(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010871
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】台車
(51)【国際特許分類】
B62B 5/00 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
B62B5/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112426
(22)【出願日】2022-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】591006944
【氏名又は名称】三甲株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】中井 英嗣
【テーマコード(参考)】
3D050
【Fターム(参考)】
3D050AA01
3D050BB02
3D050CC01
3D050DD03
3D050EE08
3D050EE15
3D050KK02
(57)【要約】
【課題】物品の滑り止め機能を持ちつつ、載置面に表示した情報が消失しにくい台車を提供すること。
【解決手段】本開示技術に係る台車1は、上面と下面とを有し上面に物品を載置する台盤2と、台盤2の下面に設けられた車輪3とを有しており、上面に、基準領域8と、複数箇所に局所的に設けられ基準領域8よりも上方に向けて突出している滑り止め部材4と、基準領域8よりも下方に凹んでいる情報表示領域5とが設けられており、滑り止め部材4が、滑り止め部材4同士を結んで引いた少なくとも1つの仮想線が情報表示領域5を通るように配置されているものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面と下面とを有し前記上面に物品を載置する台盤と、前記台盤の前記下面に設けられた車輪とを有する台車であって、
前記上面に、
基準領域と、
複数箇所に局所的に設けられ前記基準領域よりも上方に向けて突出している滑り止め部材と、
前記基準領域よりも下方に凹んでいる情報表示領域とが設けられており、
前記滑り止め部材が、前記滑り止め部材同士を結んで引いた少なくとも1つの仮想線が前記情報表示領域を通るように配置されている台車。
【請求項2】
請求項1に記載の台車であって、前記滑り止め部材が、
前記滑り止め部材同士を結んで引いた仮想線のうち最短距離のものの少なくとも1つが前記情報表示領域を通るように配置されている台車。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の台車であって、前記滑り止め部材が、
前記滑り止め部材同士を結んで引いた複数の仮想線の組み合わせにより構成される環状折れ線が前記情報表示領域を囲むように配置されている台車。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の台車であって、
前記台盤が、平面視にて、一対の長尺辺と一対の短尺辺とを有する形状であり、
前記情報表示領域は、前記長尺辺と平行な方向の寸法が前記短尺辺と平行な方向の寸法より長い形状であり、
前記一対の短尺辺の一方に連結部が設けられ他方に被連結部が設けられるとともに、前記連結部および前記被連結部により複数の台車同士で連結できるように構成されており、 前記情報表示領域は、複数の台車同士を前記連結部および前記被連結部により連結した状態では前記情報表示領域同士が列状に並ぶように配置されている台車。
【請求項5】
請求項4に記載の台車であって、
前記台盤における前記連結部と前記情報表示領域との間に設けられた第1手掛け部と、 前記台盤における前記被連結部と前記情報表示領域との間に設けられた第2手掛け部とを有し、
前記情報表示領域、前記第1手掛け部、前記第2手掛け部、前記連結部、および前記被連結部のいずれもが、前記台盤を、前記長尺辺と平行な方向の2本の仮想線により第1長尺側部と長尺中央部と第2長尺側部とに区分したときの前記長尺中央部内に少なくとも一部が含まれるように配置されている台車。
【請求項6】
請求項2に記載の台車であって、
前記台盤における前記滑り止め部材の1つと縁辺との間に設けられた手掛け部を有し、 前記手掛け部は、前記滑り止め部材同士を結んで引いた最短距離の仮想線であって前記情報表示領域を通るものを延長した線上に重なるように配置されており、
前記情報表示領域および前記手掛け部が、前記台盤を、前記最短距離の仮想線と平行な2本の仮想線により第1側部と中央部と第2側部とに区分したときの前記中央部内に少なくとも一部が含まれるように配置されている台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示技術は、台車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の台車の一例として、特許文献1に記載されているハンドカートを挙げることができる。同文献のハンドカートでは、載置部にマットが貼られている。このマットは、物品の滑り止めのためのものである。マットとしては、文字あるいは図形が表示されたものを用いることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した従来の技術では、マットに表示された文字あるいは図形が、ハンドカートの使用とともに消失する場合があった。物品の積み降ろしを反復することにより不可避的にマットが摩滅していくからである。同文献ではマットの主体における当該表示の部分の全厚を着色しておくことで表示の消失を防止できるとしている。しかしそれではマットの製造が煩雑である。また、ハンドカートのユーザーが自らマットに書き込んだ表示については消失を防止できない。
【0005】
本開示技術は、前記した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは、物品の滑り止め機能を持ちつつ、載置面に表示した情報が消失しにくい台車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示技術の一態様における台車は、上面と下面とを有し上面に物品を載置する台盤と、台盤の下面に設けられた車輪とを有する台車であって、上面に、基準領域と、複数箇所に局所的に設けられ基準領域よりも上方に向けて突出している滑り止め部材と、基準領域よりも下方に凹んでいる情報表示領域とが設けられており、滑り止め部材が、滑り止め部材同士を結んで引いた少なくとも1つの仮想線が情報表示領域を通るように配置されているものである。
【0007】
上記態様における台車では、台盤の上面上に置かれた物品は、主として基準領域および滑り止め部材の上に載る。滑り止め部材の摩擦により物品の横滑りが抑制されるとともに、基準領域と情報表示領域との段差により、物品との摩擦による情報表示領域の摩耗が抑制される。このため、情報表示領域に表示した情報が消失しにくい。滑り止め部材同士を結んで仮想線を引くと情報表示領域を通るような配置になっているので、多くの場合に滑り止め効果および摩耗抑制効果が得られる。
【0008】
上記態様における台車ではさらに、滑り止め部材が、滑り止め部材同士を結んで引いた仮想線のうち最短距離のものの少なくとも1つが情報表示領域を通るように配置されているとよりよい。このようになっていると、比較的小寸の物品であっても滑り止め効果および摩耗抑制効果が得られるように台盤上に置くことができる。
【0009】
上記のいずれかの態様における台車ではまた、滑り止め部材が、滑り止め部材同士を結んで引いた複数の仮想線の組み合わせにより構成される環状折れ線が情報表示領域を囲むように配置されているとよりよい。このようになっていると、比較的大きめの物品であっても滑り止め効果および摩耗抑制効果が得られるように台盤上に置くことができる。この場合に滑り止め部材同士を結んで引いた仮想線上に別の滑り止め部材が存在する配置であってもよい。このようになっていると、多様なサイズの物品に対応できる。
【0010】
上記のいずれかの態様における台車ではあるいは、台盤が、平面視にて、一対の長尺辺と一対の短尺辺とを有する形状であり、情報表示領域は、長尺辺と平行な方向の寸法が短尺辺と平行な方向の寸法より長い形状であり、一対の短尺辺の一方に連結部が設けられ他方に被連結部が設けられるとともに、連結部および被連結部により複数の台車同士で連結できるように構成されており、情報表示領域は、複数の台車同士を連結部および被連結部により連結した状態では情報表示領域同士が列状に並ぶように配置されていることが好ましい。このようになっていると、複数の情報表示領域を、その連結状態での列状配置の全体として利用することができる。
【0011】
上記のいずれかの態様における台車はさらに、台盤が、平面視にて、一対の長尺辺と一対の短尺辺とを有する形状であり、台盤における連結部と情報表示領域との間に設けられた第1手掛け部と、台盤における被連結部と情報表示領域との間に設けられた第2手掛け部とを有し、情報表示領域、第1手掛け部、第2手掛け部、連結部、および被連結部のいずれもが、台盤を、長尺辺と平行な方向の2本の仮想線により第1長尺側部と長尺中央部と第2長尺側部とに区分したときの長尺中央部内に少なくとも一部が含まれるように配置されているものとすることができる。このようになっていると、第1手掛け部または第2手掛け部にユーザーが手を掛けて台車を持ち上げたときに、情報表示領域が、持ち上げたユーザーの腕にも身体にも隠れない。
【0012】
上記のいずれかの態様における台車はさらに、台盤における滑り止め部材の1つと縁辺との間に設けられた手掛け部を有し、滑り止め部材が、滑り止め部材同士を結んで引いた仮想線のうち最短距離のものの少なくとも1つが情報表示領域を通るように配置されており、手掛け部は、滑り止め部材同士を結んで引いた最短距離の仮想線であって情報表示領域を通るものを延長した線上に重なるように配置されており、情報表示領域および手掛け部が、台盤を、最短距離の仮想線と平行な2本の仮想線により第1側部と中央部と第2側部とに区分したときの中央部内に少なくとも一部が含まれるように配置されているものとすることができる。このようになっている場合でも、手掛け部にユーザーが手を掛けて台車を持ち上げたときに、情報表示領域が、持ち上げたユーザーの腕にも身体にも隠れない。
【発明の効果】
【0013】
本開示技術によれば、物品の滑り止め機能を持ちつつ、載置面に表示した情報が消失しにくい台車が提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】実施の形態に係る台車の裏面側の斜視図である。
【
図4】複数の台車を連結した状態を示す平面図である。
【
図5】複数の台車を連結した状態を示す斜視図である。
【
図7】
図6の一部を拡大して示す拡大断面図である。
【
図8】複数の台車を段積みした状態を示す斜視図である。
【
図9】台盤における滑り止め部材の配置例(その1)を説明する平面図である。
【
図10】台盤の構成と物品のサイズとの関係の例(その1)を示す平面図である。
【
図11】台盤における滑り止め部材の配置例(その2)を説明する平面図である。
【
図12】台盤における滑り止め部材の配置例(その3)を説明する平面図である。
【
図13】台盤の構成と物品のサイズとの関係の例(その2)を示す平面図である。
【
図14】台盤における滑り止め部材の配置例(その4)を説明する平面図である。
【
図15】台盤における手掛け部の配置と他の構成との関係(その1)を説明する平面図である。
【
図16】台盤における手掛け部の配置と他の構成との関係(その2)を説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示技術を具体化した実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は、
図1~
図3に示す台車1に本開示技術を適用したものである。本形態の台車1は、上方から見て略長方形状に見える台盤2に、車輪3を取り付けたものである。
図2は台車1を裏返した裏面側を示している。台盤2は、その上面に物品を載置するための板状の部材である。車輪3は、台盤2の下面の四隅に設けられている。
【0016】
台盤2の上面には
図1に示されるように、滑り止め部材4(6箇所)と、情報表示領域5(1箇所)と、手掛け部6(4箇所)と、車輪収納部7(4箇所)とが設けられている。滑り止め部材4は、台盤2に載置される物品の滑り移動を防止する摩擦材である。情報表示領域5は、ユーザーが視覚により認識できる情報を表示するための領域である。手掛け部6は、ユーザーが空荷の台車1を手で持ち上げるための形状の部位である。車輪収納部7は、後述する段積み状態で車輪3を収納するための形状の部位である。台盤2の上面のうち滑り止め部材4、情報表示領域5、手掛け部6、車輪収納部7のいずれでもない部分を基準領域8という。
【0017】
台盤2は、
図3の平面視にて、一対の長尺辺9と一対の短尺辺10とを有する形状のものである。台盤2における一対の短尺辺10の一方には、連結部11が設けられている。一対の短尺辺10のもう一方には、被連結部12が設けられている。連結部11および被連結部12は、複数の台車1を
図4、
図5のように連結するための構造である。連結部11には連接棒13が設けられており(
図1、
図2)、被連結部12には止め穴14が形成されている。連接棒13は、台盤2に対する取付角度が可変であり、先端の差し込み部15を他の台車1の止め穴14に差し込むことで2台の台車1が連結される。
図3に示されるものでは連接棒13が取り外されている。連結部11および被連結部12による台車1同士の連結では、台車1間の角度にある程度の自由度がある。
図5は、連結を維持したまま台車1間にある程度の角度がついている状態を示している。
【0018】
台盤2の断面構造を
図6に示す。この断面図は
図3中のA-A位置のものである。台盤2の上面、下面とは、
図6中の矢印B、Cのレベルのことである。上面Bがむろん載置面である。
図2に示されるように台盤2の裏面側には多数のリブが設けられており、ある程度の面積にわたる板状の部位はさほど多くない。しかしながら裏面のリブの頂部レベル(矢印Cのレベル)に張られた仮想的な面を想定することはでき、それを本開示技術では下面と呼んでいる。
図6では車輪3は省略している。
【0019】
図6における台盤2の上面Bのレベルには、前述した、台盤2の上面Bに設けられている構成のうちの滑り止め部材4、情報表示領域5、手掛け部6、基準領域8が現れている。
図6の左半分を拡大して
図7に示す。
【0020】
滑り止め部材4について述べる。台盤2の上面Bには
図7に示されるように、凹部16が形成されている。滑り止め部材4は、凹部16に装着されている柔軟部材である。滑り止め部材4は、基準領域8よりも上方に突出して設けられている。ただしその突出量はごく僅かで、高々数mm程度である。このことは、台盤2の上面Bに設けられているいずれの滑り止め部材4についても同様である。
【0021】
情報表示領域5について述べる。情報表示領域5は、台盤2の上面Bの一部であって、基準領域8よりも下方に凹んでいる領域である。ただしその凹み量はごく僅かで、高々数mm程度である。情報表示領域5には、ユーザーが文字や図形等を何らかの筆記具を使って書き込むことができる。情報表示領域5に書き込まれた表示は、ユーザーが視覚により認識できる情報である。あるいは情報表示領域5に、文字や図形等の印刷を施しておくこと、またはユーザーが文字や図形等が表示されたシート部材を貼ることによって情報を表示することもできる。あるいは、情報表示領域5に初めから何らかの着色パターンが施されて情報を表示していてもよい。
【0022】
手掛け部6について述べる。本形態における手掛け部6は、台盤2の上面Bから下面Cにわたる貫通孔である。本形態の台盤2では、手掛け部6の貫通孔に対して側方から突出する指掛け凸部17が設けられている。指掛け凸部17は、上面B側に、台盤2の長尺辺9側から突出して設けられている。指掛け凸部17の下方は指入れ空間18である。本形態の台車1では、手掛け部6のこの形状により、ユーザーが片手で容易に台車1を持ち上げることができる。ユーザーは、手掛け部6に指先を差し込むことで、指掛け凸部17を把持して台車1を持ち上げることができる。そのときユーザーの指先は指入れ空間18に進入している。このことは、
図3中の短尺辺10寄りに位置する手掛け部6でも同様である。その場合の指掛け凸部17は、台盤2の短尺辺10側から突出して設けられている。
【0023】
図1等に示した車輪収納部7は、台盤2の上面Bから凹んだ形状の部位である。ただしその凹み量は、情報表示領域5の凹み量よりかなり大きい。車輪収納部7のサイズは、車輪3を収納するのに十分なサイズである。車輪収納部7の位置は、裏面側の車輪3の位置と重なる位置である。
図8に示す複数の台車1の段積み状態では、上段の台車1の車輪3の下端付近が下段の台車1の車輪収納部7に収納されている。
【0024】
上記のように構成されている本形態の台車1は、台盤2の上面Bの上に物品を載せ、その状態で移動させることを目的とするものである。移動は基本的に人力による。本形態の台車1では、台盤2の上面B上の滑り止め部材4、情報表示領域5により次のような利点がある。
【0025】
第1に滑り止め部材4による滑り止め効果がある。載せた物品の下に滑り止め部材4がある場合、物品の下の滑り止め部材4は、物品の重量により上下方向にやや圧縮された状態となる。このため滑り止め部材4と当該物品の下面とは密着する。この状態では滑り止め部材4と当該物品との間の摩擦係数が大きく、当該物品は上面B上で横滑りしにくい。
【0026】
第2に情報表示領域5の保護効果がある。情報表示領域5に表示された情報が消えにくい、ということである。情報表示領域5と載せた物品との摩擦が少ないからである。上面Bに載せた物品は、主として、滑り止め部材4の上、または、基準領域8および滑り止め部材4の上に載ることになる。このため、当該物品と、基準領域8より凹んでいる情報表示領域5とはあまり接触しないのである。このことにより、情報表示領域5の摩滅が少ないのである。滑り止め部材4の滑り止め作用により当該物品の上面B上での摺動が少ないことも、情報表示領域5の保護に貢献している。
【0027】
上記の滑り止め効果および情報表示領域5の保護効果については、載せる物品のサイズにより、発揮される程度に違いがあることは否めない。しかしながら、台車1の主たる用途が事業目的である場合には、載せる物品のサイズはほぼ一定であることが多い。載せる物品のサイズが決まっている場合には、台車1の設計上、そのサイズに合わせて上面B内の各構成の配置を決めることができる。これにより、当該サイズの物品に対して滑り止め効果および保護効果が高確率で発揮されるような台車1を製造することができる。以下、上面B内における各構成の配置の考え方を説明する。
【0028】
最初に、最も基本的な配置について
図9により説明する。
図9の例では、滑り止め部材4、情報表示領域5、手掛け部6の配置そのものは
図3に示したものと同じである。ただし
図9では、各滑り止め部材4に個別の符号を付して区別している。
図9にはさらに、滑り止め部材42と滑り止め部材45とを結んで引いた線分である仮想線L1を示している。滑り止め部材42および滑り止め部材45は、
図9中の6箇所の滑り止め部材のうち長尺辺9と平行な方向における中央に位置する2つである。情報表示領域5に対して、滑り止め部材42が図中上方に位置し滑り止め部材45が図中下方に位置している。
【0029】
図9の例では、仮想線L1が情報表示領域5を通っている。
図9の例では滑り止め部材が6箇所にあるので、滑り止め部材同士を結ぶ仮想線としては、仮想線L1以外のものを考えることもでる。それらの仮想線には、情報表示領域5を通るものも通らないものもある。
図9の例は、滑り止め部材が、滑り止め部材同士を結んで引いた少なくとも1つの仮想線が情報表示領域5を通るように配置されている、ということを示している。
【0030】
滑り止め部材のこの配置により台車1では、載せる物品との関係で次のことがいえる。第1に、情報表示領域5の短尺方向サイズ(
図9中上下方向)より大きいサイズの物品を載せる場合、その物品は
図9中上下両側の基準領域8に跨がって載ることになる。その物品の一部は情報表示領域5の上方に存在しているが、情報表示領域5に接触はしない。情報表示領域5が基準領域8より凹んでいるからである。このため、当該物品による情報表示領域5の摩耗が抑制される。また、当該物品が滑り止め部材42および滑り止め部材45の両方を踏むように載せれば、滑り止め部材による摺動防止効果も得られる。
図10中の範囲P1は、上記の物品が台盤2上で占める範囲の例である。
【0031】
図9中の仮想線L1は、同図中の滑り止め部材同士で引くことができる仮想線のうち最短距離のものの1つである。
図11の配置例における仮想線L2も同様である。
図11の例は、
図9の例に対して、滑り止め部材の個数を3つに減らしたものである。
図11中の仮想線L2は、一方の長尺辺9側の中央の滑り止め部材42と、他方の長尺辺9側の端の滑り止め部材46とを結んで引いた線分である。これらは、滑り止め部材の配置であって、滑り止め部材同士を結んで引いた仮想線のうち最短距離のものの少なくとも1つが情報表示領域5を通るような配置の例である。
【0032】
これらの配置例では、物品が仮想線L1または仮想線L2を覆うような位置に置くと、当該物品により情報表示領域5の一部が覆われることとなる。その状態でも、基準領域8と情報表示領域5との段差により、情報表示領域5が保護される。当該物品が滑り止め部材を踏んでいれば、滑り止め部材による摺動防止効果も得られる。
【0033】
図12の配置例では、情報表示領域5が情報表示領域51と情報表示領域52との2つに分割されている。滑り止め部材については
図9の例と同じく6箇所に設けられている。この例では、2つの滑り止め部材を結ぶ仮想線を順に繋いでいくことで、情報表示領域51および情報表示領域52を囲む環状折れ線L3を構成することができる。この配置例は、滑り止め部材の配置であって、滑り止め部材同士を結んで引いた複数の仮想線の組み合わせにより構成される環状折れ線L3が情報表示領域51、52を囲むような配置の例である。
【0034】
図12の例では、環状折れ線L3の全体を覆うような大きめの物品を載置すると、情報表示領域51および情報表示領域52の全体が当該物品に覆われることとなる。
図13の範囲P2は、そのような大きめの物品が台盤2上で占める範囲の例である。したがって、大きめの物品を載せる場合でも、情報表示領域の保護、物品の摺動防止の効果が得られる。この例ではまた、環状折れ線L3の一部と仮想線L1とを、情報表示領域51または情報表示領域52の一方のみを囲む環状折れ線と見なすことができる。したがって、情報表示領域51または情報表示領域52の一方のみを覆いもう一方を覆わない程度の大きさの物品を載せる場合でも同様の効果が得られる。
図13の範囲P3は、そのようなサイズの物品が台盤2上で占める範囲の例である。
【0035】
このように大きめの物品とそれほど大きくない物品との両方に対応できるという特徴には、
図12中の滑り止め部材42、45が寄与している。滑り止め部材42は、滑り止め部材41と滑り止め部材43とを結ぶ仮想線を引いた場合にその仮想線上に存在する別の滑り止め部材である。同様に滑り止め部材45は、滑り止め部材44と滑り止め部材46とを結ぶ仮想線上に存在している。滑り止め部材42、45の存在により、仮想線の引き方、環状折れ線の構成の仕方の自由度が大きいからである。
【0036】
図12の配置例は、前述の、滑り止め部材同士を結んで引いた少なくとも1つの仮想線が情報表示領域を通る、という条件も満たしている。
図11に示した仮想線L2を
図12中に書き込めば、その仮想線L2は情報表示領域52を通るからである。また、情報表示領域51と情報表示領域52とそれらに挟まれた領域との全体を1つの情報表示領域5と見なせば、仮想線L1が情報表示領域5を通るからである。
【0037】
図14の配置例は、情報表示領域51と情報表示領域52とを非等分分割とし、滑り止め部材の数をさらに増やした配置例である。この配置例では、滑り止め部材40~49を適宜選択することで、情報表示領域51と情報表示領域52とのいずれに対しても、前述の各条件を満たすような仮想線、環状折れ線を引くことが可能である。したがって
図14の例でも、多様なサイズの物品に対して情報表示領域の保護、物品の摺動防止の効果が得られる。
【0038】
台盤2では、手掛け部6の配置により、台車1を空荷の状態でユーザーが片手で持ち上げたときにおける情報表示領域5の第三者からの視認性が優れている。このことについて、
図15、
図16により説明する。
図15、
図16では、滑り止め部材4、情報表示領域5、手掛け部6の配置そのものは
図9あるいは
図12に示したものと同じである。ただし
図15、
図16では、各手掛け部6に個別の符号を付して区別している。滑り止め部材4については一部を除いて、
図3と同様に個々の区別はしていない。
【0039】
図15には、
図9に示した各構成に加えて、仮想線L4、L5を示している。仮想線L4、L5は、長尺辺9と平行な方向に引いた線であり、台盤2を長尺中央部M0、第1長尺側部M1、第2長尺側部M2の3つの部位に区分する線である。長尺中央部M0は、仮想線L4と仮想線L5との間の領域であり、台盤2を短尺辺10の方向に3分したときの中央の部位である。第1長尺側部M1および第2長尺側部M2は、仮想線L4、L5の外側の領域であり、長尺辺9に沿った領域である。
【0040】
図15のように台盤2を仮想線L4、L5で区分すると、情報表示領域5、第1手掛け部61、第2手掛け部62、連結部11、被連結部12のいずれもが、長尺中央部M0に少なくとも一部が含まれる。第1手掛け部61とは、4つの手掛け部6のうち、連結部11と情報表示領域5との間に位置するものである。第2手掛け部62とは、4つの手掛け部6のうち、被連結部12と情報表示領域5との間に位置するものである。
【0041】
仮想線L4、L5との関係でのこの配置は、空荷の台車1を第1手掛け部61または第2手掛け部62により手持ちで持ち上げる場合に利点を有する配置である。ユーザーが上面B側から第1手掛け部61に手を掛けて台車1を持ち上げると、持ち上げられた台車1は、連結部11のある短尺辺10が上辺となるように立てられた姿勢となる。このため、情報表示領域5、第2手掛け部62、被連結部12がいずれも、第1手掛け部61の下方に位置する。また、持ち上げられた台車1の裏面(下面C)側にユーザーの身体が位置する。したがって情報表示領域5は、持ち上げたユーザーの腕にも身体にも隠されず、第三者からの視認性がよい状態にある。ユーザーが第2手掛け部62に手を掛けて台車1を持ち上げた場合にも、上下は逆になるがやはり情報表示領域5の第三者からの視認性がよい状態にある。
【0042】
ここで仮想線L4、L5を引く位置については、次の条件さえ満たせばよい。
1.台盤2の短尺辺10の方向の中央が長尺中央部M0に含まれること。
2.台盤2の短尺辺10の方向の両端に第1長尺側部M1、第2長尺側部M2が必ず存在すること。
より具体的には、
図15中で情報表示領域5、第1手掛け部61、第2手掛け部62における上下方向の中央が長尺中央部M0に包まれていればよい。滑り止め部材4が長尺中央部M0に包まれるか、それとも第1長尺側部M1または第2長尺側部M2に包まれるかはどちらでもよい。手掛け部63、64は第1長尺側部M1または第2長尺側部M2に包まれた方がよい。
【0043】
図16には、
図9に示した各構成に加えて、仮想線L1、L6、L7を示している。仮想線L1は
図16中では、
図9よりも上下に延長して示している。仮想線L6、L7は、短尺辺10と平行な方向に引いた線であり、台盤2を中央部N0、第1側部N1、第2側部N2の3つの部位に区分する線である。中央部N0は、仮想線L6と仮想線L7との間の領域であり、台盤2を長尺辺9の方向に3分したときの中央の部位である。第1側部N1および第2側部N2は、仮想線L6、L7の外側の領域であり、短尺辺10に沿った領域である。
【0044】
図16のように台盤2を仮想線L6、L7で区分すると、情報表示領域5、第3手掛け部63、第4手掛け部64のいずれもが、中央部N0に少なくとも一部が含まれる。第3手掛け部63、第4手掛け部64とは、4つの手掛け部6のうち、長尺辺9と情報表示領域5との間に位置するものである。
図16では第3手掛け部63、第4手掛け部64は、仮想線L1を上または下に延長した線上に重なるように配置されている。つまり第3手掛け部63、第4手掛け部64は、滑り止め部材4同士を結んで引いた最短距離の仮想線L1のうち情報表示領域5を通るものを延長した線上に重なるように配置されている。
【0045】
仮想線L6、L7との関係でのこの配置は、空荷の台車1を第3手掛け部63または第4手掛け部64により手持ちで持ち上げる場合に利点を有する配置である。ユーザーが上面B側から第3手掛け部63または第4手掛け部64に手を掛けて台車1を持ち上げると、持ち上げられた台車1は、一方の長尺辺9が上辺となるように立てられた姿勢となる。このため情報表示領域5が、第3手掛け部63、第4手掛け部64のうち手を掛けた方の下方に位置する。また前述のように、持ち上げられた台車1の裏面(下面C)がユーザーの身体の方を向く。したがって情報表示領域5は、持ち上げたユーザーの腕にも身体にも隠されず、第三者からの視認性がよい状態にある。
【0046】
ここで仮想線L6、L7を引く位置については、次の条件さえ満たせばよい。
1.台盤2の長尺辺9の方向の中央が中央部N0に含まれること。
2.台盤2の長尺辺9の方向の両端に第1側部N1、第2側部N2が必ず存在すること。 より具体的には、
図16中で情報表示領域5、第3手掛け部63、第4手掛け部64における左右方向の中央が中央部N0に包まれていればよい。滑り止め部材4については、中央部N0に包まれるもの、第1側部N1に包まれるもの、第2側部N2に包まれるもの、のいずれもあってよい。手掛け部61、62は第1側部N1または第2側部N2に包まれた方がよい。
【0047】
情報表示領域5の形状について述べる。
図3等に示した情報表示領域5は、長尺辺9と平行な方向の寸法が短尺辺10と平行な方向の寸法より長い形状に形成されている。このため
図3中では横長状となっている。この形状は、文字列等を表示するのに適した形状である。
図4の連結状態にして見ると、連結されている各台車1の情報表示領域5同士が列状に並んでいる。これにより各情報表示領域5をあわせた全体としてはかなり長い表示領域になっている。
図5のように台車1間にある程度の角度がついている状態であっても、各情報表示領域5が列状に並んだ状態を認識できる。各情報表示領域5に個々の台車1を識別する情報を表示することもできるし、各情報表示領域5に別々の情報を表示して列全体で1つの意味をなすようにすることもできる。
【0048】
図12~
図14のように情報表示領域5が分割されている場合でも、情報表示領域51と情報表示領域52とを合わせた全体として見れば、長尺辺9と平行な方向の寸法が短尺辺10と平行な方向の寸法より長い形状、と見ることができる。そのような形状の情報表示領域5であっても、連結状態で列状に並んだ状態を認識できる。情報表示領域5が分割されている台車1と情報表示領域5が分割されていない台車1とを混合して連結状態にすることもできる。その場合でも連結状態で情報表示領域5が列状に並んだ状態を認識できる。
【0049】
上記の説明における仮想線、環状折れ線は、台盤2の各構成の配置関係を説明するために仮想的に引いたものである。実際の台車1に仮想線や環状折れ線が表示されていることが必要なわけではない。台盤2の素材は、主として樹脂であるが、樹脂に限られる訳ではなく、金属製あるいは木製等であってもよい。樹脂の場合には滑り止め部材の樹脂よりも硬質なものが望ましい。滑り止め部材の樹脂としては、弾性に富み耐摩耗性に優れた、軟質合成樹脂、熱可塑性エラストマー、硫化ゴム等が推奨される。
【0050】
以上詳細に説明したように本実施の形態によれば、台車1の台盤2に、基準領域8より凹んだ情報表示領域5および基準領域8より突出した滑り止め部材4を設けている。そしてこれらの配置について前述のような種々の特徴を持たせている。これにより、載置している物品の滑り止め機能を持ちつつ、情報表示領域5に表示した情報が消失しにくい台車1が実現されている。
【0051】
本実施の形態は単なる例示にすぎず、本開示技術を何ら限定するものではない。したがって本開示技術は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能である。例えば、情報表示領域5、滑り止め部材4の数や配置パターンは図示した例に限らず他のパターンでもよい。連結部11および被連結部12の構成は、連接棒13を用いる構成に限らず、他の構成でもよい。
【0052】
手掛け部6は必須の構成ではない。手掛け部6を設ける場合でも、必ずしも4箇所でなくてもよい。手掛け部6の形状としても、貫通孔でなければならないわけではない。上面B側は開口しているが下面C側は閉鎖されている有底穴であってもよい。ただし有底穴の場合でも水抜き孔はあった方がよい。指掛け凸部17およびその下の指入れ空間18の形状も必須ではない。車輪収納部7の凹部形状も必須ではない。車輪3も可倒式あるいは脱着式であってもよい。図示した以外の構成として手押しバーを有するものであってもよい。手押しバーは可倒式とすることもできるが、倒した状態では上面Bより下に収納されることが望ましい。情報表示領域5の平面視形状として略矩形状のものを図示したが、この形状には限定されない。例えば、正方形、他の多角形、円形、楕円形など、でもよい。これらの配列でもよい。多角形については角部が丸められていてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 台車 12 被連結部
2 台盤 L1 仮想線
3 車輪 L2 仮想線
4 滑り止め部材 L3 環状折れ線
5 情報表示領域 M0 長尺中央部
6 手掛け部 M1 第1長尺側部
8 基準領域 M2 第2長尺側部
9 長尺辺 N0 中央部
10 短尺辺 N1 第1側部
11 連結部 N2 第2側部