(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108646
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】二次電池の塗工膜の乾燥方法とその塗工装置
(51)【国際特許分類】
H01M 4/04 20060101AFI20240805BHJP
H01M 4/72 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
H01M4/04 A
H01M4/72 A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013109
(22)【出願日】2023-01-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】390006426
【氏名又は名称】オー・エム・シー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082429
【弁理士】
【氏名又は名称】森 義明
(74)【代理人】
【識別番号】110002295
【氏名又は名称】弁理士法人M&Partners
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 信次
【テーマコード(参考)】
5H017
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017AS02
5H017CC01
5H017CC05
5H017HH05
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB20
5H050DA04
5H050FA15
5H050GA02
5H050GA04
5H050GA22
5H050GA29
5H050HA12
(57)【要約】
【課題】集電体に厚塗りされた大容量二次電池の塗工膜を迅速に乾燥できるようにして乾燥炉の長さを短縮できるようにした塗工膜の乾燥方法を提供する。
【解決手段】本発明は塗工膜の乾燥方法である。一方向に搬送される長尺帯状の金属箔集電体1に二次電池用活物質合剤の塗工液2を間欠的又は連続的に塗工して前記集電体1上に塗工膜3を形成する。金属箔集電体1を乾燥工程に送り、該乾燥工程で前記金属箔集電体1を加熱して前記塗工膜3を乾燥する。塗工膜3の前記乾燥工程前又は前記乾燥工程中にレーザー光Lを塗工膜3に照射して塗工膜3に穴3hを設ける。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に搬送される長尺帯状の金属箔集電体1に二次電池用活物質合剤の塗工液2を間欠的又は連続的に塗工して前記集電体1上に塗工膜3を形成し、続いて、前記金属箔集電体1を乾燥工程に送り、該乾燥工程で前記金属箔集電体1を加熱して前記塗工膜3を乾燥する塗工膜の乾燥方法において、
前記塗工膜3の前記乾燥工程前又は前記乾燥工程中にレーザー光Lを塗工膜3に照射して塗工膜3に穴3hを設けることを特徴とする塗工膜の乾燥方法。
【請求項2】
前記穴3hは、塗工膜3表面から金属箔集電体1に達しない止まり穴3h1、又は塗工膜3と金属箔集電体1とを貫通した貫通穴3h2であることを特徴とする請求項1に記載の塗工膜の乾燥方法。
【請求項3】
前記レーザー光Lの照射範囲の大気を吸引してレーザー照射によって塗工膜3から発生した微細塵埃を吸引除去することを特徴とする請求項1又は2に記載の塗工膜の乾燥方法。
【請求項4】
長尺の金属箔で構成された集電体1を一方向に送り出す集電体送出部30と、
送り出された前記集電体1の表面に二次電池用活物質合剤である塗工液2を塗着して前記集電体1の表面に塗工膜3を形成するダイ21と、
前記ダイ21の下流に設けられ、一方向に搬送されている前記集電体1が通過する通過路46と乾燥用熱源Hとを具備し、前記塗工膜3を乾燥させる乾燥炉40と、
前記乾燥炉40から送り出され、乾燥した塗工膜3が塗着された集電体1を回収する回収部38と、
前記乾燥炉40中に半乾燥状態となった前記塗工膜3にレーザー光Lを照射して前記塗工膜3の表面から前記集電体1に至らない止まり穴3h1を設け、又は前記塗工膜3と前記集電体1とを貫通する貫通穴3h2を設けるレーザー照射装置50とで構成された塗工装置20であって、
前記レーザー照射装置50は、前記乾燥炉40の側方に設けられ、
前記乾燥炉40の側壁40aには前記レーザー光Lが通過する透過窓42が設けられていることを特徴とする塗工装置。
【請求項5】
長尺の金属箔で構成された集電体1を一方向に送り出す集電体送出部30と、
送り出された前記集電体1の表面に二次電池用活物質合剤である塗工液2を塗着して前記集電体1の表面に塗工膜3を形成するダイ21と、
前記ダイ21の下流に設けられ、一方向に搬送されている前記集電体1が通過する通過路46と乾燥用熱源Hとを具備し、前記塗工膜3を乾燥させる乾燥炉40と、
前記乾燥炉40から送り出され、乾燥した塗工膜3が塗着された集電体1を回収する回収部38と、
前記乾燥炉40の上流側に設けられ、前記乾燥炉40に搬入される前の未乾燥状態の前記塗工膜3にレーザー光Lを照射して前記塗工膜3の表面から前記集電体1に至らない止まり穴3h1を設け、又は前記塗工膜3と前記集電体1とを貫通する貫通穴3h2を設けるレーザー照射装置50とで構成されたことを特徴とする塗工装置。
【請求項6】
前記レーザー光Lの照射範囲をカバーする吸引口71を持つ吸引ノズル70が更に設置されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の塗工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺幅広の金属箔で構成された集電体に厚塗りされた大容量二次電池(リチウムイオンキャパシタを含む)の塗工膜の乾燥方法とその塗工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、環境対策として電気自動車を始めとし、動力機関や電子機器の電源として大容量のリチウムイオン電池など二次電池が非常な脚光を浴びている。リチウムイオン電池を例に取れば、正/負電極は、帯状の集電体(金属箔)に正/負活物質合剤(塗工液)を例えば100μmと厚く塗布し、これを乾燥硬化させたもの(二次電池用原反)が用いられている。そしてこれら集電体(二次電池用原反)を所定の幅に切り分けて細幅の集電体としたり、矩形状のシートにする。
【0003】
細幅の集電体はセパレータを介して円筒状に巻設して電極組立体とし、これを円筒状の電池缶に収納したり、円筒電極組立体状を更に扁平状に成形して角型状の電池缶に収納し、電解液を注入して二次電池とする。
矩形状のシートでは、セパレータを介してこれら正/負電極を多数枚スタックして袋に収納し、同様に電解液を注入して二次電池とする。
【0004】
前記正/負極の塗工膜は、塗工装置のダイから押出された塗工液(活物質合剤)を長尺幅広の集電体(金属箔)の片面或いは両面に一定間隔で矩形状に塗着されて形成され、或いは連続した塗着によって形成される。塗工液は水系又は溶剤系のスラリー状又はペースト状の粘稠な材料である。
【0005】
上記塗工膜は、塗工後、粘稠な状態で乾燥炉に送られ、溶剤又は水分の大半が揮発又は蒸発により除去される。その後、硬化した塗工膜の密度を高めるためにロールプレスが行われる。さらに、塗工膜内に残った溶剤又は水分を除去するために追加の乾燥が行われ、これによって金属箔の上(片面又は両面)に硬い塗工膜が形成された上記二次電池の電極原反となる。
【0006】
上記乾燥炉の例として特許文献1が挙げられる。特許文献1に記載された乾燥炉は、水平方向に搬送される帯状集電体が通過する炉体と、該炉体に送風して塗工膜を乾燥する送風部を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
帯状集電体を水平方向に搬送するこのような乾燥炉では、正/負極の塗工膜が厚塗りの場合、乾燥に時間が掛かるため乾燥炉は、例えば、100mと長大なものとなる。この長大な乾燥炉は広大な設置面積を必要とする。
【0009】
本発明は、このような従来例の問題に鑑みてなされたもので、本発明は、長尺幅広の金属箔で構成された集電体に厚塗りされた大容量二次電池の塗工膜を迅速に乾燥できるようにして乾燥炉の長さを短縮できるようにした塗工膜の乾燥方法を提供することを第1の課題とし、該二次電池の塗工膜の乾燥炉を短くすることができた塗工装置を提供することを第2の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載した発明は、厚塗り塗工膜3の乾燥方法である。
一方向に搬送される長尺帯状の金属箔集電体1に二次電池用活物質合剤の塗工液2を間欠的又は連続的に塗工して前記集電体1上に塗工膜3を形成し、
続いて、前記金属箔集電体1を乾燥工程に送り、該乾燥工程で前記金属箔集電体1を加熱して前記塗工膜3を乾燥する塗工膜の乾燥方法において、
前記塗工膜3の前記乾燥工程前又は前記乾燥工程中にレーザー光Lを塗工膜3に照射して塗工膜3に穴3hを設けることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載の塗工膜3の乾燥方法において、
前記穴3hは、塗工膜3表面から金属箔集電体1に達しない止まり穴3h1、又は塗工膜3と金属箔集電体1とを貫通した貫通穴3h2であることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載した発明は、請求項1又は2に記載の塗工膜の乾燥方法において、
前記レーザー光Lの照射範囲の大気を吸引してレーザー照射によって塗工膜3から発生した微細塵埃を吸引除去することを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載した発明は、請求項1に記載の塗工膜の乾燥方法を実施する第1の塗工装置(炉内照射:
図1、
図2)である。第1の装置20は、
長尺の金属箔で構成された集電体1を一方向に送り出す集電体送出部30と、
送り出された前記集電体1の表面に二次電池用活物質合剤である塗工液2を塗着して前記集電体1の表面に塗工膜3を形成するダイ21と、
前記ダイ21の下流に設けられ、一方向に搬送されている前記集電体1が通過する通過路46と乾燥用熱源Hとを具備し、前記塗工膜3を乾燥させる乾燥炉40と、
前記乾燥炉40から送り出され、乾燥した塗工膜3が塗着された集電体1を回収する回収部38と、
前記乾燥炉40中で半乾燥状態となった前記塗工膜3にレーザー光Lを照射して前記塗工膜3の表面から前記集電体1に至らない止まり穴3h1を設け、又は前記塗工膜3と前記集電体1とを貫通する貫通穴3h2を設けるレーザー照射装置50とで構成された塗工装置20であって、
前記レーザー照射装置50は、前記乾燥炉40の側方に設けられ、
前記乾燥炉40の側壁40aには前記レーザー光Lが通過する透過窓42が設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載した発明は、請求項1に記載の塗工膜の乾燥方法を実施する第2の塗工装置(炉前照射:
図4)である。第2の塗工装置20は、
長尺の金属箔で構成された集電体1を一方向に送り出す集電体送出部30と、
送り出された前記集電体1の表面に二次電池用活物質合剤である塗工液2を塗着して前記集電体1の表面に塗工膜3を形成するダイ21と、
前記ダイ21の下流に設けられ、一方向に搬送されている前記集電体1が通過する通過路46と乾燥用熱源Hとを具備し、前記塗工膜3を乾燥させる乾燥炉40と、
前記乾燥炉40から送り出され、乾燥した塗工膜3が塗着された集電体1を回収する回収部38と、
前記乾燥炉40の上流側に設けられ、前記乾燥炉40に搬入される前の未乾燥状態の前記塗工膜3にレーザー光Lを照射して前記塗工膜3の表面から前記集電体1に至らない止まり穴3h1を設け、又は前記塗工膜3と前記集電体1とを貫通する貫通穴3h2を設けるレーザー照射装置50とで構成されたことを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載した発明(吸引処理)は、請求項4又は5に記載の塗工装置20において、
前記レーザー光Lの照射範囲をカバーする吸引口71を持つ吸引ノズル70が更に設置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、塗工膜3の乾燥工程前又は乾燥工程中にレーザー光Lにて塗工膜3に穴3hを設けるので、乾燥工程に入ると塗工膜3の表面だけでなく、穴3hの内面からも塗工膜3内の溶媒や水分が蒸発し、塗工膜3の乾燥時間を短く出来、ひいては乾燥距離、即ち、乾燥炉40の全長を短くすることができる。
【0017】
また、レーザー光Lの照射範囲の大気を吸引すれば、レーザー照射によって塗工膜3から発生した微細塵埃を吸引除去することができ、微細塵埃が塗工膜3の表面に付着して後工程でのトラブルを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】(a)本発明の塗工装置の実施形態1の概略構成図、(b)同装置の乾燥炉の概略構成図である。
【
図2】矩形塗工膜に対する
図1のレーザー照射部分の拡大斜視図である。
【
図3】連続塗工膜に対する
図1のレーザー照射部分の拡大斜視図である。
【
図4】本発明の塗工装置の実施形態2の概略構成図である。
【
図5】(a)(b)本発明の塗工装置の実施形態3の概略構成図である。
【
図6】(a)(b)分岐型レーザー照射装置のレーザー照射部分の拡大斜視図である。
【
図7】(a)塗工膜に止まり穴を設けた拡大断面図、(b)塗工膜と集電体に貫通穴を設けた拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を図面に従って詳述する。
図1は本発明に係る実施形態1、
図4は実施形態2、
図5(a)(b)は実施形態3の塗工装置20の概略構成図である。いずれの塗工装置20も、ロールツーロールで送られる幅広長尺の金属箔集電体1に、塗工液2を塗工し、これを乾燥させ、大容量2次電池用の原反10を製造するための装置である。同装置20は、大略、集電体送出部30、ダイ21を含む塗工部、バックアップローラ34、搬送ローラ36a~36n、乾燥炉40、回収部38、レーザー照射装置50、必要に応じて設けられる画像処理装置60、吸引ノズル70及び制御部80で構成されている。
【0020】
塗工装置20に適用される集電体1は、幅広長尺の金属箔で構成されロール状に巻き取られている。これを金属箔ロール1aとする。前記集電体1は、正極電極の場合、アルミニウム箔であり、負極電極の場合は、銅箔である。
【0021】
この集電体1に塗着される塗工液2は、正極の場合、例えば、リチウム遷移金属複合酸化物、例えばLixCoO2、LixNiO2、LixMn2O4、LixMnO3、LixNiyCo(1-y)O2、等をカーボンブラック等の導電性物質、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の結着剤、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等の溶剤と分散混練し調製した正極活物質合剤である。
【0022】
負極の塗工液2の場合は、例えば、リチウムをドープ及び脱ドープ可能な熱分解炭素類、ピッチコークス、ニードルコークス、石油コークスなどのコークス類、グラファイト類、ガラス状炭素類、フェノール樹脂、フラン樹脂などを焼成した有機高分子化合物焼成体、炭素繊維、活性炭などの炭素質材料、ポリアセチレン、ポリピロール等の導電性高分子材料をカーボンブラックなどの導電性物質、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の結着剤、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等の溶剤と分散混練し、これを調製した負極活物質合剤である。
【0023】
ロール状に巻き取られた金属箔ロール1aは、集電体送出部30に回転可能に保持され、集電体送出部30から繰り出されて一方向に連続的に搬送される。
ダイ21に至り、ここでダイ21から吐出された塗工液2がその片面又は両面に塗工される。そして、乾燥炉40に入ると塗工液2が乾燥硬化し、集電体1の表面に硬化塗工膜3zが形成され、二次電池用の原反10となって回収部38に回収される。
この間、塗工層3が未乾燥又は半乾燥状態下で、レーザー光Lを塗工膜3の表面に照射し、塗工膜3全体に多数の穴3hを所定の間隔で穿設する。
穴3hは、
図7(a)のように、塗工層3の表面から集電体1に至らない止まり穴3h1と、
図7(b)のように、塗工層3及び集電体1に貫通した貫通孔3h2とがある。
【0024】
塗工装置20による塗工液2の集電体1への塗工は、
図1や
図4のように片面だけの場合と、
図5(a)(b)のように両面の場合がある。片面だけの場合は、一台のダイ21で塗工が行われ、両面の場合は集電体1の表裏に対向して設けられた二台のダイ21a・21b、或は、
図5(b)のように、乾燥炉40の入口側から離れた位置と、入口側に近接して設けられた二台のダイ21a・21bによって塗工が行われる。勿論、これらに限られることはない。集電体1の送りは1方向への連続送りである。
【0025】
塗工には、ポンプ操作でダイ21から塗工液2を間欠的に押し出して集電体1の中央部分に矩形の塗工膜3を一定間隔で形成する場合(
図2)と、集電体1の連続送りで、ダイ21から塗工液2を連続的に押し出して集電体1の中央部分に塗工液2の塗工膜3を連続的に塗工する場合(
図3)とがある。
【0026】
矩形の塗工膜3の場合は、上記塗工膜3の側縁部分3cと集電体1の側辺との間、及び前後に隣接する塗工膜3の間が非塗工領域5となる(
図2)。
連続押し出しの場合、塗工膜3の側縁部分3cと集電体1の側辺との間が非塗工領域5となる(
図3)。
そしてこの集電体1は、塗工膜3の乾燥硬化処理を経て二次電池用の原反10となり、図示しないが、その後上記のように、製品の形状に合わせて複数の条や矩形シートに切り分けられ、且つ上記非塗工領域5に必要に応じてタブが形成される。
【0027】
本原反10が適用される製品としては、例えば二次電池やキャパシタなどがある。二次電池はリチウムイオン二次電池に限らず、ニッケル水素二次電池やニッケルカドミウム二次電池等の他の二次電池であってもよい。キャパシタは、例えば、電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタ等のようなであってもよい。
【0028】
集電体1の表面に塗工された塗工膜3は、レーザー光Lで止まり穴3h1又は貫通孔3h2が形成されるが、
図1のように、乾燥炉40中でレーザー光Lの照射が行われる場合(実施形態1)と、
図4のように、乾燥炉40に入る前に照射が行われる場合(実施形態2)とがある。そして、上記のようにレーザー光Lの照射位置の相違によって乾燥炉40は2種類に分かれる。実施形態1は乾燥炉40の側壁40aに耐熱ガラス44を嵌め込んだ透過窓42が設けられる(
図1(b))。
耐熱ガラス44としては、ホウケイ酸ガラスや石英ガラスがあるが、レーザー光Lを歪みなしで通過させるためには石英ガラスが好ましい。
【0029】
集電体送出部30は、ロール状に巻き取られた金属箔ロール1aを支持回転してダイ21方向に集電体1に繰り出す部署で、集電体1の繰り出しは繰り出し用のサーボモータ(図示せず)で行われる。
【0030】
ダイ21を含む塗工部は、ダイ21と、前記ダイ21に塗工液2をポンプ操作で過不足なく供給する塗工液供給部25とで構成されている。
ダイ21は断面先細り形状で、その内部に塗工液2が溜められる空間としての液溜め部22が形成され、この液溜め部22はスリット状のノズル口23に繋がっている。
ノズル口23は集電体1の幅方向に沿って長く伸びている。ノズル口23の開口寸法(高さ寸法)は、例えば0.1~10mmである。そして、塗工液2はノズル口23の幅方向寸法と略同一の幅方向寸法で集電体1上に塗工される。
【0031】
液溜め部22には塗工液2を供給する塗工液供給部25が接続されている。液溜め部22に溜められている塗工液2をノズル口23から集電体1に流す方向は集電体1の面に対して垂直方向となり、集電体1の送り方向に沿って塗工される。
【0032】
液溜め部22は、塗工液供給部25から供給された塗工液2を溜めることができ、液溜め部22に溜められている塗工液2をポンプ圧でノズル口23からロールツーロールで送られる集電体1に対して吐出し、この集電体1に対して塗工液2を塗工する。集電体1上に塗工される塗工液2の膜(塗工膜3)の厚さは幅方向にほぼ一定となるよう設計されている。
【0033】
ダイ21にて塗工作業を行っていると、ダイ21に塗工液2を供給するタンク(図示せず)内の塗工液2の量が減少したり、周囲温度により液温度が変わり、塗工液2の粘性が変化したりして、ダイ21に塗工液2を供給するポンプ(図示せず)の吐出量が変化することがある。
【0034】
吐出量が変化すると、基本的にはポンプの回転数を補正することで対応するが、吐出量の変化が少ない場合には、ダイ21と集電体1との間のギャップgを調整する。
これにより、連続塗工の場合は塗工膜3の幅方向の寸法や塗工厚みを維持する。間欠塗工の場合は、これらに加えて塗工区間の幅方向の寸法の精度を維持している。
【0035】
図1のバックアップローラ34は、ダイ21と正対して配置されている。
図5(a)の場合は、表裏一対のダイ21a・21bが集電体1を挟んで正対しており、バックアップローラ34はない。
図5(b)の場合は別の例で、表側のダイ21aに対して裏側のダイ21bが乾燥炉40の入口付近に設置されている。
集電体1はダイ21と正対して配置されているバックアップローラ34に一方向に案内される。集電体1とダイ21のスリット状のノズル口23との間隔(隙間g)は一定に保たれ、この状態で塗工液2の塗工が行われる。ダイ21のノズル口23の幅方向とバックアップローラ34の回転中心線の方向とは平行である。
【0036】
バックアップローラ34の前後には、集電体1を案内する入口側の搬送ローラ36aと出口側の搬送ローラ36bが回転自在に設けられている。搬送ローラ全体は36で表す。
ダイ21のノズル口23とバックアップローラ34を走行する集電体1との間隙であるギャップgを調整するために、ダイ21又はバックアップローラ34が図示しないエアーシリンダーで近接離間方向に移動自在に支持されている。
【0037】
集電体送出部30から繰り出された集電体1は、所定の間隔で配列されている複数の搬送ローラ36a~36nの回転駆動によって所定のテンション(張力)を維持されたまま、所定の速度で搬送されて行く。なお、集電体送出部30における金属箔ロール1aの回転速度、回収部38の巻き取り速度や、搬送ローラ36a~36nの回転速度は、制御部80によって制御されている。
【0038】
乾燥炉40はダイ21の下流側に配置されている。乾燥炉40は側壁40aに囲まれ、長尺の金属箔集電体1が通過する通過路46を有する筒状の本体と、通過路46の移動中の金属箔集電体1を加熱乾燥する熱源(パイプに高温蒸気を通したものや電熱ヒータ)H、必要に応じて設けられ、該金属箔集電体1を送風乾燥するドライヤ48及び照射部位から発生するヒュームや微細塵埃を吸引する吸引ノズル70とで大略構成される。
【0039】
乾燥炉40の内部には複数の熱源Hやドライヤ48が集電体1の通過路46に沿って配列されている。乾燥炉40は、集電体1に形成されている塗工膜3を熱源Hの放射熱やドライヤ48の温風によって乾燥させる。
【0040】
そして、このような乾燥炉40には、レーザー光Lによる穴形成処理を行う位置により2種類(実施形態1,2)のものがある。
実施形態1の乾燥炉40は、炉内で塗工膜3にレーザー加工をする関係から、その側壁40aには耐熱ガラス44を嵌め込んだ透過窓42が設けられている。
実施形態2の乾燥炉40は、炉前で塗工膜3にレーザー加工をする関係から、その側壁40aに透過窓42が設けられていない。
そして、
図1の場合は、集電体1の片面のみに塗工膜3が形成されるため、透過窓42は一方の側壁40aに設けられるが、
図5のように、集電体1の両面に塗工膜3が形成される場合は、透過窓42は両方の側壁40aに設けられる。
【0041】
吸引ノズル70は、レーザー光Lの照射範囲に向けて開口し、この照射範囲をカバーする吸引口71を有する。そして、吸引口71に向けて風を送る送風ノズル76を設けてもよい。送風ノズル76の吹出口77は吸引口71に向けられており、吸引口71と吹出口77の間がレーザー光Lの照射範囲である。
【0042】
回収部38は、集電体送出部30の反対側に設けられており、少なくとも集電体1の一面に矩形の乾燥塗工膜3zが所定間隔で形成され、又は連続した乾燥塗工膜(図示せず)が形成された原反10をロール状に巻き取って行く部位で、塗工装置20の最下流に設置されている。
巻き取りは、搬送ローラ36の1つであるダンサーローラ(例えば、搬送ローラ36aや36n)を介し、集電体送出部30と協働して繰り出された集電体1の張力が常時一定となるように巻取用サーボモータ(図示せず)を同期させることによって行われる。
【0043】
レーザー照射装置50は、各種レンズ系を組み合わせた光学系で構成されたレーザー出射部51と、レーザー光Lを出力するレーザー発生部52と、ガルバノ駆動部59とで構成され、レーザー出射部51とレーザー発生部52とがレーザートランスファ部材54で接続されている。これによりレーザー出射部51にレーザー光Lが入力するようになっている。
レーザー照射装置50は、
図2や
図3のように1本のレーザー光Lを出射する場合と、
図6のように分岐するものがある。
図6のレーザー照射装置50は、レーザー出射部51の出射口に分岐レンズ58を設けたもので、レーザー出射部51の出射口から出たレーザー光Lは分岐されて複数のレーザー光La~Lnとなる。
【0044】
ガルバノ駆動部(ガルバノスキャナ)59は、1本のレーザー光Lを出射するレーザー照射装置50や分岐型のレーザー照射装置50のいずれにも設けられる。
これらのレーザー照射装置50は、ガルバノミラー59a・59bを用いてレーザー光Lを駆動モータ59m・59nのミラー角度調整でXYの2次元(又は、図示していないが、XYZの3次元)で任意の方向に制御し、レーザー光Lをピンポイントで照射する装置である。(3次元の場合は、高さを調整できる。)
なお、
図5のように、レーザー照射装置50が表裏にある場合、説明を簡略化するため、裏面側のレーザー照射装置50bは表面側のレーザー照射装置50aの説明と符号を援用する。
【0045】
本発明では集電体1が一定の方向に連続的に移動しているため、
図1(b)に示すように集電体1の移動速度に合わせてガルバノ駆動部59をミラー角度調整でXY方向に2次元作動させ、レーザー光Lを同じ方向にホームポジションから穴形成処理完了位置まで一点に集中させて移動させ、穴形成理を行う。穴形成処理が終了すると、レーザー光Lはオフとなり、ホームポジションまで戻り、次の段の穴形成処理を行う。
【0046】
レーザー出射部51が、
図6(b)のように分岐レーザー光La~Lnが搬送方向に対して直交(又は交差)方向に分岐している構造の場合は、集電体1の移動方向に合わせて往復移動すればよいが、
図6(a)のように円周状に分散した分岐構造の場合や、
図2のようにレーザー光Lが1本の場合には、集電体1の移動方向に直交(又は交差)させた位置に複数のレーザー出射部(図示せず)を用意するか、レーザー光Lをミラー角度調整でXYの2軸に振り、穴形成処理を行うことになる。
【0047】
ここで使用されるレーザー光Lは、基本波である1.064µmのYAGレーザーやYVO4レーザー、第2高調波(SHG)の波長変換素子を通して得られる532nmのグリーンレーザー光、第3高調波(THG)の波長変換素子を通して得られる355nmのUVレーザー光、或いはそれ以上の短波長のレーザー光などが使われる。
レーザー光Lは波長が短くなることで集光性が上がり単位当たりエネルギー効率が高くなるので微細加工に適しており、精密部品や半導体関連産業等で使われる。
レーザー光Lは、例えば、連続発振,パルス発振,Qスイッチパルス発振,シングルモードなどの手法により出力される。第2高調波や第3高調波は金属箔に対して吸収率が高いので、後述する穴加工時に第2高調波や第3高調波が金属箔に達すると、瞬間的に加熱されて金属箔が瞬時に高温になり、金属箔である集電体1に塗着された塗工膜3と集電体1との接着力が高まる。換言すれば、塗工膜3の剥離強度が向上する。
【0048】
1.064µmのYAGレーザー光やYVO4レーザー光で穴3hを穿つ場合は、通常、パルス発振モードで行われる。
グリーンレーザー光(第2高調波)やUVレーザー光(第3高調波)などを使用すれば、被照射物は昇華して、直接、気体となる。グリーンレーザー光やUVレーザー光などを使用すれば、塗工膜3を形成する素材の熱変質が抑制されて好適である。
【0049】
パルス発振モードでのYAGレーザー光やYVO4レーザー光による穴形成は、溶融物(活物質合剤や金属箔)を溶融部分から除去するために当該部分に風(アシストエア)を吹き付けることが好ましい。その場合、溶融物が微細粒子となって周囲に飛散するので、これを吸引除去することが必要となる。
【0050】
また、グリーンレーザー光やUVレーザー光などを使用すれば、照射部分がから活物質合剤や金属箔の蒸気が立ち上り、これが冷却凝固して微細粉塵となって周囲に飛散するので、同様に吸引除去することが必要となる。
【0051】
画像処理装置60は、CCDカメラ62、照明用光源(図示せず)、外部モニタ65、入力装置68、及びCPU81、ROM82、RAM83を含む制御部80とで構成されている。
CCDカメラ62は、塗工膜3の表面に形成された穴3hの画像を解析してデジタル信号に変換するために用いられ、制御部80内のCPU81に接続されている。CCDカメラ62で取り込んだ塗工膜3の穴3hの画像は、デジタル信号に変換されCPU81に送り込まれる。、
【0052】
画像処理装置60とレーザー光Lとの光軸合わせには、通常、He-Neレーザーが使用される。
レーザー出射部51の光学系内には上記のように透過型の全反射ミラー56が組み込まれており、レーザー出射部51内に入力されたレーザー光L、照明用光、並びに光軸合わせ用のレーザー光を全反射するようになっている。
全反射ミラー56にて全反射されるこれらの光の光軸は、画像処理装置60へ入力する光の光軸と一致するようになっており、該光軸のポイントにレーザー光Lを集中させることができる。なお、本実施例の塗工装置20では、画像処理装置60に備えられたCCDカメラ62の焦点位置がレーザー発生部52によって照射されるレーザー光Lの焦点位置に一致するように設定されている。
【0053】
ワーク照明用の光源(図示せず)は、光ファイバーケーブル(図示せず)を介してレーザー出射部51に入光するようになっており、この入光した光は、透過型全反射ミラー56を介して光学系を通過し、塗工膜3の表面(穴3h)を照射するようになっている。
【0054】
制御部80は、CPU81、ROM82、RAM83、外部モニタ65及びキーボードなどの入力装置68で構成されており、ROM82には塗工装置20の加工手順やガルバノ駆動手順が全てプログラミングされている。又、RAM83には画像処理装置60から取り込んだ塗工膜3の穴3hの画像信号が記憶されるようになっている。
ガルバノ駆動手順はレーザー光Lの光路を1~3次元に変換するための制御用で、CPU81に接続され、CPU81の指令の元にレーザー光Lの光路を移動させるようになっている。
【0055】
外部モニタ65は画像処理装置60で取り込んだ塗工膜3の穴3hを映し出すためのものである。
入力装置68はCPU81の条件設定をオペレータが手で入力するためのものである。
本実施例では、レーザー照射装置50と画像処理装置60とが一体型になっている。
【0056】
以下の説明では、実施形態1を説明し、その後で実施形態2、3を説明する。実施形態2、3の説明では説明の重複を避けるため、実施形態1と異なる部分を中心に説明する。
なお、
図1、
図4及び
図5(a)(b)では、矩形塗工膜3の例を示したが、当然、連続塗工膜3の場合でも適用される。
【0057】
(実施形態1:
図1)
ここでは、集電体1の片面に塗工される場合を代表例とする。
本塗工装置20の定常運転状態において、集電体送出部30の作動により集電体1が集電体送出部30の金属箔ロール1aから送り出される。
送り出された集電体1に対してダイ21から粘稠な塗工液2が押し出され、ダイ21のノズル口23の幅で集電体1の表面に塗工液2が塗着される。塗着された膜状の塗工液2を塗工膜3とする。
【0058】
連続塗工の場合は、集電体1の走行に合わせて集電体1の表面に連続的に塗工液2が押し出され、帯状の塗工膜3が形成される。
間欠押し出しの場合は、塗工液2が間欠的に押し出されて矩形状の塗工膜3を一定間隔で集電体1の表面に形成する。塗工膜3の形成部分と非形成部分である非塗工領域5とが交互に現れる事になる。
このように形成された塗工膜3は粘稠なペースト状で帯状の集電体1に塗着された状態で乾燥炉40に送られる。
【0059】
乾燥炉40では、乾燥用熱源Hからの放射熱を受け、且つドライヤ48からの乾燥風に曝されて塗工膜3が表面から徐々に乾燥されていく。塗工膜3が半乾燥した処で塗工膜3はレーザー光Lの照射を受ける。なお、半乾燥とは、塗工膜3の表面が乾燥した状態であって内部はペースト状態に保たれている状態である。
【0060】
CCDカメラ62は搬送されている集電体1を観察し続けている。CCDカメラ62が塗工膜3の始端3bを捉え、そして塗工膜3の先端部分がレーザー光Lの照射範囲に入ったことを確認すると、レーザー出射部51からレーザー光Lが照射され、ガルバノ駆動部59の働きにより集電体1の移動に合わせてレーザー光Lも移動し、必要深さで塗工膜3の表面に穴3h(止まり穴3h1又は貫通穴3h2)を穿つ。
【0061】
図6(a)のように分岐型の場合、一度に複数の穴3hがまとまって形成される。
図2のように非分岐型の場合には必要数のレーザー出射部51により穿孔作業が同時並行的に行われる。この時、前述のようにレーザー光Lを集電体1の移動速度に合わせつつミラー角度調整でXYの2次元(又は、Z方向の焦点深度の調整も必要であれば、XYZの3次元)に振り、1台のレーザー出射部51により複数の穿孔作業を行わせてもよい。
レーザー光Lで形成された穴3h(複数の場合は光軸に合致した1つの穴3h)は、CCDカメラ62で観察され、そのデータがRAMに記憶される
【0062】
レーザー光LがYAGやVO4である場合、照射された物質は照射点で単に溶けるだけで昇華しない。それ故、一般的には穴3hに向けてアシストガスが噴射され、溶融物質(湯)を吹き飛ばすことになる。既に述べたように、この溶融物質は微細粒となって塗工膜3の表面に付着して製品の品質を阻害することになるため、吸引ノズル70により吸引除去される。この時、吸引ノズル70の吸引口71に向けて送風ノズル76の吹出口77を設けておけば、上記微細粒を効果的に除去できる。
【0063】
これに対して、レーザー光Lがグリーンレーザー光(第2高調波)やブルーレーザー(第3高調波)であれば、照射部分で昇華が起こり、被照射部分から被照射物が、直接、高温ガスになって立ち昇る。この高温ガスもその直上で周囲の冷たい空気に触れ、瞬間的に微細粉末になるが、上記同様、吸引ノズル70により吸引除去されて塗工膜3の表面に付着しない。なお、レーザー光Lがグリーンレーザー光(第2高調波)やブルーレーザー(第3高調波)であれば、照射部分の熱影響が小さく、塗工膜3にダメージを与えない。
【0064】
このようにして形成された穴3hの周囲及び内面は粘稠状態が保たれているので、穴3hの周囲及び内面の表面張力によりレーザー光Lによる照射痕が消され、これらの面は凹凸のない滑らかな面となる。
【0065】
上記のように乾燥途中で塗工膜3に止まり穴3h1や貫通穴3h2が設けられると、以後、塗工膜3の内部にとどまっていた溶剤や水分が穴3hから逃げ、塗工膜3の乾燥が促進される。塗工膜3の乾燥が促進されると、当然、乾燥時間や乾燥に要する距離が短くなり、その結果、乾燥炉40の全長を短くすることができるようになる。
乾燥が終わると集電体1は2次電池用原反10となって回収部38に巻き取られる。
【0066】
図5(a)(b)は集電体1の両面に塗工液2が塗着される場合である。
図5(a)はダイ21a・21bが集電体1を挟んでその表裏に正対して配置された場合で、同時に塗工が行われる。従って、ダイ21a・21bより下流部分では塗工膜3の形成範囲では乾燥炉40の出口までは搬送ローラが設けられない。
同様に、
図5(b)はダイ21a・21bが別々の位置に設置されている場合で、下側のダイ21b以降、乾燥炉40の出口まで塗工膜3の形成範囲では搬送ローラを設けることができない。ただし、集電体1の両側辺の非塗工領域5では搬送ローラを設けることができる。
【0067】
そして、集電体1の両側からレーザー光Lによる穴形成処理が出来るように乾燥炉40にはその両側壁40aに透過窓42が設けられている。
なお、集電体1の両面に塗工膜3を形成する場合でも、穴3hが貫通孔3h2である場合は、一方の側壁40aだけに透過窓42を設け、一側面からのレーザー光Lによる穴形成処理で足る。
【0068】
(実施形態2:
図4)
この場合は穴形成処理が乾燥炉40の入口に入る前に行われる。この時点の塗工膜3は全体が未乾燥状態である。この状態で塗工膜3にレーザー光Lを当てると、短時間照射の場合は塗工膜3が柔らかいので窪み(止まり穴3h1)が発生することになる。
長時間照射の場合は、穴3hの周囲が熱により薄皮状に乾燥し、穴3hの形状を保つ。それ以外は実施形態1と同じなので、実施形態1の説明を援用する。
【0069】
本発明では上記のように未乾燥又は半乾燥の塗工膜3にレーザー光Lにて穴形成処理を行うので、以後の乾燥工程で穴3hからの溶媒(水分や溶剤)の蒸発が促進され、乾燥時間が短くなり、ひいては乾燥炉40の全長を大幅に短くすることができる。
【符号の説明】
【0070】
g: ギャップ、H: 乾燥用熱源、L: レーザー光、La~Ln: 分岐レーザー光、1: 金属箔集電体、1a: 金属箔ロール、2: 塗工液、3: 塗工膜、3b: 始端、3c: 側縁部分、3h: 穴、3h1: 止まり穴、: 貫通穴3h2、3z: 硬化塗工膜、5: 非塗工領域、10: (二次電池用)原反、20: 塗工装置、21(21a・21b): ダイ、22: 液溜め部、23: ノズル口、25: 塗工液供給部、30: 集電体送出部、34: バックアップローラ、36(36a~36n): 搬送ローラ、38: 回収部、40: 乾燥炉、40a: 側壁、42: 透過窓、44: 耐熱ガラス、46:、ドライヤ、48: 通過路、50: レーザー照射装置、51: レーザー出射部、52: レーザー発生部、56: 全反射ミラー、54:レーザートランスファ部材、58:分岐レンズ、59:ガルバノ駆動部、59m・59n:駆動モータ、59a・59b:ガルバノミラー、60:画像処理装置、62:CCDカメラ、65:外部モニタ、68:入力装置、70:吸引ノズル、:吸引口71、76:送風ノズル、77:吹出口、80:制御部、81:CPU、82:ROM、83:RAM
【手続補正書】
【提出日】2023-03-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0047
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0047】
ここで使用されるレーザー光Lは、基本波である1.064μmのYAGレーザーやYVO4レーザー、第2高調波(SHG)の波長変換素子を通して得られる532nmのグリーンレーザー光、第3高調波(THG)の波長変換素子を通して得られる355nmのUVレーザー光、或いはそれ以上の短波長のレーザー光などが使われる。
レーザー光Lは波長が短くなることで集光性が上がり単位当たりエネルギー効率が高くなるので微細加工に適しており、精密部品や半導体関連産業等で使われる。
レーザー光Lは、例えば、連続発振,パルス発振,Qスイッチパルス発振,シングルモードなどの手法により出力される。第2高調波や第3高調波は金属箔に対して吸収率が高いので、後述する穴加工時に第2高調波や第3高調波が金属箔に達すると、瞬間的に加熱されて金属箔が瞬時に高温になり、金属箔である集電体1に塗着された塗工膜3と集電体1との接着力が高まる。換言すれば、塗工膜3の剥離強度が向上する。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0048
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0048】
1.064μmのYAGレーザー光やYVO4レーザー光で穴3hを穿つ場合は、通常、パルス発振モードで行われる。
グリーンレーザー光(第2高調波)やUVレーザー光(第3高調波)などを使用すれば、被照射物は昇華して、直接、気体となる。グリーンレーザー光やUVレーザー光などを使用すれば、塗工膜3を形成する素材の熱変質が抑制されて好適である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正書】
【提出日】2023-06-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に搬送される長尺帯状の金属箔集電体1に二次電池用活物質合剤の塗工液2を間欠的又は連続的に塗工して前記集電体1上に塗工膜3を形成し、続いて、前記金属箔集電体1を乾燥工程に送り、該乾燥工程で前記金属箔集電体1を加熱して前記塗工膜3を乾燥する塗工膜の乾燥方法において、
前記塗工膜3の前記乾燥工程中にレーザー光Lを塗工膜3に照射して塗工膜3に穴3hを設けることを特徴とする塗工膜の乾燥方法。
【請求項2】
前記穴3hは、塗工膜3表面から金属箔集電体1に達しない止まり穴3h1、又は塗工膜3と金属箔集電体1とを貫通した貫通穴3h2であることを特徴とする請求項1に記載の塗工膜の乾燥方法。
【請求項3】
前記レーザー光Lの照射範囲の大気を吸引してレーザー照射によって塗工膜3から発生した微細塵埃を吸引除去することを特徴とする請求項1又は2に記載の塗工膜の乾燥方法。
【請求項4】
長尺の金属箔で構成された集電体1を一方向に送り出す集電体送出部30と、
送り出された前記集電体1の表面に二次電池用活物質合剤である塗工液2を塗着して前記集電体1の表面に塗工膜3を形成するダイ21と、
前記ダイ21の下流に設けられ、一方向に搬送されている前記集電体1が通過する通過路46と乾燥用熱源Hとを具備し、前記塗工膜3を乾燥させる乾燥炉40と、
前記乾燥炉40から送り出され、乾燥した塗工膜3が塗着された集電体1を回収する回収部38と、
前記乾燥炉40中に半乾燥状態となった前記塗工膜3にレーザー光Lを照射して前記塗工膜3の表面から前記集電体1に至らない止まり穴3h1を設け、又は前記塗工膜3と前記集電体1とを貫通する貫通穴3h2を設けるレーザー照射装置50とで構成された塗工装置20であって、
前記レーザー照射装置50は、前記乾燥炉40の側方に設けられ、
前記乾燥炉40の側壁40aには前記レーザー光Lが通過する透過窓42が設けられていることを特徴とする塗工装置。
【請求項5】
前記レーザー光Lの照射範囲をカバーする吸引口71を持つ吸引ノズル70が更に設置されていることを特徴とする請求項4に記載の塗工装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
請求項1に記載した発明は、厚塗り塗工膜3の乾燥方法である。
一方向に搬送される長尺帯状の金属箔集電体1に二次電池用活物質合剤の塗工液2を間欠的又は連続的に塗工して前記集電体1上に塗工膜3を形成し、
続いて、前記金属箔集電体1を乾燥工程に送り、該乾燥工程で前記金属箔集電体1を加熱して前記塗工膜3を乾燥する塗工膜の乾燥方法において、
前記塗工膜3の前記乾燥工程中にレーザー光Lを塗工膜3に照射して塗工膜3に穴3hを設けることを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
請求項5に記載した発明(吸引処理)は、請求項4に記載の塗工装置20において、
前記レーザー光Lの照射範囲をカバーする吸引口71を持つ吸引ノズル70が更に設置されていることを特徴とする。
【手続補正書】
【提出日】2023-09-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に搬送される長尺帯状の金属箔集電体1に二次電池用活物質合剤の塗工液2を間欠的又は連続的に塗工して前記集電体1上に塗工膜3を形成し、続いて、前記金属箔集電体1を乾燥工程に送り、該乾燥工程で前記金属箔集電体1を加熱して前記塗工膜3を乾燥する塗工膜の乾燥方法において、
前記塗工膜3の前記乾燥工程中における、表面が乾燥した状態であって内部がペースト状態に保たれた半乾燥状態の前記塗工膜3に、レーザー光Lを前記塗工膜3の表面側から照射して塗工膜3に穴3hを設けることを特徴とする塗工膜の乾燥方法。
【請求項2】
前記穴3hは、塗工膜3表面から金属箔集電体1に達しない止まり穴3h1、又は塗工膜3と金属箔集電体1とを貫通した貫通穴3h2であることを特徴とする請求項1に記載の塗工膜の乾燥方法。
【請求項3】
前記レーザー光Lの照射範囲の大気を吸引してレーザー照射によって塗工膜3から発生した微細塵埃を吸引除去することを特徴とする請求項1又は2に記載の塗工膜の乾燥方法。
【請求項4】
長尺の金属箔で構成された集電体1を一方向に送り出す集電体送出部30と、
送り出された前記集電体1の表面に二次電池用活物質合剤である塗工液2を塗着して前記集電体1の表面に塗工膜3を形成するダイ21と、
前記ダイ21の下流に設けられ、一方向に搬送されている前記集電体1が通過する通過路46と乾燥用熱源Hとを具備し、前記塗工膜3を乾燥させる乾燥炉40と、
前記乾燥炉40から送り出され、乾燥した塗工膜3が塗着された集電体1を回収する回収部38と、
前記乾燥炉40中に半乾燥状態となった前記塗工膜3にレーザー光Lを照射して前記塗工膜3の表面から前記集電体1に至らない止まり穴3h1を設け、又は前記塗工膜3と前記集電体1とを貫通する貫通穴3h2を設けるレーザー照射装置50とで構成された塗工装置20であって、
前記レーザー照射装置50は、前記乾燥炉40の側方に設けられ、
前記乾燥炉40の側壁40aには前記レーザー光Lが通過する透過窓42が設けられていることを特徴とする塗工装置。
【請求項5】
前記レーザー光Lの照射範囲をカバーする吸引口71を持つ吸引ノズル70が更に設置されていることを特徴とする請求項4に記載の塗工装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
請求項1に記載した発明は、厚塗り塗工膜3の乾燥方法である。
一方向に搬送される長尺帯状の金属箔集電体1に二次電池用活物質合剤の塗工液2を間欠的又は連続的に塗工して前記集電体1上に塗工膜3を形成し、
続いて、前記金属箔集電体1を乾燥工程に送り、該乾燥工程で前記金属箔集電体1を加熱して前記塗工膜3を乾燥する塗工膜の乾燥方法において、
前記塗工膜3の前記乾燥工程中における、表面が乾燥した状態であって内部がペースト状態に保たれた半乾燥状態の前記塗工膜3に、レーザー光Lを前記塗工膜3の表面側から照射して塗工膜3に穴3hを設けることを特徴とする。