(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108681
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】キャビンの空気調整方法及び空気調整装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/22 20060101AFI20240805BHJP
B60H 1/00 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
B60H1/22
B60H1/00 102C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013172
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
(74)【代理人】
【識別番号】100137316
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 宏
(72)【発明者】
【氏名】山室 毅
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211AA11
3L211BA32
3L211BA42
3L211DA43
3L211DA48
3L211EA13
3L211EA56
3L211GA43
3L211GA47
(57)【要約】
【課題】従来の空気調整装置では、省エネルギ化を図るうえでの改善が要望されていた。
【解決手段】車両VのキャビンCを暖房する際に用いる空気調整方法であって、キャビンCから外部へ排出する空気から熱を回収し、回収した熱によりキャビンCに供給する空気を加熱するキャビンの空気調整方法及び空気調整装置とし、キャビンC内の空気から回収した熱を暖房に有効活用し、エネルギロスを低減して、燃費や電費の向上を実現する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のキャビンを暖房する際に用いる空気調整方法であって、
前記キャビンから外部へ排出する空気から熱を回収し、回収した熱により前記キャビンに供給する空気を加熱することを特徴とするキャビンの空気調整方法。
【請求項2】
回収した熱により、外部から車載エアコンに導入される空気を加熱することを特徴とする請求項1に記載のキャビンの空気調整方法。
【請求項3】
外部から前記キャビンに供給する空気の供給経路に配置した第1熱交換器と、前記キャビンから外部へ排出する空気の排出経路に配置した第2熱交換器とを用い、
前記第1熱交換器により、前記第2熱交換器で回収した熱により前記キャビンに供給する空気を加熱し、
前記第2熱交換器により、前記キャビンから外部へ排出する空気から熱を回収することを特徴とする請求項1に記載のキャビンの空気調整方法。
【請求項4】
外気温度と前記キャビンの内部湿度とを測定し、測定した前記外気温度及び前記内部湿度に基づいて前記キャビン内の飽和水蒸気量を算出し、前記飽和水蒸気量に基づいて結露が発生するか否かを判断し、
結露が発生すると判断した際に、前記キャビンに供給する空気を加熱する内気循環と、前記キャビンの空気を排出する外気循環とを行い、
結露が発生しないと判断した際に、前記内気循環を行うことを特徴とする請求項1~3に記載のキャビンの空気調整方法。
【請求項5】
車両のキャビンを暖房する際に用いる空気調整装置であって、
外部から前記キャビンに供給する空気の供給経路に配置した第1熱交換器と、
前記キャビンから外部へ排出する空気の排出経路に配置した第2熱交換器と
前記第1熱交換器と前記第2熱交換器の間に媒体を循環させる媒体循環路と、
前記前記媒体の循環駆動源である媒体駆動ポンプと、
前記第1熱交換器、前記第2熱交換器、及び前記媒体駆動ポンプを夫々制御する空調制御器とを備えたことを特徴とするキャビンの空気調整装置。
【請求項6】
車載エアコンを備え、
前記第1熱交換器が、外部から前記車載エアコンに導入する空気を加熱することを特徴とする請求項5に記載のキャビンの空気調整装置。
【請求項7】
外気温度を測定する温度センサと、前記キャビンの内部湿度を測定する湿度センサとを備え、
前記空調制御器が、前記温度センサ及び前記湿度センサで測定した前記外気温度及び前記内部湿度に基づいて、前記第1熱交換器、前記第2熱交換器、及び前記媒体駆動ポンプを夫々制御することを特徴とする請求項5に記載のキャビンの空気調整装置。
【請求項8】
前記第1熱交換器が、前記キャビンの前方側に配置してあり、
前記第2熱交換器が、前記キャビンの後方側に配置してあることを特徴とする請求項4~6のいずれか1項に記載のキャビンの空気調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両において、キャビンを暖房する際に用いられるキャビンの空気調整方法及び空気調整装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車等の車両では、冬期や梅雨時期において、結露による窓の曇りを防止するために、キャビンの熱を外部に放出したり、エアコンの除湿機能でキャビン内を除湿したりしている。除湿を行う空気調整装置は、例えば、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、キャビン内の冷暖房機能に加えて除湿機能を有する空気調整装置では、消費電力が増大し、燃費や電費に及ぼす影響が大きいことから、省エネルギ化を図るうえでの改善が要望されていた。
【0005】
本発明は、上記従来の状況に鑑みて成されたもので、とくに、キャビンを暖房する際に用いる空気調整方法及び空気調整装置であって、エネルギロスを低減し、燃費や電費の向上を実現することができるキャビンの空気調整方法及び空気調整装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係わるキャビンの空気調整方法は、車両のキャビンを暖房する際に用いる空気調整方法であって、キャビンから外部へ排出する空気から熱を回収し、回収した熱によりキャビンに供給する空気を加熱することを特徴としている。
【0007】
本発明に係わる空気調整装置は、車両のキャビンを暖房する際に用いる空気調整装置であって、外部からキャビンに供給する空気の供給経路に配置した第1熱交換器と、キャビンから外部へ排出する空気の排出経路に配置した第2熱交換器と、第1熱交換器と第2熱交換器の間に媒体を循環させる媒体循環路と、前記前記媒体の循環駆動源である媒体駆動ポンプと、第1熱交換器、第2熱交換器、及び媒体駆動ポンプを夫々制御する空調制御器とを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係わるキャビンの空気調整方法及び空気調整装置は、上記構成を採用したことにより、キャビン内の空気から回収した熱を暖房に有効活用することとなり、これによりエネルギロスを低減して、燃費や電費の向上を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係わる空気調整装置の第1実施形態を示す図であって、装置構成と内気及び外気の併用循環を説明する平面図である。
【
図2】本発明に係わる空気調整方法を説明するフローチャートである。
【
図3】
図1に示す空気調整装置の内気循環を説明する平面図である。
【
図4】
図1に示す空気調整装置の外気循環を説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〈第1実施形態〉
図1~
図4は、本発明に係わるキャビンの空気調整方法及び空気調整装置の第1実施形態を説明する図である。
図1は、上記の空気調整方法が適用可能な空気調整装置を備えた車両(自動車)Vを説明する図であり、
図1中で左方向が車両Vの前方向である。
【0011】
図示の車両Vは、前後左右の車輪Wを有する電気自動車であって、キャビンCの後方にバッテリ1が搭載してある。また、車両Vは、キャビンCの前方に、ラジエータ2、モータ3、減速機4、モータ駆動用のインバータ5、ヒートポンプ6、ラジエータ2の冷却水をモータ3等に循環させるウオータポンプ7、及び車載エアコン8が搭載してある。
【0012】
車載エアコン8は、インターコンデンサ8Aと、外部ヒータ8Bとを備えている。この車載エアコン8は、HVAC(Heating Ventilation and Air-Conditioning)と呼ばれるもので、キャビンC内を快適に保つために、風の温度や風量、吹き出し口の調整を行うカーエアコンユニットである。なお、車載エアコン8は、便宜上、各図中でキャビンC内に示しているが、実際はダッシュボードの内部に配置される。
【0013】
上記車両Vにおける空気調整装置は、車載エアコン8の一部として構成することが可能であり、外部からキャビンCに供給する空気の供給経路に配置した第1熱交換器H1と、キャビンCから外部へ排出する空気の排出経路に配置した第2熱交換器H2とを備えている。また、空気調整装置は、第1熱交換器H1と第2熱交換器H2の間に媒体を循環させる媒体循環路Rと、媒体の循環駆動源である媒体駆動ポンプPと、第1熱交換器H1、第2熱交換器H2、及び媒体駆動ポンプPを夫々制御する空調制御器11を備える。媒体は、気体又は液体である流体であり、各熱交換器H1,H2専用のものでも良いし、ラジエータ2の冷却水を利用することも可能である。
【0014】
空気の供給経路は、詳細な図示を省略したが、車体内部において、ラジエータ2を通過した空気を車載エアコン8に導く経路である。また、空気の排出経路は、同様に図示を省略したが、キャビンCから車体内部を経て外部に至る経路である。これらの経路には、空気の流通を促進させるファンなどを配置しても良い。そして、空気調整装置は、空気の供給経路及び第1熱交換器H1が、キャビンCの前方側に配置してあり、空気の排出経路及び第2熱交換器H2がキャビンCの後方側に配置してある。
【0015】
さらに、空気調整装置は、外気温度を測定する温度センサTSと、キャビンCの内部湿度を測定する湿度センサHSとを備えている。各センサTS,HSの測定値は空調制御器11に入力される。空調制御器11は、コンピュータであって、温度センサTS及び湿度センサHSで測定した外気温度及び内部湿度に基づいて、後記する内気循環及び外気循環の少なくとも一方を選択する機能を有する。この空調制御器11は、独立した機器であっても良いし、車載エアコン8の制御器や車両Vの主制御器の一部を構成するものであっても良い。
【0016】
上記の空気調整装置を用いた空気調整方法は、車両VのキャビンCを暖房する際に用いられ、キャビンCから外部へ排出する空気から熱を回収し、回収した熱によりキャビンCに供給する空気を加熱する。とくに、この実施形態では、回収した熱により、車載エアコン8に導入される空気を加熱する。より具体的には、空気調整方法は、第1熱交換器H1により、第2熱交換器H2で回収した熱により車載エアコン8を通してキャビンCに供給する空気を加熱(放熱)し、第2熱交換器H2により、キャビンCから外部へ排出する空気から熱を回収する。
【0017】
図2は、空気調整装置を構成する空気制御器11の制御工程を示すフローチャートである。すなわち、制御工程は、ステップS1において、イグニッションスイッチがONになると、ステップS2において、ヒートポンプ6及び車載エアコン8がONであるか否かを判定し、ステップS2でONではない(NO)と判定した場合は、制御を終了する。
【0018】
次に、空気制御器11は、ステップS2でONである(YES)と判定した場合は、ステップS3に移行して温度センサTSにより外気温度を測定し、さらに、ステップS4に移行して湿度センサHSでキャビンCの内部湿度を測定し、測定した外気温度と内部湿度に基づいて、キャビンC内の飽和水蒸気量を算出し、ステップS5において、飽和水蒸気量に基づいて結露が発生するか否かを判断する。
【0019】
上記のステップS5で結露が発生しない(NO)と判断した場合は、ステップS6に移行して内気循環を行う。内気循環は、
図3中の矢印A1,A2で示すように、外部から導入した空気を車載エアコン8で加熱してキャビンCに供給する。この際、車載エアコン8は、矢印A3で示すようにキャビンC内の空気を取り込んで循環させる。これに対して、外気循環では、
図4中の矢印A1,A2で示すように、外部から導入した空気を車載エアコン8で加熱してキャビンCに供給する一方で、矢印A4,A5で示すように、キャビンCの空気を外部に排出する。
【0020】
そして、空気制御器11は、ステップS5で結露が発生する(YES)と判断した場合は、ステップS7において媒体駆動ポンプPを作動させ、ステップS8において内気及び外気の併用循環を行う。
【0021】
すなわち、空気調整方法では、外気温度と内部湿度とを測定し、結露が発生しないと判断した際に、内気循環を行い、結露が発生すると判断した際に、キャビンCに供給する空気を加熱する内気循環と、キャビンCの空気を排出する外気循環との両方である併用循環を行う。
【0022】
上記の併用循環では、
図1に示すように、媒体駆動ポンプPを作動させ、媒体循環路Rを介して第1熱交換器H1と第2熱交換器H2との間に媒体を循環させる。この際、第2熱交換器H2は、相対的に低温である媒体と、図中の矢印A4で示す空気すなわち相対的に高温であるキャビンCの空気との間で熱交換を行い、媒体によりキャビンCの空気から熱を回収する。熱が回収された空気は、図中の矢印A5で示すように外部に排出する。
【0023】
他方、第1熱交換器H2は、相対的に高温になった媒体と、図中の矢印A1で示す空気すなわち外部から導入した相対的に低温である空気との間で熱交換を行い、外部から車載エアコン8に導入する空気に放熱してこれを加熱する。車載エアコン8は、図中の矢印A2で示すように、空気をさらに加熱してキャビンCに供給し、矢印A3で示すようにキャビンCの空気を取り込んで循環させる。なお、併用循環は、内部湿度が一定以下になるまで、又はステップS5で結露が発生しないと判定するまで継続することも可能である。
【0024】
このようにして、上記実施形態で説明したキャビンの空気調整方法及び空気調整装置は、キャビンC内の空気から回収した熱をキャビンCの暖房に有効活用することとなり、これによりエネルギロスを低減して、燃費や電費の向上を実現することができる。
【0025】
また、上記の空気調整方法及び空気調整装置は、キャビンC内の空気から回収した熱により、外部から車載エアコン8に導入される空気を加熱することから、車載エアコン8の負担を軽減して電極消費を大幅に抑制し、燃費や電費のさらなる向上を実現する。
【0026】
さらに、上記の空気調整方法及び空気調整装置は、第1熱交換器H1、第2熱交換器H2、媒体及び媒体駆動ポンプP、並びに空調制御器11を用いることで、比較的簡単な構成により、熱の回収及び加熱(放熱)を効果的に行うことができる。
【0027】
さらに、上記の空気調整方法及び空気調整装置は、温度センサTSで測定した外気温度と、湿度センサHで測定したキャビンCの内部湿度とに基づいて、空調制御器11により、内気循環、外気循環、及び併用循環を選択するので、キャビンC内の雰囲気に応じた空調が行われ、暖房を継続しつつ、外気導入に伴うキャビンC内の酸素濃度の増加、キャビンC内の排気に伴う湿度及び二酸化炭素の減少を実現する。要するに、暖房しながらキャビンCの空気を入れ替える。
【0028】
さらに、上記の空気調整方法及び空気調整装置は、
図2のフローチャートに示すように、外気温度と内部湿度とに基づいて、キャビンC内の飽和水蒸気量を算出し、結露が発生すると判断した際には、
図1に示すように、内気循環と外気循環とを行い、結露が発生しないと判断した際には、内気循環を行う。
【0029】
つまり、とくに冬期においては、乗員の呼気等によりキャビンC内の湿度が上昇し、これにより窓ガラス等に結露が生じ易くなる。これに対して、上記の空気調整方法及び空気調整装置では、結露が生じると判断した際に併用循環を行うことで、暖房を継続しながら、外気の導入とキャビンC内の排気(除湿)とを行って結露の発生を防止する。
【0030】
このとき、上記の空気調整方法及び空気調整装置では、キャビンC内の排気により除湿を行うので、車載エアコン8の除湿機能が不要であり、また、車載エアコン8に余計な負荷を与えずに除湿を行うことができ、消費電力の低減、燃費や電費のさらなる向上を実現する。
【0031】
さらに、上記の空気調整装置では、第1熱交換器H1をキャビンCの前方側に配置し、第2熱交換器H2をキャビンCの後方側に配置しているので、キャビンCの前方側から後方側へ暖気の流れが形成され、キャビンCの全体を均一に暖めることができ、キャビンC内の快適性がより高められる。
【0032】
上記の実施形態では、
図1及び
図2に示すように、測定した外気温度と内部湿度に基づいて内気及び外気の併用循環と、内気循環とを選択するようにし、内気循環及び外気循環では、第1及び第2の熱交換器H1,H2や媒体駆動ポンプPが作動しない場合を説明した。
【0033】
これに対して、本発明に係わる空気調整方法及び空気調整装置は、
図3に示す内気循環や
図4に示す外気循環の際に、第1及び第2の熱交換器H1,H2や媒体駆動ポンプPを作動させても構わない。その際、空調制御器11は、温度センサTSや湿度センサHSの測定値を用いずに制御を行うようにしても良い。
【0034】
これにより、上記の空気調整方法及び空気調整装置は、作動を開始すると、第2熱交換器H2による熱の回収と第1熱交換器H2による加熱(放熱)を継続的に行い、車載エアコン8の負担を軽減して消費電力を節約し、燃費や電費の向上に貢献することができる。
【0035】
本発明に係わる空気調整方法及び空気調整装置は、その構成が上記実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0036】
C キャビン
H1 第1熱交換器
H2 第2熱交換器
HS 湿度センサ
P 媒体駆動ポンプ
R 媒体循環路
TS 温度センサ
V 車両
8 車載エアコン
11 空調制御器