(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108662
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】硫酸バリウム含有球状粒子及びそれを用いた感触改良剤、化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/23 20060101AFI20240805BHJP
A61Q 1/02 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
A61K8/23
A61Q1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013135
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000174541
【氏名又は名称】堺化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】石川 桃子
(72)【発明者】
【氏名】芦田 拓郎
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB171
4C083AB172
4C083AB212
4C083AB232
4C083AB242
4C083AB361
4C083AB362
4C083AB432
4C083AC022
4C083AC662
4C083AD092
4C083AD162
4C083BB23
4C083BB26
4C083CC12
4C083DD17
4C083DD21
4C083EE03
4C083EE06
4C083FF01
(57)【要約】
【課題】スポンジやパフ等で塗擦して使用する場合の取れ具合や肌上での伸びに優れると共にベタツキ感が抑えられ、使用感に優れた化粧料を提供する。
【解決手段】硫酸バリウム含有球状粒子であって、該硫酸バリウム含有球状粒子は、表面処理前の硫酸バリウム含有球状粒子に対して1~10質量%の脂肪酸で表面処理されてなるものであり、硫酸バリウム含有球状粒子を成形してなる成形品の針入荷重が100mN以上であることを特徴とする硫酸バリウム含有球状粒子。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫酸バリウム含有球状粒子であって、
該硫酸バリウム含有球状粒子は、表面処理前の硫酸バリウム含有球状粒子に対して1~10質量%の脂肪酸で表面処理されてなるものであり、
硫酸バリウム含有球状粒子を成形してなる成形品の針入荷重が100mN以上であることを特徴とする硫酸バリウム含有球状粒子。
【請求項2】
前記硫酸バリウム含有球状粒子は、硫酸バリウムとシリカとの複合粒子であることを特徴とする請求項1に記載の硫酸バリウム含有球状粒子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の硫酸バリウム含有球状粒子を含むことを特徴とする感触改良剤。
【請求項4】
請求項3に記載の感触改良剤を含むことを特徴とする化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫酸バリウム含有球状粒子及びそれを用いた感触改良剤、化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料は固形状や液状等、求められる効果や消費者の嗜好に合わせた様々な形態の製品が販売されている。このうち固形粉末化粧料においては、スポンジやパフ等で塗擦して使用する場合の取れ具合や肌上での伸び等の使用感が良好であること等が求められる。使用感を良好にするためには化粧料の皮膚上での滑り性を良好にする必要があり、滑り感や伸び等の感触を改良する目的で球状粒子が化粧料に配合される。球状粒子としてはマイクロプラスチックビーズが使用されてきたが、近年、プラスチックによる海洋汚染の問題が深刻化していることを受けて主要国(特にEU)ではマイクロプラスチックビーズの化粧品への使用が禁止されており、代替原料の要望が高まっている。マイクロプラスチックビーズを使用しない化粧料として、合成マイカを油性固形化粧料に配合した油性固形化粧料が開示されている(特許文献1参照)。また、マイクロプラスチックビーズ代替材料の1つとして球状硫酸バリウムが検討されており、化粧料用途等に使用する球状硫酸バリウムとして、強度が高く、感触に優れる等の特性を有する球状硫酸バリウム球状複合粉末が開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-300816号公報
【特許文献2】特開2018-140921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のとおり、固形粉末化粧料の使用感向上のために球状粒子が配合されるが、球状粒子自身は固化力を持たないため、固形化した際にスポンジやパフ等で塗擦するのに適した固形力を持たず、固形化時に化粧料が崩れるという課題がある。このため、固形粉末化粧料においては、固形化させるためにワックス等の固化剤が使用されるが、これら固化剤はベタツキ感等により化粧料の使用感を悪くするという課題がある。
【0005】
本発明は、上記現状に鑑み、スポンジやパフ等で塗擦して使用する場合の取れ具合や肌上での伸びに優れると共にベタツキ感が抑えられ、使用感に優れた化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、使用時の取れ具合や肌上での伸びに優れると共にベタツキ感が抑えられ、使用感に優れた化粧料について検討し、化粧料に使用する粒子として硫酸バリウム含有粒子に着目した。そして所定の割合の脂肪酸で表面処理し、成形品の針入荷重が所定の値以上となるようにした硫酸バリウム含有粒子を化粧料に配合すると、使用時の取れ具合や肌上での伸びに優れると共にベタツキ感が抑えられ、使用感に優れた化粧料が得られること見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、以下のとおりである。
[1]硫酸バリウム含有球状粒子であって、該硫酸バリウム含有球状粒子は、表面処理前の硫酸バリウム含有球状粒子に対して1~10質量%の脂肪酸で表面処理されてなるものであり、硫酸バリウム含有球状粒子を成形してなる成形品の針入荷重が100mN以上であることを特徴とする硫酸バリウム含有球状粒子。
【0008】
[2]前記硫酸バリウム含有球状粒子は、硫酸バリウムとシリカとの複合粒子であることを特徴とする[1]に記載の硫酸バリウム含有球状粒子。
【0009】
[3][1]又は[2]に記載の硫酸バリウム含有球状粒子を含むことを特徴とする感触改良剤。
【0010】
[4][3]に記載の感触改良剤を含むことを特徴とする化粧料。
【発明の効果】
【0011】
本発明の硫酸バリウム含有球状粒子は、化粧料に配合することで、マイクロプラスチックビーズを使用することなく使用時の取れ具合や肌上での伸びに優れるとともに、ベタツキ感が抑えられた、優れた使用感を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい形態について具体的に説明するが、本発明は以下の記載のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
【0013】
1.硫酸バリウム含有球状粒子
本発明の硫酸バリウム含有球状粒子は、表面処理前の硫酸バリウム含有球状粒子に対して1~10質量%の脂肪酸で表面処理されてなるものである。
脂肪酸で表面処理されることで、化粧料の成分となる樹脂成分等とのなじみ性がよくなり、化粧料中に均一に分散させることが容易になる。
【0014】
本発明において球状粒子は、完全な球形状であることを意味するものではなく、真球度が1.5以下の粒子を意味する。球状粒子の真球度は、好ましくは1.3以下であり、より好ましくは1.1以下である。
【0015】
上記脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、エイコサペンタエン酸等の炭素数12~24の脂肪酸が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、ステアリン酸、パルミチン酸、ミスチリン酸等の炭素数14~20の脂肪酸が好ましい。これらの脂肪酸は融点が比較的高く、これらの脂肪酸を使用することで、化粧料原料を混合する際にバインダーとして添加する油剤になじみやすくなり均一に混合分散され、得られた固形化粧料はパフで塗布する際に優れた使用感が得られる。脂肪酸としてより好ましくは、ステアリン酸、パルミチン酸等の炭素数14~18の脂肪酸である。
【0016】
本発明の硫酸バリウム含有球状粒子は、表面処理前の硫酸バリウム含有球状粒子に対して1~12質量%の脂肪酸で表面処理されてなるものであるが、好ましくは、表面処理前の硫酸バリウム含有球状粒子に対して1~7質量%の脂肪酸で表面処理されてなるものであり、より好ましくは、2.5~5質量%の脂肪酸で表面処理されてなるものである。
【0017】
本発明の硫酸バリウム含有球状粒子は、該硫酸バリウム含有球状粒子を成形してなる成形品の針入荷重が100mN以上であることを特徴とする。このように本発明の硫酸バリウム含有球状粒子は固形力を有するものであるため、本発明の硫酸バリウム含有球状粒子を使用した場合には、化粧料を固形化させるためのワックス等の固化剤の使用を抑制することができる。このため、化粧料をスポンジやパフ等で塗擦して使用する場合の取れ具合や肌上での伸びに優れると共にベタツキ感が抑えられ、使用感に優れたものとすることができる。硫酸バリウム含有球状粒子を成形してなる成形品の針入荷重は好ましくは、200mN以上であり、更に好ましくは、500mN以上である。
硫酸バリウム含有球状粒子を成形してなる成形品の針入荷重は、後述する実施例に記載の方法で測定することができる。
【0018】
本発明の硫酸バリウム含有球状粒子は、平均粒子径が2.5~15μmであることが好ましい。このような平均粒子径のものであると、化粧料に用いた場合に化粧料が使用感により優れたものとなる。より好ましくは、3.0~10μmであり、更に好ましくは、3.5~8μmである。
硫酸バリウム含有球状粒子の平均粒子径は、後述する実施例に記載の方法で測定することができる。
【0019】
本発明の硫酸バリウム含有球状粒子は硫酸バリウムのみからなる粒子に脂肪酸による表面処理がされたものであってもよく、硫酸バリウムと硫酸バリウム以外の成分とからなる混合物粒子や複合粒子に脂肪酸による表面処理がされたものであってもよいが、硫酸バリウムとシリカとの複合粒子に脂肪酸による表面処理がされたものであることが好ましい。粒子形成時にシリカがバインダーとなるため、硫酸バリウムとシリカとの複合物とすることで崩壊しにくい球状粒子を得ることが容易になる。
【0020】
本発明の硫酸バリウム含有球状粒子が硫酸バリウムとシリカとの複合粒子である場合、硫酸バリウム100質量%に対してシリカを1~45質量%の割合で複合化したものであることが好ましい。より好ましくは、3~30質量%の割合で複合化したものであり、更に好ましくは、5~20質量%の割合で複合化したものである。
【0021】
2.硫酸バリウム含有球状粒子の製造方法
本発明の硫酸バリウム含有球状粒子は、硫酸バリウム含有球状粒子を得る第一工程と、得られた硫酸バリウム含有球状粒子を脂肪酸で表面処理する第二工程とを含む製造方法で製造することができる。
【0022】
上記第一工程において、硫酸バリウム含有球状粒子として硫酸バリウムのみからなる粒子を得る場合、その方法は特に制限されないが、例えば硫化バリウムと硫酸とを反応させる方法を用いることができる。硫化バリウムと硫酸との反応は、特開2018-140921号公報を参照して行うことができる。
また第一工程の後に、硫化バリウムと硫酸との反応で得られた硫酸バリウムを周期表第1族若しくは第2族元素の硫酸塩水溶液、または硫酸で洗浄する工程を行ってもよい。
【0023】
上記第一工程において、硫酸バリウム含有球状粒子として硫酸バリウムとシリカとの複合粒子を得る場合、該複合粒子の製造方法は特に制限されないが、硫酸バリウム粒子とシリカゾルとを含むスラリーを調製する工程(1)と、該スラリーを噴霧乾燥する工程(2)と、該工程(2)で得た乾燥物を焼成する工程(3)とを含む製造方法を用いることができる。
工程(1)~(3)の各工程は、特開2018-140921号公報を参照して行うことができる。
【0024】
また上記工程(2)の代わりに、工程(1)で得られたスラリーの一部を噴霧乾燥し、800~1100℃で焼成したものに対して「医薬部外品原料規格2021」の「硫酸バリウム」の規格における「塩酸可溶物及び可溶性バリウム塩」の純度試験を行った場合に
(a)塩酸可溶物が15mg以下、かつ、「可溶性バリウム塩」の試験を行った試験液の吸光度が0.03未満、又は、
(b)塩酸可溶物が14mg以下、かつ、「可溶性バリウム塩」の試験を行った試験液の吸光度が0.03以上
のいずれかに該当する混合物を得る工程(2-1)、
該工程(2-1)で得られた混合物が(b)に該当する場合に、該混合物に対し、原料硫酸バリウムの重量に対し0.05~0.40質量%となる割合の周期表第1族又は第2族元素の塩を添加する工程(2-2)、
該工程(2-2)で周期表第1族又は第2族元素の塩が添加され又はされなかった混合物を噴霧乾燥して乾燥物を得る工程(2-3)を行ってもよい。
これらの工程(2-1)~(2-3)を行って硫酸バリウムとシリカとの複合粒子を製造することで、「医薬部外品原料規格2021」の「硫酸バリウム」の規格における「塩酸可溶物及び可溶性バリウム塩」の要件に適合する複合粒子を容易に得ることができる。
工程(2-1)~(2-3)は、特願2022-043020に記載の硫酸バリウムとシリカの球状複合粒子の製造方法の第三~第五工程と同様に行うことができる。
【0025】
上記第二工程において、硫酸バリウム含有球状粒子を脂肪酸で表面処理する方法は特に制限されず、例えば、硫酸バリウム含有球状粒子と脂肪酸とを高速ミキサーで混合して均一に粒子表面に付着させる方法や、溶媒に球状複合粒子を分散させてから脂肪酸を添加する方法等を用いることができる。硫酸バリウム含有球状粒子と脂肪酸とを高速ミキサーで混合する方法を用いる場合、使用する脂肪酸の融点以上の温度で混合されるように加温することが好ましい。
【0026】
3.感触改良剤、化粧料
本発明はまた、本発明の硫酸バリウム含有球状粒子を含む感触改良剤でもある。本発明の硫酸バリウム含有球状粒子を化粧料に配合することで、スポンジやパフ等で塗擦して使用する場合の取れ具合や肌上での伸び等の使用感を向上させることができる。更に本発明の硫酸バリウム含有球状粒子は固化力を有するものであり、本発明の硫酸バリウム含有球状粒子を使用して固形の化粧料を製造する場合には、ワックス等の固化剤の使用量を少なくすることができるため、べたつき感の少ない感触に優れた化粧料とすることができる。
【0027】
本発明の感触改良剤は、本発明の硫酸バリウム含有球状粒子を含むモノである限り、その他の成分を含むものであってもよいが、その他の成分の割合は感触改良剤全体の20質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、10質量%以下であり、更に好ましくは、5質量%以下である。
【0028】
本発明はまた、本発明の感触改良剤を含む化粧料でもある。本発明の感触改良剤は固形の化粧料の使用感を良好にすることができるものであるため、本発明の化粧料は、固形化粧料であることが好ましい。
上記化粧料においては、本発明の感触改良剤は化粧料全体の1~50質量%になるように配合することが好ましく、2~30質量%となるように配合することがより好ましい。この範囲よりも少ないと感触改良剤を入れる効果が薄くなり過ぎ、多いとその他の材料の配合量が少なくなるため、その他の機能を付与しにくくなる。
【0029】
本発明の感触改良剤を化粧料に配合することにより、感触が良好で、シミなどの肌の欠陥をぼやかし、貯蔵安定性の良い化粧料を得ることができる。また、落下強度の向上や、沈降が抑制されて分散性が向上した球状複合粒子を配合したことによるSPFブースター効果を得ることができる。
【0030】
本発明の化粧料には、上記成分の他、化粧品や医薬部外品に通常用いられる成分、例えば、粉末成分、非極性油、液体油脂、固体油脂、ロウ、高級脂肪酸、高級アルコール、界面活性剤、増粘剤、紫外線遮蔽剤、糖類、保湿剤、アミノ酸、有機アミン、アルキレンオキシド誘導体、金属イオン封鎖剤、酸化防止剤、酸化防止助剤、その他の配合可能成分を1種または2種以上配合することができる。以下に、配合可能な成分を例示する。
【0031】
粉末成分としては、例えば、無機粉末(例えば、タルク、カオリン、雲母、絹雲母、白雲母、金雲母、合成雲母、紅雲母、黒雲母、パーミキュライト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、硫酸バリウム等);有機粉末(例えば、ポリアミド樹脂粉末、ポリエチレン粉末、ポリメタクリル酸メチル粉末、ポリスチレン粉末、等);無機白色顔料(例えば、酸化チタン、酸化亜鉛等);無機赤色系顔料(例えば、チタン酸鉄等);無機紫色系顔料(例えば、マンゴバイオレット、コバルトバイオレット等);無機緑色系顔料(例えば、酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト等);無機青色系顔料(例えば、群青、紺青等);パール顔料(例えば、酸化チタンコーテッドマイカ、酸化チタンコーテッドオキシ塩化ビスマス等);金属粉末顔料(例えば、アルミニウムパウダー、カッパーパウダー等);ジルコニウム、バリウムまたはアルミニウムレーキ等の有機顔料(例えば、赤色201~205号、橙色203号、橙色204号、黄色205号、黄色401号、および青色404号などの有機顔料、赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色227号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、緑色3号および青色1号等);天然色素(例えば、クロロフィル、β-カロチン等)等が挙げられる。
【0032】
非極性油としては、例えば、シリコーン油、流動パラフィン、スクワラン、スクワレン、パラフィン、イソヘキサデカン、イソドデカン、α-オレフィンオリゴマー、ポリブテン、ポリイソブチレン等の炭化水素油等が挙げられる。
【0033】
シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、カプリリルメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、メチルハイドロジェンポリシロキサンなどの鎖状シリコーン油、オクタメチルシクロテトラシロキサン、などの環状シリコーン油等が挙げられる。
【0034】
エステル油としては、オクタン酸セチル、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸セチル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸プロピレングリコール等が挙げられる。
【0035】
液体油脂としては、例えば、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油等が挙げられる。
【0036】
固体油脂としては、例えば、カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油等が挙げられる。
【0037】
ロウ類としては、例えば、ミツロウ、キャンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ等が挙げられる。
【0038】
高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、ウンデシレン酸、トール酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)等が挙げられる。
【0039】
高級アルコールとしては、例えば、直鎖アルコール(例えば、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等);分枝鎖アルコール(例えば、モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)、2-デシルテトラデシノール等)等が挙げられる。
【0040】
界面活性剤の例としては、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられ、これらの界面活性剤として一般に知られているものを使用することができる。
【0041】
増粘剤の例としては、例えば、水性ではアラビアガム、カラギーナン、カラヤガム、トラガカントガム;ポリアクリル酸ナトリウム、アクリル酸Naグラフトデンプン、カルボマー、アクリル酸と(メタ)アクリル酸アルキルのコポリマーやクロスポリマー、ポリアクリルアミド、アクリル酸アルキルやアクリルアミドとアクリロイルジメチルタウリン塩のコポリマー等のアクリル系高分子;ローカストビーンガム、グアーガム、および油性ではベントナイト、ヘクトライトモンモリロナイト等のモンモリロナイト群粘土鉱物、バーミキュライト、ベントナイトといった粘土鉱物を、塩化アルキルトリメチルアンモニウム等の第4級アンモニウム化合物で変性した有機変性粘土鉱物、煙霧状シリカ、疎水化煙霧状シリカ、多糖類脂肪酸エステル、12-ヒドロキシステアリン酸、高重合メチルポリシロキサン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0042】
紫外線遮蔽剤の例としては、例えば、無機紫外線散乱剤としては、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛、微粒子酸化鉄の他、例えば、雲母やタルク等の体質顔料粉体上に担持されたもの、ポリメチルメタクリレート等の球状有機粉体やシリカ等の球状無機粉体の表面に担持されたもの、または微粒子金属酸化物の格子欠陥中に鉄等の他の金属を導入したもの等や、これらをフッ素化合物、シリコーン化合物等の通常公知の表面処理剤で処理したものを挙げることができる。有機紫外線吸収剤としては、例えば、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,4,6-トリアニリノ-p-(カルボ-2’-エチルヘキシル-1’-オキシ)-1,3,5-トリアジン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0043】
糖類としては、例えば、公知の三~八炭糖;デオキシ糖(例えば、2-デオキシ-D-リボース、6-デオキシ-L-ガラクトース、6-デオキシ-L-マンノース等);アミノ糖(例えば、D-グルコサミン、D-ガラクトサミン等);ウロン酸(例えば、D-グルクロン酸、D-マンヌロン酸等)等の単糖や、ショ糖、グンチアノース、ウンベリフェロース、ラクトース、プランテオース、イソリクノース類、α,α-トレハロース、ラフィノース、リクノース類、ウンビリシン、スタキオースベルバスコース類等のオリゴ糖等が挙げられる。
【0044】
保湿剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ムコイチン硫酸、カロニン酸、アテロコラーゲン、乳酸ナトリウム、胆汁酸塩、dl-ピロリドンカルボン酸塩、短鎖可溶性コラーゲン、ジグリセリン(EO)PO付加物、イザヨイバラ抽出物、セイヨウノコギリソウ抽出物、メリロート抽出物等が挙げられる。
【0045】
アミノ酸としては、例えば、中性アミノ酸(例えば、スレオニン、システイン等);塩基性アミノ酸(例えば、ヒドロキシリジン等)等が挙げられる。また、アミノ酸誘導体として、例えば、アシルサルコシンナトリウム(ラウロイルサルコシンナトリウム)、アシルグルタミン酸塩、アシルβ-アラニンナトリウム、グルタチオン、ピロリドンカルボン酸等が挙げられる。
【0046】
有機アミンとしては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、トリイソプロパノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール等が挙げられる。
【0047】
アルキレンオキシド誘導体としては、オキシエチレン鎖、オキシプロピレン鎖の長さが種々のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンジメチルエーテルが挙げられる。
【0048】
金属イオン封鎖剤としては、例えば、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジフォスホン酸、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジフォスホン酸四ナトリウム塩、エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0049】
酸化防止剤としては、例えば、トコフェロール、ビタミンC、ジブチルヒドロキシトルエン、ジブチルヒドロキシアニソール、ピロ亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、ジパルミチン酸アスコルビル等が挙げられる。
【0050】
酸化防止助剤としては、例えば、リン酸、クエン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、ケファリン、ヘキサメタフォスフェイト、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸等が挙げられる。
【0051】
その他の配合可能成分としては、例えば、防腐剤;美白剤;血行促進剤;各種抽出物;賦活剤;抗脂漏剤等が挙げられる。
【実施例0052】
本発明を詳細に説明するために以下に具体例を挙げるが、本発明はこれらの例のみに限定されるものではない。特に断りのない限り、「%」及び「wt%」とは「重量%(質量%)」を意味する。
【0053】
実施例1(球状硫酸バリウム-シリカの複合粉体の作製)
(第一工程)
硫化バリウムと硫酸とを反応させることで平均粒子径0.05μmの原料硫酸バリウム(乾燥時の顔料pH8.5)を調製した後、水洗することでスラリーとし、純水を加えてスラリーの濃度を135g/Lに調製した。該原料硫酸バリウムのスラリーに対し、硫酸ナトリウム〔無水〕(キシダ化学製、99%)を硫酸バリウムに対して0.8%になるよう添加して溶解し、30分間攪拌し、ろ過し、電気伝導度が40μm/S以下となるまで水洗した。水洗後の固形分を純水にリパルプしてスラリーの濃度が380g/Lになるよう調製し、該スラリーにシリカゾル(スノーテックスST-30、日産化学製)をBaSO4とSiO2の重量比が93:7となる割合で添加、混合した。
得られた混合物の一部を噴霧乾燥し、900℃で2時間焼成して得られた粉末に対し、「医薬部外品原料規格2021」の「硫酸バリウム」の規格に記載の「硫酸バリウム」の試験を行った結果、塩酸可溶物は15mg以下(8.0mg)であり、「可溶性バリウム塩」の試験を行った試験液の吸光度は0.03未満(0.004)であった。
このため、混合物をそのままマイクロミストスプレードライヤ(MDL-050CM、GF製)で噴霧乾燥し、得られた乾燥物を900℃で2時間焼成することにより、3.5μmの硫酸バリウムとシリカの球状複合粒子を調製した。得られた粒子の真球度は1.03であった。
(第二工程)
第一工程で得られた硫酸バリウムとシリカの球状複合粒子8kgを20L高速ミキサーに投入し、次いで、表面処理剤としてステアリン酸280gを添加し、1300rpmで攪拌混合した。この時、混合層の温度が脂肪酸の融点以上となるように100℃となってから5分経過後回転を止め、脂肪酸処理球状粒子である粉末1を得た。
【0054】
実施例2~7
硫酸バリウムとシリカの球状複合粒子に対して表面処理する脂肪酸の種類、及び、量を表1のように変更した以外は実施例1と同様にして脂肪酸処理球状粒子である粉末2~7を得た。
【0055】
【0056】
比較例1
実施例1の第一工程で得られた硫酸バリウムとシリカの球状複合粒子を比較粉末1とした。
【0057】
比較例2
実施例1の第一工程で得られた硫酸バリウムとシリカの球状複合粒子10gとステアリン酸0.35gを袋に投入した後に袋を5分間振とうさせ、ステアリン酸と球状複合粒子の混合物である粉末を比較粉末2とした。
【0058】
比較例3
実施例1の第一工程で得られた硫酸バリウムとシリカの球状複合粒子8kgを20L高速ミキサーに投入し、次いで、表面処理剤としてシリコーン(信越化学製:KF-9901)を添加し、1300rpmで攪拌混合した。その後、120℃一晩加熱し、得られた粉末を比較粉末3とした。
【0059】
比較例4
平均粒子径8μmのポリメタクリル酸メチル(松本油脂製薬株式会社製:マツモトマイクロスフェアM-100)を比較粉末4とした。
【0060】
比較例5
平均粒子径5μmの球状シリカ(日揮触媒化成株式会社製:SATINIER M5)を比較粉末5とした。
【0061】
比較例6
ステアリン酸の処理量を13wt%としたこと以外は実施例1と同様にして得られた脂肪酸処理球状粒子である粉末を比較粉末6とした。
【0062】
比較例7
比較例5の球状シリカに対して3.5wt%の処理量のステアリン酸処理をしたこと以外は実施例1と同様にして得られた脂肪酸処理球状粒子である粉末を比較粉末7とした。
【0063】
[粉体評価]
実施例1~7で得られた粉末1~7、及び、比較例1~7で得られた比較粉末1~7について、以下の方法により針入荷重の測定、撥水性、感触の評価を行った。これらの結果を表2に示す。
【0064】
<針入荷重>
φ25mm、厚さ4mmの丸形アルミ皿容器に擦り切りまで得られた粉体を3g入れ、ハンドプレスを用いて6MPaの荷重を5秒間掛け、成形体を作成した。作成した成形体に対してレオメーターを用いて直径1mmの針を1mm刺し込んだ時の荷重を3回測定し、その平均値を算出した。
<落下試験>
化粧料の成型品を高さ10cmから落下させ、欠けるまでの回数を測定し、平均値(n=5)を比較した。
<撥水性評価>
純水100mlの水面に各粉末1gを静かに載せ、60rpmでマグネットスターラーを用いて1分間撹拌した後に、撥水性を目視にて以下の基準で判定した。
〇:ほぼ全量の粉末が水面に浮いた状態である。
△:半分以上の粉末が水面に浮いた状態ではあるが、一部は水に馴染んだ状態である。
×:大部分の粉末が水に馴染んだ状態である。
<感触評価>
パネル(10名)が、各試料を長方形アルミ皿容器にハンドプレスを用いて得た成型体をパフにて肌に塗布した後、使用感(しっとりさ、べたつき感がない、均一でムラがない)の観点で5(良好)から1(悪い)までの5段階評価を行い、その平均点により評価した。
【0065】
【表2】
※比較例4、比較例5、比較例7はパフで取る際に崩れ、肌に塗布できなかった。
【0066】
表2に示した結果から、球状硫酸バリウム-シリカの複合粉体に脂肪酸を表面処理した実施例1~7は、針入荷重が高く、感触も良好であることがわかった。これに対して比較例1~3は、針入荷重が低いため、パフで取る際に肌に塗布する適量以上が付着し、肌馴染みが悪く感触は悪化した。また、球状硫酸バリウム-シリカの複合粉体とステアリン酸を単に混合しただけの比較例2ではステアリン酸が粒状に存在するため、パフで肌に塗布した際の感触が悪化した。また、脂肪酸量を多くした比較例6では、針入荷重が高いものの、脂肪酸が多いため球状粒子の良好な感触を阻害し、粉体自身のベタツキ感が増し感触が悪化した。樹脂粉末や球状シリカの比較例4~5及び7では、成型体を得ることができなかった。
【0067】
[パウダーファンデーション評価]
実施例1~7で得られた粉末1~7、及び、比較例1~7で得られた比較粉末1~7を用い、表3に記載の各成分をミキサーで混合し、プレス機を用いて押し固めてパウダーファンデーション1~14を作製した。得られたパウダーファンデーション1~14について、上記の方法により落下試験、感触の評価を行った。これらの結果を表4に示す。
【0068】
【表3】
(注1)HG-LFP(堺化学工業社製):硫酸バリウム98.9wt%、パルミチン酸1.0wt%、水酸化マグネシウム0.1wt%
(注2)FINEX-50S-LP2(堺化学工業社製):酸化亜鉛96wt%、ハイドロゲンジメチコン4wt%
(注3)MKR-1S(堺化学工業社製):酸化チタン98.5wt%、ハイドロゲンジメチコン1.5wt%
(注4)Y-2300X(ヤマグチマイカ社製):マイカ98wt%、ハイドロゲンジメチコン2wt%
(注5)PDM-5L( S)(トピー工業社製):金雲母98wt%、ハイドロゲンジメチコン2wt%
(注6)SA-タルクJA-46R(三好化成者製):タルク98wt%、ハイドロゲンジメチコン2wt%
(注7)SI-レッドR-516PS LHC(三好化成社製):ベンガラ98wt%、シイドロゲンジメチコン2wt%
(注8)SI-イエローLL-100P LHC(三好化成社製):黄酸化鉄98wt%、シイドロゲンジメチコン2wt%
(注9)SI-ブラックBL-100P LHC(三好化成社製):黒酸化鉄98wt%、シイドロゲンジメチコン2wt%
【0069】
【0070】
表4の結果から、実施例1~7の粉末を配合したパウダーファンデーション1~7は、いずれも針入荷重が高く、落下強度が強いことがわかった。パウダーファンデーション1~7は、パフに適量取れ、肌に塗布した際に伸びが良く、感触が良好であった。それに対し、比較例1~5、7の粉末を配合したファンデーション8~12及び14は針入荷重が低いことにより、成型体の固化力が低く、パフで取る際に肌に塗布する適量以上が付着し、感触は悪化した。比較例6の粉末を配合したファンデーション13については、針入荷重及び落下強度は高いものの、パフで取る量が適量以下となり、肌上での伸びが良くなかった。また、肌に塗布した際の感触は、配合した球状粉体の感触が影響してベタツキ感があり、感触が悪かった。