(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108741
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】移動装置
(51)【国際特許分類】
F15B 15/10 20060101AFI20240805BHJP
【FI】
F15B15/10 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013270
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】599011687
【氏名又は名称】学校法人 中央大学
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100097238
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 治
(74)【代理人】
【識別番号】100149249
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】中村 太郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 文臣
(72)【発明者】
【氏名】吉田 梨紗子
【テーマコード(参考)】
3H081
【Fターム(参考)】
3H081AA18
(57)【要約】
【課題】人工筋型アクチュエータを利用し、長尺体に対する相対的な移動を実現できる移動装置を提供する。
【解決手段】チャンバ2を内部に形成するチャンバ形成部材3と、縦方向に垂直な横断面内でチャンバ形成部材3によって囲繞され且つ縦方向にチャンバ形成部材3を通って伸びる長尺体4を縦方向において相対的に拘束可能且つ拘束を解除可能な拘束部5とを有し、拘束部5が長尺体4を相対的に拘束した状態で流体がチャンバ2に供給されることにより、チャンバ2が横断面内で広がるとともに縦方向に狭まることによって、縦方向においてチャンバ形成部材3の一端部3aは、チャンバ形成部材3の他端部3bに対して相対的に拘束部5を伴って近づく、移動装置1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバを内部に形成するチャンバ形成部材と、
縦方向に垂直な横断面内で前記チャンバ形成部材によって囲繞され且つ前記縦方向に前記チャンバ形成部材を通って伸びる長尺体を前記縦方向において相対的に拘束可能且つ拘束を解除可能な拘束部とを有し、
前記拘束部が前記長尺体を相対的に拘束した状態で流体が前記チャンバに供給されることにより、前記チャンバが前記横断面内で広がるとともに前記縦方向に狭まることによって、前記縦方向において前記チャンバ形成部材の一端部は、前記チャンバ形成部材の他端部に対して相対的に前記拘束部を伴って近づく、移動装置。
【請求項2】
前記拘束部が前記長尺体を解放した状態で前記流体が前記チャンバから排出されることにより、前記チャンバが前記横断面内で狭まるとともに前記縦方向に広がることによって、前記チャンバ形成部材の前記一端部は、前記チャンバ形成部材の前記他端部に対して相対的に遠ざかる、請求項1に記載の移動装置。
【請求項3】
前記長尺体を前記縦方向において相対的に拘束可能且つ拘束を解除可能な他の拘束部を有し、
前記拘束部が前記長尺体を相対的に拘束し、前記他の拘束部が前記長尺体を解放した状態で前記流体が前記チャンバに供給されることにより、前記チャンバ形成部材の前記一端部は、前記チャンバ形成部材の前記他端部に対して相対的に前記拘束部を伴って近づき、
前記他の拘束部が前記長尺体を相対的に拘束し、前記拘束部が前記長尺体を解放した状態で前記流体が前記チャンバから排出されることにより、前記チャンバ形成部材の前記他端部は、前記チャンバ形成部材の前記一端部に対して相対的に前記他の拘束部を伴って遠ざかる、請求項2に記載の移動装置。
【請求項4】
前記チャンバ形成部材は、前記横断面内で前記長尺体を囲繞する内筒部と、前記横断面内で前記内筒部を囲繞する外筒部とを有し、前記内筒部と前記外筒部とによって前記チャンバを区画する、請求項1に記載の移動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
チャンバを内部に形成するチャンバ形成部材を有し、流体がチャンバに供給されることにより、チャンバが縦方向に垂直な横断面内で広がるとともに縦方向に狭まることによって、縦方向においてチャンバ形成部材の一端部が他端部に対して相対的に近づく、いわゆる人工筋型アクチュエータが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
人工筋型アクチュエータは高いコンプライアンスと出力重量比に特徴があり、種々の用途に好適である。上記特徴を生かし、電線などの長尺体を移動、あるいは長尺体に対して移動する移動装置を提供できれば好ましい。
【0005】
そこで本発明の目的は、人工筋型アクチュエータを利用し、長尺体に対する相対的な移動を実現できる移動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は以下のとおりである。
【0007】
[1]
チャンバを内部に形成するチャンバ形成部材と、
縦方向に垂直な横断面内で前記チャンバ形成部材によって囲繞され且つ前記縦方向に前記チャンバ形成部材を通って伸びる長尺体を前記縦方向において相対的に拘束可能且つ拘束を解除可能な拘束部とを有し、
前記拘束部が前記長尺体を相対的に拘束した状態で流体が前記チャンバに供給されることにより、前記チャンバが前記横断面内で広がるとともに前記縦方向に狭まることによって、前記縦方向において前記チャンバ形成部材の一端部は、前記チャンバ形成部材の他端部に対して相対的に前記拘束部を伴って近づく、移動装置。
【0008】
[2]
前記拘束部が前記長尺体を解放した状態で前記流体が前記チャンバから排出されることにより、前記チャンバが前記横断面内で狭まるとともに前記縦方向に広がることによって、前記チャンバ形成部材の前記一端部は、前記チャンバ形成部材の前記他端部に対して相対的に遠ざかる、[1]に記載の移動装置。
【0009】
[3]
前記長尺体を前記縦方向において相対的に拘束可能且つ拘束を解除可能な他の拘束部を有し、
前記拘束部が前記長尺体を相対的に拘束し、前記他の拘束部が前記長尺体を解放した状態で前記流体が前記チャンバに供給されることにより、前記チャンバ形成部材の前記一端部は、前記チャンバ形成部材の前記他端部に対して相対的に前記拘束部を伴って近づき、
前記他の拘束部が前記長尺体を相対的に拘束し、前記拘束部が前記長尺体を解放した状態で前記流体が前記チャンバから排出されることにより、前記チャンバ形成部材の前記他端部は、前記チャンバ形成部材の前記一端部に対して相対的に前記他の拘束部を伴って遠ざかる、[2]に記載の移動装置。
【0010】
[4]
前記チャンバ形成部材は、前記横断面内で前記長尺体を囲繞する内筒部と、前記横断面内で前記内筒部を囲繞する外筒部とを有し、前記内筒部と前記外筒部とによって前記チャンバを区画する、[1]~[3]の何れか1項に記載の移動装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、人工筋型アクチュエータを利用し、長尺体に対する相対的な移動を実現できる移動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】(a)は本発明の一実施形態の移動装置における第1状態を示す模式図であり、(b)は(a)に示す状態から第2状態にした時の状態を示す模式図であり、(c)は(b)に示す状態から第3状態にした時の状態を示す模式図であり、(d)は(c)に示す状態から第4状態にした時の状態を示す模式図である。
【
図2】(a)は
図1(a)~(d)に示す移動装置の変形例における第1状態を示す模式図であり、(b)は(a)に示す状態から第2状態にした時の状態を示す模式図であり、(c)は(b)に示す状態から第3状態にした時の状態を示す模式図であり、(d)は(c)に示す状態から第4状態にした時の状態を示す模式図であり、(e)は(d)に示す状態から第5状態にした時の状態を示す模式図であり、(f)は(e)に示す状態から第6状態にした時の状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を例示説明する。
【0014】
図1(a)~
図1(d)に示すように、本発明の一実施形態において移動装置1は、チャンバ2を内部に形成するチャンバ形成部材3と、縦方向に垂直な横断面内でチャンバ形成部材3によって囲繞され且つ縦方向にチャンバ形成部材3を通って伸びる長尺体4を縦方向において相対的に拘束可能(
図1(a)~
図1(b)参照)且つ拘束を解除可能(
図1(c)~
図1(d)参照)な拘束部5とを有する。
図1(b)~
図1(c)に示すように、拘束部5が長尺体4を相対的に拘束した状態で流体がチャンバ2に供給されることにより、チャンバ2が横断面内で広がるとともに縦方向に狭まることによって、縦方向においてチャンバ形成部材3の一端部3aは、チャンバ形成部材3の他端部3bに対して相対的に拘束部5を伴って近づく。
【0015】
このような構成によれば、
図1(a)に示すようにチャンバ形成部材3の他端部3bを支持部に固定し、且つ、長尺体4を支持部に固定しない状態で、
図1(b)に示すように拘束部5で長尺体4を相対的に拘束し、
図1(c)に示すように、流体をチャンバ2に供給することで長尺体4をチャンバ形成部材3の一端部3a側から他端部3b側に向かう方向に移動し、
図1(d)に示すように拘束部5による長尺体4に対する相対的な拘束を解除できる。このようなサイクルによって支持部に対して長尺体4を移動できる。あるいは、長尺体4を支持部に固定し、且つ、チャンバ形成部材3の他端部3bを支持部に固定しない状態(不図示)で、拘束部5で長尺体4を相対的に拘束し、流体をチャンバ2に供給することで、移動装置1をチャンバ形成部材3の他端部3b側から一端部3a側に向かう方向に移動し、拘束部5による長尺体4に対する相対的な拘束を解除できる。このようなサイクルによって支持部に対して移動装置1を移動できる。つまり、上記構成によれば、長尺体4に対する相対的な移動装置1の移動を、高いコンプライアンスと出力重量比に特徴がある人工筋型アクチュエータを利用して実現できる。流体は特に限定されないが、気体(空気、二酸化炭素など)であることが好ましい。
【0016】
拘束部5はチャンバ形成部材3の一端部3aに配置される。このような構成によれば、移動効率を向上できる。
【0017】
拘束部5は、縦方向においてチャンバ形成部材3の一端部3aと一体に移動する。このような構成によれば、移動効率を向上できる。
【0018】
図1(c)~
図1(d)に示すように、拘束部5が長尺体4を解放した状態で流体がチャンバ2から排出されることにより、チャンバ2が横断面内で狭まるとともに縦方向に広がることによって、チャンバ形成部材3の一端部3aは、チャンバ形成部材3の他端部3bに対して相対的に遠ざかる。このような構成によれば、チャンバ2に対する流体の供給と排出を制御することで、長尺体4に対する相対的な移動装置1の移動を適宜のタイミングで繰り返し行うことを可能にできる。
【0019】
移動装置1は、
図2(a)~
図2(f)に示す変形例のように、長尺体4を縦方向において相対的に拘束可能(
図2(c)~
図2(d)参照)且つ拘束を解除可能(
図2(e)~
図2(f)参照)な他の拘束部6を有し、
図2(b)~
図2(c)に示すように、拘束部5が長尺体4を相対的に拘束し、他の拘束部6が長尺体4を解放した状態で流体がチャンバ2に供給されることにより、チャンバ形成部材3の一端部3aは、チャンバ形成部材3の他端部3bに対して相対的に拘束部5を伴って近づき、
図1(d)~
図1(e)に示すように、他の拘束部6が長尺体4を相対的に拘束し、拘束部5が長尺体4を解放した状態で流体がチャンバ2から排出されることにより、チャンバ形成部材3の他端部3bは、チャンバ形成部材3の一端部3aに対して相対的に他の拘束部6を伴って遠ざかる構成としてもよい。
【0020】
このような構成によれば、
図2(a)に示すようにチャンバ形成部材3の他端部3bを支持部に固定し、且つ、長尺体4を支持部に固定しない状態で、
図2(b)に示すように拘束部5で長尺体4を相対的に拘束し、
図2(c)に示すように、流体をチャンバ2に供給することで長尺体4をチャンバ形成部材3の一端部3a側から他端部3b側に向かう方向に移動し、
図2(d)に示すように他の拘束部6で長尺体4を相対的に拘束し、
図2(e)に示すように、拘束部5による長尺体4の相対的な拘束を解除し且つ流体をチャンバ2から排出することで拘束部5をチャンバ形成部材3の他端部3b側から一端部3a側に向かう方向に移動し、
図2(f)に示すように他の拘束部6による長尺体4に対する相対的な拘束を解除できる。このようなサイクルによって支持部に対して長尺体4を効率的に移動できる。あるいは、長尺体4を支持部に固定し、且つ、チャンバ形成部材3の他端部3bを支持部に固定しない状態(不図示)で、拘束部5で長尺体4を相対的に拘束し、流体をチャンバ2に供給することで移動装置1をチャンバ形成部材3の他端部3b側から一端部3a側に向かう方向に移動し、他の拘束部6で長尺体4を相対的に拘束し、拘束部5による長尺体4の相対的な拘束を解除し且つ流体をチャンバ2から排出することで拘束部5をチャンバ形成部材3の他端部3b側から一端部3a側に向かう方向に移動し、他の拘束部6による長尺体4に対する相対的な拘束を解除できる。このようなサイクルによって支持部に対して移動装置1を効率的に移動できる。つまり、上記構成によれば、他の拘束部6により、長尺体4に対する相対的な移動装置1の効率的な移動を実現できる。
【0021】
他の拘束部6はチャンバ形成部材3の他端部3bに配置される。このような構成によれば、移動効率を向上できる。
【0022】
他の拘束部6は、縦方向においてチャンバ形成部材3の他端部3bと一体に移動する。このような構成によれば、移動効率を向上できる。
【0023】
図1(a)~
図1(d)に示すように、チャンバ形成部材3は、横断面内で長尺体4を囲繞する内筒部7と、横断面内で内筒部7を囲繞する外筒部8とを有し、内筒部7と外筒部8とによってチャンバ2を区画する。このような構成によれば、チャンバ形成部材3を簡単な構造で実現できる。しかし、移動装置1はこのような構成に限らず、例えば、チャンバ形成部材3が横断面内で長尺体4を囲繞する筒部を有し、チャンバ2が筒部と長尺体4によってチャンバ2を区画する構成とし、長尺体4とチャンバ形成部材3の他端部3bとの間にチャンバ2内からの流体の漏出を抑制するシール部を設ける構成としてもよい。
【0024】
図1(b)~
図1(c)に示すように、外筒部8は、外筒部8の中心軸線を含む縦断面内で外筒部8に沿う長さの伸縮が規制され、径方向の変形が許容される。このような構成によれば、効率の良いチャンバ構造を実現できる。このような構成は、例えば、長手方向に伸長しにくい複数の繊維が外筒部8の中心軸線に沿う軸方向に沿って伸びるように配置され、弾性材料(ゴム、エラストマーなど)に埋め込まれた構造、あるいはマッキベン式人工筋肉型アクチュエータの外筒部8のように筒状の弾性部材とその外周面を覆う筒状の網状体とで構成される構造、を有する外筒部8によって簡便に実現できる。
【0025】
図1(b)~
図1(c)に示すように、内筒部7は、径方向の変形が規制され、内筒部7の中心軸線に沿う軸方向の変形が許容される構造を有する。このような構成によれば、効率の良いチャンバ構造を実現できる。このような構成は、例えば、軸力方向に平行に伸びる中心軸線を規定する圧縮バネと、圧縮バネと同軸に配置され、圧縮バネの少なくとも外周面に接触する可撓性の筒体とを有する内筒部7によって簡便に実現できる。
【0026】
図1(b)~
図1(c)に示すように、チャンバ形成部材3は、横断面内で外筒部8を囲繞し、径方向外側への外筒部8の弾性変形を規制する少なくとも1つの規制リング9を有する。このような構成によれば、チャンバ2の膨張時の外筒部8の最大径を抑制し、良好なスペース効率を実現できる。規制リング9の数や配置、形状等は適宜設定できる。規制リング9を設けない構成としてもよい。
【0027】
長尺体4は線状体である。このような構成によれば、高いコンプライアンスと出力重量比に特徴がある人工筋型アクチュエータを利用し、線状体に対する相対的な移動を実現できる移動装置1を提供できる。なお長尺体4は線状体に限らず、例えば、棒状又は筒状などのロッドであってもよい。
【0028】
本発明は前述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0029】
したがって、前述した実施形態の移動装置1は、チャンバ2を内部に形成するチャンバ形成部材3と、縦方向に垂直な横断面内でチャンバ形成部材3によって囲繞され且つ縦方向にチャンバ形成部材3を通って伸びる長尺体4を縦方向において相対的に拘束可能且つ拘束を解除可能な拘束部5とを有し、拘束部5が長尺体4を相対的に拘束した状態で流体がチャンバ2に供給されることにより、チャンバ2が横断面内で広がるとともに縦方向に狭まることによって、縦方向においてチャンバ形成部材3の一端部3aは、チャンバ形成部材3の他端部3bに対して相対的に拘束部5を伴って近づく、移動装置1である限り変更可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 移動装置
2 チャンバ
3 チャンバ形成部材
3a 一端部
3b 他端部
4 長尺体
5 拘束部
6 他の拘束部
7 内筒部
8 外筒部
9 規制リング