IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オムロン株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-方法、プログラム、および、装置 図1
  • 特開-方法、プログラム、および、装置 図2
  • 特開-方法、プログラム、および、装置 図3
  • 特開-方法、プログラム、および、装置 図4
  • 特開-方法、プログラム、および、装置 図5
  • 特開-方法、プログラム、および、装置 図6
  • 特開-方法、プログラム、および、装置 図7
  • 特開-方法、プログラム、および、装置 図8
  • 特開-方法、プログラム、および、装置 図9
  • 特開-方法、プログラム、および、装置 図10
  • 特開-方法、プログラム、および、装置 図11
  • 特開-方法、プログラム、および、装置 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108604
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】方法、プログラム、および、装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20240805BHJP
【FI】
G05B23/02 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013049
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(74)【代理人】
【識別番号】100172236
【弁理士】
【氏名又は名称】岩木 宣憲
(72)【発明者】
【氏名】矢野 慧介
(72)【発明者】
【氏名】小園 健晃
【テーマコード(参考)】
3C223
【Fターム(参考)】
3C223AA11
3C223BA03
3C223CC02
3C223DD03
3C223EB01
3C223EB02
3C223EB07
3C223FF02
3C223FF03
3C223FF04
3C223FF12
3C223FF13
3C223FF33
3C223FF42
3C223FF52
3C223GG01
3C223HH03
(57)【要約】
【課題】複数種類の特徴量のデータの中からトリガソースに適した特徴量のデータを推奨可能な方法を提供すること。
【解決手段】本開示の方法は、監視対象から取得された複数種類の特徴量のデータのうち、特徴量の値の大きさの度数分布を示すヒストグラムが二峰性分布となる特徴量のデータに対して、二峰性分布の程度をスコア化することでスコア付けを行い、監視対象に対する監視を開始するための条件を構成するトリガソースとして、付けられたスコアが所定条件を満たす特徴量を推奨する。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象から取得された複数種類の特徴量のデータのうち、前記特徴量の値の大きさの度数分布を示すヒストグラムが二峰性分布となる特徴量のデータに対して、二峰性分布の程度をスコア化することでスコア付けを行い、
前記監視対象に対する監視を開始するための条件を構成するトリガソースとして、付けられたスコアが所定条件を満たす前記特徴量を推奨する、方法。
【請求項2】
前記ヒストグラムを一方の分布の山を含む第1群と他方の分布の山を含む第2群とに分割し、分割された前記第1群および前記第2群の乖離度合いを数値化することで、前記ヒストグラムにおける二峰性分布の程度をスコア化する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記トリガソースとして推奨された前記特徴量のデータがトリガレベルを超えることで、前記監視対象に対する監視が開始される場合、前記第1群および前記第2群に基づいて、推奨する前記トリガレベルを算出する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
推奨された前記特徴量のデータを推奨データとし、推奨された前記トリガレベルを推奨トリガレベルとすると、前記推奨トリガレベルを超える前記推奨データの周期により、前記推奨データおよび前記推奨トリガレベルの適正を判定する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記スコアが近似する複数種類の前記特徴量のデータが、第1特徴量のデータと、第2特徴量のデータとを含み、前記第1特徴量のデータにおける前記第1群および前記第2群の比が、前記第2特徴量のデータにおける前記第1群および前記第2群の比よりも予め設定されているデューティ比に近い場合、前記トリガソースとして、前記第2特徴量よりも前記第1特徴量を推奨する、請求項2~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
1種類の前記特徴量のデータを取得する度に、取得した前記特徴量のデータをヒストグラム化する、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
監視対象から取得された複数種類の特徴量のデータのうち、前記特徴量の値の大きさの度数分布を示すヒストグラムが二峰性分布の前記特徴量のデータに対して、二峰性分布の程度をスコア化することでスコア付けを行い、
前記監視対象に対する監視を開始するための条件を構成するトリガソースとして、付けられたスコアが所定条件を満たす前記特徴量を推奨する、方法をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項8】
監視対象の複数種類の特徴量のデータを取得可能に構成された取得部と、
取得された複数種類の前記特徴量のデータのうち、前記特徴量の値の大きさの度数分布を示すヒストグラムが二峰性分布となる特徴量のデータに対して、二峰性分布の程度をスコア化することでスコア付けを実行可能に構成されたスコア付け部と、
前記監視対象に対する監視を開始するための条件を構成するトリガソースとして、付けられたスコアが所定条件を満たす前記特徴量を推奨可能に構成された推奨部と
を備える、装置。
【請求項9】
前記トリガソースとして推奨された前記特徴量を複数表示可能な表示部と、
前記表示部に表示された複数種類の前記特徴量の中から1つの前記特徴量を選択可能な選択部と
を備える、請求項8に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、方法、プログラム、および、装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数種類の稼働情報の中から入力に応じて1つの事象をトリガとして選択する第1の選択手段を具備する施設管制装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-142714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の発明において、トリガに適した稼働情報は、監視対象である設備の特性等により異なる場合がある。この場合、稼働情報がトリガに適しているか否かについては、監視対象の特性等について一定の知識がなければ容易に判別できない場合がある。
【0005】
本開示は、複数種類の特徴量の中からトリガソースに適した特徴量を推奨可能な方法、プログラムおよび装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様の方法は、
監視対象から取得された複数種類の特徴量のデータのうち、特徴量の値の大きさの度数分布を示すヒストグラムが二峰性分布となる特徴量のデータに対して、二峰性分布の程度をスコア化することでスコア付けを行い、
前記監視対象に対する監視を開始するための条件を構成するトリガソースとして、付けられたスコアが所定条件を満たす前記特徴量を推奨する。
【0007】
本開示の一態様のプログラムは、
監視対象から取得された複数種類の特徴量のデータのうち、前記特徴量の値の大きさの度数分布を示すヒストグラムが二峰性分布となる特徴量のデータに対して、二峰性分布の程度をスコア化することでスコア付けを行い、
前記監視対象に対する監視を開始するための条件を構成するトリガソースとして、付けられたスコアが所定条件を満たす前記特徴量を推奨する、方法をコンピュータに実行させる。
【0008】
本開示の一態様の装置は、
監視対象の複数種類の特徴量のデータを取得可能に構成された取得部と、
取得された複数種類の前記特徴量のデータのうち、特徴量の値の大きさの度数分布を示すヒストグラムが二峰性分布となる特徴量のデータに対して、二峰性分布の程度をスコア化することでスコア付けを実行可能に構成されたスコア付け部と、
前記監視対象に対する監視を開始するための条件を構成するトリガソースとして、付けられたスコアが所定条件を満たす前記特徴量を推奨可能に構成された推奨部と
を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、複数種類の特徴量の中からトリガソースに適した特徴量を推奨可能な方法、プログラムおよび装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の一実施形態の装置を示すブロック図。
図2】スコア付けプロセスを説明するための第1の図。
図3】スコア付けプロセスを説明するための第2の図。
図4】スコア付けプロセスを説明するための第3の図。
図5】スコア付けプロセスを説明するための第4の図。
図6】スコア付けプロセスを説明するための第5の図。
図7】本開示の方法の一例を説明するための第1のフローチャート。
図8】本開示の方法の一例を説明するための第2のフローチャート。
図9】加工機の稼働中、第1期間および第2期間が交互に繰り返される場合における有効電力と時間との関係を示すグラフ。
図10】加工機の稼働中、第1期間および第2期間が交互に繰り返される場合における刃具の回転周波数と時間との関係を示すグラフ。
図11】製造装置の稼働中、第1期間および第2期間が交互に繰り返される場合における有効電力と時間との関係を示すグラフ。
図12】製造装置の稼働中、第1期間および第2期間が交互に繰り返される場合におけるボールねじの回転周波数と時間との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の一例を添付図面に従って説明する。以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、本開示の適用物、および、本開示の用途を制限することを意図するものではない。添付図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは必ずしも合致していない。
【0012】
本開示の一実施形態の装置1は、監視対象100(例えば、工場の生産設備)を監視する機器に適用され、監視対象である生産設備に対する監視を開始するための条件を構成するトリガソースを推奨可能に構成されている。装置1は、図1に示すように、プロセッサ11、記憶部12、通信部13、取得部21、スコア付け部22および推奨部23を含む。
【0013】
プロセッサ11は、CPU、MPU、GPU、DSP、FPGA、ASIC等を含む。記憶部12は、例えば、内部記録媒体または外部記録媒体で構成されている。内部記録媒体は、不揮発メモリ等を含む。外部記録媒体は、ハードディスク(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)、光ディスク装置等を含む。通信部13は、例えば、サーバおよびセンサ等の外部装置との間でデータの送受信を行うための通信回路または通信モジュールを含む。
【0014】
取得部21、スコア付け部22および推奨部23は、例えば、記憶部12に記憶されている所定のプログラムをプロセッサ11が実行することにより実現される。
【0015】
取得部21は、監視対象の複数種類の特徴量のデータを取得可能に構成されている。監視対象の特徴量のデータは、例えば、センサにより所定のサンプリング時間毎に検出され、通信部13を介して装置1に入力されて、記憶部12に記憶される。この場合、取得部21は、記憶部12から監視対象の複数種類の特徴量のデータを取得する。特徴量には、例えば、周波数、有効電力または電流実効値が含まれる。
【0016】
スコア付け部22は、取得された複数種類の特徴量のデータのうち、特徴量の値の大きさの度数分布を示すヒストグラムが二峰性分布となる特徴量のデータに対して、二峰性分布の程度をスコア化することでスコア付けを実行可能に構成されている。本実施形態では、1種類の特徴量のデータが取得される度に、取得された特徴量のデータがヒストグラム化される。
【0017】
「スコア付け」プロセスの一例を以下に示す。
【0018】
(1)二峰性分布のヒストグラム200を一方の分布の山を含む第1群201と他方の分布の山を含む第2群202とに分割する。図2に分割前のヒストグラム200を示し、図3に分割後のヒストグラム200を示す。
【0019】
二峰性分布のヒストグラム200を分割する方法の一例を以下に示す。
・階層型クラスタリング、k-means法、カーネル密度推定等を用いて、ヒストグラム200をクラスタ数2でクラスタリングして分割する。
・移動平均またはLPF(ローパスフィルタ)によってヒストグラム200を滑らかにし、微分によって、度数の極大値および極小値を探索する。極大値が複数ある場合、複数の極大値間の最も小さい極小値を区切りとして、ヒストグラム200を分割する。極大値が1つ以下の場合は、ヒストグラム200に対応する特徴量のデータを「スコア付け」プロセスから除外する。
・判別分析法を用いて、分離度が最大になるところを境界として、ヒストグラム200を分割する。
【0020】
(2)分割された第1群201および第2群202の乖離度合いを数値化し、数値化された乖離度合いをスコアとする。つまり、ヒストグラム200における二峰性分布の程度は、数値化された乖離度合いによりスコア化される。
【0021】
乖離度合いの数値化の一例を以下に示す。
・第1群201および第2群202のデータを統計的に検定して、検定値を算出する。検定は、例えば、Welchのt検定を用いる。算出された検定値を第1群201および第2群202の乖離度合いを表すスコアとして算出する。検定値が大きいほど、第1群201および第2群202の乖離度合いが高いと判定される。一例として、第1群201および第2群202の乖離度合いが高いヒストグラム200を図4に示し、第1群201および第2群202の乖離度合いが低いヒストグラム200を図5に示す。
・第1群201および第2群202を陽性および陰性としてROC曲線を描画し、AUC(Area Under the Curve)値を算出する(図6参照)。算出されたAUC値を第1群201および第2群202の乖離度合いを表すスコアとして算出する。AUC値が大きいほど、第1群201および第2群202の乖離度合いが高いと判定される。
【0022】
推奨部23は、監視対象に対する監視を開始するための条件を構成するトリガソースとして、付けられたスコアが所定条件を満たす特徴量を推奨可能に構成されている。特徴量は、例えば、「種類」および「データ」の少なくともいずれかの形式で推奨される。所定条件は、例えば、スコアが所定値(例えば、算出された全てのスコアの最大値の95%)以上であることが含まれる。
【0023】
本実施形態では、推奨部23は、ヒストグラム200の第1群201および第2群202に基づいて、推奨するトリガレベルを算出する。トリガレベルは、監視対象に対する監視を開始するか否かを判断するための閾値であり、トリガソースとして推奨された特徴量のデータがトリガレベルを超えることで、監視対象に対する監視が開始される。トリガレベルTLの算出方法の一例を図2および図6に示す。ヒストグラム200を用いる場合、図2に示すように、第1群201および第2群202の区切り(境界)が推奨するトリガレベルTLとして算出される。ROC曲線を用いる場合、図6に示すように、ROC曲線の左上の角との距離が一番近くなる部分が、推奨するトリガレベルTLとして算出される。
【0024】
本実施形態では、推奨部23は、適正判定処理を実行可能に構成されている。適正判定処理では、推奨されたトリガレベル(以下、推奨トリガレベルという。)を超える推奨された特徴量のデータ(以下、推奨データという。)の周期により、推奨データおよび推奨トリガレベルの適正が判定される。例えば、推奨トリガレベルを超える推奨データの周期が安定していれば、適切にトリガがかかっていると言え、推奨データおよび推奨トリガレベルは適正であると判定される。
【0025】
本実施形態では、推奨部23は、推奨データ決定処理を実行可能に構成されている。推奨データ決定処理では、スコアが近似する複数種類の特徴量のデータがある場合に、次のように推奨データが決定される。スコアが近似する複数種類の特徴量のデータが、第1特徴量のデータと、第2特徴量のデータとを含むとする。
・第1特徴量のデータにおける第1群および第2群の比(以下、第1の比率という。)と、第2特徴量のデータにおける第1群および第2群の比(第2の比率という。)とを算出する。
・第1の比率と、第1特徴量に対して予め設定されているデューティ比とを比較し、第2の比率と、第2特徴量に対して予め設定されているデューティ比とを比較する。例えば、第1の比率が、第2の比率よりも設定されているデューティ比に近い場合、推奨部23は、トリガソースにより適した特徴量として、第2特徴量よりも第1特徴量を推奨する。各デューティ比は、例えば、装置1のユーザにより予め設定されてもよいし、監視対象に応じて自動的に設定されてもよい。各デューティ比には、例えば、各特徴量のデータにおける2つの所定期間の長さの比が含まれる。
【0026】
本実施形態では、装置1は、表示部24および選択部25を備える。表示部24は、例えば、ディスプレイで構成され、トリガソースとして推奨された特徴量を複数表示可能に構成されている。表示部24は、推奨された複数種類の特徴量のうち、付けられたスコアの高い特徴量から順番にユーザに提示するように構成されてもよい。表示部24には、トリガソースとして推奨された特徴量のデータに加えて、推奨されたトリガレベルが表示されてもよい。選択部25は、表示部24に表示された複数種類の特徴量の中から1つの特徴量を選択可能に構成されている。選択部25は、例えば、記憶部12に記憶されている所定のプログラムをプロセッサ11が実行することにより実現される。ユーザによる特徴量の選択は、例えば、マウス、キーボードまたはスマートフォンの入力装置を介して行われる。選択された特徴量およびトリガレベルは、例えば、通信部13を介して、監視対象の監視を行う機器に出力される。
【0027】
図7および図8を参照して、本開示のトリガソースを推奨する方法の一例を説明する。図7および図8に示す方法は、一例として、プロセッサ11が所定のプログラムを実行することで実施される。
【0028】
図7に示すように、トリガソースを推奨する方法が開始されると、取得部21が、複数種類の特徴量のデータを取得する(ステップS1)。複数種類の特徴量のデータが取得されると、装置1は、取得された複数種類の特徴量のデータの各々を特徴量の値の大きさの度数分布に基づいてヒストグラム化する(ステップS2)。
【0029】
取得された特徴量のデータがヒストグラム化されると、スコア付け部22は、ヒストグラムが二峰性分布の特徴量のデータに対して、スコア付けを行う(ステップS3)。ステップS3は、図8に示すように実行される。図8に示すように、スコア付け部22は、二峰性分布のヒストグラムを第1群および第2群に分割し(ステップS31)、分割された第1群および第2群の乖離度合いを数値化する(ステップS32)。スコア付け部22は、数値化された第1群および第2群の乖離度合いから、ヒストグラムにおける二峰性分布の程度をスコア化する(ステップS33)。
【0030】
ヒストグラムが二峰性分布の特徴量のデータに対してスコア付けが行われると、推奨部23は、スコアが所定条件を満たす特徴量をトリガソースとして推奨し(ステップS4)、トリガソースを推奨する方法が終了する。
【0031】
本開示の方法によれば、次のような効果を発揮できる。
【0032】
通常、監視対象が生産設備であった場合、生産設備は、例えば、動作が起動から生産に移行する場合、また、生産から停止に移行する場合に、様々な動作条件が移行する。このため、監視機器が生産設備の異常(例えば、劣化状態)を監視するためには、毎回同じ動作条件の時にのみロギングすることが望ましい。様々な動作条件でロギングすると、ユーザが生産設備の異常による変化と動作モードによる変化とを判別しなければならない場合がある。そこで、決まったタイミングでのみロギングする方法として一般的に実施されるのがトリガによる計測開始タイミングの決定である。
【0033】
トリガには、外部トリガと内部トリガとが含まれる。外部トリガは監視機器に対して外部から信号を与える方法であり、内部トリガは監視機器が測定しているパラメータ(トリガソース)が一定の条件を満たしたときにだけロギングする。監視機器が複数のパラメータを演算できる場合、内部トリガでは、どの特徴量のデータをトリガソースとするかを選択する必要がある。選択するトリガソースは1つであっても複数(AND条件、OR条件)であっても構わない。
【0034】
トリガソースとして用いられるパラメータ(つまり、特徴量のデータ)は、例えば、監視対象の種類および動作と、内部トリガの種類(立ち上がり、立ち下がり、レベル)とに応じて選択される。つまり、トリガソースに適したパラメータを選択するためには、監視対象の種類および動作によって変わるため、監視対象に対するドメイン知識が要求される場合がある。特に、取得可能なパラメータが多くなればなるほど、適切なパラメータを選択するのが難しくなる。
【0035】
トリガソースに適した特徴量には、監視する期間と監視しない期間との差が大きい特徴量が含まれる。ヒストグラムが二峰性分布の特徴量のデータは、監視する期間と監視しない期間とが明確に分かれていることが多い。
【0036】
例えば、監視対象が「加工物を加工する刃具(例えば、ドリル)を備えた加工機」であり、加工機の稼働中、2つの期間(第1期間Aおよび第2期間Bとする。)が交互に繰り返されるとする。第1期間Aは、刃具が加工物に接触している期間(第1期間A)であり、第2期間Bは、刃具が加工物に接触しておらず、空転している期間である。この場合、図9および図10に示すように、第1期間Aおよび第2期間Bにおいて刃具の回転周波数は一定となるが、第1期間Aでは、刃物の加工物への接触によりトルクが大きくなるため、第2期間Bよりも有効電力が大きくなる。このため、「周波数」よりも「有効電力」の方がトリガソースに適した特徴量であると言える。
【0037】
例えば、監視対象が「ボールねじを備えた製造装置」であり、製造装置の稼働中、第1期間Aおよび第2期間Bが交互に繰り返されるとする。第1期間Aは、ボールねじが駆動している期間であり、第2期間Bは、ボールねじが停止している期間である。この場合、図11および図12に示すように、有効電力および回転周波数の両方において、第1期間Aの値と第2期間Bの値との間に差異があるが、有効電力は第1期間Aの開始時および終了時に急激に値が大きくなる。このため、「有効電力」よりも「周波数」の方がトリガソースに適した特徴量であると言える。
【0038】
本開示の方法は、次の構成を備える。このような構成により、複数種類の特徴量の中からトリガソースに適した特徴量を推奨できる。
・監視対象から取得された複数種類の特徴量のデータのうち、ヒストグラムが二峰性分布の特徴量のデータに対して、二峰性分布の程度をスコア化することでスコア付けを行う。
・監視対象に対する監視を開始するための条件を構成するトリガソースとして、付けられたスコアが所定条件を満たす特徴量を推奨する。
【0039】
本開示の方法は、次に示す複数の構成のいずれか1つまたは複数の構成を任意に採用できる。つまり、次に示す複数の構成のいずれか1つまたは複数の構成は、前記実施形態に含まれていた場合は任意に削除でき、前記実施形態に含まれていない場合は任意に付加することができる。このような構成を採用することにより、複数種類の特徴量の中からトリガソースに適した特徴量を推奨できる方法をより確実に実現できる。
【0040】
ヒストグラムを一方の分布の山を含む第1群と他方の分布の山を含む第2群とに分割し、分割された第1群および第2群の乖離度合いを数値化することで、ヒストグラムにおける二峰性分布の程度をスコア化する。
【0041】
トリガソースとして推奨された特徴量のデータがトリガレベルを超えることで、監視対象に対する監視が開始される場合、第1群および第2群に基づいて、推奨するトリガレベルを算出する。
【0042】
推奨された特徴量のデータを推奨データとし、推奨されたトリガレベルを推奨トリガレベルとすると、推奨トリガレベルを超える推奨データの周期により、推奨データおよび推奨トリガレベルの適正を判定する。
【0043】
スコアが近似する複数種類の特徴量のデータとして、第1特徴量のデータと、第2特徴量のデータとを有し、第1特徴量のデータにおける第1群および第2群の比が、第2特徴量のデータにおける第1群および第2群の比よりも予め設定されているデューティ比に近い場合、トリガソースとして、第2特徴量よりも第1特徴量を推奨する。
【0044】
1種類の特徴量のデータを取得する度に、取得した特徴量のデータをヒストグラム化する。このような構成により、記憶部12が、複数種類の特徴量のデータを全て記憶する必要がなくなり、記憶部12に記憶されるデータの容量を削減できる。
【0045】
本開示の方法は、コンピュータに実行させることができる。本開示には、本開示の方法をコンピュータに実行させるためのプログラム、および、本開示の方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを記憶するコンピュータ可読性の記憶媒体が含まれる。
【0046】
装置1によれば、次のような効果を発揮できる。
【0047】
装置1は、取得部21と、スコア付け部22と、推奨部23とを備える。取得部21は、監視対象の複数種類の特徴量のデータを取得可能に構成されている。スコア付け部22は、取得された複数種類の特徴量のデータのうち、ヒストグラムが二峰性分布の特徴量のデータに対して、二峰性分布の程度をスコア化することでスコア付けを実行可能に構成されている。推奨部23は、監視対象に対する監視を開始するための条件を構成するトリガソースとして、付けられたスコアが所定条件を満たす特徴量を推奨可能に構成されている。このような構成により、複数種類の特徴量の中からトリガソースに適した特徴量を推奨できる。
【0048】
装置1は、トリガソースとして推奨された特徴量を複数表示可能な表示部24と、表示部24に表示された複数種類の特徴量の中から1つの特徴量を選択可能な選択部25とを備える。このような構成により、トリガソースとして推奨された特徴量を確認し易く、トリガソースとする特徴量を選択し易い装置1を実現できる。
【0049】
本開示の方法および装置1は、次のように構成することができる。
【0050】
二峰性分布の程度のスコア化は、第1群および第2群を分割する方法に限らず、実現可能な他の方法を採用してもよい。
【0051】
特徴量のデータのヒストグラム化は、装置1で行う場合に限らず、サーバ等の外部装置で行ってもよい。この場合、装置1は、ヒストグラム化された特徴量のデータを取得可能に構成される。
【0052】
取得された特徴量のデータのヒストグラム化は、1種類の特徴量のデータを取得する度に行う場合に限らず、複数種類または全種類の特徴量のデータが取得されたときに行うようにしてもよい。
【0053】
推奨部23は、適正判定処理および推奨データ決定処理のいずれか一方のみを実行可能であってもよいし、両方とも実行不可能であってもよい。
【0054】
表示部24および選択部25は、省略することができる。この場合、装置1は、通信部13を介して推奨された特徴量、推奨データおよび推奨トリガレベルの少なくともいずれかを外部の表示装置(例えば、PCのモニタ)に出力するように構成されてもよい。装置1および外部の表示装置は、有線通信または無線通信で接続される。
【0055】
以上、図面を参照して本開示における種々の実施形態を詳細に説明したが、最後に、本開示の種々の態様について説明する。なお、以下の説明では、一例として、参照符号も添えて記載する。
【0056】
本開示の第1態様の方法は、
監視対象から取得された複数種類の特徴量のデータのうち、前記特徴量の値の大きさの度数分布を示すヒストグラムが二峰性分布となる特徴量のデータに対して、二峰性分布の程度をスコア化することでスコア付けを行い、
前記監視対象に対する監視を開始するための条件を構成するトリガソースとして、付けられたスコアが所定条件を満たす前記特徴量を推奨する。
【0057】
本開示の第2態様の方法は、第1態様に記載の方法において、
前記ヒストグラムを一方の分布の山を含む第1群と他方の分布の山を含む第2群とに分割し、分割された前記第1群および前記第2群の乖離度合いを数値化することで、前記ヒストグラムにおける二峰性分布の程度をスコア化する。
【0058】
本開示の第3態様の方法は、第2態様に記載の方法において、
前記トリガソースとして推奨された前記特徴量のデータがトリガレベルを超えることで、前記監視対象に対する監視が開始される場合、前記第1群および前記第2群に基づいて、推奨する前記トリガレベルを算出する。
【0059】
本開示の第4態様の方法は、第3態様に記載の方法において、
推奨された前記特徴量のデータを推奨データとし、推奨された前記トリガレベルを推奨トリガレベルとすると、前記推奨トリガレベルを超える前記推奨データの周期により、前記推奨データおよび前記推奨トリガレベルの適正を判定する。
【0060】
本開示の第5態様の方法は、第2態様~第4態様のいずれかに記載の方法において、
前記スコアが近似する複数種類の前記特徴量のデータが、第1特徴量のデータと、第2特徴量のデータとを含み、前記第1特徴量のデータにおける前記第1群および前記第2群の比が、前記第2特徴量のデータにおける前記第1群および前記第2群の比よりも予め設定されているデューティ比に近い場合、前記トリガソースとして、前記第2特徴量よりも前記第1特徴量を推奨する。
【0061】
本開示の第6態様の方法は、第1態様~第5態様のいずれかに記載の方法において、
1種類の前記特徴量のデータを取得する度に、取得した前記特徴量のデータをヒストグラム化する。
【0062】
本開示の第7態様のプログラムは、
監視対象から取得された複数種類の特徴量のデータのうち、前記特徴量の値の大きさの度数分布を示すヒストグラムが二峰性分布の前記特徴量のデータに対して、二峰性分布の程度をスコア化することでスコア付けを行い、
前記監視対象に対する監視を開始するための条件を構成するトリガソースとして、付けられたスコアが所定条件を満たす前記特徴量を推奨する、方法をコンピュータに実行させる。
【0063】
本開示の第8態様の装置1は、
監視対象の複数種類の特徴量のデータを取得可能に構成された取得部21と、
取得された複数種類の前記特徴量のデータのうち、前記特徴量の値の大きさの度数分布を示すヒストグラムが二峰性分布となる特徴量のデータに対して、二峰性分布の程度をスコア化することでスコア付けを実行可能に構成されたスコア付け部22と、
前記監視対象に対する監視を開始するための条件を構成するトリガソースとして、付けられたスコアが所定条件を満たす前記特徴量を推奨可能に構成された推奨部23と
を備える。
【0064】
本開示の第9態様の装置1は、第8態様の装置1において、
前記トリガソースとして推奨された前記特徴量を複数表示可能な表示部24と、
前記表示部に表示された複数種類の前記特徴量の中から1つの前記特徴量を選択可能な選択部25と
を備える。
【0065】
前記様々な実施形態または変形例のうちの任意の実施形態または変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。また、実施形態同士の組み合わせまたは実施例同士の組み合わせまたは実施形態と実施例との組み合わせが可能であると共に、異なる実施形態または実施例の中の特徴同士の組み合わせも可能である。
【0066】
本開示は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本開示の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本開示は、例えば、工場の生産設備を監視する機器に適用できる。
【符号の説明】
【0068】
1 装置
11 プロセッサ
12 記憶部
13 通信部
21 取得部
22 スコア付け部
23 推奨部
24 表示部
25 選択部
100 監視対象
200 ヒストグラム
201 第1群
202 第2群
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12