(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010868
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】発炎筒投下装置
(51)【国際特許分類】
G08B 5/40 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
G08B5/40 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112422
(22)【出願日】2022-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】507230382
【氏名又は名称】首都高メンテナンス西東京株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】523242745
【氏名又は名称】西尾レントオール株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】509150950
【氏名又は名称】株式会社アドバンスクリエート
(74)【代理人】
【識別番号】100193116
【弁理士】
【氏名又は名称】守田 敏宏
(72)【発明者】
【氏名】坪山 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 克彦
(72)【発明者】
【氏名】横井 修司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 秀樹
(57)【要約】
【課題】発炎筒を安定して着火し路面上に投下する。
【解決手段】発炎筒投下装置100は、複数の発炎筒9を収容する収容部10と、収容部10に対して移動可能に設けられ、収容部10に収容された発炎筒9を把持して収容部10から発炎筒9を取出し、発炎筒9を解放して路面に投下する把持具20と、 把持具20が発炎筒9を収容部10から取出してから発炎筒9を解放するまでの間に把持具20に把持された発炎筒9にレーザを照射して発炎筒9を着火するレーザ照射部30と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、発炎筒を着火して路面に投下する発炎筒投下装置であって、
複数の前記発炎筒を収容する収容部と、
前記収容部に対して移動可能に設けられ、前記収容部に収容された前記発炎筒を把持して前記収容部から前記発炎筒を取出し、前記発炎筒を解放して前記路面に投下する把持具と、
前記把持具が前記発炎筒を前記収容部から取出してから前記発炎筒を解放するまでの間に前記把持具に把持された前記発炎筒にレーザを照射して前記発炎筒を着火するレーザ照射部と、を備える、
発炎筒投下装置。
【請求項2】
開口を有し、前記把持具が前記収容部から前記発炎筒を取出すときに前記把持具が前記開口を通過する壁部と、
前記壁部に設けられ、前記開口を開閉する開閉部材と、を更に備え、
前記開閉部材は、前記レーザ照射部が前記発炎筒に前記レーザを照射するときには、前記開口を閉じる、
請求項1に記載の発炎筒投下装置。
【請求項3】
前記開口を閉じる方向に前記開閉部材を付勢する付勢部材を更に備え、
前記把持具が前記収容部に入るときには、前記開閉部材は、前記把持具により押されて前記付勢部材の付勢力に抗して前記開口を開ける方向に変位し、
前記把持具が前記収容部から出るときには、前記開閉部材は、前記付勢部材により付勢されて前記開口を閉じる方向に変位する、
請求項2に記載の発炎筒投下装置。
【請求項4】
前記把持具から解放された前記発炎筒を前記路面に誘導する誘導ダクトを更に備え、
前記誘導ダクトは、前記車両の前後方向に対して傾斜し前記発炎筒の解放位置に対して前記車両の左右のいずれかの方向に前記発炎筒を誘導する傾斜部を有する、
請求項1に記載の発炎筒投下装置。
【請求項5】
前記誘導ダクトを脱着可能に支持するベース部材を更に備え、
前記ベース部材は、前記誘導ダクトの脱着により、前記傾斜部を前記車両の左に向けた左向状態と、前記傾斜部を前記車両の右に向けた右向状態と、に前記誘導ダクトの状態を変更可能である、
請求項4に記載の発炎筒投下装置。
【請求項6】
前記誘導ダクトを鉛直軸周りに回動可能に支持するベース部材を更に備える、
請求項4に記載の発炎筒投下装置。
【請求項7】
前記把持具により把持された前記発炎筒の移動経路上に設けられ、前記発炎筒の移動を制限する制限部材を更に備え、
前記把持具は、前記発炎筒の移動が前記制限部材により制限された状態で移動することにより前記発炎筒を解放する、
請求項1に記載の発炎筒投下装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発炎筒投下装置に関する。
【背景技術】
【0002】
道路で発生した事故の処理や、道路に関連する工事等を行う場合、走行する車両のドライバーへの注意喚起や車両の交通規制を目的に発炎筒が十数メートル毎に複数本(多いときには100本以上)路面上に配置される。発炎筒を着火し路面に配置する作業を道路上で作業者が行うと、作業者は、道路を走行する車両による接触事故の危険に晒される。このような理由から、発炎筒の着火と投下を行う装置を作業車両に搭載することが提案されている(特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載された投下装置は、発炎筒を把持する操作具を備える。操作具は、収容部から発炎筒を脱落不可に把持し、擦り板に擦り付けて発炎筒を着火し、着火した発炎筒を離脱させて、路面に向けて排出するための排出口から発炎筒を排出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された投下装置では、発炎筒を擦り板に擦り付けて着火するため、発炎筒の着火を繰り返すと擦り板が摩耗する。また、発炎筒の着火時に擦りカスが擦り板に付着することがある。擦り板の摩耗や擦り板への擦りカスの付着が生じると、擦り板が劣化し、発炎筒を安定して着火できなくなるおそれがある。
【0006】
本発明は、発炎筒を安定して着火し路面上に投下することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、車両に搭載され、発炎筒を着火して路面に投下する発炎筒投下装置であって、複数の発炎筒を収容する収容部と、収容部に対して移動可能に設けられ、収容部に収容された発炎筒を把持して収容部から発炎筒を取出し、発炎筒を解放して路面に投下する把持具と、把持具が発炎筒を収容部から取出してから発炎筒を解放するまでの間に投下具に把持された発炎筒にレーザを照射して発炎筒を着火するレーザ照射部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、発炎筒を安定して着火し路面上に投下することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】(A)は、本発明の実施形態に係る発炎筒投下装置を搭載した車両の側面図であり、(B)は、
図1(A)に示す車両の平面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る発炎筒投下装置により着火・投下される発煙筒の斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る発炎筒投下装置の内部構造の概略を示す平面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る把持具及びレーザ照射部の周辺を示す図であり、(A)は、
図3に示す矢印IVAの方向に把持具及びレーザ照射部を見た図(側面図)であり、(B)~(E)は、
図4(A)に示す矢印IVB、矢印IVC、矢印IVD及び矢印IVEの方向に把持具及びレーザ照射部をそれぞれ見た図(平面図、底面図、正面図及び背面図)である。
【
図5】
図4に示す状態から円板が90°回転した状態を、
図4(A)~(E)に対応して示す。
【
図6】
図5に示す状態から円板が更に90°回転した状態を、
図4(A)~(E)に対応して示す。
【
図7】発炎筒の点火面とレーザ照射部との位置関係を示す図である。
【
図8】(A)は、
図4(A)に示すVIIIA部の拡大図であり、(B)は、
図8(A)に示すVIIIB-VIIIB線に沿う断面図である。
【
図9】(A)は、開閉部材が閉じている状態を
図8(B)に対応して示す図であり、(B)は、
図9(A)に示す状態から把持具を収容部に近づけた状態を
図8(B)に対応して示す図である。
【
図10】発炎筒の投下位置と車両の交通規制を行う車線との関係を説明するための図であり、(A)は、発炎筒の解放位置に対して車両の左方向に誘導するように傾斜部を設定したときの図であり、(B)は、発炎筒の解放位置に対して車両の右方向に誘導するように傾斜部を設定したときの図である。
【
図11】本発明の実施形態に係る発炎筒投下装置を搭載した車両の変形例を示す側面図である。
【
図12】本発明の実施形態に係る発炎筒投下装置を搭載した車両の別の変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0011】
図1(A)は、本発明の実施形態に係る発炎筒投下装置100を搭載した車両1の側面図であり、
図1(B)は、
図1(A)に示す車両1の平面図である。
図1(A)及び(B)に示すように、車両1は、荷台2と、荷台2の左右側部アオリ3aと、荷台2の後部アオリ3bと、を備えている。発炎筒投下装置100は、荷台2に設置されている。
【0012】
車両1の運転室4には、タッチパネル収納ボックス4aと、遠隔操作ボックス4bと、制御盤4cと、が設けられている。本実施形態では、作業者が運転室4内でタッチパネル収納ボックス4a及び遠隔操作ボックス4bを操作すると、発炎筒投下装置100が駆動され、発炎筒9が着火され路面に投下されるように構成される。
【0013】
図2は、発炎筒9の斜視図である。
図2に示すように、発炎筒9は、棒状の胴体9aと、胴体9aの一端に設けられた点火部9bと、胴体9aの他端を覆うホルダ9cと、を備える。ホルダ9cには、転がり防止用の四角形状の鍔体9dが形成されている。点火部9bに熱を加えることにより、発炎筒9は着火する。点火部9bが設けられた端面を、「点火面9e」とも称する。
【0014】
図3は、発炎筒投下装置100の内部構造の概略を示す平面図である。なお、
図3では、発炎筒投下装置100のカバーの図示を省略している。実際には、発炎筒投下装置100は、不図示のカバーを備えており、発炎筒投下装置100の内部構造が見えないようになっている。
【0015】
図3に示すように、発炎筒投下装置100は、複数の発炎筒9を収容する収容部10を備える。収容部10には、駆動プーリー11と、複数の従動プーリー12が設けられる。駆動プーリー11と複数の従動プーリー12にはタイミングベルト13が掛け回されている。
【0016】
タイミングベルト13には、多数の仕切り体14が等間隔に立設されており、仕切り体14の間に不図示のカートリッジが設けられている。各カートリッジに発炎筒9がセットされる。
【0017】
駆動プーリー11に連結された不図示のモータを駆動すると、駆動プーリー11が回転し、タイミングベルト13が
図3に示す矢印の方向に移動する。これにより、発炎筒9がタイミングベルト13の進行方向に運ばれる。
【0018】
図3に示す例では、従動プーリー12は4つ設けられており、タイミングベルト13はコ字状に駆動プーリー11及び複数の従動プーリー12に掛け回されている。そのため、タイミングベルト13を長くすることができ、発炎筒9の収容本数を増加させることが可能である。
【0019】
発炎筒投下装置100は、収容部10に対して移動可能に設けられた把持具20と、把持具20に把持された発炎筒9にレーザを照射して発炎筒9を着火するレーザ照射部30と、を備えている。把持具20は、タイミングベルト13により順次運ばれた発炎筒9を把持して収容部10から発炎筒9を取出し、発炎筒9を解放して路面に投下する。把持具20の動作を、
図4ないし
図6を参照して詳述する。
【0020】
図4は、把持具20及びレーザ照射部30の周辺を示す図である。
図4(A)は、
図3に示す矢印IVAの方向に把持具20及びレーザ照射部30を見た図(側面図)である。
図4(B)は、
図4(A)に示す矢印IVBの方向に把持具20及びレーザ照射部30を見た図(平面図)であり、
図4(C)は、
図4(A)に示す矢印IVCの方向に把持具20及びレーザ照射部30を見た図(底面図)である。
図4(D)は、
図4(A)に示す矢印IVDの方向に把持具20及びレーザ照射部30を見た図(正面図)であり、
図4(E)は、
図4(A)に示す矢印IVEの方向に把持具20及びレーザ照射部30を見た図(背面図)である。なお、
図4において、発炎筒9の点火部9bと鍔体9dの図示を省略している。
【0021】
把持具20は、互いに間隔を空けて設けられた一対の板バネ21a、21bと、一対の板バネ21a、21bを支持する移動体22と、を備えている。移動体22は、板状の部材を折り曲げることによって形成されており、一方の平面部に一対の板バネ21a、21bが取り付けられている。移動体22における他方の平面部は、曲げ筋に沿って延びている。
【0022】
発炎筒投下装置100は、スリット41を有するベース部材40を備えており、スリット41に移動体22における他方の平面部が挿入されている。スリット41は、所定の方向(
図4(A)における左右方向)に延びており、移動体22は、スリット41内を所定の方向に移動可能である。移動体22がスリット41の一端(
図4(A)における右側端部)に向かって移動すると、一対の板バネ21a、21bが収容部10の内部に進入する。移動体22がスリット41の他端(
図4(A)における左側端部)に向かって移動すると、一対の板バネ21a、21bが収容部10から退出する。
【0023】
一対の板バネ21a、21bが収容部10の内部に進入すると、収容部10に収容された発炎筒9が一対の板バネ21a、21bによって挟まれる。このとき、一対の板バネ21a、21bは、発炎筒9により押し広げられ、発炎筒9に一対の板バネ21a、21bの復元力が作用する。これにより、発炎筒9が一対の板バネ21a、21bにより把持される。
【0024】
一対の板バネ21a、21bが発炎筒9を把持した状態で移動体22がスリット41の他端(
図4(A)における左側端部)に向かって移動すると、一対の板バネ21a、21bが収容部10から退出する。これにより、収容部10から発炎筒9が取出される。
【0025】
把持具20は、駆動源としてのモータ42の駆動により移動する。モータ42は、変速機43を介して円板44に連結されている。モータ42が駆動されると、円板44は回転する。円板44は、回転運動を直線運動に変換するスコッチヨーク機構45を介して把持具20の移動体22に連結される。
【0026】
スコッチヨーク機構45は、円板44に取り付けられた移動子45aと、移動体22に取り付けられた棒状部材45bと、を含む。移動子45aは、円板44の回転軸から離れて位置している。円板44が回転すると、移動子45aは、円板44の回転軸の周りに移動する。棒状部材45bには溝45cが形成されており、溝45cに移動子45aが挿入されている。溝45cは、円板44の回転軸が延びる方向と、スリット41が延びる方向と、に交差する方向(
図4(A)における上下方向)に延びている。
【0027】
図4は、移動子45aが収容部10に最も近づいた状態(
図4(A)における最も右側に移動した状態)を示す。
図5は、
図4に示す状態から円板44が90°回転した状態(
図5(A)における最も上側に移動子45aが移動した状態)を示し、
図5(A)~(E)は、
図4(A)~(E)に対応する図である。なお、
図5においても、発炎筒9の点火部9bと鍔体9dの図示を省略している。
【0028】
図4に示す状態から円板44が90°回転すると、移動子45aは、棒状部材45bを収容部10から離す方向(
図4(A)に示す左方向)に押しつつ溝45cに沿って移動する。これにより、
図5に示すように、棒状部材45bは、収容部10から離れる方向に移動する。棒状部材45bに把持具20の移動体22が取り付けられているため、棒状部材45bの移動により、把持具20は、収容部10から離れる方向に移動する。
【0029】
図6は、
図5に示す状態から円板44が更に90°回転した状態(
図6(A)における最も上側に移動子45aが移動した状態)を示し、
図6(A)~(E)は、4(A)~(E)に対応する図である。なお、
図6においても、発炎筒9の点火部9bと鍔体9dの図示を省略している。
【0030】
図5に示す状態から円板44が90°更に回転すると、移動子45aは、棒状部材45bを収容部10から離す方向(
図5(A)に示す左方向)に更に押しつつ溝45cに沿って移動する。これにより、
図6に示すように、棒状部材45b及び把持具20は、収容部10から最も離れた位置に移動する。
【0031】
図示を省略するが、
図6に示す状態から円板44が90°更に回転すると、移動子45aは、棒状部材45bを収容部10に近づける方向(
図6(A)に示す右方向)に押しつつ溝45cに沿って移動する。これにより、棒状部材45b及び把持具20は、収容部10に近づく方向に移動する。
図6に示す状態から円板44が180°回転すると、棒状部材45b及び把持具20は、収容部10に最も近づいた位置に移動する。すなわち、
図4に示す状態に戻る。
【0032】
このように、把持具20は、モータ42の駆動により往復移動する。把持具20を往復移動させる機構は、モータ42及びスコッチヨーク機構45を用いた形態に限られない。把持具20を往復移動させる機構は、モータ42及びスライダクランク機構を用いた形態であってもよいし、流体圧シリンダなどの往復動型駆動機器であってもよい。
【0033】
図5(A)~(E)に示すように、把持具20が収容部10から離れる方向(
図5(A)における左方向)に移動すると、発炎筒9は、収容部10から取出される。
【0034】
図6(A)~(E)に示すように、把持具20が収容部10から最も離れる位置に移動するときの発炎筒9の移動経路上には、発炎筒9の移動を制限する制限部材50が設けられる。制限部材50は、ベース部材40に取り付けられている。
【0035】
把持具20の移動は、制限部材50によって制限されず、許容される。そのため、
図6(A)~(E)に示す位置まで把持具20が移動するときには、把持具20は、発炎筒9の移動が制限部材50により制限された状態で移動することになる。そのため、発炎筒9は、一対の板バネ21a、21bを押し広げ、一対の板バネ21a、21bの間から抜け出る。その結果、発炎筒9は、把持具20から解放され、路面に投下される。
【0036】
このように、把持具20は、収容部10に収容された発炎筒9を把持して収容部10から発炎筒9を取出し、発炎筒9を解放して路面に投下する。
【0037】
把持具20が発炎筒9を収容部10から取出し
図5に示す位置に到達すると、モータ42は停止し、把持具20が停止する。その後、レーザ照射部30は、把持具20に把持された発炎筒9(より具体的には、発炎筒9の点火部9b)にレーザを照射する。これにより、点火部9bに熱が加えられ、発炎筒9は着火する。発炎筒9の着火後、モータ42は駆動され、把持具20を
図6に示す位置に移動させる。これにより、着火した発炎筒9が路面に投下される。
【0038】
このように、レーザ照射部30は、把持具20が発炎筒9を収容部10から取出してから発炎筒9を解放するまでの間に把持具20に把持された発炎筒9にレーザを照射して発炎筒9を着火する。そのため、発炎筒9の着火時においても発炎筒9とレーザ照射部30との接触は生じない。したがって、摩耗や擦りカスの付着が生じることがなく、繰り返し発炎筒9を安定して着火し路面上に投下することができる。
【0039】
把持具20の移動及びその停止、並びにレーザ照射部30によるレーザの出射及びその停止は、円板44の回転角度に基づいて制御される。円板44の回転角度は、例えば回転角度センサによって検出される。把持具20及びレーサ照射部30の制御は、円板44の回転角度を検出して行う形態に限られず、移動子45a、棒状部材45b又は把持具20の位置を検出して行ってもよい。移動子45a、棒状部材45b又は把持具20の位置は、例えばタッチセンサを用いて検出される。
【0040】
図7は、発炎筒9の点火面9eとレーザ照射部30との位置関係を示す図である。
図7に示すように、レーザ照射部30は、点火面9eに対して傾斜する方向にレーザを出射し、点火面9eの中心にある点火部9bに照射する。なお、レーザ照射位置は
図7に示すように必ずしも点火面9eの中心である必要はなく、発炎筒9を着火できる限り点火面9eの中心から多少ずれていても良い。
【0041】
本発明は、把持具20が停止したときにレーザ照射部30がレーザを出射する形態に限られず、把持具20を移動しながらレーザ照射部30がレーザを発炎筒9に照射して発炎筒9を着火してもよい。
【0042】
図4~
図6に示すように、発炎筒投下装置100は、ベース部材40に固定された壁部60を備える。壁部60には開口61が形成されている。把持具20が収容部10から発炎筒9を取り出すときには、把持具20が開口61を通過する。壁部60は、収容部10の一部であってもよいし、収容部10とは別の部分であってもよい。
【0043】
壁部60には、開口61を開閉する開閉部材62が設けられる。開閉部材62は、回転式の扉である。開閉部材62は、回転式に限られず、スライド式であってもよく、開口61を開閉できればよい。
【0044】
図5に示すように、開閉部材62は、レーザ照射部30が発炎筒9にレーザを照射するときには、開口61を閉じる。そのため、開口61におけるレーザ及び火の進行は、開閉部材62によって遮られる。したがって、レーザが収容部10に収容された発炎筒9に照射されたり着火した発炎筒9の火が収容部10に収容された発炎筒9に移ったりすることを防止することができる。
【0045】
収容部10に収容された発炎筒9の着火をより確実に防止するために、壁部60及び開閉部材62は、防火性能を有することが好ましい。
【0046】
図6に示すように、把持具20が発炎筒9を解放し投下するときにも、開閉部材62は開口61を閉じていることが好ましい。この場合には、着火した発炎筒9の投下時に投下される発炎筒9の火が収容部10に収容された発炎筒9に移ることを防止することができる。
【0047】
図8(A)は、
図4(A)に示すVIIIA部の拡大図であり、
図8(B)は、
図8(A)に示すVIIIB-VIIIB線に沿う断面図である。
図8(A)及び(B)に示すように、発炎筒投下装置100は、開口61を閉じる方向に開閉部材62を付勢する付勢部材としてのばね蝶番63を備えている。
【0048】
ばね蝶番63の一端は、壁部60に固定されており、ばね蝶番63の他端は、開閉部材62に固定されている。ばね蝶番63は、変形した状態で壁部60と開閉部材62とに渡って設けられており、復元力を発揮する。この復元力により、ばね蝶番63は、開口61を閉じる方向に開閉部材62を付勢する
【0049】
付勢部材は、ばね蝶番63に限られず、壁部60と開閉部材62とに渡って設けられるコイルばねであってもよい。
【0050】
把持具20には、移動体22から把持具20の移動方向に突出する一対の突出部23a、23bが設けられる。突出部23a、23bは互いに離れており、突出部23a、23bの間に発炎筒9を配置可能である。
【0051】
図9(A)は、開閉部材62が閉じている状態を
図8(B)に対応して示す図であり、
図9(B)は、
図9(A)に示す状態から把持具20を収容部10に近づけた状態を
図8(B)に対応して示す図である。
【0052】
図9(A)に示すように、把持具20が開閉部材62から離れている状態では、突出部23a、23bは、一対の板バネ21a、21bよりも開閉部材62に近い。そのため、
図9(B)に示すように、把持具20を収容部10に近づけると、突出部23a、23bが開閉部材62に接触し、開閉部材62は、突出部23a、23bにより押されて開口61を開ける方向に変位する。把持具20を更に移動させることで、
図8(B)に示すように、開閉部材62の間に突出部23a、23bが挿入される。
【0053】
図示を省略するが、把持具20が収容部10から出るときには、突出部23a、23bに伴って、開閉部材62は、ばね蝶番63により付勢されて開口61を閉じる方向に変位。突出部23a、23bが開口61から抜き出されると、
図9(A)に示すように、開閉部材62が閉じられる。
【0054】
このように、把持具20が収容部10に入るときには、開閉部材62は、把持具20により押されてばね蝶番63の付勢力に抗して開口61を開ける方向に変位し、把持具20が収容部10から出るときには、開閉部材62は、ばね蝶番63により付勢されて開口61を閉じる方向に変位する。そのため、把持具20が収容部10から発炎筒9を取出したときには、開口61は開閉部材62により閉じられる。したがって、レーザが収容部10に収容された発炎筒9に照射されたり着火した発炎筒9の火が収容部10に収容された発炎筒9に移ったりすることをより確実に防止することができる。
【0055】
発炎筒9を把持する一対の板バネ21a、21bとは異なる突出部23a、23bがばね蝶番63の付勢力に抗して開閉部材62を押すため、板バネ21a、21bは開閉部材62を開くときに変形しない。したがって、一対の板バネ21a、21bを用いて発炎筒9をより確実に把持することができる。
【0056】
図1に示すように、発炎筒投下装置100は、把持具20(
図4等参照)から解放された発炎筒9を路面に誘導する誘導ダクト70を更に備える。誘導ダクト70は、把持具20が発炎筒9を解放する位置(以下、「発炎筒9の解放位置」とも称す)の下方に位置し鉛直に延びる鉛直部71と、鉛直部71に接続された傾斜部72と、を有する。
【0057】
傾斜部72は、車両1の前後方向に対して傾斜し発炎筒9の解放位置に対して車両1の左右のいずれかの方向に発炎筒9を誘導する。そのため、発炎筒9は、車両1の左側と右側のいずれかに投下される。したがって、車両の交通規制を行う車線に合わせて発炎筒9を容易に投下することができる。
【0058】
図10は、発炎筒9の投下位置と車両の交通規制を行う車線との関係を説明するための図である。
図10(A)は、発炎筒9の解放位置に対して車両1の左方向に誘導するように傾斜部72を設定したときの図であり、
図10(B)は、発炎筒9の解放位置に対して車両1の右方向に誘導するように傾斜部72を設定したときの図である。
【0059】
図10(A)に示すように、発炎筒9の解放位置に対して車両1の左方向に誘導するように傾斜部72を設定したときには、発炎筒9は、車両1の左側に投下される。そのため、例えば片側2車線の道路において右側の車線に対して高通規制を行うのに適している。
図10(B)に示すように、発炎筒9の解放位置に対して車両1の右方向に誘導するように傾斜部72を設定したときには、発炎筒9は、車両1の右側に投下される。そのため、例えば片側2車線の道路において左側の車線に対して高通規制を行うのに適している。
【0060】
誘導ダクト70は、ベース部材40(
図4等参照)に着脱自在に支持される。ベース部材40は、誘導ダクト70の脱着により、傾斜部72を車両1の左に向けた左向状態(
図10(A)に示す状態)と、傾斜部72を車両1の右に向けた右向状態(
図10(B)に示す状態)と、に誘導ダクト70の状態を変更可能である。そのため、発炎筒9を車両1の左側に投下するか、発炎筒9を車両1の右側に投下するか、を容易に切り替えることができる。したがって、車両の交通規制を行う車線に合わせて発炎筒9の投下位置を容易に変更することができる。
【0061】
ベース部材40は、誘導ダクト70を鉛直軸周りに回動可能に支持してもよい。この場合においても、発炎筒9を車両1の左側に投下するか、発炎筒9を車両1の右側に投下するか、を容易に切り替えることができる。したがって、車両の交通規制を行う車線に合わせて発炎筒9の投下位置を容易に変更することができる。
【0062】
なお、誘導ダクト70は、鉛直部71を有しておらず、傾斜部72のみを有する形態であってもよい。この場合においても、発炎筒9は、車両1の左側と右側のいずれかに投下される。したがって、車両の交通規制を行う車線に合わせて発炎筒9を容易に投下することができる。
【0063】
以上の実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0064】
本実施形態では、レーザ照射部30は、把持具20が発炎筒9を収容部10から取出してから発炎筒9を解放するまでの間に把持具20に把持された発炎筒9にレーザを照射して発炎筒9を着火する。そのため、発炎筒9の着火時においても発炎筒9とレーザ照射部30との接触は生じない。したがって、摩耗や擦りカスの付着が生じることがなく、繰り返し発炎筒9を安定して着火し路面上に投下することができる。
【0065】
開閉部材62は、レーザ照射部30が発炎筒9にレーザを照射するときには、開口61を閉じる。そのため、開口61におけるレーザ及び火の進行は、開閉部材62によって遮られる。したがって、レーザが収容部10に収容された発炎筒9に照射されたり着火した発炎筒9の火が収容部10に収容された発炎筒9に移ったりすることを防止することができる。
【0066】
把持具20が収容部10に入るときには、開閉部材62は、把持具20により押されてばね蝶番63の付勢力に抗して開口61を開ける方向に変位し、把持具20が収容部10から出るときには、開閉部材62は、ばね蝶番63により付勢されて開口61を閉じる方向に変位する。そのため、把持具20が収容部10から発炎筒9を取出したときには、開口61は開閉部材62により閉じられる。したがって、レーザが収容部10に収容された発炎筒9に照射されたり着火した発炎筒9の火が収容部10に収容された発炎筒9に移ったりすることをより確実に防止することができる。
【0067】
傾斜部72は、車両1の前後方向に対して傾斜し発炎筒9の解放位置に対して車両1の左右のいずれかの方向に発炎筒9を誘導する。そのため、発炎筒9は、車両1の左側と右側のいずれかに投下される。したがって、車両の交通規制を行う車線に合わせて発炎筒9を容易に投下することができる。
【0068】
ベース部材40は、誘導ダクト70の脱着により、傾斜部72を車両1の左に向けた左向状態と、傾斜部72を車両1の右に向けた右向状態と、に誘導ダクト70の状態を変更可能である。そのため、発炎筒9を車両1の左側に投下するか、発炎筒9を車両1の右側に投下するか、を容易に切り替えることができる。したがって、される車両の交通規制を行う車線に合わせて発炎筒9の投下位置を容易に変更することができる。
【0069】
ベース部材40は、誘導ダクト70を鉛直軸周りに回動可能に支持する。そのため、誘導ダクト70の回動により、発炎筒9を車両1の左側に投下するか、発炎筒9を車両1の右側に投下するか、を容易に切り替えることができる。したがって、される車両の交通規制を行う車線に合わせて発炎筒9の投下位置を容易に変更することができる。
【0070】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0071】
上記実施形態では、一対の板バネ21a、21bを用いて発炎筒9を把持しているが、発炎筒9を把持する機構はこれに限られない。発炎筒9を把持する機構として、例えば、電力により駆動して把持状態と解放状態とを切換え可能なロボットハンドを用いてもよい。
【0072】
ただし、ロボットハンドを用いる場合、発炎筒9を把持し解放する機構が複雑になる。その結果、把持状態から解放状態にスムーズに切り替えられず、発炎筒9の投下に失敗するおそれがある。
【0073】
上記実施形態のように、把持具20により把持された発炎筒9の移動経路上に制限部材50を設け、発炎筒9の移動が制限部材50により制限された状態で把持具20を移動させて発炎筒9を解放する場合には、機構が簡易である。したがって、把持状態から解放状態にスムーズに切り替えることができ、発炎筒9を安定して着火し路面上に投下することができる。
【0074】
上記実施形態では、発炎筒投下装置100は、誘導ダクト70によって発炎筒9を車両1の左側に投下するか(
図10(A)参照)、発炎筒9を車両1の右側に投下するか(
図10(B)参照)、を容易に切り替えることができる旨を説明したが、本発明はこの形態に限られない。例えば、発炎筒投下装置100は、誘導ダクト70の取り付位置を調整することによって、発炎筒9の投下位置を車両1の左側(
図10(A)参照)から右側(
図10(B)参照)の間における任意の位置に容易に調整することが可能である。
【0075】
上記実施形態では、発炎筒投下装置100は、車両1の荷台2に設置されているが、本発明はこの形態に限られない。例えば、
図11に示すように、荷台2の後方に設けられるステップ5に発炎筒投下装置100を設置してもよい。また、
図12に示すように、荷台2に底上げ台6を設置し、底上げ台6上に発炎筒投下装置100を設置してもよい。
【符号の説明】
【0076】
100 発炎筒投下装置
1 車両
9 発炎筒
9e 点火面
10 収容部
20 把持具
30 レーザ照射部
40 ベース部材
50 制限部材
60 壁部
61 開口
62 開閉部材
63 ばね蝶番(付勢部材)
70 誘導ダクト
72 傾斜部
【手続補正書】
【提出日】2023-09-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、発炎筒を着火して路面に投下する発炎筒投下装置であって、
複数の前記発炎筒を収容する収容部と、
前記収容部に対して移動可能に設けられ、前記収容部に収容された前記発炎筒を把持して前記収容部から前記発炎筒を取出し、前記発炎筒を解放して前記路面に投下する把持具と、
前記把持具が前記発炎筒を前記収容部から取出してから前記発炎筒を解放するまでの間に前記把持具に把持された前記発炎筒にレーザを照射して前記発炎筒を着火するレーザ照射部と、
開口を有し、前記把持具が前記収容部から前記発炎筒を取出すときに前記把持具が前記開口を通過する壁部と、
前記壁部に設けられ、前記開口を開閉する開閉部材と、を備え、
前記開閉部材は、前記レーザ照射部が前記発炎筒に前記レーザを照射するときには、前記開口を閉じる、
発炎筒投下装置。
【請求項2】
前記開口を閉じる方向に前記開閉部材を付勢する付勢部材を更に備え、
前記把持具が前記収容部に入るときには、前記開閉部材は、前記把持具により押されて前記付勢部材の付勢力に抗して前記開口を開ける方向に変位し、
前記把持具が前記収容部から出るときには、前記開閉部材は、前記付勢部材により付勢されて前記開口を閉じる方向に変位する、
請求項1に記載の発炎筒投下装置。
【請求項3】
前記把持具から解放された前記発炎筒を前記路面に誘導する誘導ダクトと、
前記誘導ダクトを脱着可能に支持するベース部材と、を更に備え、
前記誘導ダクトは、前記車両の前後方向に対して傾斜し前記発炎筒の解放位置に対して
前記車両の左右のいずれかの方向に前記発炎筒を誘導する傾斜部を有し、
前記ベース部材は、前記誘導ダクトの脱着により、前記傾斜部を前記車両の左に向けた
左向状態と、前記傾斜部を前記車両の右に向けた右向状態と、に前記誘導ダクトの状態を
変更可能である、
請求項1に記載の発炎筒投下装置。
【請求項4】
前記把持具から解放された前記発炎筒を前記路面に誘導する誘導ダクトと、
前記誘導ダクトを鉛直軸周りに回動可能に支持するベース部材と、を更に備え、
前記誘導ダクトは、前記車両の前後方向に対して傾斜し前記発炎筒の解放位置に対して
前記車両の左右のいずれかの方向に前記発炎筒を誘導する傾斜部を有する、
請求項1に記載の発炎筒投下装置。
【請求項5】
前記把持具により把持された前記発炎筒の移動経路上に設けられ、前記発炎筒の移動を
制限する制限部材を更に備え、
前記把持具は、前記発炎筒の移動が前記制限部材により制限された状態で移動すること
により前記発炎筒を解放する、
請求項1に記載の発炎筒投下装置
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明は、車両に搭載され、発炎筒を着火して路面に投下する発炎筒投下装置であって、複数の発炎筒を収容する収容部と、収容部に対して移動可能に設けられ、収容部に収容された発炎筒を把持して収容部から発炎筒を取出し、発炎筒を解放して路面に投下する把持具と、把持具が発炎筒を収容部から取出してから発炎筒を解放するまでの間に投下具に把持された発炎筒にレーザを照射して発炎筒を着火するレーザ照射部と、開口を有し、把持具が収容部から発炎筒を取出すときに把持具が開口を通過する壁部と、壁部に設けられ、開口を開閉する開閉部材と、を備え、開閉部材は、レーザ照射部が発炎筒にレーザを照射するときには、開口を閉じる。