(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108746
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】デバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 31/00 20060101AFI20240805BHJP
【FI】
A61M31/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013276
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100211395
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】今井 慶一
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 圭一
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA01
4C066BB03
4C066CC09
4C066DD12
4C066FF01
4C066KK17
4C066QQ15
4C066QQ94
(57)【要約】
【課題】治療物質を目的部位まで送達する技術の有用性を向上させるデバイスを提供する。
【解決手段】本開示に係るデバイスは、治療物質を目的部位まで送達するためのデバイスであって、前記目的部位にあてがわれるように構成された開口と前記開口に連なる内部空間とを区画する凹状の吸着部と、前記治療物質を前記内部空間に導入可能なように前記吸着部の前記内部空間に連通する導管を含むシャフトと、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療物質を目的部位まで送達するためのデバイスであって、
前記目的部位にあてがわれるように構成された開口と前記開口に連なる内部空間とを区画する凹状の吸着部と、
前記治療物質を前記内部空間に導入可能なように前記吸着部の前記内部空間に連通する導管を含むシャフトと、を備える、デバイス。
【請求項2】
前記吸着部は、前記吸着部の前記開口側の縁端に、前記吸着部よりもゴム硬度が低い縁端部を備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記吸着部は、前記吸着部の前記内部空間から前記吸着部の外部への流体の流れのみを許容するように構成された逆止弁を備える、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記導管は、前記治療物質を導入するための導入路と、前記吸着部の前記内部空間から流体を排出するための排出路と、を含み、
前記排出路は、前記吸着部の前記内部空間に連通する開口から他の開口への流体の流れのみを許容するように構成された逆止弁を備える、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項5】
前記治療物質は、硬化剤との混合によりゲル状に硬化するゲル基剤を含み、
前記導管は、前記ゲル基剤を含む前記治療物質を導入するための第1の導入路と、前記硬化剤を導入するための第2の導入路とを含む、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項6】
前記吸着部は、可撓性及び柔軟性を有する、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項7】
前記吸着部を収納可能な外筒を備え、
前記吸着部は、前記外筒に収容される際に、前記吸着部の前記内部空間が内側になるように湾曲するように構成されている、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記吸着部は、流体を充填可能なバルーンで構成されている、請求項1又は2に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、薬剤又は細胞などの治療物質を体腔内の臓器表面などの目的部位に送達可能なデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、損傷した生体組織などの修復のために、薬剤又は細胞などの治療物質を体腔内の臓器表面などの目的部位に直接投与する試みが行われている。このような試みの一環として、目的部位に留まり治療物質の長期徐放を可能にするゲル状の治療物質を目的部位に送達する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、ハイドロゲルを含むシェルで細胞を含むコアを被覆した体内移植用のハイドロゲルファイバが開示されている。また例えば、非特許文献1には、心膜表面にカテーテルで円状の区画を作り、ゲルを放出する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6935896号
【非特許文献1】Jose R. Garcia, Rebecca D. Levit, et. al. “A Minimally Invasive, Translational Method to Deliver Hydrogels to the Heart Through the Pericardial Space” JACC. Basic to Translational Science Vol.2 No.5 601-609
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されたようなハイドロゲルファイバでは、ファイバ状に形成されることで、ハイドロゲルの表面積が大きくなり薬剤等の長期徐放性が低下してしまい、また、目的部位に留まりにくいという課題があった。また、非特許文献1に開示されたような手法では、心膜表面が面する心膜腔には心膜液が存在するため、送達したゲルが心膜液で希釈されてしまい、目的部位において、一定の大きさのゲル塊を形成することが困難であった。そのため、治療物質を目的部位まで送達する技術の有用性の更なる向上が求められている。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本開示の目的は、治療物質を目的部位まで送達する技術の有用性を向上させるデバイスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔1〕本開示の一実施形態に係るデバイスは、治療物質を目的部位まで送達するためのデバイスであって、前記目的部位にあてがわれるように構成された開口と前記開口に連なる内部空間とを区画する凹状の吸着部と、前記治療物質を前記内部空間に導入可能なように前記吸着部の前記内部空間に連通する導管を含むシャフトと、を備える。
【0007】
〔2〕本開示の一実施形態に係るデバイスは、上記〔1〕に記載のデバイスであって、前記吸着部は、前記吸着部の前記開口側の縁端に、前記吸着部よりもゴム硬度が低い縁端部を備えることが好ましい。
【0008】
〔3〕本開示の一実施形態に係るデバイスは、上記〔1〕又は〔2〕に記載のデバイスであって、前記吸着部は、前記吸着部の前記内部空間から前記吸着部の外部への流体の流れのみを許容するように構成された逆止弁を備えることが好ましい。
【0009】
〔4〕本開示の一実施形態に係るデバイスは、上記〔1〕から〔3〕のいずれか一項に記載のデバイスであって、前記導管は、前記治療物質を導入するための導入路と、前記吸着部の前記内部空間から流体を排出するための排出路と、を含み、前記排出路は、前記吸着部の前記内部空間に連通する開口から他の開口への流体の流れのみを許容するように構成された逆止弁を備えることが好ましい。
【0010】
〔5〕本開示の一実施形態に係るデバイスは、上記〔1〕から〔4〕のいずれか一項に記載のデバイスであって、前記治療物質は、硬化剤との混合によりゲル状に硬化するゲル基剤を含み、前記導管は、前記ゲル基剤を含む前記治療物質を導入するための第1の導入路と、前記硬化剤を導入するための第2の導入路とを含むことが好ましい。
【0011】
〔6〕本開示の一実施形態に係るデバイスは、上記〔1〕から〔5〕のいずれか一項に記載のデバイスであって、前記吸着部は、可撓性及び柔軟性を有することが好ましい。
【0012】
〔7〕本開示の一実施形態に係るデバイスは、上記〔6〕に記載のデバイスであって、前記吸着部を収納可能な外筒を備え、前記吸着部は、前記外筒に収容される際に、前記吸着部の前記内部空間が内側になるように湾曲するように構成されていることが好ましい。
【0013】
〔8〕本開示の一実施形態に係るデバイスは、上記〔1〕から〔7〕のいずれか一項に記載のデバイスであって、前記吸着部は、流体を充填可能なバルーンで構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、治療物質を目的部位まで送達する技術の有用性を向上させるデバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示の一実施形態に係るデバイスの概略構成を示す概略図である。
【
図2】
図1に示されるデバイスを吸着部の開口側からの平面視で示す平面図である。
【
図3】
図2のA-A’に沿うデバイスの断面を示す断面図である。
【
図4】
図3に示される導管の吸着部の内部空間と連通する側の開口を拡大して示す拡大図である。
【
図5】
図3に示される部品を拡大して示す拡大図である。
【
図6】本開示の一実施形態に係るデバイスの第1の変形例を示す断面図である。
【
図7】本開示の一実施形態に係るデバイスの第2の変形例を示す断面図である。
【
図8】本開示の一実施形態に係るデバイスの第3の変形例を示す断面図である。
【
図9】本開示の一実施形態に係るデバイスの第4の変形例を示す断面図である。
【
図10】
図1に示されるデバイスの動作例を示すフローチャートである。
【
図11】
図1に示されるデバイスの吸着部が変形する様子を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の一実施形態に係るデバイスについて、図面を参照して説明する。各図中、同一又は相当する部分には、同一符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なる場合があることに留意されたい。
【0017】
本開示において「治療物質」とは、生体の治療効果を有する任意の物質であり、例えば、薬剤又は細胞等、またはその両方を含む。
【0018】
治療物質としての薬剤は、例えば、低分子化合物、タンパク質、プラスミド、遺伝子、成長因子、化学誘因物質、合成ポリペプチド、細胞外小胞、エクソソームなど、種々の医薬組成物が挙げられ、さらには他の治療的に有益な物質を単独で、または任意の組合せで含むこともできる。
【0019】
治療物質としての細胞は、例えば、接着細胞(付着性細胞)を含む。接着細胞は、例えば、接着性の体細胞(例えば、心筋細胞、線維芽細胞、上皮細胞、内皮細胞、肝細胞、膵細胞、腎細胞、副腎細胞、歯根膜細胞、歯肉細胞、骨膜細胞、皮膚細胞、滑膜細胞、軟骨細胞など)及び幹細胞(例えば、筋芽細胞、心臓幹細胞などの組織幹細胞、胚性幹細胞、iPS(induced pluripotent stem)細胞などの多能性幹細胞、間葉系幹細胞等)などを含む。体細胞は、幹細胞、特にiPS細胞から分化させたものであってもよい。治療物質としての細胞の非限定例としては、例えば、筋芽細胞(例えば、骨格筋芽細胞など)、間葉系幹細胞(例えば、骨髄、脂肪組織、末梢血、皮膚、毛根、筋組織、子宮内膜、胎盤、臍帯血由来のものなど)、心筋細胞、線維芽細胞、心臓幹細胞、胚性幹細胞、iPS細胞、滑膜細胞、軟骨細胞、上皮細胞(例えば、口腔粘膜上皮細胞、網膜色素上皮細胞、鼻粘膜上皮細胞など)、内皮細胞(例えば、血管内皮細胞など)、肝細胞(例えば、肝実質細胞など)、膵細胞(例えば、膵島細胞など)、腎細胞、副腎細胞、歯根膜細胞、歯肉細胞、骨膜細胞、皮膚細胞等が挙げられる。また、治療物質としての細胞は1細胞ずつ分散していてもよいし、細胞塊のような凝集体を形成していてもよい。
【0020】
治療物質は、上述した薬剤又は細胞等の主剤に加えて、基剤を含んでいてもよい。基剤は好ましくは、ゲル基剤である。これにより、治療物質が目的部位に塗布されたのち、目的部位に留まりやすい。ゲル基剤は、例えば、ヒドロゲルであるが、これに限られない。また、ゲル基剤は、送達前に既にゲル状のものであってもよい。或いは、ゲル基剤は、送達前は液状で、送達後に硬化剤との混合、加熱、時間経過、生体内に存在する物質との反応、又は紫外線照射など処理によりゲル状に硬化する、硬化前のゲル基剤であってもよい。硬化前のゲル基剤は、1液型のものであってもよく、硬化剤との混合によりゲル状に硬化する2液型のものであってもよい。1液型のゲル基剤としては、例えば、ポロキサマー、アガロース、ゼラチン、セルロース、ポリエチレングリコール(PEG)、コラーゲンなどが挙げられる。また、2液型のゲル基剤としては、例えば、アルギン酸ナトリウムと塩化カルシウム、ジェランガムと乳酸カルシウム、フィブリノゲンとヘパリンなどが挙げられる。
【0021】
さらに、治療物質は、基剤に加えて/代えて、任意の材料を含んでいてもよい。例えば、治療物質は、着色剤を含んでいてもよい。これにより、治療物質を目的部位に送達する際に、治療物質の位置が把握しやすくなる。
【0022】
本開示において、「目的部位」とは、生体における治療物質を適用する部分をいう。目的部位としては、例えば、管腔臓器における、損傷が存在する部位、或いは、損傷が存在する部位に対応する管腔壁の反対側などが挙げられる。「管腔臓器」は、体腔に収納されている内腔を有する臓器、すなわち管状又は袋状の構造を有する臓器を意味し、例えば消化管系、循環器系、尿路系、呼吸器系、女性生殖器系の臓器などが挙げられる。典型的には消化管系の臓器である。また、「管腔壁」とは、管腔臓器の管又は袋を構成する臓器壁を意味する。管腔壁には内腔に面した内側部と臓器の外表面を形成する外側部とがあり、「管腔壁の片側」という場合、管腔壁の内側又は外側のいずれかを意味し、内側に対する外側又は外側に対する内側を「反対側」という。また、片側のある領域に対して、管腔壁のちょうど反対側に位置する領域を「対応する反対側」という。ある態様においては、管腔壁の少なくとも片側に損傷を有する管腔組織において、損傷が存在する部位に対応する反対側にシート状細胞培養物を移植することにより、組織の治癒を促進することができる。例えば、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術、Endoscopic Submucosal Dissection)などの施術によって形成された損傷であっても効果があるため、これらの施術後の合併症を予防し、予後を向上させることが可能となる。
【0023】
また例えば、目的部位は、心臓の心膜であってもよい。心膜の冠微小血管障害は、血管末梢の閉塞、或いは血管周囲の炎症又は繊維化が原因とされている。冠微小血管障害の治療として、治療物質を直接心膜腔に送達することができれば、治療効果が高いと考えられる。さらに、治療物質がゲル状であることにより、治療物質に含まれる薬剤等の長期徐放が可能になり、治療効果をより高めることができる。なお、本開示において、生体は、例えば、人間であるが、これに限られない。生体は、いかなる種類の動物であってもよく、例えば、ペット又は家畜等、人間以外の動物であってもよい。また目的部位は例えば人間の体内臓器であるが、これに限られない。人間または動物から取り出された臓器でもよく、人工的に生体外で構築した臓器でもよい。
【0024】
はじめに、
図1を参照して、本開示の一実施形態に係るデバイス1の概要について説明する。
図1は、デバイス1の概略構成を示す概略図である。
【0025】
詳細については後述するが、本開示の一実施形態に係るデバイス1は、治療物質Sを目的部位Xまで送達するためのデバイス1である。デバイス1は、目的部位Xにあてがわれるように構成された開口21と開口21に連なる内部空間22とを区画する凹状の吸着部2と、治療物質Sを内部空間22に導入可能なように吸着部2の内部空間22に連通する導管31を含むシャフト3と、を備える。
【0026】
図1(A)に示されるように、デバイス1は、例えば目的部位Xである心膜に吸着部2が近接するように、体腔内に挿入される。その後、
図1(B)に示されるように、吸着部2の開口21が目的部位Xにあてがわれ、導管31を介して、吸着部2の内部空間22から心膜液等の体液が除去される。そして、
図1(C)に示されるように、導管31を介して、吸着部2の内部空間22に治療物質Sが導入される。導入後は、吸着部2が目的部位Xから離されて、デバイス1が体腔内から取り出される。
【0027】
このように、本実施形態に係るデバイス1を用いることにより、心膜などの目的部位Xが心膜液などの体液に覆われているような場合であっても、吸着部2の内部空間22から体液を除去した上で、目的部位Xに治療物質Sを導入することができる。そのため、デバイス1を用いることで、目的部位Xに治療物質Sを的確に留置させることができる。したがって、本実施形態によれば、治療物質Sを目的部位Xまで送達する技術の有用性を向上させることができる。なお、治療物質Sはゲル状であることが好ましいが、ゲル状でなくてもよい。また、治療物質Sは、吸着部2の内部空間22への導入前に既にゲル状であってもよく、吸着部2の内部空間22への導入後にゲル状に硬化するものであってもよい。
【0028】
次に、
図2及び
図3を参照して、本実施形態に係るデバイス1の概要について説明する。
図2は、デバイス1を吸着部2の開口21側からの平面視で示す平面図である。
図3は、
図2のA-A’に沿うデバイス1の断面を示す断面図である。なお、
図2及び
図3では、後述するデバイス1の変形例と区別可能なようにデバイス1Aと示されている。ただし、以降の説明において、デバイス1Aとデバイス1の他の変形例とを特に区別しない場合、デバイス1と総称する。
【0029】
図2に示されるように、デバイス1(1A)は、シャフト3と、シャフト3の一端側に設けられた吸着部2と、シャフト3及び吸着部2を収容可能な筒状の外筒4と、を備えている。
【0030】
シャフト3は、腹腔鏡下手術又は胸腔鏡下手術などにおいて、その先端部に設けられた吸着部2を体腔内に挿入して目的部位に近接させることができる長尺物である。シャフト3の材料は、硬質のものでもよく、可撓性を有するものでもよい。シャフト3が可撓性を有する材料により構成されている場合には、体腔内に挿入する経路が湾曲していても、その形態に合わせてシャフト3を湾曲させることができ、吸着部2と目的部位との相対的な角度を調節するために屈曲させることができる。さらに吸着部2と目的部位との相対的な角度を調節するために、シャフト3は、屈曲機構35を備えていてもよい。
図1及び
図2に示されるように、屈曲機構35は、シャフト3と吸着部2との間に設けられていることが好ましいが、この限りではない。屈曲機構35は、例えば、フレキシブル管又はジョイント管であるが、これらに限られない。
【0031】
シャフト3は、吸着部2の内部空間22に連通する導管31を含む。導管31には、内部に1つ以上の流路32が区画されている。
図3に示されるように、本実施形態では、導管31は、流路32として、治療物質Sを吸着部2の内部空間22に導入するための導入路32Aと、吸着部2の内部空間22から体液等の流体を排出するための排出路32Bと、を含んでいる。導入路32Aは、シャフト3の基端側で、治療物質Sを内部空間22に導入するための導入装置と接続されていてもよい。排出路32Bは、シャフト3の基端側で、体液等を吸引するための吸引装置と接続されていてもよい。導入装置及び吸引装置は、いずれも例えばポンプ又はシリンジなどであるが、これらの機器に限られない。また、排出路32Bは、吸着部2の内部空間22に連通する開口から他の開口への流体の流れのみを許容するように構成された逆止弁33を備えていてもよい。これにより、排出路32Bにおいて、吸着部2の内部空間22から外部に排出された体液等の逆流が起きにくい。
【0032】
ただし、導管31は、1つの流路32を含む構成とされてもよい。かかる場合、1つの流路32が、吸着部2の内部空間22への治療物質の導入及び吸着部2の内部空間22からの体液等の排出に兼用されてもよい。
【0033】
また、本実施形態では、
図4に示されるように、導管31の導入路32Aは、2つの導入路32A-1及び32A-2に区画されている。すなわち、導管31は、2つの導入路32A-1及び32A-2を含む構成とされている。
図4は、
図3に示される導管31の吸着部2の内部空間22と連通する側の開口34を拡大して示す拡大図である。例えば、治療物質Sがゲル基剤を含む場合、導管31は、ゲル基剤を含む治療物質Sを導入するための第1の導入路32A-1と、硬化剤を導入するための第2の導入路32A-2とを別々に備えていてもよい。これにより、ゲル基剤を含む治療物質Sと硬化剤とが、吸着部2の内部空間22で混合されて治療物質Sがゲル状に硬化するまでは、治療物質Sが液状なので、治療物質Sを目的部位Xへ導入し易くなる。導管31が2つの導入路32A-1及び32A-2を含む場合、2つの導入路32A-1及び32A-2は、
図4(A)に示されるように、導管31の開口34まで完全に分離されていてもよく、或いは、
図4(B)に示されるように、導管31の開口34付近で1つの導入路32Aとして連結されていてもよい。2つの導入路32A-1及び32A-2が導管31の開口34付近で連結されている場合、ゲル基剤を含む治療物質Sと硬化剤とを混合した状態で吸着部2の内部空間22に導入することができる。これにより、吸着部2の内部空間22への導入後に、治療物質Sをまんべんなくゲル化させることができるとともに、治療物質Sがゲル化するまでの時間を短縮することができる。
【0034】
また、本実施形態では、導管31において、導入路32A及び排出路32Bが互いに平行に導管31の延在方向に延びるように区画されているが、この限りではない。導管31が複数の流路32を含む場合、複数の流路32は、導管31の延在方向において、互いに略平行に並べて区画されてもよく、或いは、同心円状に区画されてもよい。シャフト3の外径は、特に限定されないが、例えば、2.2~25mm、好ましくは、5~15mmとすることができる。また、流路32の内径は、特に限定されないが、例えば、0.1mm~10mm、好ましくは、0.3~0.6mmとすることができる。
【0035】
再び
図3を参照して、本実施形態では、吸着部2は、開口21と開口21に連なる内部空間22とを区画する凹状の部材である。図示例では、シャフト3が吸着部2を貫通するように、吸着部2とシャフト3が接続されている。すなわち、シャフト3は、導管31の一端が吸着部2の内部空間22に突出するように、吸着部2に接続されている。これにより、治療物質Sが、吸着部2の内部空間22の中心付近に導入されやすくなる。ただし、シャフト3は、吸着部2の内部空間22に突出していなくてもよい。
【0036】
本実施形態では、
図2に示されるように、吸着部2の開口21側からの平面視において、開口21の形状が円形とされており、
図3に示されるように、開口21に垂直な平面における断面(縦断面)の形状が半球形とされている。このため、吸着部2は、お椀型の形状を有している。ただし、吸着部2の形状は、お椀型に限られない。例えば、吸着部2の開口21は、円形に限られず、楕円形又は多角形など、任意の形状とされてもよく、また、吸着部2の内部空間22の縦断面は、半球形に限られず、三角形、台形、又は弓形など、任意の形状とされてもよい。
【0037】
吸着部2の材料としては、特に限定されず、各種公知の材料を単独で又は複数組み合わせて用いることができる。このような材料としては、例えば、金属、軟質塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーンゴム、天然ゴム、合成ゴム、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン共重合体(SEPS)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ナイロンなどのポリアミド樹脂及びポリアミドエラストマー、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル樹脂及びポリエステルエラストマー、ポリエチレンなどのオレフィン系樹脂、フッ素ゴム、フッ素樹脂などが挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
吸着部2は、例えば、シリコーンゴム又はポリウレタンなどの可撓性及び柔軟性を有する材料で構成されていてもよい。すなわち、吸着部2は、可撓性及び柔軟性を有していてもよい。これにより、吸着部2が目的部位X又はその他の生体部分を傷つける蓋然性を低下させることができる。また、吸着部2が可塑性および柔軟性を有する場合、
図11に示されるように、吸着部2の内部空間22からの体液等の排出及び内部空間22への治療物質の導入に伴い、吸着部22が変形することができる。
図11は、デバイス1の吸着部22が変形する様子を示す概略図である。具体的には、吸着部2は、内部空間22から外部に体液が排出されるとともに内部空間22の体積が減少するように変形してもよい(
図11(A)~(B))。これにより、効率的に内部空間22の体液を排出することができる。さらに、吸着部2は、治療物質Sの導入により内部空間22の体積が復元するように変形することができる(
図11(C))。これにより、治療物質Sの投入量を効率的に増やすことができる。また、吸着部2が可撓性及び柔軟性を有する場合、吸着部2は、外筒4を構成する材料よりもゴム硬度が低い材料で構成されていてもよい。これにより、吸着部2を湾曲させて、外筒4に収容することができ、外筒4から露出させるとその復元性により吸着部2を展開させることができる。このため、吸着部2を収容するために必要な外筒4の内径をより小さくすることができ、デバイス1を体腔内に挿入する際の侵襲性を下げることができる。このとき、吸着部2は、外筒4に収容される際に、吸着部2の内部空間22が内側になるように湾曲するように構成されていることが好ましい。すなわち、吸着部2は、外筒4に収容された状態で、吸着部2の内部空間22が内側になるように湾曲していることが好ましい。これにより、吸着部2が、外筒4から露出された際に、吸着部2が展開しやすくなる。また、吸着部2が可撓性及び柔軟性を有する場合、吸着部2は、その表面又は内部に、例えばメッシュ状の、形状記憶合金を備えていてもよい。これにより、吸着部2の展開時における復元性を確保しやすくなる。上記の観点から、吸着部2を構成する材料のゴム硬度は、特に限定されないが、例えば、JIS K 6253で測定した際のゴム硬度がA5~A90、好ましくは、A5~A60とされてもよい。
【0039】
或いは、吸着部2は、プラスチック、ガラス、又は金属などの剛性を有する部材で構成されていてもよい。これにより、吸着部2の開口21が目的部位Xにあてがわれた際に、吸着部2が変形せず、吸着部2の内部空間22の容量を一定量以上確保することができる。これらの観点からは、吸着部2を構成する材料のゴム硬度は、特に限定されないが、例えば、JIS K 6253で測定した際のゴム硬度がA40以上、好ましくはA80以上とされてもよい。
【0040】
再び
図3を参照して、吸着部2は、吸着部2の開口21側の縁端に、吸着部2よりもゴム硬度が低い縁端部23を備えていてもよい。縁端部23は、例えば、シリコーンゴムなどの可撓性及び柔軟性を有する部材で構成されていてもよい。これにより、縁端部23が目的部位Xの表面の凹凸にフィットし、吸着部2と目的部位Xとの間に隙間が生じにくくなる。このため、吸着部2に導入された治療物質Sが外部に漏れにくくなる。また、吸着部2が縁端部23を備えていることで、吸着部2が目的部位Xに押し当てられた際に、目的部位Xが傷つく蓋然性を低下させることができる。ただし、吸着部2は、縁端部23を備えていなくてもよい。なお、
図3に示されるように、縁端部23は、吸着部2の開口21側の縁端よりも、吸着部2の内部空間22から吸着部2の外部に向けた幅Wが広くなっていてもよい。これにより、吸着部2が目的部位Xに押し当てられた際に、吸着部2と目的部位Xとの間に隙間が更に生じにくくなる。かかる観点から、縁端部23を構成する材料のゴム硬度は、特に限定されないが、例えば、JIS K 6253で測定した際のゴム硬度がA1~A50、好ましくは、A1~A30とされてもよい。
【0041】
吸着部2は、吸着部2の内部空間22から吸着部2の外部への流体の流れのみを許容するように構成された逆止弁24を備えていてもよい。これにより、吸着部2の開口21を目的部位Xに押し当てた際に、吸着部2の内部空間22から外部に体液が流出することで、吸着部2を目的部位Xに吸着しやすくなる。ただし、吸着部2は、逆止弁24を備えていなくてもよい。
【0042】
吸着部2は、上述した構成要素に限られず、更なる部品25を備えていてもよい。例えば、部品25は、治療物質Sにゲル基剤が含まれる場合にゲル基剤のゲル状への硬化を促進させる硬化装置を含んでいてもよい。例えば、硬化装置は、治療物質Sを加熱するための電熱線又はヒーター等の加熱装置、又は治療物質Sに紫外線を照射するための紫外線照射装置であるが、これらに限られない。
【0043】
また例えば、部品25は、吸着部2の内部空間22、外部、又はその両方の圧力を計測する圧力センサを含んでいてもよい。吸着部2の開口21が目的部位Xにあてがわれた状態において、吸着部2の内部空間22、外部、又はその両方の圧力の変化に基づいて、吸着部2の開口21と目的部位Xとの間に隙間があるか否かを判定することができる。例えば、
図1(B)に示されるように、吸着部2の内部空間22から流体を排出した際に、圧力センサにより計測された吸着部2の内部空間22の圧力が下がっている場合に、吸着部2の開口21と目的部位Xとの間に隙間がないと判断できる。或いは、
図1(C)に示されるように、吸着部2の内部空間22に治療物質Sを導入した際に、圧力センサにより計測された吸着部2の内部空間22の圧力が上昇した場合に、吸着部2の開口21と目的部位Xとの間に隙間がないと判断できる。
【0044】
また例えば、
図5に示されるように、部品25は、吸着部2の内部空間22に露出する電極25Aと吸着部2の外部に露出する電極25Bとを備えていてもよい。
図5は、
図3に示される部品25を拡大して示す拡大図である。吸着部2の開口21が目的部位Xにあてがわれた状態において、電極間の電気抵抗を計測することで、吸着部2の開口21と目的部位Xとの間に隙間があるか否かを判定することができる。例えば、
図1(A)に示されるように、吸着部2の内部空間22及び外部の両方に体液が存在する場合、体液を介して電極間に電流が流れるため、吸着部2の開口21が目的部位Xに接触していないと判断できる。一方で、
図1(B)に示されるように、吸着部2によって吸着部2の内部空間22と外部とが遮断された場合、電極間に電流が流れなくなるため、吸着部2の開口21と目的部位Xとの間に隙間がないと判断できる。かかる場合、吸着部2は、ゴム、プラスチック、又はガラスなど絶縁体で構成されていることが好ましい。
【0045】
なお、吸着部2は、吸着部2の外部から内部空間22を視認可能に構成されていることが好ましい。具体的には、吸着部2は、透明の部材で構成されていてもよい。これにより、吸着部2の内部空間22に導入された治療物質Sの状態をデバイス1の利用者が確認しやすくなる。ただし、吸着部2は、透明以外の部材で構成されていてもよい。
【0046】
再び
図2を参照して、外筒4は、内部に空間を有する筒状体である。外筒4は、その一端、両端、又は側面に開口部を有している。これにより、外筒4は、その内部空間に、吸着部2、シャフト3、又はその両方を収容することができる。本実施形態では、外筒4は、シャフト3を基端方向に摺動することで、シャフト3の先端側及び吸着部2を収容することができる。これにより、デバイス1を体腔内に挿入する際の侵襲性を下げることができる。外筒の材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ナイロン6,6、ポリビニルアルコール、セルロース、シリコン、ポリスチレン、ガラス、ポリアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、金属(例えば、鉄、ステンレス、アルミニウム、銅、真鍮)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
次に、
図6、
図7、
図8、及び
図9を参照して、上述したデバイス1の変形例について説明する。
図6は、デバイス1の第1の変形例であるデバイス1Bを示す断面図である。
図7は、デバイス1の第2の変形例であるデバイス1Cを示す断面図である。
図8は、デバイス1の第3の変形例であるデバイス1Dを示す断面図である。
図9は、デバイス1の第4の変形例であるデバイス1Eを示す断面図である。以下では、デバイス1の各変形例について、
図2及び
図3に示されるデバイス1Aとは異なる点を中心に説明する。なお、各変形例において、デバイス1Aと同じ構成を有する部位には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0048】
図6を参照して、デバイス1の第1の変形例であるデバイス1Bの構成について説明する。デバイス1Bでは、デバイス1Aとは異なり、シャフト3Bの導管31(及び導管31に含まれる流路32)の一端が吸着部2の内部空間22に突出しないように、シャフト3Bが吸着部2に接続されている。これにより、吸着部2の内部空間22に突出物がなくなり、治療物質Sが目的部位Xに塗布されやすくなる。
【0049】
図7を参照して、デバイス1の第2の変形例であるデバイス1Cの構成について説明する。デバイス1Cでは、デバイス1Aとは異なり、吸着部2Cが、流体を充填可能なバルーンで構成されている。吸着部2Cは、吸着部2Cを構成するバルーンの内部に流体を供給するための流体供給路26を備えていてもよい。吸着部2Aに供給される流体は、例えば、空気であるが、これに限られず、任意の気体又は液体であってもよい。これにより、流体供給路26を介して流体を供給/除去することで、吸着部2Aの形状を変形させることができる。具体的には、吸着部2Aに流体が充填されることで、吸着部2Aが展開する。一方で、吸着部2Aから流体が除去されることで、吸着部2Aがしぼみ、外筒4に収容しやすくなる。このように、吸着部2を小さく変形させることで、デバイス1を体腔内に挿入する際の侵襲性を下げることができる。なお、バルーンを構成する材料が膨張性を有し、内部に流体を充填させることで膨らむように構成されていてもよい。或いは、バルーンを構成する材料が膨張性を有さず、内部に流体を充填させることで膨らまないように構成されていてもよい。また、図示例では、流体供給路26は、シャフト3とは別体とされているが、シャフト3の導管31と共に、シャフト3に設けられていてもよい。
【0050】
図8を参照して、デバイス1の第3の変形例であるデバイス1Dの構成について説明する。デバイス1Dでは、デバイス1Aとは異なり、吸着部2Dが、シャフト3に含まれる複数の流路32のうちの少なくとも1つと連結可能に構成された流路27を備えている。吸着部2Dの流路27は、吸着部2Cの内部空間22に向けて開口する1以上の小孔28を備えている。図示例では、流路27は、複数の小孔28を備えている。
【0051】
例えば、吸着部2Dの流路27は、シャフト3に含まれる複数の流路32のうち1つの導入路32Aと連結可能に構成されてもよい。より具体的には、シャフト3が、ゲル基剤を含む治療物質Sを導入するための第1の導入路32A-1と、硬化剤を導入するための第2の導入路32A-2とを含む場合、吸着部2Dの流路27は、第2の導入路32A-2と連結可能に構成されてもよい。これにより、吸着部2の内部空間22に突出する第1の導入路32A-1を介して、内部空間22の中心付近に、ゲル基剤を含む治療物質Sが導入されたのち、第2の導入路32A-2及び流路27を介して、複数の小孔28から、硬化剤を治療物質Sに向けて導入することが可能になる。これにより、吸着部2の内部空間22において治療物質Sが偏ってゲル化することを防ぐことができる。
【0052】
或いは、吸着部2Dの流路27は、シャフト3に含まれる排出路32Bと連結可能に構成されてもよい。特に、流路27が複数の小孔28を備えていることで、流路27及び排出路32Bを介して吸着部2の内部空間22から体液等の流体をデバイス1の外部に排除する際に、流体に含まれる生体組織がいずれか1つの小孔28に詰まった場合でも、他の小孔28から継続して流体を排出することが可能になる。
【0053】
図9を参照して、デバイス1の第4の変形例であるデバイス1Eの構成について説明する。デバイス1Eは、デバイス1Aとは異なり、複数の吸着部2を備えている。これにより、複数の目的部位Xに治療物質Sを送達することが可能になる。図示例では、複数の吸着部2が、シャフト3に含まれる導管31が複数の吸着部2のそれぞれの内部空間22に連通するように、シャフト3の延在方向に並んで配置されている。ただし、複数の吸着部2は、シャフト3に含まれる導管31が複数の吸着部2のそれぞれの内部空間22に連通していればよく、任意の方法で配置されていてもよい。
【0054】
最後に、
図10を参照して、本実施形態に係るデバイス1の動作を説明する。
図10は、デバイス1の動作例を示すフローチャートである。
【0055】
図10に示されるように、ステップS101において、デバイス1の利用者は、デバイス1を体腔内に挿入し、吸着部2の開口21を目的部位Xにあてがう。このとき、吸着部2が外筒4の内部空間に収容された状態で、デバイス1が体腔内に挿入されてもよい。その後、目的部位Xの近傍で吸着部2が外筒4から露出されてもよい。これにより、デバイス1の挿入途中で吸着部2が生体に接触しにくくなる。また、このとき、デバイス1の利用者は、吸着部2の部品25に含まれる電極を動作させて、吸着部2の開口21と目的部位Xとの間に隙間がないことを確認してもよい。
【0056】
ステップS102において、デバイス1の利用者は、シャフト3の導管31を介して、吸着部2の内部空間22から体液等の液体を除去する。このとき、デバイス1の利用者は、吸着部2の部品25に含まれる圧力センサを動作させて、吸着部2の開口21と目的部位Xとの間に隙間がないことを確認してもよい。
【0057】
ステップS103において、デバイス1の利用者は、シャフト3の導管31を介して、吸着部2の内部空間22に治療物質Sを導入する。このとき、デバイス1の利用者は、吸着部2の部品25に含まれる圧力センサを動作させて、吸着部2の開口21と目的部位Xとの間に隙間がないことを確認してもよい。また、このとき、デバイス1の利用者は、吸着部2の部品25に含まれる硬化装置を動作させて、治療物質Sに含まれるゲル基剤のゲル化を促進させてもよい。治療物質Sの導入後は、デバイス1の利用者は、吸着部2を目的部位Xから離して、デバイス1を体腔内から取り出すことができる。
【0058】
なお、導管31が、流路32として、治療物質Sを吸着部2の内部空間22に導入するための導入路32Aと、吸着部2の内部空間22から体液等の流体を排出するための排出路32Bと、を含んでいる場合、ステップS102の動作とステップS103の動作とは並行して実施されてもよい。これにより、デバイス1による治療物質Sの導入時間の短縮を図れるとともに、治療物質Sのゲル化に伴い生じる液体等の排出も行うことができる。
【0059】
以上述べたように、本実施形態に係るデバイス1は、治療物質Sを目的部位Xまで送達するためのデバイス1である。デバイス1は、目的部位Xにあてがわれるように構成された開口21と開口21に連なる内部空間22とを区画する凹状の吸着部2と、治療物質Sを内部空間22に導入可能なように吸着部2の内部空間22に連通する導管31を含むシャフト3と、を備える。
【0060】
かかる構成を有するデバイス1によれば、心膜などの目的部位Xが心膜液などの体液に覆われているような場合であっても、吸着部2の内部空間22から体液を除去した上で、目的部位Xに治療物質Sを導入することができる。そのため、デバイス1を用いることで、目的部位Xに治療物質Sを的確に留置させることができる。したがって、本実施形態によれば、治療物質Sを目的部位Xまで送達する技術の有用性を向上させることができる。
【0061】
本開示を諸図面及び実施形態に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形及び修正を行うことが可能であることに注意されたい。したがって、これらの変形及び修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各実施形態に含まれる構成又は機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能である。また、各実施形態に含まれる構成又は機能などは、他の実施形態に組み合わせて用いることができ、複数の構成又は機能などを1つに組み合わせたり、分割したり、或いは一部を省略したりすることが可能である。
【0062】
例えば、上述した実施形態において説明されたデバイス1A~1Eのいずれか1つに含まれる構成要素は、他のデバイス1にも再配置することが可能である。
【0063】
また例えば、上述した実施形態において、シャフト3と吸着部2とが別体であるものとして説明したが、この限りではない。シャフト3及び吸着部2が一体として形成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本開示は、薬剤又は細胞などの治療物質を体腔内の臓器表面などの目的部位に送達可能なデバイスに関する。
【符号の説明】
【0065】
1(1A、1B、1C、1D、1E) デバイス
2(2C、2D) 吸着部
21 開口
22 内部空間
23 縁端部
24 逆止弁
25 部品
25A、25B 電極
26 流体供給路
27 流路
28 小孔
3 シャフト
31 導管
32 流路
32A(32A-1、32A-2) 導入路
32B 排出路
33 逆止弁
34 (導管の)開口
35 屈曲機構
4 外筒
S 治療物質
X 目的部位
A-A’ 切断面
W 幅