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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108615
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】バッテリ冷却装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6567 20140101AFI20240805BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240805BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20240805BHJP
   H01M 10/617 20140101ALI20240805BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20240805BHJP
   H01M 50/244 20210101ALI20240805BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20240805BHJP
【FI】
H01M10/6567
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/617
H01M50/204 401H
H01M50/244 Z
H01M50/249
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013060
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】内田 雅之
(72)【発明者】
【氏名】石山 浩司
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 大介
(72)【発明者】
【氏名】上田 悠太
【テーマコード(参考)】
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H040AA28
5H040AS07
5H040AT06
5H040AY04
5H040AY08
5H040NN03
(57)【要約】
【課題】バッテリを均一に冷却することが可能なバッテリ冷却装置を提供する。
【解決手段】バッテリ3を冷却液に浸漬させて冷却するバッテリ冷却装置1は、バッテリ3及び冷却液を収容するバッテリ収容部11を有するバッテリケース10と、車体フレーム100に固定され、バッテリケース10を収容するケース収容部21を有する装置フレーム20と、重力によりバッテリケース10が水平となるように、装置フレーム20に対してバッテリケース10を傾動させる傾動機構30と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリを冷却液に浸漬させて冷却するバッテリ冷却装置であって、
前記バッテリ及び前記冷却液を収容するバッテリ収容部を有するバッテリケースと、
車体フレームに固定され、前記バッテリケースを収容するケース収容部を有する装置フレームと、
重力により前記バッテリケースが水平となるように、前記装置フレームに対して前記バッテリケースを傾動させる傾動機構と、
を備えるバッテリ冷却装置。
【請求項2】
前記傾動機構は、前記装置フレームの内面及び前記バッテリケースの外面のうちの一方の両側面に水平方向に沿って互いに対向して設けられた円弧状のレール部材と、前記装置フレームの内面及び前記バッテリケースの外面のうちの他方の両側面に設けられ、前記レール部材に沿って移動可能なローラ部材と、を含む請求項1に記載のバッテリ冷却装置。
【請求項3】
前記傾動機構は、前記装置フレームの内面及び前記バッテリケースの外面のうちの一方の両側面に水平方向に沿って互いに対向して設けられた複数のローラ部材と、前記装置フレームの内面及び前記バッテリケースの外面のうちの他方の両側面に固定され、複数の前記ローラ部材に挟まれた状態で支持される被支持部材と、を含む請求項1に記載のバッテリ冷却装置。
【請求項4】
前記両側面に交差する前記装置フレームの内面と前記バッテリケースの外面とに亘って衝撃吸収部材が設けられている請求項2又は3に記載のバッテリ冷却装置。
【請求項5】
前記衝撃吸収部材は、前記バッテリケースの傾動を抑制する付勢部材と、前記バッテリケースの傾動速度を減衰させるダンパーと、を含む請求項4に記載のバッテリ冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリを冷却液に浸漬させて冷却するバッテリ冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、走行駆動源としてモータを備えた車両(例えば、ハイブリッド車両や、プラグインハイブリッド車両や、電動車両等)(以下「電動車両」とする)が普及している。電動車両には、モータに加え、当該モータを駆動させるためのバッテリが搭載されている。このようなバッテリに関する技術として、例えば下記に出典を示す特許文献1に記載のものがある。
【0003】
特許文献1には、電池パックについて記載されている。この電池パックは、複数の電池セルが筐体内に収容され、筐体内の冷却水の水位を調整する第1開閉弁と第2開閉弁と第3開閉弁とが設けられている。電池セルの温度に応じて、第1開閉弁と第2開閉弁と第3開閉弁との開閉制御が行われ、電池セルの温度が高くなる程、電池セルが冷却水に浸漬される量を増大させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-89811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の電池パックには、上記のように第1開閉弁と第2開閉弁と第3開閉弁との開閉状態を制御して、筐体内における冷却水の水位を調整している。例えば、車両が上り坂や下り坂を走行している際には、車体(車体フレーム)と共に電池パックも傾くため、電池セルにおける冷却水の浸漬量(浸漬水位)に差異が生じる。これにより、電池セルが均一に冷却されず、冷却不足となる電池セルが発生し、電池セルの寿命にバラつきが生じることになる。
【0006】
そこで、車体が傾斜した場合であっても、バッテリを均一に冷却することが可能なバッテリ冷却装置が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るバッテリ冷却装置の特徴構成は、バッテリを冷却液に浸漬させて冷却するバッテリ冷却装置であって、前記バッテリ及び前記冷却液を収容するバッテリ収容部を有するバッテリケースと、車体フレームに固定され、前記バッテリケースを収容するケース収容部を有する装置フレームと、重力により前記バッテリケースが水平となるように、前記装置フレームに対して前記バッテリケースを傾動させる傾動機構と、を備えている点にある。
【0008】
このような特徴構成とすれば、車体フレームに固定された装置フレームの傾動状態にかかわらず、重力によりバッテリケースが水平となるように、傾動機構により装置フレームに対してバッテリケースを傾動させることができる。したがって、車体が傾斜した場合であってもバッテリケースが水平となり、バッテリケース内の冷却液の液面が水平となるので、バッテリケース内におけるバッテリの浸漬水位を一定にし、バッテリを均一に冷却することが可能となる。
【0009】
また、前記傾動機構は、前記装置フレームの内面及び前記バッテリケースの外面のうちの一方の両側面に水平方向に沿って互いに対向して設けられた円弧状のレール部材と、前記装置フレームの内面及び前記バッテリケースの外面のうちの他方の両側面に設けられ、前記レール部材に沿って移動可能なローラ部材と、を含むと好適である。
【0010】
このような構成とすれば、ローラ部材がレール部材に沿って移動し、常にバッテリを水平に維持することができるので、バッテリケース内における冷却液の液面を水平に保つことが可能となる。しかも、傾動機構をレール部材とローラ部材とで構成すれば、バッテリ冷却装置に大きな変更を加えずに製造できる。したがって、簡便な構成でバッテリの浸漬水位が一定となり、バッテリを均一に冷却することが可能となる。
【0011】
あるいは、前記傾動機構は、前記装置フレームの内面及び前記バッテリケースの外面のうちの一方の両側面に水平方向に沿って互いに対向して設けられた複数のローラ部材と、前記装置フレームの内面及び前記バッテリケースの外面のうちの他方の両側面に固定され、複数の前記ローラ部材に挟まれた状態で支持される被支持部材と、を含んでいてもよい。
【0012】
このような構成であっても、被支持部材が複数のローラ部材の間で回動し、常にバッテリを水平に維持することができるので、バッテリケース内における冷却液の液面を水平に保つことが可能となる。しかも、傾動機構をローラ部材と被支持部材とで構成すれば、バッテリ冷却装置に大きな変更を加えずに製造できる。したがって、簡便な構成でバッテリの浸漬水位が一定となり、バッテリを均一に冷却することが可能となる。
【0013】
また、前記両側面に交差する前記装置フレームの内面と前記バッテリケースの外面とに亘って衝撃吸収部材が設けられていると好適である。
【0014】
このような構成とすれば、衝撃吸収部材により装置フレームに対するバッテリケースの過度の傾動を抑制することが可能となる。したがって、バッテリケース内における冷却液の液面を緩やかに変位させることが可能となる。
【0015】
また、前記衝撃吸収部材は、前記バッテリケースの傾動を抑制する付勢部材と、前記バッテリケースの傾動速度を減衰させるダンパーと、を含むと好適である。
【0016】
このような構成とすれば、付勢部材によりバッテリケースの円滑な傾動を誘導しつつ、ダンパーによりバッテリケースの急峻な傾動を抑制することが可能となる。したがって、バッテリケース内における冷却液の液面を緩やかに変位させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1の実施形態に係るバッテリ冷却装置の平面図である。
図2】車両が水平姿勢にある場合のバッテリケースの状態を示す図である。
図3】車両が水平姿勢にある場合のバッテリケース内の冷却液の状態の断面図である。
図4】車両が後傾姿勢にある場合のバッテリケースの状態を示す図である。
図5】車両が後傾姿勢にある場合のバッテリケース内の冷却液の状態の断面図である。
図6】車両が前傾姿勢にある場合のバッテリケースの状態を示す図である。
図7】車両が前傾姿勢にある場合のバッテリケース内の冷却液の状態の断面図である。
図8】第2の実施形態に係るバッテリ冷却装置の平面図である。
図9】車両が水平姿勢にある場合のバッテリケースの状態を示す図である。
図10】車両が水平姿勢にある場合のバッテリケース内の冷却液の状態の断面図である。
図11】車両が後傾姿勢にある場合のバッテリケースの状態を示す図である。
図12】車両が後傾姿勢にある場合のバッテリケース内の冷却液の状態の断面図である。
図13】車両が前傾姿勢にある場合のバッテリケースの状態を示す図である。
図14】車両が前傾姿勢にある場合のバッテリケース内の冷却液の状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係るバッテリ冷却装置の実施形態について、図面に基づいて説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0019】
本発明に係るバッテリ冷却装置は、車両に搭載されたバッテリを冷却液に浸漬させて均一に冷却することができるように構成される。したがって、バッテリ冷却装置は、車両に搭載される。ここで、バッテリ(「バッテリパック」ともいう)は、複数のセルからなるバッテリモジュールを備えている。セルとは、バッテリを構成する最小単位の電池であって、複数のセルを直列に接続して1つのバッテリモジュールが構成される。更に、複数のバッテリモジュールを直列に接続し、この直列に接続されたバッテリモジュールを直列及び/又は並列に接続して1つのバッテリが構成される。バッテリ冷却装置は、各バッテリモジュールを冷却することで、バッテリを冷却する。以下、本実施形態のバッテリ冷却装置1について説明する。
【0020】
1.第1の実施形態
図1は、本実施形態のバッテリ冷却装置1の平面図である。図2は、図1のII-II線の断面図である。図3は、図1のIII-III線の断面図である。図1図3に示されるように、車両の進行方向をX方向とし、車両の幅方向(「車幅方向」ともいう)をY方向とし、車両の高さ方向をZ方向とする。また、特に、図1に示されるように、進行方向前側をX1側、進行方向後側をX2側とし、車幅方向左側をY1側、車幅方向右側をY2側とする。
【0021】
図1図3に示されるように、バッテリ冷却装置1は、バッテリケース10と、装置フレーム20と、傾動機構30と、衝撃吸収部材40とを備えて構成されている。
【0022】
バッテリケース10は、バッテリ2及び冷却液を収容するバッテリ収容部11を有する。本実施形態では、バッテリ2は、X方向に沿って複数(本実施形態では2つ)のバッテリモジュール3が設けられており、2つのバッテリモジュール3の夫々は、Y方向に沿って配置された複数(本実施形態では6つ)のセル4を有する。冷却液とは、ロングライフクーラント(LLC)等の冷却水、パラフィン系等の絶縁油、又はハイドロフルオロカーボン(HFC)やハイドロフルオロオレフィン(HFO)等の液状冷媒にあたる。
【0023】
本実施形態では、バッテリケース10は、図1に示されるように、平面視が正方形状に構成されており、周囲が4つの壁部12で覆われている(もちろん、バッテリケース10は、平面視が長方形状に構成されていてもよい)。具体的には、前壁部12A、後壁部12B、左壁部12C、右壁部12Dで覆われている。左壁部12Cと右壁部12Dとに亘って、Y方向に沿って内壁13が設けられている。これにより、バッテリケース10は、2つのバッテリモジュール3を個別に収容するように構成される。このようなバッテリモジュール3の夫々を収容する空間が、上述したバッテリ収容部11に相当する。上述したように図1の例では、バッテリ2は、2つのバッテリモジュール3を備えていることから、バッテリケース10には2つのバッテリ収容部11が設けられる。夫々のバッテリ収容部11は、底部14を有し、内壁13とバッテリモジュール3との間に隙間を有する状態でバッテリモジュール3を収容する。図3に示されるように、この隙間に冷却液が供給される。
【0024】
また、バッテリケース10には、図3に示されるように、上方に蓋部15が設けられる(図1では、蓋部15は省略している)。図示はしないが、バッテリモジュール3には、この蓋部15を介して上方から冷却液が噴射されるように供給される。また、バッテリケース10は、バッテリ収容部11において所定の高さまで冷却液が貯留されると共に、底部14側から冷却液が排出されるように構成される。
【0025】
装置フレーム20は、バッテリケース10を収容するケース収容部21を有する。本実施形態では、装置フレーム20は、図1に示されるように、平面視が正方形状に構成されており、周囲が4つの壁部22で覆われている(もちろん、長方形状に構成されていてもよい)。具体的には、前壁部22A、後壁部22B、左壁部22C、右壁部22Dで覆われている。前壁部22A、後壁部22B、左壁部22C、及び右壁部22Dで囲まれて形成される空間に、バッテリケース10が収容される。このバッテリケース10を収容する空間が、上述したケース収容部21に相当する。また、本実施形態では、図1図3に示されるように、装置フレーム20は、底面が開放されている。したがって、装置フレーム20は、軸方向視が四角形状(正方形状や長方形状)の筒状に構成される。
【0026】
装置フレーム20は、車体フレーム100に固定される。車体フレーム100とは、車両のボディを形成するフレームである。本実施形態では、前壁部22Aの上端部に、X1側に向かって突出する前側フランジ部23Aが設けられる。また、後壁部22Bの上端部に、X2側に向かって突出する後側フランジ部23Bが設けられる。装置フレーム20は前側フランジ部23A及び後側フランジ部23Bの夫々が、ネジ部材101により車体フレーム100に締結固定される。
【0027】
これにより、装置フレーム20は車体フレーム100と同様の状態とされる。すなわち、車両が上り勾配の道に位置している場合には、車体フレーム100が前上り(後下がり)の状態となり、車両が下り勾配の道に位置している場合には、車体フレーム100が前下がり(後上り)の状態となる。また、車両が左下がりのバンクを有する道に位置している場合には、車体フレーム100が左下がりの状態となり、車両が右下がりのバンクを有する道に位置している場合には、車体フレーム100が右下がりの状態となる。すなわち、装置フレーム20は、車両の傾きと同じように傾斜する。
【0028】
上述したように、バッテリケース10は、装置フレーム20のケース収容部21に収容されるが、バッテリケース10と装置フレーム20とに亘って、傾動機構30が設けられている。傾動機構30は、重力によりバッテリケース10が水平となるように、装置フレーム20に対してバッテリケース10を傾動させる。
【0029】
本実施形態では、傾動機構30は、レール部材31とローラ部材32とを含んで構成される。レール部材31は、装置フレーム20の内面及びバッテリケース10の外面のうちの一方の両側面に水平方向(前後方向)に沿って互いに対向して設けられる。本実施形態では、レール部材31は、装置フレーム20の内面の両側面に水平方向(前後方向)に沿って互いに対向して設けられる。このため、装置フレーム20の内面の両側面とは、左壁部22Cの内面と右壁部22Dの内面とが相当する。本実施形態では、レール部材31は、図2に示されるように水平方向視(左右方向視)が、中央に行くほどZ方向の下側に向かって凹んだ円弧状に形成される。また、レール部材31は、X方向中央部に対して、形状がX1側とX2側とで対称に形成される。このような円弧状のレール部材31は、左壁部22Cの内面に設けられた左レール部材31Aと右壁部22Dの内面に設けられた右レール部材31Bとからなる。したがって、左レール部材31Aと右レール部材31Bとは、水平方向に沿って互いに対向して設けられる。レール部材31は、装置フレーム20に固定される。したがって、レール部材31は、装置フレーム20と同様に、車両の傾きに合わせて傾斜する。
【0030】
ローラ部材32は、装置フレーム20の内面及びバッテリケース10の外面のうちの他方の両側面に設けられ、レール部材31に沿って移動可能な状態で設けられる。本実施形態では、ローラ部材32は、バッテリケース10の外面の両側面に設けられる。このため、バッテリケース10の外面の両側面とは、左壁部12Cの外面と右壁部12Dの外面とが相当する。本実施形態では、ローラ部材32は、図1に示されるように左壁部12Cの外面と右壁部12Dの外面との夫々に、X方向に沿って同じ数の複数(本実施形態では2つずつ)設けられる。左壁部12Cの外面に設けられる2つのローラ部材32と、右壁部12Dの外面に設けられる2つのローラ部材32とは、夫々、図2に示されるように、水平方向視において、Z方向に沿う高さが互いに等しい位置で、且つ、X方向中央部から互いに等しい位置に設けられる。
【0031】
ローラ部材32は、夫々、軸心を回転中心として回転可能に構成され、レール部材31に載置される。具体的には、左壁部12Cの外面に設けられる2つのローラ部材32は、左壁部22Cの内面に設けられた左レール部材31Aに載置され、右壁部12Dの外面に設けられる2つのローラ部材32は右壁部22Dの内面に設けられた右レール部材31Bに載置される。ローラ部材32は、レール部材31に対して固定されておらず、自由にレール部材31上を移動可能な状態とされる。したがって、装置フレーム20が、車両の傾きと同様に傾斜した場合であっても、図2及び図3に示されるように、バッテリケース10の重心Gの位置がレール部材31の最下方の位置と鉛直方向に沿って並ぶように、バッテリケース10は水平状態が維持される。なお、バッテリケース10の重心Gの位置は、バッテリ収容部11にバッテリ2が収容された状態で、ローラ部材32よりも下方に位置するように構成すると好適である。
【0032】
衝撃吸収部材40は、上述した両側面に交差する装置フレーム20の内面とバッテリケース10の外面とに亘って設けられる。上述した両側面とは、左壁部22Cの内面と右壁部22Dの内面、及び、左壁部12Cの外面と右壁部12Dの外面が相当する。このため、両側面に交差する装置フレーム20の内面とバッテリケース10の外面とは、このような両側面に交差する面が相当する。具体的には、前壁部22Aの内面と後壁部22Bの内面、及び、前壁部12Aの外面と後壁部12Bの外面が相当する。したがって、衝撃吸収部材40は、前壁部22Aの内面と前壁部12Aの外面とに亘って設けられると共に、後壁部22Bの内面と後壁部12Bの外面とに亘って設けられる。
【0033】
本実施形態では、衝撃吸収部材40は、バッテリケース10の円滑な傾動を誘導する付勢部材41と、バッテリケース10の傾動速度を減衰させるダンパー42と、を含んで構成される。バッテリケース10の傾動とは、装置フレーム20に対して傾くようなバッテリケース10の動きである。付勢部材41とは、印加された荷重に対して対向する力を生じさせる部材である。このような部材として、例えばバネ部材が相当する。また、バッテリケース10の傾動速度とは、装置フレーム20に対して傾いて動く際のバッテリケース10の速度である。ダンパー42とは、流体が注入されている筒状体の内側をピストンが移動する際に抵抗を生じさせる装置である。したがって、衝撃吸収部材40は、装置フレーム20に対して傾くようなバッテリケース10の動きに追従するバネ部材からなる付勢部材41と、装置フレーム20に対して傾いて動く際のバッテリケース10の速度を減衰させる抵抗を生じさせるダンパー42と、を含んで構成される。
【0034】
本実施形態では、衝撃吸収部材40は、前壁部22Aの内面と前壁部12Aの外面とに亘って付勢部材41A及びダンパー42Aが設けられると共に、後壁部22Bの内面と後壁部12Bの外面とに亘って付勢部材41B及びダンパー42Bが設けられる。なお、図1の例では、付勢部材41A及び付勢部材41BがY1側に設けられ、ダンパー42A及びダンパー42BがY2側に設けられている。これら付勢部材41とダンパー42とは互いに離間して設けているが、付勢部材41の径方向内側にダンパー42を設けてもよい。また、付勢部材41とダンパー42とは、互いに異なる高さに位置に設けているが、同じ高さの位置に設けてもよい。
【0035】
以上のように構成されたバッテリ冷却装置1を搭載する車両が水平な場所を走行している際や、水平な場所に駐停車している際には、図2に示されるように、装置フレーム20の4つの壁部22が鉛直方向に沿って立設する状態となる。この場合には、バッテリケース10に設けられたローラ部材32は、バッテリケース10の底部14及び蓋部15が水平になるように、レール部材31上を移動する。これにより、図3に示されるように、バッテリケース10内の冷却液は、液面が水平な状態となり、夫々のバッテリモジュール3における冷却液の浸漬水位が同じ水位になる。
【0036】
例えばバッテリ冷却装置1を搭載する車両が上り勾配の場所を走行している際や、上り勾配の場所に駐停車している際には、図4に示されるように、装置フレーム20の前壁部22A及び後壁部22Bが、X2側に傾いた状態となる。この場合には、レール部材31も装置フレーム20と共にX2側に傾くが、ローラ部材32は、バッテリケース10の重心Gの位置がレール部材31の最下方の位置と鉛直方向に沿って並ぶように、時計回りに回転しながらレール部材31上を移動する。これにより、図5に示されるように、バッテリケース10内の冷却液は、液面が水平な状態となり、夫々のバッテリモジュール3における冷却液の浸漬水位が同じ水位になる。
【0037】
また、例えばバッテリ冷却装置1を搭載する車両が下り勾配の場所を走行している際や、下り勾配の場所に駐停車している際には、図6に示されるように、装置フレーム20の前壁部22A及び後壁部22Bが、X1側に傾いた状態となる。この場合には、レール部材31も装置フレーム20と共にX1側に傾くが、ローラ部材32は、バッテリケース10の重心Gの位置がレール部材31の最下方の位置と鉛直方向に沿って並ぶように、反時計回りに回転しながらレール部材31上を移動する。これにより、図7に示されるように、バッテリケース10内の冷却液は、液面が水平な状態となり、夫々のバッテリモジュール3における冷却液の浸漬水位が同じ水位になる。
【0038】
以上のように、本バッテリ冷却装置1によれば、車両が水平な場所を走行している際や水平な場所に駐停車している際のような水平な状態はもちろん、車両が上り勾配の場所を走行している際や上り勾配の場所に駐停車している際のような前上がりの状態や、車両が下り勾配の場所を走行している際や下り勾配の場所に駐停車している際のような前下がりの状態にかかわらず、バッテリケース10内の冷却液の液面を水平な状態に維持し、夫々のバッテリモジュール3における冷却液の浸漬水位を同じ水位にすることができる。したがって、バッテリ2を均一に冷却することが可能となる。
【0039】
2.第2の実施形態
次に、バッテリ冷却装置1の第2の実施形態について説明する。第1の実施形態では、傾動機構30がレール部材31とローラ部材32とを含んで構成されていたが、第2の実施形態では傾動機構30がローラ部材33と被支持部材34とを含んで構成される点で第1の実施形態と異なる。その他の構成については、第1の実施形態と同様である。以下では、第2の実施形態について、主に第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0040】
図8は、本実施形態のバッテリ冷却装置1の平面図である。図9は、図8のIX-IX線の断面図である。図10は、図8のX-X線の断面図である。図8図10に示されるように、本実施形態のバッテリ冷却装置1も、第1の実施形態と同様に、バッテリケース10と、装置フレーム20と、傾動機構30と、衝撃吸収部材40とを備えて構成されている。バッテリケース10、装置フレーム20、及び衝撃吸収部材40は、第1の実施形態と同様であるので、説明は省略する。
【0041】
本実施形態では、傾動機構30は、ローラ部材33と被支持部材34とを含んで構成される。ローラ部材33は、装置フレーム20の内面及びバッテリケース10の外面のうちの一方の両側面に水平方向に沿って互いに対向して設けられる。ローラ部材33は複数(本実施形態では3つ)設けられる。本実施形態では、ローラ部材33は、装置フレーム20の内面の両側面に水平方向に沿って互いに対向して設けられる。このため、装置フレーム20の内面の両側面とは、左壁部22Cの内面と右壁部22Dの内面とが相当する。本実施形態では、ローラ部材33は、図9に示されるように一方の側面に3つ設けられ、水平方向視が、夫々の軸心で正三角形を呈するように配置される。このとき、3つのローラ部材33のうちの2つのローラ部材33がX方向に沿って設けられ、残りの1つのローラ部材33が当該2つのローラ部材33よりも下方において、装置フレーム20の内面の両側面におけるX方向中央部に位置するように設けられる。このようなローラ部材33は、左壁部22Cの内面と右壁部22Dの内面とに、水平方向に沿って互いに対向するように、夫々、3つずつ設けられる。ローラ部材33は、装置フレーム20に固定される。したがって、ローラ部材33は、装置フレーム20と共に、車両の傾きに合わせて傾斜する(すなわち、3つのローラ部材33の夫々の軸心が呈する正三角形が、車両の傾きに合わせて傾斜する)。ローラ部材33は、夫々、軸心を回転中心として回転可能に構成される。
【0042】
被支持部材34は、装置フレーム20の内面及びバッテリケース10の外面のうちの他方の両側面に固定され、複数のローラ部材33に挟まれた状態で支持される。本実施形態では、被支持部材34は、バッテリケース10の外面の両側面に設けられる。このため、バッテリケース10の外面の両側面とは、左壁部12Cの外面と右壁部12Dの外面とが相当する。本実施形態では、被支持部材34は、図8に示されるように左壁部12Cの外面と右壁部12Dの外面との夫々に、X方向に沿って1つずつ設けられる。
【0043】
左壁部12Cの外面に設けられる1つの被支持部材34と、右壁部12Dの外面に設けられる1つの被支持部材34とは、夫々、図9に示されるように、3つのローラ部材33に挟まれた状態で設けられる。具体的には、左壁部12Cの外面に設けられる被支持部材34は、左壁部22Cの内面に設けられた3つのローラ部材33に挟まれるように配置され、右壁部12Dの外面に設けられる被支持部材34は、右壁部22Dの内面に設けられた3つのローラ部材33に挟まれるように配置される。被支持部材34は、ローラ部材33に対して固定されておらず、3つのローラ部材33が被支持部材34を挟んだ状態で自由に回動可能な状態とされる。したがって、装置フレーム20が、車両の傾きと同様に傾斜した場合であっても、図9及び図10に示されるように、バッテリケース10は水平状態が維持される。なお、バッテリケース10の重心Gの位置は、バッテリ収容部11にバッテリ2が収容された状態で、ローラ部材33よりも下方に位置するように構成すると好適である。
【0044】
本実施形態でも、両側面に交差する装置フレーム20の内面とバッテリケース10の外面とに亘って衝撃吸収部材40が設けられる。また、衝撃吸収部材40は、バッテリケース10の円滑な傾動を誘導する付勢部材41と、バッテリケース10の傾動速度を減衰させるダンパー42と、を含んで構成される。
【0045】
以上のように構成されたバッテリ冷却装置1を搭載する車両が水平な場所を走行している際や、水平な場所に駐停車している際には、図9に示されるように、装置フレーム20の4つの壁部22が鉛直方向に沿って立設する状態となる。この場合には、バッテリケース10に設けられた被支持部材34は、バッテリケース10の底部14及び蓋部15が水平になるように、3つのローラ部材33に挟まれた状態で回動する。これにより、図10に示されるように、バッテリケース10内の冷却液は、液面が水平な状態となり、夫々のバッテリモジュール3における冷却液の浸漬水位が同じ水位になる。
【0046】
例えばバッテリ冷却装置1を搭載する車両が上り勾配の場所を走行している際や、上り勾配の場所に駐停車している際には、図11に示されるように、装置フレーム20の前壁部22A及び後壁部22Bが、X2側に傾いた状態となる。この場合には、バッテリケース10が水平状態を維持するように、被支持部材34が、ローラ部材33に挟まれた状態で回動する。この場合には、ローラ部材33は時計回りに回動する。これにより、図12に示されるように、バッテリケース10内の冷却液は、液面が水平な状態となり、夫々のバッテリモジュール3における冷却液の浸漬水位が同じ水位になる。
【0047】
また、例えばバッテリ冷却装置1を搭載する車両が下り勾配の場所を走行している際や、下り勾配の場所に駐停車している際には、図13に示されるように、装置フレーム20の前壁部22A及び後壁部22Bが、X1側に傾いた状態となる。この場合には、バッテリケース10が水平状態を維持するように、被支持部材34が、ローラ部材33に挟まれた状態で回動する。この場合には、ローラ部材33は反時計回りに回動する。これにより、図14に示されるように、バッテリケース10内の冷却液は、液面が水平な状態となり、夫々のバッテリモジュール3における冷却液の浸漬水位が同じ水位になる。
【0048】
以上のように、本実施形態のバッテリ冷却装置1も、上述した第1の実施形態と同様に、車両が水平な場所を走行している際や水平な場所に駐停車している際のような水平な状態はもちろん、車両が上り勾配の場所を走行している際や上り勾配の場所に駐停車している際のような前上がりの状態や、車両が下り勾配の場所を走行している際や下り勾配の場所に駐停車している際のような前下がりの状態にかかわらず、バッテリケース10内の冷却液の液面を水平な状態に維持し、夫々のバッテリモジュール3における冷却液の浸漬水位を同じ水位にすることができる。したがって、バッテリ2を均一に冷却することが可能となる。
【0049】
3.その他の実施形態
上記第1の実施形態では、レール部材31は、装置フレーム20の内面の両側面に水平方向に沿って互いに対向して設けられ、ローラ部材32は、バッテリケース10の外面の両側面に設けられるとして説明した。しかしながら、レール部材31は、バッテリケース10の外面の両側面に水平方向に沿って互いに対向して設けられ、ローラ部材32は、装置フレーム20の内面の両側面に設けてもよい。
【0050】
上記第2の実施形態では、ローラ部材33は、装置フレーム20の内面の両側面に水平方向に沿って互いに対向して設けられ、被支持部材34は、バッテリケース10の外面の両側面に設けられるとして説明した。しかしながら、ローラ部材33は、バッテリケース10の外面の両側面に水平方向に沿って互いに対向して設けられ、被支持部材34は、装置フレーム20の内面の両側面に設けてもよい。
【0051】
上記実施形態では、衝撃吸収部材40は、左壁部22Cの内面と右壁部22Dの内面、及び、左壁部12Cの外面と右壁部12Dの外面に交差する装置フレーム20の内面とバッテリケース10の外面とに亘って設けられるとして説明したが、バッテリ冷却装置1は、衝撃吸収部材40を備えずに構成することも可能である。
【0052】
上記実施形態では、衝撃吸収部材40は、付勢部材41とダンパー42とを含むとして説明した。しかしながら、衝撃吸収部材40は、付勢部材41及びダンパー42の一方を含むように構成してもよい。また、付勢部材41とダンパー42とを、1つずつ設けてもよい。更には、衝撃吸収部材40は、付勢部材41とダンパー42とは異なる部材(例えば、緩衝材や弾性部材等)を用いて構成してもよい。
【0053】
上記実施形態では、傾動機構30をY1側及びY2側に設け、装置フレーム20のX方向の傾きにかかわらず、バッテリケース10を水平に維持する場合の例を挙げて説明した。例えば、傾動機構30をX1側及びX2側に設け、装置フレーム20のY方向の傾きにかかわらず、バッテリケース10を水平に維持するように構成することも可能である。
【0054】
更には、傾動機構30をY1側及びY2側に設けると共に、X1側及びX2側に設けるように構成することも可能である。この場合には、バッテリケース10と装置フレーム20との間に中間フレームを設け、例えばバッテリケース10と中間フレームとに亘って、Y方向に沿って対向するように第1傾動機構を設け、中間フレームと装置フレーム20とに亘って、X方向に沿って対向するように第2傾動機構を設けるとよい。これにより、車両が前後方向及び左右方向の一方や双方に沿って傾いた場合であっても、バッテリケース10を水平状態に維持することが可能となる。したがって、バッテリケース10内の冷却液の液面を水平な状態に維持し、夫々のバッテリモジュール3における冷却液の浸漬水位を同じ水位にすることができるので、バッテリ2を均一に冷却することが可能となる。
【0055】
本発明は、バッテリを冷却液に浸漬させて冷却するバッテリ冷却装置に用いることが可能である。
【符号の説明】
【0056】
1:バッテリ冷却装置
2:バッテリ
10:バッテリケース
11:バッテリ収容部
20:装置フレーム
21:ケース収容部
30:傾動機構
31:レール部材
32:ローラ部材
33:ローラ部材
34:被支持部材
40:衝撃吸収部材
41:付勢部材
42:ダンパー
100:車体フレーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図10
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