IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-配光制御装置 図1
  • 特開-配光制御装置 図2
  • 特開-配光制御装置 図3
  • 特開-配光制御装置 図4
  • 特開-配光制御装置 図5
  • 特開-配光制御装置 図6
  • 特開-配光制御装置 図7
  • 特開-配光制御装置 図8
  • 特開-配光制御装置 図9
  • 特開-配光制御装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108695
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】配光制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/11 20060101AFI20240805BHJP
【FI】
B60Q1/11
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013196
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】友枝 優
(72)【発明者】
【氏名】瓜生 和晃
【テーマコード(参考)】
3K339
【Fターム(参考)】
3K339AA02
3K339BA01
3K339CA01
3K339DA01
3K339DA04
3K339DA05
3K339FA03
3K339GB01
3K339HA13
3K339HA19
3K339JA06
3K339KA22
3K339LA02
3K339LA11
3K339LA16
3K339LA27
3K339MA01
3K339MA03
3K339MA06
3K339MA07
3K339MC24
3K339MC26
3K339MC44
3K339MC48
3K339MC58
(57)【要約】      (修正有)
【課題】車両の前照灯における配光位置ずれの発生を低減させる。
【解決手段】配光変更部200と、情報取得部30と、車両の姿勢情報を取得する姿勢センサ10と、ブレーキ内圧情報を取得するブレーキセンサ20と、情報取得部30、姿勢センサ10およびブレーキセンサ20から取得した情報に基づいて配光変更部200を制御する配光制御部320と、を備え、配光制御部320は、ブレーキモードが「通常制御」の場合、情報取得部30および姿勢センサ10からの情報に基づいて配光変更部200を制御する。また、ブレーキモードが「急制動」の場合、配光制御部320は、走行時配光制御値RVを取得し、情報取得部30、姿勢センサ10およびブレーキセンサ20からの情報に基づいて配光変更部200を制御する。また、ブレーキモードが「緊急制動」の場合、配光制御部320は、ブレーキセンサ20からの情報に基づいて配光変更部200を制御する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前照灯が車両前方側に照射する配光を変更する配光変更部と、
前記車両の走行状態あるいは走行環境を認識し、前記車両に接近する接近物や走行する路面の傾斜情報を取得する情報取得部と、
前記車両の姿勢情報を取得する姿勢センサと、
前記車両のブレーキにおけるブレーキ内圧情報を取得するブレーキセンサと、
前記情報取得部、前記姿勢センサおよび前記ブレーキセンサから取得した情報に基づいて前記配光変更部を制御する配光制御部と、
を備え、
前記ブレーキ内圧情報が第1の所定値以下の場合には、前記配光制御部は、ブレーキモードを「通常制動」と判定し、前記情報取得部および前記姿勢センサから取得した情報に基づいて前記配光変更部を制御し、
前記ブレーキ内圧情報が前記第1の所定値より大きくかつ第2の所定値未満の場合には、前記配光制御部は、ブレーキモードを「急制動」と判定し、前記情報取得部、前記姿勢センサおよび前記ブレーキセンサから取得した情報に基づいて前記配光変更部を制御し、
前記ブレーキ内圧情報が前記第2の所定値以上の場合には、前記配光制御部は、ブレーキモードを「緊急制動」と判定し、前記ブレーキセンサから取得した情報に基づいて前記配光変更部を制御することを特徴とする配光制御装置。
【請求項2】
前記配光制御部は、前記ブレーキ内圧情報が前記第1の所定値以下の場合に、前記配光変更部の配光制御値を第1の配光制御値として取得し、
前記ブレーキ内圧情報が前記第2の所定値以上に達した後に、前記ブレーキ内圧情報が前記第2の所定値未満に戻った場合には、前記第1の配光制御値に基づいて前記配光変更部を制御することを特徴とする請求項1に記載の配光制御装置。
【請求項3】
前記配光制御部は、前記ブレーキが操作されていない際に、前記配光変更部の制御値を第2の配光制御値として取得し、
前記ブレーキ内圧情報が前記第2の所定値以上に達した後に、前記車両が停車した場合には、前記第2の配光制御値に基づいて前記配光変更部を制御することを特徴とする請求項2に記載の配光制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配光制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両においては、車両外部の明るさが一定値以下になった場合に自動で前照灯を点灯させるオートライト機能が搭載されるようになっている。それに伴い、前照灯が点灯された際に、対向車や歩行者を眩しさによって幻惑しないように、前照灯の照射角度を調整する配光制御が行われている場合がある。
【0003】
例えば、特許文献1においては、車両の車体前部に光軸を上下方向に揺動可能に支持された車両前照灯と、前記車両前照灯の光軸を上下方向に揺動させる駆動手段と、前記車両の車体の車高を検出する車高センサと、上記車高センサからの検出信号に基づいて自動車の車体の傾きを演算して、この傾きを相殺するように駆動手段を駆動制御する制御部と、を含む車両前照灯の光軸調整装置(配光制御装置)であって、上記制御部が、自動車の発進時または減速時に、一つの車両情報の積算値が一定値以上であるとき、車両情報に対応して駆動手段を段階的に駆動制御して、車両前照灯の光軸を複数の所定角度に段階的に揺動させる特別の補正制御を行なうように、車両前照灯の配光制御装置を構成する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-154754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両が走行している路面における傾斜の検出、車両姿勢の検出等を行うために、各センサは、検出に有効な車両位置に設置される。また、各センサは、ほこり、水分等が付着することで誤検出が発生しないように、各センサ筐体に収められている。そして、配光制御装置に含まれる制御部は、各センサが各センサ筐体に収められた状態で送信される情報を基準として配光制御を行う。
【0006】
しかしながら、車両に急制動、急旋回等の操作が行われた場合には、車両筐体あるいは各センサ筐体等に歪が発生する。そして、各センサは、車両筐体、各センサ筐体に歪が発生している状態で情報を送信する。換言すると、車両に急制動、急旋回等の操作が行われた場合には、各センサは、車両の急制動、急旋回等によって発生する車両の傾き情報とともに、車両筐体あるいは各センサ筐体に発生している歪情報を加えて送信する。
そのため、車両の姿勢が戻った際に、制御部は、歪情報が加えられた情報に基づいた配光位置に戻すことによって、車両に急制動、急旋回等の操作が行われる以前の配光位置に対して、位置ずれが発生した状態の配光位置に制御してしまう虞があるという課題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、車両の前照灯における配光位置ずれの発生を低減させる配光制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
形態1;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、車両の前照灯が車両前方側に照射する配光を変更する配光変更部と、前記車両の走行状態あるいは走行環境を認識し、前記車両に接近する接近物や走行する路面の傾斜情報を取得する情報取得部と、前記車両の姿勢情報を取得する姿勢センサと、前記車両のブレーキにおけるブレーキ内圧情報を取得するブレーキセンサと、前記情報取得部、前記姿勢センサおよび前記ブレーキセンサから取得した情報に基づいて前記配光変更部を制御する配光制御部と、を備え、前記ブレーキ内圧情報が第1の所定値以下の場合には、前記配光制御部は、ブレーキモードを「通常制動」と判定し、前記情報取得部および前記姿勢センサから取得した情報に基づいて前記配光変更部を制御し、前記ブレーキ内圧情報が前記第1の所定値より大きくかつ第2の所定値未満の場合には、前記配光制御部は、ブレーキモードを「急制動」と判定し、前記情報取得部、前記姿勢センサおよび前記ブレーキセンサから取得した情報に基づいて前記配光変更部を制御し、前記ブレーキ内圧情報が前記第2の所定値以上の場合には、前記配光制御部は、ブレーキモードを「緊急制動」と判定し、前記ブレーキセンサから取得した情報に基づいて前記配光変更部を制御する配光制御装置を提案している。
【0009】
形態2;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記配光制御部は、前記ブレーキ内圧情報が前記第1の所定値以下の場合に、前記配光変更部の配光制御値を第1の配光制御値として取得し、前記ブレーキ内圧情報が前記第2の所定値以上に達した後に、前記ブレーキ内圧情報が前記第2の所定値未満に戻った場合には、前記第1の配光制御値に基づいて前記配光変更部を制御する配光制御装置を提案している。
【0010】
形態3;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記配光制御部は、前記ブレーキが操作されていない際に、前記配光変更部の制御値を第2の配光制御値として取得し、前記ブレーキ内圧情報が前記第2の所定値以上に達した後に、前記車両が停車した場合には、前記第2の配光制御値に基づいて前記配光変更部を制御する配光制御装置を提案している。
【発明の効果】
【0011】
本発明の1またはそれ以上の実施形態によれば、車両の前照灯における配光位置ずれの発生を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る配光制御装置の車両への配置図である。
図2】本発明の実施形態に係る配光制御装置の構成図である。
図3】本発明の実施形態に係る配光制御装置における配光変更部の断面図である。
図4】本発明の実施形態に係る配光制御装置における配光制御ECU部の構成図である。
図5】本発明の実施形態に係る配光制御装置の配光制御ECU部におけるセンサ情報取得図である。
図6】本発明の実施形態に係る配光制御装置の配光方向を示す側面図である。
図7】本発明の実施形態に係る配光制御装置の配光制御ECU部における処理フロー図である。
図8】本発明の実施形態に係る配光制御装置の配光制御ECU部における通常配光処理の処理フロー図である。
図9】本発明の実施形態に係る配光制御装置の配光制御ECU部における急制動配光処理の処理フロー図である。
図10】本発明の実施形態に係る配光制御装置の配光制御ECU部における緊急配光処理の処理フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1から図10を用いて、本実施形態に係る配光制御装置1が適用された車両Vについて説明する。なお、図面に適宜示される矢印FRは、図1に示す車両前方(正面)を示し、矢印UPは正面視上方を示し、矢印LHは正面視左方を示している。また、以下の説明において、上下、前後、左右の方向を用いて説明するときには、特に断りのない限り、正面視での上下方向、正面視での前後方向、正面視での左右方向を示すものとする。
【0014】
<実施形態>
図1から図6を用いて、車両Vに備えられた、本実施形態に係る配光制御装置1の構成について説明する。
【0015】
<配光制御装置1の構成>
配光制御装置1は、図1に示すように、車両Vに配置され、車両Vの前照灯FLが車両前方側に照射する前照光LBの方向を制御する。また、配光制御装置1は、図1および図2に示すように、姿勢センサ10と、ブレーキセンサ20と、情報取得部30と、配光変更部200と、配光制御ECU部300と、を含んで構成されている。
【0016】
姿勢センサ10は、車両Vの姿勢情報を取得し、姿勢情報を情報取得部30および配光制御ECU部300に姿勢情報を送信する。姿勢センサ10は、例えば、後輪部に設けられた高さセンサ、車両中央部に設けられた加速度センサ等によって、車両Vの前後方向および左右方向の傾きあるいは旋回状況等の情報を取得し、取得した情報を情報取得部30あるいは配光制御ECU部300に送信する。
【0017】
ブレーキセンサ20は、各車輪のブレーキ部に設けられている。ブレーキセンサ20は、車両Vのブレーキにおいて、運転者によるブレーキペダルの踏込量としてのブレーキ内圧情報を取得し、ブレーキ内圧情報を情報取得部30および配光制御ECU部300に送信する。
【0018】
情報取得部30は、車両Vの走行環境を認識し、車両Vに接近する接近物や走行する路面の傾斜を特定する。情報取得部30は、姿勢センサ10、ブレーキセンサ20から送信される情報、あるいは、図示しないアクセルセンサ、シフトセンサ、操舵角センサ等から送信される情報等によって、車両の加速、減速あるいは操舵等の運転操作を示す情報を取得する。また、情報取得部30は、例えば、図示しないミリ波レーダー、赤外線センサ、画像装置あるいが温度センサ等によって、車外の状況を示す情報を取得する。車外の状況を示す情報は、例えば、路面勾配、路面状態、天候、風速、外気温等を例示することができる。
情報取得部30が取得した情報は、CAN(Control Area Network)通信を伝送するCANバス部CBを介して配光変更部200および配光制御ECU部300に送信され、情報取得部30は、配光変更部200および配光制御ECU部300からの情報を、CANバス部CBを介して受信する。
【0019】
<配光変更部200の構成>
配光変更部200は、車両Vの前照灯FLが車両前方側に照射する前照光LBの方向を制御する。配光変更部200は、図3に示すように、インナーレンズ部210と、光源部220と、配光アクチュエータECU部230と、を含んで構成されている。配光変更部200は、前照灯FLのアウターレンズ部110と、カバー部120とに囲まれた空間内に設けられている。
【0020】
前照灯FLの車両前方側の外殻を構成しているアウターレンズ部110は、透光性を有するポリカーボネート等の樹脂部材によって形成され、前照光LBを車両前方側に透過させる。また、車両後方側の外殻を形成しているカバー部120は、金属あるいは高耐熱樹脂等の部材により形成され、車両前方側には、開口部を有している。アウターレンズ部110は、カバー部120の開口部を塞ぐようにカバー部120の車両前方側に嵌合され、ボルト等によってカバー部120に固定されている。
【0021】
インナーレンズ部210は、車両前方側に突出した凸レンズであり、例えば、車両前方側は、突出した曲面で形成され、車両後方側は、略平面の非球面レンズである。インナーレンズ部210は、光源部220からの前照光LBを、車両前方側に照射させるものであり、例えば、アクリル、ポリカーボネート等の樹脂あるいはガラス等の透明な部材によって形成されている。
【0022】
光源部220は、例えば、HIDランプ(High Intensity Discharge lanp)、LED(Light Emitting Diode)、LD(Laser Diode)等を光源として前照光LBを出射する。
【0023】
配光アクチュエータECU部230は、後述する配光制御ECU部300からの情報に基づいて、光源部220を点灯および消灯をさせるとともに、光源部220あるいは図示しないシェードおよびリフレクタの方向を変更する駆動部を制御することによって、車両Vの前照灯FLが車両前方側に照射する前照光LBの方向を制御する。
配光アクチュエータECU部230には、配光制御ECU部300および電源等が接続される。配光アクチュエータECU部230に必要な情報は、CANバス部CBを介して送受信される。
【0024】
<配光制御ECU部300の構成>
図4に示すように、配光制御ECU部300は、センサ入力部310と、配光制御部320と、を含んで構成されている。
そして、配光制御ECU部300には、姿勢センサ10と、ブレーキセンサ20と、配光変更部200と、が接続されている。また、CANバス部CBを介して、情報取得部30と、配光変更部200と、が接続されている。
【0025】
センサ入力部310は、姿勢センサ10から、車両Vの姿勢情報を取得する。また、センサ入力部310は、ブレーキセンサ20から、ブレーキ内圧情報を取得する。そして、し、センサ入力部310は、取得した情報を配光制御部320に送信する。
【0026】
配光制御部320には、図示しない記憶部としてのROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を含み、ROMには、上述の制御プログラム等が格納され、RAMには、各種データ等が格納されている。配光制御部320は、ROMに格納された制御プログラムに従って、配光制御装置1全体の制御を行う。また、ROMには、ブレーキ内圧情報における第1の所定値としての通常制動値NPと、第2の所定値としての緊急制動値EPとが格納されている。
また、配光制御部320は、情報取得部30、姿勢センサ10およびブレーキセンサ20から取得した情報に基づいて配光変更部200を制御する。
配光制御部320は、ブレーキ内圧情報が通常制動値NP以下の場合には、ブレーキモードを「通常制動」と判定し、情報取得部30および姿勢センサ10から取得した情報に基づいて配光変更部200を制御する。ブレーキ内圧情報が通常制動値NPより大きくかつ緊急制動値EP未満の場合には、配光制御部320は、ブレーキモードを「急制動」と判定し、情報取得部30、姿勢センサ10およびブレーキセンサ20から取得した情報に基づいて配光変更部200を制御する。ブレーキ内圧情報が緊急制動値EP以上の場合には、配光制御部320は、ブレーキモードを「緊急制動」と判定し、ブレーキセンサ20から取得した情報に基づいて配光変更部200を制御する。
【0027】
具体的には、配光制御部320は、CANバス部CBを介して、情報取得部30から車両Vの走行速度情報等を取得し、車両Vが走行しているか否かを判定する。車両Vが走行中であり、前照灯FLが点灯されている場合には、配光制御部320は、姿勢センサ10およびブレーキセンサ20から、車両Vの姿勢情報およびブレーキ内圧情報を取得し、配光アクチュエータECU部230を介して前照灯FLの配光を制御する。
例えば、配光制御部320は、車両Vにおいてブレーキが操作され、車両Vが前傾した場合には、姿勢センサ10からの車高情報に基づいて車両の前傾角度を算出し、配光角度を上昇させる制御を行うことを例示することができる。また、配光制御部320は、情報取得部30からの走行速度情報および車両Vの加速度情報と、ブレーキセンサ20からのブレーキ内圧情報とから車両Vの前傾角度を算出し、配光角度を上昇あるいは下降させる制御を行うことを例示することができる。
【0028】
また、配光制御部320は、ブレーキモードを判定する。
図5に示すように、ブレーキモードは、例えば、ブレーキ内圧情報に基づいて「制動無」、「通常制動」、「急制動」および「緊急制度」に区分することを例示することができる。ブレーキモードは、例えば、ブレーキ内圧情報“40”に設定されている通常制動値NPおよびブレーキ内圧情報“80”に設定されている緊急制動値EPに基づいて区分されている。
具体的には、配光制御部320は、例えば、ブレーキ内圧情報が“0”の場合には、ブレーキモードを「制動無」と判定する。また、配光制御部320は、ブレーキ内圧情報が“0より大きくかつ40以下”の場合には、ブレーキモードを「通常制動」と判定し、ブレーキ内圧情報が“40より大きくかつ80未満”の場合には、ブレーキモードを「急制動」と判定し、ブレーキ内圧情報が“80以上”の場合には、ブレーキモードを「緊急制動」と判定する。換言すると、ブレーキモードの「通常制動」は、ブレーキ内圧情報が通常制動値NP以下の場合であり、ブレーキモードの「急制動」は、ブレーキ内圧情報が通常制動値NPより大きくかつ緊急制動値EP未満の場合であり、ブレーキモードの「緊急制動」は、ブレーキ内圧情報が緊急制動値EP以上の場合を示している。
そして、配光制御部320が、ブレーキモードが「通常制動」である旨の判定をした場合には、配光制御部320は、情報取得部30および姿勢センサ10から、車両Vの走行速度情報、路面傾斜情報および車両Vの姿勢情報等を取得する。配光制御部320は、取得した情報に基づいて配光制御情報を算出し、配光変更部200を制御する。また、配光制御部320が、ブレーキモードが「急制動」である旨の判定をした場合には、配光制御部320は、情報取得部30、姿勢センサ10およびブレーキセンサ20から、車両Vの走行速度情報、路面傾斜情報および車両Vの姿勢情報、ブレーキ内圧情報等を取得する。配光制御部320は、取得した情報に基づいて配光制御情報を算出し、配光変更部200を制御する。また、配光制御部320が、ブレーキモードが「緊急制動」である旨の判定をした場合には、配光制御部320は、ブレーキセンサ20からブレーキ内圧情報を取得する。配光制御部320は、取得した情報に基づいて配光制御情報を算出し、配光変更部200を制御する。
【0029】
ここで、車両Vのブレーキモードが「緊急制動」となった場合には、姿勢センサ10あるいはブレーキセンサ20が収容されている筐体あるいはセンサ部品自体に大きな加速度が印加される。このとき、姿勢センサ10およびブレーキセンサ20を収容している筐体あるいはセンサ部品に歪が発生することによって、配光制御部320は、車両Vの姿勢情報あるいはブレーキ内圧情報に歪情報が加算された情報を取得する虞がある。そして、図6に示すように、加算された歪情報によって、前照光LB1あるいは前照光LB2に示すように上下方向に配光位置ずれが発生する虞がある。
そのため、車両Vのブレーキモードが「緊急制動」となった場合には、配光制御部320は、例えば、情報取得部30からの車両Vの速度情報およびブレーキセンサ20からのブレーキ内圧情報を取得し、車両Vの減速加速度等を算出した情報に基づいて配光変更部200を制御している。また、例えば、あらかじめ記憶部に格納されている図示しない対応表を用いることによって、ブレーキ内圧に対する配光制御値を抽出し、配光変更部200を制御することを例示することができる。
【0030】
また、配光制御部320は、ブレーキ内圧情報が通常制動値NP以下の場合に、配光変更部200の配光制御値を第1の配光制御値である基準配光制御値SVとして取得し、記憶部に格納する。そして、ブレーキ内圧情報が緊急制動値EP以上に達した後に、ブレーキ内圧情報が緊急制動値EP未満に戻った場合には、配光制御部320は、基準配光制御値SVに基づいて配光変更部200を制御する。
また、配光制御部320は、ブレーキモードが、ブレーキが操作されていない状態を示す「制動無」の際に、配光変更部200の制御値を、第2の配光制御値としての走行時配光制御値RVとして取得し、記憶部に格納する。そして、ブレーキ内圧情報が緊急制動値EP以上に達した後に、車両Vが停車した場合には、配光制御部320は、走行時配光制御値RVに基づいて配光変更部200を制御する。
換言すると、車両Vのブレーキモードが「緊急制動」となった後に、ブレーキモードが「急制動」あるいは「通常制動」に戻った場合には、配光制御部320は、歪情報を含まない走行時配光制御値RVに基づいて配光変更部200を制御する。また、車両Vのブレーキモードが「緊急制動」となった後に、車両Vが停車した場合には、配光制御部320は、歪情報を含まない基準配光制御値SVに基づいて配光変更部200を制御する。
【0031】
<配光制御ECU部300の処理>
図7図10を用いて、本実施形態に係る配光制御装置1における配光制御ECU部300処理について説明する。
【0032】
図7に示すように、配光制御部320は、情報取得部30からの情報に基づいて、車両Vが走行中であるか否かを判定する(ステップS101)。
配光制御部320は、車両Vが走行中ではないと判定する場合(ステップS101の「NO」)には、ステップS101に処理を遷移させる。
【0033】
一方、車両Vが走行中であると判定する場合(ステップS101の「YES」)には、配光制御部320は、通常配光処理を実行する(ステップS102)。なお、ステップS102の処理の詳細については後述する。
【0034】
そして、配光制御部320は、ブレーキモードが「制動無」であるか否かを判定する(ステップS103)。
配光制御部320は、ブレーキモードが「制動無」であると判定する場合(ステップS103の「YES」)には、現在の配光制御情報を走行時配光制御値RVとして配光制御部320に格納し、ステップS101に処理を遷移させる(ステップS104)。
【0035】
一方、配光制御部320は、ブレーキモードが「制動無」ではないと判定する場合(ステップS103の「NO」)には、ブレーキモードが「通常制動」であるか否かを判定する(ステップS105)。
【0036】
配光制御部320は、ブレーキモードが「通常制動」であると判定する場合(ステップS105の「YES」)には、現在の配光制御情報を走行時配光制御値RVとして配光制御部320に格納し、ステップS102に処理を遷移させる(ステップS106)。
【0037】
一方、配光制御部320は、ブレーキモードが「通常制動」ではないと判定する場合(ステップS105の「NO」)には、ブレーキモードが「急制動」であるか否かを判定する(ステップS107)。
【0038】
配光制御部320は、ブレーキモードが「急制動」であると判定する場合(ステップS107の「YES」)には、現在の配光制御情報を走行時配光制御値RVとして配光制御部320に格納し(ステップS108)、急制動配光処理を実行する(ステップS109)。なお、ステップS109の処理の詳細については後述する。
【0039】
一方、配光制御部320は、ブレーキモードが「急制動」ではないと判定する場合(ステップS107の「NO」)には、ブレーキモードが「緊急制動」であるか否かを判定する(ステップS110)。
【0040】
配光制御部320は、ブレーキモードが「緊急制動」ではないと判定する場合(ステップS110の「NO」)には、処理をステップS105に遷移させる。
【0041】
一方、配光制御部320は、ブレーキモードが「緊急制動」であると判定する場合(ステップS110の「YES」)には、緊急配光処理を実行する(ステップS111)。なお、ステップS111の処理の詳細については後述する。
【0042】
そして、配光制御部320は、再度ブレーキモードが「緊急制動」であるか否かを判定する(ステップS112)。
【0043】
配光制御部320は、ブレーキモードが「緊急制動」であると判定する場合(ステップS112の「YES」)には、処理をステップS111に遷移させる。
【0044】
一方、配光制御部320は、ブレーキモードが「緊急制動」ではないと判定する場合(ステップS112の「NO」)には、車両Vが停車しているか否かを判定する(ステップS113)。
【0045】
配光制御部320は、車両Vが停車していないと判定する場合(ステップS113の「NO」)には、配光制御部320は、走行時配光制御値RVに基づいて配光を制御し(ステップS114)、処理をステップS105に遷移させる。
【0046】
一方、配光制御部320は、車両Vが停車していると判定する場合(ステップS113の「YES」)には、配光制御部320は、基準配光制御値SVに基づいて配光を制御し(ステップS115)、処理を終了させる。
【0047】
(通常配光処理について)
通常配光処理について、図8を用いて説明する。
ステップS102の通常配光処理においては、配光制御部320は、情報取得部30から路面傾斜情報を取得し(ステップS151)、姿勢センサ10から車両Vの姿勢情報を取得する(ステップS152)。そして、配光制御部320は、路面傾斜情報および車両Vの姿勢情報に基づいて配光を制御し(ステップS153)、ステップS103に処理を遷移させる。
【0048】
(急制動配光処理について)
急制動配光処理について、図9を用いて説明する。
ステップS109の急制動配光処理においては、配光制御部320は、情報取得部30から路面傾斜情報を取得し(ステップS161)、姿勢センサ10から車両Vの姿勢情報を取得し(ステップS162)、ブレーキセンサ20からブレーキ内圧情報を取得する(ステップS163)。そして、配光制御部320は、路面傾斜情報、車両Vの姿勢情報およびブレーキ内圧情報に基づいて配光を制御し(ステップS164)、処理をステップS110に遷移させる。
【0049】
(緊急配光処理について)
緊急配光処理について、図10を用いて説明する。
ステップS111の緊急配光処理においては、配光制御部320は、ブレーキセンサ20からブレーキ内圧情報を取得する(ステップS171)。そして、配光制御部320は、ブレーキ内圧情報に基づいて、配光を制御する(ステップS172)。そして、配光制御部320は、処理をステップS112に遷移させる。
【0050】
<作用・効果>
以上、説明したように、本実施形態に係る配光制御装置1は、車両Vの前照灯FLが車両前方側に照射する配光を変更する配光変更部200と、車両Vの走行状態あるいは走行環境を認識し、車両Vに接近する接近物や走行する路面の傾斜情報を取得する情報取得部30と、車両Vの姿勢情報を取得する姿勢センサ10と、車両Vのブレーキの内圧情報を取得するブレーキセンサ20と、情報取得部30、姿勢センサ10およびブレーキセンサ20から取得した情報に基づいて配光変更部200を制御する配光制御部320と、を備え、配光制御部320は、ブレーキ内圧情報が第1の所定値としての通常制動値NP以下の場合には、情報取得部30および姿勢センサ10から取得した情報に基づいて配光変更部200を制御し、ブレーキ内圧情報が通常制動値NPより大きくかつ第2の所定値としての緊急制動値EP未満の場合には、配光制御部320は、情報取得部30、姿勢センサ10およびブレーキセンサ20から取得した情報に基づいて配光変更部200を制御し、ブレーキ内圧情報が緊急制動値EP以上の場合には、配光制御部320は、ブレーキセンサ20から取得した情報に基づいて配光変更部200を制御する。
つまり、車両Vが走行中であり、前照灯FLが点灯されている場合には、配光制御ECU部300の配光制御部320は、ブレーキ内圧情報であるブレーキモードが「通常制動」、「急制動」あるいは「緊急制度」である旨の判定を行い、ブレーキモードに基づいて、取得する情報を変更し、配光変更部200を制御することによって、正確な配光制御を行うことができる。
一方、ブレーキモードが「緊急制動」となった場合には、姿勢センサ10あるいはブレーキセンサ20を収容している筐体あるいはセンサ部品自体に歪が発生することによって、車両Vの姿勢情報あるいはブレーキ内圧情報に歪情報が加算された情報が送信される虞がある。そこで、ブレーキモードが「緊急制動」の場合には、車両Vの速度情報およびブレーキセンサ20からのブレーキ内圧情報を取得し、車両Vの減速加速度等を算出することによって、歪情報が含まれない配光制御値に基づいて車両Vにおける配光を制御することができる。
そのため、車両の前照灯における配光位置ずれの発生を低減させることができる。
【0051】
また、本実施形態に係る配光制御装置1は、配光制御部320は、ブレーキ内圧情報が通常制動値NP以下の場合に、配光変更部200の配光制御値を、第1の配光制御値である基準配光制御値SVとして取得し、ブレーキ内圧情報が緊急制動値EP以上に達した後に、ブレーキ内圧情報が緊急制動値EP未満に戻った場合には、基準配光制御値SVに基づいて配光変更部200を制御する。
つまり、配光制御部320は、ブレーキモードが「緊急制動」以上となったことにより、姿勢センサ10あるいはブレーキセンサ20を収めている筐体、あるいは部品自体に発生した歪情報が含まれた配光制御値に基づくことなく、歪情報が含まれていない走行時配光制御値RVに基づいて配光変更部200を制御することによって、正確な車両Vにおける配光を制御することができる。
そのため、車両の前照灯における配光位置ずれの発生を低減させることができる。
【0052】
また、本実施形態に係る配光制御装置1は、配光制御部320は、ブレーキが操作されていない際に、配光変更部200の制御値を第2の配光制御値である走行時配光制御値RVとして取得し、ブレーキ内圧情報が前記第2の所定値としての緊急制動値EP以上に達した後に、車両Vが停車した場合には、緊急制動値EPに基づいて配光変更部200を制御する。
つまり、ブレーキモードが「緊急制動」以上となったことにより、姿勢センサ10あるいはブレーキセンサ20を収めている筐体、あるいは部品自体に発生した歪情報が含まれた配光制御値に基づくことなく、歪情報が含まれていない走行時配光制御値RVに基づいて配光変更部200を制御することによって、正確な車両Vにおける配光を制御することができる。
そのため、車両の前照灯における配光位置ずれの発生を低減させることができる。
【0053】
なお、配光制御ECU部300の処理をコンピュータシステムが読み取り可能な記録媒体に記録し、この記録媒体に記録されたプログラムを配光制御ECU部300に読み込ませ、実行することによって本発明の配光制御装置1を実現することができる。ここでいうコンピュータシステムとは、OSや周辺装置等のハードウェアを含む。
【0054】
また、「コンピュータシステム」は、WWW(World Wide Web)システムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
【0055】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組合せで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0056】
以上、この発明の実施形態につき、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0057】
10;姿勢センサ
20;ブレーキセンサ
30;情報取得部
200;配光変更部
230;配光アクチュエータECU部
300;配光制御ECU部
310;センサ入力部
320;配光制御部
EP;緊急制動値
NP;通常制動値
FL;前照灯
LB;前照光
RV;走行時配光制御値
SV;基準配光制御値
V;車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10