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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108682
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】印刷配線板及び検査方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20240805BHJP
   H05K 1/16 20060101ALI20240805BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20240805BHJP
   H01F 41/00 20060101ALI20240805BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
H05K3/46 Q
H05K1/16 B
H05K3/00 T
H05K3/46 B
H05K3/46 N
H05K3/46 W
H01F41/00 F
H01F17/00 B
H01F17/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013174
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】中井 正宏
【テーマコード(参考)】
4E351
5E070
5E316
【Fターム(参考)】
4E351AA02
4E351BB15
4E351DD04
4E351GG06
4E351GG20
5E070AA01
5E070AB10
5E070CB02
5E070CB12
5E070CB13
5E316AA32
5E316AA38
5E316AA43
5E316BB13
5E316CC04
5E316CC05
5E316CC08
5E316CC32
5E316EE01
5E316FF07
5E316GG15
5E316GG28
5E316HH01
5E316HH32
5E316JJ14
(57)【要約】
【課題】回路異常を検出容易なコイル構造を有することで、コイル構造のインダクタンスが安定した印刷配線板と検査方法を提供する。
【解決手段】印刷配線板(1)は、絶縁層(I1~I5)の積層体(I)と、積層体(I)内部の積層コイル(L)とを備える。積層体(I)は、絶縁層(I1~I5)の間に導体層(C1~C4)を有する。積層コイル(L)は、第1端部(T1)、第2端部(T2)及び両端部間の配線部(V1)を有する第1の回路部と、第3端部(T3)、第4端部(T4)及び両端部間の配線部(V2)を有する第2の回路部とを含む。配線部(V1)は、導体層(C1~C4)に位置する渦巻形状の配線(V11~V14)を有し、配線部(V2)は、導体層(C1~C4)に配線(V11~V14)に沿って、かつ間を空けて交互に位置する渦巻形状の配線(V21~V24)を有し、第2端部(T2)及び第4端部(T4)が電気的につながっている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁層が積層された積層体と、
該積層体の内部に位置する少なくとも一つのコイル構造と、
を備え、
前記積層体は、前記複数の絶縁層の間に位置するとともに、第1の導体層及び第2の導体層を少なくとも含む複数の導体層を有し、
該コイル構造は、
第1端部と第2端部と前記第1端部及び前記第2端部を接続する第1配線部とを有する第1の回路部と、
第3端部と第4端部と前記第3端部及び前記第4端部を接続する第2配線部とを有する第2の回路部と、
を含み、
前記第1端部及び前記第3端部は、前記第1の導体層に位置し、
前記第2端部及び前記第4端部は、前記第2の導体層に位置し、
前記第1配線部は、前記第1の導体層から前記第2の導体層までに位置する各々の導体層に配置された、渦巻形状の第1配線を有し、
前記第2配線部は、前記第1の導体層から前記第2の導体層までに位置する各々の導体層に前記第1配線に沿って配置されるとともに、該第1配線と間を空けて交互に位置する渦巻形状の第2配線を有し、
前記第2端部及び前記第4端部は、電気的につながっている、
印刷配線板。
【請求項2】
前記第1端部とつながる第1外側導体と、
前記第2端部とつながる第2外側導体と、
前記第3端部とつながる第3外側導体と、
前記第4端部とつながる第4外側導体と、
をさらに有しており、
前記積層体は、
前記第1の導体層側に位置する第1表面と、
前記第2の導体層側に位置する第2表面と、
を有し、
前記第1外側導体及び前記第3外側導体は、前記第1表面に位置しており、
前記第2外側導体及び前記第4外側導体は、前記第2表面に位置するとともに0Ω抵抗により電気的に接続されている、
請求項1記載の印刷配線板。
【請求項3】
前記積層体は、
前記第1の導体層及び前記第2の導体層の間に、複数の導体層を有しており、
該複数の導体層の各々に、前記第1配線及び前記第2配線が位置している、
請求項1記載の印刷配線板。
【請求項4】
印刷配線板の検査方法であって、
前記印刷配線板は、
複数の絶縁層が積層された積層体と、
該積層体の内部に位置する少なくとも一つのコイル構造と、
を備え、
前記積層体は、前記複数の絶縁層の間に位置するとともに、第1の導体層及び第2の導体層を少なくとも含む複数の導体層を有し、
該コイル構造は、
第1端部と第2端部と前記第1端部及び前記第2端部を接続する第1配線部とを有する第1の回路部と、
第3端部と第4端部と前記第3端部及び前記第4端部を接続する第2配線部とを有する第2の回路部と、
を含み、
前記第1端部及び前記第3端部は、前記第1の導体層に位置し、
前記第2端部及び前記第4端部は、前記第2の導体層に位置し、
前記第1配線部は、前記第1の導体層から前記第2の導体層までに位置する各々の導体層に配置された、渦巻形状の第1配線を有し、
前記第2配線部は、前記第1の導体層から前記第2の導体層までに位置する各々の導体層に前記第1配線に沿って配置されるとともに、該第1配線と間を空けて交互に位置する渦巻形状の第2配線を有しており、
前記第2端部と前記第4端部とが電気的に接続されていない状態で、
前記第1端部と前記第2端部との間の導通を検査する工程と、
前記第3端部と前記第4端部との間の導通を検査する工程と、
前記第1の回路部の端部と前記第2の回路部の端部との間の組み合わせのうち少なくともいずれかで短絡の有無を検査する工程と、
を含む検査方法。
【請求項5】
前記第2端部と前記第4端部とが電気的に接続された状態で、
前記第1端部と前記第3端部との間の導通を検査する工程をさらに含む、
請求項4に記載の検査方法。
【請求項6】
前記第2端部と前記第4端部とが0Ω抵抗で接続された状態で、
前記第1端部と前記第3端部との間の導通を検査する工程をさらに含む、
請求項4に記載の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、印刷配線板及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1などにより、積層された絶縁層及び絶縁層間の導体層の配線パターンによって構成された積層コイルについての技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭58-67007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような積層コイルの電気検査を行う場合、途中で短絡が生じていても良品と同様に導通し、大きく抵抗値が変化しないので、その検出が難しい。大きく抵抗値が変化しなくても、結果的に積層コイルの巻き数が少なくなるため、電気検査の良品の積層コイルのインダクタンスが安定しないという課題がある。
そこで、回路異常を検出しやすいコイル構造を有することで、積層コイルのインダクタンスが安定した印刷配線板及び該印刷配線板の検査方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一の態様は、(1)複数の絶縁層が積層された積層体と、該積層体の内部に位置する少なくとも一つのコイル構造と、を備え、前記積層体は、前記複数の絶縁層の間に位置するとともに、第1の導体層及び第2の導体層を少なくとも含む複数の導体層を有し、該コイル構造は、第1端部と第2端部と前記第1端部及び前記第2端部を接続する第1配線部とを有する第1の回路部と、第3端部と第4端部と前記第3端部及び前記第4端部を接続する第2配線部とを有する第2の回路部と、を含み、前記第1端部及び前記第3端部は、前記第1の導体層に位置し、前記第2端部及び前記第4端部は、前記第2の導体層に位置し、前記第1配線部は、前記第1の導体層から前記第2の導体層までに位置する各々の導体層に配置された、渦巻形状の第1配線を有し、前記第2配線部は、前記第1の導体層から前記第2の導体層までに位置する各々の導体層に前記第1配線に沿って配置されるとともに、該第1配線と間を空けて交互に位置する渦巻形状の第2配線を有し、前記第2端部及び前記第4端部は、電気的につながっている、印刷配線板である。
【0006】
また、本開示の他の一の態様は、(4)印刷配線板の検査方法であって、前記印刷配線板は、複数の絶縁層が積層された積層体と、該積層体の内部に位置する少なくとも一つのコイル構造と、を備え、前記積層体は、前記複数の絶縁層の間に位置するとともに、第1の導体層及び第2の導体層を少なくとも含む複数の導体層を有し、該コイル構造は、第1端部と第2端部と前記第1端部及び前記第2端部を接続する第1配線部とを有する第1の回路部と、第3端部と第4端部と前記第3端部及び前記第4端部を接続する第2配線部とを有する第2の回路部と、を含み、前記第1端部及び前記第3端部は、前記第1の導体層に位置し、前記第2端部及び前記第4端部は、前記第2の導体層に位置し、前記第1配線部は、前記第1の導体層から前記第2の導体層までに位置する各々の導体層に配置された、渦巻形状の第1配線を有し、前記第2配線部は、前記第1の導体層から前記第2の導体層までに位置する各々の導体層に前記第1配線に沿って配置されるとともに、該第1配線と間を空けて交互に位置する渦巻形状の第2配線を有しており、前記第2端部と前記第4端部とが電気的に接続されていない状態で、前記第1端部と前記第2端部との間の導通を検査する工程と、前記第3端部と前記第4端部との間の導通を検査する工程と、前記第1の回路部の端部と前記第2の回路部の端部との間の組み合わせのうち少なくともいずれかで短絡の有無を検査する工程と、を含む。
【0007】
(2)上記(1)に記載の印刷配線板において、前記第1端部とつながる第1外側導体と、前記第2端部とつながる第2外側導体と、前記第3端部とつながる第3外側導体と、前記第4端部とつながる第4外側導体と、をさらに有しており、前記積層体は、前記第1の導体層側に位置する第1表面と、前記第2の導体層側に位置する第2表面と、を有し、前記第1外側導体及び前記第3外側導体は、前記第1表面に位置しており、前記第2外側導体及び前記第4外側導体は、前記第2表面に位置するとともに0Ω抵抗により電気的に接続されている。
(3)上記(1)又は(2)記載の印刷配線板において、前記積層体は、前記第1の導体層及び前記第2の導体層の間に、複数の導体層を有しており、該複数の導体層の各々に、前記第1配線及び前記第2配線が位置している。
(5)上記(4)記載の検査方法において、前記第2端部と前記第4端部とが電気的に接続された状態で、前記第1端部と前記第3端部との間の導通を検査する工程をさらに含む。
(6)上記(4)又は(5)記載の検査方法において、前記第2端部と前記第4端部とが0Ω抵抗で接続された状態で、前記第1端部と前記第3端部との間の導通を検査する工程をさらに含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、積層体内のコイル構造の回路異常を容易に検出することができ、コイル構造のインダクタンスが安定する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】印刷配線板の斜視図である。
図2】印刷配線板の積層コイルの構造を説明する図である。
図3】印刷配線板の断面構造を示す図である。
図4】回路検査の手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、印刷配線板1の上面側斜視図(a)及び底面側斜視図(b)である。
これらの斜視図では、各図の一番上下の導体層に係る配線のみ透過表示されている。また、点線Scは、後述の図3で示す断面図の断面を示している。
【0011】
本実施形態の印刷配線板1は、例えば5枚の絶縁層I1~I5が積層され、絶縁層I1~I5の間にそれぞれ位置する導体層C1~C4を含む積層体1を有する。導体層C1(第1の導体層)から導体層C4(第2の導体層)にわたって、積層コイルL(図2参照)が位置している。積層体Iを構成する絶縁層は2以上であればよく、絶縁層の間に位置し積層コイルLを構成する導体層は1以上であれば、上記以外に任意に定められてもよい。絶縁層I1~I5は、周知の樹脂材料であってもよい。絶縁層I1~I5には、補強材や無機充填剤などが含まれていてもよい。なお、図1~3において示す導体層C1~C4は、導体の配置される層を便宜的に示したもので実際の導体の形状を示すものではない。
【0012】
積層体Iの導体層C1(絶縁層I1)の側の表面S1(第1表面)には、外側導体P1(第1外側導体)及び外側導体P3(第3外側導体)が位置している。導体層C1における積層コイルLに係る配線の一端(第1端部T1)が外側導体P1に接続している。導体層C1における積層コイルLに係る配線の他端(第3端部T3)が外側導体P3に接続している。これら外側導体P1、P3が積層コイルLを含む回路の両端である。外側導体P1、P3は、外部の部品などと接続するためのパッド形状を有していてもよいし、端部T1、T3から表面S1に導通された箇所(パッド)から引出配線が配置されていてもよい。外側導体P1、P3は、配線と同一の材質であってもよいし、金などの他の材質であってもよい。
【0013】
積層体Iの導体層C4(絶縁層I5)の側の表面S2(第2表面)には、外側導体P2(第2外側導体)及び外側導体P4(第4外側導体)が位置している。導体層C4における積層コイルLに係る配線の一端(第2端部T2)が外側導体P2と接続している。導体層C4における積層コイルLに係る配線の一端(第4端部T4)が外側導体P4と接続している。外側導体P2、P4の間は、0Ω抵抗R0により電気的につながっている。このとき、その0Ω抵抗R0の端子の間隔に合わせて表面S2に導体層C4から接続される導体の末端が位置していればよい。つまり、端部T2、T4直下に直接0Ω抵抗R0を接続しても、端部T2、T4配線から引き出し配線を配置後、0Ω抵抗R0を接続してもよい。外側導体P2、P4は、外側導体P1、P3と同一のパッド形状を有していてもよい。
【0014】
図2は、印刷配線板1の積層コイルLの構造を説明する図である。
この図では、積層体Iの表示について表面S1、S2以外の面を省略している。この図2では、導体層C1~C4及び絶縁層I1~I5を貫通する(各導体層を導通する)貫通導体からなる積層コイルL、並びに表面S1、S2に位置する外側導体P1~P4及び0Ω抵抗R0から構成される一続きに接続された回路が示されている。
【0015】
積層コイルL(コイル構造)は、積層体Iの内部の導体層C1から導体層C4の間に位置している。積層コイルLは、第1端部T1と第2端部T2との間の第1の回路部と、第3端部T3と第4端部T4との間の第2の回路部とを含む。これら第1の回路部と第2の回路部とは、上述のように、第2端部T2と第4端部T4との間が外側導体P2、P4を介して0Ω抵抗R0により接続されてつながっている。
【0016】
第1の回路部は、黒実線で示されている配線部V1(第1配線部)と、その両端の第1端部T1及び第2端部T2と、を含む。第2の回路部は、中抜き線で示されている配線部V2(第2配線部)と、その両端の第3端部T3及び第4端部T4と、を含む。電流が外側導体P1(第1端部T1)から外側導体P3(第3端部T3)へ流れる場合には、配線部V1を流れる電流は、外側導体P1から外側導体P2へ印刷配線板1を上から下へ流れる。配線部V2を流れる電流は、外側導体P4(第4端部T4)から外側導体P3(第3端部T3)へ印刷配線板1を下から上へ、すなわち、配線部V1とは反対向きに流れる。
【0017】
配線部V1は、導体層C1~C4にそれぞれ位置する渦巻形状の配線V11~V14(第1配線)を有する。配線部V2は、導体層C1~C4にそれぞれ位置する渦巻形状の配線V21~V24(第2配線)を有する。例えば、各配線V11~V14、V21~V24は、平面透視でそれぞれ各導体層C1~C4当たり約2周ずつ渦巻いている。渦巻形状配線の巻数は、2である必要はなく、必要に応じて任意の数であってよい。導体層C1において、配線部V2の配線V21は、配線部V1の配線V11に沿って位置し、かつ配線V11と交互に間を空けて並んでいる。導体層C2において、配線部V2の配線V22は、配線部V1の配線V12に沿って位置し、かつ配線V12と交互に間を空けて並んでいる。導体層C3において、配線部V2の配線V23は、配線部V1の配線V13に沿って位置し、かつ配線V13と交互に間を空けて並んでいる。導体層C4において、配線部V2の配線V24は、配線部V1の配線V14に沿って位置し、かつ配線V14と交互に間を空けて並んでいる。このとき、導体層C1~C4の各配線V11~V14、V21~V24は、平面透視で渦巻配線の中心軸が略同一であってもよい。
【0018】
導体層C1の配線V11、V21は、それぞれ外側導体P1、P3、及び導体層C2の配線V12、V22と貫通導体によって電気的に接続されている。導体層C2の配線V12、V22は、それぞれ上下の導体層C1、C3の配線と貫通導体によって電気的に接続されている。導体層C3の配線V13、V23は、それぞれ上下の導体層C2、C4の配線と貫通導体によって電気的に接続されている。導体層C4の配線V14、V24は、それぞれ外側導体P2、P4、及び導体層C3の配線V13、V23と貫通導体によって電気的に接続されている。貫通導体は、例えばスルーホール導体又はビア導体である。貫通導体は、例えば、銅であってもよい。
【0019】
外側導体P1、P3の間で電流が流れる場合、各導体層C1~C4において、配線V11~V14の渦巻形状に沿った電流の回転方向と、配線V21~V24の渦巻形状に沿った電流の回転方向とは、同一方向である。したがって、この積層コイルLは、電流の時間変化に応じて各渦巻形状の内側を貫通する磁界を生じさせたり、各渦巻形状の内側を貫通する磁束の変化に応じて誘導起電力を生じさせたりすることができる。
【0020】
外側導体P2、P4間を電気的に接続するには、実質的な抵抗値がゼロの素子である0Ω抵抗R0を用いることが好ましい。
【0021】
図3は、図1の点線Scにおける断面構造を示す図である。この断面は、外側導体P1を含む断面である。
各導体層C1~C4でそれぞれ配線部V1の配線V11~V14と配線部V2の配線V21~V24とが交互に並んでいることが分かる。
【0022】
このように配線が並んでいると、製造時などに各導体層C1~C4において隣り合う配線間で短絡が生じた場合には、配線部V1と配線部V2との間で短絡が生じることになる。
【0023】
次に、このような積層コイルLの検査について説明する。
図4は、印刷配線板1の回路の導通検査の手順を示すフローチャートである。
【0024】
上記積層コイルLを内部に含む積層体Iにおける積層コイルLの回路検査は、該積層コイルLの第1端部T1~第4端部T4が外側導体P1~P4に電気的に接続された後、0Ω抵抗R0の接続前に行われる。この状態では、正常であれば、配線部V1と配線部V2とが独立した状態である。
【0025】
0Ω抵抗R0が接続されていない状態で、配線部V1の第1端部T1と配線部V1の第2端部T2との間で導通の検査が行われる(W1)。これにより、第1の回路部の導通が確認される。
【0026】
引き続き、0Ω抵抗R0が接続されていない状態で、配線部V2の第3端部T3と配線部V2の第4端部T4との間で導通の検査が行われる(W2)。これにより、第2の回路部の導通が確認される。
【0027】
さらに、第1の回路部の両端のいずれか、例えば、第1端部T1と、第2の回路部の両端のいずれか、例えば、第3端部T3との間での導通の検査が行われる(W3)。導通があることで、第1の回路部と第2の回路部との間での短絡が検出される。なお、検査は、第1端部T1と第3端部T3又は第4端部T4との間であってもよいし、第2端部T2と第3端部T3又は第4端部T4との間であってもよい。また、実際の検査は、第1端部T1から引き出された外側導体P1と、第3端部T3から引き出された外側導体P3との間などで行われればよい。
【0028】
積層コイルLの回路に異常がないと判断された後に、配線部V1の第2端部T2と配線部V2の第4端部T4との間が0Ω抵抗R0により接続される(W4)。その後、第1端部T1と第3端部T3との間で導通の検査が行われる(W5)。これにより、積層コイルLを含む回路が正常に導通しているか否かが判定される。
【0029】
以上のように、本実施形態の印刷配線板1は、複数の絶縁層I1~I5が積層された積層体Iと、該積層体Iの内部に位置する少なくとも一つの積層コイルLと、を備える。積層体Iは、複数の絶縁層I1~I5の間に位置するとともに、導体層C1及び導体層C4を少なくとも含む複数の導体層C1~C4を有する。積層コイルLは、第1端部T1と第2端部T2と第1端部T1及び第2端部T2を接続する配線部V1とを有する第1の回路部と、第3端部T3と第4端部T4と第3端部T3及び第4端部T4を接続する配線部V2とを有する第2の回路部と、を含む。第1端部T1及び第3端部T3は、導体層C1に位置し、第2端部T2及び第4端部T4は、導体層C4に位置する。配線部V1は、導体層C1から導体層C4までに位置する各々の導体層C1~C4に配置された、渦巻形状の配線V11~V14を有する。配線部V2は、導体層C1から導体層C4までに位置する各々の導体層C1~C4に配線V11~V14に沿って配置されるとともに、該配線V11~V14と間を空けて交互に位置する渦巻形状の配線V21~V24を有する。第2端部T2及び第4端部T4は、電気的につながっている。
【0030】
言い換えると、本実施形態の印刷配線板1は、5枚の絶縁層I1~I5が積層され絶縁層I1~I5の間に位置する導体層C1~C4を含む積層体1を有する。また、導体層C1~C4の各配線V11~V14、V21~V24は、平面透視で渦巻配線の中心軸が略同一である。このような積層体1を備える印刷配線板1において、第1の回路部と第2の回路部が容易に電気的に接続可能な状態で独立かつコイルの渦巻形状が隣り合って並んでいることで、印刷配線板1では、短絡を含む導通の検査が容易になる。このような構造により、コイル構造のインダクタンスが安定した印刷配線板を抵抗することができる。印刷配線板1の構造自体は複雑化しないので、コストの上昇を避けることができる。
【0031】
また、印刷配線板1は、第1端部T1とつながる外側導体P1と、第2端部T2とつながる外側導体P2と、第3端部T3とつながる外側導体P3と、第4端部T4とつながる外側導体P4と、をさらに有している。積層体Iは、導体層C1側に位置する表面S1と、導体層C4側に位置する表面S2と、を有する。外側導体P1、P3は、表面S1に位置しており、外側導体P2,P4は、表面S2に位置するとともに0Ω抵抗R0により電気的に接続されている、
このように積層コイルLの端部が表面S1、S2に引き出されていることで、容易に回路検査や、該回路検査後の0Ω抵抗R0の接続を行うことができる。
【0032】
また、積層体Iは、導体層C1及び導体層C4の間に、複数の導体層C1~C4を有している。該複数の導体層C1~C4の各々に、配線V11~V14及び配線V21~V24が位置している。
特に、積層体Iは、複数の導体層C1~C4を有し、配線V11~V14及び配線V21~V24は、複数の導体層C1~C4の各々に、平面透視での中心軸が略同一に位置している。このように複数の導体層C1~C4の渦巻形状の配線が重ねられることで、効率よくコイルの巻き数を得ることができる。また、印刷配線板1は、このように渦巻形状が複数ある場合でも、容易に短絡異常などを検出することができる。
【0033】
また、本実施形態の印刷配線板1の検査方法では、上記形状の印刷配線板1において、第2端部T2と第4端部T4とが電気的に接続されていない状態で、第1端部T1と第2端部T2との間の導通を検査する工程と、第3端部T3と第4端部T4との間の導通を検査する工程と、第1の回路部の端部と第2の回路部の端部との間の組み合わせのうち少なくともいずれか、例えば、第1端部T1と第3端部T3との間で短絡の有無を検査する工程と、を含む。
印刷配線板1が上記のような積層コイルLの構造を有することで、積層コイルLの内部で短絡が生じた場合には、第1の回路部(配線部V1)と第2の回路部(配線部V2)との間での短絡となる。この場合、第2端部T2と第4端部T4が電気的に接続されていない状態で、第1の回路部と第2の回路部の間で導通の検査をすることで、本来電気的につながっていないはずの第1の回路部と第2の回路部との間の電気的なつながり、すなわち短絡を容易に検出することができる。また、この短絡検出の後に、容易に第2端部T2及び第4端部T4の間を電気的に接続して、積層コイルLを含む回路を得ることができる。
【0034】
また、この検査方法は、第2端部T2と第4端部T4とが電気的に接続された状態で、第1端部T1と第3端部T3との間の導通を検査する工程をさらに含み得る。これにより、最終的な積層コイルLを含む回路の導通が正常か否かを判定することができる。
【0035】
また、第2端部T2と第4端部T4とが0Ω抵抗R0で接続されてもよい。これにより、独立した第1の回路部と第2の回路部とを、回路抵抗を増大させずに接続して、容易に2つの回路部の合計巻き数の積層コイルLを含む回路を得ることができる。
【0036】
なお、上記実施の形態は例示であって、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施の形態では、渦巻形状の配線V11~V14、V21~V24は、それぞれ四隅で折れ曲がる形状を有するものとして説明したが、これに限られない。配線V11~V14、V21~V24の一部又は全部は、角が丸まって屈曲していてもよい。配線V11~V14、V21~V24は、更に、直線部分を有さず、回転半径が連続的に変化する円状又は楕円状の渦巻形状であってもよい。
【0037】
また、同一面内にある配線V11,V21の各組は、交互に並んでいれば完全に同一の間隔ではなくてもよい。また、同一配線が並ばなければ、各組の配線V11、V21などの長さが等しくなくてもよい。
【0038】
また、積層体Iを構成する絶縁層は2以上であればよく、絶縁層の間に位置し積層コイルLを構成する導体層は1以上であれば、上記以外に任意に定められてもよい。また、上記実施の形態では、第1端部T1~第4端部T4がそれぞれ直接貫通導体により表面S1、S2に位置する外側導体P1~P4に接続されていたが、これに限られない。
【0039】
また、第2端部T2と第4端部T4との間の接続は、0Ω抵抗R0によらなくてもよい。回路抵抗に悪影響を与えずに両端部間を接続可能な導体で接続されさえすれば、はんだ、リード線などでもよい。
【0040】
また、1つの印刷配線板1内に上記積層コイルLを含む回路が複数あってもよい。当該複数の回路は、独立していてもよいし、更に互いに接続されてもよい。印刷配線板1は、他の機能に係る回路構成を併せて有していてもよい。
その他、上記実施の形態で示した回路構成、構造、部品の配置や位置関係などの具体的な細部は、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 印刷配線板
C1~C4 導体層
I 積層体
I1~I5 絶縁層
L 積層コイル
P1~P4 外側導体
R0 0Ω抵抗
S1、S2 表面
T1 第1端部
T2 第2端部
T3 第3端部
T4 第4端部
V1、V2 配線部
V11~V14、V21~V24 配線
図1
図2
図3
図4