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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108700
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】摘取装置および栽培システム
(51)【国際特許分類】
   A01D 46/00 20060101AFI20240805BHJP
   B25J 15/00 20060101ALI20240805BHJP
   A01D 46/24 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
A01D46/00 Z
B25J15/00
A01D46/24 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013205
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】古澤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 伸明
(72)【発明者】
【氏名】高田 咲子
(72)【発明者】
【氏名】兼崎 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】大谷 悠樹
【テーマコード(参考)】
2B075
3C707
【Fターム(参考)】
2B075GA01
2B075HB13
2B075HB20
2B075JD21
2B075JF01
2B075JF02
2B075JF05
2B075JF06
2B075JF07
2B075JF09
2B075JJ05
3C707AS22
3C707BS10
3C707DS01
3C707ES00
3C707HS11
3C707KS03
3C707KS04
3C707KT03
3C707KT06
3C707LT06
3C707NS26
(57)【要約】
【課題】果菜を傷つけることなく摘み取りが行える摘取装置および栽培システムを提供する。
【解決手段】摘取装置100は、把持部130によって把持した果菜の摘み取りを行う。把持部130は、弾性体によって形成され、果菜に対して外から被せることが可能な第1形状と、内部に配された果菜を包むようにして把持可能な第2形状との間で変形可能な変形部132を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持部によって把持した果菜の摘み取りを行う摘取装置であって、
前記把持部は、弾性体によって形成され、果菜に対して外から被せることが可能な第1形状と、内部に配された果菜を包むようにして把持可能な第2形状との間で変形可能な変形部を備えることを特徴とする摘取装置。
【請求項2】
請求項1に記載の摘取装置であって、
前記変形部は、果菜を出し入れするための開口を有する有底筒状の部材であることを特徴とする摘取装置。
【請求項3】
請求項2に記載の摘取装置であって、
さらに、前記変形部内に負圧を導入する負圧導入部を備えることを特徴とする摘取装置。
【請求項4】
請求項2に記載の摘取装置であって、
前記変形部の側面に、根本側から先端側に向かう方向に沿って伸びる蛇腹状のヒダが形成されていることを特徴とする摘取装置。
【請求項5】
移動ベンチ上で果菜の栽培を行い、栽培された果菜に対して摘取装置にて摘み取りを行う栽培システムであって、
前記摘取装置は、請求項1から4の何れか1項に記載の摘取装置であることを特徴とする栽培システム。
【請求項6】
請求項5に記載の栽培システムであって、
摘取対象となる果菜を撮影する撮影部を備え、
前記撮影部による撮影データに基づいて果菜の位置情報および量を判定し、この判定によって前記移動ベンチを移動させる時間間隔または移動速度を調整することを特徴とする栽培システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、栽培植物において果菜の摘み取りを行う摘取装置、およびこれを備えた栽培システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、移動可能なアーム部の先端に把持部を備えた摘取装置が開示されている。特許文献1の摘取装置は、摘み取ろうとする果菜を把持部にて把持し、把持した果菜を栽培植物からもぎ取る、あるいは果菜に繋がった茎をハサミで切り取るなどして、果菜の摘み取りを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-041706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
把持部を備える摘取装置では、果菜を把持する際に、できるだけ果菜に傷を付けないようにすることが要望される。
【0005】
本開示は、上記課題に鑑みてなされたものであり、果菜を傷つけることなく摘み取りが行える摘取装置および栽培システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本開示の第1の態様である摘取装置は、把持部によって把持した果菜の摘み取りを行う摘取装置であって、前記把持部は、弾性体によって形成され、果菜に対して外から被せることが可能な第1形状と、内部に配された果菜を包むようにして把持可能な第2形状との間で変形可能な変形部を備えることを特徴としている。
【0007】
上記の構成によれば、第2形状に変形した変形部は、把持する果菜に対して多数の接触点を持つことで各接触点における接触圧を低減することができ、果菜に傷を付けることなく摘み取りが行える。
【0008】
また、上記摘取装置では、前記変形部は、果菜を出し入れするための開口を有する有底筒状の部材である構成とすることができる。
【0009】
また、上記摘取装置は、さらに、前記変形部内に負圧を導入する負圧導入部を備える構成とすることができる。
【0010】
上記の構成によれば、変形部の内部に負圧を導入することで変形部の内外で圧力差が発生し、この圧力差を利用して変形部を第2形状に変化させることができる。
【0011】
また、上記摘取装置は、前記変形部の側面に、根本側から先端側に向かう方向に沿って伸びる蛇腹状のヒダが形成されている構成とすることができる。
【0012】
上記の構成によれば、蛇腹状のヒダが伸び縮みすることで第1形状と第2形状との間の変化が容易に行える。
【0013】
また、本開示の第2の態様である栽培システムは、移動ベンチ上で果菜の栽培を行い、栽培された果菜に対して摘取装置にて摘み取りを行う栽培システムであって、前記摘取装置は、上記記載の摘取装置であることを特徴としている。
【0014】
また、上記栽培システムは、摘取対象となる果菜を撮影する撮影部を備え、前記撮影部による撮影データに基づいて果菜の位置情報および量を判定し、この判定によって前記移動ベンチを移動させる時間間隔または移動速度を調整する構成とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本開示の摘取装置および栽培システムは、弾性体によって形成された変形部によって果菜を包むようにして把持することで、果菜を傷つけることなく摘み取りが行えるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】摘取装置の概要を示す模式図である。
図2】把持部の外観例を示す斜視図である。
図3】把持部の側面図である。
図4】把持部における基部の正面図である。
図5】把持部が果菜を把持する際の作用を説明する断面図である。
図6】栽培システムの基本構成を示す概略図である。
図7】栽培システムにおいて、摘取装置による果菜の摘取動作を説明する図である。
図8】把持部の側面図である。
図9】把持部における基部の正面図である。
図10】摘取装置および投光部の配置例を示す概略図である。
図11】果菜の品質計測手順の一例を説明する平面図である。
図12】摘取装置の概要を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔第1実施形態〕
(摘取装置)
以下、本開示の摘取装置の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施形態の摘取装置100の概要を示す模式図である。
【0018】
図1に示すように、摘取装置100は、土台110、アーム120、把持部130およびエア配管140を備えている。アーム120は、一方(根本側)の端部が土台110に対して取り付けられ、他方(先端側)の端部に把持部130が取り付けられている。アーム120は、図示しないアクチュエータにより、土台110に対して水平方向の回転移動が可能とされている。また、アーム120は、図示しないアクチュエータによって稼働される複数の関節121を有しており、これらの関節121を独立して稼働させることにより、把持部130の位置や向きを変化させることができる。エア配管140は、把持部130に接続されている。
【0019】
続いて、摘取装置100における把持部130の具体的構成について、図2図4を参照して説明する。図2は、把持部130の外観例を示す斜視図である。図3は、把持部130の側面図である。図4は、把持部130における基部131の正面図である。尚、図3では、基部131のみ断面(図4におけるA-A断面)を示している。
【0020】
図2および図3に示すように、把持部130は、基部131および変形部132を有している。基部131は、根本側がアーム120に接続され、先端側に変形部132が接続されている。基部131は、例えば、根本側から先端側に向かって中心軸を有する略円筒形状の部材である。
【0021】
本実施形態では、変形部132はカップ形状(開口を有する有底筒状)の部材とされており、基部131に接続される根本側がカップ底部とされ、先端側が開口している。変形部132は、摘み取る果菜を把持する際に所望の形状変形が生じるような弾性体にて形成されている。また、変形部132は、摘み取る果菜をある程度強固に把持できるような強度も必要とされる。このような変形部132の好適な材質としては、例えばシリコーンゴムやウレタンゴムなどが挙げられる。
【0022】
把持部130は、果菜に対して外から被せることが可能な第1形状と、内部に配された果菜を包むようにして把持可能な第2形状との間で変形可能となっている。これにより、摘取対象の果菜に対して第1形状の変形部132を外から被せ、その後、果菜を包み込むように変形部132を第2形状に変形させることで果菜の把持が行える。本実施形態では、変形部132の変形は、変形部132のカップ内に負圧を導入することによって行える。
【0023】
具体的には、図3および図4に示すように、基部131には溝133が形成されている。溝133は、例えば円環状の溝とされており、基部131の軸方向に沿って延びているとともに、基部131の正面(変形部132との接続面)において開口され、この開口が変形部132のカップ底部にて露出している。また、溝133は、基部131の側面にてエア配管140と連通している。
【0024】
果菜を把持する際に変形部132を変形させる第1の手法として、エア配管140の他端にコンプレッサー(図示省略)を接続し、コンプレッサーによる圧縮空気をエア配管140および溝133を介して変形部132の内部に送り込む方法が考えられる。尚、この場合のコンプレッサーは、摘取装置100に対して外部接続されるものであってよい。
【0025】
図5は、第1の手法によって果菜を把持する際の作用を説明する断面図である。但し、図5では、基部131における溝133の図示は省略している。
【0026】
果菜(例えばイチゴ)に対して変形前の(第1形状の)変形部132を被せ、溝133から圧縮空気を変形部132の内部に送り込むと、変形部132の内側面に沿って気流が生じ、この気流は変形部132の開口から排出される(図5(a)参照)。この気流によって、変形部132の内側面付近で負圧が発生する(負圧が導入される)(図5(b)参照)。
【0027】
変形部132の内側面付近で負圧が発生すると変形部132の内外で圧力差が発生し、変形部132は外側からの正圧によって押されるようにして変形し、カップ内の果菜を包み込むようにして把持することができる(図5(c)参照)。このとき、果菜を包み込むように変形した変形部132は、果菜に対して多数の接触点を持つことができる。その結果、変形部132と果菜との各接触点における接触圧を低減することができ、把持される果菜に傷を付けないようにすることができる。また、変形部132自体が弾性体によって形成されていることも、変形部132と果菜との各接触点における接触圧を低減させる作用があり、果菜に傷を付けない効果を向上させる。コンプレッサーによる圧縮空気の供給を停止させれば、変形部132は弾性力によって形状復帰して果菜の把持を解除する。
【0028】
また、変形部132を変形させる第2の手法としては、エア配管140の他端に真空ポンプ(図示省略)を接続し、エア配管140および溝133を介して変形部132の内部空気を吸引する方法が考えられる。尚、この場合の真空ポンプは、摘取装置100に対して外部接続されるものであってよい。この手法でも、変形部132のカップ内に負圧を導入することができ、第1の手法と同様に変形部132を変形させて果菜の把持を行うことができる。真空ポンプによる吸引を停止させれば、変形部132は弾性力によって形状復帰して果菜の把持を解除する。
【0029】
本実施形態における変形部132は、カップ形状である以外、具体的形状は特に限定されない。例えば、図2および図3に例示した変形部132は、根本側から先端側に向かうについて拡がるような(周方向寸法が大きくなるような)形状とされているが、根本側から先端側に向かう方向に沿って周方向寸法が変化しない形状であってもよい。また、図2に例示した変形部132は、先端側の開口が略円形形状とされているが、開口の形状は特に限定されるものではなく、例えば摘み取り対象とする果菜に合わせた任意の形状としてもよい。
【0030】
また、図2に例示するように、変形部132には、カップ側面において根本側から先端側に向かう方向に沿って伸びる多数のヒダ(山折りと谷折りとが繰り返し形成される蛇腹状のヒダ)が形成されていることが好ましい。このようなヒダは、変形部132をより変形させやすくするものである。このようなヒダが形成された変形部132は、ヒダの並び方向、すなわちカップの周方向の寸法を減少させる変形が容易となり、果菜の把持が容易となる。
【0031】
(栽培システム)
上述した摘取装置100は、屋内で果菜の栽培を行う栽培システムにおいて使用することが想定される。図6は、本実施形態に係る栽培システム10の基本構成を示す概略図である。尚、以下の説明において、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば「左右」「上下」など)を用いる場合は、図6において紙面に直交する方向を平面視とし、紙面上下方向を縦方向とし、紙面左右方向を横方向とする。これらの用語は説明の便宜のために用いるものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0032】
図6に示すように、栽培システム10は、複数の移動ベンチ20を循環移動させる閉ループ状のものとされている。移動ベンチ20には、栽培植物が植えられたプランタPが載置される。移動ベンチ20に載置されるプランタPの形状および個数は特に限定されるものではない。
【0033】
栽培システム10において、移動ベンチ20を移動させる手段としては、横方向において互いに逆向きの搬送方向を有し、かつ、縦方向に間隔を隔てて配置された一対の搬送コンベヤ装置30A,30Bと、縦方向において互いに逆向きの搬送方向を有する一対の案内装置40A,40Bと、移動ベンチ20を押し出し移動させる一対の押し出し装置50A,50Bとが設けられている。搬送コンベヤ装置30A,30Bの搬送方向と、案内装置40A,40Bの搬送方向とは、平面視で互いに直交している。
【0034】
案内装置40Aは、一方の搬送コンベヤ装置30Aの下流側箇所と他方の搬送コンベヤ装置30Bの上流側箇所とを繋ぐように配置されている。案内装置40Bは、他方の搬送コンベヤ装置30Bの下流側箇所と一方の搬送コンベヤ装置30Aの上流側箇所とを繋ぐように配置されている。これにより、各移動ベンチ20は、搬送コンベヤ装置30A、案内装置40A、搬送コンベヤ装置30B、案内装置40Bの順で循環移動することができる。尚、移動ベンチ20は、平面視で略矩形状であり、案内装置40A,40Bの搬送方向と直交する方向を長手方向、案内装置40A,40Bの搬送方向と平行な方向を短手方向としている。
【0035】
案内装置40A,40Bは、それぞれ2本の案内レール41を備えている。一方、各移動ベンチ20の下面側には、案内レール41の配置幅に合わせた間隔で、移動ベンチ20を案内レール41上で摺動させる図示しない摺動体(車輪など)が取り付けられている。あるいは、摺動体は案内装置40A,40Bに設けられていてもよい。これにより、各移動ベンチ20は、案内装置40A,40B上において縦方向に移動可能となる。また、図6では図示していないが、移動ベンチ20は、案内装置40A,40Bによる移動方向(縦方向)に延びる当接体を有していてもよい。案内装置40A,40B上では、この当接体を隣の移動ベンチ20に当接させることにより、隣り合う移動ベンチ20の間に適宜間隔を設けることができる。あるいは、案内装置40A,40B上での移動ベンチ20間隔は、上記当接体を設ける代わりに、移動ベンチ20の縦方向寸法によっても調節することができる。
【0036】
押し出し装置50A,50Bは、搬送コンベヤ装置30A,30Bの搬送下流側において、当該箇所にある移動ベンチ20(図6中では一点鎖線で示す)をこれに対峙する案内装置40A,40Bに向けて押し出し搬送する手段として設けられている。この場合の押し出し装置50A,50Bは、例えば、多段に伸縮動するように構成された電磁ソレノイドやエアシリンダなどの直動アクチュエータとすることができる。押し出し装置50A,50Bによる移動ベンチ20の押し出し移動に伴い、案内装置40A,40B上では、複数の移動ベンチ20が玉突き状に搬送される。その結果、案内装置40A,40Bの下流側では、最下流にある移動ベンチ20が搬送コンベヤ装置30B,30Aの上流側に押し出され、載置される。搬送コンベヤ装置30A,30Bの上流側に載置された移動ベンチ20は、搬送コンベヤ装置30A,30Bの上流側から下流側へ横方向の搬送を受ける。
【0037】
このように、栽培システム10では、搬送コンベヤ装置30A,30Bによる移動ベンチ20の搬送動作と、押し出し装置50A,50Bによる移動ベンチ20の押し出し搬送動作とが交互に行われることによって、移動ベンチ20の循環移動が行われる。この循環移動において、搬送コンベヤ装置30A,30Bによる移動ベンチ20の搬送速度、押し出し装置50A,50Bによる押し出し搬送速度(すなわち、案内装置40A,40B上での移動ベンチ20の移動速度)、押し出し装置50A,50Bによる押し出し搬送の時間間隔などは任意に設定可能である。これにより、各移動ベンチ20が1周分の移動に係る時間も任意に設定可能となる。
【0038】
また、搬送コンベヤ装置30A,30Bにおいては、搬送される移動ベンチ20に向けて水を散布する灌水装置60が設けられている。灌水装置60の配置位置は、搬送方向の中央付近、言い換えれば、搬送コンベヤ装置30A,30Bによって搬送される各移動ベンチ20の全体に散水を行える位置とされる。尚、図6では、灌水装置60は搬送コンベヤ装置30A,30Bのそれぞれに設けられているが、搬送コンベヤ装置30A,30Bの何れか一方のみに灌水装置60が設けられてもよい。
【0039】
栽培システム10では、搬送コンベヤ装置30A,30Bの一方(図1では、搬送コンベヤ装置30B)に対し、案内装置40Aまたは40Bと反対側のスペースに摘取装置100が配置される。摘取装置100は、栽培システム10における所定位置(図6では左下)に搬送されてきた移動ベンチ20上のプランタPに対して果菜の摘み取りを行うことができる。
【0040】
図7は、栽培システム10において、摘取装置100による果菜の摘取動作を説明する図である。
【0041】
先ずは、図7(a)に示すように、摘取装置100におけるアーム120の制御によって把持部130の位置および向きを変化させ、変形部132を摘取対象の果菜に対して被せるように位置させる。尚、摘取対象である果菜は、プランタPに対する相対位置や密集具合などが摘取作業前に事前に把握されている。具体的には、栽培システム10の適切な箇所に撮影部(カメラなど)を設け、収穫作業前の任意の段階(例えば潅水稼働時)で、プランタPで栽培されている果菜の撮影を行う。この場合、栽培システム10において撮影部を複数設け、プランタPに対して複数の方向から撮影を行うことがより好ましい。この撮影データに対して画像処理を行うことによってプランタPに対する果菜の相対位置や密集具合などを認識することができる。
【0042】
摘取対象の果菜に対して変形部132が被せられると、図7(b)に示すように、変形部132がその果菜を把持し、把持した果菜の摘み取りを行う。果菜の摘取方法としては、把持した果菜を栽培植物からもぎ取る、あるいは果菜に繋がった茎をハサミで切り取るなどの方法がある。前者の方法としては、果菜を把持した把持部130をアーム120の先端で(基部131の軸中心に)回転駆動させ、果梗をねじ切るようにして摘み取る手法が考えられる。また、後者の方法としては、アーム120の先端に把持部130と近接してハサミ部(図示せず)を設け、このハサミ部によって果梗付近の茎を切断して摘み取る手法が考えられる。
【0043】
果菜が栽培植物から摘み取られると、図7(c)に示すように、摘取装置100は、アーム120を土台110から回転させ、摘み取った果菜を集荷トレイT上に移動させる。そして、図7(d)に示すように、果菜の把持を解除し、摘み取った果菜を集荷トレイTに収容させる(果菜の箱詰めを行う)。図7(a)~(d)の動作の繰り返しにより、摘取装置100は果菜の摘取動作を連続して行うことができる。
【0044】
尚、図6に示す栽培システム10では、1つの移動ベンチ20に対して複数(図では5個)のプランタPが載置されている。この場合、1カ所に静止した移動ベンチ20上の全てのプランタPに対して摘取装置100が摘取動作を行うとすれば、摘取装置100において広い動作範囲が必要となる。このことは、摘取装置100に、装置の大型化や制御の複雑化などのデメリットを生じさせる。
【0045】
このため、栽培システム10では、搬送コンベヤ装置30Bによる移動ベンチ20の移動(横送り)と、摘取装置100による摘取動作とを組み合わせることが好ましい。例えば、図6に示す状態では、摘取装置100は、図中左下の移動ベンチ20上の最も右側のプランタPに対してのみ摘取動作を行う。この摘取動作が終了すると、搬送コンベヤ装置30Bは、移動ベンチ20を所定距離(移動ベンチ20上に載置されるプランタPの1ピッチ分)だけ右へ横送りする。この移動ベンチ20の横送りにより、摘取装置100は、移動ベンチ20上の右側から2番目のプランタPに対して摘取動作を行えるようになる。
【0046】
このように、搬送コンベヤ装置30Bによる移動ベンチ20の移動と、摘取装置100による摘取動作とを組み合わせることで、摘取装置100において広い動作範囲を設ける必要が無くなり、摘取装置100の小型化や制御の簡素化などが実現できる。
【0047】
また、移動ベンチ20を横送りする時間間隔または移動速度は、一定でなくてもよく、各プランタPにおいて予め把握された摘取対象の果菜の数や位置情報に基づいて、収穫に適した摘み取り動作時間が確保されるようにプランタP毎に時間間隔または移動速度が調整されることが好ましい。
【0048】
〔第2実施形態〕
本実施形態では、摘取装置100の変形例について説明する。以下の変形例の説明において、第1実施形態と実質的に共通の機能を有する部材を共通の符号で参照し、説明は省略するものとする。
【0049】
図8は、本実施形態における把持部130の側面図である。図9は、把持部130における基部131の正面図である。尚、図8では、基部131のみ断面(図9におけるB-B断面)を示している。
【0050】
本実施形態では、摘取装置100は、摘み取りを行った果菜に対して品質計測を行う機能を有する。具体的には、第1実施形態で説明した栽培システム10において、摘取装置100が摘み取った果菜をプランタPから集荷トレイTに搬送する間に、把持している果菜に対して品質計測を行うことができる。
【0051】
このため、把持部130は、図8および図9に示すように、基部131において受光部134を備えている。受光部134は、基部131の正面視においてほぼ中央に配置され、かつ、変形部132のカップ底部にて露出している。また、受光部134は、光ファイバー151を介して分光器152に接続されている(図10参照)。尚、この場合の分光器は、摘取装置100に対して外部接続されるものであってよい。
【0052】
また、栽培システム10においては、果菜の品質計測を行う際に、果菜に向けて計測用の光を照射する投光部135(例えばハロゲンランプ)が備えられる。投光部135は、摘取装置100が摘み取った果菜をプランタPから集荷トレイTに搬送する間の所定期間において、変形部132の開口に対向し、受光部134側に向かって光を照射することができる。すなわち、投光部135は、果菜の品質計測時に変形部132内に把持された果菜に対して光を照射する。
【0053】
尚、上記例では、受光部134を変形部132の内部に配置し、投光部135を変形部132の外部に配置する構成を例示しているが、この配置は逆であってもよい。また、変形部132の外部に配置される投光部135(もしくは受光部134)は、摘取装置100自体に備えられるものであってもよく、摘取装置100とは別に備えられるものであってもよい。
【0054】
果菜の品質計測時には、投光部135から変形部132内に把持された果菜に対して光が照射される。照射光の一部は果菜を内部透過して受光部134によって受光される。受光部134による受光データは光ファイバー151を介して分光器152に伝達され、分光器152がこの受光データを解析することによって果菜の品質情報が得られる。尚、ここでの品質情報とは、等級および階級の少なくとも一方を含む情報とする。
【0055】
続いて、栽培システム10における果菜の品質計測方法の具体例として、以下の2つの方法を説明する。尚、以下の説明では、受光部134を変形部132の内部に配置し、投光部135を変形部132の外部に配置する構成を例示する。
【0056】
(第1の品質計測方法)
図10は、第1の品質計測方法における摘取装置100および投光部135の配置例を示す概略図である。図11は、第1の品質計測方法による計測手順を説明する平面図である。図10に示すように、第1の品質計測方法では、投光部135は、栽培システム10において摘取装置100とは別に備えられるものであって、摘取装置100の近傍に固定的に配置される。
【0057】
摘取装置100による果菜の摘取動作では、上述したように、変形部132に果菜を把持した摘取装置100において、アーム120の移動制御によって把持部130がプランタP側から集荷トレイT側へ移動させられる(図11(a)から図11(c)への移動)。
【0058】
本計測方法では、アーム120の上記移動経路の途中において、変形部132の開口を投光部135に対向させる位置で一旦停止させる(図11(b)の状態)。このとき、投光部135においてランプ発光させることで、果菜の品質計測が行われる。
【0059】
第1の品質計測方法では、投光部135が摘取装置100とは別に固定的に配置されることにより、摘取装置100を含む栽培システム10の構成を簡素化することができる。
【0060】
(第2の品質計測方法)
図12は、第2の品質計測方法に使用する摘取装置100の概要を示す模式図である。第2の品質計測方法では、投光部135は摘取装置100自体に備えられる。図12の摘取装置100では、アーム120の先端に補助アーム122が設けられており、投光部135は補助アーム122の先端に配置されている。補助アーム122は、アーム120とは独立して移動制御できるものとなっている。
【0061】
投光部135は、補助アーム122の移動制御によって、変形部132の開口前から退避した退避位置(図12(a)参照)と、変形部132の開口に対向する対向位置(図12(b)参照)との間で移動可能となる。
【0062】
本計測方法では、プランタPに対して果菜の摘み取りを行う際(図7(a)→(b)の過程)、および摘み取った果菜を集荷トレイTに箱詰めする際(図7(c)→(d)の過程)において、投光部135は退避位置に移動している。そして、アーム120がプランタP側から集荷トレイT側へ移動する移動経路(図7(b)→(c)の過程)の途中において、投光部135が対向位置に移動させられ、果菜の品質計測が行われる。
【0063】
第2の品質計測方法では、果菜の品質計測時にアーム120の移動を止める必要が無く、果菜の品質計測を果菜の搬送と同時に効率的に実施できる。
【0064】
今回開示した実施形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本開示の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて定められる。
【符号の説明】
【0065】
10 栽培システム
20 移動ベンチ
30A,30B 搬送コンベヤ装置
40A,40B 案内装置
50A,50B 押し出し装置
100 摘取装置
110 土台
120 アーム
122 補助アーム
130 把持部
131 基部
132 変形部
133 溝(負圧導入部)
134 受光部
135 投光部
140 エア配管(負圧導入部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12