(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108721
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】ベビーキャリア
(51)【国際特許分類】
A47D 13/02 20060101AFI20240805BHJP
【FI】
A47D13/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013242
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東 功一
(72)【発明者】
【氏名】前田 譲治
(72)【発明者】
【氏名】市川 学
(72)【発明者】
【氏名】赤嶺 裕子
(57)【要約】
【課題】抱きかかえ状態も背負い状態もできると共に、抱きかかえ状態と背負い状態の切り替えを簡単、確実かつ迅速に行えるベビーキャリアを実現する。
【解決手段】ユーザの身体に装着することで、乳幼児2を抱きかかえた状態または背中に担いた状態で保持し運搬するためのベビーキャリア(1)は、前記乳幼児が着座する着座部(20)と、前記乳幼児の胴体を支持する背もたれ部(30)と、前記ベビーキャリアを前記ユーザの胴体に装着するための第1の支持ベルト(40)と、前記背もたれ部から延び、前記ユーザの肩部にたすき掛けされる肩掛けベルト(60)と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの身体に装着することで、乳幼児を抱きかかえた状態または背中に担いた状態で保持し運搬するためのベビーキャリアであって、
前記乳幼児が着座する着座部と、
前記乳幼児の胴体を支持する背もたれ部と、
前記ベビーキャリアを前記ユーザの胴体に装着するための第1の支持ベルトと、
前記背もたれ部から延び、前記ユーザの肩部にたすき掛けされる肩掛けベルトと、を有することを特徴とするベビーキャリア。
【請求項2】
前記背もたれ部の背面部には、前記肩掛けベルトが取り付けられる回転部が設けられ、
前記回転部は、前記回転部から延びる前記肩掛けベルトを前記回転部の回転中心の周りに回転可能であることを特徴とする請求項1に記載のベビーキャリア。
【請求項3】
前記ベビーキャリアを上下方向に昇降させる昇降部を有することを特徴とする請求項1に記載のベビーキャリア。
【請求項4】
前記昇降部は、前記昇降部から上方に伸長する上側伸長部と、前記昇降部から下方に伸長する下側伸長部とを有し、
前記着座部が前記上側伸長部に取り付けられ、
前記第1の支持ベルトが前記昇降部から延びていることを特徴とする請求項3に記載のベビーキャリア。
【請求項5】
前記回転部は、クッション部材が装着されていることを特徴とする請求項2に記載のベビーキャリア。
【請求項6】
前記クッション部材は、前記回転部に対して着脱可能であることを特徴とする請求項5に記載のベビーキャリア。
【請求項7】
前記背もたれ部における前記着座部との接続部分は、当該接続部分以外の部位より細いくびれた部分を形成していることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のベビーキャリア。
【請求項8】
前記背もたれ部には、前記着座部に着座している乳幼児の胴体を支持する第2の支持ベルトが取り付けられていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のベビーキャリア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳幼児を抱きかかえた状態または背中に担いた状態で保持し運搬するためのベビーキャリアに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、肩紐と腰紐をT字状に接続するT型バックルが腰紐に沿ってスライド可能なだっこおんぶ兼用子守帯が記載されている。特許文献2には、抱っこ紐により幼児を抱っこした状態で、荷重受け部を腰ベルトによりユーザの腰部に装着し、荷受け部にかかる乳幼児の体重を地面や床面に立てたスタンド部材により支持する荷重支持具が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案第3030488号公報
【特許文献2】実用新案第3205931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1ではおんぶ状態とだっこ状態の切り替えを行う場合に子守帯を外す必要がある。また、子守帯を外す場合には、乳幼児を寝かせた状態にしたり、他の人に乳幼児を保持してもらったりする必要があり、おんぶ状態とだっこ状態の切り替えに手間がかかる可能性がある。
【0005】
また、特許文献2では、抱っこ紐により幼児を抱っこした状態で、荷重支持具を使用しながら移動することは困難であり、家事などで使用することができない可能性がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされ、その目的は、抱きかかえ状態も背負い状態もできると共に、ベビーキャリアをユーザの身体から外したり、乳幼児をベビーキャリアから降ろしたりすることなく、抱きかかえ状態と背負い状態の切り替えを簡単、確実かつ迅速に行えるベビーキャリアを実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るベビーキャリアは、ユーザの身体に装着することで、乳幼児を抱きかかえた状態または背中に担いた状態で保持し運搬するためのベビーキャリアであって、前記乳幼児が着座する着座部と、前記乳幼児の胴体を支持する背もたれ部と、前記ベビーキャリアを前記ユーザの胴体に装着するための第1の支持ベルトと、前記背もたれ部から延び、前記ユーザの肩部にたすき掛けされる肩掛けベルトと、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、抱きかかえ状態も背負い状態もできると共に、ベビーキャリアをユーザの身体から外したり、乳幼児をベビーキャリアから降ろしたりすることなく、抱きかかえ状態と背負い状態の切り替えを簡単、確実かつ迅速に行えるベビーキャリアを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態のベビーキャリアの外観図である。
【
図2】本実施形態の乳幼児が着座した状態のベビーキャリアの外観図である。
【
図3】本実施形態のベビーキャリアの昇降機能を説明する図である。
【
図4】本実施形態のベビーキャリアの昇降機能以外の機能を説明する図である。
【
図5】本実施形態のベビーキャリアのクッション部材を着脱可能とした場合の利点を説明する図である。
【
図6】本実施形態のベビーキャリアを抱きかかえ状態で使用する方法を説明する図である。
【
図7】本実施形態のベビーキャリアを背負い状態で使用する方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち2つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
本実施形態のベビーキャリアは、ユーザが乳幼児を抱きかかえた状態(以下、抱きかかえ状態)または背中に担いた状態(以下、背負い状態)で保持し運搬するツールであり、従来の抱きかかえや背負いを行うための紐に代わるものである。本実施形態のベビーキャリアは、体重10kg以下の乳幼児(1~2歳)を対象としている。
【0012】
本実施形態のベビーキャリアは、ベビーキャリア単体で抱きかかえ状態も背負い状態もできると共に、乳幼児をベビーキャリアに確実に保持した状態でベビーキャリアをユーザの身体から外したり、乳幼児をベビーキャリアから降ろしたりすることなく、抱きかかえ状態と背負い状態の切り替えを簡単かつ迅速に行え、乳幼児を保持するユーザの負担を軽減することができる。
【0013】
以下に、本実施形態のベビーキャリアの詳しい構成および機能について説明する。
【0014】
<ベビーキャリアの構成>まず、
図1から
図5を参照して、本実施形態のベビーキャリアの構成について説明する。
【0015】
図1は、本実施形態のベビーキャリアを前方から見た外観図(a)および後方から見た外観図(b)である。
図2は、本実施形態の乳幼児が着座した状態のベビーキャリアを前方から見た外観図(a)および後方から見た外観図(b)である。
図3は、本実施形態のベビーキャリアの昇降機能を説明する図である。
図4は、本実施形態のベビーキャリアの昇降機能以外の機能を説明する図である。
図5は、本実施形態のベビーキャリアのクッション部材を着脱可能とした場合の利点を説明する図である。
【0016】
本実施形態のベビーキャリア1は、ユーザの身体に装着することで、乳幼児2を抱きかかえ状態または背負い状態で保持し運搬することが可能である。
【0017】
本実施形態のベビーキャリア1は、昇降部10、着座部20、背もたれ部30、第1の支持ベルト40、第2の支持ベルト50および肩掛けベルト60を含む。
【0018】
昇降部10は、ベビーキャリア1を上下方向に昇降させる。着座部20と背もたれ部30は所定の角度(例えば、90度)をなして一体的に構成され、着座部20が昇降部10の上面部に昇降可能に取り付けられる。着座部20と背もたれ部30は所定の角度が可変に構成されていてもよい。
【0019】
昇降部10は、円弧状の前面部11と、平面状の上面部12と、底面部13および左右の側面部14と、凸状の曲面部を形成する背面部15とを備える。前面部11は、抱きかかえ状態や背負い状態でベビーキャリア1がユーザの身体に密着するようにユーザの腰部の形状に沿うように円弧状に凹んだ形状に構成されている。
【0020】
昇降部10の前面部11と左右の側面部14の接続部分には、ユーザの胴体(腰部)に巻回されてベビーキャリア1が装着される第1の支持ベルト40が取り付けられている。第1の支持ベルト40は、昇降部10の前面部11と左右の側面部14の接続部分から前方に延びる左右のベルト部分がバックルや面ファスナなどで接続可能であり、ダイヤルやレバーなどの長さ調整機構による増し締めが可能となっている。昇降部10の上面部12には着座部20が取り付けられている。
【0021】
昇降部10は、昇降部10から上方に伸長する上側伸長部16と、昇降部10から下方に伸長する下側伸長部17とを有する。上側伸長部16は、昇降部10の上面部12を上下方向に昇降させることにより、着座部20および背もたれ部30が上下方向に昇降可能となる。下側伸長部17は、昇降部10の底面部13を上下方向に昇降させることにより、昇降部10、着座部20および背もたれ部30が上下方向に昇降可能となる。これにより、
図6および
図7で後述する抱きかかえ状態や背負い状態においてユーザが乳幼児2の高さ位置を調整するためにベビーキャリア1を持ち上げるときの負担を軽減できる。また、ユーザはベビーキャリア1の高さを最適な位置(ユーザの疲労が軽減される位置)に調整できるので、抱きかかえ状態や背負い状態でユーザが移動したり家事をしたりする場合の負担を軽減することができる。
【0022】
昇降部10の左右の側面部14の一方には、上側伸長部16を昇降させるための上側スイッチ16aと下側伸長部17を昇降させるための下側スイッチ17aが設けられている。昇降部10は、上側スイッチ16aを操作することにより、昇降部10に対する着座部20の高さを調整することが可能となっている。昇降部10は、下側スイッチ17aを操作することにより、昇降部10に対する底面部13の高さを調整することが可能となっている。
【0023】
昇降部10の上側伸長部16と下側伸長部17の駆動方法は、例えば、上側スイッチ16aおよび/または下側スイッチ17aのオンオフ操作に連動する電動モータの回転トルクを用いる方法、上側スイッチ16aおよび/または下側スイッチ17aを回転ダイヤル式にしてダイヤルの回転に連動して機械的に昇降させる方法、ラチェット式で手動で昇降させる方法、スプリングの伸縮により昇降させる方法などが考えられる。また、重量物を支持する機能以外に高さ調整機能だけを付加した安価な構成としてもよい。また、例えば、上側伸長部16が最大伸長量まで伸長した状態で上側スイッチ16aを操作すると、上側伸長部16が縮退方向に動作し、同様に、下側伸長部17が最大伸長量まで伸長した状態で下側スイッチ17aを操作すると、下側伸長部17が縮退方向に動作するように構成される。また、上側スイッチ16aおよび下側スイッチ17aは、ユーザが触れただけで上側スイッチ16aであるか、下側スイッチ17aであるかが識別できるように、上側スイッチ16aと下側スイッチ17aの表面形状や肌触りが異なるように構成されている。
【0024】
また、
図3(b)に示すように、日本人女性の平均身長を157cm、テーブル3の高さを700mmとした場合、抱きかかえ状態でベビーキャリア1がユーザの腰部の最適な位置にある場合に、テーブル3の上面部とベビーキャリア1の底面部の間に80mmのギャップが発生し、ベビーキャリア1をテーブル3の上面部に置くためにはユーザが中腰になる必要がある。このギャップを埋められるように下側伸長部17の最大伸長量が80mmに設定されている。
【0025】
また、
図3(c)に示すように、日本人女性の平均身長を157cmとした場合、抱きかかえ状態でのベビーキャリア1のユーザの腰部の最適な位置と、背負い状態でのベビーキャリア1のユーザの腰部の最適な位置との間に70mmのギャップが発生する。このギャップを埋められるように上側伸長部16の最大伸長量が70mmに設定されている。
【0026】
このように、上側伸長部16や下側伸長部17を伸長させてユーザの腰部の高さに合わせてベビーキャリア1の昇降部10に対する着座部20の高さを最適な位置に調整することで、抱きかかえ状態や背負い状態で使用する場合にユーザが中腰になることを防止し、また、抱きかかえ状態と背負い状態の切り替えを簡単かつ迅速に行える。
【0027】
着座部20は、乳幼児2が着座する座面シートを構成し、背もたれ部30は乳幼児2の背中を支える背面シートを構成する。背もたれ部30は、着座部20の後端部から上方に延びている。背もたれ部30には、着座部20に着座している乳幼児2の胴体を支持する第2の支持ベルト50と、ユーザの肩部にたすき掛けされてベビーキャリア1を支持する肩掛けベルト60が取り付けられている。
【0028】
背もたれ部30は、着座部20と接続される基部31と、基部31から上方に立設する起立部32とを含む。着座部20と背もたれ部30の接続部分である基部31は、基部31以外の部位より細いくびれた部分31aを形成している。このようにくびれた部分31aを形成することで、
図4(b)に示すように、基部31の両側に開放されたスペースが形成されるので、着座部20に着座している乳幼児2の足の開きを抑止しないようにして乳幼児2が足を開いた状態で着座することができるようになる。
【0029】
起立部32は、基部31との接続部分から左右両側に拡大し縮小する楕円状の外形を有する。基部31と起立部32の前面部は、着座部20の前面部11と同様に、乳幼児2の身体の形状に沿うように円弧状に凹んだ形状に構成されている。基部31と起立部32の接続部分の背面部は、着座部20の背面部15と同様に、凸状の曲面部を形成している。基部31より上方の起立部32の背面部は中央に凹状の曲面部33を形成し、起立部32の背面部における凹状の曲面部33の周囲が基部31と起立部32の接続部分の曲面と連続する曲面を形成している。起立部32の背面部における凹状の曲面部33には、肩掛けベルト60が取り付けられる円盤状の回転部70が所定の角度範囲で回転軸70a(
図4(a)参照)を中心として回転可能に設けられている。所定の角度範囲は、少なくとも180度であり、最大で360度に回転可能としてもよい。
【0030】
着座部20および背もたれ部30の前面部および回転部70の表面部には、クッション部材81~83が装着されている。クッション部材81~83は、乳幼児2の肌に優しいファブリック素材が用いられる。クッション部材81~83は、着座部20、背もたれ部30および回転部70に対して着脱可能である。着座部20のクッション部材81は、着座した乳幼児2の足の状態に合わせた二股形状を有する。背もたれ部30のクッション部材82は、背もたれ部30の前面部が円弧状に凹んだ形状を有しているので、着座した乳幼児2の背中をホールドするようなバケット形状を有する。また、回転部70のクッション部材83を着脱可能にすることで、
図5に示すクッション部材83a、83bのように、図柄や色を変更できるようになるので、ベビーキャリア1をユーザの好みに合わせた外観にできる。
【0031】
第2の支持ベルト50は、背もたれ部30の起立部32の前面部から前方に延びる左右のベルト部分がバックルや面ファスナなどで接続可能であり、長さが調整可能となっている。肩掛けベルト60は、背もたれ部30の起立部32の背面部に設けられた回転部70から相反する方向(180度方向)に延びる左右のベルト部分がバックルなどで接続可能かつ長さが調整可能となっている。肩掛けベルト60は、
図4(a)に示すように、回転部70の回転角度が変更されることにより、抱きかかえ状態と背負い状態との間で左右のベルト部分の延びる方向を反転させることが可能となっている。このように、肩掛けベルト60をユーザの一方の肩部からもう一方の腕部の下方までたすき掛けした状態で、回転部70が回転することにより、抱きかかえ状態と背負い状態とで肩掛けベルト60の左右の角度が反転するので、肩掛けベルト60の左右の角度を荷重が印加される方向にスムーズに自動で調整される。これにより、ユーザの肩部への負担が軽減され、更に、ユーザはベビーキャリア1をより確実に保持することが可能となる。なお、本実施形態では背もたれ部30の背面に回転部70が設けられているが、背もたれ部30の背面の中心付近にベルトを通すスリットを設け、スリットの幅を調整してベルトが通る角度を可変とすることで、ベルトの左右の角度を反転可能にしてもよい。これにより、ユーザは肩掛けベルト60を緩めて(伸ばして)一方の肩からもう一方の肩に掛けかえることなく、更に第1の支持ベルト40と肩掛けベルト60を外したり、乳幼児2をベビーキャリア1から降ろしたりすることなく、第2の支持ベルト50により乳幼児2をベビーキャリア1の着座部20と背もたれ部30に確実に保持した状態で抱きかかえ状態と背負い状態の切り替えを簡単かつ迅速に行える。また、回転部70の回転範囲が大きいほど、ユーザは肩掛けベルトを掛ける肩を変える動作を行い易くなり、抱きかかえ状態と背負い状態の切り替えを簡単かつ迅速に行える。また、ベビーキャリア1の背面から見た外形を、回転部70の形状を生かした特徴的な形状にすることができる。
【0032】
また、回転部70にクッション部材83が装着されていることにより、
図4(c)に示すように、ベビーキャリア1の背もたれ部30をテーブル3の上面に倒した状態(乳幼児2を寝かせた状態)でユーザにベビーキャリア1を装着する場合に、ベビーキャリア1の背もたれ部30がテーブル3の上面に当たる衝撃により乳幼児2が受ける負担を軽減することができる。なお、ベビーキャリア1の背もたれ部30をテーブル3の上面に倒した状態でベビーキャリア1の角度を乳幼児が快適な角度に調整できるようにしてもよい。
【0033】
次に、
図6および
図7を参照して、本実施形態のベビーキャリア1の使用方法について説明する。
(1)抱きかかえ状態で使用する方法
抱きかかえ状態は、ベビーキャリア1をテーブル3に設置した状態で行い、乳幼児2をユーザに対して最適な高さ位置まで持ち上げて、第1の支持ベルト40をその位置でしっかりと締めることができ、ユーザが屈んだり中腰になったりする負担を軽減する。
【0034】
図6は、本実施形態のベビーキャリア1を抱きかかえ状態で使用する方法を説明する図である。
(1-1)ベビーキャリア1をテーブル3に水平に倒した状態(背もたれ部30の前面部を上方、背面部を下方にした状態)とし、乳幼児2を仰向けの状態で背もたれ部30に寝かせて、乳幼児2の胴体に第2の支持ベルト50を巻いて増し締めすることにより着座部20および背もたれ部30に装着する(
図6(a))。
(1-2)第1の支持ベルト40を緩めた状態でユーザの腰部に巻き付けた状態とし、肩掛けベルト60を緩めた状態でユーザの一方の肩にたすき掛けした仮締め状態とする(
図6(b))。
(1-3)ベビーキャリア1をテーブル3に垂直に立たせた状態(昇降部10の底面部13がテーブル3の上面部に当接し、背もたれ部30が起立した状態)とする(
図6(c))。
(1-4)下側スイッチ17aを操作して昇降部10の下側伸長部17を伸長させてユーザの腰部の高さに第1の支持ベルト40が位置にするようにベビーキャリア1の昇降部10に対する着座部20の高さを調整する(
図6(d))。この場合、非力な女性であってもスイッチ操作だけで昇降部10を昇降させることができる。
(1-5)第1の支持ベルト40の左右のベルト部分を接続し、ダイヤル41で増し締めすることにより、昇降部10の前面部11をユーザの腹部に近づけ密着した状態とする。また、肩掛けベルト60を増し締めすることにより、乳幼児2をユーザの胸部に密着させた状態とする(
図6(e))。
(1-6)下側スイッチ17aを操作して昇降部10の下側伸長部17を元の位置に縮退させることにより、昇降部10の底面部13がテーブル3の上面部から離間し、抱きかかえ状態が完成する(
図6(f))。この場合、昇降部10の下側伸長部17を伸長したままで使用してもよい。
【0035】
抱きかかえ状態では、ユーザはベビーキャリア1に着座する乳幼児2の表情を確認しながら両手が使え、乳幼児2には安心感を与え、会話を育むことができる。また、スマートフォンの操作や簡単な家事、寝かしつけ、椅子に腰かけられるといった利点もある。
(2)背負い状態で使用する方法
背負い状態は、抱きかかえ状態でベビーキャリア1をテーブル3に設置した状態で行い、乳幼児2をユーザに対して最適な高さ位置まで持ち上げて、第1の支持ベルト40をその位置でしっかりと締めることができ、ユーザが屈んだり中腰になったりする負担を軽減する。
【0036】
図7は、本実施形態のベビーキャリア1を抱きかかえ状態から背負い状態に切り替える方法を説明する図である。
(2-1)ベビーキャリア1をテーブル3に垂直に立たせた状態とし、下側スイッチ17aを操作してユーザが屈んだり中腰になったりしないように下側伸長部17を伸長させてユーザに対して最適な高さ位置まで持ち上げる(
図7(a))
(2-2)ベビーキャリア1をテーブル3に垂直に立たせた状態のまま、第1の支持ベルト40および肩掛けベルト60を適度に緩めた状態とする(
図7(b))。
(2-3)ベビーキャリア1をテーブル3に垂直に立たせた状態のまま、ユーザが乳幼児2と対面した状態から乳幼児2に背を向けた状態に180度回転する。この場合、ユーザは肩掛けベルト60を掛けていないもう一方の肩の片手を上げて乳幼児2の頭を通過させ、ユーザの背中部と乳幼児2が対面する状態にする。この場合、ユーザは肩掛けベルト60を一方の肩からもう一方の肩に掛けかえる必要はない(
図7(c))。
(2-4)ベビーキャリア1をテーブル3に垂直に立たせた状態で、上側スイッチ16aを操作して昇降部10の上側伸長部16を伸長させて乳幼児2を抱きかかえ状態よりも高い位置に持ち上げ、ユーザの背中部に対して乳幼児2の位置が最適な高さになるように、ベビーキャリア1の昇降部10に対する着座部20の高さを調整する(
図7(d))。この場合、非力な女性であってもスイッチ操作だけで昇降部10を昇降させることができる。
(2-5)第1の支持ベルト40をダイヤル41で増し締めすることにより、昇降部10の前面部11をユーザの腰部に近づけ密着した状態とする。また、肩掛けベルト60を増し締めすることにより、乳幼児2をユーザの背中部に密着させた状態とする(
図7(e))。
(2-6)下側スイッチ17aを操作して昇降部10の下側伸長部17を元の位置に縮退させることにより、昇降部10の底面部13がテーブル3の上面部から離間し、背負い状態が完成する(
図7(f))。この場合、昇降部10の上側伸長部16および/または下側伸長部17を伸長したままで使用してもよい。
【0037】
このように、背負い状態から抱きかかえ状態に切り替える場合に、ベビーキャリア1をテーブル3などに置いて乳幼児とベビーキャリア1の荷重を支えることで切り替え時の重さに対する負担軽減が行える。この場合、ユーザが屈んだり中腰になったりしない位置までベビーキャリア1の昇降部10の下側伸長部16を伸長させることで容易な切り替えが行える。さらに、ベルト類を仮締めした状態で、ユーザとベビーキャリア1の位置を重さの負担がない最適な位置に調整できるので、容易にベルト類の本締め(増し締め)が行える。また、抱きかかえ状態と背負い状態とでユーザに対する乳幼児の最適な高さ位置が異なるが、昇降部10の上側伸長部17を伸長させることで、ユーザに対する乳幼児の高さ位置を最適な位置に調整することができる。この場合、補助動力を使用してベビーキャリア1を持ち上げるときのユーザの負担を軽減することもできる。
【0038】
背負い状態では、ユーザは、スキンシップを維持しながら乳幼児2の運搬に徹することになる。その代わりに前方が見えるので家事がしやすくなり、乳幼児2は客観的視野による社会性の育成を図ることができる。また、長時間のケア、料理・洗濯などの家事、寝かしつけといった利点もある。
(3)背負い状態から抱きかかえ状態に切り替える方法
図7(f)の背負い状態で、
図7(a)~(e)の手順とは反対にユーザが乳幼児2に背を向けた状態から乳幼児2と対面した状態に180度回転することにより抱きかかえ状態が完成する。
【0039】
なお、本実施形態では、抱きかかえ状態または背負い状態で昇降部10の高さを調整していたが、予め昇降部10の高さを調整した上で抱きかかえ状態または背負い状態にしてもよい。
【0040】
上述したように、本実施形態のベビーキャリア1によれば、ベビーキャリア単体で抱きかかえ状態も背負い状態もできると共に、第2の支持ベルト50により乳幼児2をベビーキャリア1の着座部20と背もたれ部30に確実に保持した状態でベビーキャリア1をユーザの身体から外したり、乳幼児2をベビーキャリア1から降ろしたりすることなく、抱きかかえ状態と背負い状態の切り替えを簡単かつ迅速に行え、乳幼児2を保持するユーザの負担を軽減することができる。
【0041】
[実施形態のまとめ]
<第1の態様>
ユーザの身体に装着することで、乳幼児2を抱きかかえた状態または背中に担いた状態で保持し運搬するためのベビーキャリア1であって、
前記乳幼児が着座する着座部20と、
前記乳幼児の胴体を支持する背もたれ部30と、
前記ベビーキャリアを前記ユーザの胴体に装着するための第1の支持ベルト40と、
前記背もたれ部から延び、前記ユーザの肩部にたすき掛けされる肩掛けベルト60と、を有することを特徴とするベビーキャリア。
【0042】
第1の形態によれば、ベビーキャリア単体で抱きかかえ状態も背負い状態もできると共に、ベビーキャリアをユーザの身体から外したり、乳幼児をベビーキャリアから降ろしたりすることなく、抱きかかえ状態と背負い状態の切り替えを簡単かつ迅速に行え、乳幼児を保持するユーザの負担を軽減することができる。
【0043】
<第2の態様>
第1の形態において、前記背もたれ部の背面部には、前記肩掛けベルトが取り付けられる回転部70が設けられ、
前記回転部は、前記回転部から延びる前記肩掛けベルトを前記回転部の回転中心の周りに回転可能である。
【0044】
第2の態様によれば、肩掛けベルトをユーザの一方の肩部からもう一方の腕部の下方までたすき掛けした状態で、回転部70が回転することにより、抱きかかえ状態と背負い状態とで肩掛けベルトの左右の角度が反転するので、肩掛けベルトの左右の角度を荷重が印加される方向にスムーズに自動で調整される。これにより、ユーザの肩部への負担が軽減され、更に、ユーザはベビーキャリアをより確実に保持することが可能となる。
【0045】
<第3の態様>
第1または第2の形態において、前記ベビーキャリアを上下方向に昇降させる昇降部10を有する。
【0046】
第3の形態によれば、背負い状態から抱きかかえ状態に切り替える場合に、ベビーキャリアをテーブルなどに置いて乳幼児とベビーキャリアの荷重を支えることで切り替え時の重さに対する負担軽減が行える。この場合、ユーザが屈んだり中腰になったりしない位置までベビーキャリアの昇降部の下側を伸長させることで容易な切り替えが行える。さらに、ベルト類を仮締めした状態で、ユーザとベビーキャリアの位置を重さの負担がない最適な位置にできるので、容易にベルト類の本締め(増し締め)が行える。
【0047】
また、抱きかかえ状態と背負い状態とでユーザに対する乳幼児の最適な高さ位置が異なるが、昇降部10の上側を伸長させることで、ユーザに対する乳幼児の高さ位置を最適な位置に調整することができる。この場合、補助動力を使用してベビーキャリアを持ち上げるときのユーザの負担を軽減することもできる。
【0048】
<第4の形態>
第3の形態において、前記昇降部は、前記昇降部から上方に伸長する上側伸長部16と、前記昇降部から下方に伸長する下側伸長部17とを有し、
前記着座部が前記上側伸長部に取り付けられ、
前記第1の支持ベルトが前記昇降部から延びている。
【0049】
第4の形態によれば、ユーザはベビーキャリアの高さを最適な位置(ユーザの疲労が軽減される位置)に調整できるので、抱きかかえ状態や背負い状態でユーザが移動したり家事をしたりする場合の負荷を軽減することができる。
【0050】
<第5の形態>
第2の形態において、前記回転部は、クッション部材83が装着されている。
【0051】
第5の形態によれば、ベビーキャリアの背もたれ部をテーブルの上面に倒した状態(乳幼児を寝かせた状態)でユーザにベビーキャリアを装着する場合に、ベビーキャリアの背もたれ部がテーブルの上面に当たる衝撃により乳幼児が受ける負担を軽減することができる。
【0052】
<第6の形態>
第5の形態において、前記クッション部材は、前記回転部に対して着脱可能である。
【0053】
第6の形態によれば、クッション材の図柄や色を変更できるようになるので、ユーザの好みに合わせた外観のベビーキャリアを構成できる。
【0054】
<第7の形態>
第1から第6のいずれかの形態において、前記背もたれ部における前記着座部との接続部分31は、当該接続部分以外の部位より細いくびれた部分31aを形成している。
【0055】
第7の形態によれば、背もたれ部における着座部との接続部分の両側に開放されたスペースが形成されるので、着座部に着座している乳幼児の足の開きを抑止しないようにして乳幼児が足を開いた状態で着座することができるようになる。
【0056】
<第8の形態>
第1から第7のいずれかの形態において、前記背もたれ部には、前記着座部に着座している乳幼児の胴体を支持する第2の支持ベルト50が取り付けられている。
【0057】
第8の形態によれば、第2の支持ベルトにより乳幼児をベビーキャリアの着座部と背もたれ部に確実に保持した状態で抱きかかえ状態と背負い状態の切り替えを簡単かつ迅速に行える。
【0058】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。例えば、本実施形態のベビーキャリア1の支持ベルトや肩掛けベルトを自動車のシートベルトキャッチャーに接続可能に構成ことで、ベビーキャリア1をチャイルドシートとして利用してもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…ベビーキャリア
2…乳幼児
3…テーブル
10…昇降部
11…前面部
12…上面部
13…底面部
14…側面部
15…背面部
16…上側伸長部
16a…下側スイッチ
17…下側伸長部
17a…下側スイッチ
20…着座部
30…背もたれ部
31…基部
31a…くびれた部分
32…起立部
33…曲面部
40…第1の支持ベルト
50…第2の支持ベルト
60…肩掛けベルト
70…回転部
81~83、83a、83b…クッション部材