(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108713
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】送水システムおよび送水方法
(51)【国際特許分類】
A62C 27/00 20060101AFI20240805BHJP
【FI】
A62C27/00 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013230
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000117135
【氏名又は名称】芦森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】広川 登朗
(72)【発明者】
【氏名】片倉 雄一郎
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189AC00
2E189AC06
2E189AC07
2E189AD03
2E189AE07
(57)【要約】
【課題】早期に取水を開始することが可能な送水システムおよび送水方法を提供する。
【解決手段】水源から取水可能な第1ポンプ2と、第1ポンプ2が取水した水が通過する第1ホース3と、第1ホース3を通過した水を複数の分岐ホース5に分岐させる分岐手段4と、複数の分岐ホース5の各々に接続される延長部9と、を有する。延長部9は、分岐ホース5を通過した水を圧送する第2ポンプ6と、第2ポンプ6から圧送された水が通過する第2ホース7と、を有する。第1ポンプ2は、走行手段を備えて電気で駆動され、延長部9は、複数の分岐ホース5の各々に直列に1つ以上接続されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水源から取水可能な第1ポンプと、
前記第1ポンプが取水した水が通過する第1ホースと、
前記第1ホースを通過した前記水を複数の分岐ホースに分岐させる分岐手段と、
複数の前記分岐ホースの各々に接続される延長部と、
を有し、
前記延長部は、
前記分岐ホースを通過した前記水を圧送する第2ポンプと、
前記第2ポンプから圧送された前記水が通過する第2ホースと、
を有し、
前記第1ポンプは、走行手段を備えて電気で駆動され、
前記延長部は、複数の前記分岐ホースの各々に直列に1つ以上接続されていることを特徴とする送水システム。
【請求項2】
前記第1ポンプの送水量は、毎分3000L以上であることを特徴とする請求項1に記載の送水システム。
【請求項3】
前記第2ポンプの送水量は、毎分800L以上であることを特徴とする請求項2に記載の送水システム。
【請求項4】
前記第2ポンプは、前記第2ポンプに前記水が到達した際に自動で始動することを特徴とする請求項1又は2に記載の送水システム。
【請求項5】
前記第2ホースは、直列に接続された複数の単位ホースを有し、
前記単位ホースは、従来型の消防用ホースよりも圧力損失が少ないことを特徴とする請求項1又は2に記載の送水システム。
【請求項6】
前記第2ホースは、直列に接続された複数の単位ホースを有し、
前記単位ホースは、従来型の消防用ホースよりも長いことを特徴とする請求項1又は2に記載の送水システム。
【請求項7】
前記分岐手段または前記分岐ホースに設けられ、送水量を調整可能な調整機構を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の送水システム。
【請求項8】
走行手段を備えて電気で駆動される第1ポンプで水源から取水する取水ステップと、
前記第1ポンプが取水して第1ホースを通過した前記水を複数の分岐ホースに分岐させる分岐ステップと、
前記分岐ホースを通過した前記水を第2ポンプで圧送して第2ホースを通過させる送水ステップと、
を有し、
前記第2ポンプおよび前記第2ホースを含む延長部を、複数の前記分岐ホースの各々に直列に1つ以上接続することを特徴とする送水方法。
【請求項9】
複数の前記分岐ホースに前記延長部を1つまたは複数ずつ接続し、前記分岐ホースに先に接続された前記延長部から順番に、前記取水ステップ、前記分岐ステップ、および、前記送水ステップを行うことを特徴とする請求項8に記載の送水方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠距離送水を行う送水システムおよび送水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、遠距離送水に使用されるターボポンプが開示されている。また、特許文献2には、遠距離送水に使用される水中ポンプが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-47523号公報
【特許文献2】特開平7-185031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のターボポンプは、消防自動車(タンク車)が循環させる水を動力として駆動するために、消防自動車の準備が整うまで、取水を開始することができない。また、特許文献2の水中ポンプは、重量が重いために、クレーンで吊り下げて水中まで搬送する必要がある。よって、特許文献1および特許文献2のいずれにおいても、早期に取水を開始することができない。
【0005】
本発明の目的は、早期に取水を開始することが可能な送水システムおよび送水方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の送水システムは、水源から取水可能な第1ポンプと、前記第1ポンプが取水した水が通過する第1ホースと、前記第1ホースを通過した前記水を複数の分岐ホースに分岐させる分岐手段と、複数の前記分岐ホースの各々に接続される延長部と、を有し、前記延長部は、前記分岐ホースを通過した前記水を圧送する第2ポンプと、前記第2ポンプから圧送された前記水が通過する第2ホースと、を有し、前記第1ポンプは、走行手段を備えて電気で駆動され、前記延長部は、複数の前記分岐ホースの各々に直列に1つ以上接続されていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の送水方法は、走行手段を備えて電気で駆動される第1ポンプで水源から取水する取水ステップと、前記第1ポンプが取水して第1ホースを通過した前記水を複数の分岐ホースに分岐させる分岐ステップと、前記分岐ホースを通過した前記水を第2ポンプで圧送して第2ホースを通過させる送水ステップと、を有し、前記第2ポンプおよび前記第2ホースを含む延長部を、複数の前記分岐ホースの各々に直列に1つ以上接続することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、第1ポンプは、走行手段を備え、電気で駆動される。よって、地上から水中まで第1ポンプを素早く移動させることができる。そして、電源をオンにすることで、消防自動車(タンク車)のような他の車両の到着を待つことなく、第1ポンプを素早く始動させることができる。これにより、早期に取水を開始することができる。そして、第1ポンプが取水した水を、1つ以上の第2ポンプで圧送していくことで、遠距離送水を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0011】
(送水システムの構成)
本発明の実施形態による送水システムは、港湾、河川、湖等の水源から取水した水を、火災現場まで遠距離送水するものである。送水システム1の構成図である
図1に示すように、送水システム1は、第1ポンプ2と、第1ホース3と、分岐手段4と、分岐ホース5と、延長部9と、を有している。
【0012】
第1ポンプ2は、水源から取水可能である。第1ポンプ2は、走行手段としての車輪を備えて電気で駆動される。
【0013】
車両10の断面図である
図2に示すように、例えば第1ポンプ2は、車両10の車載スペース11に積み降ろし可能に積載されている。第1ポンプ2を車載スペース11から降ろす際には、車載スペース11の上部に収納された折り畳み式のスロープ15が使用される。
【0014】
車両10は、いわゆるバンタイプの普通車である。車両10は、車両総重量が3.5トン未満で、最大積載量が2.0トン未満である。車両総重量が3.5トン未満で、最大積載量が2.0トン未満の自動車を運転可能な免許(例えば普通免許など)を有する運転者は、公道で、この車両10を運転することが可能である。
【0015】
第1ポンプ2は、車輪付きのフレームにポンプ本体が取り付けられて構成されている。本実施形態では、第1ポンプ2の使用時に第1ポンプ2を駆動させるために必要な電力は、発電機12および発動発電機13から供給される。
【0016】
発電機12は、車両10に標準で搭載されるオルタネータの代わりに車両10に搭載されている。具体的には、発電機12は、車両10のエンジンルームに配置されている。発電機12は、車両10のエンジンの回転により駆動される。
【0017】
発電機12の発電量は、エンジンの回転数により変動する。発電機12の最大発電量は、オルタネータの最大発電量よりも大きい。発電機12の最大発電量は、例えば、8kVAである。なお、エンジンルーム内のスペースに余裕がある場合には、発電機12とオルタネータとを併用してもよい。
【0018】
発動発電機13は、車両10の車載スペース11に積み降ろし可能に積載されている。発動発電機13は、キャスター付きである。発動発電機13は、発動機付きの発電機であり、自身に積み込まれた燃料で発電する。発動発電機13の発電量は、例えば、5.5kVAである。
【0019】
発電機12が発電した電力と、発動発電機13が発電した電力とを合わせた電力が、第1ポンプ2に供給されることで、第1ポンプ2が駆動する。なお、発動発電機13の発電量によっては、車両10の発電機12を使用しなくてもよい。
【0020】
第1ポンプ2が車輪を備えているので、地上から水中まで第1ポンプ2を素早く移動させることができる。また、第1ポンプ2は電気で駆動されるので、第1ポンプ2を積載していた車両10搭載の発電機12と車両10に積載されていた発動発電機13を用いて、電源をオンにすることで、消防自動車(タンク車)のような他の車両の到着を待つことなく、第1ポンプ2を素早く始動させることができる。これにより、早期に取水を開始することができる。
【0021】
第1ポンプ2の重量は、100kg以下である。よって、人力で第1ポンプ2をハンドリングすることができる。そのため、クレーンで吊り下げる水中ポンプと比べて、早期に第1ポンプ2を水中まで移動させることができる。
【0022】
第1ポンプ2の送水量は、陸地との高度差が0mにおいて毎分4000L以上である。よって、陸地との高度差が多少あっても、毎分3000L以上の送水量で第1ポンプ2から送水することができる。
【0023】
図1に戻って、第1ポンプ2が取水した水は、第1ホース3を通過する。第1ホース3は、例えば、直径が200mmで、長さが20mである。第1ホース3の重量は、例えば26kgである。第1ホース3は、例えば、車両10の車載スペース11(
図2参照)に収納されている。
【0024】
特許文献1のターボポンプは、タンク車によってその内部を水が循環されるので、タンク車からターボポンプに供給される水が通過するホース、ターボポンプからタンク車に戻される水が通過するホース、および、ターボポンプが取水した水が通過するホースが必要である。つまり、ターボポンプでは、1台当たり3本のホースが必要である。これに対して、第1ポンプ2では、第1ホース3が1本あればよい。よって、ターボポンプに比べて、ホースを容易にハンドリングすることができる。
【0025】
分岐手段4は、第1ホース3を通過した水を複数の分岐ホース5に分岐させる。本実施形態において、分岐手段4は分岐管である。本実施形態において、分岐ホース5の数は4本である。分岐ホース5は、消防用ホースや吸管である。例えば、消防用ホースの直径は65mmであり、吸管の直径は75mmである。分岐手段4および分岐ホース5は、例えば、車両10の車載スペース11(
図2参照)に収納されている。
図2では、吸管5aを図示している。
【0026】
なお、分岐手段4は、組立水槽等の水槽であってもよい。この場合、分岐ホース5として吸管が用いられる。第1ホース3を通過した水は、一旦水槽に溜められた後に、分岐ホース5を介して第2ポンプ6(後述)で吸い上げられる。
【0027】
図1に示すように、延長部9は、複数の分岐ホース5の各々に接続される。延長部9は、第2ポンプ6と、第2ホース7と、を有している。
【0028】
第2ポンプ6は、分岐ホース5を通過した水を圧送する。第2ポンプ6は、自身に積み込まれた燃料で発電して駆動する。第2ポンプ6の最大の送水量は、毎分1000L程度である。第2ポンプ6は、毎分800Lの水を1MPaの圧力で送水可能である。
図2に示すように、車両10の車載スペース11には、キャスター付きの第2ポンプ6が1台積載されている。
【0029】
図1に戻って、第2ポンプ6から圧送された水は、第2ホース7を通過する。第2ホース7は、複数の単位ホースを有する。つまり、第2ホース7は、複数の単位ホースが直列に接続されてなる。単位ホースは、例えば、直径が65mmで、長さが20mである。
【0030】
延長部9は、複数の分岐ホース5の各々に直列に1つ以上接続されている。本実施形態では、複数の分岐ホース5の各々に対して、3つの延長部9が直列に接続されている。本実施形態において、分岐ホース5に接続された第2ポンプ6から、最も先端側の延長部9の第2ホース7の先端までの距離は、1kmである。なお、延長部9の数は2つ以下でも4つ以上でもよい。
【0031】
本実施形態では、3つの延長部9の各々の第2ホース7が有する単位ホースの数は、分岐ホース5側(図中左側)から放水側(図中右側)に順番に、例えば、22本、22本、6本である。よって、3つの延長部9の各々の第2ホース7の長さは、図中左側から図中右側に順番に、例えば、440m、440m、120mである。
【0032】
上述のように、分岐手段4は、第1ホース3を通過した水を4つの分岐ホース5に分岐させる。第1ポンプ2の送水量は、毎分3000L以上であり、第2ポンプ6の送水量は、毎分800L以上である。毎分3000L以上の水を4つに分岐させることで、毎分3000L以上の水を3つに分岐させるのに比べて、延長部9の各々において、余裕をもって送水することができる。
【0033】
そして、毎分3000L以上の送水量で第1ポンプ2から送水される水を4つに分岐し、4つの分岐の各々において、毎分800Lの送水量で、第2ポンプ3で圧送することで、毎分3000L以上の水を1km先まで好適に遠距離送水することができる。
【0034】
ここで、3つの延長部9のうち、少なくとも1つの延長部9の第2ポンプ6は、自動始動型のポンプ6aである。自動始動型のポンプ6aは、このポンプに例えば0.1MPa以上の圧力の水が到達した際に自動で始動する。具体的には、自動始動型のポンプ6aは、水検出センサを備えており、この水検出センサが、例えば0.1MPa以上の圧力の水を検出すると、自動始動型のポンプ6aは自動で始動する。そして、水検出センサが、例えば0.1MPa以上の圧力の水を検出しなくなると、自動始動型のポンプ6aは自動で停止する。本実施形態においては、3つの延長部9のうち、真ん中の延長部9の第2ポンプ6が自動始動型のポンプ6aである。なお、3つの第2ポンプ6の2つ以上が自動始動型のポンプ6aであってもよい。
【0035】
第2ポンプ6が自動始動型のポンプ6aであれば、このポンプに対して人員を配置する必要がないので、長距離送水に係る人員を削減することができる。
【0036】
本実施形態において、第2ホース7が有する単位ホースは、従来型の消防用ホースよりも圧力損失が少ない。従来型の消防用ホースは、筒状織布の内面にゴムまたは合成樹脂の内張りを施してなるものである。筒状織布の表面には織成による凹凸が形成されており、この凹凸が内張りにまで影響するので、従来型の消防用ホースの内面には凹凸が形成される。その結果、従来型の消防用ホースを流れる流体は摩擦抵抗を受け、圧力損失が生じる。これに対して、第2ホース7が有する単位ホースは、従来型の消防用ホースに比べて、内面の凹凸が滑らかにされている。そのため、単位ホースの圧力損失は、従来型の消防用ホースの圧力損失よりも抑えられている。例えば、毎分800Lの水を送水する場合に、20mの従来型の消防用ホースでは、0.08MPa~0.09MPaの圧力損失が生じるが、20mの単位ホースでは、圧力損失は0.04MPa~0.05MPaに抑えられる。
【0037】
このように、単位ホースは、従来型の消防用ホースよりも圧力損失が少ない。よって、同程度の圧力損失が生じる第2ホース7を構成する場合に、従来型の消防用ホースを用いるよりも、単位ホースを用いた方が、第2ホース7の長さを長くすることができる。その結果、同じ距離を遠距離送水する場合に、第2ポンプ6の数を減らすことができる。これにより、コストを抑えることができる。また、第2ポンプ6の数を減らすことで、第2ポンプ6の設置に必要な人数や、第2ポンプ6を監督する人数を減らすことができる。これにより、コストを一層抑えることができる。
【0038】
なお、直径が75mmで長さが20mのホースを、単位ホースとして使用してもよい。直径が75mmで長さが20mのホースは、直径が65mmで長さが20mの従来型の消防用ホースよりも圧力損失が少ないので、これを単位ホースとして、同程度の圧力損失が生じる第2ホース7を構成しても、直径が65mmの従来型の消防用ホースを用いるよりも、第2ホース7の長さを長くすることができる。その結果、同じ距離を遠距離送水する場合に、第2ポンプ6の数を減らすことができる。
【0039】
ここで、単位ホースは、従来型の消防用ホースよりも長くてもよい。省令で定められている従来型の消防用ホースの長さは、一般に10,15,20,30mであるが、単位ホースの長さを、例えば40mにしてもよい。同じ長さの第2ホースを作製する場合に、消防用ホースを用いるよりも、単位ホースを用いた方が、ホースの数を少なくすることができる。よって、ホース同士を接続する金具の数を減らすことができるので、第2ホースの全体重量を抑えることができる。
【0040】
分岐手段4には、調整機構が設けられている。調整機構は、送水量の調整を可能にするためのものである。調整機構は、例えばバルブである。例えば、必要に応じて、複数の分岐ホース5のうち、送水量を減らしても消火に問題ない分岐ホース5の送水量を減らすことで、より多くの水を消火に必要とする他の分岐ホース5に水を回すことができる。また、送水量の調節によって、分岐ホース5の射程をコントロールすることもできる。なお、調整機構は分岐ホース5に設けられていてもよい。例えば、調整機構は、分岐ホース5の先端のノズル部分に設けられていてよい。
【0041】
(送水方法)
次に、送水システム1を用いた送水方法について説明する。まず、
図2に示す車両10で第1ポンプ2を水源の近くまで搬送する。次に、第1ポンプ2を車両10から降ろし、第1ポンプ2に第1ホース3を接続する。第1ポンプ2の重量は、100kg以下であるので、人力で第1ポンプ2をハンドリングすることができる。
【0042】
次に、第1ホース3に分岐手段4を取り付け、分岐手段4に分岐ホース5を接続する。同時に、水源の近くから火災現場まで、複数の延長部9を直列に接続しながら配置する。
【0043】
次に、第1ポンプ2を水中に投入する。第1ポンプ2は車輪を備えているので、地上から水中まで第1ポンプ2を素早く移動させることができる。その後、第1ポンプ2の電源をオンにするとともに、自動始動型のポンプ6a以外の第2ポンプ6を始動させる。第1ポンプ2は電気で駆動されるので、電源をオンにすることで、消防自動車(タンク車)のような他の車両の到着を待つことなく、第1ポンプ2を素早く始動させることができる。以上により、早期に取水を開始することができる。
【0044】
第1ポンプ2は、水源から取水する(取水ステップ)。第1ポンプ2が取水して第1ホース3を通過した水は、複数の分岐ホース5に分岐される(分岐ステップ)。分岐ホース5を通過した水は、第2ポンプ6で圧送されて第2ホース7を通過する(送水ステップ)。
【0045】
毎分3000L以上の送水量で第1ポンプ2から送水される水を4つに分岐し、4つの分岐の各々において、毎分800L以上の送水量で、第2ポンプ3で圧送することにより、毎分3000L以上の水を1km先まで好適に遠距離送水することができる。
【0046】
ここで、本実施形態では、4つの分岐ホース5に延長部9を1つずつ接続していく。そして、すべての分岐ホース5において延長部9の接続が完了するのを待たずに、分岐ホース5に先に接続された延長部9から順番に、上記の取水ステップ、分岐ステップ、および、送水ステップを行う。つまり、すべての分岐ホース5において延長部9の接続が完了した後に、送水を開始するのではなく、分岐ホース5への延長部9の接続作業と並行して、分岐ホース5に先に接続された延長部9から順番に送水を開始する。これにより、すべての分岐ホース5において延長部9の接続が完了した後に送水を開始する場合に比べて、早期に送水を開始することができる。また、分岐ホース5と延長部9との接続は1つずつではなく複数ずつとし、分岐ホース5との接続が終わった複数の延長部9から送水を開始するようにしてもよい。
【0047】
(効果)
以上に述べたように、本実施形態に係る送水システム1および送水方法によれば、第1ポンプ2は、車輪(走行手段)を備え、電気で駆動される。よって、地上から水中まで第1ポンプ2を素早く移動させることができる。そして、電源をオンにすることで、消防自動車(タンク車)のような他の車両の到着を待つことなく、第1ポンプ2を素早く始動させることができる。これにより、早期に取水を開始することができる。そして、第1ポンプ2が取水した水を、1つ以上の第2ポンプ6で圧送していくことで、遠距離送水を行うことができる。
【0048】
また、第1ポンプ2の重量が100kg以下である。よって、人力で第1ポンプ2をハンドリングすることができる。そのため、クレーンで吊り下げる水中ポンプと比べて、早期に第1ポンプ2を水中まで移動させることができる。
【0049】
また、第1ポンプ2の送水量は、陸地との高度差が0mにおいて毎分4000L以上である。よって、陸地との高度差が多少あっても、毎分3000L以上の送水量で第1ポンプ2から送水することができる。
【0050】
また、第2ポンプ6の送水量は、毎分800L以上である。毎分3000L以上の送水量で第1ポンプ2から送水される水を複数に分岐し、各分岐において、毎分800L以上の送水量で、第2ポンプ6で圧送することで、毎分3000L以上の水を1km先まで好適に遠距離送水することができる。
【0051】
また、自動始動型のポンプ6aは、このポンプに水が到達した際に自動で始動する。よって、自動始動型のポンプ6aに対して人員を配置する必要がないので、長距離送水に係る人員を削減することができる。
【0052】
また、単位ホースは、従来型の消防用ホースよりも圧力損失が少ない。よって、同程度の圧力損失が生じる第2ホース7を構成する場合に、従来型の消防用ホースを用いるよりも、単位ホースを用いた方が、第2ホース7の長さを長くすることができる。その結果、同じ距離を遠距離送水する場合に、第2ポンプ6の数を減らすことができる。これにより、コストを抑えることができる。また、第2ポンプ6の数を減らすことで、第2ポンプ6の設置に必要な人数や、第2ポンプ6を監督する人数を減らすことができる。これにより、コストを一層抑えることができる。
【0053】
また、単位ホースは、従来型の消防用ホースよりも長い。よって、同じ長さの第2ホース7を構成する場合に、従来型の消防用ホースを用いるよりも、単位ホースを用いた方が、ホースの数を少なくすることができる。よって、ホース同士を接続する金具の数を減らすことができるので、第2ホース7の全体重量を抑えることができる。
【0054】
また、分岐手段4または分岐ホース5に、送水量を調整可能な調整機構が設けられている。例えば、必要に応じて、複数の分岐ホース5のうち、送水量を減らしても消火に問題ない分岐ホース5の送水量を減らすことで、より多くの水を消火に必要とする他の分岐ホース5に水を回すことができる。
【0055】
また、本実施形態に係る送水方法によれば、複数の分岐ホース5に延長部9が1つまたは複数ずつ接続され、分岐ホース5に先に接続された延長部9から順番に、取水ステップ、分岐ステップ、および、送水ステップが行われる。これにより、すべての分岐ホース5において延長部9の接続が完了した後に送水を開始する場合に比べて、早期に送水を開始することができる。
【0056】
以上、本発明の実施形態を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施の形態に記載された、作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0057】
1 送水システム
2 第1ポンプ
3 第1ホース
4 分岐手段
5 分岐ホース
5a 吸管
6 第2ポンプ
6a 自動始動型のポンプ
7 第2ホース
9 延長部
10 車両
11 車載スペース
12 発電機
13 発動発電機
15 スロープ