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特開2024-108731サンドイッチパネル、及び耐火外壁とその施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108731
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】サンドイッチパネル、及び耐火外壁とその施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/94 20060101AFI20240805BHJP
   E04C 2/288 20060101ALI20240805BHJP
   E04C 2/30 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
E04B1/94 V
E04C2/288
E04C2/30 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013256
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一郎
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 優斗
【テーマコード(参考)】
2E001
2E162
【Fターム(参考)】
2E001GA12
2E001GA20
2E001GA42
2E001GA55
2E001GA82
2E001HA14
2E001HA21
2E001HB02
2E001HB04
2E001HC07
2E001HC09
2E162BA02
2E162BB03
2E162CA21
2E162CB02
2E162CB08
2E162CC07
2E162CC10
2E162DA04
(57)【要約】
【課題】耐火性と断熱性、及び製作性に優れたサンドイッチパネルと、耐火性と断熱性、及び施工性に優れた耐火外壁とその施工方法を提供すること。
【解決手段】サンドイッチパネル90は、複数の中空セル11を備えている芯材10、横方向と縦方向の幅が芯材10よりも大きく、芯材10の一対の広幅面12にそれぞれ当接される一対の耐火面材40、一対の横小口14と一対の耐火面材40とにより形成される上下隙間44に挿入される一対の横桟15を有し、耐火面材40が横桟15に対して軸状の固定部材50によって固定されることにより分割サンドイッチパネル70が形成され、一対の耐火面材40と横桟15とによって第1繋ぎ用隙間45が形成され、複数の分割サンドイッチパネル70が縦方向に並べられ、双方の第1繋ぎ用隙間45に嵌め込まれている分割パネル継手材80を介して双方の分割サンドイッチパネル70が接合されることにより形成されている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の中空セルを備え、一対の広幅面と、縦方向に延びる一対の縦小口と、横方向に延びる一対の横小口とを備えている、芯材と、
横方向と縦方向の幅が前記芯材よりも大きく、前記芯材の前記一対の広幅面にそれぞれ当接される、一対の耐火面材と、
前記一対の横小口と、前記一対の耐火面材とにより形成される上下隙間に挿入され、横方向に延びる、一対の鋼製の横桟とを有し、
前記耐火面材が、前記横桟に対して、軸状の固定部材によって固定されることにより、分割サンドイッチパネルが形成され、
前記一対の耐火面材と前記横桟とにより、横方向に延びる第1繋ぎ用隙間が形成され、
複数の前記分割サンドイッチパネルが縦方向に並べられ、双方の前記第1繋ぎ用隙間に嵌め込まれている分割パネル継手材を介して、双方の前記分割サンドイッチパネルが接合されることにより形成されていることを特徴とする、サンドイッチパネル。
【請求項2】
前記耐火面材は、前記芯材側にある内張り耐火面材と、前記内張り耐火面材に積層される外張り耐火面材とを備え、
前記内張り耐火面材と前記外張り耐火面材が、前記横桟に対して、前記固定部材により固定されていることを特徴とする、請求項1に記載のサンドイッチパネル。
【請求項3】
前記横桟が溝形鋼により形成され、
前記溝形鋼の開口が前記芯材に対向するようにして前記上下隙間に挿入されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のサンドイッチパネル。
【請求項4】
前記中空セルは、その長手方向に直交する断面形状がハニカム状を呈し、前記長手方向が前記一対の広幅面を繋ぐ方向に設定されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のサンドイッチパネル。
【請求項5】
前記中空セルの内部に、無機系発泡材が充填されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のサンドイッチパネル。
【請求項6】
前記一対の耐火面材のそれぞれにおいて、少なくとも前記芯材と反対側の広幅面には、鋼板により形成される表面材が取り付けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のサンドイッチパネル。
【請求項7】
前記内張り耐火面材が、ケイ酸カルシウムボードであり、
前記外張り耐火面材が、石膏ボードであることを特徴とする、請求項2に記載のサンドイッチパネル。
【請求項8】
前記分割パネル継手材を挟んで上下の関係にある、上方と下方の前記分割サンドイッチパネルのそれぞれの前記耐火面材のうち、屋外側に配置されることになるそれぞれの前記耐火面材の端部の間に排水用隙間が設けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のサンドイッチパネル。
【請求項9】
前記サンドイッチパネルの一対の広幅面のうち、一方の広幅面における横方向の両端近傍において、縦方向に延びる一対の方立が固定されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のサンドイッチパネル。
【請求項10】
前記サンドイッチパネルを形成する前記一対の耐火面材と前記芯材とにより、縦方向に延びる第2繋ぎ用隙間が形成され、
複数の請求項1又は2に記載のサンドイッチパネルが横方向に並べられ、双方の前記第2繋ぎ用隙間に対して嵌め込まれているパネル継手材を介して、双方の前記サンドイッチパネルが接合されることにより形成されることを特徴とする、耐火外壁。
【請求項11】
施工現場以外の場所でサンドイッチパネルとパネル継手材を製作する、製作工程と、
施工現場において、複数のサンドイッチパネルを前記パネル継手材を介して接合することにより、耐火外壁を施工する、施工工程とを有し、
前記製作工程では、
前記サンドイッチパネルが、
複数の中空セルを備え、一対の広幅面と、縦方向に延びる一対の縦小口と、横方向に延びる一対の横小口とを備えている、芯材と、
横方向と縦方向の幅が前記芯材よりも大きく、前記芯材の前記一対の広幅面にそれぞれ当接される、一対の耐火面材と、
前記一対の横小口と、前記一対の耐火面材とにより形成される上下隙間に挿入され、前記横方向に延びる、一対の鋼製の横桟とを有し、
前記耐火面材を、前記横桟に対して、軸状の固定部材によって固定することにより、分割サンドイッチパネルを形成し、
前記一対の耐火面材と前記横桟とにより、横方向に延びる第1繋ぎ用隙間が形成され、
複数の前記分割サンドイッチパネルを縦方向に並べ、双方の前記第1繋ぎ用隙間に対して分割パネル継手材を嵌め込み、前記一対の耐火面材と前記分割パネル継手材を軸状の固定部材によって固定することにより前記サンドイッチパネルを形成することを特徴とする、耐火外壁の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンドイッチパネル、及び耐火外壁とその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機系断熱材により形成される芯材の一対の広幅面が、一対の耐火面材にて挟持されているサンドイッチパネルは、コンクリート等からなる面材に比べて軽量であることから、建物の耐火間仕切壁や耐火外壁に適用されることにより、建物の構造架構の負担を軽減して、建設コストの縮減と、パネルの工場生産による現場施工時の省力化及び工期短縮を可能にした部材である。このサンドイッチパネルは、上記する軽量性の他にも、芯材により奏される断熱性(空間保温性)や耐火面材により奏される耐火性、さらには、製造時における二酸化炭素の排出量縮減による環境影響負荷低減性といった様々な効果を有している。
【0003】
ここで、特許文献1には、表面材と裏面材との間に、接着剤層を介してハニカム芯材が一体に介在されている耐火複合パネルが提案されている。この耐火複合パネルは、ハニカム芯材を不燃化するとともに、接着剤層をシート材に含浸させた構造とし、ハニカム芯材の少なくとも両面材端部側の一方には、難燃フォーム、高熱下で発泡炭化層を形成する不燃未発泡層が順に積層一体化されている。ここで、接着剤層は、表面材や裏面材等の広幅面に均一に塗布されるとし、エポキシ樹脂やポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン樹脂といった有機系接着剤が適用されるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-231568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載される耐火複合パネル(上記サンドイッチパネルに相当)によれば、ハニカム芯材を適用することにより、軽量化を図り、強度を高めることができるとしている。しかしながら、パネルの内部に、有機系接着剤からなる接着剤層が面状に広がっていることから、火災時におけるサンドイッチパネルの燃焼拡大が促進され、初期の耐火性能を確保できないことが懸念される。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、耐火性と断熱性、及び製作性に優れたサンドイッチパネルと、耐火性と断熱性、及び施工性に優れた耐火外壁とその施工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成すべく、本発明によるサンドイッチパネルの一態様は、
複数の中空セルを備え、一対の広幅面と、縦方向に延びる一対の縦小口と、横方向に延びる一対の横小口とを備えている、芯材と、
横方向と縦方向の幅が前記芯材よりも大きく、前記芯材の前記一対の広幅面にそれぞれ当接される、一対の耐火面材と、
前記一対の横小口と、前記一対の耐火面材とにより形成される上下隙間に挿入され、横方向に延びる、一対の鋼製の横桟とを有し、
前記耐火面材が、前記横桟に対して、軸状の固定部材によって固定されることにより、分割サンドイッチパネルが形成され、
前記一対の耐火面材と前記横桟とにより、横方向に延びる第1繋ぎ用隙間が形成され、
複数の前記分割サンドイッチパネルが縦方向に並べられ、双方の前記第1繋ぎ用隙間に嵌め込まれている分割パネル継手材を介して、双方の前記分割サンドイッチパネルが接合されることにより形成されていることを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、複数の中空セルを備えている芯材の一対の広幅面にそれぞれ、複数の耐火面材が配設され、芯材の一対の横小口の上下の上下隙間において横方向に延びる一対の鋼製の横桟が配設され、耐火面材が横桟に対して軸状の固定部材によって固定されることにより分割サンドイッチパネルが形成され、縦方向に並べられた複数の分割サンドイッチパネルが分割パネル継手材を介して接合されてサンドイッチパネルが形成されることにより、面状に広がる有機系接着剤からなる接着剤層を介して耐火面材が接着されていないことから、この接着剤層に起因する火災時におけるサンドイッチパネルの燃焼拡大が防止され、耐火性に優れたサンドイッチパネルが形成される。さらに、サンドイッチパネルを形成する各分割サンドイッチパネルにおいて、複数の中空セルを備えている芯材の一対の広幅面に一対の耐火面材が配設され、芯材の一対の横小口に一対の横桟が配設されている構成であることから、可及的に軽量であって製作性に優れ、さらに断熱性に優れたサンドイッチパネルが形成される。
【0009】
また、縦方向に隣接する2つの分割サンドイッチパネルのそれぞれの第1繋ぎ用隙間に嵌め込まれている分割パネル継手材を介して、双方の分割サンドイッチパネルが接合されることによってサンドイッチパネルが形成されることから、各分割サンドイッチパネルが高い接合強度の下で接合されたサンドイッチパネルを、容易な施工性の下で製作することができる。
【0010】
ここで、芯材の備える「複数の中空セル」とは、多数の中空セルが相互に隣接している構造のことを意味しており、中空セルの輪郭形状は、四角形(正四角形を含む)や六角形(正六角形を含む)、八角形(正八角形を含む)、もしくはこれらの組合せ等を例示できる。また、「軸状の固定部材」には、ビスや釘、ボルト(ラグスクリューボルトを含む)、ステープル等が含まれる。
【0011】
また、本発明によるサンドイッチパネルの他の態様において、
前記耐火面材は、前記芯材側にある内張り耐火面材と、前記内張り耐火面材に積層される外張り耐火面材とを備え、
前記内張り耐火面材と前記外張り耐火面材が、前記横桟に対して、前記固定部材により固定されていることを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、耐火面材が、内張り耐火面材と外張り耐火面材の積層体であって、これらの耐火面材が横桟に対して固定部材にて固定されていることにより、より一層耐火性に優れたサンドイッチパネルを形成できる。
【0013】
また、本発明によるサンドイッチパネルの他の態様において、
前記横桟が溝形鋼により形成され、
前記溝形鋼の開口が前記芯材に対向するようにして前記上下隙間に挿入されていることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、横桟が溝形鋼により形成され、溝形鋼の開口が芯材に対向するようにして上下隙間に挿入されていることにより、火災時の熱で溝形鋼が膨張変形した場合でも、この変形代を溝形鋼の開口と芯材の横小口との間の空間にて吸収することができ、膨張した溝形鋼によって火災側にある耐火面材が引っ張られて大きく変形することを抑制できる。さらに、溝形鋼の有する一対のフランジが、耐火面材を軸状の固定部材にて固定する部位となることから、芯材を挟む一対の溝形鋼に対して、芯材の一対の広幅面に配設される一対の耐火面材を強固に固定することができる。
【0015】
また、本発明によるサンドイッチパネルの他の態様において、
前記中空セルは、その長手方向に直交する断面形状がハニカム状を呈し、前記長手方向が前記一対の広幅面を繋ぐ方向に設定されていることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、中空セルの長手方向に直交する断面形状がハニカム状(六角形)を呈し、中空セルの長手方向が一対の広幅面を繋ぐ方向に設定されていることにより、断熱性を備えつつ、剛性の高い芯材が形成され、このことによって剛性の高いサンドイッチパネルを形成できる。
【0017】
また、本発明によるサンドイッチパネルの他の態様において、
前記中空セルの内部に、無機系発泡材が充填されていることを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、中空セルの内部に無機系発泡材が充填されていることにより、遮音性と断熱性のより一層高いサンドイッチパネルを形成できる。
【0019】
また、本発明によるサンドイッチパネルの他の態様は、
前記一対の耐火面材のそれぞれにおいて、少なくとも前記芯材と反対側の広幅面には、鋼板により形成される表面材が取り付けられていることを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、一対の耐火面材における芯材と反対側の広幅面に、鋼板により形成される表面材が取り付けられていることによって、耐火性のより一層高いサンドイッチパネルを形成できる。
【0021】
また、本発明によるサンドイッチパネルの他の態様において、
前記内張り耐火面材が、ケイ酸カルシウム板であり、
前記外張り耐火面材が、石膏ボードであることを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、内張り耐火面材として、火災時の加熱後に温度を速やかに降下させる効果を奏するケイ酸カルシウム板を適用し、外張り耐火面材として、火災時の加熱によって水分(結晶水)を放出して耐火面材の温度上昇を抑制する効果を奏する石膏ボードが適用されることにより、より一層耐火性の高いサンドイッチパネルを形成できる。
【0023】
また、本発明によるサンドイッチパネルの他の態様は、
前記分割パネル継手材を挟んで上下の関係にある、上方と下方の前記分割サンドイッチパネルのそれぞれの前記耐火面材のうち、屋外側に配置されることになるそれぞれの前記耐火面材の端部の間に排水用隙間が設けられていることを特徴とする。
【0024】
本態様によれば、上下の関係にある上方と下方の分割サンドイッチパネルにおける屋外側に配置される双方の耐火面材の端部の間に、排水用隙間が設けられていることにより、サンドイッチパネルの内部に雨水等が溜まることを抑制でき、サンドイッチパネルの内部を常時乾燥した状態に保持することができる。
【0025】
また、本発明によるサンドイッチパネルの他の態様は、
前記サンドイッチパネルの一対の広幅面のうち、一方の広幅面における横方向の両端近傍において、縦方向に延びる一対の方立が固定されていることを特徴とする。
【0026】
本態様によれば、サンドイッチパネルの一対の広幅面における横方向の両端近傍に、一対の方立が固定されていることにより、分割パネル継手材を介して縦方向に接合されている複数の分割サンドイッチパネル同士を、一対の方立にてより強固に接合することができる。尚、この方立は、建物の架構を構成する柱(スタッドを含む)にボルト接合され、耐火外壁を構成するサンドイッチパネルの架構への取り付けに供される。
【0027】
また、本発明による耐火外壁の一態様は、
前記サンドイッチパネルを形成する前記一対の耐火面材と前記芯材とにより、縦方向に延びる第2繋ぎ用隙間が形成され、
複数の前記サンドイッチパネルが横方向に並べられ、双方の前記第2繋ぎ用隙間に対して嵌め込まれているパネル継手材を介して、双方の前記サンドイッチパネルが接合されることにより形成されることを特徴とする。
【0028】
本態様によれば、横方向に隣接する2つのサンドイッチパネルのそれぞれの第2繋ぎ用隙間に嵌め込まれているパネル継手材を介して、双方のサンドイッチパネルが接合されることによって形成されることから、高い接合強度を備えた耐火外壁を容易な施工性の下で施工することができる。
【0029】
また、本発明による耐火外壁の施工方法の一態様は、
施工現場以外の場所でサンドイッチパネルとパネル継手材を製作する、製作工程と、
施工現場において、複数のサンドイッチパネルを前記パネル継手材を介して接合することにより、耐火外壁を施工する、施工工程とを有し、
前記製作工程では、
前記サンドイッチパネルが、
複数の中空セルを備え、一対の広幅面と、縦方向に延びる一対の縦小口と、横方向に延びる一対の横小口とを備えている、芯材と、
横方向と縦方向の幅が前記芯材よりも大きく、前記芯材の前記一対の広幅面にそれぞれ当接される、一対の耐火面材と、
前記一対の横小口と、前記一対の耐火面材とにより形成される上下隙間に挿入され、前記横方向に延びる、一対の鋼製の横桟とを有し、
前記耐火面材を、前記横桟に対して、軸状の固定部材によって固定することにより、分割サンドイッチパネルを形成し、
前記一対の耐火面材と前記横桟とにより、横方向に延びる第1繋ぎ用隙間が形成され、
複数の前記分割サンドイッチパネルを縦方向に並べ、双方の前記第1繋ぎ用隙間に対して分割パネル継手材を嵌め込み、前記一対の耐火面材と前記分割パネル継手材を軸状の固定部材によって固定することにより前記サンドイッチパネルを形成することを特徴とする。
【0030】
本態様によれば、施工現場以外の場所である工場等においては、軽量で耐火性に優れたサンドイッチパネルを効率的に製作することができ、施工現場においては、現場搬送されてきた複数のサンドイッチパネルを横方向に並べ、複数のサンドイッチパネルをパネル継手材を介して接合することにより、耐火外壁を効率的に施工することができる。ここで、施工現場では、既に施工済みの建物架構のうち、外周にある架構に対して、耐火外壁を取り付ける施工が行われる。
【発明の効果】
【0031】
以上の説明から理解できるように、本発明のサンドイッチパネル、及び耐火外壁とその施工方法によれば、耐火性と断熱性、及び製作性に優れたサンドイッチパネルと、耐火性と断熱性、及び施工性に優れた耐火外壁とその施工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】実施形態に係る耐火外壁の施工方法のうち、サンドイッチパネルを製作する製作工程の一例を示す斜視図である。
図2A図1のII部の拡大図であって、中空セルの一例の平面図である。
図2B図1のII部の拡大図であって、中空セルの他の例の平面図である。
図3図1に続いて、製作工程の一例を説明する斜視図である。
図4図3に続いて、製作工程の一例を説明する斜視図であって、分割サンドイッチパネルの一例をともに示す図である。
図5図4に続いて、製作工程の一例を説明する斜視図である。
図6図5に続いて、製作工程の一例を説明する斜視図であって、実施形態に係るサンドイッチパネルの一例をともに示す図である。
図7図6のVII-VII矢視図であって、分割サンドイッチパネルの接合領域の縦断面図である。
図8】実施形態に係る耐火外壁の施工方法における施工工程の一例を説明する斜視図である。
図9図8に続いて、施工工程の一例を説明する斜視図であって、実施形態に係る耐火外壁の一例をともに示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、実施形態に係るサンドイッチパネル、及び耐火外壁とその施工方法について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0034】
[実施形態に係るサンドイッチパネル、及び耐火外壁とその施工方法]
図1乃至図9を参照して、実施形態に係るサンドイッチパネル、及び耐火外壁とその施工方法の一例について説明する。ここで、図1は、実施形態に係る耐火外壁の施工方法のうち、サンドイッチパネルを製作する製作工程の一例を示す斜視図であり、図2A図2Bはいずれも、図1のII部の拡大図であって、中空セルの一例の平面図である。また、図3は、図1に続いて、製作工程の一例を説明する斜視図であり、図4は、図3に続いて、製作工程の一例を説明する斜視図であって、分割サンドイッチパネルの一例をともに示す図である。また、図5は、図4に続いて、製作工程の一例を説明する斜視図であり、図6は、図5に続いて、製作工程の一例を説明する斜視図であって、実施形態に係るサンドイッチパネルの一例をともに示す図であり、図7は、図6のVII-VII矢視図であって、分割サンドイッチパネルの接合領域の縦断面図である。さらに、図8は、実施形態に係る耐火外壁の施工方法における施工工程の一例を説明する斜視図であり、図9は、図8に続いて、施工工程の一例を説明する斜視図であって、実施形態に係る耐火外壁の一例をともに示す図である。
【0035】
耐火外壁の施工方法は、施工現場以外の場所である、例えば工場においてサンドイッチパネル90(図6図8参照)とパネル継手材85,88(図8参照)を製作する、製作工程と、施工現場において、複数のサンドイッチパネル90をパネル継手材85,88を介して接合することにより、耐火外壁100(図9参照)を施工する、施工工程とを有する。
【0036】
まず、図1乃至図7を参照して、工場等においてサンドイッチパネル90を製作する製作工程について説明する。
【0037】
分割サンドイッチパネル70は、正面視矩形で板状の芯材10の一対の広幅面12に対して、耐火面材40を取り付け、さらに、鋼板からなる表面材60を取り付けることにより製作する。ここで、図1には、芯材10の一方の広幅面12に対して、耐火面材40を取り付ける方法を説明しており、他方の広幅面12(紙面前方側の広幅面12)へ取り付けられる耐火面材40の図示を省略しているが、他方の広幅面12にも同様の方法で耐火面材40が取り付けられることになる。
【0038】
芯材10は、図2Aの拡大図に示すように複数の中空セル11を備えた構造を有し、一対の広幅面12と、縦方向に延びる一対の縦小口13と、横方向に延びる一対の横小口14とを備えている。
【0039】
芯材10は、断熱性を有し、耐火性(もしくは防火性)の有無は必須ではない。芯材10には、例えば、不燃紙やダンボール、アルミニウム材、セラミックス材等の様々な素材が適用できる。図2Aに示す中空セル11は、その長手方向に直交する断面形状がハニカム状を呈していることから、芯材10をハニカム材と称することもできる。
【0040】
例えば、不燃紙やアルミニウム材、セラミックス材にて芯材10が形成されている場合は、芯材10はさらに耐火性を有することになる。芯材10の厚みt5は、例えば、15mm乃至50mm程度の範囲に設定できる。ここで、中空セル11の断面形状は、図示例のハニカム状の他にも、四角形や八角形等、その他の多角形が適用されてもよいし、多角形以外の形態が適用されてもよい。例えば、図2Bに示すように、芯材10は、複数の相互に平行に並ぶ平板11aに対して複数の波板11bが接着等されることにより、滑らかな山型を呈する複数の中空セル11Aが、その山を交互に上下反転させながら並ぶ形態等であってもよい。尚、以下の説明では、芯材10がハニカム状の中空セル11を有する形態であるとして説明する。
【0041】
芯材10の中空セル11の長手方向に直交する断面形状がハニカム状を呈し、中空セル11の長手方向が一対の広幅面12を繋ぐ方向に設定されていることにより、空気の対流を防ぐことによって断熱性を向上させることができ、曲げ強度が高く、平面的な耐圧力性も高い高剛性の芯材10となる。ここで、芯材10は、一対の広幅面の一方もしくは双方に対して、不図示の板材が取り付けられてもよく、この板材によって芯材全体の曲げ強度をより一層高めることができる。
【0042】
芯材10が複数の中空セル11によって構成されていることから、芯材10の体積の例えば9割以上が空気(図示例のハニカム状の構成では、91%乃至95%程度)であるため、分割サンドイッチパネル70の軽量化に繋がる。
【0043】
尚、従来の断熱材として使用されてきたロックウールからなる芯材に比べて、複数の中空セル11を備えた芯材10では、ロックウールと同程度の熱伝導率を有しながら、その製造時における二酸化炭素の排出量を可及的に低減することができ、環境影響負荷低減性も高くなる。
【0044】
ここで、図示を省略するが、中空セル11の内部に無機系発泡材が充填されてもよく、この形態によれば、遮音性と断熱性のより一層高い分割サンドイッチパネル70の形成に繋がる。
【0045】
芯材10の一対の横小口14の上下には、一対の鋼製の横桟15が配設される。ここで、横桟15は溝形鋼により形成され、溝形鋼の開口16が芯材10の横小口14に対向するように配設されている。この構成により、芯材10の横小口14と溝形鋼15とによって空間17が形成される。尚、図示を省略するが、芯材10の一対の縦小口13の側方に対して、一対の鋼製の縦桟がさらに配設されてもよい。
【0046】
尚、横桟15は、溝形鋼以外にも、角形鋼管やH形鋼等の他の形鋼材であってもよいが、図示例の溝形鋼15を、その開口16が芯材10に対向するように配設して空間17を形成することにより、火災時の熱で横桟15が膨張変形した場合でも、この変形代を空間17にて吸収することができ、膨張した溝形鋼15によって火災側にある耐火面材が引っ張られて大きく変形することを抑制できる。
【0047】
耐火面材40は、芯材10側にある内張り耐火面材20(耐火面材の一例)と、内張り耐火面材20に積層される外張り耐火面材30(耐火面材の他の例)とを備えている。
【0048】
耐火面材20,30の縦方向の長さt2は芯材10の縦方向の長さt1よりも長く設定され、耐火面材20,30の横方向の長さt4も芯材10の横方向の長さt3よりも長く設定されている。
【0049】
内張り耐火面材20と外張り耐火面材30には、防火材料としての不燃性能を有し、蓄熱作用が小さく、放冷効果の大きな素材が適用されるのが好ましい。そのような素材として、例えば、インシュレーションボードやセルローズファイバーボード、木毛セメント板などの木質系ボード、石膏ボード、石膏板、繊維混入石膏板、ケイ酸カルシウム板などの無機系ボード等が挙げられる。各耐火面材の厚みは、例えば7mm乃至50mmの範囲に設定できる。
【0050】
上記する様々な素材の組合せの中で、例えば、内張り耐火面材20をケイ酸カルシウム板により形成し、外張り耐火面材30を石膏ボードにより形成する。この構成によれば、内張り耐火面材20として、火災時の加熱後に温度を速やかに降下させる効果を奏するケイ酸カルシウム板を適用し、外張り耐火面材30として、火災時の加熱によって水分(結晶水)を放出して耐火面材30の温度上昇を抑制する効果を奏する石膏ボードが適用されることにより、より一層耐火性の高い分割サンドイッチパネル70(サンドイッチパネル90)の形成に寄与する。
【0051】
図3に示すように、芯材10の一対の広幅面12に対して一対の耐火面材40を当接させ、上下の横桟15に対応する箇所において、複数のビス50(軸状の固定部材の一例)を打ち込むことにより、芯材10とその上下にある一対の横桟15,これらを挟持する一対の耐火面材40が一体とされて、分割サンドイッチパネルの中間体70'が製作される。
【0052】
分割サンドイッチパネルの中間体70'では、一対の耐火面材40と芯材10の上下端との間に、横方向に延びる上下隙間44が形成され、さらにその上下方向において、一対の耐火面材40と横桟15との間に第1繋ぎ用隙間45が形成される。さらに、一対の耐火面材40と芯材10の左右端との間には、縦方向に延びる第2繋ぎ用隙間47が形成される。
【0053】
次に、図4に示すように、一対の耐火面材40のそれぞれの外側面から上下端、さらには背面に亘って、鋼板により形成される表面材60を取り付けることにより、分割サンドイッチパネル70が製作される。
【0054】
ここで、表面材60も、耐火面材40や芯材10に対して不図示のビス等の軸状の固定部材により固定される。
【0055】
次に、図5に示すように、複数の分割サンドイッチパネル70を縦方向に並べ、双方の第1繋ぎ用隙間45に対して分割パネル継手材80をX1方向に嵌め込むことにより、分割パネル継手材80を介して分割サンドイッチパネル70同士を接合する。ここで、分割パネル継手材80は、横長の直方体状を呈しており、ブロック状の強化石膏ボード81を一対の鋼板82が挟むことにより形成される。
【0056】
複数の分割サンドイッチパネル70が分割パネル継手材80を介して相互に接合された後、その一対の広幅面のうち、一方の広幅面における横方向の両端近傍において、縦方向に延びる一対の方立83を不図示のビス等によって固定することにより、サンドイッチパネル90(図9参照)が製作される。ここで、図示例の方立83は溝形鋼により形成されているが、角形鋼管やH形鋼等のその他の鋼材により形成されてよい。また、図示を省略するが、一対の方立83同士を、相互に交差する2本の鉛直ブレースが繋いでもよい。
【0057】
サンドイッチパネル70では、その広幅面において、上下の表面材60(及び耐火面材40)の間に横目地75が形成されるが、この横目地75のうち、屋外側に対向する横目地75は排水用隙間を形成している。
【0058】
図7に示すように、上方の分割サンドイッチパネル70の表面材60Aの下端と、下方の分割サンドイッチパネル70の表面材60Bの上端はいずれも、屋外側へ下方傾斜した排水用隙間75を有している。この排水用隙間75を介して、雨水等が屋外側へY1方向にスムーズに排水されるようになっており、このことによってサンドイッチパネル90の内部に雨水等が溜まることを抑制でき、サンドイッチパネル90の内部を常時乾燥した状態に保持することができる。
【0059】
また、下方の表面材60Bの上方は案内片63となっており、この案内片63に沿って分割パネル継手材80が嵌め込まれるようになっている(以上、製作工程)。
【0060】
このように、図示する製作工程によれば、可及的に軽量であり、断熱性と耐火性に優れたサンドイッチパネル90を効率的に製作することができる。また、サンドイッチパネル90は、製作時の二酸化炭素の排出量をゼロに近づけることができ、製作時の省力化を図ることができ、再生可能な素材にて製作されることから、脱炭素を実現する循環型社会に対応する、次世代型サンドイッチパネル(NEXT SWP(Sandwich panel))と称することができる。
【0061】
次に、図8図9を参照して、施工現場において耐火外壁100を施工する施工工程について説明する。
【0062】
工場等で製作されたサンドイッチパネル90と、サンドイッチパネル90同士を繋ぐパネル継手材85,88は、施工現場に搬送される。
【0063】
ここで、パネル継手材85は、左右のサンドイッチパネル90のうち、横目地75に対応する位置において左右の第2繋ぎ用隙間47と第1繋ぎ用隙間45に対して2方向に嵌め込まれる、交差部パネル継手材である。交差部パネル継手材85は、正面視十字状の強化石膏ボード86に対して、一対の正面視十字状の鋼板87が挟持することにより形成される。
【0064】
一方、左右のサンドイッチパネル90のうち、左右の第2繋ぎ用隙間47の直線部には、縦長の立方体状の直線部パネル継手材88がX3方向に嵌め込まれる。直線部パネル継手材88も、強化石膏ボード89aのブロックを一対の鋼板89bが挟持することにより形成される。
【0065】
施工現場では、図8に示すように、複数(図示例は2つ)のサンドイッチパネル90を横方向に並べ、隣接するサンドイッチパネル90の備える双方の第2繋ぎ用隙間47と第1繋ぎ用隙間45に対して、交差部パネル継手材85と直線部パネル継手材88を嵌め込んで接合することにより、図9に示すように耐火外壁100が施工される。
【0066】
ここで、交差部パネル継手材85と直線部パネル継手材88を介したサンドイッチパネル90同士の接続においては、双方の第2繋ぎ用隙間47と第1繋ぎ用隙間45に対するパネル継手材85,88の嵌め込みのみで十分な接合強度が得られることから、パネル継手材85,88を嵌め込んだ後に別途ビス等を打ち込む施工は不要であるが、このようなビス等の打ち込みを行ってもよい。
【0067】
施工現場では、既に施工済みの不図示の建物架構のうち、外周にある架構に対して、耐火外壁100を取り付ける施工が行われる(以上、施工工程)。この耐火外壁100は、防・耐火区画の建物における外壁に好適となる。
【0068】
このように、図示する施工工程によれば、現場搬送されてきた複数のサンドイッチパネル90を横方向に並べ、複数のサンドイッチパネル90をパネル継手材85,88を介して接合することにより、耐火性に優れた耐火外壁100を効率的に施工することができる。
【0069】
上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0070】
10:芯材
11:中空セル
12:広幅面
13:縦小口
14:横小口
15:横桟(溝形鋼)
16:開口
17:空間
20:内張り耐火面材(耐火面材)
30:外張り耐火面材(耐火面材)
40:耐火面材
44:上下隙間
45:第1繋ぎ用隙間
47:第2繋ぎ用隙間
50:軸状の固定部材(ビス)
55:無機系接着剤
60,60A,60B:表面材(鋼板)
61,62:傾斜部
63:案内片
70:分割サンドイッチパネル
70':分割サンドイッチパネルの中間体
75:排水用隙間(横目地)
80:分割パネル継手材
81:強化石膏ボード
82:鋼板
83:方立
85:パネル継手材(交差部パネル継手材)
86:強化石膏ボード
87:鋼板
88:パネル継手材(直線部パネル継手材)
89a:強化石膏ボード
89b:鋼板
90:サンドイッチパネル
100:耐火外壁
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9