(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108658
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】無線送電方法、及び、無線送電装置
(51)【国際特許分類】
H02J 50/70 20160101AFI20240805BHJP
H02J 50/20 20160101ALI20240805BHJP
H04B 5/48 20240101ALI20240805BHJP
【FI】
H02J50/70
H02J50/20
H04B5/02
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013126
(22)【出願日】2023-01-31
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、SIP第2期事業「分散アンテナ協調制御方式」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】313005318
【氏名又は名称】パナソニックコネクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 勇気
(72)【発明者】
【氏名】小柳 芳雄
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩
(72)【発明者】
【氏名】濱政 光
【テーマコード(参考)】
5K012
【Fターム(参考)】
5K012AB05
5K012AC08
5K012AC10
5K012AE01
5K012AE12
5K012AE13
(57)【要約】
【課題】無線送電に関し、無線通信との共存と、給電効率の向上とを実現する。
【解決手段】空間に電波を送出することにより電力を伝送する無線送電方法において、空間において他の電波が伝送されていない状態が少なくとも第1の期間継続した場合、第2の期間待機した後、電波を空間に送出する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間に電波を送出することにより電力を伝送する無線送電方法であって、
前記空間において他の電波が伝送されていない状態が少なくとも第1の期間継続した場合、第2の期間待機した後、前記電波を前記空間に送出する、
無線送電方法。
【請求項2】
前記電波は、第3の期間送出される、
請求項1に記載の無線送電方法。
【請求項3】
前記第1の期間、前記第2の期間、及び、前記第3の期間は、予め定められた期間である、
請求項2に記載の無線送電方法。
【請求項4】
前記第1の期間は、前記第2の期間よりも長い、
請求項3記載の無線送電方法。
【請求項5】
前記第3の期間は、前記第1の期間又は前記第2の期間よりも長い、
請求項3に記載の無線送電方法。
【請求項6】
前記電波と、前記他の電波とは、共通の周波数帯のものである、
請求項1から5のいずれか1項に記載の無線送電方法。
【請求項7】
前記周波数帯は、920MHz帯、2.4GHz帯、又は、5.7GHz帯である、
請求項6に記載の無線送電方法。
【請求項8】
空間に電波を送出することにより電力を伝送する無線送電装置であって、
前記空間において他の電波が伝送されているか否かを監視する監視部と、
前記他の電波が伝送されていない状態が少なくとも第1の期間継続した場合、第2の期間待機した後、前記電波の送出を決定する制御部と、
前記制御部の決定に基づいて、所定のアンテナから前記電波を送出する送信部と、を備える、
無線送電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線送電方法、及び、無線送電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1に記載されるように、電波を用いて電力を伝送する空間伝送型ワイヤレス電力伝送システムが検討されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】情報通信審議会 情報通信技術分科会 陸上無線通信委員会 ~空間伝送型ワイヤレス電力伝送システム作業班~ 報告書(案)概要、[online]、令和2年5月、[令和5年1月13日検索]、インターネット<URL:https://www.soumu.go.jp/main_content/000694293.pdf>
【非特許文献2】ARIB STD-T107「特定小電力無線局920MHz帯移動体識別用無線設備」
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電波を用いて電力を伝送する無線送電は、データを送信又は受信する無線通信およびRFID(Radio Frequency IDentification)等の既存システムとの共存と、給電効率の向上とが求められるが、従来の検討では不十分である。
【0006】
本開示の目的は、無線送電に関し、無線通信との共存と、給電効率の向上とを実現する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る無線送電方法は、空間に電波を送出することにより電力を伝送する無線送電方法であって、前記空間において他の電波が伝送されていない状態が少なくとも第1の期間継続した場合、第2の期間待機した後、前記電波を前記空間に送出する。
【0008】
本開示の一態様に係る無線送電装置は、空間に電波を送出することにより電力を伝送する無線送電装置であって、前記空間において他の電波が伝送されているか否かを監視する監視部と、前記他の電波が伝送されていない状態が少なくとも第1の期間継続した場合、第2の期間待機した後、前記電波の送出を決定する制御部と、前記制御部の決定に基づいて、所定のアンテナから前記電波を送出する送信部と、を備える。
【0009】
なお、これらの包括的又は具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム又は記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、無線送電に関し、無線通信との共存と、給電効率の向上とを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施の形態に係る無線給電システムの一例を示すブロック図
【
図3】本実施の形態に係る無線送電装置の構成例を示すブロック図
【
図4】本実施の形態に係る無線送電方法に関する状態遷移を説明するための図
【
図5】本実施の形態に係る無線送電方法の一例を示すフローチャート
【
図6】従来のキャリアセンスを行う無線給電システムの動作の第1例を示す図
【
図7】本実施の形態の無線送電方法を行う無線給電システムの動作の第1例を示す図
【
図8】従来のキャリアセンスを行う無線給電システムの動作の第2例を示す図
【
図9】本実施の形態の無線送電方法を行う無線給電システムの動作の第2例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を適宜参照して、本開示の実施の形態について、詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、すでによく知られた事項の詳細説明及び実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の記載の主題を限定することは意図されていない。
【0013】
(本実施の形態)
<無線給電システム>
図1は、本実施の形態に係る無線給電システム1の一例を示すブロック図である。
【0014】
無線給電システム1は、電波を用いて電力を伝送するシステムであり、
図1に示すように、少なくとも1つの無線送電装置10と、少なくとも1つの無線受電装置20とを含む。
【0015】
無線送電装置10は、無線受電装置20に電力を伝送するための電波を送信する。無線受電装置20は、無線送電装置10から送信された電波を受信することにより電力を得る。以下、無線送電装置10が電力を伝送するための電波を送信することを無線送電と称し、無線受電装置20が無線送電装置10から送信された電波を受信することを無線受電と称する場合がある。
【0016】
無線送電装置10は、無線送電機能のみを有する装置であってよく、RFID質問器のような通信機能を有する装置であってもよい。無線受電装置20は、センサ端末、表示端末、アクチュエータ、充電器、受電器、照明、スピーカ、およびそれらを統合したものであってよい。
【0017】
電力伝送用の電波は、マイクロ波であってよい。また、当該電力伝送用の電波の周波数帯(キャリア)は、920MHz帯、2.4GHz帯、又は、5.7GHz帯であってよい。無線送電装置10と無線受電装置20とは、共通の周波数帯を使用するように設定されてよい。
【0018】
マイクロ波を用いて無線給電を行う場合、無線給電システム1の近傍に存在する無線通信システムへの影響を軽減するために、キャリアセンスを行って干渉を回避することが考えられる。
図2は、従来のキャリアセンスを説明するための図である。なお、
図2において、横軸tは経過時間を示す。
【0019】
従来の無線給電方法は、
図2に示すように、所定期間待機した後、無線送電を行うチャネルにおいて他の電波が伝送されているか否かを確認するキャリアセンス(CS)を所定期間実行し、そのキャリアセンスにおいて他の電波が伝送されていないことを確認した場合、無線送電を開始する(非特許文献2参照)。
【0020】
しかし、従来の無線給電方法は、複数の無線送電装置が近傍に存在する場合、ある無線送電装置が無線送電を行っている間、他の無線送電装置はキャリアセンスを継続するため、無線送電を行うことができない。すなわち、データを送信又は受信する無線通信と異なり、エネルギーを伝送する無線給電システム同士は、複数波の干渉によるデメリットを有しないにも関わらず、従来の無線給電方法は、ある無線送電装置が無線送電を行っている間、他の無線送電装置が無線送電を行わないため、無線給電システム全体における給電効率の低下を招く。
【0021】
また、無線給電はエネルギーを伝送するため、無線通信と比較して、長時間チャネルを使用する傾向にある。したがって、複数の無線送電装置が存在する場合、ある無線送電装置が無線送電を終えた後、他の無線送電装置が遅延なく無線送電を行うこととなり、無線通信システムがチャネルを使用できる期間の比率が極めて小さくなってしまう。これを回避するために、無線送電装置のキャリアセンスの期間を、無線通信システムのキャリアセンスの期間よりも長くすることが考えられるが、その場合、無線送電装置がチャネルを使用できる確率が低くなり、給電効率の低下を招く。
【0022】
特許文献1に示されている従来の技術においては、自システムが使用しようとする周波数以外の同期信号を用いて、複数のRFIDリーダを同期動作する。しかし、当該技術においては同じ周波数帯を利用する未知の無線通信システムと連携した動作をする事ができず、互いに干渉を与えることとなる。さらに、自システムが無線通信に使用する周波数の他に同期信号のための周波数を必要とするため、占有する周波数帯域幅が増加するという問題がある。
【0023】
そこで、本実施の形態では、無線通信システムへの影響も考慮しつつ、単一の周波数を用いて給電効率の向上を実現するための技術について説明する。
【0024】
<無線送電装置の構成>
図3は、本実施の形態に係る無線送電装置10の構成例を示すブロック図である。
【0025】
図3に示すように、無線送電装置10は、制御部11と、監視部12と、送信部13と、アンテナ14とを備える。
【0026】
制御部11は、無線送電装置10が有する機能を実現するための処理を行う。当該処理の詳細については後述する(
図5参照)。なお、制御部11は、プロセッサ、コントローラ、CPU(Central Processing Unit)、LSI(Large Scale Integration)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、又は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等によって構成されてよい。また、制御部11は、データを記憶可能なメモリを含んでもよい。また、無線送電装置10はSDR(Software Defined Radio)等によって構成されてもよく、その場合、制御部11はソフトウェアによって実装されてもよい。
【0027】
監視部12は、無線送電を行おうとするチャネルの状態を監視する。例えば、監視部12は、チャネルにおいて他の電波が伝送されているか否かを監視し、その監視結果を示すチャネル状態情報を生成する。監視するチャネルには、無線送電を行おうとするチャネルのほか、無線送電が干渉を与える別のチャネルが含まれてよい。監視部12は、生成したチャネル状態情報を制御部11に提供してよい。他の電波は、他の無線送電装置10が送出する無線送電であってもよいし、無線通信システムが送出する無線通信であってもよいし、それ以外の電波であってもよい。
【0028】
920MHz帯のキャリアを使用する無線システムの例として、デジタルMCA中継局及び移動局、高度MCA移動局、携帯電話(LTE)基地局及び移動局、RFID、電波天文等が挙げられる。RFIDの例として、構内無線(パッシブタグ1W)、特定小電力(パッシブタグ250mW)、テレメータ用、テレコントロール用及びデータ伝送用無線設備(アクティブタグ)等が挙げられる。
【0029】
2.4GHz帯のキャリアを使用する無線システムの例として、無線LANシステム、移動体識別(構内無線局又は特定小電力無線局)、無人移動体高速伝送システム(ロボット無線システム)、移動体衛星無線システム(N-STAR)、移動体衛星無線システム(グローバルスター)、放送事業者用無線局(FPU)、電波天文、アマチュア無線等が挙げられる。
【0030】
5.7GHz帯のキャリアを使用する無線システムの例として、無線LANシステム、DSRC(狭域通信)システム、放送業務用STL/TTLシステム、放送事業用FPU/TSLシステム、無人移動体高速伝送システム(ロボット無線システム)、気象レーダー、電波天文、アマチュア無線等が挙げられる。
【0031】
送信部13は、制御部11の決定又は指示に基づいて、アンテナ14から無線送電を行う。
【0032】
アンテナ14は、無線送電に係る電波を空間に送出する。
図3では、アンテナ14は1つであるが、アンテナ14は複数であってもよい。また、アンテナ14が複数の場合、送信部13は、複数のアンテナ14を使用して、ビームフォーミング等による無線送電を行ってもよい。
【0033】
なお、
図2に示す無線送電装置10は、無線送電とキャリアの状態監視とを1つのアンテナ14で行う構成であるが、無線送電装置10は、無線送電用のアンテナ14と、チャネルの状態監視用のアンテナとを別々に備える構成であってもよい。
【0034】
また、監視部12及び/又は送信部13の機能の少なくとも一部は、制御部11に含まれてもよく、監視部12の機能の少なくとも一部は、送信部13に含まれてもよい。
【0035】
<無線送電方法>
図4は、本実施の形態に係る無線送電方法に関する状態遷移を説明するための図である。
図4において横軸tは時間経過を示す。
図5は、本実施の形態に係る無線送電方法の一例を示すフローチャートである。次に、
図4及び
図5を参照して、無線送電装置10が行う無線送電方法に関する処理について説明する。
【0036】
制御部11は、監視タイマTmを初期化(Tm=0)する(S101)。監視タイマTmの値は、時間経過とともに増加する。
【0037】
制御部11は、監視部12からチャネル状態情報を取得し、無線送電を行うチャネルがクリアされているか否かを判定する(S102)。チャネルがクリアされているとは、チャネルにおいて他の電波が伝送されていない状態であることを示し、チャネルがクリアされていないとは、チャネルにおいて他の電波が伝送されている状態であることを示す。
【0038】
チャネルがクリアされていないと判定した場合(S102:NO)、制御部11は、処理をステップS101に戻す。すなわち、チャネルがクリアされるまで、監視タイマTmは開始されず、監視タイマTmの値は増加しない。
【0039】
チャネルがクリアされていると判定した場合(S102:YES)、制御部11は、監視タイマTmがチャネルクリア期間Tcs以上(Tm≧Tcs)であるか否かを判定する(S103)。
【0040】
監視タイマTmがチャネルクリア期間Tcs未満(Tm<Tcs)である場合(S103:NO)、制御部11は、処理をステップS102に戻す。
【0041】
監視タイマTmがチャネルクリア期間Tcs以上(Tm≧Tcs)である場合(S103:YES)、制御部11は、次のステップS104の処理に進む。すなわち、制御部11は、チャネルがクリアされている状態がチャネルクリア期間Tcs以上継続するまで、次のステップS104に処理を進めない。また、制御部11は、チャネルがクリアされている状態がチャネルクリア期間Tcs以上継続するまでに、当該チャネルにおいて他の電波の伝送を検出した場合(つまりステップS102がNOとなった場合)、処理をステップS101に戻し、監視タイマTmを初期化する。
【0042】
ステップS104として、制御部11は、待機期間Twt、無線送電を開始せずに、待機する(S104)。制御部11は、この待機期間Twtでは、監視部12からチャネル状態情報を取得しなくてもよい。すなわち、制御部11は、この待機期間Twtでは、チャネルがクリアされているか否かの判定を行わなくてもよい。
【0043】
制御部11は、待機期間Twt、待機した後、送信部13に対して、無線送電期間Ttx、無線送電を行うよう指示する(S105)。送信部13は、当該指示を受領し、無線送電期間Ttx、アンテナ14から無線送電を行う。そして、処理は、ステップS101に戻る。無線送電を行っている間、制御部11は、監視部12からチャネルの状態情報を取得しなくてもよい。
【0044】
<動作例>
次に、各無線送電装置10が上述した
図5に示す処理を行った場合の動作例について説明する。
【0045】
図6及び
図7は、10台の無線送電装置を低密度で配置した無線給電システムにおける動作例を説明するための図である。
図6は、従来のキャリアセンスを行う無線給電システムの動作例を示す。
図7は、本実施の形態の無線送電方法を行う無線給電システム1の動作例を示す。低密度は、例えば、10000平方メートルの領域内に10台の無線送電装置を分散配置した程度の密度であってよい。
【0046】
図6及び
図7において、上段グラフ101、103は、各無線送電装置が無線送電を行っている期間を示し、縦軸の数字は無線送電装置の識別番号を示し、横軸は経過時間(ms)を示す。上段グラフ101、103の各グラフ線は、識別番号の無線送電装置が無線送電を行っているか否かを示し、グラフ線が上方にある期間は無線送電が行われている期間を示し、グラフ線が下方にある期間は無線送電が行われてない期間を示す。
【0047】
図6及び
図7において、下段グラフ102、104は、各経過時間において無線送電を行っている無線送電装置の数を示し、縦軸は無線送電を行っている無線送電装置の数を示し、横軸は経過時間(ms)を示す。
【0048】
従来のキャリアセンスを行う無線給電システムでは、
図6の上段グラフ101に示すように、比較的距離が離れている無線送電装置同士は同時に無線送電を行うことができるものの、比較的距離が近い無線送電装置同士はキャリアセンスにより一方しか無線送電を行うことができない。そのため、
図6の下段グラフ102に示すように、常時、2~4台の無線送電装置が無線送電を行い、チャネルに空き時間が生じない。よって、無線通信システムが無線通信を行う余地がない。
【0049】
これに対して、本実施の形態の無線送電方法を行う無線給電システム1では、各無線送電装置10が
図5に示す処理を行うことにより、
図7の上段グラフ103に示すように、各無線送電装置10の(チャネルクリア期間Tcs+待機期間Twt)のタイミングが同期し、かつ、無線送電のタイミングも同期するようになる。そのため、
図7の上段グラフ103及び下段グラフ104に示すように、同期した(チャネルクリア時間Tcs+待機期間Twt)において、チャネルに空き時間が生じる。なお、(チャネルクリア期間Tcs+待機期間Twt)は、非送電期間と称されてもよい。よって、無線通信システムは、このチャネルの空き時間を利用して、無線通信を行うことができる。
【0050】
さらに、
図7の下段グラフ104に示すように、無線送電期間Ttxにおいて、10台の無線送電装置10が同時に無線送電を行うようになる。したがって、従来のキャリアセンスを行う無線給電システムと比較して、給電効率が向上する。
【0051】
図8及び
図9は、10台の無線送電装置を高密度で配置した無線給電システム1の動作例を説明するための図である。
図8は、従来のキャリアセンスを行う無線給電システムの動作例を示す。
図9は、本実施の形態の無線送電方法を行う無線給電システム1の動作例を示す。高密度は、例えば、100平方メートルの領域内に10台の無線送電装置を分散配置した程度の密度であってよい。
【0052】
図8及び
図9に示す上段グラフ105、107及び下段グラフ106、108の見方は、
図6及び
図7に示す上段グラフ101、103及び下段グラフ102、104の見方と同じである。よって、ここではグラフの説明を省略する。
【0053】
従来のキャリアセンスを行う無線給電システムでは、
図8の上段グラフ105に示すように、ある特定の無線送電装置が無線送電を行い、他の無線送電装置はキャリアセンスにより無線送電を行わなくなる。そのため、
図8の下段グラフ106に示すように、常時、約1台の無線送電装置が無線送電を行い、キャリアに空き時間が生じない。よって、無線通信システムが無線通信を行う余地がない。
【0054】
これに対して、本実施の形態の無線送電方法を行う無線給電システム1では、各無線送電装置10が
図5に示す処理を行うことにより、
図9の上段グラフ107に示すように、各無線送電装置10の(チャネルクリア期間Tcs+待機期間Twt)(つまり非送電期間)が同期し、かつ、無線送電のタイミングも同期するようになる。そのため、
図9の上段グラフ107及び下段グラフ108に示すように、同期した待機期間Twtにおいて、チャネルに空き時間が生じる。よって、無線通信システムは、このチャネルの空き時間を利用して、無線通信を行うことができる。
【0055】
さらに、
図9の下段グラフ108に示すように、無線送電期間Ttxにおいて、10台の無線送電装置10が同時に無線送電を行うようになる。したがって、従来のキャリアセンスを行う無線給電システムと比較して、給電効率が向上する。
【0056】
また、
図6の上段グラフ101より、相対的に離隔距離の大きい無線送電装置同士は互いの受信電力値がキャリアセンスの閾値を下回ることから、互いに存在を認識することがなく、同時に無線送電を行う可能性がある。これはCSMA/CAにおける隠れ端末問題と同様に電波干渉の原因となる。一方、
図7の上段グラフ103においては、同様に互いに直接認識できない無線送電装置10が存在するものの、中継を繰り返すことで自律的に各無線送電装置10が同期して動作することが可能となっている。
【0057】
さらに、
図7の上段グラフ103と
図9の上段グラフ107との対比が示すように、無線送電装置10が高密度に配置された無線給電システム1では、無線送電装置10が低密度に配置された無線給電システム1と比較して、より短時間で無線送電のタイミングが同期する。よって、給電効率がさらに向上する。
【0058】
<無線送電のタイミングが同期する理由>
図4及び
図5に示すように、各無線送電装置10は、他の電波が伝送されていない期間がチャネルクリア期間Tcs継続した場合、待機期間Twt待機し、無線送電を開始する。待機期間Twtを設ける理由は、各無線送電装置10の監視タイマの精度のばらつきを吸収し、2台以上の無線送電装置10が存在する場合の同期動作を確実にするためである。以下、具体例を挙げて説明する。
【0059】
もし待機期間Twtを設けない場合、チャネルクリア期間Tcs継続後、直ちに無線送電が開始される。この場合において、もし第1の無線送電装置の監視タイマが第2の無線送電装置の監視タイマよりも少しカウントが速いという精度のばらつきがあるとすると、第1の無線送電装置が少し先に無線送電を開始し、第2の無線送電装置は、チャネルクリア監視中にその第1の無線送電装置が送出した無線送電を検出し、無線送電を開始できなくなる。そこで、本実施の形態では、待機期間Twtを設けることにより、このような問題が発生することを回避している。これにより、
図7又は
図9のグラフに示すように、各無線送電装置10の送信開始タイミングが自動的に同期すると共に当該待機期間Twtによって各無線送電装置10の監視タイマの精度のばらつきが吸収され、その結果、各無線送電装置10の無線送電期間Ttxを同期させることができる。
【0060】
チャネルクリア期間Tcsは、予め定められた期間であってよい。チャネルクリア期間Tcsは、例えば、500ms以上であってよい。チャネルクリア期間Tcsは、第1の期間と読み替えられてもよい。待機期間Twtは、予め定められた期間であってよい。待機期間Twtは、例えば、0msより大きくかつ50ms以下であってよい。待機期間Twtは、第2の期間と読み替えられてもよい。無線送電期間Ttxは、予め定められた期間であってよい。無線送電期間Ttxは、例えば、2000ms以上かつ2500ms以下であってよい。無線送電期間Ttxは、第3の期間と読み替えられてもよい。各無線送電装置10には、上記した予め定められたチャネルクリア期間Tcs、待機期間Twt、及び、無線送電期間Ttxが設定されてよい。これにより、複数の無線送電装置10に共通のチャネルクリア期間Tcs、待機期間Twt及び無線送電期間Ttxが設定されるので、
図7又は
図9に示すように、複数の無線送電装置10の待機期間Twt及び無線送電期間Ttxが同期するようになる。
【0061】
チャネルクリア期間Tcsは、待機期間Twtよりも長くてよい。これにより、他の無線通信の存在を検出する確率が向上する。
【0062】
無線送電期間Ttxは、チャネルクリア期間Tcs又は待機期間Twtよりも長くてよい。これにより、無線送電期間Ttxが十分に確保され、給電効率が向上する。
【0063】
無線受電装置20は、複数の無線送電装置10から無線送電を受電することにより、1台の無線送電装置10から無線送電を受電するよりも、大きな電力を得ることができる。本実施の形態に係る無線給電システム1は、
図7又は
図9に示すように、複数の無線送電装置10が共通の期間に無線送電を行うことができるので、無線受電装置20は、大きな電力を得ることができる。よって、給電効率が向上する。
【0064】
<無線給電システムの適用例>
本実施の形態に係る無線給電システム1は、920MHz帯を使用するにあたり、無線送電装置10の無線送電の出力を、特定小電力無線局に適合するように低減して運用する構成であってもよい。これにより、無線使用に係る免許の申請及び登録が不要となり、より多様なシーンで無線給電システム1を利用できるようになる。本実施の形態においてはチャネルの監視を行うことにより、例えば構内無線局等の優先的に利用されるべき無線通信システムに影響を与えることなく、無線給電システム1を運用可能となる。また、1台あたりの無線送電装置10の無線送電の出力を特定小電力無線局に適合するように低減しても、本実施の形態に係る無線給電システム1は、
図7又は
図8に示すように、複数の無線送電装置10が同期して無線送電を行うことができるので、無線受電装置20が十分な電力を得られるシステムを実現できる。
【0065】
例えば、本実施の形態に係る免許不要の無線給電システム1を物流トラックに適用してもよい。この場合、無線給電システム1は、トラックが運搬している荷物に取り付けられたセンサ端末等への給電と、トラックの車室内アクセサリへの給電と、トラックのタイヤ内に設置されたセンサ端末等への給電とを行ってよい。
【0066】
(本開示のまとめ)
以上の実施の形態の記載により、下記の技術が開示される。
【0067】
<技術1>
本開示に係る、空間に電波を送出することにより電力を伝送する無線送電方法は、前記空間において他の電波が伝送されていない状態が少なくとも第1の期間(例えばチャネルクリア期間Tcs)継続した場合、第2の期間(例えば待機期間Twt)待機した後、前記電波を前記空間に送出する。
これにより、
図7又は
図9に例示するように、第2の期間及び電波の送出タイミングが同期するので、データを送信又は受信する無線通信との共存と、給電効率の向上とを実現できる。
【0068】
<技術2>
技術1に記載の無線送電方法において、前記電波は、第3の期間(例えば無線送電期間Ttx)送出されてよい。
これにより、
図7又は
図9に例示するように、電波は、第3の期間にて同期して送出されるので、給電効率が向上する。
【0069】
<技術3>
技術2に記載の無線送電方法において、前記第1の期間、前記第2の期間は、及び、第3の期間は、予め定められた期間であってよい。
これにより、複数の無線送電装置10に共通の第1の期間、第2の期間及び第3の期間が設定され、
図7又は
図9に例示するように、第2の期間及び第3の期間を同期させることができる。
【0070】
<技術4>
技術1から3のいずれか1項に記載の無線送電方法において、前記第1の期間は、前記第2の期間よりも長くてよい。
これにより、第1の期間と第2の期間とのバランスを適切に設定できる。
【0071】
<技術5>
技術4に記載の無線送電方法において、前記第3の期間は、前記第1の期間又は前記第2の期間よりも長くてよい。
これにより、送電用の電波を送出する第3の期間が十分に確保されるので、給電効率が向上する。
【0072】
<技術6>
技術1から5のいずれか1項に記載の無線送電方法において、前記電波と、前記他の電波とは、共通の周波数帯のものであってよい。
これにより、送電用の電波と他の電波とが、共通の周波数帯において干渉することを防止できる。
【0073】
<技術7>
技術6に記載の無線送電方法において、前記周波数帯は、920MHz帯、2.4GHz帯、又は、5.7GHz帯であってよい。
これにより、送電用の電波と他の電波とが、共通の920MHz帯、2.4GHz帯、又は、5.7GHz帯において干渉することを防止できる。
【0074】
<技術8>
本開示に係る、空間に電波を送出することにより電力を伝送する無線送電装置10は、前記空間において他の電波が伝送されているか否かを監視する監視部12と、前記他の電波が伝送されていない状態が少なくとも第1の期間(例えばチャネルクリア期間Tcs)継続した場合、第2の期間(例えば待機期間Twt)待機した後、前記電波の送出を決定する制御部11と、前記制御部の決定に基づいて、所定のアンテナ14から前記電波を送出する送信部13と、を備える。
これにより、
図7又は
図9に例示するように、第2の期間及び電波の送出タイミングが同期するので、データを送信又は受信する無線通信との共存と、給電効率の向上とを実現できる。
【0075】
以上、添付図面を参照しながら実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に想到し得ることは明らかであり、それらについても本開示の技術的範囲に属すると了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本開示の技術は、電波を用いて電力を伝送する技術に有用である。
【符号の説明】
【0077】
1 無線給電システム
10 無線送電装置
11 制御部
12 監視部
13 送信部
14 アンテナ
20 無線受電装置
101、103、105、107 上段グラフ
102、104、106、108 下段グラフ
【手続補正書】
【提出日】2024-08-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間に電波を送出することにより電力を伝送する無線送電方法であって、
前記空間において他の電波が伝送されていないチャネルクリア状態を検出してから、少なくとも所定の第1の期間、前記チャネルクリア状態が継続した場合、第2の期間待機した後、前記電波を前記空間に送出する、
無線送電方法。
【請求項2】
前記電波は、第3の期間送出される、
請求項1に記載の無線送電方法。
【請求項3】
前記第1の期間、前記第2の期間、及び、前記第3の期間は、予め定められた期間である、
請求項2に記載の無線送電方法。
【請求項4】
前記第1の期間は、前記第2の期間よりも長い、
請求項3記載の無線送電方法。
【請求項5】
前記第3の期間は、前記第1の期間又は前記第2の期間よりも長い、
請求項3に記載の無線送電方法。
【請求項6】
前記電波と、前記他の電波とは、共通の周波数帯のものである、
請求項1から5のいずれか1項に記載の無線送電方法。
【請求項7】
前記周波数帯は、920MHz帯、2.4GHz帯、又は、5.7GHz帯である、
請求項6に記載の無線送電方法。
【請求項8】
空間に電波を送出することにより電力を伝送する無線送電装置であって、
前記空間において他の電波が伝送されているか否かを監視する監視部と、
前記他の電波が伝送されていないチャネルクリア状態を検出してから、少なくとも所定の第1の期間、前記チャネルクリア状態が継続した場合、第2の期間待機した後、前記電波の送出を決定する制御部と、
前記制御部の決定に基づいて、所定のアンテナから前記電波を送出する送信部と、を備える、
無線送電装置。