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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108660
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】揺動制御装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 3/52 20060101AFI20240805BHJP
【FI】
B65H3/52 330D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013130
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000136136
【氏名又は名称】株式会社PFU
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(72)【発明者】
【氏名】大塚 翔太
(72)【発明者】
【氏名】庭田 智行
【テーマコード(参考)】
3F343
【Fターム(参考)】
3F343FA02
3F343FB01
3F343FC03
3F343FC27
3F343GA01
3F343JD09
3F343JD33
3F343JD40
3F343KB05
3F343LA04
3F343LA15
3F343LC11
3F343LC19
3F343LD04
3F343MA04
3F343MA14
3F343MA31
3F343MA42
3F343MB04
3F343MC16
3F343MC25
(57)【要約】
【課題】揺動部材の揺動を適切に制御することが可能な揺動制御装置を提供する。
【解決手段】揺動制御装置は、揺動制御装置は、揺動軸を回転中心として揺動可能に設けられ、且つ、当接部を有する揺動部材と、揺動軸とは異なる位置に配置された回転支点軸を中心に、回転可能に設けられたねじりコイルばねと、を有し、ねじりコイルばねは、固定された第1アームと、当接部が当接しながら摺動するように配置された第2アームとを有し、揺動部材が所定方向に揺動した際に、当接部と第2アームの間に発生する摩擦力によって、揺動部材に所定方向とは反対方向の反力が付与される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
揺動軸を回転中心として揺動可能に設けられ、且つ、当接部を有する揺動部材と、
前記揺動軸とは異なる位置に配置された回転支点軸を中心に、回転可能に設けられたねじりコイルばねと、を有し、
前記ねじりコイルばねは、固定された第1アームと、前記当接部が当接しながら摺動するように配置された第2アームとを有し、
前記揺動部材が所定方向に揺動した際に、前記当接部と前記第2アームの間に発生する摩擦力によって、前記揺動部材に前記所定方向とは反対方向の反力が付与される、
ことを特徴とする揺動制御装置。
【請求項2】
媒体を給送する給送ローラと、
前記給送ローラと対向して配置された分離ローラと、をさらに有し、
前記揺動部材は、前記所定方向に揺動した際に前記分離ローラが前記給送ローラから離間するように、前記分離ローラを揺動可能に支持する、請求項1に記載の揺動制御装置。
【請求項3】
前記揺動部材の配置位置に基づいて、媒体が存在するか否かを判定する判定部をさらに有する、請求項1に記載の揺動制御装置。
【請求項4】
前記ねじりコイルばねと別個に設けられ、前記揺動部材に、前記所定方向とは反対方向の力を付与する弾性部材をさらに有する、請求項2に記載の揺動制御装置。
【請求項5】
前記揺動部材が前記所定方向に揺動したときに、前記分離ローラの表面に当接して前記分離ローラの回転を抑制させる板部材をさらに有する、請求項2に記載の揺動制御装置。
【請求項6】
前記分離ローラの回転方向を検出する検出部と、
前記分離ローラの回転方向の変化の頻度に基づいて、前記分離ローラの回転を停止させる制御部と、をさらに有する、請求項2に記載の揺動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揺動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、給送ローラ及び分離ローラを有し、載置台に載置された複数の媒体を分離しながら給送するスキャナ等の装置が利用されている。このような装置では、様々な厚さを有する媒体を給送できるように、分離ローラが揺動可能に支持されている場合がある。また、このような装置では、載置台に媒体が載置されているか否かを判定するために、媒体の有無に応じて揺動するアームが設けられている場合がある。これらの装置において、分離ローラ又はアーム等の部品が適切に揺動できるように制御できることが求められている。
【0003】
分離ローラシャフトに取り付けられた分離ローラを有するシート搬送装置が開示されている(特許文献1を参照)。このシート搬送装置は、分離ローラシャフトを保持するアーム部材と、アーム部材を搖動可能に支持する中間シャフトと、搖動の軸芯の方向に、アーム部材を付勢するコイルばねと、コイルばねによって付勢されるアーム部材の位置を規制する規制部材と、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-119554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
揺動可能に設けられた揺動部材を有する揺動制御装置では、揺動部材の揺動を適切に制御できることが望まれている。
【0006】
本発明の目的は、揺動部材の揺動を適切に制御することが可能な揺動制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る揺動制御装置は、揺動軸を回転中心として揺動可能に設けられ、且つ、当接部を有する揺動部材と、揺動軸とは異なる位置に配置された回転支点軸を中心に、回転可能に設けられたねじりコイルばねと、を有し、ねじりコイルばねは、固定された第1アームと、当接部が当接しながら摺動するように配置された第2アームとを有し、揺動部材が所定方向に揺動した際に、当接部と第2アームの間に発生する摩擦力によって、揺動部材に所定方向とは反対方向の反力が付与される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、揺動部材の揺動を適切に制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】媒体搬送装置100を示す斜視図である。
図2】媒体搬送装置100内部の搬送経路を説明するための図である。
図3】分離ローラ114について説明するための模式図である。
図4】分離ローラ114について説明するための模式図である。
図5】他の媒体搬送装置について説明するための模式図である。
図6】他の媒体搬送装置について説明するための模式図である。
図7】(A)、(B)は、媒体の給送について説明するための模式図である。
図8】(A)、(B)は、媒体の給送について説明するための模式図である。
図9】(A)は分離ローラ14の位置の遷移の一例を示すグラフであり、(B)は分離ローラ114の位置の遷移の一例を示すグラフである。
図10】第1媒体センサ111について説明するための模式図である。
図11】第1媒体センサ111について説明するための模式図である。
図12】媒体搬送装置100の概略構成を示すブロック図である。
図13】記憶装置150及び処理回路160の概略構成を示す図である。
図14】媒体読取処理の動作の例を示すフローチャートである。
図15】他の実施形態に係る処理回路260の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一側面に係る揺動制御装置について図を参照しつつ説明する。但し、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0011】
図1は、イメージスキャナとして構成された媒体搬送装置100を示す斜視図である。媒体搬送装置100は、揺動制御装置の一例である。媒体搬送装置100は、原稿である媒体を搬送し、撮像する。媒体は、用紙、厚紙又はカード等である。媒体搬送装置100は、ファクシミリ、複写機、プリンタ複合機(MFP、Multifunction Peripheral)等でもよい。なお、搬送される媒体は、原稿でなく印刷対象物等でもよく、媒体搬送装置100はプリンタ等でもよい。
【0012】
図1において矢印A1は略鉛直方向(高さ方向)を示し、矢印A2は媒体搬送方向を示し、矢印A3は媒体排出方向を示し、矢印A4は媒体搬送方向A2又は媒体排出方向A3と直交する幅方向を示す。以下では、上流とは媒体搬送方向A2又は媒体排出方向A3の上流のことをいい、下流とは媒体搬送方向A2又は媒体排出方向A3の下流のことをいう。
【0013】
媒体搬送装置100は、第1筐体101、第2筐体102、載置台103、排出台104、操作装置105及び表示装置106等を備える。
【0014】
第2筐体102は、第1筐体101の内側に配置され、媒体つまり時、又は、媒体搬送装置100内部の清掃時等に開閉可能なようにヒンジにより第1筐体101に回転可能に係合している。
【0015】
載置台103は、載置面103aを有し、搬送される媒体を載置面103a上に載置可能に第1筐体101に係合している。載置台103は、第1筐体101の媒体供給側の側面に、高さ方向A1に移動可能に設けられる。載置台103は、媒体を搬送していないときは媒体が容易に載置されるように下端の位置に配置され、媒体を搬送するときは最も上側に載置された媒体が、後述するピックローラと接触する位置まで上昇する。排出台104は、第2筐体102上に形成される。排出台104は、第1筐体101及び第2筐体102の排出口から排出された媒体を載置する。
【0016】
操作装置105は、ボタン等の入力デバイス及び入力デバイスから信号を取得するインタフェース回路を有し、利用者による入力操作を受け付け、利用者の入力操作に応じた操作信号を出力する。表示装置106は、液晶、有機EL(Electro-Luminescence)等を含むディスプレイ及びディスプレイに画像データを出力するインタフェース回路を有し、画像データをディスプレイに表示する。なお、表示装置106は、タッチパネル機能付きの液晶ディスプレイでもよい。その場合、操作装置105は、タッチパネルから入力信号を取得するインタフェース回路を有する。
【0017】
図2は、媒体搬送装置100内部の搬送経路を説明するための図である。
【0018】
媒体搬送装置100内部の搬送経路は、第1媒体センサ111、ピックローラ112、給送ローラ113、分離ローラ114、エンコーダ115、第1~第6搬送ローラ116a~f、第1~第6従動ローラ117a~f、第2媒体センサ118及び撮像装置119等を有している。
【0019】
なお、ピックローラ112、給送ローラ113、分離ローラ114、第1~第6搬送ローラ116a~f及び/又は第1~第6従動ローラ117a~fのそれぞれの数は一つに限定されず、複数でもよい。その場合、複数の給送ローラ113、分離ローラ114、第1~第6搬送ローラ116a~f及び/又は第1~第6従動ローラ117a~fは、それぞれ幅方向A4に間隔を空けて並べて配置される。
【0020】
第1筐体101の、第2筐体102と対向する面は媒体搬送路の第1ガイド101aを形成し、第2筐体102の、第1筐体101と対向する面は媒体搬送路の第2ガイド102aを形成する。第1ガイド101a及び第2ガイド102aは、いわゆるUターンパスを有する。
【0021】
ピックローラ112は、第2筐体102に設けられ、媒体搬送路と略同一の高さまで上昇した載置台103に載置された媒体と接触して、その媒体を下流側に向けて給送する。
【0022】
給送ローラ113は、第2筐体102内に、ピックローラ112より下流側に設けられ、載置台103に載置されてピックローラ112により給送された媒体をさらに下流側に向けて給送する。分離ローラ114は、第1筐体101内に、給送ローラ113と対向して配置される。分離ローラ114は、いわゆるブレーキローラ又はリタードローラであり、媒体給送方向の反対方向に回転可能に又は停止可能に設けられる。
【0023】
分離ローラ114と、分離ローラ114に駆動力を付与するモータとの間には、分離ローラ114にかかるトルクのリミット値を規定するトルクリミッタが設けられる。トルクリミッタのリミット値は、媒体が一つの場合はトルクリミッタを介した回転力が絶たれ、媒体が複数の場合はトルクリミッタを介した回転力が伝達されるような値に設定される。これにより、媒体が一つだけ搬送される場合、分離ローラ114は、モータからの駆動力に従って回転することなく、給送ローラ113に従って従動する。一方、媒体が複数搬送される場合、分離ローラ114は、媒体給送方向の反対方向A7に回転し、給送ローラ113と接触している媒体とそれ以外の媒体とを分離して、重送の発生を防止する。このとき、分離ローラ114の外周面は、媒体給送方向の反対方向A7に回転せずに停止した状態で、媒体給送方向の反対方向A7の力を媒体に印加してもよい。
【0024】
このように、給送ローラ113及び分離ローラ114は、媒体の分離動作を行い、媒体を分離して一枚ずつ給送する。給送ローラ113は、分離ローラ114に対して上側に配置されており、媒体搬送装置100は、いわゆる上取り方式により媒体を給送する。
【0025】
エンコーダ115は、分離ローラ114の回転軸であるシャフト114aに設けられ、分離ローラ114の回転及び回転方向を検出するためのセンサである。エンコーダ115は、多数のスリット(光の透過穴)が形成され且つ分離ローラ114の回転に従って回転するように設けられた円板と、その円板を挟んで対向するように設けられた発光器及び受光器とを有する。発光器は、LED(Light Emitting Diode)等であり、円板(受光器)に向けて光を照射する。受光器は、フォトダイオード等であり、発光器により照射された光を、円板を介して受光する。受光器は、所定期間内に、発光器と受光器の間にスリットが存在する状態から、スリットが存在せずに円板により遮られている状態へ変化した変化回数を検出する。受光器は、検出した変化回数に、相互に隣接する二つのスリットの間の距離だけ円板が回転した時に分離ローラ114の外周面が移動する距離を乗算することにより、分離ローラ114の外周面の移動距離を検出する。また、発光器と受光器の間には、出力信号(パルス)を2相にするための固定スリットが設けられており、受光器は、各相の出力信号の立ち上がりタイミングにより円板の回転方向を検出する。エンコーダ115は、検出した移動距離と、円板の回転方向(停止/正方向/逆方向)とを示す回転信号を生成して出力する。なお、エンコーダ115は、光学式エンコーダに限定されず、機械式エンコーダ、磁気式エンコーダ、電磁誘導式エンコーダ等の任意のエンコーダでもよい。
【0026】
第1~第6搬送ローラ116a~f及び第1~第6従動ローラ117a~fは、給送ローラ113及び分離ローラ114より下流側に、それぞれ相互に対向して設けられ、給送ローラ113及び分離ローラ114により給送された媒体を下流側に向けて搬送する。
【0027】
第2媒体センサ118は、媒体搬送方向A2において給送ローラ113及び分離ローラ114より下流側且つ撮像装置119より上流側に配置され、その配置位置に搬送された媒体を検出する。特に、第2媒体センサ118は、第2搬送ローラ116b及び第2従動ローラ117bより下流側に配置される。第2媒体センサ118は、媒体搬送路に対して一方の側に設けられた発光器及び受光器と、媒体搬送路を挟んで発光器及び受光器と対向する位置に設けられた導光管とを含む。発光器は、LED等であり、媒体搬送路に向けて光を照射する。一方、受光器は、フォトダイオード等であり、発光器により照射され、導光管により導かれた光を受光する。第2媒体センサ118は、受光器が受光する光の強度に基づいて、第2媒体センサ118の位置に媒体が存在する状態と存在しない状態とで信号値が変化する第2媒体信号を生成して出力する。
【0028】
なお、第2媒体センサ118において、導光管の代わりに、ミラー等の反射部材が使用されてもよい。また、第2媒体センサ118において、発光器及び受光器は、媒体搬送路を挟んで対向して設けられてもよい。また、第2媒体センサ118は、第1媒体センサ111と同様の接触検知センサにより、媒体の存在を検出してもよい。
【0029】
撮像装置119は、媒体搬送方向A2において、第1~第2搬送ローラ116a~bより下流側に配置され、第1~第2搬送ローラ116a~b及び第1~第2従動ローラ117a~bにより搬送された媒体を撮像する。撮像装置119は、媒体搬送路を挟んで相互に対向して配置された第1撮像装置119a及び第2撮像装置119bを含む。
【0030】
第1撮像装置119aは、主走査方向に直線状に配列されたCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)による撮像素子を有する等倍光学系タイプのCIS(Contact Image Sensor)によるラインセンサを有する。また、第1撮像装置119aは、撮像素子上に像を結ぶレンズと、撮像素子から出力された電気信号を増幅し、アナログ/デジタル(A/D)変換するA/D変換器とを有する。第1撮像装置119aは、搬送される媒体の表面を撮像して入力画像を生成し、出力する。
【0031】
同様に、第2撮像装置119bは、主走査方向に直線状に配列されたCMOSによる撮像素子を有する等倍光学系タイプのCISによるラインセンサを有する。また、第2撮像装置119bは、撮像素子上に像を結ぶレンズと、撮像素子から出力された電気信号を増幅し、アナログ/デジタル(A/D)変換するA/D変換器とを有する。第2撮像装置119bは、搬送される媒体の裏面を撮像して入力画像を生成し、出力する。
【0032】
なお、媒体搬送装置100は、第1撮像装置119a及び第2撮像装置119bを一方だけ配置し、媒体の片面だけを読み取ってもよい。また、CMOSによる撮像素子を備える等倍光学系タイプのCISによるラインセンサの代わりに、CCD(Charge Coupled Device)による撮像素子を備える等倍光学系タイプのCISによるラインセンサが利用されてもよい。また、CMOS又はCCDによる撮像素子を備える縮小光学系タイプのラインセンサが利用されてもよい。
【0033】
載置台103に載置された媒体は、ピックローラ112、給送ローラ113がそれぞれ媒体給送方向A5、A6に回転することによって、第1ガイド101aと第2ガイド102aの間を媒体搬送方向A2に向かって搬送される。媒体搬送装置100は、給送モードとして、媒体を分離しながら給送する分離モードと、媒体を分離せずに給送する非分離モードとを有する。給送モードは、利用者により操作装置105又は媒体搬送装置100と通信接続する情報処理装置を用いて設定される。給送モードが分離モードに設定されている場合、分離ローラ114は、媒体給送方向の反対方向A7に回転又は停止する。これにより、分離された媒体以外の媒体の給送が制限される(重送の防止)。一方、給送モードが非分離モードに設定されている場合、分離ローラ114は、媒体給送方向(矢印A7の反対方向)に回転する。
【0034】
媒体は、第1ガイド101aと第2ガイド102aによりガイドされながら、第1~第2搬送ローラ116a~bが矢印A8~9の方向に回転することによって、撮像装置119の撮像位置に送り込まれ、撮像装置119によって撮像される。さらに、媒体は、第3~第6搬送ローラ116c~fがそれぞれ矢印A10~13の方向に回転することによって排出台104上に排出される。
【0035】
図3及び図4は、分離ローラ114について説明するための模式図である。
【0036】
図3及び図4に示すように、媒体搬送装置100は、第1揺動部材121、第1ねじりコイルばね122、弾性部材123及び板部材124等をさらに有する。
【0037】
第1揺動部材121は、揺動部材の一例である。第1揺動部材121は、媒体搬送方向A2に延伸するように形成され、且つ、下流側の端部に設けられた揺動軸121aを中心として、高さ方向A1に揺動可能に設けられる。第1揺動部材121の上流側の端部には分離ローラ114のシャフト114aが取り付けられ、第1揺動部材121は分離ローラ114を揺動可能に支持する。
【0038】
第1揺動部材121は、高さ方向A1における下方向に揺動した際に、分離ローラ114が給送ローラ113から離間し、高さ方向A1における上方向に揺動した際に、分離ローラ114が給送ローラ113を押圧するように、分離ローラ114を支持する。高さ方向A1における下方向は、所定方向の一例であり、高さ方向A1における上方向は、所定方向の反対方向の一例である。以下では、図3に示すように、第1揺動部材121が、分離ローラ114が給送ローラ113と当接するように分離ローラ114を支持する位置を当接位置と称する場合がある。一方、図4に示すように、第1揺動部材121が、分離ローラ114が給送ローラ113から離間するように分離ローラ114を支持する位置を非当接位置と称する場合がある。第1揺動部材121は、第1ねじりコイルばね122と当接する当接部121bを有する。
【0039】
第1ねじりコイルばね122は、ねじりコイルばねの一例である。第1ねじりコイルばね122は、コイル中心軸である回転支点軸122aを中心に、回転可能に設けられる。第1ねじりコイルばね122は、第1アーム122b及び第2アーム122cを有する。第1アーム122bは、第1筐体101に固定される。第2アーム122cは、第1アーム122bから離間する方向(図3及び図4に示す例では高さ方向A1における上方向)に向けて弾性力を発生させるように、回転支点軸122aを中心に揺動可能に設けられる。第2アーム122cには、第1揺動部材121の当接部121bが当接され、第2アーム122cは、当接部121bを介して第1揺動部材121を、第1アーム122bから離間する方向(高さ方向A1における上方向)に向けて押圧する。第1揺動部材121は、第1ねじりコイルばね122からの弾性力により、分離ローラ114に、給送ローラ113側に向かう力を付与する。
【0040】
第1ねじりコイルばね122の回転支点軸122aは、第1揺動部材121の揺動軸121aと異なる位置に配置される。例えば、第1ねじりコイルばね122は、第1揺動部材121の揺動軸121aがコイル部の外側に配置されるように設けられる。これにより、図3及び図4に示すように、第1揺動部材121が揺動した際に、当接部121bが移動(揺動)する方向と、第2アーム122cが移動(揺動)する方向とが異なる。そのため、第1揺動部材121が揺動した際に、第2アーム122c上で当接部121bが当接する位置は変化する。即ち、第1揺動部材121が当接位置に配置された場合の回転支点軸122aと当接部121bの間の距離D1と、第1揺動部材121が非当接位置に配置された場合の回転支点軸122aと当接部121bの間の距離D2とは変化する。したがって、第1揺動部材121が揺動した場合、当接部121bは第2アーム122cに沿って摺動する。
【0041】
このように、第2アーム122cは、当接部121bが当接しながら摺動するように配置される。これにより、第1揺動部材121が高さ方向A1における下方向に揺動した際に、当接部121bと第2アーム122cの間に発生する摩擦力によって、第1揺動部材121に高さ方向A1における上方向の反力が付与される。当接部121bと第2アーム122cの間に発生する摩擦力は、当接部121bと第2アーム122cの摺動により発生する動摩擦力と、当接部121bと第2アーム122cが摺動する前に発生する静止摩擦力とを含む。
【0042】
弾性部材123は、引張コイルばね等のばね部材であり、第1ねじりコイルばね122と別個に設けられる。弾性部材123の上流側の端部123aは、第1筐体101に固定され、下流側の端部123bは、第1揺動部材121の上流側の端部に取り付けられる。これにより、弾性部材123は、第1揺動部材121に、高さ方向A1における上方向の力を付与する。なお、弾性部材123として、圧縮コイルばね等の他のばね部材、又は、ゴム部材等が用いられてもよい。
【0043】
板部材124は、分離ローラ114の上流側に、分離ローラ114の表面と対向する位置に配置される。板部材124には、ねじりコイルばね等のばね部材124aにより、下流側に向かう力が付与され、ストッパ124bによって停止される。板部材124は、第1揺動部材121が当接位置に配置されている場合、分離ローラ114の表面に当接せず、第1揺動部材121が非当接位置に配置されている場合、分離ローラ114の表面に当接するように配置される。これにより、板部材124は、第1揺動部材121が高さ方向A1における下方向に揺動したときに、分離ローラ114の表面に当接して分離ローラ114の回転を抑制させる。
【0044】
以下、第1ねじりコイルばね122の回転支点軸122aが、第1揺動部材121の揺動軸121aと異なる位置に配置されることの技術的意義について説明する。
【0045】
図5及び図6は、第1ねじりコイルばねの回転支点軸が、第1揺動部材の揺動軸と同一位置に配置された媒体搬送装置について説明するための模式図である。
【0046】
図5及び図6に示す媒体搬送装置は、給送ローラ13、分離ローラ14、第1揺動部材21及び第1ねじりコイルばね22等を有する。給送ローラ13、分離ローラ14及び第1揺動部材21は、それぞれ媒体搬送装置100の給送ローラ113、分離ローラ114及び第1揺動部材121と同様の構成を有する。第1揺動部材21は、揺動軸21aを中心として揺動可能に設けられ、且つ、当接部21bを有している。第1ねじりコイルばね22は、回転支点軸22aを中心に回転可能に設けられ、且つ、固定された第1アーム22b及び当接部21bが当接する第2アーム22cを有する。但し、第1ねじりコイルばね22の回転支点軸22aは、第1揺動部材21の揺動軸21aと同一位置に配置されている。
【0047】
回転支点軸22aと揺動軸21aが同一位置に配置されていることにより、第1揺動部材21が揺動した際に、当接部21bが移動(揺動)する方向と、第2アーム22cが移動(揺動)する方向とは同一になる。そのため、第1揺動部材21が揺動した際に、第2アーム22c上で当接部21bが当接する位置は変化しない。即ち、第1揺動部材21が当接位置に配置された場合の回転支点軸22aと当接部21bの間の距離D3と、第1揺動部材21が非当接位置に配置された場合の回転支点軸22aと当接部21bの間の距離D4とは変化しない。したがって、第1揺動部材21が揺動した場合、当接部21bは第2アーム22cに沿って摺動しない。
【0048】
図7(A)、(B)及び図8(A)、(B)は、図5及び図6に示した媒体搬送装置による媒体の給送について説明するための模式図である。図7(A)、(B)及び図8(A)、(B)は、載置台に複数の媒体Pが載置され、複数の媒体Pのうち最も上側に載置された媒体P1が給送されている状態を示す。なお、図5及び図6に示す媒体搬送装置は、図7(A)、(B)及び図8(A)、(B)に示すように、媒体搬送装置100のピックローラ112と同様のピックローラ12を有する。
【0049】
まず、図7(A)に示すように、ピックローラ12が媒体P1に当接しつつ媒体給送方向A5に回転することにより、媒体P1は給送ローラ13及び分離ローラ14のニップ部に送り込まれる。媒体P1のみが給送ローラ13及び分離ローラ14のニップ部に進入している状態では、分離ローラ14は、給送ローラ13に従って従動し、媒体給送方向A7’に回転する。媒体P1の下側に載置された待機媒体P2には、ピックローラ12及び給送ローラ13による付圧力によって発生する媒体P1との間の摩擦力と、待機媒体P2自体の重力による慣性力とが付与される。
【0050】
これらの力により、図7(B)に示すように、待機媒体P2は下流側に移動し、待機媒体P2の先端は分離ローラ14に衝突する。分離ローラ14は、待機媒体P2によって押圧され、第1ねじりコイルばね22による弾性力に逆らって、高さ方向A1における下方向に押し下げられる。このとき、モータからの駆動力が分離ローラ14に伝達され、分離ローラ14の外周面は媒体給送方向の反対方向A7に回転する。これにより、待機媒体P2には、分離ローラ14の逆回転による力と、分離ローラ114のバック負荷と、分離ローラ114のゴム反発力とが付与される。
【0051】
これらの力により、図8(A)に示すように、待機媒体P2は上流側に押し戻される。これにより、待機媒体P2は分離ローラ14から離間し、分離ローラ14を押圧しなくなり、分離ローラ14は、第1ねじりコイルばね22の弾性力によって高さ方向A1における上方向に押し戻される。これにより、分離ローラ14は、給送ローラ13に従って再度従動し、媒体給送方向A7’に回転する。
【0052】
図8(B)に示すように、待機媒体P2は、分離ローラ14から離間した後、媒体P1との間の摩擦力と、待機媒体P2自体の重力による慣性力とによって、再度、下流側に移動し、分離ローラ14に衝突する。分離ローラ14は、再度、待機媒体P2によって押圧され、第1ねじりコイルばね22による弾性力に逆らって、高さ方向A1における下方向に押し下げられる。このとき、モータからの駆動力が分離ローラ14に伝達され、分離ローラ14の外周面は媒体給送方向の反対方向A7に回転する。以後、分離ローラ14は、図8(A)に示す状態と図8(B)に示す状態とを繰り返し、高さ方向A1において上下に移動して振動する。
【0053】
図9(A)は、図5及び図6に示した媒体搬送装置による媒体の給送時の分離ローラ14の位置の遷移の一例を示すグラフである。
【0054】
図9(A)において、横軸は媒体の給送開始からの経過時間を示し、縦軸は分離ローラ14の高さ方向A1における媒体の給送開始時の初期位置に対する相対位置を示す。図9(A)に示すように、待機媒体P2が分離ローラ14に衝突するたびに分離ローラ14は押し下げられ、分離ローラ14が上下に移動するたびに分離ローラ14が押し下げられる量が大きくなる(自励振動)。図9(A)に示す例では、媒体の給送開始から時間Tが経過した時に、分離ローラ14が、給送ローラ13とニップ部を形成可能な位置Sより下方に配置される。その結果、待機媒体P2が分離ローラ14及び給送ローラ13より下流側に流れ込み、媒体の重送が発生する。
【0055】
一方、上記したように、本実施形態に係る媒体搬送装置100では、第1揺動部材121が揺動した際に、当接部121bと第2アーム122cの間に発生する摩擦力によって、第1揺動部材121に反力が付与される。これにより、分離ローラ114(第1揺動部材121)が、待機媒体P2によって押し下げられる場合、及び、第1ねじりコイルばね22の弾性力によって押し上げられる場合に、移動する量は低減される。
【0056】
図9(B)は、本実施形態に係る媒体搬送装置100による媒体の給送時の分離ローラ114の位置の遷移の一例を示すグラフである。
【0057】
図9(B)において、横軸は媒体の給送開始からの経過時間を示し、縦軸は分離ローラ114の高さ方向A1における媒体の給送開始時の初期位置に対する相対位置を示す。図9(B)に示すように、分離ローラ114が押し下げられる量及び押し上げられる量は、第1揺動部材121に付与される反力によって小さくなり、分離ローラ114は、給送ローラ13とニップ部を形成可能な位置Sより上方に配置され続ける。その結果、待機媒体P2が分離ローラ114及び給送ローラ113より下流側に流れ込むことが抑制され、媒体の重送の発生が抑制される。
【0058】
以下、当接部121bと第1ねじりコイルばね122の第2アーム122cの間に発生する摩擦力について説明する。
【0059】
待機媒体P2が分離ローラ114に衝突することによって、待機媒体P2と分離ローラ114の衝突点には、以下の式(1)で算出される力M1が加えられる。
M1=N1×L1 (1)
ここで、N1は、待機媒体P2と分離ローラ114の衝突点において分離ローラ114(第1揺動部材121)の揺動(接線)方向にかかる荷重(垂直荷重)である(図3を参照)。L1は、待機媒体P2と第1揺動部材121の衝突点を通り且つ分離ローラ114の揺動方向に延伸する直線と、第1揺動部材121の揺動軸121aとの間の距離である(図3を参照)。
【0060】
一方、第1ねじりコイルばね122による弾性力によって、第1揺動部材121の当接部121bには、以下の式(2)で算出される力M2が加えられる。
M2=N2×L2 (2)
ここで、N2は、当接部121bと第2アーム122cの当接位置において第2アーム122cの揺動(接線)方向にかかる荷重(垂直荷重)である(図3を参照)。L2は、当接部121bと第2アーム122cの当接位置を通り且つ第2アーム122cの揺動方向に延伸する直線と、第1揺動部材121の揺動軸121aとの間の距離である(図3を参照)。
【0061】
また、当接部121bと第2アーム122cの間の摩擦力によって、第1揺動部材121の当接部121bには、以下の式(3)で算出される力M3が加えられる。
M3=μ×N2×L3 (3)
ここで、μは、当接部121bと第2アーム122cの間の摩擦係数であり、μ×N2は、当接部121bと第2アーム122cの間の摩擦力である(図3を参照)。L3は、当接部121bと第2アーム122cの当接位置を通り且つ第2アーム122cの延伸方向(当接部121bの摺動方向)に延伸する直線と、第1揺動部材121の揺動軸121aとの間の距離である(図3を参照)。
【0062】
第1揺動部材121及び第1ねじりコイルばね122は、力M1と力M2による第1揺動部材121の振動が、力M3により抑制されるように設定される。
【0063】
なお、当接部121bと第2アーム122cの間の摩擦力によって、分離ローラ114には、以下の式(4)で算出される力F1が加えられる。
F1=M3/L4=N2×μ×L3/L4 (4)
ここで、L4は、分離ローラ114の回転軸を通り且つ分離ローラ114の揺動方向に延伸する直線と、第1揺動部材121の揺動軸121aとの間の距離である(図3を参照)。
【0064】
また、第1ねじりコイルばね122による弾性力によって、分離ローラ114には、以下の式(5)で算出される力F2が加えられる(図3を参照)。
F2=M2/L4=N2×L2/L4 (5)
式(4)、(5)に示されるように、力F1は、距離L3に依存して変化するが、力F2は、距離L3に依存しない。媒体搬送装置100では、距離L3を調節することにより、第1ねじりコイルばね122による弾性力によって分離ローラ114に加えられる力F2を一定に保ちつつ、分離ローラ114の振動を抑制する力F1を調節することができる。距離L3は、事前の実験により、媒体の重送が発生しない距離に設定される。
【0065】
また、上記したように、弾性部材123により、第1揺動部材121には分離ローラ114を給送ローラ113側に押し付ける力が付与される。これにより、媒体搬送装置100は、第1揺動部材121が下方向に揺動した際に、第1揺動部材121に付与される上方向の反力を大きくすることができる。したがって、媒体搬送装置100は、分離ローラ114の振動の発生を抑制でき、媒体の重送の発生を抑制できる。
【0066】
また、上記したように、板部材124により、第1揺動部材121が高さ方向A1における下方向に揺動したときに、分離ローラ114の回転が停止し、待機媒体P2は、分離ローラ114によって押し戻されない。これにより、媒体搬送装置100は、分離ローラ114の振動の発生を抑制でき、媒体の重送の発生を抑制できる。
【0067】
図10及び図11は、第1媒体センサ111について説明するための模式図である。
【0068】
図10及び図11に示すように、第1媒体センサ111は、載置台103の載置面103a上に、即ち給送ローラ113及び分離ローラ114より上流側に配置され、載置台103における媒体の載置状態を検出する。第1媒体センサ111は、第2揺動部材131、第2ねじりコイルばね132、ストッパ133及び光ユニット134等を含む。
【0069】
第2揺動部材131は、揺動部材の一例である。第2揺動部材131は、媒体搬送方向A2に延伸するように形成され、且つ、媒体搬送方向A2において中央部に設けられた揺動軸131aを中心として、高さ方向A1に揺動可能に設けられる。特に、第2揺動部材131は、下流側の端部が高さ方向A1に揺動するように設けられる。以下では、下流側の端部が高さ方向A1における上方向に向かう方向を第1方向と称し、下流側の端部が高さ方向A1における下方向に向かう方向を第2方向と称する場合がある。第1方向は、所定方向の一例であり、第2方向は、所定方向の反対方向の一例である。また、以下では、図10に示すように下流側の端部が上方に配置された第2揺動部材131の位置を第1位置と称し、図11に示すように下流側の端部が下方に配置された第2揺動部材131の位置を第2位置と称する場合がある。第2揺動部材131は、第2ねじりコイルばね132と当接する当接部131bを有する。
【0070】
第2ねじりコイルばね132は、ねじりコイルばねの一例である。第2ねじりコイルばね132は、コイル中心軸である回転支点軸132aを中心に、回転可能に設けられる。第2ねじりコイルばね132は、第1アーム132b及び第2アーム132cを有する。第1アーム132bは、載置台103の内部に固定される。第2アーム132cは、第1アーム132bから離間する方向(図10及び図11に示す例では下流側)に向けて弾性力を発生させるように、回転支点軸132aを中心に揺動可能に設けられる。第2アーム132cには、第2揺動部材131の当接部131bが当接され、第2アーム132cは、当接部131bを介して第2揺動部材131を、第1アーム132bから離間する方向(下流側)に向けて押圧する。第2揺動部材131には、第2ねじりコイルばね132からの弾性力により、下流側の端部が上方に向かう力が付与される。
【0071】
第2ねじりコイルばね132の回転支点軸132aは、第2揺動部材131の揺動軸131aと異なる位置に配置される。例えば、第2ねじりコイルばね132は、第2揺動部材131の揺動軸131aがコイル部の外側に配置されるように設けられる。これにより、図10及び図11に示すように、第2揺動部材131が揺動した際に、当接部131bが移動(揺動)する方向と、第2アーム132cが移動(揺動)する方向とが異なる。そのため、第2揺動部材131が揺動した際に、第2アーム132c上で当接部131bが当接する位置は変化する。即ち、第2揺動部材131が第1位置に配置された場合の回転支点軸132aと当接部131bの間の距離D5と、第2揺動部材131が第2位置に配置された場合の回転支点軸132aと当接部131bの間の距離D6とは変化する。したがって、第2揺動部材131が揺動した場合、当接部131bは第2アーム132cに沿って摺動する。
【0072】
このように、第2アーム132cは、当接部131bが当接しながら摺動するように配置される。これにより、第2揺動部材131が第1方向に揺動した際に、当接部131bと第2アーム132cの間に発生する摩擦力によって、第2揺動部材131に第2方向の反力が付与される。当接部131bと第2アーム132cの間に発生する摩擦力は、当接部131bと第2アーム132cの摺動により発生する動摩擦力と、当接部131bと第2アーム132cが摺動する前に発生する静止摩擦力とを含む。
【0073】
ストッパ133は、第2揺動部材131に形成された穴部131c内に配置されるように、載置台103の内部に固定される。第2揺動部材131は、穴部131cの下端がストッパ133の下端と当接することにより第1位置に配置され、穴部131cの上端がストッパ133の上端と当接することにより第2位置に配置される。
【0074】
光ユニット134は、第1位置に配置された第2揺動部材131を挟んで相互に対向するように配置された発光器及び受光器を有する。発光器は、LED等であり、受光器に向けて光を照射する。受光器は、フォトダイオード等であり、発光器により照射された光を受光し、受光した光の強度に応じた電気信号である第1媒体信号を生成して出力する。載置台103に媒体が載置された場合、第2揺動部材131は、媒体の自重によって押し下げられて第2位置に配置され、発光器と受光器の間に配置されない。一方、載置台103に媒体が載置されていない場合、第2揺動部材131は、第2ねじりコイルばね132の弾性力によって押し上げられて第1位置に配置され、発光器と受光器の間に配置される。発光器と受光器の間に第2揺動部材131が存在しない場合、受光器は発光器から照射された光を受光するが、発光器と受光器の間に第2揺動部材131が存在する場合、発光器から照射された光は第2揺動部材131により遮光される。そのため、第1媒体信号の信号値は、第2揺動部材131の配置位置に応じて、載置台103に媒体が載置されている状態と載置されていない状態とで変化する。
【0075】
なお、第1媒体センサ111は接触検知センサに限定されず、第1媒体センサ111として、光検知センサ等の、媒体の有無を検出可能な他の任意のセンサが使用されてもよい。
【0076】
第2揺動部材131及び第2ねじりコイルばね132は、第1揺動部材121及び第1ねじりコイルばね122と同様の関係を有する。仮に、第2ねじりコイルばねの回転支点軸が、第2揺動部材の揺動軸と同一位置に配置されている場合、第2揺動部材が揺動したときに、当接部は第2アームに沿って摺動しない。そのため、載置台に載置された媒体が全て給送され、第2揺動部材が第2位置から第1位置に移動した場合、第2揺動部材は、上下に繰り返し移動して振動する。
【0077】
一方、上記したように、本実施形態に係る媒体搬送装置100では、第2揺動部材131が揺動した際に、当接部131bと第2アーム132cの間に発生する摩擦力によって、第2揺動部材131に反力が付与される。これにより、載置台103に載置された媒体が全て給送された場合に、第2揺動部材131が第2ねじりコイルばね132による弾性力によって上方向に押し上げられる量及び第2揺動部材131の自重によって下方向に押し下げられる量は低減される。その結果、第2揺動部材131が振動してしまい、載置台103に媒体が存在しないにも関わらず、媒体が存在すると誤って判定されることが抑制される。
【0078】
図12は、媒体搬送装置100の概略構成を示すブロック図である。
【0079】
媒体搬送装置100は、前述した構成に加えて、モータ141、インタフェース装置142、記憶装置150及び処理回路160等をさらに有する。
【0080】
モータ141は、一又は複数のモータを含む。モータ141は、処理回路160からの制御信号によって、ピックローラ112、給送ローラ113、分離ローラ114及び/又は第1~第6搬送ローラ116a~116fを回転させて媒体を搬送させるとともに、載置台103を移動させる。なお、第1~第6従動ローラ117a~117fは、第1~第6搬送ローラ116a~116fに従動回転するのでなく、モータ141の駆動力に従って回転するように設けられてもよい。
【0081】
インタフェース装置142は、例えばUSB等のシリアルバスに準じるインタフェース回路を有し、不図示の情報処理装置(例えば、パーソナルコンピュータ、携帯情報端末等)と電気的に接続して入力画像及び各種の情報を送受信する。また、インタフェース装置142の代わりに、無線信号を送受信するアンテナと、所定の通信プロトコルに従って、無線通信回線を通じて信号の送受信を行うための無線通信インタフェース回路とを有する通信部が用いられてもよい。所定の通信プロトコルは、例えば無線LAN(Local Area Network)である。通信部は、有線LAN等の通信プロトコルに従って、有線通信回線を通じて信号の送受信を行うための有線通信インタフェース回路を有してもよい。
【0082】
記憶装置150は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等のメモリ装置、ハードディスク等の固定ディスク装置、又はフレキシブルディスク、光ディスク等の可搬用の記憶装置等を有する。また、記憶装置150には、媒体搬送装置100の各種処理に用いられるコンピュータプログラム、データベース、テーブル等が格納される。コンピュータプログラムは、コンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いて記憶装置150にインストールされてもよい。可搬型記録媒体は、例えばCD-ROM(compact disc read only memory)、DVD-ROM(digital versatile disc read only memory)等である。
【0083】
処理回路160は、予め記憶装置150に記憶されているプログラムに基づいて動作する。処理回路は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。処理回路160として、DSP(digital signal processor)、LSI(large scale integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等が用いられてもよい。
【0084】
処理回路160は、操作装置105、表示装置106、第1媒体センサ111、エンコーダ115、撮像装置119、モータ141、インタフェース装置142及び記憶装置150等と接続され、これらの各部を制御する。処理回路160は、各媒体センサから受信した各媒体信号及びエンコーダ115から受信した回転信号に基づいて、モータ141の駆動制御、撮像装置119の撮像制御等を行う。処理回路160は、撮像装置119から入力画像を取得し、インタフェース装置142を介して情報処理装置に送信する。
【0085】
図13は、記憶装置150及び処理回路160の概略構成を示す図である。
【0086】
図13に示すように、記憶装置150には、制御プログラム151、判定プログラム152及び検出プログラム153等が記憶される。これらの各プログラムは、プロセッサ上で動作するソフトウェアにより実装される機能モジュールである。処理回路160は、記憶装置150に記憶された各プログラムを読み取り、読み取った各プログラムに従って動作する。これにより、処理回路160は、制御部161、判定部162及び検出部163として機能する。
【0087】
図14は、媒体搬送装置100の媒体読取処理の動作の例を示すフローチャートである。
【0088】
以下、図14に示したフローチャートを参照しつつ、媒体搬送装置100の媒体読取処理の動作の例を説明する。なお、以下に説明する動作のフローは、予め記憶装置150に記憶されているプログラムに基づき主に処理回路160により媒体搬送装置100の各要素と協働して実行される。
【0089】
最初に、制御部161は、利用者により操作装置105又は情報処理装置を用いて媒体の読み取りの指示が入力されて、媒体の読み取りを指示する操作信号を操作装置105又はインタフェース装置142から受信するまで待機する(ステップS101)。
【0090】
次に、判定部162は、第1媒体センサ111から第1媒体信号を取得し、取得した第1媒体信号に基づいて、載置台103に媒体が載置されているか否かを判定する(ステップS102)。このように、判定部162は、第2揺動部材131の配置位置に基づいて、即ち第2揺動部材131が第1位置に配置されているか第2位置に配置されているかに基づいて、載置台103に媒体が存在するか否かを判定する。上記したように、第1媒体センサ111は、第2揺動部材131の揺動が抑制されるように設けられているため、媒体搬送装置100は、載置台103に媒体が存在するか否かの判定誤りの発生を抑制できる。載置台103に媒体が載置されていない場合、制御部161は、一連のステップを終了する。
【0091】
一方、載置台103に媒体が載置されている場合、制御部161は、モータ141を駆動して、媒体を給送可能な位置まで載置台103を上昇させるとともに、各ローラを回転させて、媒体を給送及び搬送させる(ステップS103)。
【0092】
次に、検出部163は、エンコーダ115から回転信号を取得し、取得した回転信号に基づいて、分離ローラ114の回転方向を検出する(ステップS104)。検出部163は、検出した回転方向を記憶装置150に記憶する。
【0093】
次に、検出部163は、記憶装置150に記憶された、分離ローラ114の回転方向の履歴を読み出し、分離ローラ114の回転方向の変化の頻度を算出する(ステップS105)。検出部163は、所定期間に記憶装置150に記憶された分離ローラ114の回転方向を読み出し、所定期間内に回転方向が変化した回数を、分離ローラ114の回転方向の変化の頻度として算出する。所定期間は、例えば直前の1秒間に設定される。所定期間は、現在給送中の媒体の給送を開始してから現在までの全期間に設定されてもよい。
【0094】
次に、制御部161は、検出部163により算出された分離ローラ114の回転方向の変化の頻度が閾値以上であるか否かを算出する(ステップS106)。閾値は、様々な種類の媒体を給送させる事前の実験において、媒体の重送が発生した場合の分離ローラ114の回転方向の変化の頻度と、媒体の重送が発生しなかった場合の分離ローラ114の回転方向の変化の頻度との間の値に設定される。分離ローラ114の回転方向の変化の頻度が閾値未満である場合、制御部161は、特に処理を実行せずに、ステップS108へ処理を移行させる。
【0095】
一方、分離ローラ114の回転方向の変化の頻度が閾値以上である場合、制御部161は、分離ローラ114を停止させるようにモータ141を制御する(ステップS107)。このように、制御部161は、分離ローラ114の回転方向の変化の頻度に基づいて、分離ローラ114の回転を停止させる。これにより、媒体搬送装置100は、図7(A)、(B)、図8(A)、(B)に示したように待機媒体P2によって分離ローラ114が振動してしまい、媒体の重送が発生することを抑制できる。
【0096】
次に、判定部162は、第2媒体センサ118から第2媒体信号を取得し、取得した第2媒体信号に基づいて、媒体の後端が撮像装置119の撮像位置を通過したか否かを判定する(ステップS108)。判定部162は、第2媒体信号の信号値が、媒体が存在する状態を示す値から媒体が存在しない状態に変化した時に、媒体の後端が第2媒体センサ118の位置を通過したと判定する。判定部162は、媒体の先端が第2媒体センサ118の位置に到達してから所定時間が経過した時に、媒体の後端が撮像装置119の撮像位置を通過したと判定する。所定時間は、媒体が第2媒体センサ118の位置から撮像装置119の撮像位置まで移動するのに要する時間に設定される。
【0097】
このように、判定部162は、第2媒体センサ118から取得した第2媒体信号に基づいて、第2媒体センサ118の配置位置に媒体が存在するか否かを判定する。第2媒体センサ118が第1媒体センサ111と同様の接触検知センサである場合、判定部162は、第2揺動部材の配置位置に基づいて、第2媒体センサ118の配置位置に媒体が存在するか否かを判定する。その場合、媒体搬送装置100は、第2媒体センサ118の配置位置に媒体が存在するか否かの判定誤りの発生を抑制できる。なお、判定部162は、媒体の給送を開始してから予め定められた時間が経過した時に、媒体の後端が撮像位置を通過したと判定してもよい。まだ媒体の後端が撮像装置119の撮像位置を通過していない場合、制御部161は、ステップS104へ処理を戻し、ステップS104以降の処理を繰り返す。
【0098】
一方、媒体の後端が撮像装置119の撮像位置を通過した場合、制御部161は、撮像装置119から入力画像を取得し、取得した入力画像を、インタフェース装置142を介して情報処理装置に送信することにより出力する(ステップS109)。
【0099】
次に、制御部161は、ステップS102の処理と同様にして、第1媒体センサ111から第1媒体信号を取得し、取得した第1媒体信号に基づいて、載置台103に媒体が残っているか否かを判定する(ステップS110)。
【0100】
載置台103に媒体が残っている場合、制御部161は、ステップS107で分離ローラ114を停止させたか否かを判定する(ステップS111)。分離ローラ114を停止させていない場合、制御部161は、特に処理を実行せずに、ステップS104へ処理を戻し、ステップS104以降の処理を繰り返す。
【0101】
一方、分離ローラ114を停止させていた場合、分離ローラ114を再回転させるようにモータ141を制御する(ステップS112)。次に、制御部161は、ステップS104へ処理を戻し、ステップS104以降の処理を繰り返す。
【0102】
一方、載置台103に媒体が残っていない場合、制御部161は、各ローラを停止させるようにモータ141を制御し(ステップS113)、一連のステップを終了する。
【0103】
以上詳述したように、媒体搬送装置100は、揺動部材の揺動軸と、揺動部材に力を付与するねじりコイルばねの回転支持軸とをずらして、揺動部材が所定方向の力を受けた際に、揺動部材とねじりコイルばねの間に発生する摩擦力で揺動部材の揺動を抑制させる。これにより、媒体搬送装置100は、揺動部材が振動することを抑制し、揺動部材の揺動を適切に制御することが可能となった。
【0104】
図15は、他の実施形態に係る媒体搬送装置の処理回路260の概略構成を示す図である。
【0105】
処理回路260は、媒体搬送装置100の処理回路160の代わりに使用され、処理回路160の代わりに、媒体読取処理等を実行する。処理回路260は、制御回路261、判定回路262及び検出回路263等を有する。なお、これらの各部は、それぞれ独立した集積回路、マイクロプロセッサ、ファームウェア等で構成されてもよい。
【0106】
制御回路261は、制御部の一例であり、制御部161と同様の機能を有する。制御回路261は、操作装置105又はインタフェース装置142から操作信号を、判定回路262から媒体の有無の判定結果を、検出回路263から分離ローラ114の回転方向の変化の頻度の検出結果を受信する。制御回路261は、受信した各情報に基づいてモータ141を制御するとともに、撮像装置119から入力画像を取得し、インタフェース装置142に出力する。
【0107】
判定回路262は、判定部の一例であり、判定部162と同様の機能を有する。判定回路262は、第1媒体センサ111から第1媒体信号を、第2媒体センサ118から第2媒体信号を受信する。判定回路262は、受信した各信号に基づいて、媒体の有無を判定し、判定結果を制御回路261に出力する。
【0108】
検出回路263は、検出部の一例であり、検出部163と同様の機能を有する。検出回路263は、エンコーダ115から回転信号を受信する。検出回路263は、受信した回転信号に基づいて、分離ローラ114の回転方向及びその変化の頻度を検出し、検出結果を制御回路261に出力する。
【0109】
以上詳述したように、媒体搬送装置は、処理回路260を用いる場合においても、揺動部材の揺動を適切に制御することが可能となった。
【0110】
以上、好適な実施形態について説明してきたが、実施形態はこれらに限定されない。例えば、媒体搬送装置は、いわゆるストレートパスを有し、載置台に載置された媒体を下側から順に給送及び搬送してもよい。その場合、給送ローラは、分離ローラの下方に、分離ローラに対向して配置される。
【0111】
また、実施形態に係る揺動部材及びねじりコイルばねが適用される装置は、媒体搬送装置に限定されない。実施形態に係る揺動部材及びねじりコイルばねは、収納庫もしくは部屋の開き戸、又は、折り畳み式のノート型PCもしくは携帯電話の開閉部等、揺動する任意の物体に適用され得る。これらの場合も、揺動部材が振動することが抑制され、揺動部材の揺動が適切に制御される。
【符号の説明】
【0112】
100 媒体搬送装置、113 給送ローラ、114 分離ローラ、121 第1揺動部材、121a 揺動軸、121b 当接部、122 第1ねじりコイルばね、122a 回転支点軸、122b 第1アーム、122c 第2アーム、123 弾性部材、124 板部材、131 第2揺動部材、131a 揺動軸、131b 当接部、132 第2ねじりコイルばね、132a 回転支点軸、132b 第1アーム、132c 第2アーム、161 制御部、162 判定部、163 検出部
図1
図2
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図15