(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108629
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】鞍乗り型車両
(51)【国際特許分類】
B62J 23/00 20060101AFI20240805BHJP
B62J 17/10 20200101ALI20240805BHJP
【FI】
B62J23/00 C
B62J23/00 G
B62J17/10
B62J23/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013085
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】辻 歩
(57)【要約】
【課題】車体カバーの外面に分割部が露出する鞍乗り型車両において、外観性および空力性の向上を図る。
【解決手段】自動二輪車1は、車体後部の側方を覆うリヤサイドカバー27と車体前部の側方を覆うフロントサイドカバー22とを備え、リヤサイドカバー27は、車両側面視で後下がりに延びるリヤ分割線27cを境に、リヤ第一カバー27aとリヤ第二カバー27bとに分割され、フロントサイドカバー22は、車両側面視で後下がりに延びるフロント分割線22cを境に、フロント第一カバー22aとフロント第二カバー22bとに分割され、車両側面視で、リヤ分割線27cは、後輪4の上端t1よりも上方を通り、車両側面視で、フロント分割線22cは、リヤ第一カバー27aと重なり、リヤ第一カバー27aにおける、車両側面視でフロント分割線22cと重なる部位には、車幅方向外側に臨む開口部31が形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体後部の側方を覆う後部サイドカバー(27)と車体前部の側方を覆う前部サイドカバー(22)とを備え、
前記後部サイドカバー(27)は、車両側面視で後下がりに延びる後部分割線(27c)を境に、後部第一カバー(27a)と後部第二カバー(27b)とに分割され、
前記前部サイドカバー(22)は、車両側面視で後下がりに延びる前部分割線(22c)を境に、前部第一カバー(22a)と前部第二カバー(22b)とに分割され、
車両側面視で、前記後部分割線(27c)は、仮想延長部分が後輪(4)の上端(t1)よりも上方を通り、
車両側面視で、前記前部分割線(22c)は、仮想延長部分が前記後部第一カバー(27a)および前記後部第二カバー(27b)の一方と重なり、
前記後部第一カバー(27a)および前記後部第二カバー(27b)の一方における、車両側面視で前記前部分割線(22c)の仮想延長部分と重なる部位には、車幅方向外側に臨む開口部(31)が形成されている、鞍乗り型車両。
【請求項2】
前記開口部(31)は、車両側面視で後下がりに延びる開口上端縁(31a)を形成し、
車両側面視で、前記開口上端縁(31a)と、前記後部分割線(27c)と、前記前部分割線(22c)とは、互いに略平行とされている、請求項1に記載の鞍乗り型車両。
【請求項3】
前記開口部(31)は、車両側面視で前上がりに延びる開口上端縁(31a)と、前記開口上端縁(31a)の前端から前下がりに延びる第二開口上端縁(31b)と、前記開口上端縁(31a)の後端から前下がりに延びる開口下端縁(31c)と、前記開口下端縁(31c)の前端から前上がりに延びる第二開口下端縁(31d)と、を備え、
前記開口部(31)は、車両側面視で上下端(t2,t3)を結ぶ直線(L1)よりも前後端(t4,t5)を結ぶ直線(L2)が長い、請求項1に記載の鞍乗り型車両。
【請求項4】
前記開口部(31)を有する前記後部第一カバー(27a)又は前記後部第二カバー(27b)は、車両側面視で前上がりに延びるカバー上端縁(32a)と、前記カバー上端縁(32a)の前端から前下がりに延びる第二カバー上端縁(32b)と、前記カバー上端縁(32a)の後端から前下がりに延びるカバー下端縁(32c)と、前記カバー下端縁(32c)の前部から前上がりに延びる第二カバー下端縁(32d)と、を備えている、請求項3に記載の鞍乗り型車両。
【請求項5】
前記前部サイドカバー(22)が装着される前部車体と、前記後部サイドカバー(27)が装着される後部車体と、の間に、乗員が足を載せるフロアステップ(6)を備え、
前記フロアステップ(6)の左右外側の下方には、フロアサイドカバー(25)を備え、
前記フロアサイドカバー(25)は、前記開口部(31)を有する前記後部第一カバー(27a)又は前記後部第二カバー(27b)に下方から接続されている、請求項4に記載の鞍乗り型車両。
【請求項6】
前記フロアサイドカバー(25)は、車幅方向外側に臨んでいる、請求項5に記載の鞍乗り型車両。
【請求項7】
前記開口部(31)の前方、後方および下方に、前記開口部(31)を有する前記後部第一カバー(27a)又は前記後部第二カバー(27b)を車体に固定するための締結部(34a,34b,34c)を備えている、請求項1から6の何れか一項に記載の鞍乗り型車両。
【請求項8】
車両側面視で複数の前記締結部(34a,34b,34c)を結んだ領域の中に、前記開口部(31)が配置されている、請求項7に記載の鞍乗り型車両。
【請求項9】
前記後部分割線(27c)および前記前部分割線(22c)は、車両側面視で水平線に対する傾斜角度(θ1,θ2)が45度以内とされている、請求項1から6の何れか一項に記載の鞍乗り型車両。
【請求項10】
前記後部分割線(27c)の両端を結んだ線を後部分割基準線(27d)とし、前記後部分割基準線(27d)の延長部分が前記仮想延長部分される、請求項1から6の何れか一項に記載の鞍乗り型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗り型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鞍乗り型車両において、シート下のサイドカバーの面を小さく見せるために、サイドカバーを前後に分割したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記した車体カバーの構造において、サイドカバーの後部をさらに小さくみせてスポーティにしつつ、前側カバーの面も小さく見えるようにしたいという要望がある。
他方、近年では、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能かつ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献する研究開発が広く行われている。
車両の例では、駆動源の高効率化の他、空力性向上に寄与する技術も有効である。
したがって、上記のような車体カバーの構造においても、空力性向上を考慮した構成が望まれている。
【0005】
そこで本発明は、車体カバーの外面に分割部が露出する鞍乗り型車両において、外観性および空力性の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決手段として、本発明の第一の態様は、車体後部の側方を覆う後部サイドカバー(27)と車体前部の側方を覆う前部サイドカバー(22)とを備え、前記後部サイドカバー(27)は、車両側面視で後下がりに延びる後部分割線(27c)を境に、後部第一カバー(27a)と後部第二カバー(27b)とに分割され、前記前部サイドカバー(22)は、車両側面視で後下がりに延びる前部分割線(22c)を境に、前部第一カバー(22a)と前部第二カバー(22b)とに分割され、車両側面視で、前記後部分割線(27c)は、仮想延長部分が後輪(4)の上端(t1)よりも上方を通り、車両側面視で、前記前部分割線(22c)は、仮想延長部分が前記後部第一カバー(27a)および前記後部第二カバー(27b)の一方と重なり、前記後部第一カバー(27a)および前記後部第二カバー(27b)の一方における、車両側面視で前記前部分割線(22c)の仮想延長部分と重なる部位には、車幅方向外側に臨む開口部(31)が形成されている。
この構成によれば、後部サイドカバーおよび前部サイドカバーが、それぞれ後下がり(すなわち前上がり)に傾斜した後部分割線および前部分割線を有するので、車両側面視で躍動感のあるデザインとすることができる。後下がりの後部分割線は、後輪上端よりも上方を通るので、車両側面視の傾きが浅くなり(水平に近くなり)、スピード感のある外観とすることができる。第一カバーおよび第二カバーの一方における前部分割線と重なる部位に開口部が形成されるので、前部分割線に沿って流れた走行風は、後部サイドカバーの開口部周辺に案内されて適宜流れるため、開口部に沿った整流を図ることができる。
【0007】
本発明の第二の態様は、上記第一の態様において、前記開口部(31)は、車両側面視で後下がりに延びる開口上端縁(31a)を形成し、車両側面視で、前記開口上端縁(31a)と、前記後部分割線(27c)と、前記前部分割線(22c)とは、互いに略平行とされている。
この構成によれば、開口上端縁と前後サイドカバーの分割線とが互いに略平行となるので、連続性のあるスポーティなデザインとすることができる。
【0008】
本発明の第三の態様は、上記第一の態様において、前記開口部(31)は、車両側面視で前上がりに延びる開口上端縁(31a)と、前記開口上端縁(31a)の前端から前下がりに延びる第二開口上端縁(31b)と、前記開口上端縁(31a)の後端から前下がりに延びる開口下端縁(31c)と、前記開口下端縁(31c)の前端から前上がりに延びる第二開口下端縁(31d)と、を備え、前記開口部(31)は、車両側面視で上下端(t2,t3)を結ぶ直線(L1)よりも前後端(t4,t5)を結ぶ直線(L2)が長い。
この構成によれば、開口部を車両側面視で前後に長いひし形とすることで、スピード感のあるデザインとすることができる。
【0009】
本発明の第四の態様は、上記第三の態様において、前記開口部(31)を有する前記後部第一カバー(27a)又は前記後部第二カバー(27b)は、車両側面視で前上がりに延びるカバー上端縁(32a)と、前記カバー上端縁(32a)の前端から前下がりに延びる第二カバー上端縁(32b)と、前記カバー上端縁(32a)の後端から前下がりに延びるカバー下端縁(32c)と、前記カバー下端縁(32c)の前端から前上がりに延びる第二カバー下端縁(32d)と、を備えている。
この構成によれば、開口部を有する第一カバー又は第二カバーを、開口部と同様に車両側面視でひし形とすることで、開口部と併せてスピード感のあるデザインとすることができる。第一カバー又は第二カバーが枠状のフレームのような外観をなし、軽快で空気の流れを想起させるデザインとすることができる。
【0010】
本発明の第五の態様は、上記第四の態様において、前記前部サイドカバー(22)が装着される前部車体と、前記後部サイドカバー(27)が装着される後部車体と、の間に、乗員が足を載せるフロアステップ(6)を備え、前記フロアステップ(6)の左右外側の下方には、車体下方に臨むフロアサイドカバー(25)を備え、前記フロアサイドカバー(25)は、前記開口部(31)を有する前記後部第一カバー(27a)又は前記後部第二カバー(27b)に下方から接続されている。
この構成によれば、開口部を有する第一カバーまたは第二カバーに、フロアステップの左右外側のフロアサイドカバーを下方から接続することで、枠状の外観をなすカバーとフロアサイドカバーとを一体化して合理化を図ることができる。
【0011】
本発明の第六の態様は、上記第五の態様において、前記フロアサイドカバー(25)は、車幅方向外側に臨んでいる。
この構成によれば、車両側面視で枠状のカバーとアンダーカバーとで一体的な外観を形成することができる。
【0012】
本発明の第七の態様は、上記第一から第六の態様の何れか一つにおいて、前記開口部(31)の前方、後方および下方に、前記開口部(31)を有する前記後部第一カバー(27a)又は前記後部第二カバー(27b)を車体に固定するための締結部(34a,34b,34c)を備えている。
この構成によれば、枠状をなすカバーをバランスよく締結固定することができる。
【0013】
本発明の第八の態様は、上記第七の態様において、車両側面視で複数の前記締結部(34a,34b,34c)を結んだ領域の中に、前記開口部(31)が配置されている。
この構成によれば、開口部を囲むように複数の締結部を備えることで、開口部を有するカバーをバランスよく締結固定するとともに、外観性を向上させることができる。
【0014】
本発明の第九の態様は、上記第一から第六の態様の何れか一つにおいて、前記後部分割線(27c)および前記前部分割線(22c)は、車両側面視で水平線に対する傾斜角度(θ1,θ2)が45度以内とされている。
この構成によれば、後部分割線および前部分割線の水平線に対する傾斜角度が大きい場合に比べて、スピード感のある外観とすることができる。
【0015】
本発明の第十の態様は、上記第一から第六の態様の何れか一つにおいて、前記後部分割線(27c)の両端を結んだ線を後部分割基準線(27d)とし、前記後部分割基準線(27d)の延長部分が前記仮想延長部分とされる。
この構成によれば、分割線が車両側面視で曲がっている場合にも、分割線の仮想延長部分に基づく配置を適切に決定することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、車体カバーの外面に分割部が露出する鞍乗り型車両において、外観性および空力性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態における自動二輪車の左側面図である。
【
図2】上記自動二輪車の車体後部の左側面図である。
【
図3】上記自動二輪車のフロアステップ周辺の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明における前後左右等の向きは、特に記載が無ければ以下に説明する車両における向きと同一とする。また以下の説明に用いる図中適所には、車両前方を示す矢印FR、車両上方を示す矢印UPが示されている。
【0019】
図1は、車両の一例としてのスクータ型の自動二輪車(鞍乗り型車両)1を、車両左右方向(車幅方向)から見た左側面図を示している。自動二輪車1は、操向輪である前輪3と、駆動輪である後輪4と、を備えている。前輪3は、フロントフォーク3aに支持され、バーハンドル2によって操向可能である。後輪4は、スイング式のパワーユニット8に支持され、パワーユニット8によって駆動可能である。バーハンドル2、フロントフォーク3aおよび前輪3を含むステアリング系部品は、車体フレーム10の前端部のヘッドパイプ10aに操向可能に支持されている。パワーユニット8の前部は、車体フレーム10の前後中間部(中央に限らない)に上下揺動可能に支持されている。パワーユニット8は、車両走行用の駆動源8aと、駆動源8aが発生した駆動力を後輪4に伝達する伝動装置8bと、を備えている。駆動源8aは、例えば内燃機関および電気モータの少なくとも一方を備えている。
【0020】
前輪3と後輪4との間には、運転者が足を置くフロアステップ6が設けられている。フロアステップ6の前方には、フロントボディ11が設けられている。フロアステップ6の後方には、リアボディ12が設けられている。フロントボディ11およびリアボディ12の間でフロアステップ6の上方の空間K1は、運転者が車体を跨ぐ際の跨ぎ空間K1とされている。フロントボディ11の上方には、バーハンドル2が配置され、バーハンドル2はハンドルカバー2aに覆われている。リアボディ12の上方には、乗員が着座するシート5が配置されている。フロアステップ6の下部左側には、車体を左側に傾斜させた起立状態で支持可能な可倒式のサイドスタンド7が設けられている。
【0021】
自動二輪車1の車体フレーム10の周囲は、車体カバー20で覆われている。車体カバー20は、フロントボディ11を前方から覆うフロントセンターカバー21と、フロントボディ11を左右側方から覆うフロントサイドカバー22と、フロントボディ11を後方から覆うインナーカバー23と、を備えている。
【0022】
また、車体カバー20は、フロアステップ6を上方から覆うフロアカバー24と、フロアステップ6を左右側方から覆うフロアサイドカバー25と、を備えている。
また、車体カバー20は、リアボディ12を前方から覆うリヤセンターカバー26と、リアボディ12を左右側方から覆うリヤサイドカバー27と、を備えている。
【0023】
フロントセンターカバー21およびフロントサイドカバー22は、フロントボディ11の外面を形成している。リヤセンターカバー26およびリヤサイドカバー27は、リアボディ12の外面を形成している。フロアカバー24の上面は、フロアステップ6の足載せ面24aを構成している。足載せ面24aは、例えば車幅方向の全幅に渡って平坦状である。フロアステップ6は、車幅方向内側で上方に隆起するセンタートンネルを備えてもよい。
【0024】
リヤサイドカバー27は、車両側面視で後下がりに傾斜するリヤ分割線27cを境に、前下側のリヤ第一カバー27aと後上側のリヤ第二カバー27bとに分割されている。
図2、
図3を併せて参照し、リヤ第一カバー27aとリヤ第二カバー27bとは、例えば面一状に連続したカバー外面を形成している。なお、リヤサイドカバー27は、リヤ第一カバー27aとリヤ第二カバー27bとが面一状の外面を形成する構成に限らない。例えば、リヤ第一カバー27aとリヤ第二カバー27bとは、一方が他方に対して車幅方向でオフセットし、互いに重なり合あった態様をなすいわゆるレイヤードカウル構造であってもよい。この場合、車幅方向外側のカバーの端縁をリヤ分割線27cとしてもよい。
【0025】
図1を参照し、リヤサイドカバー27のリヤ分割線27cは、車両側面視で直線状をなしている。このリヤ分割線27cに沿う直線をリヤ分割基準線27dとする。リヤ分割線27cが車両側面視で曲がっている場合、車両側面視でリヤ分割線27cの前後端同士を結んだ直線をリヤ分割基準線27dとする。リヤ分割線27cの前後端を決める範囲は、例えばリヤ分割線27cの前後端近傍で部分的に逆傾斜になる部位は含まなくてもよい。実施形態では、分割線全体のうち半分以上の長さが連続して延びる線を分割線とする。前後端近傍で逆傾斜となる一部の異なる向きの線は含めない。
【0026】
リヤ分割基準線27dの後方への延長部分(仮想延長部分)は、車両側面視で後輪4の上端t1よりも上方を通過する(車両側面視で後輪4と重ならない)。リヤ分割基準線27dは、車両側面視における水平線から後下がり(又は前上がり)に傾斜する方向の角度(水平線からの傾斜角度)θ1が45度以内とされる。このように、リヤ分割基準線27dひいてはリヤ分割線27cは、車両側面視で水平線からの傾斜角度を抑えることで、水平基調となり、スピード感のある外観に貢献している。リヤ分割基準線27dひいてはリヤ分割線27cは、車両側面視で前上がりに傾斜することで、躍動感のある外観に貢献している。リヤ分割基準線27dの後側が上方寄りに位置することで、リヤ第二カバー27bを小型化することができる。リヤ第一カバー27aは、大型になる反面、開口部31を有することで、実際より小さく見せてスマートな外観としている。
【0027】
リヤ第一カバー27aには、車両側面視でひし形状の開口部31が形成されている。開口部31は、車両側面視で後下がりに延びる開口上端縁31aと、開口上端縁31aの前端から前下がりに延びる第二開口上端縁31bと、開口上端縁31aの後端から前下がりに延びる開口下端縁31cと、開口下端縁31cの前端から前上がりに延びる第二開口下端縁31dと、を有している。第二開口下端縁31dの前端は、第二開口上端縁31bの前端に接続されている。車両側面視において、第二開口下端縁31dと第二開口上端縁31bとのなす角度は鋭角であり、開口下端縁31cと開口上端縁31aとのなす角度も鋭角である。
図2を参照し、開口部31は、車両側面視で上下端t2,t3を結ぶ直線L1よりも前後端t4,t5を結ぶ直線L2の方が長い。すなわち、開口部31の車両側面視形状は、上下幅よりも前後幅の方が大きいひし形である。
【0028】
開口部31の各端縁31a~31dは、それぞれ車両側面視で直線状をなしている。特に開口上端縁31aに沿う直線を開口上端縁基準線31a1とする(
図1参照)。開口上端縁31aが車両側面視で曲がっている場合、車両側面視で開口上端縁31aの前後端同士を結んだ直線を開口上端縁基準線31a1とする。
【0029】
開口部31は、例えばリヤ第一カバー27aを車幅方向で貫通している。開口部31の内側には、例えば別体カバー33が取り付けられて閉塞されてもよい。これにより、リヤ第一カバー27aの車幅方向内側の車両構成部品が、開口部31から車幅方向外側に露出することが抑えられる。開口部31が形成されることで、リヤ第一カバー27aを小さく軽く見せることでき、外観性の向上に寄与する。
【0030】
リヤ第一カバー27aは、車両側面視で開口部31と概ね相似をなすひし形状の形状を有している。リヤ第一カバー27aは、車両側面視で後下がりに延びるカバー上端縁32aと、カバー上端縁32aの前端から前下がりに延びる第二カバー上端縁32bと、カバー上端縁32aの後端から前下がりに延びるカバー下端縁32cと、カバー下端縁32cの一部分又は前部から前上がりに延びる第二カバー下端縁32dと、を有している。第二カバー下端縁32dの前端は、第二カバー上端縁32bの前端に接続されている。車両側面視において、第二カバー下端縁32dと第二カバー上端縁32bとのなす角度は鋭角であり、カバー下端縁32cとカバー上端縁32aとのなす角度も鋭角である。すなわち、リヤ第一カバー27aの形状も、上下幅よりも前後幅の方が大きいひし形である。リヤ第一カバー27aは、ひし形状の開口を形成する枠状のフレームのような外観をなし、軽快でかつ空気の流れを想起させるデザインとされる。
【0031】
リヤ第一カバー27aの第二カバー上端縁32bおよび第二カバー下端縁32dは、開口部31の第二開口上端縁31bおよび第二開口下端縁31dと略平行な稜線で形成されている。第二カバー上端縁32bの車幅方向内側には、車幅方向内側に向けて斜めに延びる上傾斜面32b1が形成されている。第二カバー下端縁32dの車幅方向内側には、車幅方向内側に向けて斜めに延びる下傾斜面32d1が形成されている。上下傾斜面32b1,32d1の各前端部は、フロント第一カバー22aのひし形形状の前端部(頂部)の前方で互いに一体に接続されている。上下傾斜面32b1,32d1は、開口部31の前方において、車両側面視で前方に凸の鋭角V字状に配置されている。
【0032】
リヤ第一カバー27aの下端部には、フロアサイドカバー25の後端部が一体に接続されている。
フロアサイドカバー25は、カバー外面部25aを車幅方向外側かつ下方に向けている。フロアサイドカバー25は、カバー外面部25aの後端部の斜め後上方に、足載せ面24aと略平行な稜線25bを介して延びる延出部25cを備えている。延出部25cは、上端部がリヤ第一カバー27aの下端部(ひし形形状の下端部(頂部))に下方から接続されている。リヤ第一カバー27aとフロアサイドカバー25とは、例えば一体成型により一体化されている。
【0033】
図2を参照し、リヤ第一カバー27aとフロアサイドカバー25との一体部品は、車体に対して、複数の締結部によって固定されている。複数の締結部は、開口部31の前方に位置する第一締結部34aと、開口部31の後方に位置する第二締結部34bと、開口部31の下方に位置する第三締結部34cと、を備えている。各締結部34a,34b,34cは、大型のネジを車幅方向外側に露出させた態様をなし、フレーム状の外観のリヤ第一カバー27aと相まって機械的なデザインを形成している。車両側面視で各締結部34a,34b,34cの中心を結んだ領域R1には、開口部31の概ね全体が配置されおり、枠状のリヤ第一カバー27aをバランスよく締結して固定可能としている。
【0034】
車体左側のフロアサイドカバー25は、上縁の二箇所の爪25dでフロア下フレーム(不図示)に係止される。図示はしないが、車体右側のフロアサイドカバー25は、上縁と下縁それぞれ二箇所ずつの爪でフロア下フレームに係止される。
車体左側のフロアサイドカバー25の下部は、サイドスタンド7の配置スペースを確保するために切り欠かれており、車体右側のフロアサイドカバー25に比べて下縁の二箇所の爪(係止部)が無くされている。
【0035】
図2~
図4を参照し、車体左側のフロアサイドカバー25には、サイドスタンド7用に切り欠かれた部位の下縁から車幅方向外側に突出する突出部25eが設けられている。突出部25eは、例えば車両前後方向に長いフィン状(板状)をなし、サイドスタンド7周辺の走行風の整流に寄与する。突出部25eは、フロアサイドカバー25のカバー外面よりも車幅方向外側に突出している。突出部25eは、車体左側のみに設けられ、サイドスタンド7の根本周辺の上方に張り出す庇としても機能する。
【0036】
図1、
図5を参照し、フロントサイドカバー22は、車両側面視で前上がりに傾斜するフロント分割線22cを境に、上側のフロント第一カバー22aと下側のフロント第二カバー22bとに分割されている。例えば、フロント第一カバー22aとフロント第二カバー22bとは、一方(例えばフロント第二カバー22b)が他方(例えばフロント第一カバー22a)に対して車幅方向でオフセットし、互いに重なり合った態様をなすいわゆるレイヤードカウル構造である。実施形態では、フロント第一カバー22aよりも車幅方向外側にフロント第二カバー22bがオフセットしている。この場合、車幅方向外側のカバーの端縁をフロント分割線22cとしてもよい。フロント第二カバー22bは、車両前後方向視で車幅方向外側に膨らんだ態様をなしている。
なお、フロントサイドカバー22は、フロント第一カバー22aとフロント第二カバー22bとが車幅方向で互いにオフセットした構成に限らない。例えば、フロント第一カバー22aとフロント第二カバー22bとは、面一状に連続したカバー外面を形成してもよい。
【0037】
フロントサイドカバー22のフロント分割線22cは、車両側面視で直線状をなしている。このフロント分割線22cに沿う直線をフロント分割基準線22dとする。フロント分割線22cが車両側面視で曲がっている場合、車両側面視でフロント分割線22cの前後端同士を結んだ直線をフロント分割基準線22dとする。フロント分割線22cの前後端を決める範囲は、例えばフロント分割線22cの前後端近傍で部分的に逆傾斜になる部位は含まなくてもよい。実施形態では、分割線全体のうち半分以上の長さが連続して延びる線を分割線とする。前後端近傍で逆傾斜となる一部の異なる向きの線は含めない。
【0038】
フロント分割基準線22dの後方への延長部分(仮想延長部分)は、車両側面視でリヤサイドカバー27の開口部31と重なる位置を通過する。フロント分割基準線22dは、車両側面視における水平線から後下がり(又は前上がり)に傾斜する方向の角度(水平線からの傾斜角度)θ2が45度以内とされる。このように、フロント分割基準線22dひいてはフロント分割線22cは、車両側面視で水平線からの傾斜角度を抑えることで、水平基調となり、スピード感のある外観に貢献している。フロント分割基準線22dひいてはフロント分割線22cは、車両側面視で前上がりに傾斜することで、躍動感のある外観に貢献している。
【0039】
フロントサイドカバー22周辺を流れる走行風の一部は、フロント分割線22cに沿うように案内されて、リヤサイドカバー27の開口部31に向けて流れる。この走行風は、リヤサイドカバー27の前端部(開口部31の前方)にV字状に配置された上下傾斜面32b1,32d1によって、上下に分岐するように流れてスムーズに後方に流れる。これにより、空気抵抗の低減を図ることができる。また前後方向に延びるフロント分割線22cと上下幅を抑えたひし形の開口部31とにより、外観上もスピード感を得ることができる。
【0040】
フロントサイドカバー22のフロント分割線22cと、リヤサイドカバー27のリヤ分割線27cとは、ともに前上がりに傾斜し、かつ互いに略平行(例えば車両前後幅内で互いに交わらないことをいう。)をなしている。これにより、車両側面視で躍動感のある外観を形成することができる。また、リヤサイドカバー27のひし形の開口部31の開口上端縁31a(開口上端縁基準線31a1)も、リヤサイドカバー27のリヤ分割線27c(リヤ分割基準線27d)およびフロントサイドカバー22のフロント分割線22c(フロント分割基準線22d)と略平行(前記同様)をなしている。これにより、各ラインに統一感のあるまとまったデザインとすることができる。
【0041】
以上説明したように、上記実施形態における自動二輪車1は、車体後部の側方を覆うリヤサイドカバー27と車体前部の側方を覆うフロントサイドカバー22とを備え、リヤサイドカバー27は、車両側面視で後下がりに延びるリヤ分割線27cを境に、リヤ第一カバー27aとリヤ第二カバー27bとに分割され、フロントサイドカバー22は、車両側面視で後下がりに延びるフロント分割線22cを境に、フロント第一カバー22aとフロント第二カバー22bとに分割され、車両側面視で、リヤ分割線27c(又はリヤ分割線27cの前後両端を結んだリヤ分割基準線27d)は、仮想延長部分が後輪4の上端t1よりも上方を通り、車両側面視で、フロント分割線22c(又はフロント分割線22cの前後両端を結んだフロント分割基準線22d)は、仮想延長部分がリヤ第一カバー27aと重なり、リヤ第一カバー27aにおける、車両側面視でフロント分割線22c(フロント分割基準線22d)の仮想延長部分と重なる部位には、車幅方向外側に臨む開口部31が形成されている。
この構成によれば、リヤサイドカバー27およびフロントサイドカバー22が、それぞれ後下がり(すなわち前上がり)に傾斜したリヤ分割線27cおよびフロント分割線22cを有するので、車両側面視で躍動感のあるデザインとすることができる。後下がりのリヤ分割線27c(リヤ分割基準線27d)は、後輪4の上端t1よりも上方を通るので、車両側面視の傾きが浅くなり(水平に近くなり)、スピード感のある外観とすることができる。リヤ第一カバー27aにおけるフロント分割線22c(フロント分割基準線22d)と重なる部位に開口部31が形成されるので、フロント分割線22cに沿って流れた走行風は、リヤサイドカバー27の開口部31周辺に案内されて適宜流れるため、開口部31に沿った整流を図ることができる。
【0042】
上記自動二輪車1において、開口部31は、車両側面視で後下がりに延びる開口上端縁31aを形成し、車両側面視で、開口上端縁31a(又は開口上端縁31aの前後両端を結んだ開口上端縁基準線31a1)と、リヤ分割線27c(リヤ分割基準線27d)と、フロント分割線22c(フロント分割基準線22d)とは、互いに略平行とされている。
この構成によれば、開口上端縁31aと前後サイドカバー22,27の分割線22c,27cとが互いに略平行となるので、連続性のあるスポーティなデザインとすることができる。
【0043】
上記自動二輪車1において、開口部31は、車両側面視で前上がりに延びる開口上端縁31aと、開口上端縁31aの前端から前下がりに延びる第二開口上端縁31bと、開口上端縁31aの後端から前下がりに延びる開口下端縁31cと、開口下端縁31cの前端から前上がりに延びる第二開口下端縁31dと、を備え、前記開口部31は、車両側面視で上下端t2,t3を結ぶ直線L1よりも前後端t4,t5を結ぶ直線L2が長い。
この構成によれば、開口部31が車両側面視で前後に長いひし形をなすことで、スピード感のあるデザインとすることができる。
【0044】
上記自動二輪車1において、開口部31を有するリヤ第一カバー27aは、車両側面視で前上がりに延びるカバー上端縁32aと、カバー上端縁32aの前端から前下がりに延びる第二カバー上端縁32bと、カバー上端縁32aの後端から前下がりに延びるカバー下端縁32cと、カバー下端縁32cの前端から前上がりに延びる第二カバー下端縁32dと、を備えている。
この構成によれば、開口部31を有するリヤ第一カバー27aを、開口部31と同様に車両側面視でひし形をなすことで、開口部31と併せてスピード感のあるデザインとすることができる。リヤ第一カバー27aが枠状のフレームのような外観をなし、軽快で空気の流れを想起させるデザインとすることができる。
【0045】
上記自動二輪車1において、フロントサイドカバー22が装着される前部車体と、リヤサイドカバー27が装着される後部車体と、の間に、乗員が足を載せるフロアステップ6を備え、フロアステップ6の左右外側の下方には、車体下方に臨むフロアサイドカバー25を備え、フロアサイドカバー25は、開口部31を有するリヤ第一カバー27aに下方から接続されている。
この構成によれば、開口部31を有するリヤ第一カバー27aに、フロアステップ6の左右外側のフロアサイドカバー25を下方から接続することで、枠状の外観をなすリヤ第一カバー27aとフロアサイドカバー25とを一体化して合理化を図ることができる。
【0046】
上記自動二輪車1において、フロアサイドカバー25は、車幅方向外側に臨んでいる。
この構成によれば、車両側面視で枠状のリヤ第一カバー27aとフロアサイドカバー25とで一体的な外観を形成することができる。
【0047】
上記自動二輪車1において、開口部31の前方、後方および下方に、開口部31を有するリヤ第一カバー27a又はリヤ第二カバー27bを車体に固定するための締結部34a,34b,34cを備えている。
この構成によれば、枠状をなすリヤ第一カバー27aをバランスよく締結固定することができる。
【0048】
上記自動二輪車1において、リヤ分割基準線27dおよびフロント分割基準線22dは、車両側面視で水平線に対する傾斜角度θ1,θ2が45度以内とされている。
この構成によれば、リヤ分割基準線27dおよびフロント分割基準線22dの水平線に対する傾斜角度が大きい場合に比べて、スピード感のある外観とすることができる。
【0049】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、本実施形態のカウル構造は、自動二輪車以外の鞍乗り型車両に適用してもよい。前記鞍乗り型車両には、運転者が車体を跨いで乗車する車両全般が含まれ、自動二輪車(原動機付自転車及びスクータ型車両を含む)のみならず、三輪(前一輪かつ後二輪の他に、前二輪かつ後一輪の車両も含む)又は四輪(四輪バギー等)の車両も含まれる。原動機に電気モータを含む車両に適用してもよい。
そして、上記実施形態における構成は本発明の一例であり、実施形態の構成要素を周知の構成要素に置き換える等、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 自動二輪車(鞍乗り型車両)
4 後輪
t1 上端
6 フロアステップ
22 フロントサイドカバー
22a フロント第一カバー(前部第一カバー)
22b フロント第二カバー(前部第二カバー)
22c フロント分割線(前部分割線)
22d フロント分割基準線(前部分割基準線)
25 フロアサイドカバー
27 リヤサイドカバー(後部サイドカバー)
27a リヤ第一カバー(後部第一カバー)
27b リヤ第二カバー(後部第二カバー)
27c リヤ分割線(後部分割線)
27d リヤ分割基準線(後部分割基準線)
31 開口部
t2、t3 上下端
L1 直線
t4、t5 前後端
L2 直線
31a 開口上端縁
31a1 開口上端縁基準線
31b 第二開口上端縁
31c 開口下端縁
31d 第二開口下端縁
32a カバー上端縁
32b 第二カバー上端縁
32b1 上傾斜面
32c カバー下端縁
32d 第二カバー下端縁
32d1 下傾斜面
34a,34b,34c 締結部
θ1,θ2 傾斜角度