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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108631
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】暖房システム
(51)【国際特許分類】
   F24D 3/00 20220101AFI20240805BHJP
   F24H 15/124 20220101ALI20240805BHJP
   F24H 15/20 20220101ALI20240805BHJP
   F24H 15/335 20220101ALI20240805BHJP
【FI】
F24D3/00 P
F24H15/124
F24H15/20
F24H15/335
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013087
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111257
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 栄二
(74)【代理人】
【識別番号】100110504
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】近藤 真吾
【テーマコード(参考)】
3L070
【Fターム(参考)】
3L070BC03
3L070DD08
3L070DE05
3L070DG05
(57)【要約】
【課題】コスト上昇を招くことなく突入電流対策を行うことができる暖房システムを提供する。
【解決手段】暖房システムは、加熱部を有する熱源、複数設置可能な暖房端末、加熱部の流体入口に接続される流入管、加熱部の流体出口に接続される流出管、流出管と直接又は間接的に接続されるとともに暖房端末の流体入口に接続される分岐供給管、暖房端末の流体出口に接続されるとともに流入管と直接又は間接的に接続される分岐回収管、作動により流体を流通させる複数の流体流通手段、制御手段を備える。制御手段は、流体流通手段を作動開始させるシーケンスを所定周期で繰り返し実行し、所定周期は、複数の作動開始許可区間に分割され、各作動開始許可区間は、流体流通手段のうち、作動開始許可区間ごとに定められた特定の流体流通手段のみの作動開始が許可され、この特定の流体流通手段以外の他の流体流通手段の作動開始が禁止される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を加熱する加熱部を有する熱源と、複数設置可能な暖房端末と、前記加熱部の流体入口に接続される流入管と、前記加熱部の流体出口に接続される流出管と、前記流出管と直接又は間接的に接続されるとともに前記暖房端末の流体入口に接続される分岐供給管と、前記暖房端末の流体出口に接続されるとともに前記流入管と直接又は間接的に接続される分岐回収管と、作動により前記流体を流通させる複数の流体流通手段と、複数の前記流体流通手段の動作を制御する制御手段とを備え、
前記流体流通手段は、前記流入管又は前記流出管に設けられ、また、前記分岐供給管又は前記分岐回収管に設けられ、
前記流入管又は前記流出管に設けられた前記流体流通手段は、ポンプであり、
前記分岐供給管又は前記分岐回収管に設けられた前記流体流通手段は、ポンプ又は開閉弁であり、
前記制御手段は、
前記流体流通手段を作動開始させるシーケンスを所定周期で繰り返し実行し、
前記所定周期は、複数の作動開始許可区間に分割され、
各前記作動開始許可区間は、前記流体流通手段のうち、作動開始許可区間ごとに定められた特定の流体流通手段のみの作動開始が許可され、この特定の流体流通手段以外の他の流体流通手段の作動開始が禁止される制御構成を備える、暖房システム。
【請求項2】
請求項1に記載の暖房システムにおいて、
各前記作動開始許可区間の間には、全ての前記流体流通手段の作動開始を禁止する作動開始禁止区間が設けられている、暖房システム。
【請求項3】
請求項2に記載の暖房システムにおいて、
前記作動開始禁止区間の期間は、前記流体流通手段を作動開始してから当該流体流通手段の電流値が定常電流になるのに要する時間以上に設定される、暖房システム。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の暖房システムにおいて、
前記作動開始許可区間の期間は、前記作動開始禁止区間の期間よりも短い時間に設定される、暖房システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱源で加熱した流体を暖房端末に循環させて暖房を行う暖房システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の暖房システムでは、熱源で加熱した流体を複数の暖房端末に供給する流体流路が形成されている。熱源側の流体流路には、循環ポンプが設けられており、暖房端末側の流体流路には、複数の暖房端末と、各暖房端末に対応した複数の外部ポンプとが設けられている(特許文献1)。この暖房システムは、暖房する部屋等の温度に基づいて循環ポンプと外部ポンプとの作動を制御して暖房運転を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-109376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記構成の暖房システムでは、循環ポンプ及び複数の外部ポンプのうち複数のポンプに対して作動開始指示が同時になされる場合がある。ポンプの作動開始時には、ポンプの定常電流よりも大きな突入電流が流れるため、同時に複数のポンプを作動開始させた場合、暖房システム全体にはより多くの電流が流れることとなる。この場合、暖房システムの許容電流を超えるなどにより電子部品などに故障が発生するおそれがあり、また、暖房システムの許容電流を上げるために電源コードや電子部品等などに電流定格の大きいものが必要でありコストが上昇するなど、様々な課題があった。なお、暖房端末側の流体流路には外部ポンプでなく熱動弁(開閉弁)を備える暖房システムでも同様の課題を有していた。
【0005】
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、コスト上昇を招くことなく突入電流対策を行うことができる、暖房システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明1に係る暖房システムは、
流体を加熱する加熱部を有する熱源と、複数設置可能な暖房端末と、前記加熱部の流体入口に接続される流入管と、前記加熱部の流体出口に接続される流出管と、前記流出管と直接又は間接的に接続されるとともに前記暖房端末の流体入口に接続される分岐供給管と、前記暖房端末の流体出口に接続されるとともに前記流入管と直接又は間接的に接続される分岐回収管と、作動により前記流体を流通させる複数の流体流通手段と、複数の前記流体流通手段の動作を制御する制御手段とを備え、
前記流体流通手段は、前記流入管又は前記流出管に設けられ、また、前記分岐供給管又は前記分岐回収管に設けられ、
前記流入管又は前記流出管に設けられた前記流体流通手段は、ポンプであり、
前記分岐供給管又は前記分岐回収管に設けられた前記流体流通手段は、ポンプ又は開閉弁であり、
前記制御手段は、
前記流体流通手段を作動開始させるシーケンスを所定周期で繰り返し実行し、
前記所定周期は、複数の作動開始許可区間に分割され、
各前記作動開始許可区間は、前記流体流通手段のうち、作動開始許可区間ごとに定められた特定の流体流通手段のみの作動開始が許可され、この特定の流体流通手段以外の他の流体流通手段の作動開始が禁止される制御構成を備える。
【0007】
前記構成により、作動開始許可区間においては、特定の流体流通手段以外の他の流体流通手段は作動開始が禁止されるため、同時に作動開始する流体流通手段の台数が制限される。従って、暖房システムにおいて、流体流通手段の作動開始の際に、定常電流よりも大きな突入電流が同時に流れる量(電流値や電気量の大きさ)を制限できる。その結果、電源コードや電子部品等に電流定格の大きいものを採用して暖房システムの許容電流を大きくする対策を不要とすることができる。よって、暖房システムのコストを上昇させることなく、流体流通手段の作動開始時に大きな突入電流を発生させない突入電流対策を実現できる。また、電流ヒューズの溶断や電子部品の故障等を防止できるため、暖房システムの運転動作の信頼性を高めることが可能となる。
【0008】
発明2に係る暖房システムは、
前記発明1の暖房システムにおいて、
各前記作動開始許可区間の間には、全ての前記流体流通手段の作動開始を禁止する作動開始禁止区間が設けられている構成とすることができる。
【0009】
例えば、任意の作動開始許可区間の最後と、その次の作動開始許可区間の最初とに、各々の特定の流体流通手段の作動開始指示がなされた場合(「所定条件」とする。)、前後に作動開始した各流体流通手段の突入電流が一時的に重なり、その突入電流の合計値が暖房システムの許容電流を超えてしまう可能性が無くはない。
【0010】
本発明2の構成によれば、各作動開始許可区間の間に作動開始禁止区間を有することで、前記所定条件のように各流体流通手段が前後に作動開始しても、各流体流通手段の突入電流の重なりが抑制されるため、流体流通手段の作動開始時の突入電流が暖房システムの許容電流を超過することを抑制できる。
【0011】
発明3に係る暖房システムは、
前記発明2の暖房システムにおいて、
前記作動開始禁止区間の期間は、前記流体流通手段を作動開始してから当該流体流通手段の電流値が定常電流になるのに要する時間以上に設定される構成とすることができる。
【0012】
前記構成により、作動開始禁止区間の期間が経過することで、直前の作動開始許可区間で作動開始された特定の流体流通手段の作動による電流値は定常電流内におさまっている。従って、前記所定条件のように各流体流通手段が前後に作動開始しても、流体流通手段の作動開始時の突入電流が暖房システムの許容電流を超過することをより確実に抑制できる。
【0013】
発明4に係る暖房システムは、
前記発明2又は3の暖房システムにおいて、
前記作動開始許可区間の期間は、前記作動開始禁止区間の期間よりも短い時間に設定される構成とすることができる。
【0014】
作動開始禁止区間を設けることで前後に作動開始した各流体流通手段の突入電流が重ならないように制限できるため、各作動開始許可区間の期間を短い時間に設定することが可能となる。
【0015】
本発明4の構成のように、作動開始許可区間の期間を作動開始禁止区間の期間よりも短い時間に設定することで、流体流通手段の突入電流による暖房システムの許容電流超過を抑制しつつ、流体流通手段を作動開始させるシーケンスの所定周期の期間を短くすることができる。従って、任意の流体流通手段に対する作動開始指示から当該流体流通手段の作動開始が実行されるまでの待ち時間を短くすることができる。よって、暖房端末の暖房運転開始に時間がかかることがなく、暖房環境におけるユーザの快適性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態による暖房システムの構成を示す模式図である。
図2】ポンプのスイッチ回路図である。
図3】ポンプの作動開始を制御するためのタイミングチャートである。
図4】他の実施形態1による暖房システムの構成を示す模式図である。
図5】他の実施形態2による暖房システムの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、実施形態の暖房システム1は、ガス給湯器や電気温水器等で構成できる熱源2と、複数の暖房端末3A~3Dと、暖房システム1の動作を制御する制御手段4とを備える。熱源2は、流体を加熱する加熱部となる熱交換器5を備えており、熱源2で加熱した流体を各暖房端末3A~3Dに循環させて各暖房端末3A~3Dで暖房運転を行う。流体は、水(湯)、不凍液等の熱媒が使用される。熱源2側には、熱源2を遠隔操作するための熱源リモコン21が制御手段4と通信可能に接続されている。熱源リモコン21の運転スイッチをオンすることで熱源2が作動可能な状態となる。
【0018】
暖房システム1は、熱源2の熱交換器5の流体入口51に接続された流入管6と、熱源2の熱交換器5の流体出口52に接続された流出管7と、一端が流体往き管81と接続されて流出管7と間接的に接続され、他端が各暖房端末3A~3Dの流体入口33と接続された複数の分岐供給管8と、一端が流体戻り管91と接続されて流入管6と間接的に接続され、他端が各暖房端末3A~3Dの流体出口34と接続された複数の分岐回収管9とが設けられている。流入管6には、循環ポンプ(流体流通手段)P1が設けられている。循環ポンプP1を作動させることにより流体を熱交換器5に流通させる。循環ポンプP1は、熱源2の筐体内に設置されている。各分岐供給管8には、各暖房端末3A~3Dに対応して、外部ポンプ(流体流通手段)P2~P5が設けられている。外部ポンプP2~P5を作動させることにより対応する暖房端末3A~3Dに熱源2で加熱された流体を流通させる。
【0019】
また、流入管6及び流出管7と、流体往き管81及び流体戻り管91との間には、混水器10が設けられている。混水器10により、流入管6と流出管7がバイパス接続され、また、流体往き管81と流体戻り管91がバイパス接続される。これにより、熱源2側には、流入管6、流出管7及び熱交換器5に流体が流れる循環経路が形成され、暖房端末3側には、流体往き管81、流体戻り管91、分岐供給管8、分岐回収管9及び暖房端末3に流体が流れる循環経路が形成され、混水器10において互いの循環経路を循環する流体間で熱交換を行うことができる。また、混水器10によって熱源2側の循環経路を循環する流体の流量を増やすことなく、暖房端末3側の循環経路を循環する流体を加熱できる。
【0020】
各暖房端末3A~3Dには、暖房端末3を遠隔操作するための暖房リモコン31が制御手段4と通信可能に接続されている。暖房リモコン31には、運転スイッチや設定温度の温度設定スイッチ等の操作部、表示部等を有する。暖房リモコン31の運転スイッチをオンすることで対応する暖房端末3A~3Dでの暖房運転要求が制御手段4に出力される。各暖房端末3A~3Dは、サーモスタットや温度センサ等の温度監視手段32を備えている。温度監視手段32により、暖房端末3A~3Dを設置する部屋等の温度が設定温度となるように対応する外部ポンプP2~P5の作動/作動停止の要求を制御手段4に出力する。
【0021】
制御手段4は、マイクロコンピュータやメモリ等の電子ユニットで構成されており、熱源2及び暖房端末3の動作を制御し、暖房端末3での暖房運転の制御を行う。制御手段4は、熱源2の筐体内に設置されている。
【0022】
図2には、制御手段4に備えるポンプPのスイッチ回路40を示す。図2中、P1で示すポンプは熱源2の循環ポンプP1に対応し、P2~P5で示すポンプは各暖房端末3A~3Dの外部ポンプP2~P5に対応する。このスイッチ回路40は、電源コード12及びコネクタC1を介して主電源11から電気が供給され、各ポンプP1~P5に対応したリレーRY1~RY5を有する。ポンプP1~P5の駆動源(モータ等)は、コネクタC2を介してスイッチ回路40と接続されている。リレーRY1~RY5は、配線パターン14によって並列に接続されている。また、スイッチ回路40には、暖房システム1に備える各種の電子部品等に電気を供給するためのスイッチング電源13が配線パターン14に接続されている。なお、本明細書では、ポンプP1~P5をポンプP(なお、外部ポンプP2~P5を外部ポンプPという場合もある。)、リレーRY1~RY5をリレーRY、また、暖房端末3A~3Dを暖房端末3という場合がある。このスイッチ回路40より、リレーRYがオンすると、当該リレーRYに対応するポンプPの駆動源に対し主電源11の電気を供給し、当該ポンプPを作動させる。各リレーRYのオン/オフは、制御手段4によって制御される。制御手段4は、各暖房端末3に備える温度監視手段32、各暖房リモコン31、熱源2に備えるセンサ類、熱源リモコン21等からの出力信号を受けて、各リレーRYのオン/オフを制御することで各ポンプPの作動制御を行う。ポンプPの作動開始時には、配線パターン14、コネクタC1,C2、電源コード12等にポンプPの定常電流よりも大きな突入流電が流れる。複数台のポンプPを同時に作動開始した場合、突入電流が暖房システム1の許容電流を超過するおそれがある。従って、制御手段4は、ポンプPの作動開始時の突入電流が暖房システム1の許容電流を超過しないように各ポンプPの作動制御を行う。以下に、制御手段4の制御構成を説明する。
【0023】
制御手段4は、各ポンプPを作動開始させる1シーケンスを所定周期Tで繰り返し実行する。図3のタイミングチャートに示すように、1シーケンスの所定周期Tは、複数の作動開始許可区間T1に分割されており、また、各作動開始許可区間T1の間に作動開始禁止区間T2が設けられている。各作動開始許可区間T1では、全ポンプPのうち、作動開始許可区間T1ごとに定められた特定のポンプのみの作動開始が許可され、特定のポンプ以外の他のポンプの作動開始が禁止される。各作動開始禁止区間T2では、全ポンプPの作動開始が禁止される。
【0024】
図3のタイミングチャートでは、1シーケンスの所定周期Tは、(1)~(5)の5つの作動開始許可区間T1に分割され、(1)~(5)の各作動開始許可区間T1の間に作動開始禁止区間T2が設けられている。(1)~(5)の各作動開始許可区間T1には、ポンプP1~P5が1台ずつ特定のポンプとして指定されている。すなわち、各作動開始許可区間T1の期間に限って、作動開始許可区間T1ごとに定められた特定のポンプP(P1~P5)に対応したリレーRY(RY1~RY5)がオンできるように制御される。このようなタイミングチャートによれば、ポンプPの作動開始指示がなされると、(1)の作動開始許可区間T1の期間では、リレーRY1のみがオンしポンプP1のみ作動開始され、他のポンプP2~P5の作動開始は禁止され、(2)の作動開始許可区間T1の期間では、リレーRY2のみがオンしポンプP2のみ作動開始され、他のポンプP1,P3~P5の作動開始は禁止され、以下同じ要領で、(3)~(5)の各作動開始許可区間T1の期間では、各リレーRY3~RY5のみがオンし各ポンプP3~P5のみ作動開始され、他のポンプPの作動開始は禁止される。各作動開始禁止区間T2では、全てのポンプP1~P5の作動開始は禁止される。すなわち、作動開始禁止区間T2においては全てのリレーRY1~RY5はオフからオンにされない。
【0025】
このように、作動開始許可区間T1では、当該作動開始許可区間T1に定められた特定のポンプのみの作動開始が許可されて作動開始が実行され、特定のポンプ以外の他のポンプは作動開始が禁止される。これは、あるタイミングで作動開始指示がなされたポンプPは、当該ポンプPの作動開始許可区間T1以外の期間では作動開始が実行されないだけであり、当該ポンプPの作動開始許可区間T1は所定周期Tごとに存在しているため、時間が進んで当該ポンプPの作動開始許可区間T1になれば作動開始が実行される。作動開始指示のタイミングによっては最大で所定周期Tの期間だけポンプPの作動開始の実行を待つことになるが、作動開始指示それ自体は有効であるため、再度ユーザ等が作動開始指示を行う必要はない。
【0026】
また、作動開始許可区間T1では、特定のポンプ以外の他のポンプは作動開始が禁止されるだけであり、当該他のポンプの作動中の動作や作動停止の動作は禁止されることなく継続される。図3のタイミングチャートで言えば、例えば、作動中のポンプP1は、その作動中の動作が(2)~(5)の各作動開始許可区間T1で禁止されることなく作動状態が継続される。ポンプP2、P3は、(4)の作動開始許可区間T1で作動停止の動作が禁止されることなくリレーRY2,RY3がオフされ、作動停止される。
【0027】
所定周期T内における複数の作動開始許可区間T1の数は、例えば、暖房システム1に設置可能なポンプ台数の最大数と同じ数とすることができる。実施形態の暖房システム1では、最大4機の暖房端末3が設置可能であるため、熱源2側の1台の循環ポンプP1と、各暖房端末3側の4台の外部ポンプP2~P5との合計5台がポンプ台数の最大数となる。この場合、最大数5に合わせて、所定周期Tに(1)~(5)の5つの作動開始許可区間T1が設けられている。なお、作動開始許可区間T1の数は、当初は少なくとも2つ設けられていて、必要に応じて入力手段(例えば、制御手段4に接続するディップスイッチ等)で追加できるような構成であってもよい(作動開始許可区間T1を追加する場合、作動開始禁止区間T2は同時に作成される。)。
【0028】
各作動開始許可区間T1においては、特定のポンプとして1台のポンプPが指定されている。具体的には、(1)~(5)の各作動開始許可区間T1に対応して、ポンプP1~P5が1台ずつ割り当てられている。各作動開始許可区間T1において、どのポンプPを特定のポンプとして定めるかは工場出荷時等に予め設定されていてもよいし、また、任意に設定できるようにしてあってもよい。例えば、制御手段4に接続したディップスイッチ等で作動開始許可区間T1ごとに循環ポンプP1(熱源2)、外部ポンプP2~P5(各暖房端末3A~3D)を選択できるようにしてもよい。特定のポンプは、実施形態のように1台のポンプPを指定してもよいし、また、複数台のポンプP(ただし、全ポンプ台数よりも少ない台数とする。)を指定してもよい。なお、特定のポンプとして複数台のポンプPを指定する場合、複数台のポンプPが同時に作動開始したときの突入電流の合計値が暖房システム1の許容電流を超過しない範囲で指定可能なポンプ台数を制限する。
【0029】
所定周期T内における作動開始許可区間T1を暖房システム1に設置可能なポンプ台数の最大数と同じ数だけ設けた場合、例えば、暖房端末3が暖房システム1に設置可能な最大数よりも少ない台数しか設置されていない場合や特定のポンプとして複数台のポンプPを定めた場合に、所定周期T内には特定のポンプが未指定の空きの作動開始許可区間T1ができる。この場合、所定周期Tは、空きの作動開始許可区間T1を有した状態としてもよいし、空きの作動開始許可区間T1を削除(例えば、制御手段4に接続するディップスイッチのOFFなど)して所定周期Tを短い期間にしてもよい。
【0030】
作動開始禁止区間T2の期間は、ポンプを作動開始してから当該ポンプの作動による電流値が定常電流になるのに要する時間以上に設定される。ここでいうポンプは、この暖房システム1に設置可能とする一般的なポンプでもよいし、この暖房システム1に設置可能なポンプの中で突入電流が最も大きいポンプを想定してもよい。
【0031】
前記定常電流とは、ポンプの電流値の時間変化が小さくなって規則正しく流れる状態の電流といえるが、ポンプの電流値が定常電流になったといえる場合としては、例えば、ポンプの実行電流(ポンプの電流値)の変動量が20%/s以内となった場合、ポンプの作動開始時から100ms経過した場合、又は、ポンプの電流値がピーク電流の30%以下となった場合などとすることができる。すなわち、定常電流になるのに要する時間は、ポンプの実行電流の変動量、ポンプの作動開始時からの経過時間、ポンプのピーク電流値に対する割合など任意に決定することができる。ただし、定常電流か否かの判断は、ポンプの種類や暖房システム1の負荷などの条件に応じて適宜に決定することができる。また、定常電流になるのに要する時間は、実験等で決定してもよい。
【0032】
作動開始許可区間T1の期間は、作動開始禁止区間T2の期間よりも短い時間に設定される。例えば、実施形態では、作動開始許可区間T1の期間は50msとし、作動開始禁止区間T2の期間は100msとする。この場合、所定周期T内には、作動開始許可区間T1と作動開始禁止区間T2とが5つずつ有するので、1つの所定周期T(1シーケンス)の期間は750msとなる。各作動開始許可区間T1の間に作動開始禁止区間T2が設けられるので、作動開始許可区間T1の期間は、ポンプPの作動開始を可能とする必要な時間として可能な限り短い時間としてもよい。なお、作動開始許可区間T1の期間は、作動開始禁止区間T2の期間と同じ時間又は長い時間を設定してもよい。
【0033】
次に、各ポンプを作動開始させる制御の動作を説明する。
熱源2等から電源がオンされ暖房システム1の電源が入っている間、制御手段4は、各ポンプP1~P5を作動開始させる1シーケンスを所定周期Tで繰り返し実行する。熱源2及び全ての暖房端末3が運転停止している場合、複数の暖房端末3A~3Dのいずれか1つでも暖房リモコン31の運転スイッチがオンされると、制御手段4に対し、熱源2の運転開始と当該暖房端末3の運転開始とが同時に要求される。この場合、熱源2の運転開始要求は、循環ポンプP1の作動開始指示となり、当該暖房端末3の運転開始要求は、当該暖房端末3に対応する外部ポンプPの作動開始指示となる。従って、制御手段4には、循環ポンプP1と当該外部ポンプPとの作動開始指示が同時になされる。
【0034】
循環ポンプP1と当該外部ポンプPとの作動開始指示が同時になされると、制御手段4は、この同時の作動開始指示のタイミングにかかわらず、所定周期Tの期間において、循環ポンプP1と当該外部ポンプPが特定のポンプとして定められた作動開始許可区間T1の期間になったときに、その期間T1の特定のポンプに対応したリレーRYだけをオンして特定のポンプの作動開始を実行し、特定のポンプ以外の他のポンプは、対応するリレーRYをオンさせずに作動開始を禁止する。作動開始禁止区間T2の期間中は、全ポンプP1~P5の作動開始を禁止する。
【0035】
例えば、熱源2及び全ての暖房端末3が運転停止している状態で、暖房端末3Bの暖房リモコン31の運転スイッチがオンされた場合、制御手段4に対し、熱源2の運転開始と暖房端末3Bの運転開始とが同時に要求されるため、制御手段4には、熱源2の循環ポンプP1と暖房端末3Bの外部ポンプP3との作動開始指示が同時になされる。この場合、制御手段4は、所定周期Tの期間において、(1)の作動開始許可区間T1の期間中のときにリレーRY1をオンし循環ポンプP1のみ作動開始を実行する。(1)の作動開始許可区間T1の期間中は、循環ポンプP1以外の他のポンプPの作動開始は禁止する。従って、循環ポンプP1の作動開始と同時に外部ポンプP3を含めポンプP2~P5が作動開始されることはない。また、(3)の作動開始許可区間T1の期間中のときにリレーRY3がオンし外部ポンプP3のみ作動開始を実行する。(3)の作動開始許可区間T1の期間中は、外部ポンプP3以外の他のポンプPの作動開始は禁止する。従って、外部ポンプP3の作動開始と同時に循環ポンプP1を含めポンプP1,P2,P4,P5が作動開始されることはない。また、作動開始禁止区間T2の期間中は、全ポンプPの作動開始を禁止するので、循環ポンプP1と外部ポンプP3とが同時に作動開始することはない。
【0036】
次に、暖房端末3が運転中のときは、熱源2の循環ポンプP1は作動しており、暖房端末3に内蔵する温度監視手段32の監視温度に基づいて、制御手段4は、外部ポンプP2~P5の作動/作動停止を制御する。この場合、複数の暖房端末3の各外部ポンプP2~P5が作動停止中の状態から、複数の暖房端末3の外部ポンプPが同時に作動開始指示された場合、制御手段4は、所定周期Tの期間において、各外部ポンプPが特定のポンプとして定められた作動開始許可区間T1の期間中のときにその外部ポンプPに対応したリレーRYだけをオンして特定の外部ポンプPの作動開始を実行し、特定の外部ポンプP以外の他のポンプは、対応するリレーRYがオフしているときはオンさせずに作動開始を禁止する。前記同様、作動開始禁止区間T2の期間中は、全ポンプP1~P5の作動開始は禁止する。
【0037】
例えば、暖房端末3B,3Dの外部ポンプP3,P5が作動停止中の状態から、これら外部ポンプP3,P5が同時に作動開始指示された場合、制御手段4は、この同時の作動開始指示のタイミングにかかわらず、所定周期Tの期間において、(3)の作動開始許可区間T1の期間中のときに、リレーRY3をオンし外部ポンプP3のみ作動開始を実行する。この(3)の作動開始許可区間T1の期間中は、外部ポンプP3以外の他のポンプPの作動開始を禁止する。従って、外部ポンプP3の作動開始と同時に外部ポンプP5を含めポンプP1,P2,P4,P5が作動開始されることはない。また、(5)の作動開始許可区間T1の期間中のときに、リレーRY5をオンし外部ポンプP5のみ作動開始を実行する。この(5)の作動開始許可区間T1の期間中は、外部ポンプP5以外の他のポンプPの作動開始を禁止する。従って、外部ポンプP5の作動開始と同時に外部ポンプP3を含めポンプP1,P2,P3,P4が作動開始されることはない。また、作動開始禁止区間T2の期間中は、全ポンプPの作動開始を禁止するので、外部ポンプP3と外部ポンプP5とが同時に作動開始することはない。
【0038】
前記の作動開始許可区間T1及び作動開始禁止区間T2でいう「作動開始の禁止」は、リレーRYをオフからオンにしてポンプPを作動開始させることだけが禁止される。すなわち、既に作動中のポンプPは、対応するリレーRYのオン状態がオフにされることなくポンプPの作動状態は継続され、また、作動中のポンプPのリレーRYをオンからオフにしてポンプPを作動停止する動作も禁止されない。例えば、図3のタイミングチャートを参照して、(4)の作動開始許可区間T1では、外部ポンプP4以外の他のポンプであるポンプP1,P2,P3,P5の作動開始は禁止されるが、作動中のポンプP1の動作は禁止されることなく継続され、また、作動中のポンプP2,P3が作動停止する動作は禁止されることなく実行される。
【0039】
以上のように、本実施形態によれば、作動開始許可区間T1においては、特定のポンプのみ作動開始が許可されて作動開始の実行がなされ、特定のポンプ以外の他のポンプは作動開始が禁止されるため、同時に作動開始するポンプPの台数が制限される。これにより、暖房システム1において、ポンプPの作動開始の際に、定常電流よりも大きな突入電流が同時に流れる量(電流値や電気量の大きさ)を制限できる。従って、電源コード12や電子部品等に電流定格の大きいものを採用して暖房システム1の許容電流を大きくする対策を不要とすることができる。よって、暖房システム1のコストを上昇させることなく、ポンプPの作動開始時に大きな突入電流を発生させない突入電流対策を実現できる。また、電流ヒューズの溶断や電子部品の故障等を防止できるため、暖房システム1の運転動作の信頼性を高めることが可能となる。
【0040】
また、実施形態では、各ポンプPを作動開始させる1シーケンスの所定周期Tを複数の作動開始許可区間T1に分割した構成とする。このため、複数のポンプPに対し同時に作動開始指示がなされた場合、例えば、2つ目以降のポンプPの作動開始を遅延させる制御のように常に特定のポンプの作動開始が遅くなることはなく、作動開始指示のタイミングによって、最初と次に作動開始するポンプPが変わってくる。
【0041】
例えば、5台のポンプPのうちポンプP1,P3の作動開始指示が同時になされた場合、作動開始指示のタイミングが(1)の作動開始許可区間T1の場合、ポンプP1が最初に作動開始され、次にポンプP3が作動開始され、作動開始指示タイミングが(2)の作動開始許可区間T1の場合、ポンプP3が最初に作動開始され、次にポンプP1が作動開始され、作動開始指示タイミングが(3)の作動開始許可区間T1の場合、ポンプP3が最初に作動開始され、次にポンプP1が作動開始され、作動開始指示タイミングが(4)の作動開始許可区間T1の場合、ポンプP1が最初に作動開始され、次にポンプP3が作動開始され、作動開始指示タイミングが(5)の作動開始許可区間T1の場合、ポンプP1が最初に作動開始され、次にポンプP3が作動開始される。このように、作動開始指示のタイミングによって、最初と次に作動開始するポンプPが変わるため、簡易な制御で、常にあるポンプPの作動開始が遅くなることを抑制できるというメリットがある。
【0042】
ところで、所定周期Tを複数の作動開始許可区間T1に分割した場合、例えば、任意の作動開始許可区間T1の最後と、その次の作動開始許可区間T1の最初とに、各々の特定のポンプPの作動開始が実行された場合、前後に作動開始した各ポンプPの突入電流が一時的に重なり、その突入電流の合計値が暖房システム1の許容電流を超え得ることが懸念される。しかし、本実施形態では、各作動開始許可区間T1の間に全てのポンプPの作動開始を禁止する作動開始禁止区間T2が設けられているので、前後の作動開始許可区間T1で各ポンプPが前後に作動開始しても、作動開始禁止区間T2の時間経過によって各ポンプPの突入電流の重なりが抑制される。従って、ポンプPの作動開始時の突入電流が暖房システム1の許容電流を超過することを確実に抑制できる。
【0043】
また、作動開始禁止区間T2の期間は、任意のポンプPを作動開始してから当該ポンプPの電流値が定常電流になるのに要する時間以上に設定されているので、作動開始許可区間T1で作動開始された特定のポンプの作動による電流値は、直後の作動開始禁止区間T2の期間が経過することで定常電流内におさまる。従って、前後の作動開始許可区間T1で各ポンプPが前後に作動開始しても、ポンプPの作動開始時の突入電流が暖房システム1の許容電流を超過することをより確実に抑制できる。
【0044】
また、作動開始禁止区間T2を設けることで前後に作動開始した各ポンプPの突入電流が重ならないように制限できるため、各作動開始許可区間T1の期間を短い時間に設定することが可能となる。実施形態のように、作動開始許可区間T1の期間を作動開始禁止区間T2の期間よりも短い時間に設定することで、ポンプPの突入電流による暖房システム1の許容電流超過を抑制しつつ、ポンプPを作動開始させる1シーケンスの所定周期Tの期間を短くすることができる。従って、任意のポンプPに対する作動開始指示から当該ポンプPの作動開始が実行されるまでの待ち時間を短くすることができる。よって、暖房端末3の暖房運転開始に時間がかかることがなく、暖房環境におけるユーザの快適性が向上する。
【0045】
なお、実施形態において、特定のポンプを複数台のポンプとする場合、熱源2の循環ポンプP1は、すべての作動開始許可区間T1で特定のポンプとして定めるようにしてもよい。この構成により、熱源2の循環ポンプP1の作動開始指示がなれると、すべての作動開始許可区間T1で循環ポンプP1の作動開始が許可される。従って、熱源2の循環ポンプP1は、作動開始指示がなれると、ほとんど待ち時間が発生することなく作動開始が実行される。このため、循環ポンプP1の未作動による各暖房端末3での暖房性能の低下を抑制できる。
【0046】
また、熱源2の循環ポンプP1は、作動開始許可区間T1及び作動開始禁止区間T2に制限されることなく、作動開始指示により直ちに作動開始が実行される構成としてもよい。ただし、この場合、複数の外部ポンプPを有し、循環ポンプP1と特定のポンプ(1台の外部ポンプP又は外部ポンプPの全数未満で複数の外部ポンプP)とが同時に作動開始した時でも突入電流が暖房システム1の許容電流を超過しないことが前提となる。
【0047】
(他の実施形態)
他の実施形態1の暖房システム1Aとして、図4に示すように、熱源2側の流入管6及び流出管7が暖房端末3側の分岐供給管8及び分岐回収管9と直接接続された構成とする。すなわち、他の実施形態1は、混水器10(図1を参照)を有しない構成とする。これにより、各暖房端末3には、熱交換器5で加熱された流体が流出管7から各分岐供給管8を通じて直接送り込まれるので、各暖房端末3での暖房立ち上がり性能が向上する。他の実施形態1における前記以外の構成及び作用効果は、前記実施形態と同様である。
【0048】
他の実施形態2の暖房システム1Bとして、図5に示すように、複数の暖房端末3の各々には、流体流通手段となる開閉弁Nとして熱動弁N1~N4を設けた構成とする。各熱動弁N1~N4は、作動開始指示により対応するリレーRYをオンして電磁コイルに通電して弁を開弁する構成である。この場合、制御手段4は、前記実施形態における外部ポンプP2~P5の作動開始制御(図2図3を参照)が熱動弁N1~N4の開弁時の作動開始制御に適用される。すなわち、循環ポンプP1と熱動弁N1~N4とを流体流通手段として本発明の作動開始制御が実施される。また、他の実施形態2の暖房システム1Bは、他の実施形態1と同じく混水器10を有しない構成とする。他の実施形態2における前記以外の構成及び作用効果は、前記実施形態と同様である。
【0049】
なお、本発明は、前記各実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で様々な変更を行うことが可能である。例えば、各作動開始許可区間T1の間には、作動開始禁止区間T2を設けない構成としてもよい。また、暖房システムは、暖房端末3が1台しか設置されていない場合であってもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 暖房システム
2 熱源
3 暖房端末
4 制御手段
5 熱交換器
6 流入管
7 流出管
8 分岐供給管
9 分岐回収管
10 混水器
11 電源
12 電源コード
13 スイッチング電源
14 配線パターン
21 熱源リモコン
31 暖房リモコン
32 温度監視手段
33 暖房端末の流体入口
34 暖房端末の流体出口
40 スイッチ回路
51 熱交換器の流体入口
52 熱交換器の流体出口
81 流体往き管
91 流体戻り管
C1,C2 コネクタ
N1~N4 熱動弁(開閉弁、流体流通手段)
P1 循環ポンプ(流体流通手段)
P2~P5 外部ポンプ(流体流通手段)
RY1~RY5 リレー
T 所定周期
T1 作動開始許可区間
T2 作動開始禁止区間
図1
図2
図3
図4
図5