(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108680
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】データ収集装置およびデータ収集システム
(51)【国際特許分類】
H04L 12/46 20060101AFI20240805BHJP
B60R 16/023 20060101ALI20240805BHJP
H04L 12/28 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
H04L12/46 E
B60R16/023 P
H04L12/28 100A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013170
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】三宅 正人
(72)【発明者】
【氏名】田内 真紀子
【テーマコード(参考)】
5K033
【Fターム(参考)】
5K033AA03
5K033BA06
5K033BA11
5K033CB02
5K033DA06
5K033DB18
(57)【要約】
【課題】通信インタフェースが異なる車両データを共通化して収集する技術を提供する。
【解決手段】本開示の1態様は、車両データを収集してサーバに送信するデータ収集装置100であって、配置変換部110、120、130と、データ変換部160と、通信部190と、を備える。配置変換部は、データ供給装置から通信インタフェースに応じた信号配置で供給される車両データを共通の信号配置に変換する。データ変換部は、配置変換部により共通の信号配置に変換された通信インタフェースに応じた通信プロトコルの車両データを、共通フォーマットのデータに変換する。通信部は、データ変換部により共通フォーマットのデータに変換された車両データをサーバに送信する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両データを収集してサーバ(4)に送信するデータ収集装置(100)であって、
データ供給装置(30)から通信インタフェースに応じた信号配置で供給される前記車両データを共通の信号配置に変換するように構成された配置変換部(110、120、130)と、
前記配置変換部により前記共通の信号配置に変換された前記通信インタフェースに応じた通信プロトコルの前記車両データを、共通フォーマットのデータに変換するように構成されたデータ変換部(160、S402~S406、S410~S414、S418~S422)と、
前記データ変換部により前記共通フォーマットのデータに変換された前記車両データを前記サーバに送信するように構成された通信部(190)と、
を備えるデータ収集装置。
【請求項2】
請求項1に記載のデータ収集装置であって、
前記データ変換部が前記配置変換部で前記共通の信号配置に変換された前記車両データを取得するコネクタ(152)を備え、
前記配置変換部は、前記データ変換部が前記車両データを取得する前記コネクタと接続する共通コネクタ(140)と、前記通信インタフェースに応じた前記信号配置で前記車両データを供給する前記データ供給装置のコネクタ(70~74)と接続する供給側コネクタ(112、122、132)と、前記共通コネクタと前記供給側コネクタとを接続して前記供給側コネクタの前記信号配置を前記共通コネクタの前記共通の信号配置に変換するケーブル(114、124、134)と、を備える、
データ収集装置。
【請求項3】
請求項2に記載のデータ収集装置であって、
前記データ変換部と前記通信部とは、前記ケーブルを介して前記データ供給装置から電力を供給されるように構成されている、
データ収集装置。
【請求項4】
請求項3に記載のデータ収集装置であって、
前記通信インタフェースに応じて複数の前記配置変換部が前記データ供給装置の前記コネクタと前記データ変換部が前記車両データを取得する前記コネクタとを接続する場合、前記データ変換部と前記通信部とは、複数の前記ケーブルのうちの1つを介して前記データ供給装置から電力を供給されるように構成されている、
データ収集装置。
【請求項5】
請求項1に記載のデータ収集装置であって、
前記共通の信号配置の信号には、前記データ供給装置の前記通信インタフェースを示すインタフェース識別子が設定されており、
前記データ変換部は、前記インタフェース識別子に基づいて、前記共通の信号配置に変換された前記車両データを前記共通フォーマットのデータに変換するように構成されている、
データ収集装置。
【請求項6】
請求項1に記載のデータ収集装置であって、
前記共通の信号配置は、異なる前記通信インタフェースが同じ信号を有する場合、前記同じ信号を1つの信号として配置するように構成されている、
データ収集装置。
【請求項7】
車両データを収集してサーバ(4)に送信するデータ収集システム(20)であって、
データ供給装置(30)とデータ収集装置(100)とを備え、
前記データ供給装置は、車両のネットワークから前記車両データを供給するゲートウェイ(50)と、前記ゲートウェイから通信インタフェースに応じた信号配置で前記車両データを供給するコネクタ(70~74)とを備え、
前記データ収集装置は、
前記データ供給装置が供給する前記車両データの信号配置を共通の信号配置に変換するように構成された配置変換部(110、120、130)と、
前記配置変換部により前記共通の信号配置に変換された前記通信インタフェースに応じた通信プロトコルの前記車両データを、共通フォーマットのデータに変換するように構成されたデータ変換部(160、S402~S406、S410~S414、S418~S422)と、
前記データ変換部が前記配置変換部で前記共通の信号配置に変換された前記車両データを取得するコネクタ(152)と、
前記データ変換部により前記共通フォーマットのデータに変換された前記車両データを前記サーバに送信するように構成された通信部(190)と、
を備え、
前記配置変換部は、前記データ変換部が前記車両データを取得する前記コネクタと接続する共通コネクタ(140)と、前記データ供給装置の前記コネクタと接続する供給側コネクタ(112、122、132)と、前記共通コネクタと前記供給側コネクタとを接続して前記供給側コネクタの前記信号配置を前記共通コネクタの前記共通の信号配置に変換するケーブル(114、124、134)と、を備える、
データ収集システム。
【請求項8】
請求項7に記載のデータ収集システムであって、
前記データ供給装置は、前記ゲートウェイから供給する前記車両データの前記通信インタフェースとしてOBD2とFMSとのうち少なくともいずれかを使用するように構成されている、
データ収集システム。
【請求項9】
請求項7または8に記載のデータ収集システムであって、
前記データ供給装置は、前記ゲートウェイからではなく前記車両のネットワークから前記車両データを供給するコネクタ(74)を備える、
データ収集システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両データを収集してサーバに送信する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、車載ネットワークから車両データを収集し、所定のサーバに送信する技術が開示されている。特許文献1に記載の車両では、車両の機能毎にECU等が各ドメインに分類されており、車載ネットワークにおいてドメイン毎に適切な通信インタフェースが使用されている。ECUは、Electronic Control Unitの略である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、発明者の詳細な検討の結果、複数の異なる通信インタフェースを搭載する1台の車両から車両データを収集する場合、車両に搭載される通信インタフェースに応じて車両データを収集する装置を作り込む必要があるという課題が見出された。
【0005】
また、異なる通信インタフェースを使用する異なる車両から車両データを収集する場合、通信インタフェースが異なる車両に応じて車両データを収集する異なる装置を使用する必要があるという課題が見出された。
【0006】
本開示の1つの局面は、通信インタフェースが異なる車両データを共通化して収集する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の1態様は、車両データを収集してサーバ(4)に送信するデータ収集装置(100)であって、配置変換部(110、120、130)と、データ変換部(160、S402~S406、S410~S414、S418~S422)と、通信部(190)と、を備える。
【0008】
配置変換部は、データ供給装置(30)から通信インタフェースに応じた信号配置で供給される車両データを共通の信号配置に変換する。データ変換部は、配置変換部により共通の信号配置に変換された通信インタフェースに応じた通信プロトコルの車両データを、共通フォーマットのデータに変換する。通信部は、データ変換部により共通フォーマットのデータに変換された車両データをサーバに送信する。
【0009】
本開示の他の態様は、車両データを収集してサーバ(4)に送信するデータ収集システム(20)であって、データ供給装置(30)と、データ収集装置(100)と、を備える。
【0010】
データ供給装置は、車両のネットワークから車両データを供給するゲートウェイ(50)と、ゲートウェイから通信インタフェースに応じた信号配置で車両データを供給するコネクタ(70~74)とを備える。
【0011】
データ収集装置は、配置変換部(110、120、130)と、データ変換部(160、S402~S406、S410~S414、S418~S422)と、コネクタ(152)と、通信部(190)と、を備える。
【0012】
配置変換部は、データ供給装置が供給する車両データの信号配置を共通の信号配置に変換する。データ変換部は、配置変換部により共通の信号配置に変換された通信インタフェースに応じた通信プロトコルの車両データを、共通フォーマットのデータに変換する。
【0013】
データ変換部は、配置変換部で共通の信号配置に変換された車両データをコネクタから取得する。
通信部は、データ変換部により共通フォーマットのデータに変換された車両データをサーバに送信する。
【0014】
さらに、配置変換部は、データ変換部が車両データを取得するコネクタと接続する共通コネクタ(152)と、データ供給装置のコネクタと接続する供給側コネクタ(112、122、132)と、共通コネクタと供給側コネクタとを接続して供給側コネクタの信号配置を共通コネクタの共通の信号配置に変換するケーブル(114、124、134)と、を備える。
【0015】
このような構成によれば、1台の車両のデータ供給装置から、あるいは複数の車両のデータ供給装置から通信インタフェースが異なる車両データが供給されても、共通のデータ収集装置により、車両データが共通フォーマットのデータに変換される。したがって、通信インタフェース毎に異なるデータ収集装置を用意する必要がない。
【0016】
データ収集システムでは、データ供給装置のコネクタとデータ収集装置のデータ変換部が車両データを取得するコネクタとを配置変換部が接続することにより、異なる通信インタフェースで供給される車両データを、共通フォーマットのデータに容易に変換できる。
【0017】
そして、データ供給装置から供給される車両データの通信インタフェースが異なり、データ供給装置のコネクタの信号配置が異なる場合は、通信インタフェースに合わせた配置変換部を用意すればよい。また、通信プロトコルが異なる場合は、通信インタフェースに合わせたデータ変換部を用意すればよい。
【0018】
そして、異なる通信インタフェースで供給される車両データが共通フォーマットの車両データに変換されるので、サーバは、共通フォーマットに変換された車両データに対する処理が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】データ管理システムの構成を示すブロック図。
【
図4】OBD2用の変換アダプタによる信号配置の変換を説明する対応図。
【
図5】FMS用の変換アダプタによる信号配置の変換を説明する対応図。
【
図6】CAN用の変換アダプタによる信号配置の変換を説明する対応図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら本開示の実施形態を説明する。
[1.構成]
図1に示すように、本実施形態のデータ管理システム2は、サーバ4と、無線通信ネットワーク6と、複数のデータ収集システム20と、を備える。
【0021】
サーバ4は、無線通信ネットワーク6を介して、複数のデータ収集システム20との間でデータ通信を行い、データ収集システム20から収集した車両データに基づいて、車両10の走行を管理する。
【0022】
データ収集システム20は、車両10に搭載されており、データ供給装置30とデータ収集装置100とを備える。
図2に示すように、データ供給装置30は、車両10に搭載された複数のECU40と、ゲートウェイ50と、FMSコントロールユニット60と、OBD2コネクタ70と、FMSコネクタ72と、CANコネクタ74と、を備える。OBDはOn Board Diagnosticsの略であり、FMSはFleet Management Systemの略であり、CANはController Area Networkの略である。CANは登録商標である。
【0023】
各ECU40は、例えば、制御グループ毎にCANプロトコルで通信しており、車両10の走行を制御している。
ゲートウェイ50は、ECU40から、車両10を制御する制御値と、車両10に設置された各種センサの検出値などを車両データとして取得する。ゲートウェイ50は、ECU40から取得した車両データを、OBD2コネクタ70、FMSコネクタ72に、それぞれの通信インタフェースで送信する。
【0024】
尚、本実施形態では、通信インタフェースは通信におけるハードウェアとソフトウェアの少なくともいずれかの規格を意味し、通信プロトコルは通信における手順とデータフォーマットの少なくともいずれかを意味している。
FMSコントロールユニット60は、CANから収集した一部の車両データをFMSスタンダード形式のデータとして提供する。
【0025】
OBD2コネクタ70とFMSコネクタ72とは、車両10に標準で搭載されているコネクタである。
通常、CANコネクタ74は車両10には搭載されていない。CANコネクタ74は、例えば、OBD2コネクタ70とFMSコネクタ72との通信インタフェースでは取得できない車両データが必要なときに、ゲートウェイ50よりもECU40側の車両ネットワークに接続して所望の車両データを取得するために設置される。
【0026】
図3に示すように、データ収集装置100は、変換アダプタ110、120、130とデータ処理装置150とを備えている。
変換アダプタ110は、OBD2コネクタ112とケーブル114と共通コネクタ140とを備えている。変換アダプタ120は、FMSコネクタ122とケーブル124と共通コネクタ140とを備えている。変換アダプタ130は、CANコネクタ132とケーブル134と共通コネクタ140とを備えている。変換アダプタ110、120、130の共通コネクタ140は、それぞれ共通の同じ信号配置である。
【0027】
OBD2コネクタ112はデータ供給装置30のOBD2コネクタ70と接続する。FMSコネクタ122はデータ供給装置30のFMSコネクタ72と接続する。CANコネクタ132はデータ供給装置30のCANコネクタ74と接続する。
【0028】
変換アダプタ110、120、130の共通コネクタ140は、それぞれデータ処理装置150の共通コネクタ152と接続する。
ケーブル114はOBD2コネクタ112と共通コネクタ140とを接続し、ケーブル124はFMSコネクタ122と共通コネクタ140とを接続し、ケーブル134はCANコネクタ132と共通コネクタ140とを接続する。
【0029】
図4に示すように、OBD2用の変換アダプタ110は、ケーブル114により、OBD2コネクタ112のピン番号で示されるOBD2のインタフェースに対応した信号配置を、共通コネクタ140の共通の信号配置に変換する。
【0030】
図5に示すように、FMS用の変換アダプタ120は、ケーブル124により、FMSコネクタ122のピン番号が示すFMSのインタフェースに対応した信号配置を、共通コネクタ140の共通の信号配置に変換する。
【0031】
図6に示すように、CAN用の変換アダプタ130は、ケーブル134により、CANコネクタ132のピン番号が示すCANのインタフェースに対応した信号配置を、共通コネクタ140の共通の信号配置に変換する。
【0032】
また、OBD2コネクタ112とFMSコネクタ122とCANコネクタ132とにおいて、電源(+)または12V、GNDまたは12VGND、CAN1_HまたはCAN_H、CAN1_LまたはCAN_Lは、それぞれ共通で同じ信号である。これらの信号は、それぞれ1つの信号として、ケーブル114、124、134により、共通コネクタ140のピン番号5の電源(+)、ピン番号6のGND、ピン番号7のCAN1_H、ピン番号8のCAN1_Lに信号配置を変換されている。
データ収集装置100のデータ処理装置150には、データ供給装置30から共通コネクタ152の電源ピンを介して電力が供給される。
【0033】
尚、
図3に示すように複数の通信インタフェース用に複数の共通コネクタ152が設置されている場合、いずれか1つの共通コネクタ152の電源ピンだけから電力が供給されるように配線されている。これは、複数の共通コネクタ152の電源ピンから重複してデータ処理装置150に電力が供給されることを防止するためである。
【0034】
したがって、データ供給装置30からデータ処理装置150に電力を供給するために、電力が供給される位置の共通コネクタ152には、変換アダプタ110、120、130のいずれかを接続する必要がある。
【0035】
図7に示すように、インタフェースIDを表す共通コネクタ140のピン番号1~4の信号値は、変換アダプタ110、120、130毎に、対応する通信インタフェースの信号値に設定される。IDは識別子を表す。例えば、インタフェースIDの信号値が0b0001であればCAN信号を意味し、信号値が0b0010であればOBD2の信号を意味する。
【0036】
データ処理装置150は、共通コネクタ152と、データ変換部160と、データ保存部170と、データアクセス部180と、通信部190と、を備えている。
データ処理装置150は、例えば、図示しないCPU、ROM、RAM、フラッシュメモリ、等を有するマイクロコンピュータを搭載している。データ処理装置150のCPUがROMまたはフラッシュメモリに記憶されたプログラムを実行することにより、後述するデータ収集処理が実行される。
【0037】
共通コネクタ152は、変換アダプタ110、120、130の共通コネクタ140と接続する。共通コネクタ152の信号配置は、変換アダプタ110、120、130の共通コネクタ140の信号配置に対応している。
【0038】
データ変換部160は、インタフェース識別部162とフォーマット変換部164とを備えている。データ変換部160は、データ処理装置150で対応する通信インタフェースの数、通信インタフェース毎に独立して構成されている。各データ変換部160は、共通コネクタ152のいずれかから信号を取得する。
【0039】
インタフェース識別部162は、共通コネクタ152のインタフェースIDの信号値に基づいて、共通コネクタ152から取得する車両データの通信インタフェースを識別する。
フォーマット変換部164は、インタフェース識別部162が識別した通信インタフェースに応じて、共通コネクタ152から取得する車両データを、
図8に示す共通フォーマットのデータに変換する。
【0040】
共通フォーマットのデータIDは、このデータが何を表しているかを示している。例えば、データIDは、データがエンジン回転数、車速、位置、燃料残量、バッテリ残量、診断コード等のいずれを表しているかを示している。
【0041】
共通フォーマットのデータ値は、例えば2進数で表される数値、あるいは文字であればUTF-8形式の2進数表現を表している。データ値が数値の場合、データIDに対応して単位が予め設定されている。例えば、データIDが車速を表している場合、単位はkm/hである。
【0042】
以下に、フォーマット変換部164が、共通コネクタ152のそれぞれから通信インタフェースに応じた通信プロトコルに基づいて取得する車両データを、
図8に示す共通フォーマットのデータに変換する過程について、OBD2とCANとを例にして説明する。
【0043】
(1)OBD2
データ収集装置100のOBD2用のフォーマット変換部164は、OBD2用の変換アダプタ110を介してデータ供給装置30に車両データを要求するメッセージを送信する。OBD2の車両データの要求メッセージは、定期的に送信されるか、あるいは、通信部190を介して車両10の外部から要求があったときに送信される。
【0044】
例えば、車両データとして車速データを収集する場合、フォーマット変換部164は、共通コネクタ152からOBD2用の変換アダプタ110を介してデータ供給装置30に車速データの要求メッセージを送信する。車速データの要求メッセージの信号配置は、変換アダプタ110により、共通コネクタ152の共通の信号配置からOBD2のインタフェースに対応したOBD2コネクタ112の信号配置に変換される。
【0045】
例えば、
図9に示すように、CAN ID=0x7E0、SID=0x01、Data ID=0x0Dとなる車両データの要求メッセージを、変換アダプタ110のCAN1_HおよびCAN1_Lによりデータ供給装置30に送信する。CAN ID=0x7E0は車両データの要求先ECUとしてエンジンECUを指定し、SID=0x01は診断サービスとして現在のデータ要求を表し、Data ID=0x0Dは要求データが車速であることを表している。
【0046】
データ供給装置30は、OBD2による車速データの要求に対して、CAN ID=0x7E8、SID=0x41、Data ID=0x0Dとなる応答メッセージを、変換アダプタ110のCAN1_HおよびCAN1_Lによりデータ収集装置100に送信する。CAN ID=0x7E8はエンジンECUからの応答を表し、SID=0x41は現在のデータ要求への応答であることを表し、Data ID=0x0Dは応答データが車速であることを表している。
【0047】
車速データの応答メッセージの信号配置は、変換アダプタ110により、OBD2のインタフェースに対応したOBD2コネクタ112の信号配置から共通コネクタ152の共通の信号配置に変換される。
【0048】
フォーマット変換部164は、共通コネクタ152において共通の信号配置に変換されたOBD2の通信プロトコルの応答メッセージを取得する。そして、フォーマット変換部164は、応答メッセージのCAN ID=0x7E8、SID=0x41、Data ID=0x0Dに基づいて変換テーブルを参照し、解像度=1とオフセット=0とを取得する。
【0049】
そして、フォーマット変換部164は、応答メッセージからData部分を取り出して解像度=1を乗算し、オフセット=0を加算して車速データを生成する。
例えば、生成された車速データが30km/hの場合、フォーマット変換部164は、データID=0x01、データ値=30として、
図9に示すように共通フォーマットの車両データに変換する。データID=0x01は、車両データが車速であることを表している。
【0050】
(2)CAN
例えば、データ収集装置100は、CAN ID=0x123のメッセージを、変換アダプタ130のCAN1_HおよびCAN1_Lによりデータ供給装置30から取得する。CAN ID=0x123は、車速を送信するECUからのメッセージであることを表している。
【0051】
車速データの信号配置は、変換アダプタ130により、CANのインタフェースに対応したCANコネクタ132の信号配置から共通コネクタ152の共通の信号配置に変換される。
【0052】
フォーマット変換部164は、共通コネクタ152において共通の信号配置に変換されたCANの通信プロトコルのメッセージを取得する。そして、フォーマット変換部164は、取得したメッセージのCAN ID=0x123に基づいて変換テーブルを参照し、ポジション=1.0とDLC=16bitと解像度=0.01とオフセット=0とを取得する。
【0053】
フォーマット変換部164は、メッセージのData部分のポジション=1.0からDLC=16bitのデータを取り出だして解像度=0.01を乗算し、オフセット=0を加算して車速データを生成する。
【0054】
例えば、生成された車速データが30km/hの場合、フォーマット変換部164は、データID=0x01、データ値=30として、
図10に示すように共通フォーマットの車両データに変換する。データID=0x01は、車両データが車速であることを表している。
【0055】
データ変換部160で共通フォーマットに変換された車両データは、RAMまたはフラッシュメモリ等のメモリで構成されたデータ保存部170に保存される。データ保存部170に保存されるデータは、保存されるたびに書き換えられるか、リングバッファ形式で最も古いデータから順次書き換えられる。
【0056】
データ保存部170に保存された車両データは共通フォーマットのデータであるから、データ供給装置30から供給されるときの通信インタフェース毎ではなく、共通のアクセス方式でデータアクセス部180からアクセスされる。
【0057】
通信部190は、データアクセス部180により共通のアクセス方式でアクセスされた車両データを、サーバ4に送信する。
[2.処理]
図11に示すフローチャートに基づいて、データ収集装置100が実行するデータ収集処理について説明する。
図11のフローチャートを実行するプログラムは、通信インタフェース毎に独立して構成された各データ変換部160に記憶されている。
【0058】
図11に示すフローチャートは、データ処理装置150がデータ供給装置30と変換アダプタ110、120、130の少なくともいずれかで接続され、データ供給装置30から電力を供給されると実行される。その後、
図11に示すフローチャートは、データ処理装置150により所定時間間隔で実行される。
【0059】
S400において、インタフェース識別部162は、共通コネクタ152のピン番号1~4の信号値が示すインタフェースIDに基づいて、共通コネクタ152から取得する車両データの通信インタフェースを識別する。
【0060】
S402の判定がNoである、つまり通信インタフェースがOBD2ではない場合、処理はS410に移行する。
S402の判定がYesである、つまり通信インタフェースがOBD2の場合、S402においてフォーマット変換部164は、識別した通信インタフェースに応じた通信プロトコルに基づいて、共通コネクタ152から車両データを表すデータ信号を取得する。
【0061】
S406においてフォーマット変換部164は、共通コネクタ152から取得した車両データを共通フォーマットのデータに変換する。S408においてフォーマット変換部408は、今回の車両データで古い車両データを更新して最新のデータを保存する。
【0062】
S410の判定がNoである、つまり通信インタフェースがFMSではない場合、処理はS418に移行する。
S410の判定がYesである、つまり通信インタフェースがFMS2の場合、S412~S416において、フォーマット変換部164は、前述したS404~S408においてOBD2をFMSに代えた処理を実行する。
【0063】
S418の判定がNoである、つまり通信インタフェースがOBD2とFMSとCANとのいずれでもない場合、処理はS426に移行する。
S418の判定がYesである、つまり通信インタフェースがCANの場合、S420~S414において、フォーマット変換部164は、前述したS404~S408においてOBD2をCANに代えた処理を実行する。
【0064】
S426において、フォーマット変換部164は、共通コネクタ152のピン番号1~4の信号値が示すインタフェースIDに応じた適切な処理を実行する。
例えば、インタフェースIDが、共通コネクタ152に変換アダプタ110、120、130のいずれの共通コネクタ142も接続されていない数値を表している場合は、何もせずに本処理を終了する。
【0065】
あるいは、共通コネクタ152のピン番号1~4の信号値が示すインタフェースIDが、正常な場合に想定される値とは異なる場合、フォーマット変換部164は、車両10に異常を報知する。
【0066】
[3.効果]
以上説明した実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)データ供給装置30から供給される通信インタフェースが異なる車両データが、変換アダプタ110、120、130とデータ変換部160とにより、以下の(a)、(b)に示すように共通フォーマットのデータに変換される。
【0067】
(a)変換アダプタ110、120、130が、通信インタフェースに基づいてデータ供給装置30側の通信インタフェース毎の信号配置を共通の信号配置に変換する。
(b)データ変換部160が共通の信号配置に変換された車両データを、通信インタフェースに応じた通信プロトコルに基づいて共通フォーマットのデータに変換する。
【0068】
これにより、変換アダプタ110、120、130がデータ供給装置30とデータ変換部160を備えるデータ処理装置150とを接続するだけで、通信インタフェースが異なる車両データを、共通フォーマットのデータに容易に変換できる。
【0069】
また、1台の車両10のデータ供給装置30から、あるいは複数の車両10のデータ供給装置30から通信インタフェースが異なる車両データが供給されても、共通のデータ収集装置100により、車両データが共通フォーマットのデータに変換される。したがって、通信インタフェース毎に異なるデータ収集装置を用意する必要がない。
【0070】
そして、異なる通信インタフェースで供給される車両データが共通フォーマットの車両データに変換されるので、サーバ4は、共通フォーマットに変換された車両データに対する処理が容易である。
【0071】
(2)データ供給装置30が通信インタフェースに応じて供給する車両データの信号配置を共通の信号配置に変換するときに、各通信インタフェースで共通の信号を共通の信号配置において1つの信号として配置する。これにより、共通の信号配置の信号を極力低減できる。その結果、共通コネクタ140、152のピン数を低減でき、共通コネネクタ140、152を小型化できる。
【0072】
(3)変換アダプタ110、120、130のいずれかを介してデータ供給装置30からデータ収集装置100のデータ処理装置150に電力が供給されるので、データ収集装置100に電源を設置する必要がない。
【0073】
(4)データ処理装置150の共通コネクタ152には、どの通信インタフェースの変換アダプタ110、120、130が接続されるか、予め決まっているわけではない。そこで、変換アダプタ110、120、130により共通コネクタ152において共通の信号配置に変換される信号に、通信インタフェースを表すインタフェースIDが設定されている。
【0074】
これにより、データ処理装置150のデータ変換部160は、共通コネクタ152にどの通信インタフェースの変換アダプタ110、120、130が接続されても、接続された変換アダプタの通信インタフェースをインタフェースIDにより識別できる。
【0075】
(5)OBD2コネクタ70、FMSコネクタ72は車両10に通常設置されている。したがって、データ供給装置30が車両データを供給する通信インタフェースとしてOBD2、FMSを使用する場合、車両10に新たにOBD2コネクタ70、FMSコネクタ72を設置する必要がない。
【0076】
(6)通信インタフェースとしてCANを使用し、データ収集装置100がゲートウェイ50からではなく車両10のネットワークから直接車両データを取得することにより、OBD2、FMSでは取得できなかった車両データを取得できる。
【0077】
以上説明した実施形態において、変換アダプタ110、120、130が配置変換部に対応し、OBD2コネクタ112とFMSコネクタ122とCANコネクタ132とは供給側コネクタに対応する。
【0078】
また、S402~S406、S410~S414、S418~S422の処理がデータ変換部の処理に対応する。
[5.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は前述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0079】
(1)前述した実施形態では、1台の車両10のデータ供給装置30から供給される通信インタフェースの異なる車両データを、データ収集装置100が共通フォーマットのデータに変換する例について説明した。これに対し、例えば、1台の車両10のデータ供給装置30から供給される1種類の通信インタフェースの車両データを、データ収集装置100が共通フォーマットのデータに変換してもよい。
【0080】
(2)前述した実施形態では、車両10のネットワークとしてCANを例示したが、これに限定されるものではない。例えば、車両10のネットワークはイーサネットでもよいし、CANとイーサネットとの混在でもよいし、それ以外のネットワークでもよい。イーサネットは登録商標である。
【0081】
(3)前述した実施形態では、通信インタフェースとしてOBD2、FMS、CANを例示したが、通信インタフェースはこれらに限るものではない。OBD2、FMS、CANとは異なる通信インタフェースを使用し、データ供給装置30のコネクタの信号配置が異なる場合は、通信インタフェースに合わせた信号配置の変換アダプタを用意すればよい。また、通信プロトコルが異なる場合は、通信インタフェースに合わせたデータ変換部160を用意すればよい。
【0082】
(4)本開示に記載のデータ収集装置100およびその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された1つまたは複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。
【0083】
あるいは、本開示に記載のデータ収集システム20とデータ収集装置100とその手法は、1つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。
【0084】
もしくは、本開示に記載のデータ収集システム20とデータ収集装置100とその手法は、1つまたは複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリと1つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された1つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。
【0085】
また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されてもよい。データ収集装置100に含まれる各部の機能を実現する手法には、必ずしもソフトウェアが含まれている必要はなく、その全部の機能が、1つあるいは複数のハードウェアを用いて実現されてもよい。
【0086】
(5)前述した実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、前述した実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、前述した実施形態の構成の少なくとも一部を、他の前述した実施形態の構成に対して付加または置換してもよい。
【0087】
(6)前述したデータ収集装置100の他、当該データ収集装置100を構成要素とするデータ収集システム20、当該データ収集装置100としてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実体的記録媒体、データ収集方法など、種々の形態で本開示を実現することもできる。
[本明細書が開示する技術思想]
【0088】
[項目1]
車両データを収集してサーバ(4)に送信するデータ収集装置(100)であって、
データ供給装置(30)から通信インタフェースに応じた信号配置で供給される前記車両データを共通の信号配置に変換するように構成された配置変換部(110、120、130)と、
前記配置変換部により前記共通の信号配置に変換された前記通信インタフェースに応じた通信プロトコルの前記車両データを、共通フォーマットのデータに変換するように構成されたデータ変換部(160、S402~S406、S410~S414、S418~S422)と、
前記データ変換部により前記共通フォーマットのデータに変換された前記車両データを前記サーバに送信するように構成された通信部(190)と、
を備えるデータ収集装置。
【0089】
[項目2]
項目1に記載のデータ収集装置であって、
前記データ変換部が前記配置変換部で前記共通の信号配置に変換された前記車両データを取得するコネクタ(152)を備え、
前記配置変換部は、前記データ変換部が前記車両データを取得する前記コネクタと接続する共通コネクタ(140)と、前記通信インタフェースに応じた前記信号配置で前記車両データを供給する前記データ供給装置のコネクタ(70~74)と接続する供給側コネクタ(112、122、132)と、前記共通コネクタと前記供給側コネクタとを接続して前記供給側コネクタの前記信号配置を前記共通コネクタの前記共通の信号配置に変換するケーブル(114、124、134)と、を備える、
データ収集装置。
【0090】
[項目3]
項目2に記載のデータ収集装置であって、
前記データ変換部と前記通信部とは、前記ケーブルを介して前記データ供給装置から電力を供給されるように構成されている、
データ収集装置。
【0091】
[項目4]
項目3に記載のデータ収集装置であって、
前記通信インタフェースに応じて複数の前記配置変換部が前記データ供給装置の前記コネクタと前記データ変換部が前記車両データを取得する前記コネクタとを接続する場合、前記データ変換部と前記通信部とは、複数の前記ケーブルのうちの1つを介して前記データ供給装置から電力を供給されるように構成されている、
データ収集装置。
【0092】
[項目5]
項目1から4のいずれか1項に記載のデータ収集装置であって、
前記共通の信号配置の信号には、前記データ供給装置の前記通信インタフェースを示すインタフェース識別子が設定されており、
前記データ変換部は、前記インタフェース識別子に基づいて、前記共通の信号配置に変換された前記車両データを前記共通フォーマットのデータに変換するように構成されている、
データ収集装置。
【0093】
[項目6]
項目1から5のいずれか1項に記載のデータ収集装置であって、
前記共通の信号配置は、異なる前記通信インタフェースが同じ信号を有する場合、前記同じ信号を1つの信号として配置するように構成されている、
データ収集装置。
【0094】
[項目7]
車両データを収集してサーバ(4)に送信するデータ収集システム(20)であって、
データ供給装置(30)とデータ収集装置(100)とを備え、
前記データ供給装置は、車両のネットワークから前記車両データを供給するゲートウェイ(50)と、前記ゲートウェイから通信インタフェースに応じた信号配置で前記車両データを供給するコネクタ(70~74)とを備え、
前記データ収集装置は、
前記データ供給装置が供給する前記車両データの信号配置を共通の信号配置に変換するように構成された配置変換部(110、120、130)と、
前記配置変換部により前記共通の信号配置に変換された前記通信インタフェースに応じた通信プロトコルの前記車両データを、共通フォーマットのデータに変換するように構成されたデータ変換部(160、S402~S406、S410~S414、S418~S422)と、
前記データ変換部が前記配置変換部で前記共通の信号配置に変換された前記車両データを取得するコネクタ(152)と、
前記データ変換部により前記共通フォーマットのデータに変換された前記車両データを前記サーバに送信するように構成された通信部(190)と、
を備え、
前記配置変換部は、前記データ変換部が前記車両データを取得する前記コネクタと接続する共通コネクタ(140)と、前記データ供給装置の前記コネクタと接続する供給側コネクタ(112、122、132)と、前記共通コネクタと前記供給側コネクタとを接続して前記供給側コネクタの前記信号配置を前記共通コネクタの前記共通の信号配置に変換するケーブル(114、124、134)と、を備える、
データ収集システム。
【0095】
[項目8]
項目7に記載のデータ収集システムであって、
前記データ供給装置は、前記ゲートウェイから供給する前記車両データの前記通信インタフェースとしてOBD2とFMSとのうち少なくともいずれかを使用するように構成されている、
データ収集システム。
【0096】
[項目9]
項目7または8に記載のデータ収集システムであって、
前記データ供給装置は、前記ゲートウェイよりも前記車両のネットワークから前記車両データを供給するコネクタ(74)を備える、
データ収集システム。
【符号の説明】
【0097】
4:サーバ、10:車両、20:データ収集システム、30:データ供給装置、100:データ収集装置、110、120、130:変換アダプタ、112:OBD2コネクタ、122:FMS2コネクタ、132:CANコネクタ、114、124、134:ケーブル、152:共通コネクタ、160:データ変換部、162:インタフェース識別部、164:フォーマット変換部