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  • 特開-車両の制御装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108676
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/04 20060101AFI20240805BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20240805BHJP
   B60W 10/10 20120101ALI20240805BHJP
【FI】
B60W10/00 104
B60W10/06
B60W10/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013160
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(74)【代理人】
【識別番号】100148910
【弁理士】
【氏名又は名称】宮澤 岳志
(72)【発明者】
【氏名】片山 裕隆
(72)【発明者】
【氏名】井上 直紀
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241AA01
3D241AC01
3D241AC15
3D241AC18
3D241AC19
3D241AE04
3D241AE31
3D241AE45
(57)【要約】
【課題】補機の負荷の変動等に伴う継続的な車体の揺動を抑制する。
【解決手段】内燃機関が出力するエンジントルクを内燃機関の主軸から自動変速機を介して車軸に伝達し走行する車両を制御するものであって、車体の振動が惹起されるときに、内燃機関の気筒に吸入される空気量を変化させるとともに自動変速機が具現する変速比を変更する車両の制御装置を構成した。より具体的には、車体の振動が惹起されるときに、内燃機関の気筒に吸入される空気量を増量しつつ自動変速機が具現する変速比をよりハイギア側に遷移させる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関が出力するエンジントルクを内燃機関の主軸から自動変速機を介して車軸に伝達し走行する車両を制御するものであって、
車体の振動が惹起されるときに、内燃機関の気筒に吸入される空気量を変化させるとともに自動変速機が具現する変速比を変更する車両の制御装置。
【請求項2】
車体の振動が惹起されるときに、内燃機関の気筒に吸入される空気量を増量しつつ自動変速機が具現する変速比をよりハイギア側に遷移させる請求項1記載の車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用車その他の車両を制御する制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原動機として内燃機関を搭載した車両には、当該内燃機関が出力するエンジントルクの一部の供与を受けて稼働する補機を配設することが多い。車室内を空調するエアコンディショナの冷媒圧縮用コンプレッサは、典型的な補機である。内燃機関とコンプレッサとの間には、両者を断接するマグネットクラッチが介在する。エアコンディショナの作動時には、クラッチを係合(締結、接続)させ、内燃機関によりコンプレッサを駆動する。エアコンディショナの非作動時には、クラッチを非係合(切断、開放)させてコンプレッサの駆動を停止する(例えば、下記特許文献を参照)。
【0003】
補機の存在は、内燃機関に対しては機械的な負荷となる。補機を稼働させると、補機がエンジントルクを消費するようになり、その分だけ車両の車軸ひいては駆動輪に入力されるトルクが減少する。このとき、ある限られた運転領域における話であるが、補機による負荷の変動に起因して車体にショックまたはサージが発生し、その後共振作用もあって車体の振動が続くことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-153359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、補機の負荷の変動等に伴う継続的な車体の揺動を抑制することを所期の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、内燃機関が出力するエンジントルクを内燃機関の主軸から自動変速機を介して車軸に伝達し走行する車両を制御するものであって、車体の振動が惹起されるときに、内燃機関の気筒に吸入される空気量を変化させるとともに自動変速機が具現する変速比を変更する車両の制御装置を構成した。
【0007】
より具体的には、車体の振動が惹起されるときに、内燃機関の気筒に吸入される空気量を増量しつつ自動変速機が具現する変速比をよりハイギア側に遷移させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、補機の負荷の変動等に伴う継続的な車体の揺動を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態における車両用内燃機関及び制御装置の構成を示す図。
図2】同実施形態における車両用エアコンディショナの構成を示す図。
図3】同実施形態の制御装置がプログラムに従い実行する処理の手順例を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。図1に、本実施形態における車両用内燃機関100の概要を示す。本内燃機関100は、火花点火式の4ストロークレシプロエンジンであり、複数の気筒1(例えば、直列三気筒ないし四気筒エンジン。図1には、そのうち一つを図示している)を具備している。各気筒1の吸気バルブよりも上流、各気筒1に連なる吸気ポートの近傍には、吸気ポートに向けて燃料を噴射するインジェクタ11を設けている。また、各気筒1の燃焼室の天井部に、点火プラグ12を取り付けてある。点火プラグ12は、点火コイルにて発生した誘導電圧の印加を受けて、中心電極と接地電極との間で火花放電を起こすものである。点火コイルは、半導体スイッチング素子であるイグナイタとともに、コイルケースに一体的に内蔵される。
【0011】
吸気を気筒1に供給するための吸気通路3は、外部から空気を取り入れて各気筒1の吸気ポートへと導く。吸気通路3上には、エアクリーナ31、吸気絞り弁である電子スロットルバルブ32、サージタンク33、吸気マニホルド34を、上流からこの順に配設している。
【0012】
排気を気筒1から排出するための排気通路4は、気筒1内で燃料を燃焼させたことで発生する排気を各気筒1の排気ポートから外部へと導く。排気通路4上には、排気マニホルド42及び排気浄化用の三元触媒41を配設している。
【0013】
内燃機関100には、当該内燃機関100が出力するエンジントルクの一部の供与を受けて稼働する補機51が付随する。その一つが、車両の室内の空調を行うエアコンディショナ5の冷媒圧縮用コンプレッサ51である。図2に、エアコンディショナ5の構成を例示する。エアコンディショナ5は、冷媒を圧縮し高圧化するコンプレッサ51と、圧縮された高圧冷媒を放熱させて液化させるコンデンサ52と、コンデンサ52を強制的に空冷するためのコンデンサファン53と、液化しなかった気体の冷媒を液化した冷媒から分離するレシーバ54と、液化した冷媒を噴出させるエキスパンションバルブ55と、噴出して気化した冷媒を受け入れ室内の空気と熱交換させるエバポレータ56と、高温化した内燃機関100の冷却水を受け入れ室内の空気と熱交換させるヒータコア59と、室内の空気を吸引しエバポレータ56に向けて吐出してその空気を再び室内に送り込むブロワファン57と、ブロワファン57から吐出されエバポレータ56を通り抜けた空気をどの程度ヒータコア59に吹き当てるかを調節するエアミックスダンパ50とを要素に含む。コンプレッサ51、コンデンサ52、レシーバ54、エキスパンションバルブ55及びエバポレータ56は、ループする冷媒流路により接続してある。
【0014】
コンプレッサ51は、内燃機関100の主軸(出力軸)であるクランクシャフトからエンジントルクの伝達を受けて回転駆動され、冷媒を圧縮する。内燃機関100のクランクシャフトとコンプレッサ51との間には、両者の接続を断接切換可能なマグネットクラッチ6が介在する。内燃機関100に従動するコンプレッサ51の回転数は、エンジン回転数に比例する。
【0015】
コンデンサ52は、車両のエンジンルームにおける走行風が当たる部位に配置しており、コンデンサファン53を回転させているか否かにかかわらず、車両の走行中にエンジンルームに吹き込む走行風により冷却される。コンデンサ52の背後には、内燃機関100の冷却水を放熱させるラジエータ58が控えている。ラジエータ58もまた、走行風により冷却される。
【0016】
コンデンサファン53は、内燃機関100の冷却水を放熱させるラジエータ58を強制的に空冷するためのラジエータファンをも兼ねている。コンデンサファン兼ラジエータファン53は、ラジエータ58の背後に位置し、前方から空気を吸引して後方に吐出することで、コンデンサ52及びラジエータ58をともに冷却する。
【0017】
ブロワファン57から吐出された空気は、エバポレータ56を通過する際に、冷媒から冷熱を得(冷媒に熱を奪われ)て低温化する。同時に、その空気に含まれていた水蒸気が凝縮してエバポレータ56に付着し、湿度が低下する。エバポレータ56は、夏期に室内の温度を低下させる冷房のためだけでなく、冬季に室内の湿度を低下させて車両の窓ガラスの曇りを低減する役割をも担う。
【0018】
エアミックスダンパ50は、エバポレータ56を通過した空気のうち、ヒータコア59を通過して室内に向かう空気の量と、ヒータコア59を迂回して室内に向かう空気の量との割合を調節する。このエアミックスダンパ50により、室内に吹き出す風の温度を調整することが可能である。
【0019】
冷媒圧縮用コンプレッサ51以外の補機としては、発電機(オルタネータまたはモータジェネレータ。図示せず)が挙げられる。発電機もまた、コンプレッサ51と同様、内燃機関100のクランクシャフトに機械的に接続し、エンジントルクの一部の供与を受けて稼働し発電を行う。
【0020】
内燃機関100のクランクシャフトと、車両の車軸(ドライブシャフト)103との間には、エンジントルクを車軸103まで伝達するためのトランスミッションが介在する。トランスミッションは、トルクコンバータ7及び自動変速機8、9を具備してなる。特に、変速機9として、ベルト式の無段変速機(Continuously Variable Transmission)9を採用することがある。勿論、トランスミッションの構成は、このようなものに限定されない。トランスミッションとして、有段自動変速機(Automatic Transmission)を採用することも当然に許される。
【0021】
本実施形態の車両の制御装置たるECU(Electronic Control Unit)0は、プロセッサ、メモリ、入力インタフェース、出力インタフェース等を有したマイクロコンピュータシステムである。ECU0は、複数基のECUまたはコントローラが、CAN(Controller Area Network)等の電気通信回線を介して相互に通信可能に接続されてなるものであることがある。
【0022】
ECU0の入力インタフェースには、車両の実車速を検出する車速センサ(または、車輪速センサ)から出力される車速信号a、内燃機関100のクランクシャフトの回転角度及びエンジン回転数を検出するクランク角センサから出力されるクランク角信号b、車両の運転者によるアクセルペダルの踏込量をアクセル開度(いわば、要求されるエンジン負荷率またはエンジントルク)として検出するセンサから出力されるアクセル開度信号c、内燃機関100の冷却水の温度を検出する水温センサから出力される冷却水温信号d、気筒1に向かって吸気通路3を流れる吸気(特に、サージタンク33若しくは吸気マニホルド34内)の吸気温及び吸気圧を検出する吸気温・吸気圧センサから出力される吸気温・吸気圧信号e、エバポレータ56またはその近傍(エバポレータ56の下流であることがある)の温度を検出する温度センサから出力されるエバポレータ温信号f、車両の加速度または車両が現在所在している路面の勾配を検出する加速度センサから出力される加速度信号g、車両の運転者が操作するシフトレバーの位置を検出するシフトポジションスイッチから出力されるシフトポジション信号h等が入力される。
【0023】
ECU0の出力インタフェースからは、点火プラグ12に付随するイグナイタに対して点火信号i、インジェクタ11に対して燃料噴射信号j、電子スロットルバルブ32に対して開度操作信号k、EGRバルブ23に対して開度操作信号l、マグネットクラッチ6に通電する電気回路上のスイッチに対してクラッチ締結信号m、発電機の制御回路に対して発電量(発電機が出力する電圧、電流若しくは電力)を指令する信号n、トルクコンバータ7のロックアップクラッチ73の断接切換用のロックアップソレノイドバルブに対して開度操作信号t、前後進切換機構または変速機構8のクラッチC1、C2、ブレーキB1の断接切換用のソレノイドバルブに対して開度操作信号u、CVT9に対して変速比制御信号v等を出力する。
【0024】
ECU0のプロセッサは、予めメモリに格納されているプログラムを解釈、実行し、運転パラメータを演算して内燃機関100の運転を制御する。ECU0は、内燃機関100の運転制御に必要な各種情報a、b、c、d、e、f、g、hを入力インタフェースを介して取得し、気筒1に吸入される空気量に見合った要求燃料噴射量、燃料噴射タイミング(一度の燃焼に対する燃料噴射の回数を含む)、燃料噴射圧、点火タイミング(一度の燃焼に対する火花点火の回数を含む)、要求EGR率(または、EGRガス量)、冷媒圧縮用コンプレッサ51の稼働のON/OFF、発電機の出力、トルクコンバータ7のロックアップを行うか否か、CVT9が具現するべき変速比等といった各種運転パラメータを決定する。ECU0は、運転パラメータに対応した各種制御信号i、j、k、l、m、n、t、u、vを出力インタフェースを介して印加する。
【0025】
ECU0は、エアコンディショナ5を作動させる旨の指令が車両の運転者を含む搭乗者によって与えられており、冷媒圧縮用コンプレッサ51を稼働させて冷媒の圧縮を実行するべき状況においては、クラッチ6を係合(締結)させ、内燃機関100のクランクシャフトとコンプレッサ51とを接続する。さすれば、内燃機関100の出力するエンジントルクがコンプレッサ51に供給され、コンプレッサ51が回転してコンプレッサ51による冷媒の吐出量及び吐出圧力が増大する。エアコンディショナ5を作動させる旨の指令は、例えば、搭乗者がコックピット内に設けられたエアコンスイッチを手指でONに操作することを通じて行われる。コンプレッサ51を稼働させるべき状況とは、典型的には、エバポレータ56またはその近傍の温度が所要の稼働条件温度以上に上昇したときである。
【0026】
そして、ECU0は、コンプレッサ51の稼働を停止するべき状況では、クラッチ6を非係合(開放)として、内燃機関100のクランクシャフトとコンプレッサ51とを切り離す。さすれば、内燃機関100の出力するエンジントルクがコンプレッサ51に供給されなくなり、コンプレッサ51の回転が停止して冷媒を圧縮しなくなる、つまりはコンプレッサ51による冷媒の吐出量及び吐出圧力が減少する。コンプレッサ51の稼働を停止するべき状況とは、典型的には、エバポレータ56またはその近傍の温度が所要のカット条件温度以下に低下したときである。エバポレータ56またはその近傍の温度が既に十分に低いならば、コンプレッサ51の出力をカットしても、エアコンディショナ5の冷房性能が必要十分に確保される。通常、カット条件温度は、稼働条件温度よりも低位の値である。
【0027】
コンプレッサ51は、内燃機関100に対する機械的な負荷となる。クラッチ6を係合しコンプレッサ51を稼働させることで、内燃機関100にかかる負荷がステップ的に急増し、同時に内燃機関100側から車軸103側に供給される駆動トルクがステップ的に急減し得る。それ故、一般に、コンプレッサ51を稼働させる際には、同じアクセルペダルの踏込量に対するスロットルバルブ32の開度をより大きく拡大し、気筒1に吸入される空気量をより増量する(充填効率をより増大させる)。並びに、吸入空気量に比例して燃料噴射量を増量する。これにより、内燃機関100が出力するエンジントルクを増大させ、以てコンプレッサ51が消費するエンジントルクを補う。
【0028】
しかしながら、それでもなお、クラッチ6の係合による負荷の変動をきっかけとして車体にショックまたはサージが発生し、その後共振作用もあって車体の振動が続くことがあった。これは、ある限られた運転領域[エンジン回転数,エンジン負荷率(充填効率)]においてのみ生起する事象ではあるが、搭乗者に知覚される周波数(2.5kHz程度)の前後の揺動が車体に生じるので、搭乗者に違和感を与える懸念がある。
【0029】
搭乗者に知覚されるような継続的な車体の揺動を抑止するため、本実施形態のECU0は、図3に示すように、車速及び/またはエンジン回転数の直近の一定時間内の変化量が所定値以下である定常走行中(ステップS1。但し、当該ステップS1の条件は必須ではない)、車体の振動が惹起される場合(ステップS2)、そうでない場合と比較してスロットルバルブ32の開度をさらに大きく拡大して、気筒1に吸入される空気量をさらに増量する(充填効率をさらに増大させる。ステップS3)。並びに、吸入空気量に比例して燃料噴射量を一層増量する。
【0030】
ステップS2では、例えば、車速センサが出力する車速信号aをサンプリングして得られる車速の時系列を基に、その時系列が所定の条件を満たしているか否かにより、車体にショックまたはサージが発生したか否かを判定する。車速の時系列に上下動または車速の振動が生じ、その変化量または振幅(極大値と極小値との差であることがある)が所定値を超えて大きい、及び/または、ある周波数帯(周波数の範囲)に属する振動成分の振幅が所定値を超えて大きい、等を条件として、車体の振動が惹起されたと判断することができる。
【0031】
あるいは、加速度センサが出力する加速度信号gをサンプリングして得られる加速度の時系列を基に、その時系列が所定の条件を満たしているか否かにより、車体にショックまたはサージが発生したか否かを判定しても構わない。加速度の時系列に上下動または加速度の振動が生じ、その変化量または振幅が所定値を超えて大きい、及び/または、ある周波数帯に属する振動成分の振幅が所定値を超えて大きい、等を条件として、車体の振動が惹起されたと判断することができる。
【0032】
ステップS3は、運転領域、特に内燃機関100の充填効率を、車体の振動が生じやすい領域から離脱させる意図である。ステップS3により、車体の揺れを効果的に抑止できる。
【0033】
尤も、スロットルバルブ32を拡開し吸入空気量を増量することで、内燃機関100の出力するエンジントルクが増大し、そのままでは車軸103に入力される駆動トルクも増大して、運転者の意思によらず車両が加速してしまう可能性がある。そこで、ECU0は、ステップS3のスロットルバルブ32の拡開操作と同期して、CVT9の変速比をそれまでよりもハイギア側に、即ち変速比(減速比)の値がより小さくなるように変更する協調制御を実行する(ステップS4)。ステップS4は、ステップS3に起因する駆動トルクの変動を打ち消す方向の(駆動トルクの変動をある範囲以下に収めるための)の操作であって、ステップS3の実行直前と実行直後との間で車軸103側に供給される出力をほぼ等価にする。
【0034】
本実施形態では、内燃機関100が出力するエンジントルクを内燃機関100の主軸から自動変速機9を介して車軸103に伝達して走行し、また同内燃機関100の主軸に機械的に接続しエンジントルクの一部の供与を受けて稼働する補機51が付随する車両を制御するものであって、前記補機51による前記内燃機関100に対する負荷の変動に伴い車体の振動が惹起されるときに、内燃機関100の気筒1に吸入される空気量を増量しつつ自動変速機9が具現する変速比をよりハイギア側に遷移させる制御装置0を構成した。
【0035】
本実施形態によれば、車体にショックまたはサージが発生したとしても、車体の揺動が継続することを効果的に抑止できる。また、本実施形態の制御を実装するにあたり、新たなハードウェアの追加は不要であり、徒にコストを増大させずに済む。
【0036】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。
【0037】
上記実施形態では、ショックまたはサージの振動を感知したときに(ステップS2)、内燃機関100のスロットルバルブ32の開度をそれまでよりも拡大して充填効率を増大させ(ステップS3)かつCVT9の変速比をそれまでよりもハイギア側に遷移させる(ステップS4)ようにしていた。これとは逆に、例えば、稼働していたコンプレッサ51を停止させるべくクラッチ6を切り離した(コンプレッサ51による内燃機関100に対する機械的な負荷がステップ的に急減する)ことに伴い、車体にショックまたはサージが発生したことを感知したときに(ステップS2)、内燃機関100のスロットルバルブ32の開度をそれまでよりも縮小して充填効率を低減させ(ステップS3)かつCVT9の変速比をそれまでよりもローギア側に遷移させる(ステップS4)ように制御することも考えられる。
【0038】
既に述べたとおり、車両の駆動系に実装する自動変速機は、ベルト式CVT9に限定されない。自動変速機として他の方式のCVTや有段ATを実装している場合にも、本発明に係る制御手法を実施できることは言うまでもない。
【0039】
その他、各部の具体的な構成や処理の手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0040】
0…制御装置(ECU)
100…内燃機関
1…気筒
32…スロットルバルブ
9…自動変速機(CVT)
103…車軸
a…車速信号
g…加速度信号
j…燃料噴射信号
k…スロットルバルブの開度制御信号
v…変速比制御信号
図1
図2
図3