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特開2024-108750原子発振器、制御方法、制御装置、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108750
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】原子発振器、制御方法、制御装置、プログラム
(51)【国際特許分類】
   H03L 7/26 20060101AFI20240805BHJP
   H01S 1/06 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
H03L7/26
H01S1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013282
(22)【出願日】2023-01-31
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和元年度、防衛装備庁、安全保障技術研究推進制度、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124811
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 資博
(74)【代理人】
【識別番号】100088959
【弁理士】
【氏名又は名称】境 廣巳
(74)【代理人】
【識別番号】100097157
【弁理士】
【氏名又は名称】桂木 雄二
(74)【代理人】
【識別番号】100187724
【弁理士】
【氏名又は名称】唐鎌 睦
(72)【発明者】
【氏名】藤咲 貴大
(72)【発明者】
【氏名】松本 健太
(72)【発明者】
【氏名】各務 惣太
【テーマコード(参考)】
5J106
【Fターム(参考)】
5J106CC08
5J106GG02
5J106KK12
5J106KK40
5J106LL10
(57)【要約】
【課題】消費電力の抑制と周波数安定度のさらなる向上を図ることが困難であること。
【解決手段】本開示の原子発振器100は、アルカリ金属原子がそれぞれ封入された2つのガスセル101a,101bと、2つのガスセルのそれぞれに対して少なくとも2つの異なる周波数成分を有する照射光を照射する光発生器102と、2つのガスセルをそれぞれ透過した透過光を検出する光検出器103と、2つのガスセルそれぞれの透過光の光量に基づいて2つのガスセルそれぞれに対応する共鳴周波数を決定し、決定した共鳴周波数に基づいて発振周波数を制御する制御器104と、を備える。そして、2つのガスセル101a,101bは、それぞれに対応する共鳴周波数の温度に対する特性が異なるよう構成されており、さらに、制御器104は、2つのガスセルそれぞれに対応する共鳴周波数の比較結果に基づいて発振周波数を制御する、ように構成されている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属原子がそれぞれ封入された2つのガスセルと、
2つの前記ガスセルのそれぞれに対して少なくとも2つの異なる周波数成分を有する照射光を照射する光発生器と、
2つの前記ガスセルをそれぞれ透過した透過光を検出する光検出器と、
2つの前記ガスセルそれぞれの前記透過光の光量に基づいて2つの前記ガスセルそれぞれに対応する共鳴周波数を決定し、決定した前記共鳴周波数に基づいて発振周波数を制御する制御器と、を備え、
2つの前記ガスセルは、それぞれに対応する前記共鳴周波数の温度に対する特性が異なるよう構成されており、
前記制御器は、2つの前記ガスセルそれぞれに対応する前記共鳴周波数の比較結果に基づいて前記発振周波数を制御する、
原子発振器。
【請求項2】
請求項1に記載の原子発振器であって、
前記制御器は、2つの前記ガスセルそれぞれに対応する前記共鳴周波数の差に基づいて前記発振周波数を制御する、
原子発振器。
【請求項3】
請求項2に記載の原子発振器であって、
前記制御器は、2つの前記ガスセルそれぞれに対応する前記共鳴周波数の差に基づいて、前記ガスセルに封入された前記アルカリ金属原子の温度変化に対する前記共鳴周波数の変動量を算出し、算出した前記変動量に応じて前記発振周波数を制御する、
原子発振器。
【請求項4】
請求項2に記載の原子発振器であって、
前記制御器は、一方の前記ガスセルに対応する前記共鳴周波数と、予め設定された第一パラメータと、に基づいて前記発振周波数を制御すると共に、2つの前記ガスセルそれぞれに対応する前記共鳴周波数の差に基づいて前記第一パラメータを変更し、変更した前記第一パラメータと前記一方のガスセルに対応する前記共鳴周波数とに基づいて前記発振周波数を制御する、
原子発振器。
【請求項5】
請求項4に記載の原子発振器であって、
前記制御器は、前記発振周波数と、予め設定された第二パラメータと、に基づいて前記照射光の基準となる基準信号を生成するよう制御すると共に、2つの前記ガスセルそれぞれに対応する前記共鳴周波数の差に基づいて前記第二パラメータを変更し、変更した前記第二パラメータと前記発振周波数とに基づいて前記基準信号を生成するよう制御する、
原子発振器。
【請求項6】
請求項1に記載の原子発振器であって、
2つの前記ガスセルは、温度変化に対する前記共鳴周波数の変動量が異なるよう構成されている、
原子発振器。
【請求項7】
請求項1に記載の原子発振器であって、
2つの前記ガスセルは、種類または圧力が異なるバッファガスがそれぞれ封入されて構成されている、
原子発振器。
【請求項8】
アルカリ金属原子がそれぞれ封入された2つのガスセルと、
2つの前記ガスセルのそれぞれに対して少なくとも2つの異なる周波数成分を有する照射光を照射する光発生器と、
2つの前記ガスセルをそれぞれ透過した透過光を検出する光検出器と、
2つの前記ガスセルそれぞれの前記透過光の光量に基づいて2つの前記ガスセルそれぞれに対応する共鳴周波数を決定し、決定した前記共鳴周波数に基づいて発振周波数を制御する制御装置と、
を備えた原子発振器の制御方法であって、
2つの前記ガスセルは、それぞれに対応する前記共鳴周波数の温度に対する特性が異なるよう構成されており、
前記制御装置は、2つの前記ガスセルそれぞれに対応する前記共鳴周波数の比較結果に基づいて前記発振周波数を制御する、
制御方法。
【請求項9】
アルカリ金属原子がそれぞれ封入された2つのガスセルと、
2つの前記ガスセルのそれぞれに対して少なくとも2つの異なる周波数成分を有する照射光を照射する光発生器と、
2つの前記ガスセルをそれぞれ透過した透過光を検出する光検出器と、
2つの前記ガスセルそれぞれの前記透過光の光量に基づいて2つの前記ガスセルそれぞれに対応する共鳴周波数を決定し、決定した前記共鳴周波数に基づいて発振周波数を制御する制御装置と、
を備えた原子発振器の前記制御装置であって、
2つの前記ガスセルは、それぞれに対応する前記共鳴周波数の温度に対する特性が異なるよう構成されており、
前記制御装置は、2つの前記ガスセルそれぞれに対応する前記共鳴周波数の比較結果に基づいて前記発振周波数を制御する、
制御装置。
【請求項10】
アルカリ金属原子がそれぞれ封入された2つのガスセルと、
2つの前記ガスセルのそれぞれに対して少なくとも2つの異なる周波数成分を有する照射光を照射する光発生器と、
2つの前記ガスセルをそれぞれ透過した透過光を検出する光検出器と、
2つの前記ガスセルそれぞれの前記透過光の光量に基づいて2つの前記ガスセルそれぞれに対応する共鳴周波数を決定し、決定した前記共鳴周波数に基づいて発振周波数を制御する制御装置と、
を原子発振器が備えており、
2つの前記ガスセルは、それぞれに対応する前記共鳴周波数の温度に対する特性が異なるよう構成されており、
前記制御装置に、2つの前記ガスセルそれぞれに対応する前記共鳴周波数の比較結果に基づいて前記発振周波数を制御する、
処理を実行させるためのプログラム。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子発振器、制御方法、制御装置、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
原子発振器は、原子の固有周波数を基準にして正確な時間を測定する装置である。小型の原子時計では、アルカリ金属原子ガスに2つの周波数の励起光を照射した際に生じる量子干渉効果であるCPT(Coherent Population Trapping)を原子発振器の発振原理として利用して、原子の固有周波数を測定することが主流である。CPTでは、2つの励起光の周波数の差がアルカリ金属の基底準位間の遷移周波数に一致したときに、励起光の吸収が起こらずに透過光量が増加する。CPTを動作原理とする原子発振器では、2つの励起光の周波数の差を掃引し、透過光量が最大となる周波数の差である共鳴周波数を原子の固有周波数としている。この原子の固有周波数を長期間にわたって安定して取得できるかどうかが、原子発振器の性能指標の一つとなる。
【0003】
ここで、上述した原子発振器において、性能低下の1つの要因として、アルカリ金属原子ガスの温度変化によって共鳴周波数が変動する温度シフトがある。つまり、発振器内部の温度変化が生じると、原子の光遷移特性が変動し、発振周波数の安定度が低下する。このような問題に対して、特許文献1には、アルカリ金属セルの外部に、測温素子とヒータとを備えることが記載されている。これにより、特許文献1では、アルカリ金属セルの温度情報を用いて、セルをヒータにて加熱することで、アルカリ金属セルの温度を一定とすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-011680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1の原子発振器では、まず、ヒータを加熱するための消費電力が増大するという問題が生じる。また、測温素子にてアルカリ原子セルの外部の温度を計測する場合、原子そのものの温度を計測しておらず、周波数安定度のさらなる向上を図ることができない。さらに、特許文献1の原子発振器では、ヒータや測温素子に対する配線が必要となり、かかる配線が発する磁場が周波数に影響を及ぼす可能性もあり、周波数安定度のさらなる向上を図ることができない。
【0006】
このため、本開示の目的は、上述した課題である、消費電力の抑制と周波数安定度のさらなる向上を図ることが困難である、ことを解決することができる原子発振器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一形態である原子発振器は、
アルカリ金属原子がそれぞれ封入された2つのガスセルと、
2つの前記ガスセルのそれぞれに対して少なくとも2つの異なる周波数成分を有する照射光を照射する光発生器と、
2つの前記ガスセルをそれぞれ透過した透過光を検出する光検出器と、
2つの前記ガスセルそれぞれの前記透過光の光量に基づいて2つの前記ガスセルそれぞれに対応する共鳴周波数を決定し、決定した前記共鳴周波数に基づいて発振周波数を制御する制御器と、を備え、
2つの前記ガスセルは、それぞれに対応する前記共鳴周波数の温度に対する特性が異なるよう構成されており、
前記制御器は、2つの前記ガスセルそれぞれに対応する前記共鳴周波数の比較結果に基づいて前記発振周波数を制御する、
という構成をとる。
【0008】
本開示の一形態である制御方法は、
アルカリ金属原子がそれぞれ封入された2つのガスセルと、
2つの前記ガスセルのそれぞれに対して少なくとも2つの異なる周波数成分を有する照射光を照射する光発生器と、
2つの前記ガスセルをそれぞれ透過した透過光を検出する光検出器と、
2つの前記ガスセルそれぞれの前記透過光の光量に基づいて2つの前記ガスセルそれぞれに対応する共鳴周波数を決定し、決定した前記共鳴周波数に基づいて発振周波数を制御する制御装置と、
を備えた原子発振器の制御方法であって、
2つの前記ガスセルは、それぞれに対応する前記共鳴周波数の温度に対する特性が異なるよう構成されており、
前記制御装置は、2つの前記ガスセルそれぞれに対応する前記共鳴周波数の比較結果に基づいて前記発振周波数を制御する、
という構成をとる。
【0009】
本開示の一形態である制御装置は、
アルカリ金属原子がそれぞれ封入された2つのガスセルと、
2つの前記ガスセルのそれぞれに対して少なくとも2つの異なる周波数成分を有する照射光を照射する光発生器と、
2つの前記ガスセルをそれぞれ透過した透過光を検出する光検出器と、
2つの前記ガスセルそれぞれの前記透過光の光量に基づいて2つの前記ガスセルそれぞれに対応する共鳴周波数を決定し、決定した前記共鳴周波数に基づいて発振周波数を制御する制御装置と、
を備えた原子発振器の前記制御装置であって、
2つの前記ガスセルは、それぞれに対応する前記共鳴周波数の温度に対する特性が異なるよう構成されており、
前記制御装置は、2つの前記ガスセルそれぞれに対応する前記共鳴周波数の比較結果に基づいて前記発振周波数を制御する、
という構成をとる。
【0010】
本開示の一形態であるプログラムは、
アルカリ金属原子がそれぞれ封入された2つのガスセルと、
2つの前記ガスセルのそれぞれに対して少なくとも2つの異なる周波数成分を有する照射光を照射する光発生器と、
2つの前記ガスセルをそれぞれ透過した透過光を検出する光検出器と、
2つの前記ガスセルそれぞれの前記透過光の光量に基づいて2つの前記ガスセルそれぞれに対応する共鳴周波数を決定し、決定した前記共鳴周波数に基づいて発振周波数を制御する制御装置と、
を原子発振器が備えており、
2つの前記ガスセルは、それぞれに対応する前記共鳴周波数の温度に対する特性が異なるよう構成されており、
前記制御装置に、2つの前記ガスセルそれぞれに対応する前記共鳴周波数の比較結果に基づいて前記発振周波数を制御する、
処理を実行させる、
という構成をとる。
【発明の効果】
【0011】
本開示は、以上のように構成されることにより、消費電力を抑制しつつ、周波数安定度のさらなる向上を図ることができる原子発振器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の第1の実施形態における原子発振器の構成を示すブロック図である。
図2図1に開示した原子発振器の各構成から出力される信号を示す図である。
図3図1に開示した原子発振器の特性を示す図である。
図4図1に開示した原子発振器の特性を示す図である。
図5図1に開示した原子発振器の処理の様子を示す図である。
図6図1に開示した原子発振器の処理動作を示すフローチャートである。
図7】本開示の実施形態2における原子発振器の構成を示すブロック図である。
図8】本開示の実施形態2における原子発振器の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態1>
本開示の第1の実施形態を、図1乃至図6を参照して説明する。図1乃至図5は、原子発振器の構成を説明するための図であり、図6は、原子発振器の動作を説明するための図である。
【0014】
[構成]
図1に、本実施形態における原子発振器の構成をブロック図で示す。本実施形態における原子発振器は、光発生器1と、2つのガスセル21,22と、光検出器3と、制御器4と、VCXO(電圧制御水晶発振器)51と、周波数変換器52と、電流変調器53と、を備える。そして、光発生器1は、レーザー11を備える。また、制御器4は、共鳴周波数及び温度シフト量算出器41と、電流変調器制御部42と、レーザー制御部43と、周波数変換器制御部44と、VCXO制御部45と、を備える。なお、制御器4は、演算装置及び記憶装置を備えた情報処理装置(制御装置)で構成されており、制御器4の各部41~45は、演算装置にプログラムが実行されることで実現される。以下、各構成について詳述する。
【0015】
光発生器1は、制御器4、VCXO51、周波数変換器52、電流変調器53と協働することで、単一波長の励起光から周波数変調を行うことで少なくとも2つの異なる周波数成分を有する2つの励起光(照射光)を生成して、2つのガスセル21,22にそれぞれ照射するものである。ここで、図2に、原子発振器の各構成から出力される信号を示す。この図に示すように、周波数変換器制御部44から予め設定された電流変調周波数変換係数及び出力周波数変換係数が出力され、VCXO制御部45から出力周波数変換係数に基づいたVCXO発振電圧が出力されることで、VCXO51から出力され外部出力となる出力周波数信号の発振周波数が制御される。また、VCXO51から出力される出力周波数信号は、周波数変換器52にて電流変調周波数変換係数に基づいて周波数変換され、例えば、セシウム原子の基底準位間の遷移周波数に相当する9.2GHz付近の電流変調周波数信号が出力される。そして、電流変調器制御部42から出力された電流変調器53の設定値に応じて、レーザー制御部43から出力されたレーザー駆動電流を電流変調器53にて変調することで、変調されたレーザー駆動電流にてレーザー11を駆動する。これにより、光発生器1にて2つの異なる周波数の励起光が生成されると共に、電流変調器53の設定値が変化されることで、上記2つの励起光の周波数の差が9.2GHz付近で掃引され、2つのガスセル21,22にそれぞれ照射されることとなる。なお、原子発振器の光発生器1によって励起光を生成する構成や方法は既知であるため、その詳細な説明は省略することとする。
【0016】
ここで、上述した「電流変調周波数変換係数」及び「出力周波数変換係数」は、それぞれ値が予め設定されており、周波数変換器制御部44に記憶されている。但し、本実施形態では、後述するように共鳴周波数の温度シフト量を算出し、かかる温度シフト量に応じた「電流変調周波数変換係数」及び「出力周波数変換係数」の値に変更することとなる。これについては後述する。
【0017】
次に、2つのガスセル21,22について説明する。本実施形態における原子発振器は、アルカリ金属原子が封入されたガスセルを2つ備えている。具体的に、原子発振器は、まず、上述したようにCPTを原子発振器の発振原理として利用して、原子の固有周波数を測定するために使用するガスセルである周波数測定用ガスセル21を備えている。これに加え、本実施形態では、さらに温度測定用ガスセル22を備える。
【0018】
ここで、2つのガスセル21,22に封入されるアルカリ金属原子は、セシウム原子、ルビジウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子などのいかなるアルカリ金属原子であってもよい。但し、2つのガスセル21,22は、それぞれに対応する共鳴周波数の温度に対する特性が異なるよう構成されている。ここで、一例として、アルカリ金属原子がセシウム原子、バッファガスが窒素である場合の共鳴周波数のシフト量(変動量)と温度との関係を図3に示し、共鳴周波数のシフト量fRes(Hz)の算出式を数1式に示す。
【数1】
P:ガス圧(torr)
T:温度(℃)
δ:窒素の場合は、0.824Hz/(℃・torr)
γ:窒素の場合は、-0.00251Hz/(℃・torr)
c:定数
【0019】
上記δ,γ,cは、バッファガスの種類によって決まった値である。このため、周波数測定用ガスセル21と温度測定用ガスセル22とに封入するバッファガスの種類やガス圧を変えることで、2つのガスセル21,22における温度変化に対する共鳴周波数の変動量が異なるよう構成することができる。本実施形態では、図4に示すように、周波数測定用ガスセル21と温度測定用ガスセル22とに封入するバッファガスの種類を変えて構成している。一例として、周波数測定用ガスセル21には、図4の符号A1に示す19torr,Ar/N混合ガス(PAr/PN2=0.62)を使用し、温度測定用ガスセル22には、図4の符号A2に示す30torr,Nガスを使用する。なお、図4の符号A1,A2に示すバッファガスは、論文「Temperature and pressure shift of the Cs clock transition in the presence of buffer gases: Ne,N2, Ar, Phys. Rev. A83, 062714」に記載されているものである。また、両ガスセルにはセシウムが封入されている。これにより、周波数測定用ガスセル21における25~50℃での温度変化に対する共鳴周波数の変動量が「-0.6Hz/℃」となり、温度測定用ガスセル22における25~50℃での温度変化に対する共鳴周波数の変動量が「20Hz/℃」となり、それぞれの共鳴周波数の温度依存性が異なるよう構成される。
【0020】
光検出器3は、上述した2つのガスセル21,22をそれぞれ透過した透過光を検出し、その透過光量を測定する。このとき、周波数変調時の設定値が変更されながら励起光が照射されるため、光検出器3は、測定した透過光量を、変更されたそれぞれの設定値つまり掃引された周波数差と対応づけて記録されるよう制御器4に渡す。これにより、光検出器3は、図5の符号B1に示すように、周波数測定用ガスセル21に対応する周波数差に対する透過光量のグラフ(符号f1が付された左側のグラフ)と、温度測定用ガスセル22に対応する周波数差に対する透過光量のグラフ(符号f2が付された右側のグラフ)と、が制御器4にて記録されるよう計測する。
【0021】
制御器4の共鳴周波数及び温度シフト量算出器41は、光検出器3から渡された各ガスセル21,22それぞれに対応する透過光量に基づいて、各ガスセル21,22にそれぞれ対応する共鳴周波数を決定する。つまり、共鳴周波数及び温度シフト量算出器41は、周波数測定用ガスセル21に対応する共鳴周波数f1と、温度測定用ガスセル22に対応する共鳴周波数f2と、をそれぞれ決定する。例えば、共鳴周波数及び温度シフト量算出器41は、図4の符号B1に示す各グラフにおいて、それぞれ透過光量が最大となる差周波数を共鳴周波数f1,f2としてもよく、透過光量の微分波形測定によって、周波数差に対する透過光量グラフの傾きがゼロとなる差周波数を共鳴周波数としてもよい。
【0022】
そして、制御器4は、決定した周波数測定用ガスセル21に対応する共鳴周波数f1に基づいて発振周波数を制御する。具体的に、制御器4は、周波数測定用ガスセル21(一方のガスセル)に対応する共鳴周波数f1と、周波数変換器制御部44に予め記憶されている出力周波数変換係数(第一パラメータ)と、に基づいて、VCXO制御部45にてVCXO51により出力する出力周波数信号の発振周波数を制御する。ここで、一例として、原子発振器においてVCXO51にて10MHzの出力周波数信号を出力することを想定していることとし、決定した周波数測定用ガスセル21の共鳴周波数f1が「9.192631GHz」であり、予め設定された出力周波数変換係数が「(10MHz)/(9.192631GHz)」であることとする。この場合、VCXO51からは、(9.192631GHz)*(10MHz)/(9.192631GHz)=10MHzの出力周波数信号が出力されることとなる。これにより、原子発振器からは、10MHzの出力周波数信号が外部出力されると共に、周波数変換器52に入力されることとなる。また、このとき、予め設定された電流変調周波数変換係数(第二パラメータ)が「(9.192631GHz)/(10MHz)」であるとすると、周波数変換器52からは、(10MHz)*(9.192631GHz)/(10MHz)=9.192631GHzの電流変調周波数信号が生成され、つまり、照射光の基準となる基準信号が生成されることとなり、電流変調器53に入力される。なお、出力周波数変換係数及び電流変調周波数変換係数の値は、原子発振器においてVCXO51にて出力することを想定している出力周波数信号の発振周波数と、図4に示すような周波数測定用ガスセル21と温度測定用ガスセル22との共鳴周波数のシフト量及び温度の特性と、に基づいて予め設定されて記憶されている。
【0023】
ここで、本実施形態における制御器4は、さらに、周波数測定用ガスセル21と温度測定用ガスセル22との温度変化による共鳴周波数f1,f2の変動に対応すべく、以下に説明するように、決定した周波数測定用ガスセル21と温度測定用ガスセル22との共鳴周波数f1,f2の比較結果に基づいて、発振周波数を制御するよう構成されている。
【0024】
共鳴周波数及び温度シフト量算出器41は、決定した周波数測定用ガスセル21と温度測定用ガスセル22との共鳴周波数f1,f2の差を算出し、かかる共鳴周波数f1,f2の差に基づいて温度変化に対する共鳴周波数の変動量である温度シフト量を算出する。具体的に、まず、共鳴周波数及び温度シフト量算出器41は、図5の符号B2に示すような、周波数測定用ガスセル21と温度測定用ガスセル22との共鳴周波数f1,f2のシフト量の差(f2-f1)と、温度Tと、の関係を表すグラフを予め記憶している。なお、図5の符号B2に示すようなグラフは、図4の符号A1,A2に示すような周波数測定用ガスセル21と温度測定用ガスセル22との共鳴周波数のシフト量及び温度の特性に基づいて予め作成されて記憶されている。これに加え、共鳴周波数及び温度シフト量算出器41は、温度Tと、周波数測定用ガスセル21と温度測定用ガスセル22との共鳴周波数f1,f2それぞれの変動量である温度シフト量と、の関係を表すグラフを記憶している。具体的に、温度Tに対する温度シフト量のグラフは、温度Tと出力周波数変換係数との対応表、及び、温度Tと電流変調周波数変換係数との対応表、によって表されており、かかる対応表が予め生成されて記憶されている。なお、温度Tと出力周波数変換係数との対応表、及び、温度Tと電流変調周波数変換係数との対応表は、原子発振器においてVCXO51にて出力することを想定している出力周波数信号の発振周波数と、図4に示すような周波数測定用ガスセル21と温度測定用ガスセル22との共鳴周波数のシフト量及び温度の特性と、に基づいて予め生成されて記憶されている。
【0025】
これにより、共鳴周波数及び温度シフト量算出器41は、記憶されているグラフや対応表に基づいて、計測した周波数測定用ガスセル21と温度測定用ガスセル22との共鳴周波数f1,f2の差(f2-f1)から温度Tを特定し、かかる温度Tから出力周波数変換係数と電流変調周波数変換係数とを特定する。共鳴周波数及び温度シフト量算出器41は、周波数変換器制御部44に記憶されている出力周波数変換係数と電流変調周波数変換係数とを、新たに特定した出力周波数変換係数と電流変調周波数変換係数とに変更して更新することで温度補正を行う。
【0026】
そして、制御器4は、温度補正により更新した出力周波数変換係数と電流変調周波数変換係数とを用いて、上述同様に、決定した周波数測定用ガスセル21に対応する共鳴周波数f1に基づいて発振周波数を制御する。ここで、一例として、周波数測定用ガスセル21の共鳴周波数f1が温度シフトにより、「9.192631GHz」から「9.192632GHz」に変動した場合において、上述した出力周波数変換係数と電流変調周波数変換係数とを温度補正しない場合と、温度補正した場合について説明する。
【0027】
まず、温度補正しない場合には、出力周波数変換係数は「(10MHz)/(9.192631GHz)」のままであり、温度シフトした周波数測定用ガスセル21の共鳴周波数(9.192632GHz)を用いて、VCXO51からは、(9.192632GHz)*(10MHz)/(9.192631GHz)=10.0000011MHzの出力周波数信号が出力されることとなる。また、電流変調周波数変換係数は「(9.192631GHz)/(10MHz)」のままであり、周波数変換器52からは、(10.0000011MHz)*(9.192631GHz)/(10MHz)=9.192632GHzの電流変調周波数信号が出力されることとなる。このため、原子発振器は、「9.192631GHz」で励起光を周波数変調して、「10MHz」の出力周波数信号を外部出力しているつもりが、実際には、「9.192632GHz」で周波数変調して、「10.0000011MHz」の出力周波数信号を外部出力していることとなる。
【0028】
これに対して、温度補正した場合には、出力周波数変換係数は「(10MHz)/(9.192632GHz)」に更新され、温度シフトした周波数測定用ガスセル21の共鳴周波数(9.192632GHz)を用いて、VCXO51からは、(9.192632GHz)*(10MHz)/(9.192632GHz)=10MHzの出力周波数信号が出力されることとなる。また、電流変調周波数変換係数は「(9.192632GHz)/(10MHz)」に更新され、周波数変換器52からは、(10MHz)*(9.192632GHz)/(10MHz)=9.192632GHzの電流変調周波数信号が出力されることとなる。このため、原子発振器は、共鳴周波数である「9.192632GHz」で励起光を周波数変調して、「10MHz」の出力周波数信号を外部出力することとなる。
【0029】
なお、制御器4は、上述した温度Tと出力周波数変換係数との対応表、及び、温度Tと電流変調周波数変換係数との対応表に替えて、共鳴周波数f1,f2の差と、出力周波数変換係数あるいは電流変調周波数変換係数と、の対応表を記憶していてもよく、共鳴周波数f1,f2の差と、各共鳴周波数f1,f2の変動量と、の対応表や、共鳴周波数f1,f2の差から各共鳴周波数f1,f2の変動量を算出する式を記憶していてもよい。そして、制御器4は、これら対応表や算出式を基に、上述した共鳴周波数f1,f2の差から各共鳴周波数の温度シフト量を算出し、かかる値に基づいて発振周波数を制御してもよい。
【0030】
[動作]
次に、上述した原子発振器の動作、特に、共鳴周波数の温度シフトを補正するときの動作を、図6のフローチャートを参照して説明する。
【0031】
まず、制御器4により各種設定値を設定して光発生器1にて少なくとも2つの異なる周波数成分を有する励起光を生成する。このとき、制御器4の電流変調器制御部42にて、変調周波数を例えばセシウム原子の基底準位間の遷移周波数に相当する9.2GHz付近で変化させて掃引する(ステップS1)。
【0032】
そして、光発生器1で生成した励起光を2つのガスセル21,22にそれぞれ照射して、透過光を光検出器3で検出する(ステップS2)。このとき、制御器4は、計測された透過光量を、変調周波数と関連付けて記憶しておく(ステップS3)。そして、変調周波数の掃引及び透過光量の計測が完了するまで上記処理を繰り返す(ステップS4でNo、ステップS7)。
【0033】
制御器4は、掃引した変調周波数における透過光量の計測が完了した後の任意のタイミングで(ステップS4でYes)、以下のようにして温度補正を行う。まず、制御器4は、光検出器3から渡された各ガスセル21,22それぞれに対応する透過光量に基づいて、各ガスセル21,22にそれぞれ対応する共鳴周波数f1,f2を決定する。そして、制御器4は、決定した周波数測定用ガスセル21と温度測定用ガスセル22との共鳴周波数f1,f2の差を算出し、かかる共鳴周波数f1,f2の差に基づいて温度変化に対する共鳴周波数の変動量である温度シフト量を算出する(ステップS5)。例えば、制御器4は、図5の符号B2に示すような、周波数測定用ガスセル21と温度測定用ガスセル22との共鳴周波数f1,f2のシフト量の差と、温度Tと、の関係を表すグラフに基づいて、温度Tを特定する。さらに、制御器4は、温度Tと出力周波数変換係数との対応表、及び、温度Tと電流変調周波数変換係数との対応表、に基づいて、特定した温度Tに対応する出力周波数変換係数と電流変調周波数変換係数とを特定する。
【0034】
そして、制御器4は、記憶されている出力周波数変換係数と電流変調周波数変換係数とを、新たに特定した出力周波数変換係数と電流変調周波数変換係数とに変更して更新する(ステップS6)。その後、原子発振器は、温度補正により更新した出力周波数変換係数と電流変調周波数変換係数とを用いてVCXO45からの発振周波数を制御することで、温度シフトに適切に対応することができる。
【0035】
以上のように、本開示の原子発振器によると、アルカリ金属原子ガスの温度変化によって共鳴周波数が変動する温度シフトに適切に対応することができ、周波数安定度の向上を図ることができる。このとき、特許文献1に記載のように追加の素子でガスセルの外部を測温することなく、ヒータを用いることもないため、配線や消費電力の増加を抑制しつつ、周波数安定度のさらなる向上を図ることができる。つまり、本願発明では、2つのガスセルそれぞれに対応する共鳴周波数の差に基づいて発振周波数に関するパラメータを設定することで、温度変化によって共鳴周波数が変動する温度シフトが生じていても、かかるシフト量に対応して発振周波数を制御することができ、周波数安定度の向上を図ることができる。
【0036】
<実施形態2>
次に、本発明の第2の実施形態を、図7乃至図8を参照して説明する。図7は、実施形態2における原子発振器の構成を示すブロック図であり、図8は、原子発振器の動作を示すフローチャートである。なお、本実施形態では、上述した実施形態で説明した原子発振器及び制御方法の構成の概略を示している。
【0037】
図7に示すように、本実施形態における原子発振器100は、アルカリ金属原子がそれぞれ封入された2つのガスセル101a,101bと、2つのガスセルのそれぞれに対して、少なくとも2つの異なる周波数成分を有する照射光を照射する光発生器102と、2つのガスセルをそれぞれ透過した透過光を検出する光検出器103と、2つのガスセルそれぞれの透過光の光量に基づいて2つのガスセルそれぞれに対応する共鳴周波数を決定し、決定した共鳴周波数に基づいて発振周波数を制御する制御器104と、を備える。そして、2つのガスセル101a,101bは、それぞれに対応する共鳴周波数の温度に対する特性が異なるよう構成されており、さらに、制御器104は、2つのガスセルそれぞれに対応する共鳴周波数の比較結果に基づいて発振周波数を制御する、ように構成されている。
【0038】
そして、上記構成の制御器104(制御装置)は、図8に示すように、共鳴周波数の温度に対する特性が異なる2つのガスセル101a,101bにおいて、それぞれ共鳴周波数を決定し(ステップS101)、2つのガスセルそれぞれに対応する共鳴周波数の比較結果に基づいて発振周波数を制御する(ステップS102)、処理を実行する。なお、上記制御器104による処理は、制御器104を構成する演算装置がプログラムを実行することで実現される。
【0039】
以上のように、本開示における原子発振器では、共鳴周波数の温度に対する特性が異なる2つのガスセルの共鳴周波数の比較結果に基づいて発振周波数を制御している。これにより、原子発振器における構成部品や消費電力の増加を抑制しつつ、周波数安定度のさらなる向上を図ることができる。
【0040】
以上、上記実施形態等を参照して本願発明を説明したが、本願発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明の範囲内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【0041】
<付記>
上記実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうる。以下、本発明における原子発振器、制御方法、制御装置、プログラムの構成の概略を説明する。但し、本発明は、以下の構成に限定されない。
(付記1)
アルカリ金属原子がそれぞれ封入された2つのガスセルと、
2つの前記ガスセルのそれぞれに対して少なくとも2つの異なる周波数成分を有する照射光を照射する光発生器と、
2つの前記ガスセルをそれぞれ透過した透過光を検出する光検出器と、
2つの前記ガスセルそれぞれの前記透過光の光量に基づいて2つの前記ガスセルそれぞれに対応する共鳴周波数を決定し、決定した前記共鳴周波数に基づいて発振周波数を制御する制御器と、を備え、
2つの前記ガスセルは、それぞれに対応する前記共鳴周波数の温度に対する特性が異なるよう構成されており、
前記制御器は、2つの前記ガスセルそれぞれに対応する前記共鳴周波数の比較結果に基づいて前記発振周波数を制御する、
原子発振器。
(付記2)
付記1に記載の原子発振器であって、
前記制御器は、2つの前記ガスセルそれぞれに対応する前記共鳴周波数の差に基づいて前記発振周波数を制御する、
原子発振器。
(付記3)
付記2に記載の原子発振器であって、
前記制御器は、2つの前記ガスセルそれぞれに対応する前記共鳴周波数の差に基づいて、前記ガスセルに封入された前記アルカリ金属原子の温度変化に対する前記共鳴周波数の変動量を算出し、算出した前記変動量に応じて前記発振周波数を制御する、
原子発振器。
(付記4)
付記2又は3に記載の原子発振器であって、
前記制御器は、一方の前記ガスセルに対応する前記共鳴周波数と、予め設定された第一パラメータと、に基づいて前記発振周波数を制御すると共に、2つの前記ガスセルそれぞれに対応する前記共鳴周波数の差に基づいて前記第一パラメータを変更し、変更した前記第一パラメータと前記一方のガスセルに対応する前記共鳴周波数とに基づいて前記発振周波数を制御する、
原子発振器。
(付記5)
付記4に記載の原子発振器であって、
前記制御器は、前記発振周波数と、予め設定された第二パラメータと、に基づいて前記照射光の基準となる基準信号を生成するよう制御すると共に、2つの前記ガスセルそれぞれに対応する前記共鳴周波数の差に基づいて前記第二パラメータを変更し、変更した前記第二パラメータと前記発振周波数とに基づいて前記基準信号を生成するよう制御する、
原子発振器。
(付記6)
付記1乃至5のいずれかに記載の原子発振器であって、
2つの前記ガスセルは、温度変化に対する前記共鳴周波数の変動量が異なるよう構成されている、
原子発振器。
(付記7)
付記1乃至6のいずれかに記載の原子発振器であって、
2つの前記ガスセルは、種類または圧力が異なるバッファガスがそれぞれ封入されて構成されている、
原子発振器。
(付記8)
アルカリ金属原子がそれぞれ封入された2つのガスセルと、
2つの前記ガスセルのそれぞれに対して少なくとも2つの異なる周波数成分を有する照射光を照射する光発生器と、
2つの前記ガスセルをそれぞれ透過した透過光を検出する光検出器と、
2つの前記ガスセルそれぞれの前記透過光の光量に基づいて2つの前記ガスセルそれぞれに対応する共鳴周波数を決定し、決定した前記共鳴周波数に基づいて発振周波数を制御する制御装置と、
を備えた原子発振器の制御方法であって、
2つの前記ガスセルは、それぞれに対応する前記共鳴周波数の温度に対する特性が異なるよう構成されており、
前記制御装置は、2つの前記ガスセルそれぞれに対応する前記共鳴周波数の比較結果に基づいて前記発振周波数を制御する、
制御方法。
(付記9)
アルカリ金属原子がそれぞれ封入された2つのガスセルと、
2つの前記ガスセルのそれぞれに対して少なくとも2つの異なる周波数成分を有する照射光を照射する光発生器と、
2つの前記ガスセルをそれぞれ透過した透過光を検出する光検出器と、
2つの前記ガスセルそれぞれの前記透過光の光量に基づいて2つの前記ガスセルそれぞれに対応する共鳴周波数を決定し、決定した前記共鳴周波数に基づいて発振周波数を制御する制御装置と、
を備えた原子発振器の前記制御装置であって、
2つの前記ガスセルは、それぞれに対応する前記共鳴周波数の温度に対する特性が異なるよう構成されており、
前記制御装置は、2つの前記ガスセルそれぞれに対応する前記共鳴周波数の比較結果に基づいて前記発振周波数を制御する、
制御装置。
(付記10)
アルカリ金属原子がそれぞれ封入された2つのガスセルと、
2つの前記ガスセルのそれぞれに対して少なくとも2つの異なる周波数成分を有する照射光を照射する光発生器と、
2つの前記ガスセルをそれぞれ透過した透過光を検出する光検出器と、
2つの前記ガスセルそれぞれの前記透過光の光量に基づいて2つの前記ガスセルそれぞれに対応する共鳴周波数を決定し、決定した前記共鳴周波数に基づいて発振周波数を制御する制御装置と、
を原子発振器が備えており、
2つの前記ガスセルは、それぞれに対応する前記共鳴周波数の温度に対する特性が異なるよう構成されており、
前記制御装置に、2つの前記ガスセルそれぞれに対応する前記共鳴周波数の比較結果に基づいて前記発振周波数を制御する、
処理を実行させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0042】
1 光発生器
11 レーザー
21 周波数測定用ガスセル
22 温度測定用ガスセル
3 光検出器
4 制御器
41 共鳴周波数及び温度シフト量算出器
42 電流変調器制御部
43 レーザー制御部
44 周波数変換器制御部
45 VCXO制御部
51 VCXO
52 周波数変換器
53 電流変調器
100 原子発振器
101a,101b ガスセル
102 光発生器
103 光検出器
104 制御器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8