(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108760
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】水溶性塗料またはコーティング剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09D 179/08 20060101AFI20240805BHJP
C09D 127/12 20060101ALI20240805BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20240805BHJP
【FI】
C09D179/08
C09D127/12
C09D7/63
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013296
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】390015679
【氏名又は名称】ジャパンマテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚本 勝朗
(72)【発明者】
【氏名】塚本 浩晃
(72)【発明者】
【氏名】金澤 親男
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038CD102
4J038CD122
4J038DJ031
4J038HA216
4J038HA376
4J038HA456
4J038JB01
4J038MA02
4J038MA09
4J038NA26
(57)【要約】
【課題】水性クアトロン(登録商標)は、保存性(長時間、高温、酸化条件下等における品質劣化)、輸送性(専用容器の必要性、重量に起因する輸送の困難さ、液体漏出対策等の必要性など)、水分散液であることによる危険性の対策と、そのために輸出入の際の税関手続きが煩雑になる等の問題があった。
【解決手段】水性ポリアミック酸分散液に、アルカリ溶液を混合しながら、減圧下、加熱することによって水分を蒸発させて、固体状態に加工することによって、インスタント(用時調製)ポリイミド分散液の製剤化を実現する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料/コーティング用水性原料組成物を製造する方法であって、
a)固体状態のポリアミック酸含有組成物を調製する工程、
b)固体状態の極性結晶体組成物を調製する工程、ならびに
c)前記工程a)で得られた固体状態のポリアミック酸、および前記工程b)で得られた固体状態の極性結晶体組成物を混合する工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記固体状態のポリアミック酸含有組成物が、20~50%(w/w)のアミン化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アミン化合物が、ジメチルジエタノールアミン(MDEA)である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
さらにd)フッ素樹脂組成物を調製する工程を含む、請求項1-3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記フッ素樹脂組成物は、テトラフルオロエチレン(PTFE)、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、ビニリデンフルオライドおよびビニルフルオライドからなる群から選択されるモノマーの重合体または共重合体からなるフッ素樹脂微粒子の分散液であり、前記極性結晶体組成物がピンクトルマリンまたはブラックトルマリンの分散液である、請求項1-4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記固体状態が、粉末または顆粒状である、請求項1-5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記固体状態のポリアミック酸含有組成物が、
i)ポリイミドを含有する固体材料を適切なサイズに加工する工程、
ii)前記細断されたポリイミドを含有する固体材料をアルカリ処理する工程であって、前記固体材料を、塩基性物質を含有する処理液に溶解し、前記溶解液を一定時間加熱して溶解液中のポリイミドを部分的な加水分解反応に供することによって、前記ポリイミドの一部がポリアミック酸に置き換えられたポリアミック酸含有水性懸濁液を生成する工程、
iii)前記ポリアミック酸含有水性懸濁液にpH調節液を加えて、前記ポリアミック酸含有水性懸濁液を中和する工程、および
iv)前記中和したポリアミック酸含有水性懸濁液を、少なくとも1種の乾燥処理に供することによって、ポリアミック酸含有顆粒を形成する工程
を包含する方法によって製造される、請求項1-6のいずれか一項に記載の塗料/コーティング用水性原料組成物を製造する方法。
【請求項8】
前記ポリイミドを含有する固体材料が、リサイクルされたポリイミドフィルムであり、前記塩基性物質が水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムから選択される少なくとも一種であり、前記pH調節液が、塩酸、硫酸、またはクエン酸から選択される少なくとも一種であり、前記乾燥処理が、吹き付け、加熱乾燥処理、およびフリーズドライから選択され、前記塗料用原料組成物がポリアミック酸含有顆粒である、請求項7に記載の塗料/コーティング用水性原料組成物を製造する方法。
【請求項9】
前記ポリアミック酸含有顆粒は、比重が0.25~0.45g/cm3であり、平均粒径20~25μmである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記極性結晶体微粒子が、ピンクトルマリンまたはブラックトルマリンからなる群より選択される1種以上の微粒子である、請求項1-9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記極性結晶体微粒子の粒径が3μm以下である、請求項1-10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリアミック酸分散液/フッ素樹脂の重量比が、45/55~15/85である、請求項1-11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリアミック酸分散液およびフッ素樹脂の合計/極性結晶体微粒子の重量比が、100/20~100/40である、請求項4-12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
アルミナ、または過硫酸カリウム、またはその両方を混合する工程をさらに含む、請求項1-13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
さらに、酸化チタン、エポキシ樹脂、LCP、カーボンブラック炭素繊維、フェノキシ樹脂、PEI(ポリエチルイミド)、フェノール樹脂、リグニン、および骨材(チョップド片)からなる群より選択される少なくとも1種の成分を混合する工程を含む、請求項1-14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミック酸(PIA)水溶液、PTFE分散液(水性)、および極性結晶体粉末の3種類の成分を含む水性塗料またはコーティング剤を用いる塗装またはコーティング方法に関する。より詳細には、本発明は、水性塗料またはコーティング剤の原料組成物として、固体状態、例えば、粉末または顆粒状の原料組成物を用いる、塗装またはコーティング方法に関する。本発明の原料組成物は、水溶性塗料またはコーティング剤の用時調製のための固体製剤として好適に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド樹脂は、耐熱性、耐寒性等に優れた機能性材料として知られている。中でも、ポリイミド樹脂を応用した製品として、ポリイミドとPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等を含むフッ素樹脂の混合物が知られている。この樹脂混合物は、低摩擦係数を有し、非粘着性、耐薬品性、耐熱性等の特性に優れているので、食品工業用品、フライパンや鍋等の厨房器具、アイロン等の家庭用品、電気工業用品、機械工業用品等の表面加工に広く用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、フッ素系樹脂の分散状態を均一にコントロールしたポリイミド前駆体液体組成物、この組成物により得られる耐熱性、機械特性、低誘電率化、低誘電正接化などの電気特性、加工性に優れるポリイミド、ポリイミドフィルム、その製造方法、そのポリイミドフィルムを用いた回路基板、カバーレイフィルムが開示されている。ところが、特許文献1の組成物は、ポリイミドとフッ素樹脂を均一に分散させるために、溶媒として有機溶媒を使用していたため、取り扱い性(安全性、環境負荷、設備費等)に問題があるものであった。
【0004】
その後、本発明者らは、有機溶媒を使用しなくても優れた接着性能および耐熱性能を備えた水系のポリイミド-フッ素樹脂混合分散液の開発を試み、有機溶媒を使用しなくても優れた接着性能および耐熱性能を備えた水系のポリイミド-フッ素樹脂混合分散液の開発を試みた。その結果、本発明者らは、このような分散液として、ポリイミドと、フッ素樹脂と、アルミナと、過硫酸カリウムとを含む、ポリイミドとフッ素樹脂が均一に分散した水性の混合分散液、およびこの分散液から製造された混合粉体ならびにこれらの製造方法を完成した(特許文献2)。この分散液は、優れた接着性能および耐熱性能を備え、優れたコーティング特性を有するものであり、さらに、このポリイミド-フッ素樹脂混合水性分散液は、有機溶媒を含まないため、優れた取り扱い性(安全性、環境負荷、設備費等)を有するものであった。しかし、このポリイミド-フッ素樹脂混合液は、通常の塗料としては十分に通用するものであったものの、PTFEに特有である非粘着性または非接着性の特性を依然として有していたため、このような特性領域を越えることが出来なかったという意味で、本発明者らが理想とする高い粘着性・接着性とは程遠く、そのため、このポリイミド-フッ素樹脂混合液は、本発明者らが理想とする、従来技術を超えた高性能塗料としては満足できるものではなかった。
【0005】
さらに、本発明者らは、「ポリイミド-フッ素樹脂混合液」の粘着・接着特性の向上を目的として、あらゆる角度から材料の配合の再検討を行った結果、天然の電位を有する鉱石であるブラックトルマリン、ピンクトルマリン、六晶石類等を粒径3μm以下の粉体にした後、PIおよびPTFEを含む分散液に配合して新たなポリイミド-フッ素樹脂混合液を調製した結果、(-)(+)電位を持った塗料の開発に成功した(特許文献3)。このような塗料の開発の成功は、本発明者らが知る限り、世界で初めてのことであった。この塗料は、380℃で焼付けた後の評価に於いて、従来の塗料を遥かに超えるレベルの完全接着・接合を達成した。この塗料は、商品名クアトロン(Quatlon)(登録商標)として上市されている。この塗料は、卓越した熱伝導性、絶縁性、耐薬品性、耐熱性、等々の非常に優れた性能を示すので、その用途は単なる塗料としての範囲を超えて、あらゆるコーティング材料の代替材料としての注目されているところである。例えば、クアトロン(登録商標)が材料として使用されるもののほんの一例としては、フライパンのテフロン(登録商標)コーティング、絶縁部品のナットやボルト、エアコンのフィルター等が挙げられる。これらの試作品はいずれも従来品を遥かに超える卓越した性能を示した。そこで、本出願人らは、クアトロン(登録商標)を使ったさらなる商品開発と攪拌を推し進めてゆくべく、クアトロン(登録商標)の大量生産のための製造システムとその流通システムの構築に取り掛かった。
【0006】
ところが、本発明者らは、従来のクアトロン(登録商標)の製造方法には、改善する余地があることを発見した。上述の通り、この塗料/コーティング剤は最終的な形態としてコーティング膜を形成してしまえば、最強の塗膜を形成できるのであるが、原料としては水分散液を使っているという点で、新たな問題点が浮き彫りとなった。
【0007】
クアトロン(Quatlon)(登録商標)は、その必須成分として、ポリイミド前駆体(ポリアミック酸(PIA))またはポリイミド含有分散液、PTFE水性分散液、および極性結晶体粉末(粒径3μm以下)の3種類の成分を含む塗料またはコーティングの原料組成物である。この従来のクアトロン(登録商標)製剤は、本明細書中では、「水性クアトロン(登録商標)」と称する。水性クアトロン(登録商標)は、比較的少量で(例えば、数リットル)、比較的穏やかな温度条件で、比較的短期間のうちで(例えば、2週間以内)に使用するのであれば、何らの問題もなく、特許文献3に記載の発明を簡単に実施できるものである。ところが、クアトロン(登録商標)の大量生産のために、原料としてのポリアミック酸の水分散液を調製する際には以下のような問題点があることが明らかとなった。
【0008】
1.分散液の沈殿の問題
水性クアトロン(登録商標)は、典型的には、他の工業用材料と同様に、プラスチック製18リットル缶に充填されて出荷される。この水分散液は、製造時には均一な分散液であるものの、時間の経過とともに、成分の沈殿が生じる(特に、極性結晶体成分の沈殿が生じやすい)。沈殿が生じてしまったクアトロン(登録商標)は、そのままでは塗料/コーティング剤の原料としては使えない。沈殿を生じた分散液は、そのまま使用すると、沈殿物の量だけ製造時よりも濃度が低下しているので、プロペラ攪拌等の操作を行ってクアトロン(登録商標)製剤の攪拌を再度行わなければならない。新品のクアトロン(登録商標)の使用期限は、冷温(20℃以下)で保管された場合でも約2ヶ月である。保管温度が高い場合には、2ヶ月より前でも沈殿の問題が生じる可能性がある。このように、現状では、水性クアトロン(登録商標)は、使用前に攪拌操作が必須であることが当然となっており、これはユーザーにとって多大な負担となるものであった。
2.輸送の問題
水性分散液であるクアトロン(登録商標)は、大量輸送という観点には不利であって、限界がある。特に海外への輸送では、上記のような保管条件を満たすためには、保冷コンテナの使用が不可欠である。輸送期間が2ヶ月以上わたる場合には、使用前に差異攪拌の操作を余儀なくされ、さらに扱いが厳しくなる。
3.事務手続き上の問題
さらに、水性分散液であるクアトロン(登録商標)を輸出する場合、事情は輸出先の各国の状況によっても異なるものの、アルカリ溶液の危険性を伴う製品は、税関の手続が煩雑になる傾向がある。
【0009】
このように、水性分散液であるクアトロン(登録商標)は、保存性(長時間、高温、酸化条件下等における品質劣化)、輸送性(専用容器の必要性、重量に起因する輸送の困難さ、液体漏出対策等の必要性など)、水分散液であることによる危険性の対策と、そのために輸出入の際の税関手続きが煩雑になる等の問題があり、このような取り扱いの不便さは、クアトロン(登録商標)を量産する際の大きな障害となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2016-210886号公報
【特許文献2】特許6704592号公報
【特許文献3】特許6781442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らは、特許6781442号公報に記載されている、クアトロン(登録商標)として上市されている塗料(塗料/コーティング用水性原料組成物)が、現状、水分散液ベースでしか流通していない点を問題であると考え、この塗料が固体ベースの商品として保管・流通できることを可能とし、かつ、従来のクアトロン(登録商標)塗料と同程度以上の性能を発揮できるような固体組成物を実現すべく研究開発を実施した。その結果、特定の製造方法にてクアトロン(登録商標)塗料原料を固体状(粉末、顆粒状)物質として製造し、これを用時調製にて水性分散液に戻して使用したところ、従来品と同等以上の性能を示す、非常に優れた性能を有する塗料を得ることに成功した。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち、本発明者らは、ポリイミドと、フッ素樹脂と、極性結晶体微粒子とを含む水性分散液を用いることによって、従来のポリイミドとフッ素樹脂を混合した混合物を使用したコーティング剤よりも卓越した接着性能、耐熱性能、および絶縁性能等を奏することを見い出し、本発明を完成した。
【0013】
本発明は、塗料/コーティング用水性原料組成物を製造する方法に関し、上記方法は、
a)固体状態のポリアミック酸含有組成物を調製する工程、
b)固体状態の極性結晶体組成物を調製する工程、ならびに
c)前記工程a)で得られた固体状態のポリアミック酸、および前記工程b)で得られた固体状態の極性結晶体組成物を混合する工程
を含む。
【0014】
1つの実施形態において、上記方法では、上記固体状態のポリアミック酸含有組成物が、20~50%(w/w)のアミン化合物を含む。
【0015】
1つの実施形態において、上記方法では、上記アミン化合物が、ジメチルジエタノールアミン(MDEA)である。
【0016】
1つの実施形態において、上記方法は、d)フッ素樹脂組成物を調製し、前記工程c)で得られた混合物に加える工程を含む。
1つの実施形態において、上記方法では、上記フッ素樹脂組成物は、テトラフルオロエチレン(PTFE)、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、ビニリデンフルオライドおよびビニルフルオライドからなる群から選択されるモノマーの重合体または共重合体からなるフッ素樹脂微粒子の分散液であり、上記極性結晶体組成物がピンクトルマリンまたはブラックトルマリンの分散液である。
【0017】
1つの実施形態において、上記方法では、上記固体状態が粉末または顆粒状である。
【0018】
1つの実施形態において、上記方法では、上記水性ポリアミック酸分散液が、
i)ポリイミドを含有する固体材料を適切なサイズに加工する工程、
ii)上記細断されたポリイミドを含有する固体材料をアルカリ処理する工程であって、上記固体材料を、塩基性物質を含有する処理液に溶解し、上記溶解液を一定時間加熱して溶解液中のポリイミドを部分的な加水分解反応に供することによって、上記ポリイミドの一部がポリアミック酸に置き換えられたポリアミック酸含有水性懸濁液を生成する工程、
iii)上記ポリアミック酸含有水性懸濁液にpH調節液を加えて、上記ポリアミック酸含有水性懸濁液を中和する工程、および
iv)上記中和したポリアミック酸含有水性懸濁液を、少なくとも1種の乾燥処理に供することによって、ポリアミック酸含有顆粒を形成する工程
を包含する方法によって製造される。
【0019】
1つの実施形態において、上記方法では、上記ポリイミドを含有する固体材料が、リサイクルされたポリイミドフィルムであり、上記塩基性物質が水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムから選択される少なくとも一種であり、上記pH調節液が、塩酸、硫酸、またはクエン酸から選択される少なくとも一種であり、上記乾燥処理が、吹き付け、加熱乾燥処理、およびフリーズドライから選択され、上記塗料用原料組成物がポリアミック酸含有顆粒である。
【0020】
1つの実施形態において、上記方法では、上記ポリアミック酸含有顆粒は、比重が0.25~0.45g/cm3であり、平均粒径20~25μmである。
【0021】
1つの実施形態において、上記方法では、記極性結晶体微粒子が、ピンクトルマリンまたはブラックトルマリンからなる群より選択される1種以上の微粒子である。
【0022】
1つの実施形態において、上記方法では、上記極性結晶体微粒子の粒径が3μm以下である。
【0023】
1つの実施形態において、上記方法では、上記ポリアミック酸分散液/フッ素樹脂の重量比が、45/55~15/85である。
【0024】
1つの実施形態において、上記方法では、上記ポリアミック酸分散液およびフッ素樹脂の合計/極性結晶体微粒子の重量比が、100/20~100/40である。
【0025】
1つの実施形態において、上記方法では、アルミナ、または過硫酸カリウム、またはその両方を混合する工程をさらに含む。
【0026】
1つの実施形態において、上記方法では、さらに、酸化チタン、エポキシ樹脂、LCP、カーボンブラック炭素繊維、フェノキシ樹脂、PEI(ポリエチルイミド)、フェノール樹脂、リグニン、および骨材(チョップド片)からなる群より選択される少なくとも1種の成分を混合する工程を含む。
【0027】
別の態様において、本発明は、塗料/コーティング用水性原料組成物を製造する方法に関し、上記方法は、
a)固体状態のポリアミック酸含有組成物を調製する工程、
b)極性結晶体組成物を調製する工程、
c)フッ素樹脂組成物を調製する工程、
d)前記工程a)で得られた固体状態のポリアミック酸、前記工程b)で得られた極性結晶体組成物、ならびに前記工程c)で得られた前記フッ素樹脂組成物を、一定時間および一定温度における保管/輸送に供する工程、
e)前記一定時間および一定温度における保管/輸送後に、前記固体状態のポリアミック酸に、前記顆粒状ポリアミック酸/水=1:99~50:50の割合となるように蒸留水を添加して、水性ポリアミック酸分散液を調製する工程、
f)前記水性ポリアミック酸分散液、前記フッ素樹脂組成物、および前記水性極性結晶体分散液を混合し、さらに均質に分散させることによって、塗料/コーティング用水性原料組成物を得る工程
を含む。
【0028】
1つの実施形態において、上記方法では、上記固体状態のポリアミック酸含有組成物が、20~50%(w/w)のアミン化合物を含む。
【0029】
1つの実施形態において、上記方法では、上記アミン化合物が、ジメチルジエタノールアミン(MDEA)である。
【0030】
1つの実施形態において、上記方法では、記極性結晶体組成物が固体状態で調製され、上記工程d)の前に、上記極性結晶体組成物が、上記固体状態のポリアミック酸含有組成物と混合される。
【0031】
1つの実施形態において、上記方法では、上記極性結晶体組成物が液体分散液として提供され、上記フッ素樹脂組成物が液体として提供される。
【0032】
1つの実施形態において、上記方法では、上記工程f)において、アルカリ性である上記水性ポリアミック酸分散液を中和するために、酸性溶液をさらに添加することを含み、上記水性ポリアミック酸分散液のpHが7.5-9.0の間の範囲である。
【0033】
1つの実施形態において、上記方法では、上記酸性溶液が、塩酸、硫酸、またはクエン酸から選択される少なくとも一種である。
【0034】
1つの実施形態において、上記方法では、上記工程a)が、流動層造粒乾燥機において一段階で行われる。
【0035】
1つの実施形態において、上記方法では、上記一定時間の保管/輸送が、2ヶ月間またはそれ以上である。
【0036】
1つの実施形態において、上記方法では、上記フッ素樹脂組成物は、テトラフルオロエチレン(PTFE)、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、ビニリデンフルオライドおよびビニルフルオライドからなる群から選択されるモノマーの重合体または共重合体からなるフッ素樹脂微粒子の分散液であり、上記極性結晶体組成物がピンクトルマリンまたはブラックトルマリンの分散液である。
【0037】
1つの実施形態において、上記方法では、上記固体状態が粉末または顆粒状である。
【0038】
1つの実施形態において、上記方法では、上記水性ポリアミック酸分散液が、
i)ポリイミドを含有する固体材料を適切なサイズに加工する工程、
ii)上記細断されたポリイミドを含有する固体材料をアルカリ処理する工程であって、上記固体材料を、塩基性物質を含有する処理液に溶解し、上記溶解液を一定時間加熱して溶解液中のポリイミドを部分的な加水分解反応に供することによって、上記ポリイミドの一部がポリアミック酸に置き換えられたポリアミック酸含有水性懸濁液を生成する工程、
iii)上記ポリアミック酸含有水性懸濁液にpH調節液を加えて、上記ポリアミック酸含有水性懸濁液を中和する工程、および
iv)上記中和したポリアミック酸含有水性懸濁液を、少なくとも1種の乾燥処理に供することによって、ポリアミック酸含有顆粒を形成する工程
を包含する方法によって製造される。
【0039】
1つの実施形態において、上記方法では、上記ポリイミドを含有する固体材料が、リサイクルされたポリイミドフィルムであり、上記塩基性物質が水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムから選択される少なくとも一種であり、上記pH調節液が、塩酸、硫酸、またはクエン酸から選択される少なくとも一種であり、上記乾燥処理が、吹き付け、加熱乾燥処理、およびフリーズドライから選択され、上記塗料用原料組成物がポリアミック酸含有顆粒である。
【0040】
1つの実施形態において、上記方法では、上記ポリアミック酸含有顆粒は、比重が0.25~0.45g/cm3であり、平均粒径20~25μmである。
【0041】
1つの実施形態において、上記方法では、記極性結晶体微粒子が、ピンクトルマリンまたはブラックトルマリンからなる群より選択される1種以上の微粒子である。
【0042】
1つの実施形態において、上記方法では、上記極性結晶体微粒子の粒径が3μm以下である。
【0043】
1つの実施形態において、上記方法では、上記ポリアミック酸分散液/フッ素樹脂の重量比が、45/55~15/85である。
【0044】
1つの実施形態において、上記方法では、上記ポリアミック酸分散液およびフッ素樹脂の合計/極性結晶体微粒子の重量比が、100/20~100/40である。
【0045】
1つの実施形態において、上記方法では、アルミナ、または過硫酸カリウム、またはその両方を含む。
【0046】
1つの実施形態において、上記方法では、さらに、酸化チタン、エポキシ樹脂、LCP、カーボンブラック炭素繊維、および骨材(チョップド片)からなる群より選択される少なくとも1種の成分を含む。
【0047】
また、本発明は、塗料/コーティング用水性原料組成物を製造する方法に関し、上記方法は、
a)水性ポリアミック酸分散液に、アルカリ溶液を混合しながら、減圧下、加熱することによって水分を蒸発させて、固体状態に加工する工程、
b)工程a)で得られた固体状態のポリアミック酸を、さらに乾燥させて、顆粒状ポリアミック酸を調製する工程、
c)フッ素樹脂組成物、および極性結晶体組成物をそれぞれ別個に調製する工程、
d)上記工程a)で得られた固体状態のポリアミック酸、ならびに上記工程c)で得られた上記フッ素樹脂組成物および上記水性極性結晶体組成物を、一定時間および一定温度における保管/輸送に供する工程、
e)上記一定時間および一定温度におけるの保管/輸送後に、上記顆粒状ポリアミック酸に、上記顆粒状ポリアミック酸/水=1:99~50:50の割合となるように蒸留水を添加して、水性ポリアミック酸分散液を調製する工程、
f)上記水性ポリアミック酸分散液、上記フッ素樹脂組成物、および上記水性極性結晶体分散液を混合し、さらに均質に分散させることによって、塗料/コーティング用水性原料組成物を得る工程を含む。
【0048】
1つの実施形態において、上記方法では、上記工程a)において上記アルカリ溶液を混合する際に、上記水性ポリアミック酸分散液を中和するために酸性溶液をさらに添加する工程を含む。
【0049】
1つの実施形態において、上記方法では、上記工程a)および/またはb)が、流動層造粒乾燥機において一段階で行われる、
【0050】
1つの実施形態において、上記方法では、上記一定時間の保管/輸送が、2ヶ月間またはそれ以上である。
【0051】
1つの実施形態において、上記方法では、上記フッ素樹脂組成物がPTFE分散液であり、上記極性結晶体組成物がトルマリン分散液である。
【0052】
1つの実施形態において、上記方法では、工程c)の後で、上記PTFE分散液が水分を蒸発させて固体状態に加工され、または上記トルマリン分散液が水分を蒸発させて固体状態に加工される工程c2)をさらに含む。
【0053】
1つの態様において、本発明は、塗料/コーティング用水性原料組成物を製造する方法であって、
a)水性ポリイミド前駆体分散液、水性フッ素樹脂分散液、および水性極性結晶体分散液をそれぞれ別個に調製する工程、
b)上記工程a)で得られた水性ポリイミド前駆体分散液、水性PTFE分散液、および水性極性結晶体分散液を混合して、水性原料組成物を調製する工程、
c)上記工程b)で得られた上記水性原料組成物を、アルカリ溶液を混合しながら、減圧下、加熱することによって水分を蒸発させて、固体状態に加工する工程、
d)上記工程c)で得られた固体状態に加工した原料組成物を、さらに乾燥させて、顆粒状原料組成物を調製する工程、および
e)上記工程d)で得られた固体状態原料組成物を、一定時間、一定温度における保管/輸送に供する工程、
f)上記一定時間の保管/輸送後に、上記固体状態原料組成物に、塗料用原料組成物/水=1:99~50:50の割合となるように蒸留水を添加し、さらに均質に分散させることによって、固体状態から水性に戻した塗料/コーティング用水性原料組成物を得る工程を含む、方法に関する。
【0054】
好ましい実施形態において、上記ポリイミド前駆体分散液は、ポリイミドとポリイミド前駆体としてのポリアミック酸を含み、上記フッ素樹脂はPTFEであり、上記固体状態は、粉末または顆粒状である。
【0055】
別の態様において、本発明は、上記の製造方法において作成された固体状態組成物に関する。この固体状態組成物は、
i)ポリイミド前駆体分散液
ii)フッ素樹脂粒子、および
iii)極性結晶体微粒子
に由来する成分を含むことを特徴とする。
【0056】
1つの態様において、本発明は、塗料/コーティング用水性原料組成物を製造する方法であって、
a)水性ポリイミド前駆体分散液、水性フッ素樹脂分散液、および水性極性結晶体分散液をそれぞれ別個に調製する工程、
b)上記工程a)で得られた水性ポリアミック酸分散液および水性極性結晶体分散液を混合して、水性原料組成物を調製する工程、
c)上記工程b)で得られた上記水性原料組成物を、アルカリ溶液を混合しながら、減圧下、加熱することによって水分を蒸発させて、固体状態に加工する工程、
d)上記工程c)で得られた固体状態に加工した原料組成物を、さらに乾燥させて、顆粒状原料組成物を調製する工程、および
e)上記工程d)で得られた固体状態原料組成物を、一定時間、一定温度における保管/輸送に供する工程、
f)上記一定時間の保管/輸送後に、上記固体状態原料組成物に、塗料用原料組成物/水=1:99~50:50の割合となるように蒸留水を添加し、さらに均質に分散させることによって、固体状態から水性に戻した塗料/コーティング用水性原料組成物を得る工程を含む、方法に関する。
【0057】
好ましい実施形態において、上記ポリイミド前駆体分散液は、ポリイミドとポリイミド前駆体としてのポリアミック酸を含み、上記フッ素樹脂はPTFEであり、上記固体状態は粉末または顆粒状である。
【0058】
別の態様において、本発明は、上記の製造方法において作成された固体状態組成物に関する。この固体状態組成物は、
i)ポリイミド前駆体分散液、および
ii)極性結晶体微粒子
に由来する成分を含むことを特徴とする。
【0059】
別の態様において、本発明は、塗料/コーティング用水性原料組成物を製造する方法であって、
a)水性ポリイミド前駆体分散液を、アルカリ溶液を混合しながら、減圧下、加熱することによって水分を蒸発させて、固体状態に加工する工程、
b)工程a)で得られた固体状態のポリイミド前駆体組成物を、さらに乾燥させて、最終的な固体状態ポリイミド前駆体組成物を調製する工程、
c)水性フッ素樹脂分散液、および水性極性結晶体分散液をそれぞれ別個に調製する工程、
d)上記工程a)で得られた固体状態ポリイミド前駆体、ならびに上記工程c)で得られた水性フッ素樹脂分散液および水性極性結晶体分散液を、一定時間、一定温度における保管/輸送に供する工程、
e)上記一定時間の保管/輸送後に、上記固体状態ポリイミド前駆体に、上記固体状態ポリアミック酸/水=1:99~50:50の割合となるように蒸留水を添加して、水性ポリアミック酸分散液を再構成する工程、
f)上記水性ポリアミック酸分散液、上記水性フッ素樹脂分散液、および上記水性極性結晶体分散液を混合し、さらに均質に分散させることによって、塗料/コーティング用水性原料組成物を得る工程
を含む、方法に関する。
【0060】
好ましい実施形態において、上記ポリイミド前駆体分散液は、ポリイミドとポリイミド前駆体としてのポリアミック酸を含み、上記フッ素樹脂はPTFEであり、上記固体状態は粉末または顆粒状である。
【0061】
好ましい実施形態において、上記工程a)において上記アルカリ溶液を混合する際に、上記水性ポリアミック酸分散液を中和するために酸性溶液をさらに添加する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【0062】
1つの実施形態において、上記極性結晶体微粒子は、ピンクトルマリンまたはブラックトルマリンからなる群より選択される1種以上の微粒子である。
【0063】
1つの実施形態において、上記ポリイミド前駆体は、ポリアミック酸である。
【0064】
1つの実施形態において、上記極性結晶体微粒子の粒径は3μm以下である、請求項8乃至10に記載の顆粒状組成物。
【0065】
1つの実施形態において、上記ポリアミック酸分散液/フッ素樹脂の重量比は、45/55~15/85である。
【0066】
1つの実施形態において、上記ポリアミック酸分散液およびフッ素樹脂の合計/極性結晶体微粒子の重量比が、100/20~100/40である。
【0067】
1つの実施形態において、上記フッ素樹脂は、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、ビニリデンフルオライドおよびビニルフルオライドからなる群から選択されるモノマーの重合体または共重合体からなるフッ素樹脂微粒子であることを特徴とする。好ましくは、上記フッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。
【発明の効果】
【0068】
本発明によれば、従来のポリイミド前駆体(例えば、ポリアミック酸)、フッ素樹脂(例えば、PTFE)、および水性極性結晶体(例えば、トルマリン)の3種成分を含有する塗装またはコーティング剤としての水性分散液の性能を完全再現することができる、固体状態原料組成物を提供する。この固体状態は、粉末または顆粒状である。
本発明の固体状態原料組成物によれば、従来の水性原料組成物において問題となっていた、(1)分散液の成分が沈殿することによる品質低下の問題を回避でき、(2)重量とかさが大きいことによる輸送のコストおよび煩雑さの問題を解消し、さらに(3)水性溶液場合に輸出入の税関手続きを簡素化するという顕著な効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【
図1】クアトロン(登録商標)水性分散液の製造方法のプロセスの概略を示すチャートである。
【
図2】クアトロン(登録商標)水性分散液の保管・出荷段階における問題点を示すチャートである。
【
図3】クアトロン(登録商標)水性分散液のインスタント(用時調製)製剤化の開発戦略を示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0070】
ここで、クアトロン(登録商標)の特徴とその現時点での問題点、およびその問題の解決手段の概要を
図1~3を用いて説明する。
【0071】
図1に、クアトロン(登録商標)の構成上の特徴とその使用プロセスの概要を示した。クアトロン(登録商標)は、ポリアミド前駆体、フッ素樹脂、および極性結晶体の3種類を含む水性分散液として供給される。クアトロン(登録商標)の製造から使用に至るプロセスは、原料調製→水分散液調製→保管・出荷→(ユーザーによる)現場における塗装・コーティング作業→高温焼成→塗膜生成という順序で使用される。このような手順で使用されるクアトロンは、超高機能膜を生成することができるが、保管・出荷段階において、水性分散液の形態で供給することに起因する、問題点が明らかとなった(
図2)。まず、クアトロン(登録商標)はアルカリ溶液として供給されることから、その輸送の際には、万が一、容器の破損や管理上の不備等によって液が漏出するリスクが考えられ、長距離の移動や輸出入の際に問題となる可能性がある。また、輸出入の際には危険物の取扱いということで書類手続きを含む各種手続きが煩雑となる恐れもある。さらに、液体製剤として輸送することは、その重量が膨大になってくることから、その労力やコストの点で、液体製剤は取り扱いの点で非常に不利となる可能性がある。
【0072】
しかし、液体製剤に関して、最も問題となることは、製剤の性能に関することであって、クアトロン(登録商標)は、長期間の保管に伴って、その分散液としての性能に問題が生じる。すなわち、製造から一定期間が経過すると、分散状態が不均一になり、とりわけ、極性結晶体成分が沈殿することが判明した。このようなクアトロン(登録商標)分散液の使用期限は製造後約2ヶ月間である。製造から約2ヶ月間が経過して、分散状態が劣化し、成分が沈殿してしまったクアトロン(登録商標)分散液であっても、再攪拌によって分散状態を復活させることは難しいことではない。しかし、現場で塗装/コーティング作業を行うユーザーにとっては、非常に煩雑な作業となることが予想され、このような状況を打破するために、クアトロン(登録商標)の一部または全部を、分散液ではなく固体状態(粉末または顆粒状)で供給することにより、このような問題点を解消することを試みた。
【0073】
本発明者らは、クアトロン(登録商標)の成分のうち、少なくともポリイミド前駆体(1)を固体状態(粉末または顆粒状)で供給できれば、上記の問題点のすべてが解決すると考えた。ユーザーは作業現場でポリイミド前駆体(1)に水を加えて分散液を調製するだけでよい。本明細書ではこのような分散液を「インスタント分散液」または「即時調製分散液」と称することがある。即時調製分散液には、ポリイミド前駆体(1)だけでなく、任意選択で、フッ素樹脂(2)および/または極性結晶体(3)をあらかじめ含めておくこともできるし、または、フッ素樹脂(2)および/または極性結晶体(3)は、個別に調整された水性分散液として提供されて、ポリイミド前駆体(1)とともに攪拌されて新鮮な分散液を提供することができる。あるいは、固体のままで提供されて、使用直前に混合・攪拌することにより分散液を調製することができる。
【0074】
ポリアミック酸含有固体状態原料組成物の製造
本発明のポリイミド前駆体(ポリアミック酸(ポリアミク酸、ポリアミド酸))含有固体状態原料含有組成物は、ポリイミドおよびポリアミック酸を含む。本発明の固体状態原料組成物は、ポリイミド粉末を原料として、ポリイミドを部分的に加水分解してポリアミック酸としたものが含まれている。本発明の固体状態原料組成物におけるポリイミド対ポリアミック酸の割合は、約50:50~約10:90である。本発明の顆粒体は、例えば、約1~500μmの粒度分布を有し、平均粒径は100μm以下、好ましくは20μm以下、最も好ましくは10μm以下である。これらの粒度分布や平均粒径は、当該分野において公知の方法を用いて、例えば、粒度分析計を用いたレーザー回折・散乱法などにより測定することができる。
【0075】
本発明のポリアミック酸含有固体状態原料組成物は、固体状態、例えば、粉末または顆粒状であって、実質的に水分を含まない。しかし、本発明における固体状態とは、液体成分を一切含まないという意味ではなく、例えば、後のプロセスにおいてポリアミック酸を溶解させるために含まれているジエチルエタノールアミン(MDEA)とポリアミック酸が共存している固形物の状態であっても、液体状態と明確に区別されるため、本発明の固体状態に含まれる。本発明のポリアミック酸含有原料組成物は、ポリイミドおよびポリアミック酸を含むが、その他の添加物を含めてもよい。添加物としては、多糖類またはその誘導体またはその関連物質、例えば、セルロースまたはリグニンなどが挙げられる。
【0076】
本発明のポリアミック酸含有顆粒体の製造は以下のようにして行う。まず、固体である原料のポリイミドを調製する。このポリイミドは、廃棄物のリサイクル品でもよいし、新たに合成されたポリイミドフィルム等であってもよい。次に、塩基性物質を含む処理液で原料のポリイミドを溶解(加水分解)する。処理液は水ベースの溶液であり、塩基性物質としては、アルカリ金属又はその塩の少なくとも一方を用いることができ、例えば、水酸化カリウムや水酸化ナトリウムなどの強塩基性物質を用いることができる。特に、入手の容易さなどの点で、苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)の使用が好ましい。また、原料のポリイミドからの変色が少ないポリイミド粉体を得ることができるという点で、水酸化カリウムを使用することも好ましい。処理液は溶媒としての水に塩基性物質を溶解することにより調製することができる。ここで、塩基性物質は溶媒100重量部に対して10~50重量部、好ましくは10~40重量部溶解させることができ、また、処理液のpHは10~14にすることができる。これにより、原料のポリイミドの溶解を良好に行うことができる。また、処理液の溶媒としては、必要に応じて、グリセリン等の有機溶媒を添加して、水とグリセリンとの混合溶媒とすることもできる。
【0077】
処理液に溶解させた原料のポリイミドは、ポリマーの主鎖に繰り返し単位としてイミド結合を含むものであればよく、例えば、芳香族化合物が直接イミド結合で連結された芳香族ポリイミドなどを挙げることができる。原料のポリイミドは、例えば、ポリイミドフィルムを製造する過程で発生する裁断屑や不良品などの産業廃棄物、ポリイミド製品の廃棄物等のポリイミドを含むものであれば、何でもよいが、不純物の少ないポリイミドフィルムの裁断屑や不良品を用いるのが好ましい。原料のポリイミドは処理液に浸漬することによって溶解される。この場合、処理液の溶媒100重量部に対して40~120重量部、好ましくは40~80重量部の割合でポリイミドを配合することができ、また、処理液の温度は70~100℃、好ましくは70~90℃、処理時間は50~100分とすることができる。また、必要に応じて、撹拌を行っても良い。これにより、原料のポリイミドの溶解を良好に行うことができる。
【0078】
このような操作により、ポリイミドのイミド環部分が、アルカリのアタックを受けてアミンとカルボン酸を含む構造に加水分解され、ポリアミック酸含有溶液を生成する。このポリアミック酸は、将来再度ポリイミドを製造するための原料となるものであるから、本発明の顆粒体には可能な限り多くのポリアミック酸を含まれるようにアルカリ処理の条件を整えるべきではあるが、過度に反応が進行して低分子量化が進むことは避けるべきである。
【0079】
次に、得られたポリアミック酸含有溶液を必要に応じて(10分程度)冷却した後、このポリアミック酸含有溶液に酸性物質を添加して中和処理し、溶解していたポリアミック酸の微粒子を析出させる。ここで、酸性物質としては塩酸などの強酸やリン酸などの弱酸を用いることができる。好ましくは、酢酸が好ましく使用される。また、クエン酸などの有機酸を使用してもよい。酸性物質の添加量は上記処理液の溶媒100重量部に対して10~50重量部、好ましくは10~40重量部の割合とすることができ、これにより、ポリイミドの微粒子の析出を確実に行うことができる。また、酸性物質の添加により、ポリイミドが溶解した処理液のpHを中性に近くすることができ、例えば、酸性物質の添加後の溶液のpHは7~8である。また、溶液のpHは酸性領域に、例えば、4~6に調整することもできる。
【0080】
次に、ポリアミック酸の微粒子が析出した上記中和後の処理液を濾過して固形分のポリアミック酸の微粒子からなる粉体を分離する。濾過はフィルタープレスなどを用いることができる。この濾過により、ポリアミック酸の微粒子の固形分と塩基性物質に由来するアルカリ金属を含む液部とを分離することができる。次に、分離したポリアミック酸の微粒子の粉体を水洗する。この水洗により、ポリアミック酸の微粒子に付着等してポリイミド粉体に残留している、上記塩基性物質に由来するアルカリ金属を除去(減量)することができる。水洗は、濾過した固形分を水に入れて撹拌する工程を一工程として、この工程をアルカリ金属の残留量が1%以下になるまで(例えば5~10回)繰り返して行うことができる。より具体的には、例えば、分離したポリイミドの微粒子の粉体50重量部に対して水温60℃の水を100リットルの割合で混合し、30分間撹拌する工程を一工程とし、これを6回行うようにして水洗を行うことができる。
【0081】
この後、減圧により脱水し、温度70~80℃で約12時間乾燥することによって、含水率0.5%以下のポリアミック酸含有顆粒体を得ることができる。このポリアミック酸含有顆粒体は平均粒径が25μm以下となるものである。
【0082】
本発明において、上記のように調製されたポリアミック酸含有顆粒体を、ポリイミド前駆体として好適に使用することができる。ポリアミック酸を含有する組成物は、固体状態で使用してもよいし、市販品の製品形態として提供される分散液の状態から開始して、これから水分を除去して固体状態とするといった使い方を行うこともできる。
【0083】
ポリイミド(PI)とは、分子構造中にイミド結合を有する重合体からなる樹脂である。
ポリイミドは、例えば、下記式で示される一般的な合成方法によって合成することができる。この合成方法では、テトラカルボン酸二無水物とジアミンを原料に等モルで重合させ、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸を得る。
【0084】
【化1】
このポリアミック酸を200℃以上の加熱、または触媒を用いて脱水・環化(イミド化)反応を進め、ポリイミドを得る。触媒を用いる場合はアミン系化合物が多く用いられ、イミド化によって発生した水を速やかに除去するための脱水剤としてカルボン酸無水物を併用する場合もある。
【0085】
【0086】
本明細書において、ポリイミドの原料になり得る化合物をポリイミド前駆体と称する。ポリイミド前駆体には、ポリアミック酸(ポリアミク酸、ポリアミド酸)が含まれる。また、ポリイミド前駆体は、国際公開番号2012/096374号公報の
図1、または特開2017-165990号公報の段落[0024]に記載される物質を含み得る。ポリイミド前駆体は、例えば、下記に示すようなものである。
【0087】
【0088】
【化4】
(式中、記号Xは、アルカリ金属(リチウム/Li、ナトリウム/Na、カリウム/K、ルビジウム/Rb、又はセシウム/Ce)であり、添字n及びlは、ポリイミド構造の両側に位置するポリアミド酸構造の存在量(モル数)を示す記号であって、通常、0.1~0.8の範囲内の値であり、添字mは、ポリイミド構造の存在量(モル数)を示す記号であって、通常、0.2~0.9の範囲内の値である。)
【0089】
混合水性分散液に用いるポリイミドは特に限定されず、例えば、無水ピロメリット酸等の芳香族四価カルボン酸無水物の反応等により得られる高分子量重合体からなる樹脂等が挙げられ、当業者に自明のものであればいかなるものでも用いることができる。また、混合水性分散液に用いるポリイミドは、使用済みのポリイミドを粉砕してリサイクルしたものでも良く、未使用のものでも良い。ポリイミドの形状は特に限定されないが、混合水性分散液中で浮遊分散状態を長期間保ちやすいという観点から、微粒子であり粒子の大きさが1μm~100μmの範囲にあることが望ましい。ポリイミドの含有量は、混合水性分散液に対して、5重量%~40重量%であることが望ましく、10重量%~30重量%、10重量%~20重量%であることがより望ましい。
【0090】
本発明の混合水性分散液は、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸を含むことが好ましい。ポリアミック酸は、200℃以上の加熱により脱水・環化(イミド化)することができる。このイミド化のプロセスにより、ポリアミック酸含有混合水性分散液は、より強固な塗膜またはコーティングを形成することができる。
【0091】
本発明の混合水性分散液は、ポリイミドの前駆体として、ポリアミック酸(ポリアミク酸、ポリアミド酸)、ポリアミドイミド、またはポリアミドエステルから選択される1種以上のポリイミド類縁体を含んでもよい。これらのポリイミド類縁体は、混合水性分散液の接着性能にプラスの効果をもたらし、高耐熱性、高強度のコーティング膜を作製するために必須の成分である。好ましくは、本発明の混合水性分散液は、ポリアミック酸を含むポリイミド分散液を含む。
【0092】
このように、本明細書において、ポリイミドという用語は、混合水性分散液に含まれるポリイミドに加えて、ポリイミドの前駆体およびポリイミド類縁体をも包含する広義のポリイミドとして使用されることが理解されるべきである。
【0093】
本発明において好ましく用いられる、原料としてのポリイミドを含有する製剤としては、例えば、株式会社仲田コーティング製、W-20やピーアイ化成製PIA粉などが挙げられるが、これに限定されない。
また、このような製剤は、リン酸、エタノール分散液、アミン、プロピレングリコール、ノニオン成分(中性の添加剤)、着色成分としてのカーボンブラック等を含んでもよい。
【0094】
本明細書において、極性結晶体とは、片側にプラス電極(+)、対する側にマイナス電極(-)を有する結晶体をいう。極性結晶体は、常に不安定な状態(電位差)を生じており、この電位差があるためにマイナス電極から絶えずプラス電極に向けて電子が放たれ流れている。本願明細書において、極性結晶体微粒子とは、ピンクトルマリン、ブラックトルマリン、および六晶石からなる群より選択される1種以上であるがこれらに限定されない。
【0095】
極性結晶体のうち、特によく知られているものはトルマリンである。トルマリンは、化学式XY3Al6(BO3)3SiO18(O,OH,F)4からなる結晶体であり、このうち、ドラバイト(dravite)(苦土電気石)NaMg3Al6(BO3)3Si6O18(OH)4、elbaite(エルバイト)(リシア電気石)Na(Li,Al)3Al6(BO3)3Si6O18(OH)4、ショール(鉄電気石)NaFe3Al6(BO3)3Si6O18(OH)4、ウバイト(uvite)CaMg3(Al5Mg)(BO3)3Si6O18(OH,F)4は、電気石と呼ばれているものである。
【0096】
トルマリンは、1703年、現スリランカのセイロン島で発掘され、ヨーロッパに渡ったといわれている。その後1880年、ノーベル物理学賞を受けたピエール・キュリーはトルマリンの結晶に外部から圧力をかけると結晶表面に電荷が生じることを発見した。また、トルマリンに熱エネルギーを加えたときも電荷が生じることが明らかとなった。トルマリンに圧力を加えたときに生じる現象を圧電気(ピエゾ電気)といい、熱を加えたとき結晶の両極に電子が分かれ、プラスとマイナスの電気が生じる現象を焦電気(ピロ電気)という。トルマリンは、圧力や熱を加えたときに、石の両極にプラスとマイナスの電極が生じ電気が発生する。プラス極は電子を引き寄せ、マイナス極から結晶の外(水の中やカラダの皮膚表面など電気の流れやすい所)に電子を放出する。この発生した水や空気中の水分を電気分解し、ヒドロキシルイオン(H3O2-)という、マイナスイオンを放出する。
【0097】
本発明は、極性結晶体を使用することにより、卓越したコーティング特性を備えたコーティング剤、塗料を得ることができるが、これはトルマリンの上記のような電気的特性によるものと推定されるが、これに限定されない。本発明の極性結晶体は、極性結晶体の鉱石を粉砕して微粒子(例えば、粒径10μm以下、5μm以下、3μm以下、または1μm以下)とし、これを水性分散液として使用できる。極性結晶体の水性分散液は、例えば、5重量%~40重量%濃度の懸濁液である。
【0098】
混合水性分散液に用いるフッ素樹脂は特に限定されず、例えば、テトラフルオロエチレン(ポリ四フッ化エチレン、PTFE)、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、ビニリデンフルオライド、ビニルフルオライド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、及びポリエーテルケトンケトン(PEKK)から選択されるモノマーの重合体または共重合体からなる樹脂微粒子である。これらのうちで水に分散するものが、混合水性分散液の調製に用いられる。
【0099】
フッ素樹脂の形状は特に限定されないが、混合水性分散液中で浮遊分散状態を長期間保ちやすいという観点から、微粒子であり平均分子量が1×104~1×107の範囲にあり、粒子の大きさが100~500nmの範囲にあることが望ましい。
【0100】
フッ素樹脂の含有量(フッ素樹脂固形分の含有量)は、混合水性分散液に対して、20重量%~60重量%であることが望ましく、35重量%~45重量%であることがより望ましい。
【0101】
混合水性分散液に用いるフッ素樹脂は、上記の通り、特に限定されないが、例えば、A-1:ダイキン工業株式会社製、ポリフロンD-111(PTFE固形分:55~65重量%、平均分子量:2×104~1×107、粒子の大きさ:0.25μm、pH:9.7)、A-2:旭硝子製、AD911E(PTFE固形分:60重量%、平均分子量:2×104~1×107、粒子の大きさ:0.25μm、pH:10)、A-3:三井フロロ製、31-JR(PTFE固形分:60重量%、平均分子量:2×104~1×107、粒子の大きさ:0.25μm、pH:10.5)等を用いることができる。なお、粒子の大きさとは、PTFE一次粒子の平均粒子径を指す。
【0102】
また、混合水性分散液に用いるフッ素樹脂は、PTFEディスパージョン(分散液)であってもよく、このPTFEディスパージョンは、中性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アミン、グリコール等を含んでもよい。このようなPTFEディスパージョンとしては、PTFE-D(ダイキン工業社製)などが好ましく使用される。
【0103】
混合水性分散液は、アルミナを含んでもよい。本発明におけるアルミナとは、酸化アルミニウム[組成式:Al2O3]、無定形水酸化アルミニウム、ギブサイト、バイアライト[組成式:Al(OH)3]および/またはベーマイトやディアスポア[組成式:AlOOH]のアルミニウム酸化物微粒子を包含する。
【0104】
アルミナは、混合水性分散液中で浮遊分散状態を長期間保ちやすいという観点から、微粒子の粒子の大きさが5~4500nmの範囲にあることが望ましい。
【0105】
アルミナの含有量は、混合水性分散液に対して、1重量%~10重量%であることが望ましく、3重量%~7重量%であることがより望ましい。これは、アルミナの含有量が1重量%未満であると、アルミナに起因する接着性能および耐熱性能を混合水性分散液に十分に付与することができず、10重量%を超えてもそれ以上の効果の付与は望めないためである。
【0106】
混合水性分散液にアルミナを含有させることによって、優れた接着性能および耐熱性能を備える混合水性分散液とすることができる。
【0107】
また、アルミナゾルのアルミナの形状は特に限定されず、板状、柱状、繊維状、六角板状等、いかなる形状であってもよい。
アルミナゾルが繊維状の場合のアルミナは、アルミナの繊維状結晶である。より具体的には、アルミナの無水和物で形成されたアルミナファイバー、水和物を含むアルミナで形成されたアルミナ水和物ファイバー等が挙げられる。
【0108】
混合水性分散液に用いるアルミナは、特に限定されないが、例えば、アルミナゾル-10A(Al2O3換算重量%:9.8~10.2、粒子の大きさnm:5-15、粘度25℃,mPa/s:<50、pH:3.4-4.2、川研ファインケミカル製)、アルミナゾル-A2(Al2O3換算重量%:9.8~10.2、粒子の大きさnm:10-20、粘度25℃,mPa/s:<200、pH:3.4-4.2、川研ファインケミカル製)、アルミナゾル-CSA-110AD(Al2O3換算重量%:6.0~6.4、粒子の大きさnm:5-15、粘度25℃,mPa/s:<50、pH:3.8-4.5、川研ファインケミカル製)、アルミナゾル-F1000(Al2O3換算重量%:4.8~5.2、粒子の大きさnm:1400、粘度25℃,mPa/s:<1000、pH:2.9-3.3、川研ファインケミカル製)、アルミナゾル-F3000(Al2O3換算重量%:4.8~5.2、粒子の大きさnm:2000-4500、粘度25℃,mPa/s:<1000、pH:2.7-3.3、川研ファインケミカル製)等が挙げられ、当業者に自明のアルミナゾルであれば、いかなるものでも用いることができる。
【0109】
混合水性分散液に用いるアルミナは、上記の通り、特に限定されないが、水酸基(OH基)を有するアルミナの微粒子を用いることが望ましい。OH基を有するアルミナを用いることにより、アルミナのOH基による化学的な結合力(接着力)が増加するため、より優れた接着性能を混合水性分散液に付与することができる。
【0110】
また、アルミナの代わりに、あるいはアルミナに加えて、他の金属酸化物微粒子を添加しても良い。他の金属酸化物微粒子としては、特に限定されないが、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化セリウムまたは酸化スズ等を用いることができる。アルミナの代わりに、あるいはアルミナに加えてこれらの金属酸化物微粒子を添加することにより、アルミナのみを添加した場合とは異なるコーティング特性を有するポリイミド-フッ素樹脂-極性結晶体微粒子混合水性分散液を製造することができる。
【0111】
混合水性分散液は、過硫酸カリウムを含んでもよい。過硫酸カリウムは、OH基を含有する化合物であるため、混合水性分散液に含まれるOH基の数を増加させることができ、OH基による化学的な結合力(接着力)が増加するため、混合水性分散液に優れた接着性を付与することができる。過硫酸カリウムの含有量は、混合水性分散液に対して、0.1重量%~5重量%であることが望ましく、1重量%~3重量%であることがより望ましい。これは、過硫酸カリウムの含有量が0.1重量%未満であると、過硫酸カリウムに起因する接着性能を混合水性分散液に十分に付与することができず、5重量%を超えてもそれ以上の効果の付与は望めないためである。
【0112】
また、過硫酸カリウムの代わりに、あるいは過硫酸カリウムに加えて、他のOH基を含有する化合物を添加しても良い。他のOH基を含有する化合物としては、特に限定されないが、酢酸、安息香酸、フェニルホスホン酸、あるいはベンゾイル化合物等を用いることができる。
【0113】
混合水性分散液は、PVA(ポリビニルアルコール)をさらに含んでいても良い。
PVAは以下に示す構造式を有しており、多くのOH基を含有している。
そのため、混合水性分散液に含まれるOH基の数を増加させることができ、OH基による化学的な結合力(接着力)が増加するため、混合水性分散液に優れた接着性を付与することができる。
また、PVAは、混合水性分散液に配合された後でも安定に混合水性分散液中に存在し、その接着性が低下する虞が少ない。
そのため、混合水性分散液の優れた接着性を長期間に亘って安定に維持することができる。
PVAの含有量は、混合水性分散液に対して、0.5重量%~10重量%であることが望ましく、3重量%~6重量%であることがより望ましい。これは、PVAの含有量が0.5重量%未満であると、PVAに起因する接着性能を混合水性分散液に十分に付与することができず、10重量%を超えてもそれ以上の効果の付与は望めないためである。
【0114】
【0115】
混合水性分散液は、リン酸をさらに含んでいても良い。
リン酸は、OH基を含有する化合物であるため、混合水性分散液に含まれるOH基の数を増加させることができ、OH基による化学的な結合力(接着力)が増加するため、混合水性分散液に優れた接着性を付与することができる。
リン酸の含有量は、混合水性分散液に対して、0.1重量%~5重量%であることが望ましく、1重量%~3重量%であることがより望ましい。これは、リン酸の含有量が0.1重量%未満であると、リン酸に起因する接着性能を混合水性分散液に十分に付与することができず、5重量%を超えてもそれ以上の効果の付与は望めないためである。
【0116】
リン酸は、混合水性分散液に使用するポリイミドの前処理のために使用しても良い。
ポリイミドを、リン酸を含有するリン酸エタノールに添加して混合し、その後エタノールを蒸発させることにより、ポリイミド-リン酸混合粉体が得られる。
ポリイミド-リン酸混合粉体は、ポリイミド単体よりも、水系溶媒により容易に分散することができる。
【0117】
なお、混合水性分散液は、上記した構成要素以外にも、混合水性分散液を改質するためにその他の添加物等を含有していてもよい。
添加物としては、例えば、溶剤、粘着付与剤、可塑剤、硬化剤、架橋剤。希釈剤、充填剤、増粘剤、顔料、安定剤、密着増強剤、フロー剤、および消泡剤等が挙げられるが、これに限定されず、混合水性分散液の性質を改質するために通常用いられ、当業者に自明のものであれば、いかなるものでも用いることができる。より具体的には、このような添加物としては、酸化チタン、エポキシ樹脂、LCP、カーボンブラック炭素繊維、フェノキシ樹脂、PEI(ポリエチルイミド)、フェノール樹脂、リグニン、および骨材(チョップド片)を挙げることができる。
【0118】
本発明のポリイミド前駆体-フッ素樹脂-極性結晶体微粒子混合水性分散液は、任意に、カーボンブラック等の着色剤を含んでもよい。この混合水性分散液のpHは、7.0~8.0の中性域に保持することが重要である。この混合水性分散液のpHが酸性側になる場合(例えば、pH 6.0)、塗膜を形成する際にヒートショックが発生して、塗膜がクラックを生じたり、固形分が発生したりすることがある。
【0119】
以下、ポリイミド前駆体-フッ素樹脂-極性結晶体微粒子の混合水性分散液の製造方法について説明する。
【0120】
この混合水性分散液の製造方法は、極性結晶体微粒子を粉砕し、ふるいにかけて粒径を3μm以下の極性結晶体微粒子を入手する工程、上記極性結晶体微粒子を含む分散液1を調製する工程、ポリイミド前駆体またはポリイミドを含有する分散液2を調製する工程、フッ素樹脂を含有する分散液3を調製する工程、ならびに上記分散液1、2、および3のすべてを混合する工程を含む。
【0121】
この混合水性分散液の製造方法は、水に過硫酸カリウムを添加し、過硫酸カリウム水溶液を調製する工程、およびアルミナを含有する分散液4を調製する工程、上記分散液のすべておよび過硫酸カリウム水溶液を混合する工程をさらに含んでもよい。
【0122】
別の態様において、この混合水性分散液の製造方法は、水に過硫酸カリウムを添加し、過硫酸カリウム水溶液を調製する工程と、ポリイミドと、フッ素樹脂と、極性結晶体微粒子と、アルミナと、上記過硫酸カリウム水溶液とを混合する工程とを含む。
また、混合水性分散液の製造方法は、前処理工程として、ポリイミドをリン酸エタノール溶液と混合し、その後乾燥させてポリイミド-リン酸混合粉体を調製する工程を含んでいてもよい。
なお、これらの工程において、混合方法、混合温度、混合時間は特に限定されず、混合水性分散液を製造でき、従来から用いられている混合方法であれば、いかなるものでも用いることができる。
【0123】
過硫酸カリウム水溶液は、水に固形の過硫酸カリウムを添加することで調製される。より具体的には、水に過硫酸カリウムの量が1重量%となるように過硫酸カリウムを添加し、その後水が沸騰しない程度に加熱して過硫酸カリウムを溶解し、過硫酸カリウム水溶液を調製する。
【0124】
ポリイミドは、水系溶媒に溶け難い場合がある。そのため、ポリイミドの水分散性を向上させるために、混合水性分散液を調製する前に、ポリイミドを前処理することもできる。前処理工程は、ポリイミドを、リン酸エタノール溶液と混合して、その後混合液を乾燥させて水分を蒸発させ、ポリイミド-リン酸混合粉体を製造することを含む。ポリイミド-リン酸混合粉体を用いることにより、ポリイミド単体を用いた場合よりも、ポリイミドの水分散性を大きく向上させることができ、より容易に本発明に係る混合水性分散液を製造することができる。なお、この前処理工程を行わなくとも、本発明に係る混合水性分散液を製造できることは言うまでもない。
【0125】
本発明の固体状態の塗料/コーティング用原料組成物
本発明の塗料/コーティング用水性原料組成物は、ポリイミド前駆体(ポリアミック酸)、フッ素樹脂、および極性極性結晶体を含む。本発明の塗料/コーティング用水性原料組成物は、水性ポリアミック酸分散液の成分、水性フッ素樹脂の成分、および極性極性結晶体分散液の成分を含む。本発明の塗料/コーティング用水性原料組成物は、上記の混合水性分散液の一部または全体を固体状態まで乾燥させる処理を行って、固体状態の塗料/コーティング用水性原料組成物を作製することを特徴とする。好ましくは、上記固体状態は、粉末または顆粒状である。
【0126】
1つの態様において、本発明の塗料/コーティング用水性原料組成物は、少なくとも水性ポリアミック酸分散液の成分が粉末または顆粒状として供給される。別の態様において、本発明の塗料/コーティング用水性原料組成物は、水性ポリアミック酸分散液および水性フッ素樹脂(例えば、水性PTFE分散液)の成分が、粉末または顆粒状として供給される。別の態様において、本発明の塗料/コーティング用水性原料組成物は、少なくとも水性ポリアミック酸分散液の成分および水性極性結晶体分散液の成分が粉末または顆粒状として供給される。別の態様において、本発明の塗料/コーティング用水性原料組成物は、水性ポリアミック酸分散液の成分、水性フッ素樹脂(例えば、水性PTFE分散液)の成分、および水性極性結晶体分散液のすべてが粉末または顆粒状として供給される。
【0127】
ある実施形態において、本発明の塗料/コーティング用水性原料組成物は、水性ポリアミック酸分散液の成分、水性フッ素樹脂(例えば、水性PTFE分散液)の成分、および/または水性極性結晶体分散液の成分を含む組成物が粉末または顆粒状で供給され、塗料/コーティング剤としての使用時に、水性ポリアミック酸分散液の成分、水性フッ素樹脂分散液の成分、および/または水性極性結晶体分散液の成分に水を加えて、塗料/コーティング剤を調製することができる。水は粉末または顆粒の成分が5%~20%、好ましくは約10%となるように添加される。具体的な操作としては、水を攪拌しながら、本発明の水性ポリアミック酸分散液の成分、フッ素樹脂分散液の成分、および/または水性極性結晶体分散液の成分を含む組成物である粉末または顆粒を添加する。気泡が発生しないように、攪拌が激しくなり過ぎないように留意する。好ましくは、攪拌の条件は、例えば、関西機械工業(株)製(50Lスケール)を用いて5~600rpm(平均240rpm)にて、またはSTM社製ホモジナーザー(小容量、ラボスケール)を用いて10rpm~15,000rpm(平均700~800rpm)にて、水性化されてもよい。
【0128】
ある実施形態において、本発明の塗料/コーティング用水性原料組成物は、水性ポリアミック酸分散液の成分および水性極性結晶体分散液の成分が粉末または顆粒状として供給され、フッ素樹脂が液体組成物として供給され、塗料/コーティング剤としての使用時に、水性ポリアミック酸分散液の成分および水性極性結晶体分散液の成分が水を加えて水性分散剤として調製された後で、液体組成物として供給されたフッ素樹脂と混合されて、塗料/コーティング剤となる。
【0129】
ある実施形態において、本発明の塗料/コーティング用水性原料組成物は、水性ポリアミック酸分散液の成分が粉末または顆粒状として供給され、塗料/コーティング剤としての使用時に、水性ポリアミック酸分散液の成分が水を加えて水性分散剤として調製された後で、フッ素樹脂および極性結晶体がこの水性分散剤と混合されて、塗料/コーティング剤となる。この場合、フッ素樹脂および極性結晶体は、固体状態(例えば、粉末または顆粒状)で供給されてもよいし、液体組成物(例えば、水性分散液)として供給されてもよい。
【0130】
好ましくは、本発明の塗料/コーティング用水性原料組成物は、水性ポリアミック酸分散液の成分が粉末または顆粒状の剤として製造業者(例えば、ジャパンマテックス株式会社)から出荷され、塗料/コーティングを行う業者のもとに送り届けられ、さらに当該業者によって水性分散剤として調製された後で、別途入手したフッ素樹脂および極性結晶体がこの水性分散剤と混合されて、塗料/コーティング剤を完成でき、その場で塗料/コーティング剤として使用することができる。
【0131】
あるいは、このように調製された本発明の塗料/コーティング用水性原料組成物は、水性ポリアミック酸分散液の成分が粉末または顆粒状の剤として製造業者(例えば、ジャパンマテックス株式会社)から出荷され、塗料/コーティングを行う業者のもとに送り届けられた後で、当該業者によって水性分散剤として調製された後で、別途入手したフッ素樹脂および極性結晶体がこの水性分散剤と混合されて、塗料/コーティング剤を完成でき、その場で塗料/コーティング剤として使用することができる。
【0132】
本発明の塗料/コーティング用水性原料組成物は、本来、水性ポリイミド前駆体(ポリアミック酸)、フッ素樹脂、および水性極性結晶体が均一に分散されている液体として調製・供給されていたが、分散液体としての性質上、その分散状態を長期間保持することは難しく、均一な分散状態ではなくなる可能性がある。分散状態が不均一になるまでの時間は、保存条件によっても異なってくるが、一般的には、分散液体として調製され、その後攪拌することがない場合、約2週間程度で、特に、トルマリン等の極性結晶体が長期間の保存によって沈殿する傾向がある。極性結晶体が沈殿してしまうと、所定の塗料/コーティング剤としての性能を発揮することができなくなるため、撹拌機を使って再度均一な分散液を調製しなければならない。攪拌は、ヒトの手を使って行ってもよいし、機械によって行ってもよいが、再現性のよい結果を得るために、および/または効率的な作業を行うために、撹拌機を使って攪拌することが好ましい。好ましくは、攪拌の条件は、例えば、関西機械工業(株)製(50Lスケール)を用いて5~600rpm(平均240rpm)にて、またはSTM社製ホモジナーザー(小容量、ラボスケール)を用いて10rpm~15,000rpm(平均700~800rpm)にて、水性化されてもよい。
【0133】
本発明の塗料/コーティング用水性原料組成物を調製する際に、ポリイミド前駆体に加えて、フッ素樹脂および/または極性結晶体微粒子も粉末または顆粒状として供給することができる。従って、本発明の塗料/コーティング用水性原料組成物を調製する際に、粉末または顆粒状として供給することができる組成物は、(1)ポリイミド前駆体を含有する組成物、(2)ポリイミド前駆体および極性結晶体微粒子を含有する組成物、(3)ポリイミド前駆体およびフッ素樹脂を含有する組成物、ならびに(4)ポリイミド前駆体、フッ素樹脂、および極性結晶体微粒子を含有する組成物のいずれかとして供給することが可能であるが、これらに限定されるものではない。ポリイミド前駆体、フッ素樹脂、および極性結晶体微粒子のうち、粉末または顆粒状組成物に含まれていないものは、ユーザーが最終的な水性塗料/コーティングを調製する際に、液体製剤または固体製剤として追加することができる。
【0134】
本発明のポリイミド前駆体、フッ素樹脂、および/または極性結晶体微粒子を含む混合粉体は、本発明に係るポリイミド前駆体-フッ素樹脂-極性結晶体微粒子混合水性分散液を常法にしたがって調製した後、この水性分散液を乾燥させる工程、すなわち、水性分散液中の水分を蒸発させる工程によって製造されてもよい。なお、本発明のポリイミド前駆体、フッ素樹脂、および/または極性結晶体微粒子を含む混合粉体を製造するための乾燥方法は特に限定されず、本発明に係るポリイミド前駆体-フッ素樹脂-極性結晶体微粒子混合水性分散液の水分を蒸発させて固体状態にすることができる方法であればいかなる方法を用いてもよい。例えば、このような乾燥のために、ロータリーエバポレーターや凍結乾燥装置を使用することができる。加熱による品質劣化の可能性を排除できるという点では、凍結乾燥装置を使用することが好ましい。
【0135】
本発明のポリイミド前駆体、フッ素樹脂、および/または極性結晶体微粒子を含む混合粉体は、本発明に係るポリイミド前駆体および極性結晶体微粒子を含む混合水性分散液を常法にしたがって調製した後、この水性分散液を乾燥させる工程、すなわち、水性分散液中の水分を蒸発させて、ポリイミド前駆体と極性結晶体微粒子を含む固体組成物を得る工程、その後に固体状のフッ素樹脂を、ポリイミド前駆体と極性結晶体微粒子を含む固体組成物と混合する工程によって製造されてもよい。なお、本発明のポリイミド前駆体および極性結晶体微粒子を含む混合粉体を製造するための乾燥方法は特に限定されず、本発明に係るポリイミド前駆体および極性結晶体微粒子混合水性分散液の水分を蒸発させて固体状態にすることができる方法であればいかなる方法を用いてもよい。例えば、このような乾燥のために、ロータリーエバポレーターや凍結乾燥装置を使用することができる。加熱による品質劣化の可能性を排除できるという点では、凍結乾燥装置を使用することが好ましい。
【0136】
本発明のポリイミド前駆体、フッ素樹脂、および/または極性結晶体微粒子を含む混合粉体は、本発明に係るポリイミドおよびフッ素樹脂を含む混合水性分散液を常法にしたがって調製した後、この水性分散液を乾燥させる工程、すなわち、水性分散液中の水分を蒸発させて、ポリイミド前駆体とフッ素樹脂を含む固体組成物を得る工程、その後に固体状の極性結晶体微粒子を、ポリイミド前駆体とフッ素樹脂を含む固体組成物と混合する工程によって製造されてもよい。なお、本発明のポリイミド前駆体およびフッ素樹脂を含む混合粉体を製造するための乾燥方法は特に限定されず、本発明に係るポリイミドおよびフッ素樹脂混合水性分散液の水分を蒸発させて固体状態にすることができる方法であればいかなる方法を用いてもよい。例えば、このような乾燥のために、ロータリーエバポレーターや凍結乾燥装置を使用することができる。加熱による品質劣化の可能性を排除できるという点では、凍結乾燥装置を使用することが好ましい。
【0137】
本発明のポリイミド前駆体、フッ素樹脂、および/または極性結晶体微粒子を含む混合粉体は、本発明に係るポリイミド前駆体水性分散液を常法にしたがって調製した後、この水性分散液を乾燥させる工程、すなわち、水性分散液中の水分を蒸発させて、ポリイミド前駆体を含む固体組成物を得る工程、その後に固体状のフッ素樹脂および極性結晶体微粒子を、ポリイミドを含む固体組成物と混合する工程によって製造されてもよい。なお、本発明に係るポリイミド前駆体水性分散液から本発明のポリイミド前駆体を含む粉体を製造するための乾燥方法は特に限定されず、本発明に係るポリイミド水性分散液の水分を蒸発させて固体状態にすることができる方法であればいかなる方法を用いてもよい。例えば、このような乾燥のために、ロータリーエバポレーターや凍結乾燥装置を使用することができる。加熱による品質劣化の可能性を排除できるという点では、凍結乾燥装置を使用することが好ましい。
【0138】
あるいは、本発明のポリイミド前駆体-フッ素樹脂-極性結晶体微粒子混合粉体は、本発明に係るポリイミド前駆体-フッ素樹脂-極性結晶体微粒子混合水性分散液を乾燥させるという工程を経ることなく、ポリイミド前駆体、フッ素樹脂、および極性結晶体微粒子のそれぞれの成分を固体のまま直接混合することによって製造することもできる。この製造方法では、乾燥工程を省略することができるので、コストと時間を大幅にカットすることができるというメリットがある。
【0139】
上記のように調製された固体状態(粉末状態または顆粒状)のポリイミド前駆体を含む固体製剤は、常温で少なくとも2ヶ月間、または少なくとも3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、もしくは12ヶ月間以上、安定な状態で存在する。本明細書において、ポリイミド前駆体を含む固体製剤が安定な状態であるとは、水を加えて水性分散液を再構成した際にポリイミド前駆体分散液としての所定の性能を発揮できる状態にあることを示す。
【0140】
本発明の固体状態(粉末状態または顆粒状)のポリイミド前駆体を含む固体製剤は、常温で保存でき、具体的には、この保存状態は、例えば、15℃~25℃、10℃~30℃、または5℃~35℃の温度において良好に保存できるが、この温度範囲に限定されるものではなく、最大で-20℃~45℃の範囲でも保存することが可能である。
【0141】
本発明の固体状態(粉末状態または顆粒状)のポリイミド前駆体を含む固体製剤は、ポリイミド前駆体が固体状態(粉末状態または顆粒状)であることが必須であるが、フッ素樹脂および/または極性結晶体も固体状態(粉末状態または顆粒状)として、加えることができる。
【0142】
本発明の固体状態(粉末状態または顆粒状)のポリイミド前駆体を含む固体製剤は、追加の成分として、上記の基本的な構成要素以外にも、混合水性分散液を改質するための添加物等を含有していてもよい。
【0143】
このような添加物としては、例えば、溶剤、粘着付与剤、可塑剤、硬化剤、架橋剤。希釈剤、充填剤、増粘剤、顔料、安定剤、密着増強剤、フロー剤、および消泡剤等が挙げられるが、これに限定されず、混合水性分散液の性質を改質するために通常用いられ、当業者に自明のものであれば、いかなるものでも用いることができる。より具体的には、このような添加物としては、酸化チタン、エポキシ樹脂、LCP、カーボンブラック炭素繊維、フェノキシ樹脂、PEI(ポリエチルイミド)、フェノール樹脂、リグニン、および骨材(チョップド片)を挙げることができる。
【0144】
本発明のポリイミド前駆体-フッ素樹脂-極性結晶体微粒子混合水性分散液は、上記のように調製された固体状態(粉末状態または顆粒状)のポリイミド前駆体から、水を加えて、均一な分散液になるまで十分に攪拌することにより再構成することができる。再構成した分散液は、ポリアミド塗料/コーティングの原材料として好適に使用することができる。
【0145】
本発明のポリイミド前駆体-フッ素樹脂-極性結晶体微粒子混合水性分散液を使用するコーティング方法は、上記のポリイミド-フッ素樹脂-極性結晶体微粒子混合水性分散液をコーティング面に塗布する工程、および350~400℃に加熱処理する工程を含む。加熱処理は焼成とも称し、本発明の塗膜またはコーティングを生成するために必要な工程であるが、加熱処理の方法は特に限定されず、当該分野において使用される通常の加熱装置が使用できる。
【0146】
すなわち、再構成されたポリイミド前駆体-フッ素樹脂-極性結晶体微粒子混合水性分散液は、従来のポリイミド前駆体-フッ素樹脂-極性結晶体微粒子混合水性分散液と同様に使用することができ、形成した塗膜は従来のクアトロン(登録商標)と同様の高機能膜を形成することができる。
【実施例0147】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例によって限定されるものではない。
【0148】
(実施例1:ポリイミド前駆体-フッ素樹脂-極性結晶体微粒子混合水性分散液からの、本発明のポリイミド前駆体、フッ素樹脂、および/または極性結晶体微粒子を含む混合固体組成物の調製)
(1-1 ポリイミド前駆体水性分散液の調製)
従来品のポリイミド前駆体水性分散液を以下のように製造した。このポリイミド前駆体水性分散液は仲田コーティング株式会社の従来品(イミトロンPIW-20)に準じる組成を有するものであった。
【0149】
(1)イオン水(38.1%)876.30kgを仕込みタンクに入れ、攪拌しながら(2)MDEA(ジメチルジエタノールアミン)(10.6%)243.80kgを添加し、タンク内の温度を70℃に温めた。別の容器に(3)イオン水(29.6%)680.80kg(全量は使わずに一部を残しておく)および(4)MDEA(0.1%)2.30kgを配合し、1000rpmで攪拌している中に、(5)ポリイミド酸(PIA)(20.0%)460.00kgを入れ、約30分間攪拌し、均一なペーストとした。次に、(1)および(2)を含む仕込みタンクを1500rpmで攪拌しながら、(3)-(5)のペーストを徐々に加えた。この際に、一部残しておいた(3)の一部を使って、ペーストの容器を洗浄しながら、ペーストの全量が加えられるように操作を行う。この(1)-(5)の混合物を60分間攪拌を継続し、内容物を完全に溶解させる。次に、(6)オルトギ酸トリメチル(安定剤、東京化成製)(1.0)23.00kg、(7)KBM-603(密着増強剤、信越化学)(0.2)4.60kg、(8)F444-10%PM(フロー剤、DIC製)(0.2%)4.60kg、および(9)D604-10%PM(消泡剤、日新化学製)を、500rpmで攪拌しながら添加し、この懸濁液を均一にした。
【0150】
このようにして得られた懸濁液を工程検査に供した。懸濁液の透明性は、2.5%液に希釈したところ、目視で透明液となった。粒の存在については、<10μの規格であるところ、0μであった。その後、吉野紙を用いてろ過を行った。ろ過の速度は1kgあたり39秒であった。
【0151】
ろ過後の懸濁液の物性は、粘度(20℃)が90±30mPs・s、密度(20℃)が1.10±0.02、固形分が20±2%、pHが8.0±0.5であった。
【0152】
次に、ろ過後の懸濁液を使用して、このポリイミドの塗料・コーティング剤としての性能を測定した。PETの被塗板を用いて、塗板作成試験を行った。塗装はバーコーター#14を用いて行い、硬化は、120℃×10分間、吊り下げて焼付して硬化させることによって行った。固形分測定は、アルミシャーレ、0.1×100cm2を使い、150℃×20分間法を用いて評価した。
【0153】
塗膜作成試験の結果、塗膜の概観は、見本品と同等のものが得られたことが明らかとなった。
【0154】
(1-2 ポリイミド前駆体-フッ素樹脂-極性結晶体微粒子混合水性分散液の調製)
上記で調製したポリイミド前駆体水性分散液を用いて、ポリイミド前駆体-フッ素樹脂-極性結晶体微粒子混合水性分散液を調製した。この分散液の組成は以下の通りであった。
ポリイミド前駆体分散液(W-20;株式会社仲田コーティング製):30重量%
PTFEディスパージョン(PTFE-D;ダイキン工業社製):70重量%
ピンクトルマリンディスパージョン:粒径3μm以下のピンクトルマリン(スリランカ産)30%分散液として調製した。
アルミナゾル(Al-L7;多木化学社製):5重量%
【0155】
ポリイミド前駆体-フッ素樹脂-極性結晶体微粒子混合水性分散液は以下のように調製した。
1.ピンクトルマリン粉末を定法にて粉砕処理し、3μmふるいにかけて粒径3μm以下の微粒子を選別し、水を加えて5%懸濁液とした。
2.純水に過硫酸カリウムが1重量%となるように過硫酸カリウムを添加し、95℃に加熱して過硫酸カリウムを溶解して過硫酸カリウム水溶液を調製した。
3.ポリイミド前駆体分散液、PTFEディスパージョン、アルミナゾル、過硫酸カリウム水溶液、およびピンクトルマリン分散液を混合し、実施例(ポリイミド前駆体-フッ素樹脂-極性結晶体微粒子混合水性分散液)を製造した。この際、pHが7.0~8.0であることを確認した。
【0156】
(1-3 ポリイミド前駆体-フッ素樹脂-極性結晶体微粒子混合水性分散液からの固体(粉末/顆粒)製剤の調製)
上記のように調製したポリイミド前駆体-フッ素樹脂-極性結晶体微粒子混合水性分散液100mLをロータリーエバポレーターにセットし、回転させながら30~60℃でエバポレートした。ポリイミド前駆体-フッ素樹脂-極性結晶体微粒子混合水性分散液の固形分相当である約50g(理論値はポリアミック酸固形分(20%×0.3×100g=6g、PTFE固形分60%×0.7×100g=42g、トルマリン=3.6%×100g=3.6gの合計である51.6g)の固体(粉末/顆粒)が得られた。
【0157】
(1-4 固体(粉末/顆粒)製剤から水性分散液の再構成)
(1-3)で得られた固体製剤に蒸留水を加え、ゆっくりと攪拌しながら100mLの水性分散液を再構成した。再構成した水性分散液は、固体(粉末/顆粒)化する以前の分散液と同様に、塗料/コーティング剤として使用することができた。
【0158】
(実施例2:固体(粉末/顆粒)状クアトロン(登録商標)の作製(1))
ポリイミド前駆体-フッ素樹脂-極性結晶体微粒子混合水性分散液を作るための固体状態の製剤を作製するために、水性分散液から水分を除く操作を行うのではなく、最初から固体状態の製剤として作製することを検討した。
<目的>
クアトロン(登録商標)の粉状タイプを試作、液性状・コート膜を確認し、サンプル出荷の妥当性を判断することを目的とする。
<背景>
海外へのクアトロン(登録商標)展開を進めたい。液状では沈殿、貿易規制がネックとなるため、クアトロン(登録商標)の液化を海外の潜在顧客に実施頂き、本発明者らはPI、トルマリン(以下、BT)の混合粉を送ることを考えている。クアトロン(登録商標)が出来上がるような配合で、PI×BT粉を試作して、この液性状、コート膜を確認する。
<主な使用物>
・PIA粉-ピーアィ化成 25μm(ポリアミド前駆体に対応)
・BT-英雅堂社製、セイシン企業粉砕品(BT1-2)(極小結晶体に対応)
・PTFE-D-
製SFN-2H Lot:2160124375(フッ素樹脂に対応)
・アミン-MDEA(メチルジエタノールアミン)
・水-水道水
【0159】
<実験手順>
1.液配合
本実施例では、実施例1に記載のポリアミド前駆体に対応するような、代替の製剤方法を開発することを目的とする。各剤の配合は以下の表1の通りであった(表1)。今回はクアトロン(登録商標)に液化したときに総計500gになるような配合を設計した。
【0160】
【表1】
配合表の下線部分がPIAおよびBTの固体状態での仕込み量に相当する。まずこの混合粉を試作した。回収が約70gであり、ここから50gを採取して小スケールでのクアトロン(登録商標)(表2)を試作して、検査用とした。
【0161】
【0162】
今回はクアトロン(登録商標)に液化したときに500gになるような配合を想定した。
<投入手順>
1.(3)に(2)を添加
2.60℃バスで加温
3.そのまま混合粉((1)×(4))を投入→バブルレスミキサ(小)で1.5時間攪拌する
4.常温でシェイカーで攪拌2時間
5.(5)を投入、ラボスプーンで軽くかき混ぜ
6.140メッシュでろ過
次に、この液の液性状を検査した。比較対象として弊社でのクアトロン(登録商標)1100スケールアップ試作7回目の液を採用した。固形分測定は125℃×60分で実施。
【0163】
【0164】
固形分が比較対象に対して1%程しか変わらないので、配合そのものは正しく行われたものと判断した。pHは少し高いが、ピーアイ化成社のPIAは、pHが仲田コーティング社製のPIAよりも高くなる傾向があるので、問題はないと判断した。
【0165】
また、実際にAl箔にバーコータでコーティングを行ってみた。番手は36を使用。
乾燥120℃×30分間→焼成380℃×15分間を実施。外観は、従来品と比較して、表面の目が粗く、色も濃いものであった。より詳細には、塗膜としては、今回品の方が、
・表面の滑り性が乏しい
・ろ過時のメッシュが粗いため、ブツがかなり残った。
・色味は今回品の方が、若干茶色が強い
・今回品は液の泡が激しい
今後の検討すべき課題として、以下の点が考えられた。
(1)ろ過機構の導入(お客様先に精密ろ過機構が必要→ブツ対策として)
(2)消泡剤導入(コート時の破泡として)
(3)ピーアィ化成社PTA用の適切アミン量把握(pHを8台まで落とす→耐加水分解で液ライフ延長)
(4)塗膜の滑り性欠如・色味問題への原因把握と対策
とした。
【0166】
(実施例3:固体(粉末/顆粒)状クアトロン(登録商標)の作製(2))
<方法>
消泡剤(日新化学製、D604-10%DM)およびフロー剤(DIC製、F444-10%PM)をそれぞれ0.2%添加した以外は、実施例2と同様に製剤を調製した。
<結果>
色味にはあまり変化が見られなかったものの、塗膜表面の滑り性は従来の水性分散液を用いて作製した塗膜と遜色ない程度の滑り性が観察された。
【0167】
(実施例4:アミン入りPIA粉の試作)
<目的>
アミン入りPIA粉ができるか否かを確認すること。
<背景>
PI-W-20(アミック酸水溶液)は、PIA粉をアミン添加した水に添加して水溶化している。例えば、海外に輸出する場合、クアトロンは輸送中にトルマリンの沈殿が激しくなり、使用時の扱いが難しくなる。アミン液とPIA粉を混合した固形物が出来れば、それを現地に発送して、その場でPTFE-D、トルマリン、水とをまぜて頂き、クアトロン(登録商標)として使用できる可能性がある。アミン入りPIA粉の出来栄え確認は、水性化したときの液性状(pH、固形分、目視)、コーティング膜性状(目視、密着性)があるが、本案件では、一旦、液性状を評価項目とする。
<主な使用物>
・アミン-MDEA(ジメチルエタノールアミン)原液
・PIA-PIA-25(ピーアィ化成社製、25μm、Lot不明)
【0168】
<実施内容>
[4-1]ラボ小スケール
ポリ袋の中にPIA粉を入れ、そこにアミンを投入して、袋ごと手でこね、アミンが全体に行き渡るように混合する。
このアミン入りPIA粉は、以下の配合で試作した。
【0169】
【0170】
仕込みは計100gとしたが、回収はロスがあり、75.7g(☆)であった。
☆の一部を使用して以下の配合表に基づき、水性化した。
この配合で試作すると、水性化したときに固形分の実測が19~22%に収まるような配合になっている。
【0171】
【表5】
水性化において、バブルレスミキサー(エアー駆動型、エアー圧0.4MPa)で2.5時間攪拌、マヨネーズ瓶(225mL)に水道水が60℃を保持するように加温した。2.5時間後、水性化を確認した。
【0172】
完成品を140メッシュでろ過して、液が室温に冷めた状態で、pH、固形分の測定を実施した。固形分測定は、250℃、30分間乾燥とし、比較対象(ref.)として、PIA粉を用いたPIWも作製し、検査した。
【0173】
【0174】
本実施例において試作したアミン入りPIAは、比較対象と比べて、ほぼ変わりない検査値になった。
【0175】
[4-2]ラボスケールアップ(まぜ太郎)
JM所有のコンクリートミキサー「まぜ太郎」(アルミス社製、電動コンクリートミキサーまぜ太郎)で同様のことをして、水性化ができるか否かを確認した。配合は表6のようにした。この試作の重要ポイントは、水性液の検査値がもっともらしいか、および多分なPIA粉のボリュームに対して、どのようにアミンを行き渡らせるかであった。アミンの投入方法は、スプレー方式を試みたが、PIA粉が混合機から吹き出るため、方式を変更して、プラビーカーに小分けしてアミンを投入することにした。
【0176】
【0177】
混合機に入れたPIAにアミンを投入し、回転(240rpm)を60秒間実施した。これを1セットとして、計6セット実施した。セット数を重ねると、団子状に樹脂が造立される部分と、そうでない部分とが顕著になった。また、混合機内壁にアミンリッチな樹脂層が張り付く傾向になった。回収時には、この張り付き物も金属製の薬さじで削ぎ落とした。張り付きがかなり強固であり、完全には回収できずロス分が生じた。回収重量は5.79kg(収率:89.9%)であった。
【0178】
【0179】
水性化は表8に基づいて行った。検査結果は以下のようになった。
【0180】
【0181】
pHは実験その1のときの結果と比較して0.25高かった。固形分はほぼ差はなく、かつ配合通りの結果になった。
【0182】
次に、上記のように調製したアミン入りPIAの塗料/コーティング剤としての性能を調べた。上記のようにまぜ太郎を使って調製したアミン入りPIA(その2)を、水性化およびコーティング手順に供し、焼成後のコート膜を、陽性対照である市販のPIA懸濁液(PIW、仲田コーティング社製、ロットE22201)と比較した。結果は、本願のアミン入りPIA(その2)では、弾きが大きく、表面にでこぼこが目立つ結果となった。これは、本願発明のアミン入りPIA(その2)では、表面張力を低下させる添加剤等を含有していないため、水性塗料の弱点である弾きが顕著に反映された結果であると考えられた。
【0183】
<まとめ>
混合機でスケールアップをしたものは、水性化すると、pH、固形分ともにパウダーから試作したPIW20とほぼ差はなく、目視もほぼ問題ない。しかし、製造工程を考えると、スケールアップするほどPIA粉のボリュームが膨大になり、アミン液を均一に混合する手法が求められる。これを解決すれば、本案件の配合を踏襲することで水性化が実現可能である。実際のコート膜では、本案件品は弾きが激しく、例えば、フッ素系やシリコーン系の濡れ性アップのための添加剤を仲田コーティング社と同じように選定し、それをお客様の方で添加いただく、などの課題が残る。
【0184】
(実施例5:固体状態原料組成物の保存および水性分散液の再構成)
実施例1-4において得られた顆粒状原料組成物を、3ヶ月間常温にて(例えば、7月~9月、平均約28℃)保存した後、水を加えて攪拌しながら水性分散液を調製した。
【0185】
(実施例6:再構成した水性分散液からの塗膜(コーティング)の作製)
実施例5において再構成した水性分散液を用いて、従来の方法によりフッ素樹脂コーティングを作製した。
【0186】
再構成した水性分散液から得られたコーティングは、従来の水性分散液(固体状態(粉末状/顆粒状から用時調製したもの)と同様の塗膜(コーティング)を形成することができた。
【0187】
再構成した水性分散液からの塗膜の耐熱性試験(TG-DTA試験)を行ったところ、本発明に係る用時調製用固体製剤を用いて分散液を再構成した場合でも、従来の水性分散液をそのまま使った場合と同様に、450℃程度までの耐熱性を示すことが明らかとなった。
【0188】
また、本発明に係る用時調製用固体製剤を用いて分散液を再構成した場合でも、従来の水性分散液をそのまま使った場合と同様に、カットの縁が完全に滑らかでどの格子の目にも剥がれがない状態を保っており高い接着性を示すことが明らかとなった。
本発明の固体状態(粉末状/顆粒状)のポリアミド前駆体により、水性分散液であるクアトロン(登録商標)に伴う、保存性の問題(長時間、高温、酸化条件下等における品質劣化)、輸送性の問題(専用容器の必要性、重量に起因する輸送の困難さ、液体漏出対策等の必要性など)、水分散液であることによる危険性と、そのために輸出入の際の税関手続きが煩雑になる等の問題を解決することができる。このような従来のクアトロン(登録商標)の取り扱いの不便さを格段に改善することによって、クアトロン(登録商標)が有する優れた性能を有する塗膜を使って、卓越した熱伝導性、絶縁性、耐薬品性、耐熱性、等々の非常に優れた性能を示す、例えば、調理器具のテフロン(登録商標)コーティング、絶縁部品のナットやボルト、エアコンのフィルター等を含む様々な工業製品の製造を拡大し、産業社会の発展に寄与することができる。