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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108636
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】開閉体の吊元構造
(51)【国際特許分類】
   E06B 9/171 20060101AFI20240805BHJP
   E06B 9/17 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
E06B9/171
E06B9/17 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013095
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】猪俣 忠明
(72)【発明者】
【氏名】高橋 彰吾
(72)【発明者】
【氏名】小林 正典
(57)【要約】
【課題】締結板の位置合せが容易に行え、メンテナンスや工場製作時の作業時間短縮が可能となる開閉体の吊元構造を提供する。
【解決手段】軸回りに回転される筒状の巻取ドラム11と、巻取ドラム11に軸線方向で外嵌され、開閉体17を外周に巻き取る筒状の吊元ドラム15と、巻取ドラム11に対し吊元ドラム15を固定する固定手段36とを備え、固定手段36は、巻取ドラム11の軸線方向に沿う奥拡がりの溝41と、吊元ドラム15に穿設される貫通穴57と、溝41内に挿入されてスライド自在とされる締結板37と、貫通穴57に挿通され固定部58に締結固定される固定具39と、を具備し、締結板37は、固定部58から端部60の長さが、吊元ドラム15の端縁から貫通穴57までの距離以上に長く長尺に形成され、端部60に吊元ドラム15の外周よりも突出せず溝41から突出する摘み61を有する。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸回りに回転される筒状の巻取ドラムと、前記巻取ドラムに軸線方向で外嵌され、開閉体の吊元上端が固定されて前記開閉体を外周に巻き取る筒状の吊元ドラムと、前記巻取ドラムに対し前記吊元ドラムを固定する固定手段とを備えた開閉体の吊元構造であって、
前記固定手段は、
前記巻取ドラムに前記軸線方向に沿って設けられる奥拡がりの溝と、
前記吊元ドラムに穿設される貫通穴と、
前記溝内に挿入され、前記軸線方向にスライド自在とされ、かつ半径方向外側への移動が規制される締結板と、
前記貫通穴に挿通され前記締結板の固定部に締結固定される固定具と、
を具備し、
前記締結板は、前記固定部から端部の長さが、前記吊元ドラムの端縁から貫通穴までの距離以上に長く、前記溝に沿って長尺に形成され、前記端部には、前記吊元ドラムの外周よりも突出しない範囲で前記溝から突出する摘みを有することを特徴とする開閉体の吊元構造。
【請求項2】
軸回りに回転される筒状の巻取ドラムと、前記巻取ドラムに軸線方向で外嵌され、開閉体の吊元上端が固定されて前記開閉体を外周に巻き取る筒状の吊元ドラムと、前記巻取ドラムに対し前記吊元ドラムを固定する固定手段とを備えた開閉体の吊元構造であって、
前記固定手段は、
前記巻取ドラムに前記軸線方向に沿って設けられる奥拡がりの溝と、
前記吊元ドラムに穿設される貫通穴と、
前記溝内に挿入され、前記軸線方向にスライド自在とされ、かつ半径方向外側への移動が規制される締結板と、
前記貫通穴に挿通され前記締結板の固定部に締結固定される固定具と、
を具備し、
前記吊元ドラムが複数で構成されるとともに、互いに離間して前記巻取ドラムに設けられ、
前記締結板は、隣接する前記吊元ドラムに渡る延在長を有し、延在方向中央に、前記吊元ドラムの外周よりも突出しない範囲で前記溝から突出する摘みが配置され、前記摘みを挟む両側に設けられた前記固定部に前記固定具が締結固定されることで前記隣接する吊元ドラムが前記巻取ドラムに固定されることを特徴とする開閉体の吊元構造。
【請求項3】
請求項1に記載の開閉体の吊元構造であって、
前記摘みが、前記巻取ドラムにおける中央部側に配置され前記溝内に挿入されることを特徴とする開閉体の吊元構造。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載の開閉体の吊元構造であって、
前記締結板が、前記溝の長手方向に沿う前記スライド方向に離間した複数の前記固定部を有することを特徴とする開閉体の吊元構造。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1つに記載の開閉体の吊元構造であって、
前記摘みが、前記吊元ドラムの端縁に当接することを特徴とする開閉体の吊元構造。
【請求項6】
請求項4に記載の開閉体の吊元構造であって、
前記摘みが、前記吊元ドラムの端縁に当接することを特徴とする開閉体の吊元構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉体の吊元構造に関する。
【背景技術】
【0002】
開閉体の吊元構造には、引掛け部を有する吊元部材を用いて、巻取シャフトの外周に開閉体を直接固定するもの(特許文献1)や、厚みが次第に減るように形成した補正部材を巻取りドラムとシャッターカーテン(開閉体)との間に挟み込んで巻取り半径が徐々に増加するようにしたもの(特許文献2)などが提案されており、また、巻取りホイールの凹溝に設けた係止突片に、開閉体に連結した吊り金具の引掛け部を引っ掛ければ、隣接する凹溝に設けたナットに吊り金具の貫通孔が一致して、荷重を分散させながら、仮止めも可能となるもの(特許文献3)なども提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-83100号公報
【特許文献2】実開平5-58800号公報
【特許文献3】実公平5-44478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
開閉体の吊元構造では、巻取シャフト、巻取りドラムまたは巻取りホイールなどの巻取ドラムに、軸線方向と平行な蟻溝状の凹溝を設け、この凹溝に板ナット(締結板)を入れ、この板ナットと開閉体の上端とを直接あるいは間接的に締結するものが多い。
しかしながら、板ナットは、凹溝内を移動自在な状態であり、開閉体の上端に対してその裏側に位置するため、開閉体自体が板ナットの視認を遮ることとなって、このことから、施工性が悪く、ビスやボルト(固定具)の締結作業が容易ではない。例えば、巻取ドラムに対する開閉体の位置調整をしつつ、固定具を複数(例えば2つ)の板ナットに螺合固定する、という作業では、一方の板ナットに固定した後に、もう一つの板ナットを位置調整するのが難しい。また、メンテナンスで、それぞれの板ナットとの螺合固定を解けば、巻取ドラムに対する開閉体と板ナットとの位置がバラバラになるので、穴を合わせるのが難しい。同様に、工場製作時においても、板ナットが溝に沿って動くので、位置が容易にずれてしまい、取り付けたい位置に溝内で留まらず、ずれてしまう。その結果、メンテナンスや工場製作に時間のかかる問題があった。
【0005】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、開閉体の上端と巻取ドラムとの連結が容易に行え、メンテナンスや工場製作時の作業時間短縮が可能となる開閉体の吊元構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載の開閉体の吊元構造は、軸回りに回転される筒状の巻取ドラム11と、前記巻取ドラム11に軸線方向で外嵌され、開閉体17の吊元上端が固定されて前記開閉体17を外周に巻き取る筒状の吊元ドラム15と、前記巻取ドラム11に対し前記吊元ドラム15を固定する固定手段36とを備えた開閉体の吊元構造であって、
前記固定手段36は、
前記巻取ドラム11に前記軸線方向に沿って設けられる奥拡がりの溝41と、
前記吊元ドラム15に穿設される貫通穴57と、
前記溝41内に挿入され、前記軸線方向にスライド自在とされ、かつ半径方向外側への移動が規制される締結板37と、
前記貫通穴57に挿通され前記締結板37の固定部58に締結固定される固定具39と、
を具備し、
前記締結板37は、前記固定部58から端部60の長さが、前記吊元ドラム15の端縁から貫通穴57までの距離以上に長く、前記溝41に沿って長尺に形成され、前記端部60には、前記吊元ドラム15の外周よりも突出しない範囲Bで前記溝41から突出する摘み61を有することを特徴とする。
【0007】
この開閉体の吊元構造では、巻取ドラム11が、軸回りに回転される。巻取ドラム11には、軸に沿う方向で吊元ドラム15が外嵌される。吊元ドラム15には、開閉体17の吊元上端が固定される。開閉体の吊元構造は、巻取ドラム11に対して吊元ドラム15が移動自在に外嵌されることにより、開閉体17の幅長、巻取ドラム11の長さ、開口幅、などとの兼ね合いで、巻取ドラム11に対する吊元ドラム15の取り付け位置を調整可能としている。つまり、吊元ドラム15は、アジャスタ的な作用を有している。
巻取ドラム11と吊元ドラム15とは、巻取ドラム11に係合させた締結板37に、吊元ドラム15の外周から貫通させた固定具39を締結固定、例えば螺合して締結することにより、軸線方向の移動が規制されて固定される。これにより、巻取ドラム11が回転駆動されると、開閉体17が吊元ドラム15の外周に巻き取られる。
巻取ドラム11は、締結板37を軸線方向でスライド自在とさせかつ半径方向外側の移動を規制する奥広がりの溝41を有する。吊元ドラム15は、固定具39を挿通する貫通穴57を有する。締結板37は、巻取ドラム11の端から溝41に挿入される。締結板37は、固定具39が螺合する固定穴59を備える固定部58を有し、かつ端部60には吊元ドラム15の外周よりも突出しない範囲で溝41から突出するスライド操作用の摘み61を有する。このため、吊元ドラム15の外周には、摘み61と干渉せずに開閉体17が巻き取り可能となる。
締結板37は、摘み61を挿入方向先端側として溝41に挿入されて、巻取ドラム11における中央部側へとスライドされる。締結板37が溝41に係合した巻取ドラム11には、端から吊元ドラム15が外嵌される。締結板37は、吊元ドラム15が巻取ドラム11の外周に外嵌されることにより、摘み61と反対側の端部から少なくとも摘み61以外の部分が、吊元ドラム15と重なって覆われる。これにより、締結板37は、少なくとも摘み61が吊元ドラム15から外れて露出する。
開閉体の吊元構造では、この摘み61が露出した状態で、摘み61を持って締結板37がスライドされることで、締結板37に設けられた固定穴59が、吊元ドラム15の貫通穴57を通して視認が可能となる。つまり、摘み61を持って穴合わせの操作が容易に行える。作業者は、穴合わせが完了した状態で吊元ドラム15の貫通穴57に固定具39、例えばビスやボルト等を挿入して、溝41に係合して位置決めされた締結板37の固定穴59に固定具39を螺合する。螺合させた固定具39を所定の締め付けトルクで締め込むことにより、締結板37と固定具39の頭部とにより、溝41の開口突片47と貫通孔穿設壁51とが挟着され、巻取ドラム11と吊元ドラム15とが締結される。これにより、吊元ドラム15は、軸に沿う方向の移動が規制されて巻取ドラム11に対する所定の位置での固定が完了する。
【0008】
本発明の請求項2記載の開閉体の吊元構造は、軸回りに回転される筒状の巻取ドラム11と、前記巻取ドラム11に軸線方向で外嵌され、開閉体17の吊元上端が固定されて前記開閉体17を外周に巻き取る筒状の吊元ドラム15と、前記巻取ドラム11に対し前記吊元ドラム15を固定する固定手段36とを備えた開閉体の吊元構造であって、
前記固定手段36は、
前記巻取ドラム11に前記軸線方向に沿って設けられる奥拡がりの溝41と、
前記吊元ドラム15に穿設される貫通穴57と、
前記溝41内に挿入され、前記軸線方向にスライド自在とされ、かつ半径方向外側への移動が規制される締結板37と、
前記貫通穴57に挿通され前記締結板37の固定部58に締結固定される固定具39と、
を具備し、
前記吊元ドラム15が複数で構成されるとともに、互いに離間して前記巻取ドラム11に設けられ、
前記締結板37は、隣接する前記吊元ドラム15に渡る延在長を有し、延在方向中央に前記吊元ドラム15の外周よりも突出しない範囲で前記溝41から突出する摘み61が配置され、前記摘み61を挟む両側に設けられた前記固定部58に前記固定具39が締結固定されることで前記隣接する吊元ドラム15が前記巻取ドラム11に固定されることを特徴とする。
【0009】
この開閉体の吊元構造では、複数の吊元ドラム15が離間して巻取ドラム11に設けられる。吊元ドラム15は、2つ以上であってもよい。開閉体の吊元構造は、例えば2つの吊元ドラム15が、巻取ドラム11の両端で合計4つ外嵌される場合なども考えられる。この場合、片端側では、先ず中央部側の吊元ドラム15が先に巻取ドラム11の端から外挿される。
次いで、延在方向中央に摘み61の設けられた締結板69が、溝41の端から挿入される。挿入された締結板69は、挿入先端が、先に外嵌した吊元ドラム15の内径側に挿入される。その後、後の吊元ドラム15が巻取ドラム11の端から外挿される。後から外嵌された吊元ドラム15は、先に挿入した締結板69の挿入後端を内径側に呑み込ませて重ねる。これにより、締結板69は、摘み61を中央とした両側がそれぞれの吊元ドラム15の内径側に挿入されることになる。
この状態で、例えばこの2つの吊元ドラム15は、先ず、端側の吊元ドラム15が、巻取ドラム11に対して位置合せされ、次いで、摘み61を操作して端側の吊元ドラム15における貫通穴57に固定部58が位置合せされた後、中央部側の吊元ドラム15が移動されて、貫通穴57と固定部58とが位置合せされる。最後に、それぞれの吊元ドラム15を貫通した固定具39が、摘み61を挟む両側に設けられた固定部58に螺合され、巻取ドラム11の片端に、2つの吊元ドラム15の固定が完了する。なお、この2つの吊元ドラム15と巻取ドラム11との位置合せ手順は、これには限定されない。
開閉体の吊元構造では、巻取ドラム11の両端に合計2つの吊元ドラム15が外嵌される構成が通常である。上述した2つ以上の吊元ドラム15を外嵌する開閉体の吊元構造は、開閉体の幅が大きい場合など、巻回される開閉体の荷重が大きいときなどに特に有効となり、締結固定が増加してしまうことに容易に対応が可能となる。
【0010】
本発明の請求項3記載の開閉体の吊元構造は、請求項1に記載の開閉体の吊元構造であって、
前記摘み61が、前記巻取ドラム11における中央部側に配置され前記溝41内に挿入されることを特徴とする。
【0011】
この開閉体の吊元構造では、摘み61が、巻取ドラム11における中央部側に配置される。摘み61の設けられる締結板37は、巻取ドラム11の外周で軸に沿って延在する溝41に嵌る細長い板状となる。この締結板37では、摘み61が、巻取ドラム11の端側または巻取ドラム11の中央部側におけるいずれか一方の延在端に配置が可能となる。開閉体の吊元構造では、このうち巻取ドラム11の中央部側に摘み61が配置される。
巻取ドラム11の端からは、吊元ドラム15が巻取ドラム11の中央部側に向かって外嵌される。摘み61は、吊元ドラム15の外周よりも突出しない範囲で溝41から突出している。締結板37は、摘み61が、巻取ドラム11における中央部側に配置される。これにより、締結板37は、吊元ドラム15の外嵌に先立ち、予め溝41に挿入しておくことで、後から外嵌される吊元ドラム15に対して摘み61が干渉しなくなる。
摘み61は、仮に巻取ドラム11の端側に配置されていると、吊元ドラム15の一部分が巻取ドラム11の端から外方へ突出する場合では、摘み61とともに締結板37の一部分が溝41から外れて巻取ドラム11の端から離脱した状態となってしまう。これに対し、この開閉体の吊元構造では、摘み61が巻取ドラム11における中央部側に配置されるので、締結板37のすべてを溝41に係合させることができる。
【0012】
本発明の請求項4記載の開閉体の吊元構造は、請求項1~3のいずれか1つに記載の開閉体の吊元構造であって、
前記締結板37が、前記溝41の長手方向に沿う前記スライド方向に離間した複数の前記固定部58を有することを特徴とする。
【0013】
この開閉体の吊元構造では、締結板37が、溝41の長手方向に沿うスライド方向に離間した複数の固定部58を有する。これら複数の固定部58を備えることで、いずれか1つの固定部58が、吊元ドラム15の貫通穴57に合致すれば、固定具39を挿通させて固定することが可能となる。また、吊元ドラム15に、これら複数の固定部58のピッチ(間隔距離)と同一ピッチで複数の貫通穴57を形成することも可能となる。つまり、1つの吊元ドラム15に対して、2箇所以上の固定を実現できる。締結板37は、摘み61が操作されてスライド方向に移動され、いずれか1つの固定部58が対応する貫通穴57に一致すれば、他の固定部58もそれぞれの貫通穴57に一致することになる。つまり、複数の固定部58を一度に貫通穴57と位置あわせが可能となる。
そして、1箇所の貫通穴57から挿通した固定具39を固定部58に螺着固定すれば、他の固定部58と貫通穴57とは位置ずれしなくなる。したがって、この開閉体の吊元構造では、吊元ドラム15は、仮止め状態で、巻取ドラム11に対し、軸線方向の移動が可能となる。これにより、吊元ドラム15を複数の固定具39を用いて高強度に巻取ドラム11に固定する吊元構造においても、吊元ドラム15の軸に沿う方向の位置あわせを容易に行うことができる。
【0014】
本発明の請求項5記載の開閉体の吊元構造は、請求項1~3のいずれか1つに記載の開閉体の吊元構造であって、
前記摘み61が、前記吊元ドラム15の端に当接することを特徴とする。
【0015】
この開閉体の吊元構造では、摘み61が、吊元ドラム15の端縁に当接するように構成される。締結板37は、摘み61が吊元ドラム15の端縁に当接した状態で、固定部58が、吊元ドラム15の貫通穴57に一致するように設定される。
吊元ドラム15は、巻取ドラム11に外嵌されると、軸13に沿う方向で移動可能となるが、巻取ドラム11に対する回転は規制される。したがって、吊元ドラム15は、摘み61を端縁に当接し、一致した固定部58に、貫通穴57から固定具39を、例えば螺合することで仮止めが可能となる。仮止めされた吊元ドラム15は、締結板37とともに巻取ドラム11の軸線方向における所定位置にスライドされた後、固定具39が本固定(締結固定)されて巻取ドラム11への固定が完了する。
この開閉体の吊元構造では、吊元ドラム15の端縁に摘み61を当接させることで、固定部58と貫通穴57とが一致し、貫通穴57と固定部58との位置を目視で合わせる必要がなくなる。これにより、締結作業へ迅速に移行することが可能となる。
【0016】
本発明の請求項6記載の開閉体の吊元構造は、請求項4に記載の開閉体の吊元構造であって、
前記摘み61が、前記吊元ドラム15の端縁に当接することを特徴とする。
【0017】
この開閉体の吊元構造では、作用が請求項5と同じである。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る請求項1記載の開閉体の吊元構造によれば、締結板が巻取ドラムの端から溝に挿入され、締結板の延在端から吊元ドラムの外周よりも突出しない範囲で溝から突出する摘みを操作することで、締結板を容易に位置合せでき、メンテナンスや工場製作時の作業時間を短縮可能とすることができる。
【0019】
本発明に係る請求項2記載の開閉体の吊元構造によれば、複数の吊元ドラムが離間して巻取ドラムに設けられ、締結板は、隣接する吊元ドラムに渡る延在長を有して延在方向中央に摘みが配置され、それぞれの吊元ドラムを貫通した固定具が摘みを挟む両側に設けられた複数の固定穴に螺合されるので、1つの締結板を用いて2つの吊元ドラムを、所定の離間距離に容易に位置合せできる。
【0020】
本発明に係る請求項3記載の開閉体の吊元構造によれば、摘みが、巻取ドラムにおける中央部側に配置されるので、吊元ドラムの一部分が巻取ドラムの端から外方へ突出する場合であっても、すべてを溝に係合させた締結板を安定状態でスライド操作できる。
【0021】
本発明に係る請求項4記載の開閉体の吊元構造によれば、複数の固定穴を有する締結板を用いることにより、複数の固定具で吊元ドラムを高強度に巻取ドラムに固定でき、しかも、複数の固定穴と吊元ドラムの貫通穴とを同時に位置あわせできるので、メンテナンスや工場製作時の作業時間を大幅に短縮可能とすることができる。
【0022】
本発明に係る請求項5記載の開閉体の吊元構造によれば、摘みを吊元ドラムの端縁に当接すれば、吊元ドラムの貫通穴と締結板の固定部とが一致するので、締結板と吊元ドラムとの位置合せをより容易に行うことができ、作業効率をさらに向上させることができる。
【0023】
本発明に係る請求項6記載の開閉体の吊元構造によれば、請求項5と同じ効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】開閉体が巻かれた巻取ドラムにおける開閉体の一部分を切り欠いた斜視図である。
図2】巻取ドラムの外周に外嵌された吊元ドラムに巻かれる開閉体の分解側面図である。
図3】巻取ドラムに外嵌された吊元ドラムに巻かれた開閉体の断面図である。
図4】固定具により巻取ドラムに固定される前の吊元ドラムの分解斜視図である。
図5】締結板の斜視図である。
図6】巻取ドラムと一部分を切り欠いた吊元ドラムとその周辺部材との側面図である。
図7図6のA-A断面図である。
図8】変形例1に係る締結板の斜視図である。
図9】変形例2に係る締結板の斜視図である。
図10】中央に摘み63を有する締結板の使用例を表す巻取ドラムの要部側面図である。
図11】吊元ドラムの締結手順を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
本実施形態に係る開閉体の吊元構造は、例えば窓シャッター等のシャッター装置に好適に用いることができる。シャッター装置は、開閉体の収納部と、枠体と、に大別される。収納部は、建物壁の開口部を開閉する開閉体を巻き取り可能に収納する。収納部は、開口部の幅方向に長い略直方体形状に形成される。収納部は、長手方向両側の側面が、建物壁に固定される一対のブラケットにより支持されて建物壁に取り付けられる。
【0026】
枠体は、建物壁の開口部に取り付けられるサッシ枠を囲むようにして建物壁に取り付けられる。枠体は、サッシ枠の下で建物壁に取り付けられる水平な下枠と、下枠の左右両端に下端が固定され、開口部を幅方向で挟んで建物壁に鉛直方向で取り付けられる左右一対の縦枠と、左右一対の縦枠における上端同士を長手方向両側の端部で固定して連結する上枠或いはまぐさと、を有する。左右一対の縦枠は、開閉体の両側を挿入して昇降をガイドするガイドレールを含んでいる。
【0027】
図1は、開閉体が巻かれた巻取ドラム11における開閉体の一部分を切り欠いた斜視図である。
本実施形態に係る開閉体の吊元構造は、軸である固定軸13を中心とした固定軸回りに回転される筒状の巻取ドラム11と、巻取ドラム11の端側に外嵌され、開閉体の吊元上端が固定されて開閉体を外周に巻き取る筒状の吊元ドラム15と、を備える。巻取ドラム11は開口幅にわたる長さとされ、例えば約2mで、吊元ドラム15は短く、例えば200mm程度で構成される。巻取ドラム11および吊元ドラム15は、アルミ押出形材により製作することが可能となる。
【0028】
本実施形態において、開閉体は、ブラインド構造のシャッターカーテン17となる。ブラインド構造のシャッターカーテン17は、両側縁部に配置されて巻き取り方向に延在する一対の線状連結部材19と、両端部が一対の線状連結部材19に接続されて巻き取り方向に並べられた平行な複数のスラット21と、を備える。それぞれのスラット21は、線状連結部材19に回動自在に接続され、開口部の下端にシャッターカーテン17が下降した状態で開口部を閉じる閉位置と、開口部の一部を開放する開位置とに揺動可能となる。
【0029】
ブラインド構造のシャッターカーテン17は、光や風を採り入れながら、外部からの視線を遮ることができる。線状連結部材19は、複数のリンク23の端部同士が連結されて線状に構成される。接続された複数のリンク23は、互いに回動可能かつ接続方向に所定距離だけ相対移動可能となる。それぞれのリンク23に対しては、対応するスラット21における軸状突出部25の端部同士が枢支ピン27により連結される。一対の線状連結部材19は、ガイドレールに係合する。スラット21は、接続されたリンク23に対して、枢支ピン27を中心に回動可能に形成されていることで、開口部を閉じる閉鎖位置と、開口部の一部を開放する開放位置とを選択可能とする。これにより、シャッターカーテン17は、所謂ブラインドシャッターとしての作動が可能となる。
【0030】
なお、開閉体は、ブラインド構造のシャッターカーテン17に限定されない。開閉体は、この他、ブラインド構造を備えない普通のスラットカーテンやシートカーテン、パネルカーテンなどであってもよい。
【0031】
図2は、巻取ドラム11の外周に外嵌された吊元ドラム15に巻かれる開閉体の分解側面図である。
固定軸13は、建物壁に固定される一対のブラケットにより支持されて建物壁に取り付けられる。固定軸13は、収納部に設けられた開閉機(不図示)や固定軸13と同軸に構成される開閉機(不図示)などにより回転駆動される回転軸29を回転自在に支持する。巻取ドラム11は、この回転軸29からの回転力が伝達されて正逆回転される。これにより、巻取ドラム11は、固定軸13を中心に回転されることになる。シャッターカーテン17は、線状連結部材19の吊元上端に接続された連結リンク31によって吊元ドラム15に固定される。連結リンク31は、基端の取付孔33に挿通した連結ボルト35(図1参照)が、軸に沿う方向で吊元ドラム15に設けられた取付孔33に連結されて、吊元ドラム15に固定される。
【0032】
図3は、巻取ドラム11に外嵌された吊元ドラム15に巻かれた開閉体の断面図である。なお、図3においては複雑化を避けるためにハッチングが省略されている。
開閉体の吊元構造は、巻取ドラム11に吊元ドラム15を固定する固定手段36を備える。固定手段36は、締結板37と、固定具39と、溝41と、貫通穴57とで大略構成される。開閉体の吊元構造は、巻取ドラム11に係合させた締結板37に、吊元ドラム15の外周から貫通させた固定具39(図4参照)を螺合して、巻取ドラム11と吊元ドラム15とを締結する。巻取ドラム11は、締結板37を軸線方向でスライド自在とし半径方向外側の移動を規制する奥広がりの蟻溝状となった溝41を有する。
【0033】
巻取ドラム11の外周には、軸線方向に沿い外周から突出する膨出部43が形成される。溝41は、この膨出部43の膨出平坦面45を、軸線方向に沿って切り込まれてスリット状に形成される。溝41は、このスリット状の溝開口を溝幅で挟む両側が一対の開口突片47となる。溝41は、一対の開口突片47の間となる溝開口よりも、奥側が溝幅の大きい蟻溝状となる。締結板37は、溝開口よりも大きい幅を有することで、一対の開口突片47よりも奥側に巻取ドラム11の端から挿入される。溝41に挿入された締結板37は、一対の開口突片47により溝41からの半径方向外側への離脱が規制される。
【0034】
巻取ドラム11は、外周と、この膨出部43との間が段差となる。膨出部43は、この段差が円周方向両側段部49となる。一方、吊元ドラム15の内周には、膨出部43の膨出平坦面45に当接する平坦な貫通孔穿設壁51が形成される。吊元ドラム15は、貫通孔穿設壁51における内周方向の両側に、第1係止片53と第2係止片55とを有する。巻取ドラム11と吊元ドラム15とは、膨出平坦面45に貫通孔穿設壁51が当接すると、第1係止片53と第2係止片55とにより膨出部43が円周方向で挟まれる。すなわち、第1係止片53と第2係止片55とは、円周方向両側段部49を挟む。これにより、巻取ドラム11と吊元ドラム15とは、相対回転が規制され、巻取ドラム11の回転が吊元ドラム15に伝達される。吊元ドラム15は、第1係止片53と第2係止片55との間に、膨出部43を挿入するようにして、巻取ドラム11の端から巻取ドラム11に外嵌される。
【0035】
図4は、固定具39により巻取ドラム11に固定される前の吊元ドラム15の分解斜視図である。
吊元ドラム15は、ビスやボルト等の固定具39を挿通する貫通穴57を有する。貫通穴57は、貫通孔穿設壁51に穿設される。巻取ドラム11の溝41には、吊元ドラム15が外嵌される前に、予め締結板37が挿入される。吊元ドラム15は、溝41に締結板37が挿入された後に、巻取ドラム11の端から挿入されて巻取ドラム11に外嵌される。これにより、溝41に挿入された締結板37は、挿入方向後端側が吊元ドラム15の内径側に挿入されて重ねられる。
【0036】
図5は、締結板37の斜視図である。
締結板37は、溝41の溝幅より僅かに小さい板幅を有し、溝41の延在方向に沿う長い短冊形の板状で形成される。締結板37は、巻取ドラム11の端から溝41にスライドされて挿入される。締結板37は、固定具39が固定される固定部58を有し、この固定部には固定具39が螺合する固定穴59が形成される。固定穴59は、タッピングビスの下穴であってもよく、雌ねじであってもよい。また、固定部58としては、下穴のないままでも良い。本実施形態において、締結板37は、スライド方向に離間した複数位置に固定部58を有し、それぞれに固定穴59が形成される。複数の固定穴59は、例えば2つとすることができる。この固定穴59のピッチである間隔距離と、吊元ドラム15の貫通孔穿設壁51に設けられる貫通穴57のピッチである間隔距離とは、同一となる。なお、固定穴59、貫通穴57、固定具39の数はこれに限定されない。
【0037】
締結板37は、長手方向一端の端部60から板面に垂直に起立するスライド操作用の摘み61を備える。摘み61は、吊元ドラム15の外周よりも突出しない範囲B(図7参照)で溝41から突出する。締結板37は、摘み61を持ってスライド操作することで、貫通孔穿設壁51の下側に隠れる締結板37の固定穴59が、貫通穴57と容易に位置合せできるようになっている。なお、このツマミ61と固定穴59が形成される固定部58との間隔長さLは、吊元ドラム15の端縁から貫通穴57までの距離M(図7参照)の長さ以上に設定される(M≦L)。
【0038】
図6は、巻取ドラム11と一部分を切り欠いた吊元ドラム15とその周辺部材との側面図である。
吊元ドラム15は、締結板37が挿入された巻取ドラム11の端より挿入されて外嵌される。吊元ドラム15は、巻取ドラム11に対する軸線方向の位置が定まった後、摘み61が操作されることにより、締結板37の固定穴59が貫通穴57に位置合せされる。貫通穴57に位置合せされた固定穴59には、吊元ドラム15の外周から貫通穴57に挿通された固定具39が螺合される。巻取ドラム11と吊元ドラム15は、螺合された固定具39が所定のトルクで締め付けられると、締結板37と固定具39の頭部とにより、溝41の開口突片47と貫通穴57の周囲の貫通孔穿設壁51とが挟着され、締結される。
【0039】
図7は、図6のA-A断面図である。
本実施形態において、締結板37は、摘み61が巻取ドラム11における中央部側に設けられる。締結板37は、固定穴59に固定具39が螺合した状態で、吊元ドラム15の端縁から離間する位置に摘み61が配置される。すなわち吊元ドラム15の端縁から貫通穴57までの距離Mよりも、固定穴59から摘み61までの距離Lが十分に長い(M<L)。これにより、摘み61を把持しての締結板37のスライド操作性が高められている。なお、摘み61は、後述するように吊元ドラム15の端縁に当接させるよう構成されてもよい(M=L)。
【0040】
また、開閉体の吊元構造は、摘み61の位置を指針とし、この摘み61と合わせて読み取られる指標(マーク等)を巻取ドラム11の膨出平坦面45に付与してもよい。摘み61は、締結板37に吊元ドラム15が仮止めされれば、吊元ドラム15と一体となって巻取ドラム11に対しスライドが可能となる。開閉体の吊元構造は、巻取ドラム11に、種々のシャッターカーテンサイズ等に対応する指標を付与しておくことで、摘み61をこの指標のうち所定のものに合わせれば、巻取ドラム11に対する吊元ドラム15のスライド位置を容易に位置決めできるようにもなる。この場合、仮止めの固定具39は、所定の指標に摘み61が合った状態で本固定される。
【0041】
次に、本実施形態の構成における変形例を説明する。
【0042】
図8は、変形例1に係る締結板63の斜視図である。
締結板63は、締結板本体65が等幅な短冊状で形成されなくてもよい。すなわち、締結板63は、固定穴59の穿設される固定部58のみ幅広の板幅で形成し、それ以外の幅は摘み61も含めて狭い板幅で形成してもよい。固定部58である固定穴穿設部67の板幅は、溝41の溝幅よりも僅かに小さく設定される。この締結板63によれば、溝41内面と締結板63の幅方向側面との接触面積を小さくでき、互いの摩擦抵抗を低減させて溝41の長手方向の円滑なスライド操作を可能にすることができる。
【0043】
図9は、変形例2に係る締結板69の斜視図、図10は、中央70に摘み61を有する締結板69の使用例を表す巻取ドラム11の要部側面図である。
締結板69は、延在方向の中央70に摘み61が設けられてもよい。締結板69は、摘み61を挟む両側に、所定の数、例えば片側2つずつの合計4ヶ所を固定部58とし、スライド方向に離間するそれぞれの固定部58に固定穴59が設けられる。
【0044】
開閉体の吊元構造は、複数の吊元ドラム15が離間して巻取ドラム11に設けられてもよい。例えば、巻取ドラム11が長尺である場合や、吊元ドラム15を複数としてシャッターカーテン17の巻き取りの撓みを支持する場合などである。この場合、締結板69は、隣接する吊元ドラム15に渡る延在長を有して延在方向中央70に摘み61が配置される。締結板69は、それぞれの吊元ドラム15を貫通した固定具39が、摘み61を挟む両側に設けられた複数の固定穴59に螺合される。これにより、一つの締結板69によって、2つの吊元ドラム15を同時に位置合わせできる。
【0045】
また、図示は省略するが、開閉体の吊元構造は、摘み61が、吊元ドラム15の端縁に当接する構成としてもよい。この場合、締結板37は、摘み61が吊元ドラム15の端縁に当接すると、固定部58の固定穴59が吊元ドラム15の貫通穴57に位置合せされる位置に設定される。すなわち、摘み61を把持して位置合わせのためのスライド操作を不要とすることができる。
【0046】
次に、上記した構成の作用を説明する。
【0047】
本実施形態に係る開閉体の吊元構造では、巻取ドラム11が、軸回りに回転される。巻取ドラム11の端側には、軸線方向に沿って吊元ドラム15が外嵌される。吊元ドラム15には、シャッターカーテン17の吊元上端が固定される。開閉体の吊元構造は、巻取ドラム11に対して吊元ドラム15が移動自在に外嵌されることにより、シャッターカーテン17の幅長、巻取ドラム11の長さ、開口幅、などとの兼ね合いで、巻取ドラム11に対する吊元ドラム15の取り付け位置を調整可能としている。つまり、吊元ドラム15は、アジャスタ的な作用を有している。
【0048】
開閉体の吊元構造は、巻取ドラム11と吊元ドラム15とが、着脱可能となって一体的に固定される。固定具39と締結板37との螺合を緩め或いは解除すれば、巻取ドラム11からの吊元ドラム15の脱着および交換も可能となる。
【0049】
開閉体の吊元構造では、シャッター装置の種類または用途などによって、スラット21の断面形状や断面サイズが変更されるときであっても、巻取ドラム11の全体を変更せずに済む。すなわち、断面形状や断面サイズの異なる吊元ドラム15を選択的に用いれば、スラット21で形成される種々のシャッターカーテン17を吊元ドラム15に良好に巻回できる利点が得られる。
【0050】
巻取ドラム11と吊元ドラム15とは、巻取ドラム11に係合させた締結板37に、吊元ドラム15の外周から貫通させた固定具39を螺合して締結することにより、軸に沿う方向の移動が規制されて固定される。これにより、巻取ドラム11が回転駆動されると、シャッターカーテン17が吊元ドラム15の外周に巻き取られる。
【0051】
なお、巻取ドラム11と吊元ドラム15とは、巻取ドラム11において溝41の形成される部分の外周に設けられる膨出部43の円周方向両側段部49に、吊元ドラム15の対向する内周面に形成される円周方向両側の第1係止片53と第2係止片55とが係合し、相対回転が規制される。つまり、巻取ドラム11とともに吊元ドラム15も回転する。
【0052】
巻取ドラム11は、締結板37を軸線方向に沿ってスライド自在とし、かつ半径方向外側の移動を規制する奥広がりの溝41を有する。吊元ドラム15は、固定具39を挿通する貫通穴57を有する。締結板37は、巻取ドラム11の端から溝41に挿入される。締結板37は、固定具39が螺合する固定穴59を備えた固定部58を有し、かつスライド方向の延在端から吊元ドラム15の外周よりも突出しない範囲で溝41から突出するスライド操作用の摘み61を有する。このため、吊元ドラム15には、摘み61と干渉せずに外周にシャッターカーテン17が巻き取り可能となる。
【0053】
図11は、吊元ドラム15の締結手順を表す説明図である。
図11(a)に示すように、締結板37は、摘み61を挿入方向先端側として溝41に挿入されて、巻取ドラム11における中央部側(図中右側)へとスライドされる。締結板37が溝41に係合した巻取ドラム11には、端から吊元ドラム15が外嵌される。締結板37は、吊元ドラム15が巻取ドラム11の外周に外嵌されることにより、摘み61と反対側の挿入方向後端から少なくとも摘み61以外の部分が、吊元ドラム15と重なって覆われる。これにより、締結板37は、少なくとも摘み61が吊元ドラム15から外れて露出する。
【0054】
開閉体の吊元構造では、図11(b)に示すように、この摘み61が露出した状態で、摘み61を持って締結板37がスライドされることで、締結板37に設けられた固定穴59が、吊元ドラム15の貫通穴57を通して視認が可能となる。つまり、摘み61を持って穴合わせの操作が容易に行える。作業者は、穴合わせが完了した状態で図11(c)に示すように、吊元ドラム15の貫通穴57にビスやボルト等の固定具39を挿入して位置決めされた締結板37の固定穴59に固定具39を螺合する。螺合させた固定具39を所定の締め付けトルクで締め込むことにより、締結板37と固定具39の頭部とにより、溝41の開口突片47と貫通穴57の周囲の貫通孔穿設壁51とが挟着され、巻取ドラム11と吊元ドラム15とが締結される。これにより、吊元ドラム15は、軸に沿う方向の移動が規制されて巻取ドラム11に対する所定の位置での固定が完了する。
【0055】
この開閉体の吊元構造では、締結板37が、スライド方向に離間した複数の固定穴59を有する。従来の開閉体の吊元構造では、1つの吊元ドラム15に対して、板ナットを2箇所で固定する場合があった。この場合、2箇所の板ナット、つまり2つの板ナットを同時に位置合わせするのが難しく、施工性、作業性として問題となっていた。
【0056】
これに対し、この開閉体の吊元構造では、吊元ドラム15に、これら複数の固定穴59のピッチと同一ピッチで複数の貫通穴57が形成されている。すなわち、1つの吊元ドラム15に対して、2箇所以上の固定を可能としている。
【0057】
締結板37は、摘み61が操作されてスライド方向に移動され、いずれか1つの固定穴59が対応する貫通穴57に一致すれば、すべての固定穴59もそれぞれの貫通穴57に同時に一致することになる。1つの締結板37に2箇所の固定穴59を設け、位置合せを1回で済ませることにし、締結板自体に摘み61を設けて簡単に位置合せできるような構造としている。つまり、複数の固定穴59を一度に複数の貫通穴57と位置あわせ可能としている。
【0058】
そして、1箇所の貫通穴57から挿通した固定具39を固定穴59に螺合すれば、他の固定穴59と貫通穴57とは位置ずれしなくなる。この開閉体の吊元構造では、吊元ドラム15は、仮止め状態で、巻取ドラム11に対し、軸に沿う方向の移動が可能となる。その結果、複数の固定穴59を有する締結板37を用いることにより、複数の固定具39で吊元ドラム15を高強度に巻取ドラム11に固定でき、しかも、複数の固定穴59と吊元ドラム15の貫通穴57とを同時に位置あわせできるので、メンテナンスや工場製作時の作業時間を大幅に短縮可能とすることができる。特に、メンテナンス時における螺合解除した板ナットの紛失などが起きない。
【0059】
また、この開閉体の吊元構造では、摘み61が、巻取ドラム11における中央部側の延在端に設けられる。摘み61の設けられる締結板37は、巻取ドラム11の外周で軸に沿って延在する溝41に嵌る細長い板状となる。この締結板37では、摘み61が、巻取ドラム11の端側または巻取ドラム11の中央部側におけるいずれか一方の延在端に配置が可能となる。開閉体の吊元構造では、このうち巻取ドラム11の中央部側に摘み61が配置される。
【0060】
巻取ドラム11の端からは、吊元ドラム15が巻取ドラム11の中央部側に向かって外嵌される。摘み61は、吊元ドラム15の外周よりも突出しない範囲で溝41から突出している。締結板37は、摘み61が、巻取ドラム11における中央部側の延在端に設けられる。これにより、締結板37は、吊元ドラム15の外嵌に先立ち、予め溝41に挿入しておくことで、後から外嵌される吊元ドラム15に対して摘み61が干渉しなくなる。
【0061】
摘み61は、仮に巻取ドラム11の端側の延在端に設けられていると、吊元ドラム15の一部分が巻取ドラム11の端から外方へ突出する場合では、摘み61とともに締結板37の一部分が溝41から外れて巻取ドラム11の端から離脱した状態となってしまう。これに対し、開閉体の吊元構造では、摘み61が巻取ドラム11における中央部側の延在端に設けられるので、締結板37のすべてを溝41に係合させることができる。その結果、吊元ドラム15の一部分が巻取ドラム11の端から外方へ突出する場合であっても、すべてを溝41に係合させた締結板37を安定状態でスライド操作できる。
【0062】
また、この開閉体の吊元構造では、複数の吊元ドラム15が離間して巻取ドラム11に設けられる。吊元ドラム15は、2つ以上であってもよい。開閉体の吊元構造は、例えば2つの吊元ドラム15が、巻取ドラム11の両端で合計4つ外嵌される場合が考えられる。この場合、片端側では、先ず中央部側の吊元ドラム15が先に巻取ドラム11の端から外挿される。
【0063】
次いで、延在方向中央に摘み61の設けられた締結板69が、溝41の端から挿入される。挿入された締結板69は、挿入先端が、先に外嵌した吊元ドラム15の内径側に挿入される。その後、後の吊元ドラム15が巻取ドラム11の端から外挿される。後から外嵌された吊元ドラム15は、先に挿入した締結板69の挿入後端を内径側に呑み込ませて重ねる。これにより、締結板69は、摘み61を中央とした両側がそれぞれの吊元ドラム15の内径側に挿入されることになる。
【0064】
この状態で、例えばこの2つの吊元ドラム15は、先ず、端側の吊元ドラム15が、巻取ドラム11に対して位置合せされ、次いで、摘み61を操作して端側の吊元ドラム15における貫通穴57に固定穴59が位置合せされた後、中央部側の吊元ドラム15が移動されて、貫通穴57と固定穴59とが位置合せされる。最後に、それぞれの吊元ドラム15を貫通した固定具39が、摘み61を挟む両側に設けられた固定穴59に螺合され、巻取ドラム11の片端に、2つの吊元ドラム15の固定が完了する。なお、この2つの吊元ドラム15と巻取ドラム11との位置合せ手順は、これには限定されない。
【0065】
開閉体の吊元構造では、巻取ドラム11の両端に合計2つの吊元ドラム15が外嵌される構成が通常である。上述した2つ以上の吊元ドラム15を外嵌する開閉体の吊元構造は、シャッターカーテン17の幅が大きい場合など、巻回されるシャッターカーテン17の荷重が大きいときに特に有効となる。
【0066】
また、この開閉体の吊元構造では、摘み61が、吊元ドラム15の端縁に当接するように構成される。締結板37は、摘み61が吊元ドラム15の端縁に当接した状態で、固定部58の固定穴59が、吊元ドラム15の貫通穴57に一致するように設定される。
【0067】
吊元ドラム15は、巻取ドラム11に外嵌されると、軸に沿う方向で移動可能となるが、巻取ドラム11に対する回転は規制される。したがって、吊元ドラム15は、摘み61を端縁に当接し、一致した固定部58の固定穴59に、貫通穴57から固定具39を螺合することで仮止めが可能となる。仮止めされた吊元ドラム15は、締結板37とともに巻取ドラム11の所定位置にスライドされた後、固定具39が本固定されて巻取ドラム11への固定が完了する。
【0068】
この開閉体の吊元構造では、吊元ドラム15の端縁に摘み61を当接することで、固定穴59と貫通穴57とが一致し、貫通穴57と固定穴59との位置を目視で合わせる必要がなくなる。これにより、締結作業へ迅速に移行することが可能となる。その結果、締結板37と吊元ドラム15との位置合せをより容易に行うことができるようになり、作業効率をさらに向上させることができる。
【0069】
従って、本実施形態に係る開閉体の吊元構造によれば、締結板37が巻取ドラム11の端から溝41に挿入され、締結板37の延在端から吊元ドラム15の外周よりも突出しない範囲で溝41から突出する摘み61を操作することで、締結板37を容易に位置合せでき、メンテナンスや工場製作時の作業時間を短縮可能とすることができる。
【符号の説明】
【0070】
11…巻取ドラム
13…軸(固定軸)
15…吊元ドラム
17…開閉体(シャッターカーテン)
36…固定手段
37…締結板
39…固定具
41…溝
57…貫通穴
58…固定部
60…端部
61…摘み
63…締結板
69…締結板
B…範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11