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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108605
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】水素化触媒およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/44 20060101AFI20240805BHJP
   C07C 31/125 20060101ALI20240805BHJP
   C07C 29/145 20060101ALI20240805BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240805BHJP
【FI】
B01J23/44 Z
C07C31/125
C07C29/145
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013050
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000228198
【氏名又は名称】エヌ・イーケムキャット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】水崎 智照
(72)【発明者】
【氏名】桑田 頌子
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BA08A
4G169BA08B
4G169BB02A
4G169BB02B
4G169BC32A
4G169BC33A
4G169BC63A
4G169BC64A
4G169BC70A
4G169BC71A
4G169BC72A
4G169BC72B
4G169BC73A
4G169BC74A
4G169BC75A
4G169BC75B
4G169CB02
4G169CB70
4G169DA05
4G169EB19
4G169EE09
4H006AA02
4H006AC41
4H006BA25
4H006BA26
4H006BA81
4H006BA82
4H006BC32
4H006BE20
4H006FE11
4H039CA60
4H039CB20
(57)【要約】
【課題】所望の触媒能(例えば、還元能)を維持しながらも、白金の使用量を低減した水素化触媒を提供する。
【解決手段】炭素-ヘテロ原子二重結合を含む基質有機化合物を、前記炭素-ヘテロ原子二重結合を単結合に還元する水素化触媒であって、白金触媒、および、周期表第5~6周期の第7~11族に属する貴金属元素(但し、白金を除く)を触媒種とする助触媒、を含む、水素化触媒。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素-ヘテロ原子二重結合を含む基質有機化合物を、前記炭素-ヘテロ原子二重結合を単結合に還元する水素化触媒であって、
白金触媒、および、周期表第5~6周期の第7~11族に属する貴金属元素(但し、白金を除く)を触媒種とする助触媒、
を含む、水素化触媒。
【請求項2】
前記貴金属元素が、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、レニウム、イリジウムおよび金からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1に記載の水素化触媒。
【請求項3】
前記貴金属元素が、パラジウムである、請求項1に記載の水素化触媒。
【請求項4】
前記炭素-ヘテロ原子二重結合部分が、イミノ基またはカルボニル基である、請求項1に記載の水素化触媒。
【請求項5】
前記カルボニル基が、アルデヒド基またはケトン基である、請求項4に記載の水素化触媒。
【請求項6】
前記白金触媒に含まれる白金と、前記助触媒に含まれる貴金属元素の触媒種との質量比が、1:10~15:1である、請求項1に記載の水素化触媒。
【請求項7】
前記白金触媒に含まれる白金と、前記助触媒に含まれる貴金属元素の触媒種のモル比が、1:3~10:1である、請求項1に記載の水素化触媒。
【請求項8】
前記白金触媒が、その全量に対して0.1~15質量%の白金を含み、
前記助触媒が、その全量に対して0.1~15質量%の貴金属元素の触媒種を含む、請求項1に記載の水素化触媒。
【請求項9】
前記白金触媒が、白金が担体に担持されたものであり、前記助触媒が、前記貴金属元素が触媒種として担体に担持されたものである、請求項1に記載の水素化触媒。
【請求項10】
前記担体が、カーボンブラック、活性炭、メソポーラスカーボン、グラフェンおよびカーボンナノチューブからなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項9に記載の水素化触媒。
【請求項11】
白金触媒が前記貴金属元素の触媒種を実質的に含まず、前記助触媒が白金を実質的に含まない、請求項1に記載の水素化触媒。
【請求項12】
炭素-ヘテロ原子二重結合を含む基質有機化合物における前記炭素-ヘテロ原子二重結合のうちの少なくとも1つが単結合に還元された生成物を製造するための方法であって、
前記基質有機化合物と、水素と、請求項1に記載の水素化触媒とを接触させる、方法。
【請求項13】
炭素-ヘテロ原子二重結合を含む基質有機化合物における前記炭素-ヘテロ原子二重結合のうちの少なくとも1つを単結合に還元する方法であって、
基質有機化合物を、水素、および、請求項1に記載の水素化触媒の存在下で還元する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水素化触媒に関し、より詳細には、炭素-ヘテロ原子二重結合を含む基質有機化合物を、該炭素-ヘテロ原子二重結合を単結合に還元するために好適に使用できる水素化触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
アルコール類やアミン類は、様々な分野における化学原料等として極めて重要な化合物である。そのため、従来、アルコール類やアミン類を合成する方法が種々検討されている。
【0003】
アルコール類を合成する方法としては、ケトン類やアルデヒド類を還元(水素化)する方法が知られている。また、アミン類を合成する方法としては、ニトロ基やイミノ基を有する化合物を還元(水素化)する方法が知られている。例えば、ケトンやアルデヒドからアルコールを合成する方法として、水素化ホウ素ナトリウムや水素化アルミニウムリチウムといったヒドリド還元剤を使用する方法が知られている。しかしながら、合成されたアルコール中に還元剤が残存するため、還元剤を分離するための処理が必要であった。また、還元剤を分離した後も、金属廃棄物の処理に多大なエネルギーやコストを伴うものであった。
【0004】
このような還元反応においては、還元剤を使用する以外にも、反応効率の向上等を目的として、触媒を使用して還元反応を促進させることも行われている。そのなかでも、反応系における触媒の分離の容易さ等の観点から、白金元素を触媒種として含む白金触媒が好適に使用されている。例えば、特許文献1では、白金を含む不均一系触媒を用いて、ケトン類を還元する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-207976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、白金は、極めて高価な元素であるため、白金使用量が制限されるという課題がある。一方で、白金の使用量を減らすと、所望の触媒能(例えば、還元能)を得られないか、得られたとしても反応に長時間を要するため、非効率的である。
【0007】
したがって、本発明は、所望の触媒能を維持しながらも、白金の使用量を低減した水素化触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に鑑み、鋭意検討を重ねたところ、本発明者らは、意外にも、白金触媒に、特定の元素を触媒種とする助触媒を併用することにより、所望の触媒能を維持しながらも、白金の使用量を低減できることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明の要旨は以下の通りである。
【0009】
〔1〕 炭素-ヘテロ原子二重結合を含む基質有機化合物を、前記炭素-ヘテロ原子二重結合を単結合に還元する水素化触媒であって、
白金触媒、および、周期表第5~6周期の第7~11族に属する貴金属元素(但し、白金を除く)を触媒種とする助触媒、
を含む、水素化触媒。
〔2〕 前記貴金属元素が、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、レニウム、イリジウムおよび金からなる群より選択される少なくとも一種である、〔1〕に記載の水素化触媒。
〔3〕 前記貴金属元素が、パラジウムである、〔1〕に記載の水素化触媒。
〔4〕 前記炭素-ヘテロ原子二重結合部分が、イミノ基またはカルボニル基である、〔1〕に記載の水素化触媒。
〔5〕 前記カルボニル基が、アルデヒド基またはケトン基である、〔4〕に記載の水素化触媒。
〔6〕 前記白金触媒に含まれる白金と、前記助触媒に含まれる貴金属元素の触媒種との質量比が、1:10~15:1である、〔1〕に記載の水素化触媒。
〔7〕 前記白金触媒に含まれる白金と、前記助触媒に含まれる貴金属元素の触媒種のモル比が、1:3~10:1である、請求項1に記載の水素化触媒。
〔8〕 前記白金触媒が、その全量に対して0.1~15質量%の白金を含み、
前記助触媒が、その全量に対して0.1~15質量%の貴金属元素の触媒種を含む、〔1〕に記載の水素化触媒。
〔9〕 前記白金触媒が、白金が担体に担持されたものであり、前記助触媒が、前記貴金属元素が触媒種として担体に担持されたものである、〔1〕に記載の水素化触媒。
〔10〕 前記担体が、カーボンブラック、活性炭、メソポーラスカーボン、グラフェンおよびカーボンナノチューブからなる群より選択される少なくとも一種を含む、〔9〕に記載の水素化触媒。
〔11〕 白金触媒が前記貴金属元素の触媒種を実質的に含まず、前記助触媒が白金を実質的に含まない、〔1〕に記載の水素化触媒。
〔12〕 炭素-ヘテロ原子二重結合を含む基質有機化合物における前記炭素-ヘテロ原子二重結合のうちの少なくとも1つが単結合に還元された生成物を製造するための方法であって、
前記基質有機化合物と、水素と、白金触媒と、周期表第5~6周期の第7~11族に属する貴金属元素(但し、白金を除く)を触媒種として含む助触媒とを接触させる、方法。
〔13〕 炭素-ヘテロ原子二重結合を含む基質有機化合物における前記炭素-ヘテロ原子二重結合のうちの少なくとも1つを単結合に還元する方法であって、
水素、白金触媒、および、周期表第5~6周期の第7~11族に属する貴金属元素(但し、白金を除く)を触媒種として含む助触媒の存在下で還元する、方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、金属質量換算で同じ量の白金触媒を単独で用いた場合と比較して、より高い触媒能を得ることができる。即ち、所望の触媒能を維持しながらも、白金の使用量を低減した水素化触媒を実現することができる。特に、周期表第5~6周期の第7~11族に属する貴金属元素(但し、白金を除く)を触媒種(例えば、パラジウム)とする助触媒は、従来、単独で用いた場合には、炭素-ヘテロ原子二重結合をほとんど還元することができないか、または全く還元することができないと考えられていたことから、本発明のように白金触媒と組み合わせて使用することで、このような相乗的な効果を示すことは全く予想外の効果である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明による水素化触媒の一実施態様は、炭素-ヘテロ原子二重結合を含む基質有機化合物を、前記炭素-ヘテロ原子二重結合を単結合に還元する水素化触媒であって、白金触媒、および、周期表第5~6周期の第7~11族に属する貴金属元素(但し、白金を除く)を触媒種とする助触媒、を含む。
【0012】
[白金触媒]
本発明において「白金触媒」とは、白金元素を触媒種として含む触媒を意味する。白金触媒は、触媒種として白金元素を含んでいればよく、白金自体を含んでいてもよいし、白金化合物を含んでいてもよい。白金化合物としては、例えば、酸化白金(II)、酸化白金(IV)、塩化白金(II)、塩化白金(IV)、テトラクロリド白金(II)酸カリウム、硝酸白金(IV)、硫酸白金(IV)、テトラアンミン白金(II)塩化物、テトラアンミン白金(II)臭化物、テトラアンミン白金(II)硝酸塩、テトラアンミン白金(II)酢酸塩、ヘキサクロロ白金(IV)酸、テトラクロロ白金酸(II)、ヘキサヒドロキソ白金(IV)酸ナトリウム、ヘキサヒドロキソ白金(IV)酸(2-ヒドロキシエチルアンモニウム)、ジニトロジアンミン白金(II)アンモニア水溶液等の水溶性化合物、ビス(2,4-ペンタンジオナト)白金(II)、ジクロロ(1,5-シクロオクタジエン)白金(II)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)白金(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)白金(II)、トリス(ジベンジリデンアセトン)二白金(0)などが挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記したなかでも、白金自体(すなわち、金属白金)を好ましく使用することができる。
【0013】
白金触媒は、例えば、白金元素自体であってもよいし、白金が担体に担持されたものであってもよい。担体としては、これらに限定されるものではないが、例えば、カーボンブラック、活性炭、メソポーラスカーボン、グラフェン、カーボンナノチューブ、黒鉛、炭素繊維、アルミナ、硫酸バリウム、シリカ、炭酸カルシウム等が挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。担体は、好ましくは、カーボンブラック、活性炭、メソポーラスカーボン、グラフェンおよびカーボンナノチューブからなる群より選択される少なくとも一種を含むものである。白金を担体に担持させる方法は、特段限定されるものではなく、公知の方法を適用することができる。例えば、特公昭61-1869号公報等に記載されているように、白金化合物(例えば、テトラアミン白金(II))を含む水溶液中に担体を分散させ、さらに還元剤を加えることで白金を担体に担持させてもよい。
【0014】
白金を担持する担体の比表面積は、本発明の目的を達成することができる限り特段限定されるものではないが、例えば、約1m/g以上、好ましくは約10m/g以上、より好ましくは約100m/g以上、更に好ましくは約300m/g以上であってもよい。また、白金を担持する担体の比表面積は、例えば、約3000m/g以下、好ましくは約2000m/g以下、より好ましくは約1500m/g以下、更に好ましくは約1000m/g以下であってもよい。なお、担体の比表面積は、BET法により測定することができる。
【0015】
担体に担持される白金の質量は、本発明の目的を達成することができる限り特段限定されるものではないが、例えば、白金触媒の全量に対して、約0.1~約15質量%、好ましくは約0.3~約10質量%、より好ましくは約0.5~約8質量%、更に好ましくは約1~約5質量%であってもよい。
【0016】
本発明の水素化触媒において、白金触媒の使用量は、本発明の目的を達成することができる限り特段限定されるものではなく、反応時間、目的とする有機化合物の収率、精製の容易さ等を考慮して、適宜変更することができる。白金触媒の使用量は、例えば、基質有機化合物1molに対して、白金触媒中の白金が、約0.01~約10000μmol、好ましくは約0.1~約3000μmol、より好ましくは約1~約1000μmol、更に好ましくは約10~約100μmolであってもよい。
【0017】
[助触媒]
本発明の水素化触媒は、上記した白金触媒と後記する特定の助触媒とを併用したものである。例えばパラジウム等の特定の貴金属元素を触媒種とする助触媒は、従来、単独で用いた場合には、炭素-ヘテロ原子二重結合をほとんど還元することができないか、または全く還元することができないと考えられていたところ、上記したような白金触媒と併用することで、金属質量換算で同じ量の白金触媒を単独で用いた場合と比較して、より高い触媒能を得ることができる。即ち、所望の触媒能を維持しながらも、白金の使用量を低減した水素化触媒を実現することができる。本発明のように白金触媒と、特定の貴金属元素を触媒種とする助触媒とを組み合わせて使用することで、このような相乗的な効果を示すことは全く予想外の効果である。
【0018】
白金触媒と併用する助触媒は、周期表第5~6周期の第7~11族に属する貴金属元素(但し、白金を除く)を触媒種とする。本発明において「周期表第5~6周期の第7~11族に属する貴金属元素(但し、白金を除く)」(以下、単に「貴金属元素」ともいう)は、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、金を意味する。これら貴金属元素のなかでも、好ましくはパラジウム、ルテニウム、ロジウム、レニウム、イリジウムおよび金からなる群より選択される少なくとも一種であり、より好ましくはパラジウムである。
【0019】
本発明において助触媒は、上記した貴金属元素を触媒種とする触媒を意味する。助触媒は、貴金属元素を触媒種として含んでいればよく、貴金属元素の金属種自体を含んでいてもよいし、これら金属種を含む化合物(テクネチウム化合物、ルテニウム化合物、ロジウム化合物、パラジウム化合物、銀化合物、レニウム化合物、オスミウム化合物、イリジウム化合物)を含んでいてもよい。
【0020】
パラジウム化合物としては、例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムクロリド、酢酸パラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、ビス(ジベンザルアセトン)パラジウム、ビス[4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニル]ジtert-ブチルホスフィンパラジウムクロリド、ビス(ジ-tert-ブチルプレニルホスフィン)パラジウムクロリド、ビス(ジ-tert-クロチルホスフィン)パラジウムジクロリド等が挙げられる。
【0021】
ルテニウム化合物としては、例えば、塩化ルテニウム、酸化塩化ルテニウム、ルテニウム酸化物等が挙げられる。ロジウム化合物としては、例えば、酢酸ロジウム、塩化ロジウム、ロジウム塩、ロジウム酸化物等が挙げられる。
【0022】
イリジウム化合物としては、例えば、酢酸イリジウム、シュウ酸イリジウム、アセト酢酸イリジウム等が挙げられる。
【0023】
金化合物としては、例えば、酸化金、シアン化金、フッ化金、塩化金、臭化金、ヨウ化金、亜硫酸金ナトリウム、硫酸金、硝酸金、酢酸金等が挙げられる。
【0024】
助触媒は、例えば、貴金属元素の金属種自体であってもよいし、貴金属元素が触媒種として担体に担持されたものであってもよい。担体としては、これらに限定されるものではないが、例えば、カーボンブラック、活性炭、メソポーラスカーボン、グラフェン、カーボンナノチューブ、黒鉛、炭素繊維、アルミナ、硫酸バリウム、シリカ、炭酸カルシウム等が挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。担体は、好ましくは、カーボンブラック、活性炭、メソポーラスカーボン、グラフェンおよびカーボンナノチューブからなる群より選択される少なくとも一種である。
【0025】
貴金属元素の金属種を担体に担持させる方法は、特段限定されるものではなく、公知の方法を適用することができる。例えば、特開2003-144921号公報等に記載のように、酸化剤および貴金属元素の金属種の塩(例えば、酢酸パラジウム、塩化ルテニウム等)を含む水溶液に所望の担体を混合し、その後、該金属元素の金属種の塩を還元剤で還元することで、貴金属元素の金属種を担体に担持させもよいし、特開昭50-30828号公報等に記載のように、所望の溶剤を吸液させた担体に、貴金属元素の金属種の塩(例えば、酢酸パラジウム、塩化ルテニウム等)を含む溶液をさらに吸液させることで、貴金属元素の金属種を担体に担持させもよい。
【0026】
貴金属元素の金属種を担持する担体の比表面積は、本発明の目的を達成することができる限り特段限定されるものではない。白金を担持する担体の比表面積は、例えば、約1m/g以上、好ましくは約10m/g以上、より好ましくは約100m/g以上、更に好ましくは約300m/g以上であってもよい。また、貴金属元素の触媒種を担持する担体の比表面積は、例えば、約3000m/g以下、好ましくは約2000m/g以下、より好ましくは約1500m/g以下、更に好ましくは約1000m/g以下であってもよい。
【0027】
担体に担持される貴金属元素の金属種の質量は、本発明の目的を達成することができる限り特段限定されるものではないが、例えば、助触媒の全量に対して、約0.1~約15質量%、好ましくは約0.3~約10質量%、より好ましくは約0.4~約8質量%、更に好ましくは約0.5~約5質量%であってもよい。
【0028】
本発明の一実施態様においては、白金触媒は貴金属元素の触媒種(例えば、パラジウム)を実質的に含まず、また、助触媒は白金を実質的に含まない。なお、本明細書において「実質的に含まない」とは、水素化触媒の還元能にほとんど影響を与えないか、または全く影響を与えない程度の量を意味し、典型的には、非意図的に含まれてしまう量を意味する。そのため、例えば、白金触媒の製造工程中等に不可避的に含まれてしまう貴金属元素の金属種や、助触媒の製造工程中等に不可避的に含まれてしまう白金は、本明細書中に記載の水素化触媒に含まれていてもよい。
【0029】
本明細書中に記載の水素化触媒に含まれる白金触媒と助触媒との比率は、本発明の目的を達成することができる限り特段限定されるものではない。例えば、白金触媒中の白金と、助触媒中に含まれる貴金属元素の触媒種の質量比は、例えば、1:10~15:1、好ましくは1:5~14:1、より好ましくは1:3~12:1、更に好ましくは1:1~10:1であってもよい。また、一実施態様において、白金触媒中の白金と、助触媒中に含まれる貴金属元素の触媒種とのモル比は、例えば、1:3~10:1、好ましくは2:5~8:1、より好ましくは1:2~7:1、更に好ましくは3:5~6:1であってもよい。
【0030】
本発明の一実施態様において、水素化触媒は、白金と貴金属元素の触媒種とが、例えば同じ担体に担持されたもの(すなわち、白金触媒と助触媒が一体化したもの)であってもよいし、例えば、白金を含む白金触媒と貴金属元素の触媒種を含む助触媒とを別個に用意し、これらを混合した混合物であってもよい。
【0031】
したがって、本発明の一実施態様では、白金触媒が、白金が担体に担持されたものであり、助触媒が、前記貴金属元素が触媒種として担体に担持されたものである。
【0032】
本発明の一実施態様では、白金触媒の担体および/または助触媒の担体が、カーボンブラック、活性炭、メソポーラスカーボン、グラフェンおよびカーボンナノチューブからなる群より選択される少なくとも一種を含む。
【0033】
本発明の一実施態様では、白金触媒および助触媒が、別個の担体に担持されている。本発明の好ましい一実施態様では、白金触媒が、貴金属元素の触媒種を実質的に含まず、助触媒が、白金を実質的に含まない。
【0034】
[水素化触媒の製造方法]
上記した本発明による水素化触媒は、白金触媒や他の貴金属元素を含む触媒を製造する際の従来公知の方法を適用して製造することができる。例えば、一実施態様として、所望の量の白金、および所望の量の貴金属元素を混合することで製造してもよい。また、一実施態様として、例えば、上記した方法等により所望の量の白金を担体に担持させた白金触媒を調製し、また上記した方法等により所望の量の貴金属元素を担体に担持させた助触媒を調製し、白金触媒と助触媒とを混合することで、製造してもよい。あるいは、一実施態様として、例えば、所望の量の白金および所望の量の貴金属元素を、上記した方法等により同一の担体に担持させることで、製造してもよい。
【0035】
[基質有機化合物]
本明細書中で用いられる「炭素-ヘテロ原子二重結合」とは、炭素原子と、炭素原子以外の原子との間に形成された二重結合を意味する。炭素原子以外の原子としては、これらに限定されるものではないが、例えば、窒素原子、酸素原子、イオウ原子、リン原子、金属原子等が挙げられ、好ましくは、窒素原子、酸素原子である。そのため、炭素-ヘテロ原子二重結合としては、例えば、炭素原子と窒素原子間の二重結合、炭素原子と酸素原子間の二重結合、炭素原子とイオウ原子間の二重結合、炭素原子とリン原子間の二重結合、炭素原子と金属原子間の二重結合等が挙げられ、好ましくは、炭素原子と窒素原子間の二重結合、炭素原子と酸素原子間の二重結合である。
【0036】
炭素-ヘテロ原子二重結合部分を構成する官能基としては、特段限定されるものではないが、例えば、イミノ基、カルボニル基(例えば、アルデヒド基、ケトン基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、カルボン酸ハロゲン化物に対応する基等を含む)が挙げられ、好ましくは、イミノ基、アルデヒド基またはケトン基であり、より好ましくは、アルデヒド基またはケトン基であり、更に好ましくは、ケトン基である。
【0037】
本明細書中で用いられる「炭素-ヘテロ原子二重結合を含む基質有機化合物」(以下、単に「基質有機化合物」ともいう)とは、分子内に炭素-ヘテロ原子二重結合を少なくとも1つ含み、還元(水素化)反応の基質となりうる有機化合物であれば、特段限定されるものではない。基質有機化合物は、一部または全部が、鎖状(例えば、直鎖状、分岐鎖状)であってもよいし、環状であってもよい。また、基質有機化合物は、炭素-炭素間の結合が、単結合であってもよいし、1つまたは複数の二重結合および/または三重結合を含んでいてもよい。また、基質有機化合物は、炭素原子に結合する1つまたは複数の水素原子が、任意の置換基(例えば、1つまたは複数の任意の置換基で置換されていてもよい、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、ハロゲン基、カルボキシル基、アルデヒド基、ヒドロキシ基、アミノ基、フェニル基)により置換されていてもよい。また、基質有機化合物を構成する1つまたは複数の炭素原子が、ヘテロ原子(例えば、酸素原子、窒素原子、イオウ原子)により置換されていてもよい。
【0038】
基質有機化合物が2以上の炭素-ヘテロ原子二重結合を含む場合、本明細書中に記載の水素化触媒により還元することを意図していない炭素-ヘテロ原子二重結合については、所望の方法により保護基を導入してもよい。
【0039】
基質有機化合物は、本明細書中に記載の水素化触媒により還元された場合、該炭素-ヘテロ原子二重結合が単結合に還元された有機化合物に変換される。そのため、該炭素-ヘテロ原子二重結合部分を構成する官能基は、本明細書中に記載の水素化触媒により還元された場合、例えば、炭素原子に結合した、1級アミノ基、2級アミノ基、ヒドロキシ基、チオール基(好ましくは、1級アミノ基、2級アミノ基、ヒドロキシ基、より好ましくは、ヒドロキシ基)等に還元される。
【0040】
本明細書中で用いられる「イミノ基」とは、「RN=C(R’)-」(式中、R及びR’は、独立して、任意の置換基を示す)の構造を有する基を意味する。
【0041】
本明細書中で用いられる「カルボニル基」は、「-C(=O)-」の構造を有する基を意味する。
【0042】
本明細書中で用いられる「アルデヒド基」は、「-C(=O)H」の構造を有する基を意味する。
【0043】
本明細書中で用いられる「ケトン基」は、「-C(=O)-R」(式中、Rは、独立して、任意の置換基を示す)の構造を有する基を意味する。なお、ケトン基の炭素原子に1つまたは2つの水素が結合した場合、アルデヒド基となる。そのため、本明細書中においては、ケトン基の炭素原子に1つまたは2つの水素が結合する態様は、「ケトン基」の定義から除外する。
【0044】
本明細書中で用いられる「カルボキシル基」は、「-C(=O)OH」の構造を有する基を意味する。
【0045】
本明細書中で用いられる「エステル基」は、「-C(=O)O-R」(式中、Rは炭化水素基を示す)の構造を有する基を意味する。
【0046】
本明細書中で用いられる「アミド基」は、「-C(=O)NR(R’)」(式中、R及びR’は、独立して、水素、または炭化水素基を示す)の構造を有する基を意味する。そのため、アミド基としては、カルバモイル基(-C(=O)H)、モノアルキルカルバモイル基(例えば、メチルカルバモイル基)、ジアルキルカルバモイル基(例えば、ジメチルカルバモイル基)等を含む。
【0047】
本明細書中で用いられる「カルボン酸ハロゲン化物に対応する基」は、「-C(=O)X」(式中、Xは、ハロゲン基を示す)の構造を有する基を意味する。
【0048】
本明細書中で用いられる「ハロゲン基」は、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素を意味する。
【0049】
本明細書中で用いられる「1級アミノ基」とは、「-NH」で表される基を意味する。
【0050】
本明細書中で用いられる「2級アミノ基」とは、「-NHR」(式中、Rは任意の置換基を示す)で表される基を意味する。
【0051】
本明細書中で用いられる「ヒドロキシ基」とは、「-OH」で表される基を意味する。
【0052】
本明細書中で用いられる「チオール基」とは、「-SH」で表される基を意味する。
【0053】
本明細書中で用いられる「炭化水素基」とは、炭素および水素を含む基を意味する(但し、水素原子は任意の置換基により一部が置換されていてもよい)。炭化水素基は、直鎖状、分枝鎖状または環状のいずれであってもよく、飽和または不飽和のいずれであってもよい。また、炭化水素基は、1つまたは複数の環構造を含んでいてもよい。炭化水素基としては、特段限定されるものではないが、1つまたは複数の任意の置換基により置換されていてもよいC~C20の炭化水素基(例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる)。かかる炭化水素基は、その末端または分子鎖中に、1つまたは複数の窒素原子、酸素原子、イオウ原子等を有していてもよい。
【0054】
本明細書中で用いられる「脂肪族炭化水素基」は、直鎖状、分枝鎖状または環状のいずれであってもよく、飽和または不飽和のいずれであってもよく、1つまたは複数の環構造を含んでいてもよい。脂肪族炭化水素基としては、特段限定されるものではないが、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基等が挙げられる。脂肪族炭化水素基は、1つまたは複数の任意の置換基により置換されていてもよい。
【0055】
本明細書中で用いられる「芳香族炭化水素基」(本明細書中、「アリール基」ともいう)は、単環式、多環式(例えば二環式または三環式)のいずれであってもよく、また、芳香族複素環基(本明細書中、「ヘテロアリール基」ともいう)であってもよい。当該「芳香族炭化水素基」としては、特に限定されるものではないが、C~C20アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基)、C~C20ヘテロアリール基(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、インドリル基、キノリル基、イソキノリル基、イミダゾリル基)等が挙げられる。芳香族炭化水素基は、1つまたは複数の任意の置換基により置換されていてもよい。
【0056】
本明細書中で用いられる「アルキル基」は、1つまたは複数の炭素原子を含む飽和の直鎖状または分岐鎖状の炭化水素基(これらに限定されるものではないが、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、n-へキシル等を含む)を意味する。アルキル基は、例えば、C~C30アルキル基、好ましくはC~C20アルキル基、より好ましくはC~C12アルキル基、更に好ましくは、C~C10アルキル基である。
【0057】
本明細書中で用いられる「シクロアルキル基」は、3個以上の炭素原子を含む飽和の単環式または二環式の炭化水素基(これらに限定されるものではないが、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロヘキシル等を含む)を意味する。シクロアルキル基は、例えば、C~C10シクロアルキル基、好ましくはC~Cシクロアルキル基、より好ましくはC~Cシクロアルキル基である。
【0058】
本明細書中で用いられる「アルケニル基」は、2以上の炭素原子を含み、少なくとも1つの不飽和二重結合を有する直鎖状または分岐鎖状の炭化水素基(これらに限定されるものではないが、例えば、エテニル、プロペニル、イソプロペネル、ブテニル、ペンテニル、へキセニル等を含む)を意味する。アルケニル基は、例えば、C~C30アルケニル基、好ましくはC~C20アルケニル基、より好ましくはC~C12アルケニル基、更に好ましくは、C~C10アルケニル基である。
【0059】
本明細書中で用いられる「シクロアルケニル基」は、3個以上の炭素原子を含み、少なくとも1つの不飽和二重結合を有する単環式または二環式の炭化水素基(これらに限定されるものではないが、例えば、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロヘキセニル等を含む)を意味する。シクロアルケニル基は、例えば、C~C10シクロアルケニル基、好ましくはC~Cシクロアルケニル基、より好ましくはC~Cシクロアルケニル基である。
【0060】
本明細書中で用いられる「アルキニル基」は、2以上の炭素原子を含み、少なくとも1つの不飽和三重結合を有する直鎖状または分岐鎖状の炭化水素基(これらに限定されるものではないが、例えば、アセチニル、プロパルギル等を含む)を意味する。アルキニル基は、例えば、C~C30アルキニル基、好ましくはC~C20アルキニル基、より好ましくはC~C12アルキニル基、更に好ましくは、C~C10アルキニル基である。
【0061】
本明細書中で用いられる「アルコキシ基」とは、式「-O-アルキル」の構造を有する基(これらに限定されるものではないが、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ等を含む)を意味する。アルコキシ基は、例えば、例えば、C~C10アルコキシ基、好ましくはC~Cアルコキシ基、より好ましくはC~Cアルコキシ基である。
【0062】
本明細書中で用いられる「任意の置換基」は、本明細書中に定義される炭化水素基、アミノ基(1級アミノ基、2級アミノ基を含む)、ヒドロキシ基、チオール基、ハロゲン基、カルボニル基、アルデヒド基等を含む置換基を意味する。
【0063】
基質有機化合物は、好ましくは、以下の一般式(I):
【化1】
(式中
は、水素、または任意の置換基で置換されていてもよい炭化水素基であり、
は、水素、ハロゲン基、または任意の置換基で置換されていてもよい炭化水素基であるか、あるいは、
とRは、いずれも炭化水素基の場合、互いに連結して環を形成してもよい。)、または以下の一般式(II)もしくは一般式(III):
【化2】
(式中、
は、水素、または任意の置換基で置換されていてもよい炭化水素基であり、
は、水素、ハロゲン基、または任意の置換基で置換されていてもよい炭化水素基であり、
は、水素、ハロゲン基、または任意の置換基で置換されていてもよい炭化水素基であるか、あるいは、
とRは、いずれも炭化水素基の場合、互いに連結して環を形成してもよく、
とRは、いずれも炭化水素基の場合、互いに連結して環を形成してもよく、
とRは、いずれも炭化水素基の場合、互いに連結して環を形成してもよい。)
の構造を有していてもよい。
【0064】
基質有機化合物は、例えば、一般式(I)の構造を有する場合、本明細書中に記載の水素化触媒により、好ましくは、下記一般式(IV):
【化3】
(式中、RおよびRは上記した定義と同義である。)
の構造を有する有機化合物に還元されてもよい。
【0065】
基質有機化合物は、例えば、一般式(II)または一般式(III)の構造を有する場合、本明細書中に記載の水素化触媒により、好ましくは、下記一般式(V)または一般式(VI):
【化4】
(式中、R~Rは上記した定義と同義である。)
の構造を有する有機化合物に還元されてもよい。
【0066】
本明細書中「互いに連結して環を形成」における「環」とは、環状の構造である限り特段限定されるものではないが、本明細書中に定義されるアリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基等を含む。
【0067】
本発明の一実施態様では、Rは、水素、または1つもしくは複数の任意の置換基で置換されていてもよいアルキル基であり、好ましくは、水素、または1つもしくは複数の任意の置換基で置換されていてもよいC~C20アルキル基であり、より好ましくは、水素、または1つもしくは複数の任意の置換基で置換されていてもよいC~C12アルキル基である。
【0068】
本発明の一実施態様では、Rは、水素、または1つもしくは複数の任意の置換基で置換されていてもよいアルキル基であり、好ましくは、水素、または1つもしくは複数の任意の置換基で置換されていてもよいC~C20アルキル基であり、より好ましくは、水素、または1つもしくは複数の任意の置換基で置換されていてもよいC~C12アルキル基である。
【0069】
本発明の一実施態様では、Rは、水素、または1つもしくは複数の任意の置換基で置換されていてもよいアルキル基であり、かつ、Rは、水素、または1つもしくは複数の任意の置換基で置換されていてもよいアルキル基である。
【0070】
本発明の一実施態様では、Rは、水素、または1つもしくは複数の任意の置換基で置換されていてもよいC~C20アルキル基であり、かつ、Rは、水素、または1つもしくは複数の任意の置換基で置換されていてもよいC~C20アルキル基である。
【0071】
本発明の一実施態様では、Rは、水素、または1つもしくは複数の任意の置換基で置換されていてもよいC~C12アルキル基であり、かつ、Rは、水素、または1つもしくは複数の任意の置換基で置換されていてもよいC~C12アルキル基である。
【0072】
本発明の一実施態様では、Rは、水素、または1つもしくは複数の任意の置換基で置換されていてもよいアルキル基であり、好ましくは、水素、または1つもしくは複数の任意の置換基で置換されていてもよいC~C20アルキル基であり、より好ましくは、水素、または1つもしくは複数の任意の置換基で置換されていてもよいC~C12アルキル基である。
【0073】
本発明の一実施態様では、Rは、水素、または1つもしくは複数の任意の置換基で置換されていてもよいアルキル基であり、好ましくは、水素、または1つもしくは複数の任意の置換基で置換されていてもよいC~C20アルキル基であり、より好ましくは、水素、または1つもしくは複数の任意の置換基で置換されていてもよいC~C12アルキル基である。
【0074】
本発明の一実施態様では、Rは、水素、または1つもしくは複数の任意の置換基で置換されていてもよいアルキル基であり、好ましくは、水素、または1つもしくは複数の任意の置換基で置換されていてもよいC~C20アルキル基であり、より好ましくは、水素、または1つもしくは複数の任意の置換基で置換されていてもよいC~C12アルキル基である。
【0075】
本発明の一実施態様では、Rは、水素、または1つもしくは複数の任意の置換基で置換されていてもよいアルキル基であり、かつ、Rは、水素、または1つもしくは複数の任意の置換基で置換されていてもよいアルキル基であり、かつ、Rは、水素、または1つもしくは複数の任意の置換基で置換されていてもよいアルキル基である。
【0076】
本発明の一実施態様では、Rは、水素、または1つもしくは複数の任意の置換基で置換されていてもよいC~C20アルキル基であり、かつ、Rは、水素、または1つもしくは複数の任意の置換基で置換されていてもよいC~C20アルキル基であり、かつ、Rは、水素、または1つもしくは複数の任意の置換基で置換されていてもよいC~C20アルキル基である。
【0077】
本発明の一実施態様では、Rは、水素、または1つもしくは複数の任意の置換基で置換されていてもよいC~C12アルキル基であり、かつ、Rは、水素、または1つもしくは複数の任意の置換基で置換されていてもよいC~C12アルキル基であり、かつ、Rは、水素、または1つもしくは複数の任意の置換基で置換されていてもよいC~C12アルキル基である。
【0078】
[水素化触媒を用いた基質有機化合物の還元方法]
基質有機化合物は、本明細書中に記載の水素化触媒を用いて、例えば、以下の方法により還元することができる。
【0079】
所望の量の基質有機化合物、および所望の溶媒(例えば、酢酸エチル、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン等の有機溶媒)を混合(好ましくは、分散または溶解)する。この混合物、および所望の量の本明細書中に記載の水素化触媒を混合する。得られた混合物を、水素雰囲気下、所望の温度下(例えば、約0~約100℃、好ましくは、約25~約80℃、より好ましくは、約30~約70℃)で所望の時間(例えば、約0.5~約72時間、好ましくは、約1~約48時間、より好ましくは、約2~約24時間)反応させてもよい。
【0080】
したがって、本発明の一実施態様では、炭素-ヘテロ原子二重結合を含む基質有機化合物における前記炭素-ヘテロ原子二重結合のうちの少なくとも1つが単結合に還元された生成物を製造するための方法であって、
前記基質有機化合物と、水素と、白金触媒と、周期表第5~6周期の第7~11族に属する貴金属元素(但し、白金を除く)を触媒種として含む助触媒とを接触させる、方法を提供する。
【0081】
また、本発明の別の実施態様では、炭素-ヘテロ原子二重結合を含む基質有機化合物における前記炭素-ヘテロ原子二重結合のうちの少なくとも1つを単結合に還元する方法であって、
水素、白金触媒、および、周期表第5~6周期の第7~11族に属する貴金属元素(但し、白金を除く)を触媒種として含む助触媒の存在下で還元する、方法を提供する。
【0082】
本発明のさらに別の実施態様では、白金触媒の使用であって、
水素、および、周期表第5~6周期の第7~11族に属する貴金属元素(但し、白金を除く)を触媒種として含む助触媒の存在下、炭素-ヘテロ原子二重結合を含む基質有機化合物における前記炭素-ヘテロ原子二重結合のうちの少なくとも1つを単結合に還元するための、使用を提供する。
【0083】
本発明のさらに別の実施態様では、炭素-ヘテロ原子二重結合を含む基質有機化合物を、前記炭素-ヘテロ原子二重結合を単結合に還元するための、白金触媒であって、
周期表第5~6周期の第7~11族に属する貴金属元素(但し、白金を除く)を触媒種として含む助触媒と組み合わせて使用するための、白金触媒を提供する。
【0084】
本発明のさらに別の実施態様では、周期表第5~6周期の第7~11族に属する貴金属元素(但し、白金を除く)を触媒種として含む触媒の使用であって、
水素および白金触媒の存在下、炭素-ヘテロ原子二重結合を含む基質有機化合物における前記炭素-ヘテロ原子二重結合のうちの少なくとも1つを単結合に還元するための、使用を提供する。
【0085】
本発明のさらに別の実施態様では、炭素-ヘテロ原子二重結合を含む基質有機化合物を、前記炭素-ヘテロ原子二重結合を単結合に還元するための、周期表第5~6周期の第7~11族に属する貴金属元素(但し、白金を除く)を触媒種として含む触媒であって、
白金触媒を組み合わせて使用するための、触媒を提供する。
【実施例0086】
以下、実施例を用いて本明細書中に記載の発明をより詳細に説明する。但し、下記に例示する実施例は、本願明細書中に記載の発明を何ら限定することを意図するものではない。
【0087】
[実施例1-1:白金触媒と助触媒を併用した場合における2-デカノンの接触水素化による2-デカノールの合成1]
基質有機化合物である2-デカノン390mg(2.5mmol)を酢酸エチル10mLに溶解させた。得られた溶液に、白金触媒として3%白金担持炭素粉末触媒(Pt/C、商品名:SGH-3MR、エヌ・イーケムキャット株式会社製)を該基質有機化合物の5質量%、助触媒として1%パラジウム担持炭素粉末触媒(Pd/C、商品名:SGH-1DR、エヌ・イーケムキャット株式会社製)を該基質有機化合物の5質量%加えた(白金触媒と助触媒の質量比は1:1/白金触媒中の白金と助触媒中の触媒種(パラジウム)の質量比は3:1/白金触媒中の白金と助触媒中の触媒種(パラジウム)のモル比は約5:3)。その後、該溶液を、水素雰囲気下(0.2MPa)、60℃で18時間撹拌し、反応させた。触媒をろ過分離し、得られた生成物をガスクロマトグラフィー(装置名:島津製作所GC-2010AF/AOC、カラム:商品名DB-1 長さ30.0m/内径0.25mm/膜厚0.25μm、キャリアガス:He、検出器:FID、300℃、H 47.0mL/min、Air 400.0mL/min)にて分析したところ、2-デカノールの生成が確認された。反応に使用した2-デカノンに対する2-デカノールの収率は、100%であった。結果を表1に示す。
【0088】
[比較例1-1:白金触媒を単独で用いた場合における2-デカノンの接触水素化による2-デカノールの合成1]
助触媒を使用しなかったこと以外、実施例1-1と同じ方法を繰り返したところ、2-デカノールの生成が確認された。反応に使用した2-デカノンに対する2-デカノールの収率は、43%であった。結果を表1に示す。
【0089】
[比較例1-2:助触媒を単独で用いた場合における2-デカノンの接触水素化による2-デカノールの合成1]
白金触媒を使用しなかったこと以外、実施例1-1と同じ方法を繰り返したところ、2-デカノールの生成が確認されなかった。結果を表1に示す。
【0090】
【化5】
【0091】
【表1】
【0092】
[実施例2-1:白金触媒と助触媒を併用した場合における2-デカノンの接触水素化による2-デカノールの合成2]
基質有機化合物である2-デカノン390mg(2.5mmol)をシクロヘキサン10mLに溶解させた。得られた溶液に、白金触媒として3%白金担持炭素粉末触媒(Pt/C、商品名:SGH-3MR、エヌ・イーケムキャット株式会社製)を該基質有機化合物の10質量%、助触媒として2%パラジウム担持炭素粉末触媒(Pd/C、商品名:SGH-2DR、エヌ・イーケムキャット株式会社製)を該基質有機化合物の10質量%加えた(白金触媒と助触媒の質量比は1:1/白金触媒中の白金と助触媒中の触媒種(パラジウム)の質量比は3:2/白金触媒中の白金と助触媒中の触媒種(パラジウム)のモル比は約5:6)。その後、該溶液を、水素雰囲気下(0.2MPa)、60℃で5時間撹拌し、反応させた。触媒をろ過分離し、得られた生成物をガスクロマトグラフィー(使用した装置、条件等は、実施例1-1と同じ)にて分析したところ、2-デカノールの生成が確認された。反応に使用した2-デカノンに対する2-デカノールの収率は、84%であった。結果を表2に示す。
【0093】
[実施例2-2:白金触媒と助触媒を併用した場合における2-デカノンの接触水素化による2-デカノールの合成3]
助触媒として2%パラジウム担持炭素粉末触媒(商品名:SGH-2DR、エヌ・イーケムキャット株式会社製)を該基質有機化合物の5質量%加えた(白金触媒と助触媒の質量比は2:1/白金触媒中の白金と助触媒中の触媒種(パラジウム)の質量比は3:1/白金触媒中の白金と助触媒中の触媒種(パラジウム)のモル比は約5:3)こと以外、実施例2-1と同じ方法を繰り返したところ、2-デカノールの生成が確認された。反応に使用した2-デカノンに対する2-デカノールの収率は、75%であった。結果を表2に示す。
【0094】
[実施例2-3:白金触媒と助触媒を併用した場合における2-デカノンの接触水素化による2-デカノールの合成4]
白金触媒として3%白金担持炭素粉末触媒(商品名:SGH-3MR、エヌ・イーケムキャット株式会社製)を該基質有機化合物の13質量%、助触媒として2%パラジウム担持炭素粉末触媒(商品名:SGH-2DR、エヌ・イーケムキャット株式会社製)を該基質有機化合物の2質量%加えた(白金触媒と助触媒の質量比は13:2/白金触媒中の白金と助触媒中の触媒種(パラジウム)の質量比は約10:1/白金触媒中の白金と助触媒中の触媒種(パラジウム)のモル比は約11:2)こと以外、実施例2-1と同じ方法を繰り返したところ、2-デカノールの生成が確認された。反応に使用した2-デカノンに対する2-デカノールの収率は、78%であった。結果を表2に示す。
【0095】
[比較例2-1:白金触媒を単独で用いた場合における2-デカノンの接触水素化による2-デカノールの合成2]
助触媒を使用しなかったこと以外、実施例2-1と同じ方法を繰り返したところ、2-デカノールの生成が確認された。反応に使用した2-デカノンに対する2-デカノールの収率は、46%であった。結果を表2に示す。
【0096】
[比較例2-2:助触媒を単独で用いた場合における2-デカノンの接触水素化による2-デカノールの合成2]
白金触媒を使用しなかったこと以外、実施例2-1と同じ方法を繰り返したところ、2-デカノールの生成が確認されなかった。結果を表2に示す。
【0097】
【化6】
【0098】


【表2】
【0099】
表1および表2からも明らかなとおり、白金触媒単独で使用した場合と比較して、白金触媒と助触媒(例えば、パラジウムを含む触媒)を併用した場合に、基質有機化合物(例えば、2-デカノン)が還元された生成物(例えば、2-デカノール)の収率が高いことがわかる。また、表2からも理解されるとおり、反応に使用する白金触媒と助触媒の質量比(より具体的には、白金触媒中の白金と助触媒中の金属(例えば、パラジウム)の質量比やモル比)を自由に変化させても、同様に基質有機化合物(例えば、2-デカノン)が還元された生成物(例えば、2-デカノール)の収率が高いことがわかる。したがって、本発明の水素化触媒は、白金触媒単独で使用した場合と比較して、より効率的に、炭素-ヘテロ原子二重結合を含む基質有機化合物における該炭素-ヘテロ原子二重結合を単結合に還元することができる。
【0100】
さらに、白金触媒と助触媒(例えば、パラジウムを含む触媒)を併用した場合に基質有機化合物(例えば、2-デカノン)が還元された生成物(例えば、2-デカノール)の収率が高かったことから、本明細書中に記載の水素化触媒は、標的部位におけるさらなる還元(例えば、ヒドロキシ基、アミノ基のさらなる還元)がほとんど生じないと考えられる。したがって、本発明の水素化触媒は、炭素-ヘテロ原子二重結合を含む基質有機化合物における該炭素-ヘテロ原子二重結合を単結合への還元(例えば、1級アミノ基、2級アミノ基またはヒドロキシ基への還元)に留め、アルキル基等へのさらなる還元が生じないかまたは抑制されると考えられる。