(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108645
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240805BHJP
B41J 15/04 20060101ALI20240805BHJP
B65H 5/38 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
B41J2/01 305
B41J2/01 125
B41J15/04
B65H5/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013108
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095452
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 博樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130535
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 明
(74)【代理人】
【識別番号】100183025
【弁理士】
【氏名又は名称】大角 孝一
(72)【発明者】
【氏名】濱田 展光
【テーマコード(参考)】
2C056
2C060
3F101
【Fターム(参考)】
2C056FA10
2C056FA13
2C056HA29
2C056HA46
2C056HA47
2C060BA04
2C060BC03
2C060BC12
2C060BC42
2C060BC48
3F101FA00
3F101FB15
3F101FC11
3F101FD01
3F101LA07
3F101LB03
(57)【要約】
【課題】媒体に吐出されたインクの乾燥性を向上する。
【解決手段】媒体Mを搬送する搬送部8と、搬送部8により搬送される媒体Mの画像形成面M1に対してインクを吐出する印刷部5と、印刷部5よりも搬送方向Aの下流に配置され、媒体Mを支持面21で支持する媒体支持部3Cと、媒体支持部3Cに設けられ、印刷部5から画像形成面M1に吐出されたインクを被支持面M2側から媒体Mを加熱して乾燥させる加熱部20と、を備え、支持面21は、幅方向Bから見て被支持面M2側に凸となる曲げ部22が形成されているとともに、加熱部20を駆動することに伴って幅方向Bにおける中央部21cが幅方向Bにおける端部21eに比べて被支持面M2側に向かって大きく変位するよう構成され、曲げ部22は、加熱部20を駆動することに伴う中央部21cの端部21eに対する変位量の差を調整する印刷装置1。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を搬送する搬送部と、
前記搬送部により搬送される前記媒体の画像形成面に対してインクを吐出する印刷部と、
前記印刷部よりも前記媒体の搬送方向の下流に配置され、前記媒体を支持面で支持する媒体支持部と、
前記媒体支持部に設けられ、前記画像形成面とは反対の被支持面側から前記媒体を加熱して前記印刷部から前記画像形成面に吐出された前記インクを乾燥させる加熱部と、
を備え、
前記支持面は、前記加熱部を駆動することに伴う前記搬送方向と交差する幅方向における中央部の前記幅方向における端部に対する変位量の差を調整する曲げ部を有し、
前記曲げ部は前記幅方向から見て前記被支持面側に凸となるように形成されているとともに、前記加熱部を駆動することに伴って前記中央部が前記端部に比べて前記被支持面側に向かって大きく変位するよう構成されていることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載された印刷装置において、
前記曲げ部は、前記加熱部を駆動することに伴う前記中央部の前記端部に対する変位量の差を3mm以下に調整することを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項2に記載された印刷装置において、
前記曲げ部は、前記加熱部を駆動することに伴う前記中央部の前記端部に対する変位量の差を1.5mm以下に調整することを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載された印刷装置において、
前記支持面は、前記曲げ部が複数形成されていることを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項4に記載された印刷装置において、
前記支持面は、前記搬送方向において等間隔で前記曲げ部が複数形成されていることを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか1項に記載された印刷装置において、
前記曲げ部の前記幅方向から見た曲げ角度は0.5°以上2°以下であることを特徴とする印刷装置。
【請求項7】
請求項1から3のいずれか1項に記載された印刷装置において、
前記曲げ部は、前記加熱部を駆動していない状態において、前記搬送方向から見て前記中央部が前記端部に対して前記被支持面側に凸となるよう構成されていることを特徴とする印刷装置。
【請求項8】
請求項1から3のいずれか1項に記載された印刷装置において、
前記支持面に支持された前記媒体に対して、前記画像形成面に向けて送風する送風部を備えることを特徴とする印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、様々な印刷装置が使用されている。このうち、媒体の画像形成面に吐出されたインクを画像形成面とは反対の面から媒体を加熱して乾燥させる加熱部を備える印刷装置がある。例えば、特許文献1には、媒体に吐出されたインクの乾燥を促進するために、媒体の搬送方向におけるインクヘッドの下流に位置するプラテンにヒーターが設けられたプリンターが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のプリンターのような、媒体の画像形成面に吐出されたインクを画像形成面とは反対の面から媒体を加熱して乾燥させる加熱部を備える印刷装置においては、媒体支持部における媒体を支持する支持面の形状などにより、媒体と支持面との密着性は様々である。このため、このような構成の従来の印刷装置においては、媒体と媒体支持部の支持面との密着性が良くないために、媒体に吐出されたインクの乾燥性が低下する場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明の印刷装置は、媒体を搬送する搬送部と、前記搬送部により搬送される前記媒体の画像形成面に対してインクを吐出する印刷部と、前記印刷部よりも前記媒体の搬送方向の下流に配置され、前記媒体を支持面で支持する媒体支持部と、前記媒体支持部に設けられ、前記画像形成面とは反対の被支持面側から前記媒体を加熱して前記印刷部から前記画像形成面に吐出された前記インクを乾燥させる加熱部と、を備え、前記支持面は、前記加熱部を駆動することに伴う前記搬送方向と交差する幅方向における中央部の前記幅方向における端部に対する変位量の差を調整する曲げ部を有し、前記曲げ部は前記幅方向から見て前記被支持面側に凸となるように形成されているとともに、前記加熱部を駆動することに伴って前記中央部が前記端部に比べて前記被支持面側に向かって大きく変位するよう構成されていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図2】
図1の印刷装置の媒体支持部周辺を表す斜視図。
【
図4】加熱部を駆動していない状態において
図2の媒体支持部を媒体の搬送方向から見た概略図。
【
図5】加熱部を駆動した状態において
図2の媒体支持部を媒体の搬送方向から見た概略図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
最初に、本発明について概略的に説明する。
上記課題を解決するための本発明の第1の態様の印刷装置は、媒体を搬送する搬送部と、前記搬送部により搬送される前記媒体の画像形成面に対してインクを吐出する印刷部と、前記印刷部よりも前記媒体の搬送方向の下流に配置され、前記媒体を支持面で支持する媒体支持部と、前記媒体支持部に設けられ、前記画像形成面とは反対の被支持面側から前記媒体を加熱して前記印刷部から前記画像形成面に吐出された前記インクを乾燥させる加熱部と、を備え、前記支持面は、前記加熱部を駆動することに伴う前記搬送方向と交差する幅方向における中央部の前記幅方向における端部に対する変位量の差を調整する曲げ部を有し、前記曲げ部は前記幅方向から見て前記被支持面側に凸となるように形成されているとともに、前記加熱部を駆動することに伴って前記中央部が前記端部に比べて前記被支持面側に向かって大きく変位するよう構成されていることを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、支持面は幅方向から見て被支持面側に凸となる曲げ部が形成されているとともに加熱部を駆動することに伴って幅方向における中央部が幅方向における端部に比べて被支持面側に向かって大きく変位するよう構成され、曲げ部は加熱部を駆動することに伴う中央部の端部に対する変位量の差を調整する役割をする。支持面の幅方向における中央部が端部に対して凹となる場合などにおいては媒体と支持面との密着性が低下する場合があるが、幅方向における中央部を端部に比べて被支持面側に向かって大きく変位するよう構成することで媒体と支持面との密着性が低下することを抑制することができる。そして、加熱部を駆動した際に例えば支持面をその中央部が被支持面側に凸となるような形状とできることで、媒体と支持面との密着性を向上することができ、媒体に吐出されたインクの乾燥性を向上することができる。
【0009】
本発明の第2の態様の印刷装置は、第1の態様に従属する態様であって、前記曲げ部は、前記加熱部を駆動することに伴う前記中央部の前記端部に対する変位量の差を3mm以下に調整することを特徴とする。
【0010】
幅方向における中央部の端部に対する変位量の差が大きすぎることで支持面が幅方向において凸になりすぎると、媒体と支持面との密着性が低下する虞がある。本態様によれば、曲げ部は加熱部を駆動することに伴う中央部の端部に対する変位量の差を3mm以下に調整するので、支持面が幅方向において凸になりすぎることを抑制でき、媒体と支持面との密着性が低下することを抑制することができる。
【0011】
本発明の第3の態様の印刷装置は、前記第2の態様に従属する態様であって、前記曲げ部は、前記加熱部を駆動することに伴う前記中央部の前記端部に対する変位量の差を1.5mm以下に調整することを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、曲げ部は加熱部を駆動することに伴う中央部の端部に対する変位量の差を1.5mm以下に調整する。このため、支持面が幅方向において凸になりすぎることを特に効果的に抑制でき、媒体と支持面との密着性が低下することを特に効果的に抑制することができる。
【0013】
本発明の第4の態様の印刷装置は、前記第1から第3のいずれか1つの態様に従属する態様であって、前記支持面は、前記曲げ部が複数形成されていることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、支持面は曲げ部が複数形成されている。このため、複数の曲げ部により中央部の端部に対する変位量の差を高精度で調整することができることで媒体と支持面との密着性を特に向上することができる。
【0015】
本発明の第5の態様の印刷装置は、前記第4の態様に従属する態様であって、前記支持面は、前記搬送方向において等間隔で前記曲げ部が複数形成されていることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、支持面は搬送方向において等間隔で曲げ部が複数形成されている。このような構成とすることで、中央部の端部に対する変位量の差を特に高精度で調整することができ、媒体と支持面との密着性を特に効果的に向上することができる。
【0017】
本発明の第6の態様の印刷装置は、前記第1から第3のいずれか1つの態様に従属する態様であって、前記曲げ部の前記幅方向から見た曲げ角度は0.5°以上2°以下であることを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、曲げ部の幅方向から見た曲げ角度は0.5°以上2°以下である。このような構成とすることで、媒体と支持面との密着性を特に向上することができ、媒体に吐出されたインクの乾燥性を特に向上することができる。また、曲げ部の幅方向から見た曲げ角度が大きすぎると、加熱部を駆動することに伴って媒体が搬送方向に伸びて曲げ部において媒体に皴が発生する虞が生じるが、このような構成とすることで、曲げ部において媒体に皴が発生することを抑制することができる。
【0019】
本発明の第7の態様の印刷装置は、前記第1から第3のいずれか1つの態様に従属する態様であって、前記曲げ部は、前記加熱部を駆動していない状態において、前記搬送方向から見て前記中央部が前記端部に対して前記被支持面側に凸となるよう構成されていることを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、曲げ部は、加熱部を駆動していない状態において、搬送方向から見て中央部が端部に対して被支持面側に凸となるよう構成されている。このような構成とすることで、支持面が自重により中央部が被支持面側に凹となり加熱部を駆動しても中央部が端部に対して被支持面側に凸とならなくなる、ということを抑制することができる。
【0021】
本発明の第8の態様の印刷装置は、前記第1から第3のいずれか1つの態様に従属する態様であって、前記支持面に支持された前記媒体に対して、前記画像形成面に向けて送風する送風部を備えることを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、支持面に支持された媒体に対して、画像形成面に向けて送風する送風部を備える。このため、媒体に吐出されたインクを特に効率的に乾燥させることができる。
【0023】
以下、図面を参照して、本発明に係る実施形態を具体的に説明する。最初に、
図1を参照して本発明の一実施例に係る印刷装置1の概要について説明する。なお、
図1においては、構成を分かり易くするために一部の構成部材を簡略化及び省略して表している。ここで、図中のX軸方向は水平方向であって媒体Mがロール状に巻き重ねられたロール体R1を保持する保持部2の支持部の延びる方向であり、Y軸方向は水平方向であるとともに印刷装置1の前後方向であってX軸方向と直交する方向、Z軸方向は鉛直方向である。また、以下においては、矢印の向く方向を+方向、矢印の向く方向とは反対方向を-方向とする。例えば、鉛直上方向は+Z方向、鉛直下方向は-Z方向、印刷装置1の前方は+Y方向、印刷装置1の後方は-Y方向とする。
【0024】
本実施例の印刷装置1は、本体部9を備えており、本体部9のX軸方向の両端部分には、脚部7が取り付けられている。また、本実施例の印刷装置1は、本体部9の後方側である-Y方向側に媒体Mがロール状に巻き重ねられたロール体R1を保持する保持部2を備えている。保持部2は、ロール体R1から媒体Mを本体部9に送り出す送出部の役割をしている。
【0025】
そして、本実施例の印刷装置1においては、媒体Mを搬送方向Aに搬送する際、X軸方向に沿う回転軸となる保持部2を回転方向Cに回転する。保持部2はロール体R1の巻き芯である紙管に挿入する部材である。なお、
図1では画像が形成される画像形成面M1が外側になるように巻かれているロール体R1を使用しているが、画像形成面M1が内側になるように巻かれているロール体R1を使用する場合は、保持部2は回転方向Cとは逆方向に回転してロール体R1から媒体Mを送り出すことが可能である。
【0026】
また、本実施例の印刷装置1は、媒体Mを支持する媒体支持部3などからなる媒体Mの搬送経路を備えている。本実施例の印刷装置1は、媒体支持部3として、搬送方向Aにおける上流側から下流側に向かって、媒体支持部3A、媒体支持部3B及び媒体支持部3Cを備えている。また、印刷装置1は、該搬送経路において媒体Mを搬送方向Aに搬送するための搬送部として、駆動ローラーと従動ローラーとからなるローラー対8を備えている。ただし、搬送部の構成に特に限定はない。
【0027】
また、本実施例の印刷装置1は、媒体支持部3Bと対向する位置に、複数のノズルが設けられ該ノズルからインクを吐出して画像を形成する印刷部としてのヘッド5と、該ヘッド5を搭載して幅方向Bに往復移動可能なキャリッジ4と、を備えている。なお、本実施例の印刷装置1では、媒体支持部3B上のヘッド5と対向する位置における搬送方向Aは+Y方向であり、ヘッド5の移動方向である幅方向BはX軸方向に沿う方向であり、インクの吐出方向は-Z方向である。
【0028】
上記のような構成により、ヘッド5は、搬送方向Aと交差する方向である幅方向Bに往復移動しながら、搬送される媒体Mに不図示のノズルからインクを吐出して画像を形成することが可能である。本実施例の印刷装置1は、所定の搬送量で媒体Mを搬送方向Aに搬送させることと、媒体Mを停止した状態でヘッド5を幅方向Bに移動させながらインクを吐出させることと、を送り返すことで、媒体Mに所望の画像を形成可能である。ただし、このような構成のヘッドの代わりにインクを吐出するノズルがX軸方向全体に亘り設けられる所謂ラインヘッドを備える構成であってもよい。
【0029】
また、媒体支持部3のうちの媒体支持部3Cには、媒体Mの画像形成面M1とは反対側の被支持面M2を加熱するための加熱部としてヒーター20が設けられている。本実施例のヒーター20は電熱線などで構成されるが、このような構成に限定されない。また、媒体支持部3Cだけでなく、媒体支持部3Aや媒体支持部3Bにも媒体Mの画像形成面M1とは反対側の被支持面M2を加熱する媒体加熱部を設けていてもよい。
【0030】
また、搬送経路における媒体支持部3Cと対向する部分には、気流Fを吹き付けることによりヘッド5から媒体Mの画像形成面M1に吐出されたインクを乾燥させる送風部10が設けられている。本実施例の送風部10は、気流Fを加熱する気流加熱部11を備え、加熱した気体を気流Fとして媒体Mの画像形成面M1に送風することが可能な構成となっているが、このような構成に限定されない。
【0031】
また、搬送方向Aにおける媒体支持部3Cの下流には、搬送方向Aに搬送される媒体Mをロール状に巻き取ってロール体R2とする巻取部としての保持部6が設けられている。なお、本実施例の印刷装置1においては、保持部2と保持部6とは同様の構成をしており、保持部6は回転方向Cに回転する。保持部6はロール体R2の巻き芯である紙管を挿入する部材である。
図1では、保持部6が回転方向Cに回転することで画像形成面M1が外側になるように巻かれているが、画像形成面M1が内側になるように媒体Mを巻き取ってもよい。その場合は、保持部6は回転方向Cとは逆方向に回転する。
【0032】
上記のように、本実施例の印刷装置1は、媒体Mを搬送する搬送部としてのローラー対8と、ローラー対8により搬送される媒体Mの画像形成面M1に対してインクを吐出する印刷部としてのヘッド5を備えている。また、本実施例の印刷装置1は、ヘッド5よりも媒体Mの搬送方向Aの下流に配置され、媒体Mを支持面21で支持する媒体支持部3Cと、媒体支持部3Cに設けられ、ヘッド5から画像形成面M1に吐出されたインクを画像形成面M1とは反対の被支持面M2側から媒体Mを加熱して乾燥させる加熱部としてのヒーター20と、を備えている。ヒーター20を内部に備える媒体支持部3Cは本実施例の印刷装置1の要部である。そこで、以下に、
図1に加え、
図2から
図5を参照して、本実施例の印刷装置1の要部である媒体支持部3Cについて詳細に説明する。
【0033】
本実施例の媒体支持部3Cは、
図2などで表されるように、搬送方向Aに搬送される媒体を支持する支持面21と、支持面21の幅方向Bにおける両端部を支持するフレーム23と、備えている。支持面21は、アルミニウム製の平板状の部材に対して幅方向Bに延設される曲げ部22など複数の曲げ形状を形成することで構成されている。ここで、曲げ部22の曲げ方向は、
図3で表されるように、幅方向Bから見て上側、すなわち、被支持面M2側に凸となる方向である。本実施例の媒体支持部3Cは、主に、支持面21で構成される上面部24で画像形成面M1に吐出されたインクを乾燥させる構成となっている。
【0034】
また、本実施例の媒体支持部3Cは、
図3などで表されるように、支持面21の上面部24における下側にヒーター20が設けられている。ここで、アルミニウムは加熱されると熱膨張する。本実施例の支持面21は、薄い平板状の部材で形成されており、加熱部であるヒーター20を駆動することによって支持面21が熱膨張により変位する構成となっている。ここで、
図4はヒーター20を駆動していない状態において媒体支持部3Cを搬送方向Aから見た概略図であり、
図5はヒーター20を駆動した状態において媒体支持部3Cを搬送方向Aから見た概略図である。
図4と
図5とを比較するとわかるように、ヒーター20を駆動することで、支持面21は、幅方向Bにおける中央部21c付近が被支持面M2側に対応する上方向Uに凸となるように変位する。なお、
図5では、支持面21の変位がわかりやすいように、ヒーター20を駆動していない
図4における支持面21の状態を破線で表している。
【0035】
上記のように、本実施例の媒体支持部3Cの支持面21は、
図3で表されるように幅方向Bから見て被支持面M2側に凸となる曲げ部22が形成されているとともに、
図5で表されるようにヒーター20を駆動することに伴って幅方向Bにおける中央部21cが幅方向Bにおける端部21eに比べて被支持面M2側に向かって大きく変位するよう構成されている。そして、本実施例の媒体支持部3Cにおいては、曲げ部22は、ヒーター20を駆動することに伴う中央部21cの端部21eに対する被支持面M2側に向かう変位量の差を調整する役割をしている。
【0036】
支持面21の幅方向Bにおける中央部21cが端部21eに対して凹となる場合などにおいては媒体Mと支持面21との密着性が低下する場合があるが、本実施例の媒体支持部3Cのように幅方向Bにおける中央部21cを端部21eに比べて被支持面M2側に向かって大きく変位するよう構成することで、媒体Mと支持面21との密着性が低下することを抑制することができる。そして、本実施例の媒体支持部3Cは、
図5で表されるようにヒーター20を駆動した際に支持面21をその中央部21cが被支持面M2側に凸となるような形状とできることで、媒体Mと支持面21との密着性を向上することができ、媒体Mに吐出されたインクの乾燥性を向上することができる。
【0037】
ここで、曲げ部22は、ヒーター20を駆動することに伴う中央部21cの端部21eに対する変位量の差を3mm以下に調整するよう形成されていることが好ましい。中央部21cの端部21eに対する変位量の差が大きすぎることで支持面21が幅方向Bにおいて凸になりすぎると、媒体Mと支持面21との密着性が低下する虞があるためである。曲げ部22がヒーター20を駆動することに伴う中央部21cの端部21eに対する変位量の差を3mm以下に調整するよう形成されていることで、支持面21が幅方向Bにおいて凸になりすぎることを抑制でき、媒体Mと支持面21との密着性が低下することを抑制することができる。
【0038】
さらには、曲げ部22は、ヒーター20を駆動することに伴う中央部21cの端部21eに対する変位量の差を1.5mm以下に調整するよう形成されていることが特に好ましい。曲げ部22がヒーター20を駆動することに伴う中央部21cの端部21eに対する変位量の差を1.5mm以下に調整するよう形成されていることで、支持面21が幅方向Bにおいて凸になりすぎることを特に効果的に抑制でき、媒体Mと支持面21との密着性が低下することを特に効果的に抑制することができるためである。
【0039】
なお、曲げ部22の上記変位量の差を所定の範囲に調整するよう形成するためには、支持面21を構成する平板状の部材の厚みや剛性などに応じて、曲げ部22の幅方向Bにおける曲げ具合を調整すればよい。
図4で表されるように、本実施例の支持面21は、ヒーター20を駆動していない状態においても中央部21cが端部21eに対して被支持面M2側に稍々凸となるような形状となるように曲げ部22が形成されている。そして、支持面21をこのような構成としていることで、本実施例の媒体支持部3Cは、曲げ部22がヒーター20を駆動することに伴う中央部21cの端部21eに対する変位量の差を1.5mm以下に調整するよう形成されている。
【0040】
別の表現をすると、本実施例の印刷装置1の曲げ部22は、ヒーター20を駆動していない状態において、搬送方向Aから見て中央部21cが端部21eに対して被支持面M2側に凸となるよう構成されている。このような構成とすることで、支持面21が自重により中央部21cが被支持面M2側に凹となりヒーター20を駆動しても中央部21cが端部21eに対して被支持面M2側に凸とならなくなる、ということを抑制することができる。
【0041】
また、本実施例の印刷装置1においては、
図2及び
図3で表されるように、支持面21は、曲げ部22A及び曲げ部22Bと、曲げ部22が複数形成されている。このため、本実施例の印刷装置1は、複数の曲げ部22により中央部21cの端部21eに対する変位量の差を高精度で調整することができる。そして、そのことで、媒体Mと支持面21との密着性を特に向上することができる。なお、本実施例の支持面21は、
図2及び
図3で表されるように曲げ部22Aよりも搬送方向Aにおける上流側の支持面21A、搬送方向Aにおいて曲げ部22Aと曲げ部22Bとの間に位置する支持面21B、曲げ部22Bよりも搬送方向Aにおける下流側の支持面21Cとを有している。
【0042】
ここで、支持面21に曲げ部22を例えば3つ以上形成する場合、該支持面21は搬送方向Aにおいて等間隔で曲げ部22が複数形成されていることが特に好ましい。このような構成とすることで、中央部21cの端部21eに対する変位量の差を特に高精度で調整することができ、媒体Mと支持面21との密着性を特に効果的に向上することができるためである。なお、ここでの「等間隔」とは、例えば誤差が1割以下など、概ね等間隔であればよい意味である。
【0043】
また、本実施例の印刷装置1においては、
図3で表されるように曲げ部22の幅方向Bから見た曲げ角度は、曲げ部22Aの曲げ角度Θ1及び曲げ部22Bの曲げ角度Θ2ともに、0.5°以上2°以下となっている。このような構成とすることで、媒体Mと支持面21との密着性を特に向上することができ、媒体Mに吐出されたインクの乾燥性を特に向上することができる。また、曲げ部22の幅方向Bから見た曲げ角度が大きすぎると、ヒーター20を駆動することに伴って媒体Mが搬送方向Aに伸びて曲げ部22において媒体Mに皴が発生する虞が生じるが、曲げ部22の幅方向Bから見た曲げ角度を0.5°以上2°以下とすることで、曲げ部22において媒体Mに皴が発生することを抑制することができる。
【0044】
なお、曲げ部22を複数有する場合、そのうちの少なくとも1つを幅方向Bから見た曲げ角度を0.5°以上2°以下とすることが好ましい。しかしながら、このような条件を満たさない曲げ部22を有していてもよい。
【0045】
また、本実施例の印刷装置1は、
図1で表されるように、支持面21に支持された媒体Mに対して、画像形成面M1に向けて送風する送風部10を備えている。このため、本実施例の印刷装置1は、媒体Mに吐出されたインクを特に効率的に乾燥させることができる構成になっている。
【0046】
本発明は、上述の実施例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。また、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0047】
1…印刷装置、2…保持部、3…媒体支持部、3A…媒体支持部、3B…媒体支持部、3C…媒体支持部、4…キャリッジ、5…ヘッド(印刷部)、6…保持部、7…脚部、8…ローラー対(搬送部)、9…本体部、10…送風部、11…気流加熱部、20…ヒーター(加熱部)、21…支持面、21A…支持面、21B…支持面、21C…支持面、21c…中央部、21e…端部、22…曲げ部、22A…曲げ部、22B…曲げ部、23…フレーム、24…上面部、F…気流、M…媒体、M1…画像形成面、M2…被支持面、R1…ロール体、R2…ロール体、S1…領域、S2…領域