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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108726
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】壁構造
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/08 20060101AFI20240805BHJP
【FI】
E04F13/08 101W
E04F13/08 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013249
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】503367376
【氏名又は名称】ケイミュー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大榊 浩史
【テーマコード(参考)】
2E110
【Fターム(参考)】
2E110AA14
2E110AA15
2E110AB04
2E110AB22
2E110DB14
2E110DD11
2E110GB01
2E110GB02Z
2E110GB55Z
2E110GB62
(57)【要約】
【課題】壁材の躯体側で水が滞留しにくくなって防水性が向上する壁構造を提供する。
【解決手段】複数の壁材1が躯体より前側に設けられ、左右方向で隣接する壁材1の間に縦目地3が形成される壁構造10である。壁材1より後ろ側に位置し、縦目地3から浸入した水を受け止める目地防水部材4と、目地防水部材4で受け止められた水の流下が損なわれる流下阻害部分の上方に設けられる排水部5と、を備える。縦目地3を通って目地防水部材4に達した水が、目地防水部材4の前面を排水部5まで流れ落ちた後、排水部5から壁材1の前側に排出される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の壁材が躯体より前側に設けられ、左右方向で隣接する前記壁材の間に縦目地が形成される壁構造であって、
前記壁材より後ろ側に位置し、前記縦目地から浸入した水を受け止める目地防水部材と、
前記目地防水部材で受け止められた水の流下が損なわれる流下阻害部分の上方に設けられる排水部と、を備え、
前記縦目地を通って前記目地防水部材に達した水が、前記目地防水部材の前面を前記排水部まで流れ落ちた後、前記排水部から前記壁材の前側に排出される、
壁構造。
【請求項2】
前記目地防水部材の前面を流れる水が前記壁材裏側に広がる流れを規制することで、前記水を前記排水部に誘導する誘導部をさらに有する、
請求項1に記載の壁構造。
【請求項3】
前記誘導部は、前記排水部の表面と前記壁材とに接する箇所の最下部を含んでおり、
前記誘導部は、前記排水部の表面のうち、前記縦目地の位置を基準とした左右方向の一方の側と他方の側とのそれぞれに、一か所以上設けられている、
請求項2に記載の壁構造。
【請求項4】
前記縦目地の位置を基準とした左右方向の一方に、二か所以上の前記誘導部が設けられ、
前記二か所以上の誘導部の一部は、前記排水部の表面と前記壁材とに接する箇所の最下部を含んでおり、
前記二か所以上の誘導部の他部は、前記目地防水部材と前記排水部との間と、前記縦目地と、を塞ぐ箇所の最下部を含んでいる、
請求項2に記載の壁構造。
【請求項5】
前記複数の壁材は、鎧張り状に配置されている、
請求項1~4のいずれか1項に記載の壁構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
壁板裏側に水が浸入した場合、水がその表面張力によって広がり、釘穴に到達して躯体に浸入する可能性がある。そのため、壁板裏側においては、釘穴への浸水を防がなければならない。このために、例えば、窓枠サッシ上部と壁下地との境目について、断面略鉤型形状の金属製長尺部材とシーリング材とによる防水技術が開示されている。
【0003】
特許文献1には、建物開口部周辺の防水構造が記載されている。この防水構造は、躯体と外壁材との間に複数の下地材を並列して設け、各下地材間の躯体と外壁材との間に通気空間が形成された建物外壁の開口部を有している。前記開口部には、横枠および縦枠からなるサッシが取付けられている。前記サッシ横枠の上枠部分において、外壁材と躯体との
間に、断面が略L字状または略コ字状の長尺部材である防水部材が配設されている。この防水部材は前記外壁材と前記躯体との隙間を覆っている。前記防水部材の前記通気空間に面して配される面には、1以上の水抜き孔が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-140364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された技術は、サイディング(外装材)の目地にシーリング材を設ける工法(シーリング工法)等に適用されるものであり、サイディング同士の目地から水が入り込まないことを前提にした、防水技術である。従って、目地にシーリング材を設けない工法である外装材の構造に、この技術をそのまま適応することはできない。
【0006】
本発明は、上記事由に鑑みてなされており、壁材の躯体側で水が滞留しにくくなって防水性が向上する壁構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る壁構造は、複数の壁材が躯体より前側に設けられ、左右方向で隣接する前記壁材の間に縦目地が形成される壁構造であって、前記壁材より後ろ側に位置し、前記縦目地から浸入した水を受け止める目地防水部材と、前記目地防水部材で受け止められた水の流下が損なわれる流下阻害部分の上方に設けられる排水部と、を備え、前記縦目地を通って前記目地防水部材に達した水が、前記目地防水部材の前面を前記排水部まで流れ落ちた後、前記排水部から前記壁材の前側に排出される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、壁の縦目地から浸入した水は、目地防水部材の前面を流れ落ちた後、排水部から壁材の前側に排出されるものであり、壁材の躯体側で水が滞留しにくくなって防水性が向上する、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態に係る壁構造の実施形態を示す概略の斜視図である。
図2図2は、同上の一部が破断した正面図である。
図3図3Aは、同上の目地防水部材を示す平面図である。図3Bは、同上の目地防水部材を示す斜視図である。
図4図4Aは、同上の排水部を示す斜視図である。図4Bは、同上の排水部を示す側面図である。
図5図5は、同上の図2におけるX1-X1の断面図である。
図6図6は、同上の比較例を示し、一部が破断した正面図である。
図7図7は、同上の変形例を示す斜視図である。
図8図8は、同上の変形例を示し、一部が破断した正面図である。
図9図9は、同上の図8におけるX2-X2の断面図である。
図10図10は、同上の変形例における排水部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態)
1.概要
本実施形態の壁構造10は、複数の壁材1が躯体より前側に設けられて構成されている。また壁構造10は、左右方向で隣接する壁材1の間に縦目地3が形成されている。また壁構造10は、目地防水部材4と排水部5とを備える。目地防水部材4は、壁材1よりも後ろ側に位置し、縦目地3から浸入した水を受け止める。排水部5は、目地防水部材4で受け止められた水の流下が損なわれる流下阻害部分の上方に設けられる。
【0011】
そして、縦目地3を通って目地防水部材4に達した水は、目地防水部材4の前面を端部40まで流れ落ちた後、排水部5から壁材1の前側に排出される。
【0012】
本実施形態では、壁の前側から縦目地3に浸入した水は、目地防水部材4を流れ落ちた後、排水部5から壁材1の前側に排出されるものであり、壁材1の躯体側で水が滞留しにくくなって防水性が向上する。
【0013】
2.詳細
図1は、本実施形態の壁構造10を示している。壁構造10は、建物の外壁の構造であるが、これに限定されるものではない。壁構造10は、複数の外装材が壁材1として躯体(図示省略)の前側に設けられて構成されている。外装材としては、窯業系サイディングを含む窯業系建材を使用することができるが、これに限定されず、例えば、金属系サイディング材や木質系サイディング材などを使用することができる。なお、窯業系建材としては、カラーベスト(登録商標)等の平形スレートを使用することができる。
【0014】
壁材1は、正面視において、左右方向が長い略長方形に形成され、上下方向の寸法は左右方向の寸法に比べて、短く形成されている。複数の壁材1は、上下方向及び左右方向に並べて配置されている。なお、上下方向とは、鉛直上向き方向と鉛直下向き方向の両方を意味する。また左右方向とは、壁構造10を正面から見たときに、上下方向と直交する二つの方向を意味する。また前後方向は、上下方向と左右方向の両方に直交する方向である。前方は、躯体から壁材1の方に向かう方向であり、後方は、壁材1から躯体の方に向かう方向である。壁構造10が外壁の場合、前方は、屋外側に向かう方向であり、後方は、屋内側に向かう方向である。
【0015】
複数の壁材1は、鎧張り状に配置されている。鎧張り状とは、上下に隣接する二枚の壁材1において、上側の壁材1の下部が下側の壁材1の上部の前面に重なって配置されている状態をいう。このとき、上側の壁材1の下部は、下側の壁材1の上部より前に配置されるように重ねられる。重ねられた複数の壁材1によって躯体が保護されるため、鎧張り状の壁構造10は水が浸入しにくく、防水性がよい。また壁構造10では、左右方向で隣接する壁材1の間に縦目地3が形成されている。すなわち、左右方向で隣接する二枚の壁材1において、左側の壁材1の右側端面と、右側の壁材1の左側端面とが、対向して配置されており、左右方向で隣接する壁材1の端面の間に、上下方向に真っ直ぐな縦目地3が形成されている。また、壁構造10では、上下方向で隣接する壁材1同士の右側端面と左側端面とがそれぞれ揃えられて配置されている。そのため、縦目地3は壁構造10全体の上下方向に亘って形成されている。
【0016】
このように本実施形態の壁構造10は、複数の壁材1が、従来の千鳥張りの鎧張り状に配置されるのではなく、上下に並ぶ壁材1が、左側端面が上下方向に揃うと共に右側端面が上下に揃うように、鎧張り状に配置される。壁構造10には、全体の上下方向に亘る真っ直ぐな縦目地3が形成されるため、壁構造10は目新しい外観を得られる。また、左右方向で隣接する壁材1同士の縦目地3は、シーリング材が打設されずに開放されている。
【0017】
壁構造10の躯体は、建築物全体を構造的に支える骨組みであって、基礎、土台、梁、柱などを含んでいる。
【0018】
壁構造10は、目地防水部材4と排水部5とを備えている。目地防水部材4は、鋼板などの金属板を折り曲げ加工などで加工することにより形成される。図3A及び図3Bに示すように、目地防水部材4は、上下方向に延びるように形成され、突出部41と二個の防水片42,43とを備えている。突出部41は、二個の対向片411を有する断面略逆U字状に形成されている。突出部41は、前方向に突出している。突出部41は、壁材1を配置する際の目印になるため、壁材1の位置決めを容易にすることができる。二個の対向片411は所定の間隙を介して左右方向で対向して配置されている。突出部41は左右方向で隣接する壁材1の間に位置するように配置されるため、縦目地3を通って目地防水部材4に達した水は、目地防水部材4の前面または対向片411を流れ落ちる。一方の対向片411の後端部には一方の防水片42が設けられており、他方の対向片411の後端部には他方の防水片43が設けられている。各防水片42,43の端部(対向片411と反対側の端部)には、折り返し片422、432が上下方向の全長にわたって設けられている。折り返し片422、432は、防水片42,43の前側に折り返されて形成されており、これにより、防水片42,43の前面(屋外側を向く面)を流れ落ちる水が、左右方向に広がりにくくすることができる。また、折り返し片422,432は、防水片42,43の変形を抑制することもできる。さらに、対向片411と折り返し片422、432との間には、リブ421,431が設けられている。リブ部421,431は、防水片42,43の前側に突出するものであり、上下方向の全長にわたって設けられている。これにより、防水片42,43の前面を流れ落ちる水が、左右方向に広がりにくくすることができる。また、リブ部421,431は、防水片42,43の変形を抑制することもできる。なお、目地防水部材4の形状はこれに限定されるものではない。例えば、目地防水部材4は、一つの防水片のみから形成されていてもよい。
【0019】
図4A及び図4Bに示すように、排水部5は、断面略L字状に形成されている。排水部5は、鋼板などの金属板を折り曲げ加工などで加工することにより形成された金具を用いることができる。排水部5は、正面視で長方形の接続片51と、接続片51の下端から前方に向かって突出する排水片52と、排水片52の前端を下側に折り返されて形成された屈曲部53とを備えている。接続片51の前面と排水片52の上面との間の角度は、90°よりも少し大きくすることができ、例えば、92°にすることができる。これにより、接続片51に対して排水片52が下り傾斜することになる。このため、水が排水片52の平坦な上面において、接続片51側から前側に向かって流れやすくなる。
【0020】
図5は、本実施形態の壁構造10の開口部上部の断面図を示している。壁構造10は、開口部12を有する。開口部12は窓や建物の出入口となる部分であって、正面視で四角形に形成されている。開口部12には開口部枠(サッシ)7が設けられている。開口部枠7は、上枠71と下枠75及び左右一対の側枠74とを有している。上枠71は、開口部12の上縁部に沿って左右方向に延びるように設けられ、下枠75は、開口部12の下縁部に沿って左右方向に延びるように設けられている。一対の側枠74は、それぞれ、開口部12の右又は左の縁部に上下方向に延びるように設けられている。
【0021】
図5に示すように、上枠71には上方に突出する取付片72が設けられており、取付片72が、開口部12の上縁部を構成する、まぐさなどに配置されて、図示しない躯体に固定されている。上枠71の取付片72よりも前部分は、開口部12よりも前側に突出している。
【0022】
壁下地材30は、ビスや釘などの固定具で、図示しない躯体に固定されている。壁下地材30は、合板などの板材で形成されており、前面及び後面が平坦に形成されている。壁下地材30の前面には、非透湿防水紙31が両面テープなどの接着部材32で固定されている。なお、壁下地材30と躯体との間に図示しない胴縁があってもよい。
【0023】
壁下地材30の前側には、上ジョイナー80が設けられていてもよい。上ジョイナー80は、バックアップ部81と支持部82とを有する、片側タイプのハット型ジョイナー等である。支持部82は非透湿防水紙31の前側に配置され、ビスや釘などの固定具で壁下地材30に固定されている。バックアップ部81は支持部82の下端から下方に突出して設けられており、壁下地材30よりも下方で上枠71よりも上方に位置するように設けられる。上ジョイナー80は左右方向に延びるように形成され、開口部12の左右方向の全長にわたって設けられている。
【0024】
壁下地材30の前側には、目地防水部材4が設けられている。目地防水部材4の防水片42,43は非透湿防水紙31の前側に配置され、ビスや釘などの固定具で壁下地材30に固定されている。図2に示すように、目地防水部材4は、上枠71の上方で、上枠71の左右方向の略中央部に配置されているが、これに限定されるものではなく、いずれの場所にも設けることができる。
【0025】
目地防水部材4の後ろ側には、排水部5が設けられている。上ジョイナー80を設ける場合、排水部5が設けられる位置は、目地防水部材4の後ろ側であれば、上ジョイナー80の前側であってもよい。目地防水部材4の端部40は、排水部5の接続片51の前側に配置されている。すなわち、目地防水部材4の後ろ側には、排水部5の接続片51が設けられており、接続片51の前面と防水片42,43の後面とは接触して接続されていることが好ましい。また接続片51の左右方向の寸法は、目地防水部材4の左右方向の寸法よりも大きく形成されていることが好ましい。したがって、正面視において、目地防水部材4の端部40の左右に接続片51が突出して配置されている。なお、接続片51の左右方向の寸法は、目地防水部材4の左右方向の寸法と同幅であってもよい。また目地防水部材4の端部40は、排水片52の上方に位置している。排水部5の接続片51は、ビスや釘などの固定具又は両面テープなどの接着部材32で、直接または間接的に壁下地材30に固定されている。また、上ジョイナー80を設ける場合、排水部5の排水片52の前端は、上ジョイナー80のバックアップ部81より前側に位置する。図2に示すように、排水部5は、上枠71の上方で、上枠71の左右方向の略中央部に配置されているが、目地防水部材4と同様に、これに限定されるものではない。
【0026】
排水部5と目地防水部材4とにわたって誘導部6が設けられていてもよい。誘導部6は、ゴム製のシーリング材(捨てシーリング材)などで排水部5の表面(その部材を施工時に前側から視認される面。本実施形態の排水部5においては、接続片51の前面及び排水片52の上面)と壁材1の後面とに接する箇所の最下部を含むように、構成される。本実施形態では、縦誘導部61と横誘導部62とで、正面視で略L型に形成されている。誘導部6は、目地防水部材4を下方向に流れ落ちた水を、排水片52に誘導するためのものである。誘導部6は、正面視において、目地防水部材4の突出部41の左右両側に設けられている。縦誘導部61は、目地防水部材4の折り返し片422,432の前面に沿って、目地防水部材4と排水部5との境目に亘って設けられている。横誘導部62は、排水部5の表面と壁材1の後面とに接する箇所の最下部を含むように縦誘導部61の下端から左右方向に沿って延びており、具体的には、排水部5の接続片51と排水片52とがなす角部に沿って設けられている。横誘導部62の先端(縦誘導部61と反対側の端部)は、排水片52の左右端部にまで達していてもよい。誘導部6は、目地防水部材4を下方向に流れ落ちた水が表面張力で左右方向または上方向に広がる流れを、規制することができる。そして、目地防水部材4を下方向に流れ落ちた水は、排水部5に誘導され、排水部5から壁材1の前側に排出されやすくなる。なお、この誘導部6は、縦目地3の前側からは視認されず、壁の外観が損なわれにくい。誘導部6の形状は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、排水片52の左右端部に設けられていてもよい。
【0027】
壁下地材30の前側には、複数の壁材1が配置される。複数の壁材1は上下方向及び左右方向に並べて設けられ、ビスや釘などの固定具90,91により壁下地材30に固定される。ここで、本実施形態の壁構造10は、鎧張り状に配置されるため、壁材1としてスタータ部材11が用いられる。スタータ部材11の上に、別の壁材1の下部が重ねられて配置されるため、当該壁材1は前後方向で傾いて配置される。スタータ部材11は、左右方向の寸法は通常の壁材1と同様に形成されるが、上下方向の寸法はスタータ部材11のほうが通常の壁材1よりも短い。スタータ部材11は、排水部5の排水片52の上方に配置されている。またスタータ部材11の後面は、排水部5の表面とスタータ部材11の後面とが接する箇所の最下部を含んで誘導部6の前面に接触している。具体的には、誘導部6は、接続片51とスタータ部材11の後面とが接触する箇所の最下部を含んで、L字状に形成されている。これにより、誘導部6が、目地防水部材4の前面を下方向に流れ落ちた水がその表面張力によってスタータ部材11の後面の左右方向または上方向に広がる流れを、規制する。そのため、目地防水部材4の前面を流れ落ちる水は、排水部5に誘導される。その結果、水は排水部5から壁材1の前側に排出されやすくなり、スタータ部材11と目地防水部材4及び排水部5との防水性が確保される。すなわち、目地防水部材4及び排水部5の後面への水の回り込みがほとんど無くなる。スタータ部材11は固定具90により壁下地材30に固定される。そして、スタータ部材11の前側かつ上側に複数の壁材1を上下方向に順次並べて傾けながら配置することにより、複数の壁材1を鎧貼り状に配置することができる。
【0028】
また左右方向に並ぶ壁材1の間には縦目地3が形成される。左右方向で隣接する二個の壁材1は所定の間隔を介して配置される。左右方向で隣接する二個の壁材1の左右方向の端面同士は対向して配置され、壁材1の対向する端面の間が縦目地3になる。また壁材1の対向する左右方向の端面同士の間には、目地防水部材4の突出部41が設けられていてもよい。したがって、縦目地3には突出部41が位置していてもよい。突出部41の対向片411は、壁材1の左右方向の端面と接触しても良いし接触していなくても良い。また壁材1の左右方向の端部は、目地防水部材4の防水片42,43の前側に配置されている。また、縦目地3の位置を基準とした左右方向の一方の側と他方の側とのそれぞれに、一か所以上の誘導部6が設けられていてもよい。これにより、縦目地3を通って目地防水部材4に達した水は、目地防水部材4の左側と右側とのいずれに流れたとしても、端部40まで流れ落ちた後、誘導部6によって壁材1の後面の左右方向または上方向に広がる流れを規制される。そのため、端部40まで流れ落ちた水は、排水部5から壁材1の屋外側に排出される。このような縦目地3にはシーリング材は設けなくてもよい。したがって、壁構造10の上から下まで(開口部12がある場合は壁構造10の上から開口部12の上方まで、または開口部12の下方から壁構造10の下まで)連続して真っ直ぐに形成される縦目地3を、壁構造10の前側からゴム製のシーリング材などの止水材が視認されない状態で形成することができ、壁面の外観が向上する。
【0029】
本実施形態の壁構造10では、開口部シーリング材8を設けてもよい。開口部シーリング材8は、開口部12をその全周にわたって囲うように設けられている。開口部12の上縁部における、開口部シーリング材8の態様について記載する。開口部シーリング材8は、バックアップ部81の前側に設けられている。また開口部シーリング材8は、目地防水部材4の下方で、壁材1及びスタータ部材11の下方に配置されている。また排水部5が設けられている部分においては、開口部シーリング材8は、排水片52の下方に配置されている。なお開口部シーリング材8は、上枠71の上方に配置されている。開口部シーリング材8は、排水部5が設けられていない部分においては、壁材1及びスタータ部材11の下端面と上枠71の上面とに密着し、壁材1及びスタータ部材11の下端面と上枠71の上面との間から躯体側に水が浸入しないようにして防水性を向上している。また、開口部シーリング材8は、排水部5が設けられている部分においては、排水片52の下面と上枠71の上面とに密着し、排水片52の下側と上枠71の上側との間から躯体側に水が浸入しないようにして防水性を向上している。
【0030】
本実施形態の壁構造10では、縦目地3がシーリング材でシールされていないため、壁の前側から縦目地3に雨水等の水が浸入する。縦目地3に浸入した水は、目地防水部材4の突出部41や防水片42,43の前面を流れ落ちて端部40にまで達する。この後、水は、その表面張力によってスタータ部材11の後面の左右方向または上方向に広がる可能性があるが、誘導部6によって、その流れを規制される。そのため、水は端部40から排水部5の排水片52上に流れ、排水片52から壁材1の前側に排出される。これにより、目地防水部材4の端部40付近で水が溜まりにくい。すなわち、本実施形態では、目地防水部材4で受け止められた水の流下が損なわれる流下阻害部分の上方に排水部5を設けるために、水が流下阻害部分に達する前に、排水部5の排水片52で縦目地3や目地防水部材4を伝って流下する水を壁材1の前側に排水することができ、壁材1の躯体側で水が滞留しにくくなって、防水性が向上する。なお、流下阻害部分とは、平面視において、縦目地3と重なる箇所にあり、縦目地3内を通って流下する水や、目地防水部材4を伝って流下する水の流れを阻害する部分であって、例えば、開口部シーリング材8、上枠71、上ジョイナー80などであり、縦目地3の途中や下端開口を閉塞して水の流下を妨げる部分である。
【0031】
例えば、図6の比較例の場合、排水部5や誘導部6が設けられていない。この場合、縦目地3から浸入した水は、目地防水部材4を流れ落ちて、開口部12の方に向かう。開口部12の上枠71の上部に到達した水は、その表面張力によって、壁材1の後面と壁下地材30の前面に張られた非透湿防水紙31の前面と、の間のわずかな隙間の中を広がって(図6の矢印参照)、壁材1等を固定する固定具の穴(釘穴)に到達し、この穴を伝って壁下地材30や躯体に浸入する可能性がある。一方、本実施形態の壁構造10では、目地防水部材4を伝って開口部12の方に流れ落ちてきた水を、建物の壁材1の前側へ排水することができ、防水性が向上する。
【0032】
(変形例)
実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0033】
上記実施形態では、排水部5は、目地防水部材4の後ろ側のみに設けたが、これに限定されない。排水部5は、上枠71の上方に左右方向の全長にわたって設けることができる。すなわち、排水部5は、左右方向に延びる長尺形状とすることができる。この場合、目地防水部材4の端部40から排水部5の排水片52に水を流れ落としやすくなる。この場合、誘導部として、排水部5の左右方向の両端部に前側に突出する立ち上がり部を設けてもよい。立ち上がり部は、排水片52に上に流れた水が、排水部5の後面に回り込もうとする流れを規制する。そのため、水を排水片52から壁材1の前側に導くことができる。そのため、防水性を向上させることができる。また、開口部12のすぐ上に位置する壁材1に切り欠きを設けることで、立ち上がり部を壁材1の前側に突出させることができる。このように排水部5を長尺に形成することにより、開口部12の全周囲にわたって開口部シーリング材8を設けなくても、高い防水性が得られる場合がある。なお、立ち上がり部は、切込みや曲げ加工などの板金加工を伴うため、ピンホールが形成されることがあるが、このピンホールをシーリング材で塞ぐことにより、より確実な排水をすることができる。
【0034】
また、上記実施形態では、目地防水部材4と排水部5とは別の部材として設けられていたが、目地防水部材4と排水部5とが一体に成形された部材を使用してもよい。
【0035】
図7~9には、開口部を覆う壁材である開口部枠7の側枠74と、これに隣接する壁材1と、の間に縦目地3が形成される場合を示している。この場合、図8に示すように、側枠74と突出部41とが接するように、目地防水部材4の防水片42又は43が、側枠74に合わせて切除されている。また開口部枠7の上部角部に、防水片42又は43の切断された端部が位置している。上枠71に沿って設けられる防水片42又は43の切断端部が、目地防水部材4の切断部45として形成されている。この切断部45には、上記実施形態と同様に排水部5が設けられるが、この排水部5は、図10に示すように、上記実施形態の排水部5を左右方向で二等分した、半排水部55,56とすることができる。この場合、誘導部6は2箇所以上設けられることが好ましい。誘導部6の一つは、半排水部55,56の表面である接続片51の前面と排水片52の上面と壁材1の後面とに接する箇所の最下部を含んで、正面視で略L字状に設けられる。もう一方の誘導部63は、半排水部55,56と防水片42又は43の切断端部との間と、縦目地3と、を塞ぐ箇所の最下部を含んで、前後方向に亘る直線状に設けられてもよい。図9に示すように、側枠74と目地防水部材4の突出部41との間には、開口部シーリング材8が設けられてもよい。開口部シーリング材8は、上ジョイナー80と同様に形成される側部ジョイナー84のバックアップ部83の前側に設けられている。このようにすることで、開口部枠7の側枠74と、これに隣接する壁材1と、の間に縦目地3が形成される場合でも、目地防水部材4の前面を下方向に流れ落ちた水は、誘導部6,63によって、目地防水部材4または壁材1の後面に広がることを規制される。そのため、水は切断部45から半排水部55,56の排水片52上に流れ、排水片52から壁材1の前側に排出される。これにより、目地防水部材4の切断部45付近で水が溜まりにくくなる。また、水が縦目地3を伝って開口部枠の側枠74の後面に侵入することを抑制できる。すなわち、防水性が向上する。
【0036】
また、上記実施形態は、外装材が用いられた壁構造に関するものであったが、本発明はこれに限定されない。例えば、内装材が用いられた壁構造にも、本発明を適用することができる。
【0037】
(まとめ)
第1の態様に係る壁構造10は、複数の壁材1が躯体より前側に設けられ、左右方向で隣接する壁材1の間に縦目地3が形成される壁構造である。壁材1より後ろ側に位置し、縦目地3から浸入した水を受け止める目地防水部材4と、目地防水部材4で受け止められた水の流下が損なわれる流下阻害部分の上方に設けられる排水部5と、を備える。縦目地3を通って目地防水部材4に達した水が、目地防水部材4の前面を排水部5まで流れ落ちた後、排水部5から壁材1の前側に排出される。
【0038】
この態様によれば、壁の前側から縦目地3に浸入した水は、目地防水部材4の前面を流れ落ちた後、排水部5から壁材1の前側に排出されるものであり、壁材1の躯体側で水が滞留しにくくなって防水性が向上する。
【0039】
第2の態様は、第1の態様に係る壁構造であって、目地防水部材4の前面を流れる水が壁材1の裏側に広がる流れを規制することで、前記水を排水部5に誘導する誘導部6、63をさらに有する。
【0040】
この態様によれば、誘導部6により水を排水部5に誘導することができ、排水部5から壁材1の前側に排出されやすくなる。
【0041】
第3の態様は、第2の態様に係る壁構造であって、誘導部6は、排水部5の表面と壁材1とに接する箇所の最下部を含んでいる。誘導部6は、排水部5の表面のうち、縦目地3の位置を基準とした左右方向の一方の側と他方の側とのそれぞれに、一か所以上設けられている。
【0042】
この態様によれば、縦目地3を通って目地防水部材4に達した水は目地防水部材4の左側と右側とのいずれに流れたとしても、誘導部6によって壁材1の裏側に広がる流れを規制される。そのため、防水性が向上する。
【0043】
第4の態様は、第2又は3の態様に係る壁構造であって、縦目地3の位置を基準とした左右方向の一方に、二か所以上の誘導部6が設けられる。前記二か所以上の誘導部6の一部は、排水部5の表面と壁材1とに接する箇所の最下部を含んでいる。前記二か所以上の誘導部6の他部は、目地防水部材4と排水部5との間と、縦目地3と、を塞ぐ箇所の最下部を含んでいる。
【0044】
この態様によれば、縦目地3を通って目地防水部材4に達した水が、誘導部6により左右方向に広がって流れるのを低減することができ、防水性が向上する。
【0045】
第5の態様は、第1~4の態様のいずれか1つに係る壁構造であって、複数の壁材1は、鎧張り状に配置されている。
【0046】
この態様によれば、重ねられた複数の壁材1によって躯体が保護されるため、鎧張り状の壁構造10は水が浸入しにくく、防水性がよい。
【符号の説明】
【0047】
1 壁材
3 縦目地
4 目地防水部材
5 排水部
6 誘導部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10