
【0012】
上記のとおり、本発明に係るスポット溶接方法では、相対的に接近及び離反移動可能に同軸配置された一対の電極間に通電される。これはすなわち、本発明に係るスポット溶接方法においては、溶接ガンとして、シリーズスポット溶接を実施する際に用いられる高価な専用品ではなく、いわゆる「Cガン」や「Xガン」等、ダイレクトスポット溶接を実施する際に用いられる安価で入手容易な汎用品を使用することを意味する。
【0013】
また、本発明では、溶接ガンに設けられる一対の電極が板組みとは別に設けられる導電部材に押し当てられ、板組みを構成する金属板同士を接合する溶接部が、板組みのうち上記導電部材に設けた凸部の対向領域に形成される。要するに、本発明では、導電部材の形態(長さ、形状等)や、板組みに対する導電部材の配置位置等に応じて溶接部の形成位置が調整されるので、例えば板組みの外縁部から遠く離れた箇所に溶接部を形成するような場合でも、溶接時の撓みが懸念されるような大型のガンアームを有するダイレクトスポット溶接用の溶接ガンではなく、小型のガンアームを有するダイレクトスポット溶接用の溶接ガンを使用し、かつこの溶接ガンを板組みの外側に配置することができる。そのため、溶接ロボットを用いて溶接作業を自動で実施する際にも、長寸かつ荷重負荷能力が大きいロボットアームを有する溶接ロボットを使用する必要はない。
【0014】
本発明方法においては、板組みに形成すべき溶接部の位置等に応じて導電部材や絶縁層を準備・作製する必要があるものの、所定形状の導電部材や絶縁層は容易に作製可能である。以上のことから、本発明によれば、大判の板組みのうちその外縁部から遠く離れた箇所に溶接部を(自動で)形成する場合でも、設備投資を抑制して低コストに、かつ精度良く溶接部を形成することができる。
【0015】
上記方法においては、直列に配置した第1導電部材の凸部、及び第2導電部材の凸部を板組みの一方面に押し当てた状態で一対の電極間に通電するようにしても良いし、第1導電部材の凸部と第2導電部材の凸部とを板組みを挟んで同軸配置(対向配置)した状態で一対の電極間に通電するようにしても良い。前者の方法は、シリーズスポット溶接に対応する方法であり、後者の方法は、ダイレクトスポット溶接に対応する方法である。
【0016】
また、上記の目的は本発明に係るスポット溶接装置によっても達成することができる。すなわち、本発明に係るスポット溶接装置は、複数の金属板を重ね合わせた板組みに金属板同士を接合する点状の溶接部を形成するものであって、
同軸上で相対的に接近及び離反移動する一対の電極を有する溶接ガンと、一対の電極に挟持される延長治具と、を備え、
延長治具は、絶縁層を介して重ね合わされた第1及び第2導電部材を有しており、
第1及び第2導電部材のそれぞれに一体に設けた凸部を板組みに押し当てた状態で延長治具を挟持した一対の電極間に通電したとき、板組みのうち上記凸部の対向領域に溶接部が形成されることを特徴とする。
【0017】
係る構成のスポット溶接装置によっても、上述した本発明に係るスポット溶接方法と同様の作用効果を享受することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上より、本発明によれば、例えば大判の板組みの外縁部から大きく離れた箇所(難溶接箇所)にも、点状の溶接部を低コストにかつ精度良く形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係るスポット溶接装置の全体構成を概念的に示す図である。
図2図1の部分拡大図である。
図3図2の上面図(図1の要部拡大平面図)である。
図4図2の左側面図である。
図5】本発明の他の実施形態に係るスポット溶接装置の要部概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面(図1図5)に基づいて説明する。
【0021】
まず、図1に基づいてスポット溶接装置1の全体構成を説明する。このスポット溶接装置1は、複数の金属板(ここでは、2枚の金属板20a,20b。図2及び図4を参照。)を重ね合わせた板組み20に点状の溶接部を自動で形成するスポット溶接工程で使用されるものであり、ロボットアーム3及びその先端に取り付けられた溶接ガン4を有する溶接ロボット2と、板組み20を平置き(水平)姿勢で支持した支持部材(図2参照)と、板組み20の一方面上(上方)に配置された延長治具10とを備え、溶接ロボット2は板組み20の外側に設置されている。なお、図1及び図2図4は、板組み20のうち、その外縁部から遠く離れた溶接(予定)箇所に溶接部を形成する様子を概念的に示している。
【0022】
溶接ロボット2のロボットアーム3は、いわゆる多関節アームであり、図示例のロボットアーム3は第1回転軸3a~第6回転軸3fを有する6軸アームである。係る構成のロボットアーム3により、その先端に装着した溶接ガン4を任意の三次元位置に任意の姿勢で配置することができる。
【0023】
溶接ガン4は、主に、一対の電極5,6と、加圧機構7と、トランス8と、支持アーム9とを備え、支持アーム9が略C字状をなしたいわゆる「Cガン」である。
【0024】
一対の電極5,6のうちの一方(図中上側に配置された電極5)は、加圧機構7に取り付けられ、支持アーム9の先端部に取り付けられた他方(図中下側に配置された電極6)に対して接近及び離反移動する。このため、電極5は可動側を構成し、電極6は固定側を構成する。一対の電極5,6は、両者の先端部が互いに対向するように同軸配置されており(図2及び図4を併せて参照)、板組み20の溶接中には内部を流通する冷却液により常時冷却されるようになっている。
【0025】
加圧機構7としては、可動側の電極5の進退移動量を精密に調整できるもの、例えば、サーボモータを駆動源とした直動アクチュエータが好ましく用いられる。トランス8は、電源と電気的に接続されており、電極5,6間に溶接用の高電流を発生させる。
【0026】
次に、延長治具10を図2図4に基づいて詳細に説明する。図2図4に示す、板組み20の一方面上(上方)に配置された延長治具10は、絶縁層13を介して互いに非接触の状態で重ね合わされた第1導電部材11及び第2導電部材12を備える。両導電部材11,12は、銅等の導電性に優れる金属材料で形成され、絶縁層13は、セラミックス等の絶縁材料で形成される。
【0027】
図2図4に示す第1導電部材11は、平面視L字状をなすように互いに異なる方向に直線状に延び、板組み20と平行に配置された第1部分11a及び第2部分11bと、第2部分11bに設けられ、板組み20側に突出した凸部11cとを一体に有する。この第1導電部材11には、第1部分11a及び第2部分11bを長手方向に貫通する冷却液通路11dが設けられており、溶接作業中(一対の電極5,6間に通電している最中)には、冷却液通路11dを冷却液が流通する。これにより、第1導電部材11の過昇温が可及的に防止される。
【0028】
第2導電部材12は、第1導電部材11と同様に、平面視L字状をなすように互いに異なる方向に直線状に延び、板組み20と平行に配置された第1部分12a及び第2部分12bと、第2部分12bに設けられ、板組み20側に突出した凸部12cとを一体に有する。第2導電部材12には、第1部分12a及び第2部分12bを長手方向に貫通する冷却液通路12dが設けられており、溶接作業中には冷却液通路12dを冷却液が流通する。これにより、第2導電部材12の過昇温が可及的に防止される。
【0029】
第1導電部材11の第1部分11aと第2導電部材12の第1部分12aは、絶縁層13を介して重ね合わされる(対向配置される)一方、両導電部材11,12の第2部分11b,12bは重ね合わされず、互いに反対方向に延びている。これにより、第1導電部材11の凸部11cと第2導電部材12の凸部12cは、両導電部材11,12の第2部分11b,12bの長手方向に延びる直線上に一列に並べて(直列に)配置される。
【0030】
絶縁層13は、第1導電部材11の第1部分11aと第2導電部材12の第1部分12aの間に介在し、両導電部材11,12を互いに非接触の状態に保持する。
【0031】
本発明の実施形態に係るスポット溶接装置1は概ね以上の構成を有し、板組み20の溶接予定箇所には、例えば以下のようにして、点状の溶接部が自動で形成される。
【0032】
まず、図1図2及び図4に示すように、延長治具10の長手方向の一端部(導電部材11,12を構成する第1部分11a,12aのうち第2部分11b,12bの反対側の端部)を板組み20の外側に突出させると共に、延長治具10の長手方向の他端部に設けた凸部11c,12cの先端部を板組み20の溶接予定箇所(金属板20aの上面)に当接させた状態で、延長治具10を板組み20の上方に配置する。このとき、図示外の加圧機構を用いて、両導電部材11,12の第2部分11b,12bに対して鉛直下向きの加圧力P(図2及び図4参照)を付与し、凸部11c,12cを板組み20の溶接予定箇所に押し当てる。
【0033】
そして、延長治具10の長手方向の一端部を板組み20の外側に配置された上下一対の電極5,6で上下両側から挟持し、その後、電極5,6間に所定時間通電する。電極5,6間に通電すると、延長治具10(を構成する導電部材11,12)を介して板組み20に溶接電流(電子)が流れ、板組み20のうち導電部材11,12の凸部11c,12cとの対向領域に金属板20a,20b同士を接合した2つの溶接部が同時に形成される。
【0034】
以上で説明した実施形態におけるスポット溶接方法は、いわゆるシリーズスポット溶接に相当するものであるが、一対の電極5,6を保持した溶接ガン4として、ダイレクトスポット溶接を実施する際に使用される汎用的なCガンを用いて実施することができ、シリーズスポット溶接を実施する際に通常必要とされるような高価な専用品を用いる必要がない。
【0035】
また、本実施形態では、溶接ガン4に設けられる一対の電極5,6が板組み20とは別に設けられる延長部材10(を構成する導電部材11,12)に押し当てられ、金属板20a,20b同士を接合する溶接部が、板組み20のうち導電部材11,12に設けた凸部11c,12cの対向領域に形成される。要するに、本発明では、導電部材11,12の形態(長さ、形状等)や、板組み20に対する導電部材11,12の配置位置等に応じて板組み20に設けるべき溶接部の形成位置が調整されるので、板組み20の外縁部から遠く離れた箇所に溶接部を形成するような場合でも、溶接時の撓みが懸念されるような大型のガンアームを有するダイレクトスポット溶接用の溶接ガンではなく、小型のガンアームを有するダイレクトスポット溶接用の汎用的な溶接ガン4を使用し、かつこの溶接ガン4を板組み20の外側に配置することができる。そのため、溶接ロボット2を用いて溶接作業を自動で実施する際にも、長寸かつ荷重負荷能力が大きいロボットアーム3を具備した溶接ロボット2を使用する必要がない。
【0036】
なお、本実施形態のスポット溶接方法では、板組み20に形成すべき溶接部の位置等に応じて延長治具10(を構成する導電部材11,12や絶縁層13)を準備・作製する必要があるものの、所定形状の導電部材11,12や絶縁層13を作製することを困難にならしめる格別の事情はなく、これらは容易に作製可能である。
【0037】
以上のことから、本発明によれば、板組み20のうちその外縁部から遠く離れた箇所に点状の溶接部を自動で形成する場合でも、設備投資を抑制して低コストに、かつ精度良く溶接部を形成することが可能となる。
【0038】
以上、本発明の一実施形態について説明を行ったが、本発明は、以上で説明した実施形態に限定適用されるものではない。
【0039】
例えば、延長治具10は、図2図4を参照して説明したものに替えて、図5に示すようなものを使用することもできる。図5に示す延長治具10は、絶縁層13を介して互いに非接触の状態で重ね合わされた第1導電部材11及び第2導電部材12を有する点は、図2図4に示す延長治具10と共通している一方、両導電部材11,12のそれぞれに一体に設けた凸部11c,12cの配置態様が図2図4に示す延長治具10とは異なる。具体的には、第1導電部材11の凸部11cと第2導電部材12の凸部12cとが板組み20を挟んで対向するように同軸配置され、第1導電部材11の凸部11cが板組み20の一方面(上面)に押し当てられると共に、第2導電部材12の凸部12cが板組み20の他方面(下面)に押し当てられている。この場合、一対の電極5,6間に通電すると、板組み20のうち凸部11c,12c間に金属板20a,20b同士を接合する点状の溶接部が形成される。要するに、図5に示す実施形態は、いわゆるダイレクトスポット溶接を実施するに際して本発明を適用した場合の一例である。
【0040】
また、以上で説明した実施形態では、溶接ガン4としていわゆるCガンを使用したが、溶接ガン4としては、Cガンに替えて、ダイレクトスポット溶接の実施に際して一般的に用いられている汎用品(例えば、Xガン)を用いることも可能である。
【0041】
以上で説明した実施形態では、溶接ロボット2を用いて板組み20に点状の溶接部を自動で形成するに際して本発明を適用したが、本発明に係る溶接方法は、作業者による人手作業で板組み20に点状の溶接部を形成する際にも適用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 スポット溶接装置
2 溶接ロボット
3 ロボットアーム
4 溶接ガン
5 電極
6 電極
9 支持アーム
10 延長治具
11 第1導電部材
11c 凸部
12 第2導電部材
12c 凸部
13 絶縁層
20 板組み
図1
図2
図3
図4
図5