(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108730
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】鉄道車両
(51)【国際特許分類】
B61D 19/02 20060101AFI20240805BHJP
B61D 19/00 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
B61D19/02 B
B61D19/02 F
B61D19/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013255
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅 甫
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 貴之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 哲郎
(57)【要約】
【課題】戸柱の接合部分への応力集中を低減することが可能な鉄道車両を提供すること。
【解決手段】ドア7のスライド移動を案内するレール10は、乗降口4の屋根構体23の側の、側構体22の内面において、軌道方向に沿って延在していること、ドア7のスライド移動の駆動源であるエアシリンダ8は、レール10の屋根構体23の側に、レール10に対して所定の隙間gをもって配設されていること、ドア7の開方向の側の戸柱122は、屋根構体23の側の端部に、隙間gの部分で側構体22の内面に接合するための固定部123を備えること。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の床部を形成する床構体と、
前記車体の側面部を形成する側構体と、
前記車体の屋根部を形成する屋根構体と、
前記側面部に設けられた乗降口と、
前記車体の軌道方向に沿って、前記乗降口を塞ぐ閉位置と、前記乗降口を開放する開位置と、の間でスライド移動する、片引き戸のドアと、
前記スライド移動の駆動源である開閉手段と、
前記スライド移動を案内するレールと、
前記乗降口の前記軌道方向の両端において、前記側構体に沿って前記床構体に立設される一対の戸柱と、
前記戸柱に設けられ、前記閉位置にある前記ドアを、前記車体の枕木方向の外方側に押圧し、前記乗降口の周縁部に密着させる押圧手段と、
を備える鉄道車両において、
前記レールは、前記乗降口の前記屋根構体の側の、前記側構体の内面において、前記軌道方向に沿って延在していること、
前記開閉手段は、前記レールの前記屋根構体の側に、前記レールに対して所定の隙間をもって配設されていること、
前記一対の戸柱のうち、前記ドアの開方向の側の戸柱は、前記屋根構体の側の端部に、前記隙間の部分で前記側構体の内面に接合するための固定部を備えること、
を特徴とする鉄道車両。
【請求項2】
請求項1に記載の鉄道車両において、
前記一対の戸柱の双方は、前記屋根構体側の端部において前記固定部により一体にされ、前記床構体の側に開口した略コの字状の枠体を形成していること、
を特徴とする鉄道車両。
【請求項3】
請求項1に記載の鉄道車両において、
前記一対の戸柱のうち、前記ドアの開方向の側の戸柱は、前記固定部が前記戸柱の前記屋根構体の側の端部から前記軌道方向に延在されることで、略L字形に形成されていること、
を特徴とする鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高速鉄道車両では、車両の側面部に設けられる乗降口に気密扉が用いられている。これは、車両のトンネル通過時や対向列車とのすれ違い時に、車両内外に生じる気圧差により、車内の気圧が急激に変動しないようにするためである。気密扉としては、例えば、特許文献1に開示される車両用ドア装置が知られている。
【0003】
従来技術に係る気密扉の構造について、
図15-
図20を用いて説明する。
図15は、従来技術におけるドアを、車体の内側から見た様子を表す図であり、ドアが閉位置にある状態を示している。
図16は、
図15のI-I断面図である。
図17は、
図15のJ-J断面図である。
図18は、従来技術におけるドアを、車体の内側から見た様子を表す図であり、ドアが開位置にある状態を示している。
図19は、
図18のK-K断面図である。
図20は、
図18のL-L断面図である。なお、
図15および
図18においては、図中の左右方向が軌道方向であり、図中の上下方向が高さ方向である。
図16および
図19においては、図中の左右方向が軌道方向であり、図中の上下方向が枕木方向である。
図17および
図20においては、図中の左右方向が枕木方向であり、図中の上下方向が高さ方向である。
【0004】
車体100は、例えば、車体100の床部を形成する床構体101と、車体100の側面部を形成する側構体102と、車体100の屋根部を形成する屋根構体103と、車体100の前面部及び後面部を形成する不図示の妻構体と、により略6面体状に形成されている。車体100の側面部には、乗客が乗り降りするための乗降口104が設けられており、この乗降口104はドア105により開閉される。
【0005】
ドア105の開閉は、例えばエアシリンダ106により行われる。エアシリンダ106は、乗降口104の上方において、車体100の内面に取り付けられている。エアシリンダ106は、操作エアにより車体100の軌道方向に進退可能な操作ロッド1061を備えている。そして、この操作ロッド1061とドア105とが連結部材108により連結されている。操作ロッド1061とドア105が連結されることにより、操作ロッド1061の進退に伴って、ドア105が、乗降口104を塞ぐ閉位置(
図15に示す位置)と、乗降口104を開放する開位置(
図18に示す位置)との間でスライド移動されるようになっている。なお、
図15および
図18中の右側がドア105の開方向であり、
図15および
図18中の左側がドア105の閉方向である。
【0006】
エアシリンダ106には、軌道方向に延在するレール107が一体とされている。ドア105は、滑車部材109によりレール107に吊り下げられており、これにより、ドア105のスライド移動が案内される。
【0007】
また、乗降口104の軌道方向の両端には、床構体101から屋根構体103に向かって一対の戸柱110,111が立設されている。
【0008】
戸柱110は、乗降口104の閉方向側(
図15および
図18中の左側)において、床構体101からドア105の上端部まで、高さ方向に沿って延在している。戸柱110は、高さ方向の下端部が、溶接により床構体101に接合されている(溶接部W51)。また、戸柱110は、側構体102に接合させるための接合部110aを備えている。そして、接合部110aが側構体102に接合されている(溶接部W52)。接合部110aは、戸柱110の高さ方向の全長に渡って設けられているため、戸柱110は、高さ方向の全長に渡って、側構体102に接合されている。
【0009】
戸柱111は、乗降口104の開方向側(
図15および
図18中の右側)において、床構体101から屋根構体103まで、高さ方向に沿って延在している。戸柱111は、高さ方向の下端部が、溶接により床構体101に接合されている(溶接部W53)。また、戸柱111は、
図17および
図20に示すように、高さ方向の上端部に、エアシリンダ106およびレール107との干渉を避けるための湾曲部111aを備えており、この湾曲部111aの先端が、溶接により屋根構体103に接合されている(溶接部W54)。なお、戸柱111と側構体102との間には、ドア105が開方向にスライド移動する際に通るための間隙を設ける必要があるため、戸柱111は側構体102に接合されていない。
【0010】
また、戸柱110,111は、閉位置にあるドア105を、車体100の枕木方向の外方側(
図16および
図19中の上方側)に押圧し、乗降口104の周縁部に密着させる押圧手段112を備えている。押圧手段112は、エアシリンダ等により、ドア105を押圧するための押圧部112aを枕木方向に進退させるものであり、例えば、特許文献1に開示されるドア押え装置や、特許文献2に開示される押さえ装置が知られている。また、戸柱110,111は、それぞれ2つずつ押圧手段112を備えており、ドア105は4点で押圧されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008-174149号公報
【特許文献2】特開2006-15814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
例えば、鉄道車両がトンネルを通過するときや対向列車とすれ違うとき、車体100の内部と外部に圧力差が生じ、車体100に気密荷重が負荷される。これにより、車体100が膨張または収縮する。車体100が膨張するとき、床構体101と屋根構体103は相互に離れる方向に力が加わる。一方で、車体100が収縮するとき、床構体101と屋根構体103は相互に近づく方向に力が加わる。このように、床構体101と屋根構体103とに、離れる方向、または近づく方向に力が加わったとき、戸柱111が床構体101と屋根構体103に突っ張る形で接合されているため、溶接部W53および溶接部W54は戸柱111の伸縮方向の反力によって応力集中が起こる。同様に内部と外部の圧力差が生じた際に、戸柱110,111は押圧手段112を介してドア105に加わった圧力荷重を戸柱110,111の梁の曲げ方向で荷重を受ける。このとき、溶接部W53および溶接部W54に応力集中が起こる。これらの応力集中は、疲労破壊の原因となるおそれがある。疲労破壊を防ぐためには、床構体101や屋根構体103、戸柱111の強度を向上させることが考えられるが、鉄道車両の製造コストや質量の増大につながるため、好ましくない。
【0013】
本発明は、上記問題点を解決するためのものであり、戸柱の接合部分への応力集中を低減することが可能な鉄道車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の鉄道車両は、次のような構成を有している。
【0015】
(1)車体の床部を形成する床構体と、前記車体の側面部を形成する側構体と、前記車体の屋根部を形成する屋根構体と、前記側面部に設けられた乗降口と、前記車体の軌道方向に沿って、前記乗降口を塞ぐ閉位置と、前記乗降口を開放する開位置と、の間でスライド移動する、片引き戸のドアと、前記スライド移動の駆動源である開閉手段と、前記スライド移動を案内するレールと、前記乗降口の前記軌道方向の両端において、前記側構体に沿って前記床構体に立設される一対の戸柱と、前記戸柱に設けられ、前記閉位置にある前記ドアを、前記車体の枕木方向の外方側に押圧し、前記乗降口の周縁部に密着させる押圧手段と、を備える鉄道車両において、前記レールは、前記乗降口の前記屋根構体の側の、前記側構体の内面において、前記軌道方向に沿って延在していること、前記開閉手段は、前記レールの前記屋根構体の側に、前記レールに対して所定の隙間をもって配設されていること、前記一対の戸柱のうち、前記ドアの開方向の側の戸柱は、前記屋根構体の側の端部に、前記隙間の部分で前記側構体の内面に接合するための固定部を備えること、を特徴とする。なお、上記した所定の隙間とは、固定部を側構体に接合するための作業を行うことが可能な程度の大きさの隙間をいう。
【0016】
(2)(1)に記載の鉄道車両において、前記一対の戸柱の双方は、前記屋根構体側の端部において前記固定部により一体にされ、前記床構体の側に開口した略コの字状の枠体を形成していること、を特徴とする。
【0017】
(3)(1)に記載の鉄道車両において、前記一対の戸柱のうち、前記ドアの開方向の側の戸柱は、前記固定部が前記戸柱の前記屋根構体の側の端部から前記軌道方向に延在されることで、略L字形に形成されていること、を特徴とする。
【0018】
上記の鉄道車両によれば、乗降口の軌道方向の両端において、側構体に沿って床構体に立設される一対の戸柱のうち、ドアの開方向の側の戸柱は、開閉装置とレールの間の隙間を利用して、側構体に接合される。したがって、車体が気密荷重により膨張または収縮をし、床構体と屋根構体が、相互に離れる方向、または、相互に近づく方向の力が加わったとしても、戸柱は軸力方向ではなく、曲げ方向に荷重を受けるため、接合している部分の相対的な伸縮は従来より少なく、応力集中が起きにくい。また、ドアの開方向の側の戸柱の屋根構体の側の端部が側構体に接合されることで、戸柱の長さが従来より短くなるため、戸柱を接合している部分の応力集中が起きにくい。これらの効果によって、応力集中によって車体に疲労破壊が発生することを抑制することができる。さらに、疲労破壊を防ぐための強度向上にかかる、鉄道車両の製造コストや質量を削減することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の鉄道車両によれば、戸柱の接合部分への応力集中を低減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1の実施形態に係る鉄道車両の側面図である。
【
図2】ドアを、車体の内側から見た様子を表す図であり、ドアが閉位置にある状態を示している。
【
図5】ドアを、車体の内側から見た様子を表す図であり、ドアが開位置にある状態を示している。
【
図8】第2の実施形態におけるドアを、車体の内側から見た様子を表す図であり、ドアが閉位置にある状態を示している。
【
図11】第3の実施形態におけるドアを、車体の内側から見た様子を表す図であり、ドアが閉位置にある状態を示している。
【
図14】第3の実施形態におけるドアを、車体の内側から見た様子を表す図であり、ドアが開位置にある状態を示している。
【
図15】従来技術におけるドアを、車体の内側から見た様子を表す図であり、ドアが閉位置にある状態を示している。
【
図18】従来技術におけるドアを、車体の内側から見た様子を表す図であり、ドアが開位置にある状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1の実施形態)
本発明に係る鉄道車両の第1の実施形態について、
図1-
図7を参照しながら詳細に説明する。
図1は、第1の実施形態に係る鉄道車両1の側面図である。なお、
図1中の左右方向が軌道方向であり、
図1中の上下方向が高さ方向である。
図2は、ドア7を、車体2の内側から見た様子を表す図であり、ドア7が閉位置にある状態を示している。
図3は、
図2のA-A断面図である。
図4は、
図2のB-B断面図である。
図5は、ドア7を、車体2の内側から見た様子を表す図であり、ドア7が開位置にある状態を示している。
図6は、
図5のC-C断面図である。
図7は、
図5のD-D断面図である。なお、
図2および
図5においては、図中の左右方向が軌道方向であり、図中の上下方向が高さ方向である。
図3および
図6においては、図中の左右方向が軌道方向であり、図中の上下方向が枕木方向である。
図4および
図7においては、図中の左右方向が枕木方向であり、図中の上下方向が高さ方向である。
【0022】
鉄道車両1は、軌道6上を走行する、例えば特急車両である。この鉄道車両1は、
図1に示すように、車体2と、車体2を支持する台車3とを備えている。
【0023】
車体2は、鉄道車両1の床部をなす床構体21と、床構体21の枕木方向(
図1中の奥行方向)の両端部に立設されることで、鉄道車両1の側面部を形成する一対の側構体22と、床構体21の軌道方向の両端部に立設されることで、鉄道車両1の連結部を形成する一対の切妻構体24と、切妻構体24および側構体22の上端部に配置されることで、鉄道車両1の屋根部を形成する屋根構体23と、により6面体をなすように構成される。なお、各構体21,22,23,24は、アルミ合金製のダブルスキン構造を有している。本図ではダブルスキン構造を示しているが、アルミ溶接構造または機械締結構造を有するものとしても良い。又、素材もアルミ合金に限らず他の軽合金やステンレス鋼などであっても良い。
【0024】
また、車体2の側面部(側構体22)には、軌道方向の両端部に、乗客が乗り降りするための乗降口4,4が設けられている。さらに側面部には、乗降口4,4に挟まれて、複数の窓5が、所定の間隔に並んで設けられている。なお、
図1において図示されていない側の側面部(
図1中の裏側の側面部)も同様に乗降口4および窓5を備えている。つまり、乗降口4は1台の車体2につき、4つ設けられている。ただし、車体2に設けられる乗降口4の数および窓5の数は特に限定されるものではない。
【0025】
乗降口4はドア7により開閉される。ドア7は、乗降口4を塞ぐ閉位置と、乗降口4を開放する開位置と、の間でスライド移動する片引き戸である。
図2に示すドア7の位置が閉位置である。そして、この閉位置から、図中の右側にスライド移動が可能となっており、
図5に示すドア7の位置が開位置である。また、
図5に示す開位置から、図中の左側にスライド移動すれば、
図2に示す閉位置に移動することができる。つまり、
図2および
図5中の右側がドア7の開方向であり、
図2および
図5中の左側がドア7の閉方向である。なお、開方向と閉方向は逆であっても良い。
【0026】
ドア7は、レール10に滑車部材11により吊り下げられている。レール10は、乗降口4の屋根構体23の側(
図2および
図5中の上方)で、側構体22の内面に固定されている。また、レール10は、ドア7の図中の右側へのスライド移動を案内するために、乗降口4の図中の左側の端部近傍から、図中の右側の端部位置を超えて、軌道方向に沿って延在している。なお、このようにレール10が図中の右側へ延伸されているのは、あくまで一例であり、ドア7が図中の左側へスライド移動する場合には、レール10は当然に図中の左側へ延伸される。
【0027】
レール10の屋根構体23の側には、レール10に対して所定の隙間gをもって、エアシリンダ8(開閉手段の一例)が車体2の内面に取り付けられている。具体的には、屋根構体23の内面であって、側構体22と屋根構体23の境界近傍に取り付けられている。ただし、エアシリンダ8を取り付ける位置は、隙間gを確保できる位置であれば良いのであって、屋根構体23であるか側構体22であるかは問わない。
【0028】
エアシリンダ8は、操作エアにより車体2の軌道方向に沿って進退可能な操作ロッド81を備えている。操作ロッド81は、開方向側が進行方向とされているため、
図2中の右側が操作ロッド81の進行方向である。そして、この操作ロッド81の進行方向の側の先端部には、連結部材9が連結されている。
【0029】
連結部材9は、操作ロッド81の先端部からレール10の側(
図2および
図5中の下方側)に向かって延在する第1片91と、第1片91の下端から乗降口4の側(
図2および
図5中の左側)に向かって延在する第2片92と、により略L字状に形成されている。そして、第2片92の先端部は、2つの滑車部材11のうち、後述する戸柱122側の滑車部材11に連結されている。つまり、操作ロッド81と滑車部材11が連結部材9を介して連結されている。これにより、操作ロッド81の進退に伴って、滑車部材11に吊り下げられているドア7が進退する。すなわち、閉位置と開位置との間でスライド移動する。
【0030】
また、車体2には、乗降口4の車体2の内面側の周縁部に対向するように、枠体12が配設されている。枠体12は、材質をアルミ合金としており、乗降口4の軌道方向の両端に位置する一対の戸柱121,122と、戸柱121,122の屋根構体側の端部を相互に接続している固定部123と、により、床構体21の側に開口した略コの字状に形成されている。
【0031】
戸柱121は、乗降口4の閉方向側(
図2および
図5中の左側)において、側構体22に沿って、床構体21に立設されている。そして、戸柱121の屋根構体23の側の上端部は、高さ方向において隙間gの範囲内に位置している。戸柱121は、床構体21の側の下端部が、溶接により床構体21に接合されている(溶接部W11)。また、戸柱121は、側構体22の側に向かって延伸する接合部121aを備えており、
図3に示す断面視で、略L字状に形成されている。そして、接合部121aは、側構体22側の先端が溶接により側構体22に接合されている(溶接部W12)。接合部121aは、戸柱121の高さ方向の全長に渡って設けられているため、戸柱121は、高さ方向の全長に渡って、側構体22に接合されている。
【0032】
戸柱122は、乗降口4の開方向側(
図2および
図5中の右側)において、側構体22に沿って、床構体21に立設されている。そして、戸柱122の屋根構体23の側の上端部は、高さ方向において隙間gの範囲内に位置している。戸柱122は、床構体21の側の下端部が、溶接により床構体21に接合されている(溶接部W13)。また、戸柱122は、
図3に示す断面視で、略四角形状に形成されており、戸柱122と側構体22との間に間隙を形成している。この間隙は、ドア7が開方向にスライド移動する際に通る部分である。
【0033】
固定部123は、軌道方向に延在し、戸柱121および戸柱122の上端部同士を接続している。さらに、固定部123は、
図4に示すように、側構体22の側に向かって、隙間gを通って水平に延伸しており、その先端部が、溶接により側構体22に接合されている(溶接部W14)。固定部123は、枠体12の軌道方向の全長に渡って延在しているため、枠体12は、上端部において軌道方向の全長に渡って側構体22に接合されている。以上のように、枠体12は、溶接部W11,W12,W13,W14により、車体2に固定されている。なお、隙間gの高さ方向の大きさは、レール10上を滑車部材11が通過できる程度の大きさ、かつ、エアシリンダ8を側構体22に接合するための作業を行うことが可能な程度の大きさに設定される。
【0034】
また、戸柱121,122は、閉位置にあるドア7を、車体2の枕木方向の外方側(
図3および
図6中の上方側、
図4および
図7中の左方側)に押圧し、乗降口4の周縁部に密着させる押圧手段13を備えている。押圧手段13は、エアシリンダ等により、ドア7を押圧するための押圧部13aを枕木方向に進退させるものであり、例えば、特許文献1に開示されるドア押え装置や、特許文献2に開示される押さえ装置が知られている。また、戸柱121,122は、それぞれ2つずつ押圧手段13を備えており、ドア7は4点で押圧されるようになっている。ドア7は、押圧手段13により枕木方向の外方側に押圧されることで、乗降口4の周縁部に設けられたシール部材14と密着する。これにより、車体2内の気密が保たれるため、トンネル通過時や対向列車とのすれ違いの際に、車体2内部の気圧が急激に変動しないようにされている。なお、以上の説明では、車体2が備える4つの乗降口4の内の1つを例に取って説明しているが、4つ全て同様の構成である。
【0035】
以上説明したように、第1の実施形態に係る鉄道車両1は、
(1)車体2の床部を形成する床構体21と、車体2の側面部を形成する側構体22と、車体2の屋根部を形成する屋根構体23と、側面部に設けられた乗降口4と、車体2の軌道方向に沿って、乗降口4を塞ぐ閉位置と、乗降口4を開放する開位置と、の間でスライド移動する、片引き戸のドア7と、スライド移動の駆動源である開閉手段(例えば、エアシリンダ8)と、スライド移動を案内するレール10と、乗降口4の軌道方向の両端において、側構体22に沿って床構体21に立設される一対の戸柱121,122と、戸柱121,122に設けられ、閉位置にあるドア7を、車体2の枕木方向の外方側に押圧し、乗降口4の周縁部に密着させる押圧手段13と、を備える鉄道車両1において、レール10は、乗降口4の屋根構体23の側の、側構体22の内面において、軌道方向に沿って延在していること、開閉手段(エアシリンダ8)は、レール10の屋根構体23の側に、レール10に対して所定の隙間gをもって配設されていること、一対の戸柱121,122のうち、ドア7の開方向の側の戸柱122は、屋根構体23の側の端部に、隙間gの部分で側構体22の内面に接合するための固定部123を備えること、を特徴とする。なお、上記した所定の隙間gとは、固定部123を側構体22に接合するための作業を行うことが可能な程度の大きさの隙間をいう。
【0036】
(2)(1)に記載の鉄道車両1において、一対の戸柱121,122の双方は、屋根構体23側の端部において固定部123により一体にされ、床構体21の側に開口した略コの字状の枠体12を形成していること、を特徴とする。
【0037】
上記の鉄道車両1によれば、乗降口4の軌道方向の両端において、側構体22に沿って床構体21に立設される一対の戸柱121,122のうち、ドア7の開方向の側の戸柱122は、開閉装置(エアシリンダ8)とレール10の間の隙間gを利用して、側構体22に接合される。したがって、車体2が気密荷重により膨張または収縮をし、床構体21と屋根構体23とに対して、相互に離れる方向、または、相互に近づく方向の力が加わったとしても、戸柱122は軸力方向ではなく、曲げ方向に荷重を受けるため、接合している部分(溶接部W13,W14)の相対的な伸縮は従来より少なく、応力集中が起きにくい。また、ドア7の開方向の側の戸柱122の屋根構体23の側の端部が側構体22に接合されることで、戸柱122の長さが従来より短くなるため、戸柱122を接合している部分(溶接部W13,W14)の応力集中が起きにくい。これらの効果によって、応力集中によって車体2に疲労破壊が発生することを抑制することができる。さらに、疲労破壊を防ぐための強度向上にかかる、鉄道車両1の製造コストや質量を削減することができる。
【0038】
また、従来(
図15-
図20参照)、車体100が膨張するときや、ドア105に圧力荷重が加わったとき、側構体102と戸柱111は相対的に離れる方向に変形することが知られている。この変形が大きい場合、従来技術に係る気密扉の構造では、側構体102とドア105がシールゴムを介して気密を保つために、戸柱111自体を強固にする必要があり、鉄道車両の製造コストや質量の増大につながるため、好ましくない。一方で、第1の実施形態に係る鉄道車両1においては、気密荷重による車体2の膨張・収縮やドア7への圧力荷重によって生じる側構体22とドア7の相対的な変形は、ドア7の開方向の側の戸柱122が側構体22に取り付いていることで、追従して変形するようになり、気密を保ちやすくすることができる。よって、気密を保つために要していた、鉄道車両の製造コストや質量を削減することができる。
【0039】
(第2の実施形態)
次に、本発明に係る鉄道車両の第2の実施形態について、
図8-
図10を参照しながら第1の実施形態と異なる点について説明する。
図8は、第2の実施形態におけるドア7を、車体2の内側から見た様子を表す図であり、ドア7が閉位置にある状態を示している。
図9は、
図8のE-E断面図である。
図10は、
図8のF-F断面図である。なお、
図8においては、図中の左右方向が軌道方向であり、図中の上下方向が高さ方向である。
図9においては、図中の左右方向が軌道方向であり、図中の上下方向が枕木方向である。
図10においては、図中の左右方向が枕木方向であり、図中の上下方向が高さ方向である。
【0040】
第1の実施形態における戸柱121と、戸柱122とは、固定部123により一体にされ、一つの枠体12を形成していたが、例えば、
図8に示す一対の戸柱15,16のように、別個の部材としても良い。
【0041】
戸柱15は、乗降口4の閉方向側(図中の左側)において、側構体22に沿って、床構体21に立設されている。そして、戸柱15の屋根構体23の側の上端部は、ドア7の上端部近傍に位置している。戸柱15は、床構体21の側の下端部が、溶接により床構体21に接合されている(溶接部W15)。また、戸柱15は、側構体22の側に向かって延伸する接合部15aを備えており、
図9に示す断面視で、略L字状に形成されている。そして、接合部15aは、側構体22側の先端が溶接により側構体22に接合されている(溶接部W16)。接合部15aは、戸柱15の高さ方向の全長に渡って設けられているため、戸柱15は、高さ方向の全長に渡って、側構体22に接合されている。
【0042】
戸柱16は、乗降口4の開方向側(図中の右側)において、側構体22に沿って、床構体21に立設されている。そして、戸柱16の屋根構体23の側の上端部は、高さ方向において隙間gの範囲内に位置している。戸柱16は、床構体21の側の下端部が、溶接により床構体21に接合されている(溶接部W17)。また、戸柱16は、
図9に示す断面視で、略四角形状に形成されており、戸柱16と側構体22との間に間隙を形成している。この間隙は、ドア7が開方向にスライド移動する際に通る部分である。
【0043】
戸柱16は、屋根構体23の側の上端部に、固定部161を備えている。固定部161は、
図8に示すように、戸柱16の上端部から、軌道方向の閉方向側に延在しており、これにより、戸柱16が略L字状に形成されている。さらに、固定部161は、
図10に示すように、側構体22の側に向かって、隙間gを通って水平に延伸しており、その先端部が、溶接により側構体22に接合されている(溶接部W18)。なお、固定部161の軌道方向の長さは、気密荷重による車体2の膨張・収縮やドア7への圧力荷重によって生じる応力に対して十分な溶接強度を得るために必要な溶接長を得られる長さに設定される。
【0044】
(第3の実施形態)
次に、本発明に係る鉄道車両の第3の実施形態について、
図11-
図14を参照しながら第1の実施形態および第2の実施形態と異なる点について説明する。
図11は、第3の実施形態におけるドア7を、車体2の内側から見た様子を表す図であり、ドア7が閉位置にある状態を示している。
図12は、
図11のG-G断面図である。
図13は、
図11のH-H断面図である。
図14は、第3の実施形態におけるドア7を、車体2の内側から見た様子を表す図であり、ドア7が開位置にある状態を示している。なお、
図11および
図14においては、図中の左右方向が軌道方向であり、図中の上下方向が高さ方向である。
図12においては、図中の左右方向が軌道方向であり、図中の上下方向が枕木方向である。
図13においては、図中の左右方向が枕木方向であり、図中の上下方向が高さ方向である。
【0045】
戸柱15と、戸柱17とが、別個の部材とされている点が、第2の実施形態と同様である。また、戸柱15は、第2の実施形態における戸柱15と同一の部材である。
【0046】
戸柱17は、上端部に設けられている固定部171が、軌道方向の開方向側に延在しており、その点を除いて、第2の実施形態における戸柱16と同様の部材である。戸柱17は、床構体21の側の下端部が、溶接により床構体21に接合されている(溶接部W19)。さらに、固定部171は、
図13に示すように、側構体22の側に向かって、隙間gを通って水平に延伸しており、その先端部が、溶接により側構体22に接合されている(溶接部W20)。なお、固定部171の軌道方向の長さは、十分な溶接強度を得るために必要な溶接長を得られる長さに設定される。
【0047】
第3の実施形態においては、連結部材18は、操作ロッド81の後端部に連結されている。連結部材18は、操作ロッド81の後端部からレール10の側(図中の下方側)に向かって延在する第1片181と、第1片181の下端から軌道方向の開方向の側(図中の右側)に向かって延在する第2片182と、により略L字状に形成されている。そして、第2片182の先端部は、2つの滑車部材11のうち、戸柱15側の滑車部材11に連結されている。つまり、操作ロッド81と滑車部材11が連結部材18を介して連結されている。これにより、操作ロッド81の進退に伴って、滑車部材11に吊り下げられているドア7が進退する。すなわち、閉位置と開位置との間でスライド移動する。
【0048】
第1の実施形態および第2の実施形態における連結部材9は、操作ロッド81の進退に伴い、戸柱122,16の開方向側(右側)で、軌道方向に進退する。一方、第3の実施形態においては、連結部材18が、操作ロッド81の後端部に連結されているため、ドア7が開位置に位置した場合でも、
図14に示すように、第2片182が戸柱17と側構体22の間の間隙に入り込み、連結部材18は、戸柱17の、乗降口4側の端部に隣接する位置に位置する。つまり、連結部材18は、戸柱17を超えて開方向側(右側)に移動することがない。連結部材18が、戸柱17の開方向側(右側)に移動することがない分、スペースの確保が可能になる。
【0049】
以上説明したように、第2の実施形態および第3の実施形態に係る鉄道車両は、一対の戸柱15,16(17)のうち、ドア7の開方向の側の戸柱16(17)は、固定部161(171)が戸柱16(17)の屋根構体23の側の端部から軌道方向に延在されることで、略L字形に形成されていること、を特徴とする。
【0050】
上記の鉄道車両によれば、乗降口4の軌道方向の両端において、側構体22に沿って床構体21に立設される一対の戸柱15,16(17)のうち、ドア7の開方向の側の戸柱16(17)は、開閉装置(エアシリンダ8)とレール10の間の隙間gを利用して、側構体22に接合される。したがって、車体2が気密荷重により膨張または収縮をし、床構体21と屋根構体23とに対して、相互に離れる方向、または、相互に近づく方向の力が加わったとしても、戸柱16(17)は軸力方向ではなく、曲げ方向に荷重を受けるため、接合している部分(溶接部W17(W19),W18(W20))の相対的な伸縮は従来より少なく、応力集中が起きにくい。また、ドア7の開方向の側の戸柱16(17)の屋根構体23の側の端部が側構体22に接合されることで、戸柱16(17)の長さが従来より短くなるため、戸柱16(17)を接合している部分(溶接部W17(W19),W18(W20))の応力集中が起きにくい。これらの効果によよって、応力集中によって車体2に疲労破壊が発生することを抑制することができる。さらに、疲労破壊を防ぐための強度向上にかかる、鉄道車両1の製造コストや質量を削減することができる。
【0051】
また、従来(
図15-
図20参照)、車体100が膨張するときや、ドア105に圧力荷重が加わったとき、側構体102と戸柱111は相対的に離れる方向に変形することが知られている。この変形が大きい場合、従来技術に係る気密扉の構造では、側構体102とドア105がシールゴムを介して気密を保つために、戸柱111自体を強固にする必要があり、鉄道車両の製造コストや質量の増大につながるため、好ましくない。一方で、第2の実施形態および第3の実施形態に係る鉄道車両においては、気密荷重による車体2の膨張・収縮やドア7への圧力荷重によって生じる側構体22とドア7の相対的な変形は、ドア7の開方向の側の戸柱16(17)が側構体22に取り付いていることで、追従して変形するようになり、気密を保ちやすくすることができる。よって、気密を保つために要していた、鉄道車両の製造コストや質量を削減することができる。
【0052】
なお、上記の実施形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で様々な改良、変形が可能である。例えば、本実施形態における鉄道車両1は、軌道方向の両端部に連結部が形成される中間車両であるが、これに限定されるものではなく、先頭車両であっても良い。また、開閉手段として、操作ロッド81を備えるエアシリンダ8を挙げているが、ロッドレスシリンダを開閉手段として用いても良いし、その他周知の開閉装置を用いても良い。
【0053】
また、戸柱16,17は、固定部161,171が、軌道方向において一方の側に延伸することで、略L字形に形成されているが、固定部を軌道方向の両側に延伸させ、略T字形にしても良い。
【0054】
また、固定部123,161,171は、側構体22の側に向かって、隙間gを通って水平に延伸し、その先端部が側構体22に接合されるものとして説明しているが、必ずしも水平に延伸させる必要はない。例えば、戸柱の上端部を、高さ方向において隙間gの下側近傍に位置させ、その上端部から、側構体22に向かって上り坂を形成するようにして、固定部を延伸させ、その先端部を隙間gの部分で側構体22に接合するものとしても良い。
【符号の説明】
【0055】
1 鉄道車両
2 車体
4 乗降口
7 ドア
8 エアシリンダ(開閉手段の一例)
10 レール
13 押圧手段
21 床構体
22 側構体
23 屋根構体
121 戸柱
122 戸柱
123 固定部