(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108610
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】可動するアンダーパネルを備えたバッテリ搭載車両
(51)【国際特許分類】
B62D 25/20 20060101AFI20240805BHJP
B60K 11/04 20060101ALI20240805BHJP
B60K 11/06 20060101ALI20240805BHJP
B62D 35/02 20060101ALI20240805BHJP
B60R 19/52 20060101ALI20240805BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240805BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20240805BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20240805BHJP
H01M 10/6551 20140101ALI20240805BHJP
【FI】
B62D25/20 N
B60K11/04 J
B60K11/06
B62D35/02
B60R19/52 M
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/6556
H01M10/6551
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013055
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹野谷 優汰
【テーマコード(参考)】
3D038
3D203
5H031
【Fターム(参考)】
3D038AA06
3D038AA09
3D038AB01
3D038AC01
3D038AC05
3D038AC17
3D038AC22
3D203AA31
3D203AA33
3D203BB03
3D203CB28
3D203CB30
3D203DA02
3D203DB02
3D203DB04
3D203DB05
3D203DB07
3D203DB10
5H031AA09
5H031KK01
5H031KK08
(57)【要約】
【課題】アンダーカバーを備えて車両の床下にバッテリが設置されるバッテリ搭載車両において、バッテリの冷却と並行して車両の空力特性を向上させる。
【解決手段】本開示のバッテリ搭載車両は、車両の底面側に設けられるアンダーパネルと、前記車両の床下であって前記アンダーパネルの上方に配置されたバッテリと、前記アンダーパネルを鉛直方向に関して昇降させるパネル昇降機構と、前記パネル昇降機構の動作を制御する制御装置と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の底面側に設けられるアンダーパネルと、
前記車両の床下であって前記アンダーパネルの上方に配置されたバッテリと、
前記アンダーパネルを鉛直方向に関して昇降させるパネル昇降機構と、
前記パネル昇降機構の動作を少なくとも制御する制御装置と、
を含むバッテリ搭載車両。
【請求項2】
前記アンダーパネルのうち前記バッテリと対向する上面に設けられた保温材と、
前記車両の外気温を検出する外気温センサーと、をさらに備え、
前記制御装置は、前記車両の外気温に基づいて、前記パネル昇降機構を介して前記アンダーパネルを上昇させて前記保温材と前記バッテリとを隣接させる、
請求項1に記載のバッテリ搭載車両。
【請求項3】
前記車両のフロントグリルに設けられて走行風を流通または遮断可能なグリルシャッターをさらに備え、
前記制御装置は、前記車両の走行状態に応じて前記グリルシャッターと前記アンダーパネルを協働させて前記バッテリの冷却および保温の少なくとも一方を行う、
請求項2に記載のバッテリ搭載車両。
【請求項4】
前記アンダーパネルは前記車両の車幅方向又は車長方向に関して複数に区分けされてなり、
前記パネル昇降機構は、区分けされた複数の前記アンダーパネルを互いに独立して昇降させる、
請求項3に記載のバッテリ搭載車両。
【請求項5】
前記制御装置は、前記パネル昇降機構を介して前記アンダーパネルを水平方向に対して交差するように傾斜させる、
請求項1~4のいずれか一項に記載のバッテリ搭載車両。
【請求項6】
前記バッテリのうち前記アンダーパネルと対向する底面と、前記アンダーパネルのうち前記バッテリと対向する上面と、の少なくとも一方には、走行風が吹き付けられる1又は複数の突起が形成されてなる、
請求項1~4のいずれか一項に記載のバッテリ搭載車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アンダーパネルが車両に対して鉛直方向に上昇又は下降するバッテリ搭載車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電動モータなどを駆動するための電力を貯蔵可能なバッテリが車両に搭載されている。近年では電気自動車を始めとした車両の電動化に対応してバッテリ容量も増加していることから、バッテリを車両の床下に設置することも行われている。
【0003】
バッテリは使用によって発熱するため、この発熱したバッテリを如何にして効率的に冷却するかも重要となる。従って特許文献1や特許文献2に例示されるように、車両のアンダーカバー(「アンダーパネル」とも称される)とバッテリとの間に走行風を取り込むことで、車両の床下に設置されたバッテリの冷却を行うことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-082983号公報
【特許文献2】特開2013-035323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
たしかに特許文献1や特許文献2によれば、車両の床下に配置されたバッテリに対して省スペースで且つ効率的に走行風を取り込んでバッテリを冷却することができる。しかしながら車両の床下に敷き詰められた大容量のバッテリは、車両の重量増の一因となるため、このバッテリの冷却と並行して車両の空力特性を向上させることが更に望ましいと言える。
【0006】
本開示は、上記した課題を一例に鑑みて為されたものであり、アンダーカバーを備えて車両の床下にバッテリが設置されるバッテリ搭載車両において、バッテリの冷却と並行して車両の空力特性も向上させることが可能なバッテリ搭載車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本開示の一形態におけるバッテリ搭載車両は、車両の底面側に設けられるアンダーパネルと、前記車両の床下であって前記アンダーパネルの上方に配置されたバッテリと、前記アンダーパネルを鉛直方向に関して昇降させるパネル昇降機構と、前記パネル昇降機構の動作を少なくとも制御する制御装置と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、車両の床下に設置されたバッテリの冷却と並行して走行中における車両の空力特性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係るバッテリ搭載車両の構成例を示す模式図である。
【
図2】第1実施形態に係るバッテリ搭載車両を底面の側から俯瞰した模式図である。
【
図3】第1実施形態に係るバッテリ搭載車両における可動アンダーパネルの状態遷移を説明する模式図である。
【
図4】一例として、高速走行時におけるアンダーパネルとグリルシャッターの状態を示す模式図である。
【
図5】一例として、バッテリ冷却時におけるアンダーパネルとグリルシャッターの状態を示す模式図である。
【
図6】一例として、悪路走行時におけるアンダーパネルとグリルシャッターの状態を示す模式図である。
【
図7】一例として、低外気温時におけるアンダーパネルとグリルシャッターの状態を示す模式図である。
【
図8】第2実施形態に係るバッテリ搭載車両を底面の側から俯瞰した模式図である。
【
図9】第2実施形態に係るバッテリ搭載車両における可動アンダーパネルが取り得る状態例を説明する模式図である。
【
図10】変形例1に係るバッテリ搭載車両の構成例を示す模式図である。
【
図11】変形例2に係るバッテリ搭載車両の構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に本開示の車両を実施するための好適な実施形態について説明する。なお本開示に直接関係のない要素や構造に関する図示は適宜省略する場合がある。従って以下で詳述する構成以外の車両構造、及び、バッテリその他の車載構造については、例えば上記した特開2020-082983号公報や特開2013-035323号公報などに記載された構造や、その他の公知の構造を適宜補完して実施してもよい。
【0011】
≪第1実施形態≫
[バッテリ搭載車両100]
図1に、本開示のバッテリ搭載車両のうち第1実施形態に係るバッテリ搭載車両100の要部を示す。
【0012】
図1などから理解されるとおり、本実施形態のバッテリ搭載車両100は、車両10、アンダーパネル20、バッテリ30、パネル昇降機構40、保温材50、外気温センサー60、グリルシャッター70、及び、制御装置80などを含んで構成されている。
【0013】
車両10としては、例えば電動モータによって駆動される電気自動車が例示できる。なお車両10としては、後述するバッテリ30を搭載する車両である限り特に制限はなく、上記した電気自動車の他に例えばガソリンエンジンも搭載するハイブリッド車両や他の内燃機関を搭載する車両が例示できる。また、車両10の駆動方式に関しても、前輪駆動であってもよいし、後輪駆動であってもよいし、全輪駆動であってもよい。
【0014】
本開示におけるアンダーパネル20の一形態であるアンダーパネル20Aは、アンダーカバーとも称され、
図1及び
図2などに例示されるように、車両10の底面側に設けられる。本実施形態のバッテリ搭載車両100がアンダーパネル20Aを具備することで、車両の底部下を流れる空気が整流されて車両の空力特性を向上させることができる。なおアンダーパネル20Aの具体的な構造としては、後述するパネル昇降機構40で昇降可能である限りにおいて特に制限はなく、公知の種々の材質や形状が適用できる。
【0015】
バッテリ30は、例えば車両10に搭載された公知の電動モータ(不図示)などの負荷に対して駆動に必要な電力を供給する機能や回生された電力などを貯蔵する機能を有して構成されている。かようなバッテリ30の具体例としては、例えば公知のリチウムイオン二次電池が例示できる。なおバッテリ30としては、上記したリチウムイオン二次電池に限られず、例えばニッケル水素電池や鉛蓄電池など公知の種々の二次電池が適用できる。
【0016】
本実施形態のバッテリ30は、前記した車両10の床下11であってアンダーパネル20Aの上方に配置されてなる。より具体的に本実施形態のバッテリ30は、
図1などに示されるとおり、上記した特許文献1などのように、公知の固定用ブラケット(不図示)によってバッテリ30が車両のフロアパネルの下側に固定されてもよい。このとき、フロアパネルの下側に固定されたバッテリ30は、上記したアンダーパネル20Aの上面と対向して配置される。
【0017】
パネル昇降機構40は、走行中にバッテリ搭載車両100が受ける走行風をバッテリ30へ流通またはバッテリ30から遮断可能とするために、アンダーパネル20Aを鉛直方向に関して昇降させる機能を有して構成されている。かようなパネル昇降機構40は、例えば公知のエアシリンダ又は油圧シリンダー機構や、ステッピングモータなどのモータ駆動機構が例示できる。一例としてパネル昇降機構40は、アンダーパネル20Aの複数個所に設けられ、後述する制御装置80による制御の下でアンダーパネル20Aを鉛直方向に昇降させ得る。
【0018】
保温材50は、上記したバッテリ30を保温する機能を有して構成されている。より具体的に本実施形態の保温材50は、前記したアンダーパネルのうちバッテリ30と対向する上面に設けられてなる。かような保温材50の具体例としては、例えばグラスウールや断熱性樹脂など公知の種々の断熱材が例示できる。また、保温材50としては、上記したバッテリ30から電力の供給を受けて発熱する電熱線など公知の発熱機構であってもよい。なお保温材50は、必ずしもバッテリ搭載車両100に必須ではなく適宜省略してもよい。
【0019】
外気温センサー60は、バッテリ搭載車両100に搭載されて車両周囲の外気温を検出可能な公知の車載センサーが例示できる。後述するとおり、制御装置80は、この外気温センサー60で検出された車両の外気温に基づいて、パネル昇降機構40を介してアンダーパネル20Aを駆動(上昇)させてアンダーパネル20Aとバッテリ30とを隣接(近接または接触)させてもよい。このときアンダーパネル20Aの上面に保温材50が設けられている場合には、パネル昇降機構40を介してアンダーパネル20Aを上昇させることで保温材50が挟まれるようにアンダーパネル20Aとバッテリ30とが隣接する。
【0020】
グリルシャッター70は、車両10のうちフロントグリル12に設けられて走行風を流通または遮断する機構を有して構成されている。これによりバッテリ搭載車両100の走行中に、走行風が当該フロントグリル12を介して車内へ流通し、その走行風の少なくとも一部がバッテリ30などへ向けて流入することを許容したり遮断したりすることが可能となっている。
【0021】
かようなグリルシャッター70としては、例えば特開2021-167161号公報や特開2022-174585号公報などに開示された公知のグリルシャッター機構を適用してもよい。なおグリルシャッター70は、必ずしもバッテリ搭載車両100に必須ではなく適宜省略してもよい。
【0022】
制御装置80は、前述したパネル昇降機構40やグリルシャッター70の動作などを制御する機能を有して構成されている。一例として、バッテリ搭載車両100におけるアンダーパネル20Aの状態遷移を
図3に示す。
【0023】
すなわち
図3(a)から理解されるとおり、制御装置80は、パネル昇降機構40を介してアンダーパネル20Aを上昇(Lift)させることができる。これによりアンダーパネル20Aは例えば上限位置に達することができ、アンダーパネル20Aとバッテリ30とが隣接し得る。このときアンダーパネル20Aの上面に上記した保温材50が設置されている場合には、当該保温材50を挟むようにアンダーパネル20Aとバッテリ30とが近接し得る。
【0024】
一方で
図3(b)から理解されるとおり、制御装置80は、パネル昇降機構40を介してアンダーパネル20Aを下降(Down)させることができる。これによりアンダーパネル20Aは例えば下限位置に達することができ、アンダーパネル20Aとバッテリ30とが所定の距離だけ離間し得る。このようにグリルシャッター70を通過して車両内部に流入した走行風は、床下11に配置されたバッテリ30を冷却する冷却風として、バッテリ30とアンダーパネル20と間の流路を通過することが可能となっている。
【0025】
なお上記したアンダーパネル20Aの上限位置と下限位置は、バッテリ搭載車両100の車高やタイヤサイズなどに応じて適宜設定することができる。また、制御装置80は、アンダーパネル20Aを上記した上限位置と下限位置に位置付ける他、上限位置と下限位置の間の任意の位置(例えば後述する「Lift Slightly」や「Half Down」に対応する位置など)にアンダーパネル20Aを配置し得る。
【0026】
かような制御装置80は、車載されるECU(電子制御ユニット)として構成されてもよく、例えばCPU(Central Processing Unit)等の一つ又は複数のプロセッサと、当該プロセッサと通信可能に接続されたRAM(Random Access Memory)又はROM(Read Only Memory)等の一つ又は複数のメモリを備えて構成されていてもよい。このように制御装置80は、一つ又は複数のプロセッサがコンピュータプログラムを実行することで、上述のパネル昇降機構40によるアンダーパネル20Aの昇降動作やグリルシャッター70のシャッター開閉動作などを制御する装置として機能することができる。
【0027】
当該コンピュータプログラムは、制御装置80が実行すべき動作をプロセッサに実行させるためのコンピュータプログラムである。プロセッサにより実行されるコンピュータプログラムは、制御装置80に備えられた不図示の記憶部(メモリ)として機能する記録媒体に記録されていてもよく、制御装置80に内蔵された記録媒体又は制御装置80に外付け可能な公知の記録媒体に記録されていてもよく、あるいはバッテリ搭載車両100の外部から公知のネットワークを介してダウンロード可能に構成されていてもよい。
【0028】
なおコンピュータプログラムを記録する記録媒体としては、ハードディスク、フロッピーディスク及び磁気テープ等の磁気媒体、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disk)及びBlu-ray(登録商標)等の光記録媒体、フロプティカルディスク等の磁気光媒体、RAM及びROM等の記憶素子、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等のフラッシュメモリ、SSD(Solid State Drive)、その他のプログラムを格納可能な媒体であってよい。
【0029】
<本開示の制御装置によるアンダーパネルおよびグリルシャッターの協働>
次に
図4~
図7なども参照しつつ、第1実施形態における制御装置80によるパネル昇降機構40およびグリルシャッター70の制御例について説明する。すなわち制御装置80は、アンダーパネル20Aやフロントグリル12に設けられたシャッターの動作を制御することで、バッテリ30の冷却と並行して走行中における車両の空力特性を向上させることが可能となっている。
【0030】
図4に、制御装置80によるパネル昇降機構40及びグリルシャッター70の制御の一例として、高速走行時におけるアンダーパネルとグリルシャッターの状態を示す。すなわち、制御装置80は、バッテリ搭載車両100が例えば高速道路や所定の速度(例えば時速80Kmなど法令によって定められた相対的に高速となる速度)以上の高速走行を行っている場合には、パネル昇降機構40を介してアンダーパネル20Aを上記した下限位置まで降下させると共に、シャッターの開閉を行う公知の駆動手段(不図示)を介してグリルシャッター70を閉塞する制御を行う。
【0031】
すなわちバッテリ搭載車両100が高速走行しているときには、グリルシャッター70を閉塞してバッテリ30の冷却用流路を塞ぎ、さらにアンダーパネル20Aを地面に近づけることで車両下を流れる走行風の流速を高めることが可能となる。これにより車両下を流れる走行風の流速が増加することで車両に作用するダウンフォースが増し、その結果として走行中の車両安定性を向上できる。
【0032】
図5に、制御装置80によるパネル昇降機構40及びグリルシャッター70の制御の他の一例として、バッテリ冷却時におけるアンダーパネルとグリルシャッターの状態を示す。すなわち、制御装置80は、バッテリ30の温度が冷却を必要とする所定の温度に到達した場合には、パネル昇降機構40を介してアンダーパネル20Aを上記した下限位置から所定距離だけ上昇させる(ただし上限位置までは到達させない)と共に、シャッターの開閉を行う公知の駆動手段(不図示)を介してグリルシャッター70を開放する制御を行う。なお、上記した下限位置からのアンダーパネルの上昇度合いについては、バッテリとアンダーパネルとの間の流路をどの程度だけ狭めるかに依るが、バッテリの仕様なども考慮して実験又はシミュレーションによって事前に設定することができる。
【0033】
これにより例えばバッテリ30に対して冷却が必要な高温状態となるときには、グリルシャッター70を介してフロントグリル12から走行風の一部を車内に取り込んでバッテリ30へ向けて狭小化された流路を流通させると共に、車両下を流れる走行風の流速も並行して増加させることで上記した車両安定性を向上させることができる。
【0034】
なお「バッテリ30の温度が冷却を必要とする所定の温度」については、バッテリを構成する電池の仕様などによって種々の値を取り得ることから、実験又はシミュレーションによって予め規定しておいてもよい。
【0035】
図6に、制御装置80によるパネル昇降機構40及びグリルシャッター70の制御の他の一例として、悪路走行時におけるアンダーパネルとグリルシャッターの状態を示す。すなわち、制御装置80は、未舗装道路など路上に凹凸や石が存在し得る悪路をバッテリ搭載車両100が走行する場合には、パネル昇降機構40を介してアンダーパネル20Aを中間位置(例えば上記した上限位置と下限位置の中央)に位置付けると共に、シャッターの開閉を行う公知の駆動手段(不図示)を介してグリルシャッター70を閉塞する制御を行う。
【0036】
これにより、悪路走行中に例えば路面の凹凸や石などの障害物がバッテリ30と接触しそうになったとしても、アンダーパネル20Aが緩衝材の機能を果たすことでバッテリ30の損傷を防止することが可能となる。なお、この悪路走行時において制御装置80は、シャッターの開閉を行う公知の駆動手段(不図示)を介してグリルシャッター70を開放する制御を行ってもよい。
【0037】
また
図7に、制御装置80によるパネル昇降機構40及びグリルシャッター70の制御他の一例として、低外気温時におけるアンダーパネルとグリルシャッターの状態を示す。この例においてバッテリ搭載車両100は上記した外気温センサー60を具備しており、制御装置80は、この外気温センサー60で検出された外気温が低温となる場合には、パネル昇降機構40を介してアンダーパネル20Aを上記した上限位置まで上昇させると共に、シャッターの開閉を行う公知の駆動手段(不図示)を介してグリルシャッター70を閉塞する制御を行う。
【0038】
これによりバッテリ搭載車両100周囲の外気温が低温であるときには、グリルシャッターを介した走行風の流入を遮断するとともに、アンダーパネル20Aをバッテリ30と隣接することでバッテリ30の保温効果を向上させることができる。このときアンダーパネル20Aの上面に保温材50が設置されている場合には、バッテリ30が保温材50と接触することで上記した保温効果をさらに向上させることができる。
【0039】
なお上記した車両周囲の外気温が低温であるか否かは、バッテリ30の仕様によっても変わり得ることから、実験又はシミュレーションによって上記した「低温」の状態を予め規定しておいてもよい。
【0040】
このように制御装置80は、下記の表1に例示するように、前記した車両の走行状態に応じてグリルシャッター70とアンダーパネル20Aを協働させてバッテリ30の冷却および保温の少なくとも一方の制御を行うことが可能となっている。なお下記の表1に示す状況は一例であって、例えば高外気温時など他の状況によってグリルシャッター70とアンダーパネル20Aの最適な協働状態を適宜追加してもよい。
【0041】
さらに本実施形態では、上記した車両の走行状態に応じたグリルシャッター70とアンダーパネル20Aの作動状態を上記した記録媒体や外部サーバに保存しておいてもよい。そして制御装置80は、この記録媒体や外部サーバにアクセスして、上記走行状態に応じたグリルシャッター70とアンダーパネル20Aの作動状態を参照する制御を行ってもよい。このとき制御装置80は、グリルシャッター70の開閉制御があれば尚好ましいが、少なくとも車両の走行状態に応じてパネル昇降機構40を介したアンダーパネル20Aの動作を実行すればよい。
【0042】
【0043】
以上説明した第1実施形態における可動式のアンダーパネル20Aを少なくとも備えたバッテリ搭載車両100によれば、車両10の床下11に設置されたバッテリ30の冷却と並行して、車両の鉛直方向に上昇または下降可能なアンダーパネル20Aによって車両の空力特性を向上させることが可能となっている。
【0044】
≪第2実施形態≫
次に
図8及び
図9に、本開示の第2実施形態であるバッテリ搭載車両110の要部を示す。なお以下に示す実施形態や変形例では、第1実施形態と異なる点を主に説明し、第1実施形態と同じ機能を奏する構成については同一の参照番号を付してその説明は適宜省略する。
【0045】
図示されるように、本実施形態のバッテリ搭載車両110では、本開示のアンダーパネル20が車両10の前部と後部とに二分割されており、それぞれが独立してパネル昇降機構40によって上昇または下降することが可能となっている。すなわち
図9に示すように、本実施形態のアンダーパネル20は、車両10の底部のうちフロント側をカバーするアンダーパネル20Bと、車両10の底部のうちリア側をカバーするアンダーパネル20Cと、を含んで構成されている。
【0046】
制御装置80は、
図9(a)に示すように、パネル昇降機構40を介して、例えばフロント側のアンダーパネル20Bを上限位置に位置付けると共に、リア側のアンダーパネル20Cも上限位置に位置付けるように制御することもできる。
また制御装置80は、
図9(b)に示すように、パネル昇降機構40を介して、例えばフロント側のアンダーパネル20Bを上限位置に位置付けると共に、リア側のアンダーパネル20Cを下限位置に位置付けるように制御することもできる。
【0047】
なお本実施形態では、車両の車長方向(X方向)に関してアンダーパネル20が二分割されている例を示しているが、車両の車幅方向(Y方向)にアンダーパネル20が二分割されていてもよい。また、本実施形態ではアンダーパネル20を二分割する例を示しているが、3つ以上の任意の数に分割されていてもよい。
すなわちアンダーパネル20は車両10の車幅方向又は車長方向に関して複数に区分けされてなり、上記したパネル昇降機構40は、この区分けされた複数のアンダーパネルを互いに独立して昇降させるように構成されていてもよい。
【0048】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示はかかる例に限定されない。
≪変形例1≫
図10に、変形例1に係るバッテリ搭載車両120を示す。
既述した実施形態において、制御装置80は、パネル昇降機構40を介してアンダーパネル20A~20Cを水平方向に対して平行に上昇または下降させていた。しかしながら本開示はこのような実施形態に限られず、制御装置80は、水平方向(図中ではXY平面)に対して非平行となるようにアンダーパネル20を上昇または下降させてもよい。
【0049】
同図に示すように、変形例1に係るアンダーパネル20Dは、パネル昇降機構40に対して傾斜を許容する公知の軸受けを介して接続されている。制御装置80は、例えば車両フロント側におけるパネル昇降機構40を介したアンダーパネル20Dの昇降量と、車両リア側におけるパネル昇降機構40を介したアンダーパネル20Dの昇降量と、を異ならせることができる。
【0050】
これにより、例えば
図10(b)に示すように、アンダーパネル20Dのうち車両フロント側よりもリア側の方が鉛直方向に関して下方に位置するように、制御装置80は、パネル昇降機構40を介してアンダーパネル20Dを水平方向に対して交差するように傾斜させることが可能となっている。
【0051】
≪変形例2≫
図11に、変形例2に係るバッテリ搭載車両130を示す。
同図から理解されるとおり、変形例2におけるアンダーパネル20Eは、走行風が吹き付けられる1又は複数の突起Ptがバッテリ30と対向する上面に形成されてなる。なお上記した保温材50が上面に設けられている場合には、1又は複数の突起Ptは、この保温材50を避けるようにアンダーパネル20Eの上面に設けられていることが好ましい。
【0052】
また変形例2における1又は複数の突起Ptはアンダーパネル20Eの上面に設けられているが、本開示はこの形態に限られない。すなわち上記した1又は複数の突起Ptは、バッテリ30のうちアンダーパネル20と対向する底面に設けられていてもよい。換言すれば、バッテリ搭載車両130において、バッテリ30のうちアンダーパネル20Eと対向する底面と、アンダーパネル20Eのうちバッテリ30と対向する上面と、の少なくとも一方に、走行風が吹き付けられる1又は複数の突起Ptが形成されていてもよい。
【0053】
本開示の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、これら実施形態に対して更なる変形を試みることは明らかであり、上記した例を含む種々の変形例についても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0054】
10 車両
20 アンダーパネル
30 バッテリ
40 パネル昇降機構
50 保温材
60 外気温センサー
70 グリルシャッター
100、110、120、130 車両