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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108763
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】送電装置、送電方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/20 20160101AFI20240805BHJP
【FI】
H02J50/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013312
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕也
(72)【発明者】
【氏名】錦戸 正光
(57)【要約】
【課題】電力を失った受電装置の給電を改善すること。
【解決手段】例えば、送電装置10は、受電装置に接続されたバッテリに電力を供給可能な電磁波である第1電磁波、または第1電磁波より広い範囲に電力を供給可能な第2電磁波を送信可能な送信部13と、受電装置のうち、バッテリに蓄積された電力が所定以下の第1受電装置を検出した場合、第1受電装置の近傍に位置し、バッテリに蓄積されたエネルギーが所定以下でない第2受電装置へ第2電磁波を送信する送電制御部17Bと、を有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受電装置に接続されたバッテリに電力を供給可能な電磁波である第1電磁波、または前記第1電磁波より広い範囲に電力を供給可能な第2電磁波を送信可能な送信部と、
前記受電装置のうち、前記バッテリに蓄積された電力が所定以下の第1受電装置を検出した場合、前記第1受電装置の近傍に位置し、前記バッテリに蓄積されたエネルギーが所定以下でない第2受電装置へ前記第2電磁波を送信する送電制御部と、
を有する送電装置。
【請求項2】
前記第2電磁波は、前記第1受電装置に接続された前記バッテリと前記第2受電装置に接続された前記バッテリとに、電力を供給可能な電磁波である、
請求項1に記載の送電装置。
【請求項3】
前記受電装置が送信した規定信号を受信可能な受信部と、
前記規定信号の送信が確認できない前記受電装置を、前記バッテリに蓄積された電力が所定以下であると判断する検知部と、
を有する請求項1に記載の送電装置。
【請求項4】
前記送電制御部は、前記第2電磁波として、前記第1電磁波よりもビーム幅が広い電磁波を送電させる、
請求項3に記載の送電装置。
【請求項5】
前記検知部は、前記第1受電装置から最後に受信した前記規定信号に基づいて、前記第2受電装置を検知する、
請求項4に記載の送電装置。
【請求項6】
前記送電制御部は、前記受電装置に対して前記第1電磁波を送信する順序またはタイミングを規定する給電スケジュールに基づいて、前記受電装置に対する前記第1電磁波または前記第2電磁波の送電を制御する、
請求項5に記載の送電装置。
【請求項7】
前記送電制御部は、前記受電装置から受信した前記規定信号に基づいて、前記給電スケジュールを生成または変更する、
請求項6に記載の送電装置。
【請求項8】
前記送電制御部は、前記第1受電装置を検知した場合に、前記第1受電装置に対する前記給電スケジュールによる前記第1電磁波の送信を停止し、前記第2受電装置に対して、前記第2電磁波を前記送信部に送信させる、
請求項7に記載の送電装置。
【請求項9】
前記送電制御部は、前記第1受電装置の前記給電スケジュールに規定された送信タイミングにおいて、前記第2電磁波を前記送信部に送電させる、
請求項8に記載の送電装置。
【請求項10】
前記送電制御部は、前記第2電磁波を前記送信部に送電させた後、前記第1受電装置から前記規定信号を受信した場合に、前記第2電磁波の送電を終了する、
請求項9に記載の送電装置。
【請求項11】
前記第1受電装置は、前記第2受電装置に送信された第2電磁波によって前記バッテリに電力を供給可能な範囲に位置する、
請求項1に記載の送電装置。
【請求項12】
受電装置に接続されたバッテリに電力を供給可能な電磁波である第1電磁波、または前記第1電磁波より広い範囲に電力を供給可能な第3電磁波を送信可能な送信部と、
前記受電装置のうち、前記バッテリに蓄積された電力が所定以下の第1受電装置を検出した場合、前記第1受電装置の近傍に位置し、前記バッテリに蓄積されたエネルギーが所定以下でない第2受電装置へ前記受電装置の設置方向を含む全方向放射の前記第3電磁波を送信する送電制御部と、
を有する送電装置。
【請求項13】
受電装置に接続されたバッテリに電力を供給可能な電磁波である第1電磁波、または前記第1電磁波より広い範囲に電力を供給可能な第2電磁波を送信可能な送信部を有する送電装置が、
前記受電装置のうち、前記バッテリに蓄積された電力が所定以下の第1受電装置を検出した場合、前記第1受電装置の近傍に位置し、前記バッテリに蓄積されたエネルギーが所定以下でない第2受電装置へ前記第2電磁波を前記送信部に送信させる、送電方法。
【請求項14】
受電装置に接続されたバッテリに電力を供給可能な電磁波である第1電磁波、または前記第1電磁波より広い範囲に電力を供給可能な第3電磁波を送信可能な送信部を有する送電装置が、
前記受電装置のうち、前記バッテリに蓄積された電力が所定以下の第1受電装置を検出した場合、前記第1受電装置の近傍に位置し、前記バッテリに蓄積されたエネルギーが所定以下でない第2受電装置へ前記受電装置の設置方向を含む全方向放射の前記第3電磁波を前記送信部に送信させる、送電方法。
【請求項15】
受電装置に接続されたバッテリに電力を供給可能な電磁波である第1電磁波、または前記第1電磁波より広い範囲に電力を供給可能な第2電磁波を送信可能な送信部を有する送電装置に、
前記受電装置のうち、前記バッテリに蓄積された電力が所定以下の第1受電装置を検出した場合、前記第1受電装置の近傍に位置し、前記バッテリに蓄積されたエネルギーが所定以下でない第2受電装置へ前記第2電磁波を前記送信部に送信させるステップを実行させる、プログラム。
【請求項16】
受電装置に接続されたバッテリに電力を供給可能な電磁波である第1電磁波、または前記第1電磁波より広い範囲に電力を供給可能な第3電磁波を送信可能な送信部を有する送電装置に、
前記受電装置のうち、前記バッテリに蓄積された電力が所定以下の第1受電装置を検出した場合、前記第1受電装置の近傍に位置し、前記バッテリに蓄積されたエネルギーが所定以下でない第2受電装置へ前記受電装置の設置方向を含む全方向放射の前記第3電磁波を前記送信部に送信させるステップを実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、送電装置、送電方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤレス電力伝送は、複数の受電装置に対する給電に用いられている。特許文献1には、受電装置を使用する使用者の予定情報に基づいて当該受電装置で必要な電力量を推定し、推定結果、給電履歴及び給電の優先順位に基づいて給電スケジュールを生成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-126199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術は、受電装置の使用状況によって電力伝送のスケジュールの優先度を変更するが、使用者が受電装置の当該スケジュールを予め登録するため、受電装置でバッテリの残量が完全になくなる可能性があった。従来のワイヤレス電力伝送は、電力を失った受電装置の給電に改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
態様の1つに係る送電装置は、受電装置に接続されたバッテリに電力を供給可能な電磁波である第1電磁波、または前記第1電磁波より広い範囲に電力を供給可能な第2電磁波を送信可能な送信部と、前記受電装置のうち、前記バッテリに蓄積された電力が所定以下の第1受電装置を検出した場合、前記第1受電装置の近傍に位置し、前記バッテリに蓄積されたエネルギーが所定以下でない第2受電装置へ前記第2電磁波を送信する送電制御部と、を有する。
【0006】
態様の1つに係る送電装置は、受電装置に接続されたバッテリに電力を供給可能な電磁波である第1電磁波、または前記第1電磁波より広い範囲に電力を供給可能な第3電磁波を送信可能な送信部と、前記受電装置のうち、前記バッテリに蓄積された電力が所定以下の第1受電装置を検出した場合、前記第1受電装置の近傍に位置し、前記バッテリに蓄積されたエネルギーが所定以下でない第2受電装置へ前記受電装置の設置方向を含む全方向放射の前記第3電磁波を送信する送電制御部と、を有する。
【0007】
態様の1つに係る送電方法は、受電装置に接続されたバッテリに電力を供給可能な電磁波である第1電磁波、または前記第1電磁波より広い範囲に電力を供給可能な第2電磁波を送信可能な送信部を有する送電装置が、前記受電装置のうち、前記バッテリに蓄積された電力が所定以下の第1受電装置を検出した場合、前記第1受電装置の近傍に位置し、前記バッテリに蓄積されたエネルギーが所定以下でない第2受電装置へ前記第2電磁波を前記送信部に送信させる。
【0008】
態様の1つに係る送電方法は、受電装置に接続されたバッテリに電力を供給可能な電磁波である第1電磁波、または前記第1電磁波より広い範囲に電力を供給可能な第3電磁波を送信可能な送信部を有する送電装置が、前記受電装置のうち、前記バッテリに蓄積された電力が所定以下の第1受電装置を検出した場合、前記第1受電装置の近傍に位置し、前記バッテリに蓄積されたエネルギーが所定以下でない第2受電装置へ前記受電装置の設置方向を含む全方向放射の前記第3電磁波を前記送信部に送信させる。
【0009】
態様の1つに係るプログラムは、受電装置に接続されたバッテリに電力を供給可能な電磁波である第1電磁波、または前記第1電磁波より広い範囲に電力を供給可能な第2電磁波を送信可能な送信部を有する送電装置に、前記受電装置のうち、前記バッテリに蓄積された電力が所定以下の第1受電装置を検出した場合、前記第1受電装置の近傍に位置し、前記バッテリに蓄積されたエネルギーが所定以下でない第2受電装置へ前記第2電磁波を前記送信部に送信させるステップを実行させる。
【0010】
態様の1つに係るプログラムは、受電装置に接続されたバッテリに電力を供給可能な電磁波である第1電磁波、または前記第1電磁波より広い範囲に電力を供給可能な第3電磁波を送信可能な送信部を有する送電装置に、前記受電装置のうち、前記バッテリに蓄積された電力が所定以下の第1受電装置を検出した場合、前記第1受電装置の近傍に位置し、前記バッテリに蓄積されたエネルギーが所定以下でない第2受電装置へ前記受電装置の設置方向を含む全方向放射の前記第3電磁波を前記送信部に送信させるステップを実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態1に係る送電装置を備えるシステムの概要を説明するための図である。
図2図2は、実施形態1に係る送電装置を備えるシステムの概要を説明するための図である。
図3図3は、実施形態1に係る送電装置を備えるシステムの異常を説明するための図である。
図4図4は、実施形態1に係る送電装置を備えるシステムの異常を説明するための図である。
図5図5は、実施形態1に係る送電装置の構成の一例を示す図である。
図6図6は、図5に示す管理データの一例を示す図である。
図7図7は、図5に示すスケジュールデータの一例を示す図である。
図8図8は、実施形態1に係る受電装置の構成の一例を示す図である。
図9図9は、実施形態1に係る送電装置の給電スケジュールを説明するための図である。
図10図10は、実施形態1に係る送電装置のビーム幅の変更例を説明するための図である。
図11図11は、実施形態1に係る送電装置が実行する処理手順の一例を示すフローチャートである。
図12図12は、実施形態2に係る送電装置の給電スケジュールを説明するための図である。
図13図13は、実施形態2に係る送電装置の全方向放射の一例を説明するための図である。
図14図14は、実施形態2に係る送電装置が実行する処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本出願に係る送電装置、送電方法、プログラム等を実施するための複数の実施形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明により本発明が限定されるものではない。また、以下の説明における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。以下の説明において、同様の構成要素について同一の符号を付すことがある。さらに、重複する説明は省略することがある。
【0013】
(実施形態1)
図1及び図2は、実施形態1に係る送電装置を備えるシステムの概要を説明するための図である。図1及び図2に示すシステム1は、例えば、マイクロ波伝送型(空間伝送型)のワイヤレス電力伝送が可能なワイヤレス電力伝送システムを含む。ワイヤレス電力伝送は、例えば、ケーブルやプラグを用いることなく、電力を伝送することが可能な仕組みである。マイクロ波伝送型のシステム1は、エネルギー伝送として電磁波(マイクロ波)を使用する。電磁波は、電波に含まれる。マイクロ波伝送型のシステム1において使用する電磁波の周波数は、複数の周波数帯が利用可能であり、例えば、日本では、920MHz帯、2.4GHz帯、5.7GHz帯等を含む。本実施形態では、システム1は、状況に適した給電効率の向上及び安全性の確保を両立することを可能とする。システム1は、例えば、宇宙太陽光発電等に適用することができる。なお、本開示の実施形態に係るワイヤレス電力伝送システムでは、使用される電磁波の周波数帯域として上記マイクロ波に限定するものではなく、電磁波の波長として、数メートルから数pmまでの幅広い波長の電磁波を利用するとしてもよい。
【0014】
本実施形態では、システム1は、4台の受電装置20A、受電装置20B、受電装置20C及び受電装置20Dを備える場合について説明するが、台数はこれに限定されない。なお、以下の説明では、受電装置20A、受電装置20B、受電装置20C及び受電装置20Dは、区別しない場合には「受電装置20」と記載し、重複する説明を省略する。
【0015】
システム1は、送電装置10と、複数の受電装置20と、管理装置30と、を備える。送電装置10と複数の受電装置20とは、無線により通信可能な構成になっている。送電装置10と管理装置30とは、無線または有線により通信可能な構成になっている。本実施形態では、システム1は、管理装置30を備える場合について説明するが、管理装置30を備えない、あるいは、管理装置30の機能を送電装置10に組み込む構成としてもよい。
【0016】
送電装置10は、システム1において、ワイヤレスにより電力を送電する装置である。送電装置10は、給電用の電磁波を送電可能な装置である。給電用の電磁波を送電するとは、アンテナから電磁波を放射することを含む。送電装置10は、多入力多出力(Multiple-Input Multiple-Output:MIMO)アンテナ技術を用いることができる。MIMOでは、通信回路の各端部のアンテナ素子が組み合わされて、エラーを最小限に抑え、データ速度を最適にする。以下の説明において、送電装置10を「自機」と表記する場合がある。
【0017】
複数の受電装置20は、システム1において、給電用の電磁波を送電装置10から受信して電力を得る被給電装置である。受電装置20は、例えば、スマートフォン、タブレット端末、IoT(Internet of Things)センサ、工作機器、ノート型パーソナル・コンピュータ、ドローン、電気自動車、電動自転車、ゲーム機等を含む。システム1は、電磁波を干渉させないため、時間分割、周波数分割等で電磁波の使用を管理できるとしてもよい。
【0018】
受電装置20は、移動せず停止している受電装置を対象としてもよいし、移動する受電装置としてもよい。受電装置20が停止していても、送電電波を送信するためにパイロット信号は、周囲環境(部屋の状況等)をサーチするとしてよい。受電装置20が停止している場合、その受電装置20の過去に認識した位置に送電電波を送信せずに、パイロット信号を送信する他の受電装置に向けて送電電波を送信するとしてよい。
【0019】
受電装置20は、送電装置10、管理装置30にバッテリ残量低下を知らせるとしてもよい。本開示は、受電装置20がバッテリ残量低下を知らせることができない場合に適用することができる。例えば、受電装置20で急激に電力消費した場合など、バッテリ残量低下を知らせることができない場合もある。
【0020】
管理装置30は、複数の受電装置20を管理する機能を提供するサーバ装置である。管理装置30は、例えば、パーソナル・コンピュータ、タブレット端末、スマートフォン等で実現できる。管理装置30は、送電装置10と通信可能に構成されており、送電装置10との間で各種情報を送受信できる。
【0021】
図1に示す一例では、システム1は、受電装置20A、受電装置20B、受電装置20C及び受電装置20Dが、例えば、工場、施設等の設置領域における相異なる位置に設置されている。管理装置30は、受電装置20A、受電装置20B、受電装置20C及び受電装置20Dに関する管理データを装置ごとに管理する機能を有する。管理データは、例えば、受電装置20の位置、バッテリの残量、使用するアプリケーションの消費電力等の情報を有する。
【0022】
受電装置20A、受電装置20B、受電装置20C及び受電装置20Dの各々は、送電装置10との間で定められた規定信号1000を定期的に送信する。規定信号1000は、例えば、ビーコン、パイロット信号等を含む。受電装置20は、例えば、送信時間帯における相異なるタイミングで、規定信号1000を送信できる。受電装置20は、例えば、識別情報、バッテリの残量情報、消費電力情報等の各種情報を付加した規定信号1000を送信できる。消費電力情報は、装置全体の消費電力、アプリケーションごとの消費電力を含む。受電装置20は、規定信号1000を含む電磁波を放射することで、規定信号1000を送信できる。規定信号1000には、受電装置20の位置、利用アプリケーション情報などそのほか任意の情報を含むとしてよい。
【0023】
送電装置10は、規定信号1000を受信すると、当該規定信号1000に基づいて受電装置20の位置を推定する機能を有する。送電装置10は、規定信号1000を受信した電磁波の受信電磁波強度に基づいて、自機からの受電装置20への位置(方向)等を推定する。送電装置10は、推定した受電装置20の位置に対する送信用のウェイト(重み係数)を算出する。送電装置10は、規定信号1000が示す受電装置20に関する情報を管理装置30に送信することで、当該情報を受電装置20に関連付けて管理装置30に登録する。
【0024】
図2に示すように、送電装置10は、アンテナに重み係数を乗算して指向性制御を行い、給電用の送信信号を含む電磁波2000を、受電装置20A、受電装置20B、受電装置20C及び受電装置20Dの各々に向けて順次送電する。電磁波2000を送電するは、例えば、電力の供給用電磁波をアンテナが放射することを含む。指向性制御は、例えば、電磁波の放射方向と放射強度との関係を制御することを意味する。規定信号1000と送信信号の周波数が同一で伝搬路の時間変動を無視すれば、送電装置10から受電装置20への複数パスの特性は、受電装置20から送電装置10への特性と一致する。これにより、送電装置10から送電される電磁波2000は、受電装置20に向かうパスだけでなく、受電装置20とは異なる方向に向かうパスも活かした放射パターン(ビーム)になる。送電装置10は、受電装置20A、受電装置20B、受電装置20C及び受電装置20Dの各々への電磁波2000を形成する指向性制御を順次行い、電力伝送を実施する。
【0025】
図3及び図4は、実施形態1に係る送電装置10を備えるシステム1の異常を説明するための図である。図3に示すように、システム1は、受電装置20Dでバッテリ不足が発生した場合、送電装置10が受電装置20Dからの規定信号1000を受信できない状態になる。バッテリ不足は、例えば、受電装置20のバッテリの残量が閾値以下、残量がない、規定信号1000を送信できない等の状態を含む。この場合、送電装置10は、受電装置20A、受電装置20B及び受電装置20Cの各々からの規定信号1000を受信でき、受電装置20Dからの規定信号1000を受信できない。送電装置10は、定期的な規定信号1000を受信しない受電装置20Dをバッテリ不足の第1受電装置として検知する。
【0026】
受電装置にてバッテリが失われるシチュエーションとしては、送電装置10からの供給可能電力が受電装置20での消費電力よりも小さい場合や、受電装置20の増加により1台あたりの供給電力が減少した場合や、電力供給の優先度が高い受電装置20の出現により、他の受電装置20への供給可能電力が減少した場合や、受電装置20が、遠ざかる方向に移動してその受電装置20への供給電力が減少した場合や、受電装置20の消費電力が急増(例えば、頻発な通信を要することになった)した場合などがある。
【0027】
図4に示すように、送電装置10は、アンテナに重み係数を乗算して指向性制御を行い、給電用の送信信号を含む電磁波2000を、受電装置20A、受電装置20B及び受電装置20Cの各々に向けて順次送電し、受電装置20Dには電磁波2000を送電しない。これにより、システム1は、送電装置10が電力を失った受電装置20Dに電力を給電しない状態になる。このため、本実施形態では、システム1は、電力を失った受電装置20への給電が可能な送電装置10等を提供する。
【0028】
[実施形態1に係る送電装置の構成]
図5は、実施形態1に係る送電装置10の構成の一例を示す図である。図6は、図5に示す管理データの一例を示す図である。図7は、図5に示すスケジュールデータの一例を示す図である。
【0029】
図5に示すように、送電装置10は、アンテナ11と、送信信号生成部12と、送信部13と、受信部14と、推定部15と、記憶部16と、制御部17と、を備える。制御部17は、送信信号生成部12、送信部13、受信部14、推定部15、記憶部16等と電気的に接続されている。本実施形態では、説明を簡単化するために、送電装置10は、アンテナ11が4つのアンテナ素子11Aを備える場合について説明するが、アンテナ素子11Aの数はこれに限定されない。
【0030】
アンテナ11は、指向性制御(ビームフォーミング)が可能な構成になっている。アンテナ11は、複数のアンテナ素子11Aを備えたアンテナアレイとなっている。アンテナ11は、例えば、複数のアンテナ素子11Aのそれぞれが同じ電磁波を放射し、それぞれの位相と電力強度を調整することで、特定の方向では電磁波を強め、別の方向では打ち消し合って弱めることが可能な構成になっている。アンテナ11は、送信信号を含む電磁波2000を放射し、受電装置20からの信号を含む電磁波を受信する。アンテナ11は、受信した信号を受信部14に供給する。アンテナ11は、電磁波2000の放射が最大となる方向がメインローブである。
【0031】
送信信号生成部12は、受電装置20に送電する電流を電磁波に変換した給電用の送信信号を生成する。送信信号は、電力を供給可能な電磁波2000を送信するための信号である。送信信号生成部12は、電力源から電流を伝送周波数の電磁波に変換して送信信号を生成する。電力源は、例えば、商用電源、直流電源、バッテリ等を含む。送信信号生成部12は、生成した送信信号を送信部13に供給する。
【0032】
送信部13は、アンテナ11の複数のアンテナ素子11Aと電気的に接続されている。送信部13は、給電用の送信信号を含む電磁波2000をアンテナ11から放射させることで、電磁波2000を送電する。送信部13は、複数のアンテナ素子11Aで形成可能なビームに対応したウェイトを適用することで、電磁波2000を複数のアンテナ素子11Aから特定の方向に放射させる。送信部13は、制御部17が指示したウェイトを複数のアンテナ素子11Aに適用する。送信部13は、通信用信号を含む電波をアンテナ11から放射させることで、通信用信号を送信する。送信部13は、通信用信号を管理装置30、他の通信装置等に送信する。
【0033】
受信部14は、アンテナ11の複数のアンテナ素子11A、推定部15等と電気的に接続されている。受信部14は、アンテナ11を介して受信した受電装置20からの電磁波から受信信号を抽出する。受信信号は、例えば、上述した規定信号1000等を含む。受信部14は、抽出した受信信号を推定部15、制御部17等に供給する。
【0034】
推定部15は、受電装置20から受信した既知である規定信号1000から電磁波伝搬環境を推定する。電磁波伝搬環境は、例えば、送電装置10と受電装置20との間で電磁波を伝搬する空間を含む。推定部15は、例えば、空間における電磁波伝搬の状況を推定する。電磁波伝搬の状況は、例えば、直接波が支配的な環境、反射波が生じるマルチパスリッチな環境等を識別可能な状況を含む。推定部15は、受信信号から受信応答ベクトル(端末到来方向)を推定する。推定部15は、例えば、受信信号に含まれる既知の規定信号1000と既知の参照信号との比較により受信応答ベクトルを推定する。推定部15は、例えば、空間における電磁波伝搬の状況を把握するために、規定信号1000の受信レベル、感度、受信応答ベクトル、参照用の伝搬モデル、機械学習プログラム等を用いて、伝搬環境、端末到来方向、距離等を推定する。推定部15は、受電装置20から受信した規定信号10000を含む電波の強度と推定した端末到来方向に基づいて、当該受電装置20の位置を推定する。推定部15は、規定信号1000に基づく推定結果を制御部17に供給する。
【0035】
記憶部16は、プログラム及びデータを記憶できる。記憶部16は、半導体記憶媒体、及び磁気記憶媒体等の任意の非一過的な記憶媒体を含んでよい。記憶部16は、メモリカード、光ディスク、又は光磁気ディスク等の記憶媒体と、記憶媒体の読み取り装置との組み合わせを含んでよい。記憶部16は、RAMなどの一時的な記憶領域として利用される記憶デバイスを含んでよい。
【0036】
記憶部16は、プログラム16A、ウェイトデータ16B、管理データ16C、スケジュールデータ16D等を記憶できる。プログラム16Aは、送電装置10の各種動作に関する処理を実現するための機能をそれぞれ提供できる。プログラム16Aは、ワイヤレス電力伝送に関する各機能を提供できる。ウェイトデータ16Bは、例えば、複数の指向性パターンごとに、アンテナ11の複数のアンテナ素子11Aから放射する信号の振幅と位相を調整するための複数のウェイト(重み係数)を示すデータを有する。ウェイトデータ16Bは、例えば、指向性パターンに対応する複数のアンテナ素子11Aの組み合わせを示すデータを有する。ウェイトデータ16Bは、例えば、ウェイトベクトル(重み係数ベクトル)が各アンテナ素子11Aにおける受信応答ベクトルにより一意に表わせることに着目し、受信応答ベクトルの時間変動を推定することによって得られたウェイトを示すデータを含む。
【0037】
管理データ16Cは、複数の受電装置20の管理に用いるデータである。例えば、管理データ16Cは、図6に示すように、識別情報、位置情報、消費電力情報、履歴情報等の項目を有する。識別情報の項目は、受電装置20A、受電装置20B、受電装置20C及び受電装置20Dを識別するための情報が設定される。位置情報の項目は、受電装置20Aの位置P1、受電装置20Bの位置P2、受電装置20Cの位置P3及び受電装置20Dの位置P4を示す情報が設定される。位置情報は、例えば、受電装置20の位置、送電装置10からの方向(端末到来方向)等の情報を有する。消費電力情報の項目は、受電装置20Aの電力W1、受電装置20Bの電力W2、受電装置20Cの電力W3及び受電装置20Dの電力W4を示す情報が設定される。本実施形態では、消費電力情報は、例えば、受電装置20の全体の消費電力、受電装置20にインストールされているアプリケーションごとの消費電力等を有している。履歴情報の項目は、受電装置20Aの履歴H1、受電装置20Bの履歴H2、受電装置20Cの履歴H3及び受電装置20Dの履歴H4を示す情報が設定される。履歴情報は、例えば、受電装置20からの規定信号1000の受信履歴、受電装置20のバッテリの残量の履歴等の情報を有している。
【0038】
スケジュールデータ16Dは、受電装置20A、受電装置20B、受電装置20C及び受電装置20Dに対する送電装置10の給電スケジュールを示すデータを有する。例えば、スケジュールデータ16Dは、図7に示すように、受電装置20A、受電装置20B、受電装置20C及び受電装置20Dに対する電力伝送の時分割の給電スケジュールSCを示す。図7では、横方向が時間を示している。図7に示す一例では、スケジュールデータ16Dは、受電装置20A、受電装置20B、受電装置20C及び受電装置20Dの2周期分の給電スケジュールSCを示している。スケジュールデータ16Dは、受電装置20Aの電力伝送TA、受電装置20Bの電力伝送TB、受電装置20Cの電力伝送TC及び受電装置20Dの電力伝送TDの給電スケジュールSCを示している。電力伝送TA、電力伝送TB、電力伝送TC及び電力伝送TDは、例えば、受電装置20の消費電力、バッテリの残量等に応じて設定された伝送時間、電力量等を示している。
【0039】
図5に示すように、制御部17は、1又は複数の演算装置を含む。演算装置は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、SoC(System-on-a-Chip)、MCU(Micro Control Unit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、およびコプロセッサを含むが、これらに限定されない。制御部17は、プログラム16Aを演算装置に実行させることにより、送電装置10の各種動作に関する処理を実現する。制御部17は、プログラム16Aにより提供される機能の少なくとも1部を専用のIC(Integrated Circuit)により実現してもよい。
【0040】
制御部17は、プログラム16Aを実行することで、複数の受電装置20のうちバッテリ不足の第1受電装置を検知した場合に、該第1受電装置の近傍の第2受電装置に給電する第2電磁波を、第1受電装置及び第2受電装置の給電が可能なように変更して送信部13に送電させる。制御部17は、推定部15の推定結果に基づいて、電磁波2000の指向性制御を行う。
【0041】
例えば、制御部17は、検知部17A及び送電制御部17Bの機能部を有する。制御部17は、プログラム16Aを実行することで、検知部17A及び送電制御部17B等の機能部として機能する。
【0042】
検知部17Aは、規定信号1000を受信できない受電装置20をバッテリ不足の第1受電装置として検知する。検知部17Aは、前回の送信時間帯で規定信号1000を受信できていた受電装置20から規定信号1000が受信できなくなった場合に、当該受電装置20をバッテリ不足の第1受電装置として検知する。検知部17Aは、受電装置20からの規定信号1000が所定の判定時間にわたって受信できない場合に、当該受電装置20をバッテリ不足の第1受電装置として検知する。これにより、送電装置10は、受電装置20との間における障害物の通過、移動等を待つことができるので、バッテリ不足の検知精度を向上させることができる。
【0043】
検知部17Aは、複数の受電装置20のうち、バッテリ不足の第1受電装置を検知した場合に、該第1受電装置の近傍の第2受電装置を検知する。検知部17Aは、管理データ16Cの位置情報と検知条件とに基づいて、第1受電装置の位置、方向等に近い第2受電装置を検知する。検知条件は、例えば、第1受電装置の位置、方向等から近傍と判定するための条件を有する。検知条件は、例えば、自機からの第1受電装置の方向に対する第2受電装置の方向の範囲、第1受電装置と第2受電装置との距離と比較するしきい値または範囲等の条件を有する。検知部17Aは、例えば、第1受電装置に最も近い受電装置20を第2受電装置として検知する。
【0044】
送電制御部17Bは、ウェイトデータ16Bに基づいて、送信信号のメインローブが送電対象の受電装置20の方向に向かわせるウェイトを送信部13に適用することで、電磁波2000を複数のアンテナ素子11Aから特定の方向に放射させる。送電制御部17Bは、スケジュールデータ16Dに基づいて、電力伝送に応じた送信信号を送信信号生成部12に生成させ、送信部13から送信させる制御を行う。送電制御部17Bは、複数の受電装置20に対する給電スケジュールSCに基づいて、複数の受電装置20に対する第1電磁波または第2電磁波の送電を制御する。第1電磁波は、複数の受電装置20に対する給電に用いられる電磁波である。第2電磁波は、第1受電装置の近傍の第2受電装置に対する給電に用いられる電磁波である。
【0045】
送電制御部17Bは、複数の受電装置20のうちバッテリ不足の第1受電装置を検知した場合に、該第1受電装置の近傍の第2受電装置に給電する第2電磁波を、第1受電装置及び第2受電装置の給電が可能なように変更して送信部13に送電させる。送電制御部17Bは、検知部17Aが検知した第2受電装置に給電する第2電磁波を、第1受電装置及び第2受電装置の給電が可能なように変更して送信部13に送電させる。送電制御部17Bは、第2電磁波として、第1電磁波よりもビーム幅が広い電磁波を送信部13に送電させる。
【0046】
送電制御部17Bは、受電装置20から受信した規定信号1000に基づいて、給電スケジュールSCを生成または変更する。送電制御部17Bは、複数の受電装置20から規定信号1000を受信した場合、複数の受電装置20に対する給電スケジュールSCを生成し、スケジュールデータ16Dに設定する。送電制御部17Bは、複数の受電装置20のうちバッテリ不足の第1受電装置を検知した場合に、第2電磁波を送電するように給電スケジュールSCを変更する。送電制御部17Bは、複数の受電装置20のうちバッテリ不足の第1受電装置を検知した場合に、第1受電装置に対する給電スケジュールSCを停止した後、第2受電装置に対して、第2電磁波を送信部13に送電させる。送電制御部17Bは、バッテリ不足の第1受電装置の給電スケジュールSCの時間帯において、第2電磁波を送信部13に送電させる。送電制御部17Bは、第2電磁波を送信部13に送電させた後、第1受電装置から規定信号1000を受信した場合に、第2電磁波の送電を終了する。
【0047】
以上、本実施形態に係る送電装置10の機能構成例について説明した。なお、図5を用いて説明した上記の構成はあくまで一例であり、本実施形態に係る送電装置10の機能構成は係る例に限定されない。本実施形態に係る送電装置10の機能構成は、仕様や運用に応じて柔軟に変形可能である。
【0048】
[実施形態1に係る受電装置の構成]
図8は、実施形態1に係る受電装置20の構成の一例を示す図である。図8に示すように、受電装置20は、アンテナ21と、生成部22と、変換部23と、バッテリ24と、を備える。
【0049】
アンテナ21は、生成部22及び変換部23と電気的に接続されている。アンテナ21は、例えば、規定信号1000を含む電磁波を放射し、送電装置10からの信号を含む電磁波を受信する。アンテナ21は、受信した電磁波を変換部23に供給する。
【0050】
生成部22は、規定信号1000を生成し、該規定信号1000を含む電磁波をアンテナ21に放射させる。生成部22は、所定のタイミングで規定信号1000を生成する。所定のタイミングは、例えば、一定時間が経過したタイミング、指定されたタイミング等を含む。生成部22は、規定信号1000とは異なる信号を生成する構成としてもよい。本実施形態では、生成部22は、例えば、識別情報、バッテリ24の残量情報、消費電力情報等の各種情報を付加した規定信号1000を生成する。
【0051】
変換部23は、バッテリ24と電気的に接続されている。変換部23は、アンテナ21で受信した電磁波を直流電流に変換し、この直流電流を利用してバッテリ24を充電する。変換部23は、例えば、公知である整流回路を用いて、電磁波を直流電流に変換する。
【0052】
バッテリ24は、変換部23と電気的に接続されている。バッテリ24は、充電可能な電池を含む。バッテリ24は、例えば、Qi(ワイヤレス給電の国際標準規格)に対応したバッテリを含む。バッテリ24は、蓄電された電力を受電装置20において電力を必要とする各部等に供給できる。
【0053】
以上、本実施形態に係る受電装置20の機能構成例について説明した。なお、図8を用いて説明した上記の構成はあくまで一例であり、本実施形態に係る受電装置20の機能構成は係る例に限定されない。本実施形態に係る受電装置20の機能構成は、仕様や運用に応じて柔軟に変形可能である。
【0054】
本実施形態では、受電装置20は、識別情報、バッテリ24の残量情報、消費電力情報等の各種情報を付加した規定信号1000を生成して送信する場合について説明するが、これに限定されない。例えば、受電装置20は、GPS(Global Positioning System)受信機等の位置検出手段を構成に追加し、現在位置を示す位置情報を規定信号1000に付加するように構成してもよい。
【0055】
[実施形態1に係る送電装置の給電動作例]
図9は、実施形態1に係る送電装置10の給電スケジュールを説明するための図である。図10は、実施形態1に係る送電装置10のビーム幅の変更例を説明するための図である。図9及び図10では、送電装置10は、上述した4台の受電装置20A、受電装置20B、受電装置20C及び受電装置20Dに対して電力伝送用の電磁波2000を送電することを前提とする。
【0056】
送電装置10は、受電装置20A、受電装置20B、受電装置20C及び受電装置20Dから規定信号1000を受信すると、図9に示す給電スケジュールSC1に基づいて、電力伝送用の電磁波2000を順次送電する。詳細には、送電装置10は、電力伝送TAに応じた送信信号を含む電磁波2000を送電し、電力伝送TBに応じた送信信号を含む電磁波2000を送電し、電力伝送TCに応じた送信信号を含む電磁波2000を送電し、電力伝送TDに応じた送信信号を含む電磁波2000を送電する。これにより、送電装置10は、受電装置20A、受電装置20B、受電装置20C及び受電装置20Dの各々に適した電力量の電磁波2000によってワイヤレス電力伝送を行う。
【0057】
その後、受電装置20Dは、バッテリ不足が発生し、規定信号1000を送電装置10に送信できない状態になる。この場合、送電装置10は、受電装置20A、受電装置20B及び受電装置20Cの各々からの規定信号1000を受信でき、受電装置20Dからの規定信号1000を受信できないため、受電装置20Dをバッテリ不足の第1受電装置として検知する。送電装置10は、受電装置20A、受電装置20B及び受電装置20Cのうち、受電装置20Dの近傍の受電装置20Cを第2受電装置として検知する。送電装置10は、給電スケジュールSC1を受電装置20Dに電力伝送を行わない給電スケジュールSC2に変更する。本実施形態では、給電スケジュールSC2は、給電スケジュールSC1の電力伝送TDの部分がブランクになっているが、時間を詰めたり、受電装置20A、受電装置20B及び受電装置20Cの電力伝送時間を長くしたりしてもよい。
【0058】
送電装置10は、変更した給電スケジュールSC2に基づいて、受電装置20A、受電装置20B及び受電装置20Cに対応した電力伝送用の電磁波2000を順次送電する。これにより、送電装置10は、受電装置20Dの方向に電磁波2000を送電しないので、当該方向に人や動物が存在していた場合に、安全性を確保することができる。
【0059】
送電装置10は、受電装置20Dから規定信号1000を受信できない状態が継続した場合、給電スケジュールSC2を第2受電装置である受電装置20Cに対する電磁波のビーム幅を変更して送電する給電スケジュールSC3に変更する。送電装置10は、変更した給電スケジュールSC3に基づいて、電力伝送用の電磁波2000を受電装置20A及び受電装置20Bに送電する。そして、図10に示すように、送電装置10は、受電装置20Cへの電磁波2000のビーム幅2100を変更し、電力伝送TCDに応じた送信信号を含む電磁波2000を送電する。本実施形態では、送電装置10は、電磁波2000のメインローブの方向を受電装置20Cから受電装置20Dへずらし、かつ、ビーム幅2100を受電装置20Dの方向へ広げることで、受電装置20Cへの電磁波2000を受電装置20Dでも受信可能にしている。これにより、送電装置10は、受電装置20Cへの電磁波2000を受電装置20Dにも到来させることで、バッテリ不足の受電装置20Dが当該電磁波2000を受信してバッテリ24を充電することができる。
【0060】
受電装置20Dは、バッテリ24を充電すると、規定信号1000を送電装置10に対して送信する。そして、送電装置10は、受電装置20Dから規定信号1000を受信すると、受電装置20Dのバッテリ不足が解消したと判定し、給電スケジュールSC3を通常の給電スケジュールSC1に変更する。その後、送電装置10は、受電装置20A、受電装置20B、受電装置20C及び受電装置20Dから規定信号1000を受信すると、給電スケジュールSC1に基づいて、電力伝送用の電磁波2000を順次送電する。
【0061】
以上により、送電装置10は、受電装置20Dからの定期的な規定信号1000がなくなると、受電装置20Dを除く他の受電装置20A、受電装置20B及び受電装置20Cの全てに対する電磁波2000(第1電磁波)による電力伝送を行う。そして、送電装置10は、受電装置20Dの近傍の受電装置20Cに対する第1電磁波のビーム幅2100を広げた電磁波2000(第2電磁波)で電力伝送を行うことができる。これにより、送電装置10は、他の受電装置20への電磁波2000によってバッテリ不足の受電装置20を充電することができるので、電力を失った受電装置20の給電を改善することができる。
【0062】
また、送電装置10は、検知した第2受電装置に給電する第2電磁波を、第1受電装置及び第2受電装置の給電が可能なように変更して送信部13から送電する。これにより、送電装置10は、バッテリ不足ではない受電装置20に送電する電磁波2000を用いることで、バッテリ不足の受電装置20に向けて電磁波2000を送電する必要がなくなり、安全性を向上させることができる。
【0063】
また、送電装置10は、規定信号1000を受信できない受電装置20をバッテリ不足の第1受電装置として検知する。これにより、送電装置10は、最後に受信した規定信号1000を用いることで、通信構成でバッテリ不足の受電装置20を検知できるので、装置構成の増加を抑制することができる。
【0064】
また、送電装置10は、バッテリ不足の受電装置20を検知した場合、第2電磁波として、第1電磁波よりもビーム幅2100が広い電磁波2000を送電する。これにより、送電装置10は、ビーム幅2100を広げた電磁波2000によってバッテリ不足の受電装置20を充電させる可能性を高めることができるので、電力を失った受電装置20の給電を改善することができる。
【0065】
また、送電装置10は、第1受電装置から最後に受信した規定信号1000に基づいて、第1受電装置の近傍の第2受電装置を検知する。例えば、バッテリ不足の場合、受電装置20は、その位置に留まっている可能性が高い。これにより、送電装置10は、ビーム幅2100を広げた電磁波2000を第2受電装置に送電することで、バッテリ不足の受電装置20を充電させる可能性を高めることができるので、電力を失った受電装置20の給電を改善することができる。
【0066】
また、送電装置10は、複数の受電装置20に対する給電スケジュールSCに基づいて、複数の受電装置20に対する第1電磁波または第2電磁波の送電を制御する。これにより、送電装置10は、第1受電装置及び第2受電装置のスケジュールを用いて、ビーム幅2100を広げた電磁波2000を第2受電装置に送電できるので、バッテリ不足の受電装置20を充電させる可能性をより一層高めることができる。
【0067】
また、送電装置10は、受電装置20から受信した規定信号1000に基づいて、給電スケジュールを生成または変更する。これにより、送電装置10は、規定信号1000受信した受電装置20のスケジュールを生成または変更できるので、設置環境に適したスケジュールで複数の受電装置20に給電することができる。さらに、送電装置10は、バッテリ不足の受電装置20を検知した場合、スケジュールを一時的に変更して受電装置に給電するとともに、バッテリ不足の受電装置にも給電することができる。
【0068】
また、送電装置10は、バッテリ不足の第1受電装置の給電スケジュールの時間帯(1周期)において、第2電磁波を送信部13に送電させる。これにより、送電装置10は、複数の受電装置に電磁波2000を送電する場合も、給電スケジュールの変更を最小限に抑えることができるので、他の受電装置20への影響を最小限にし、バッテリ不足の受電装置を給電することができる。
【0069】
また、送電装置10は、第2電磁波を送信部13に送電させた後、第1受電装置から規定信号1000を受信した場合に、第2電磁波の送電を終了する。これにより、送電装置10は、第1受電装置のバッテリ不足の救済を確認し、通常のスケジュールに戻すことができるので、メンテナンスを不要とすることができる。
【0070】
また、送電装置10は、受電装置20Cへの電磁波2000を受電装置20Dにも到来させたにもかかわらず、受電装置20Dから規定信号1000を受信できない状態が継続する場合、バッテリ不足と判定した受電装置20Dを通知する。例えば、送電装置10は、バッテリ不足と判定した受電装置20Dを示す通知情報を生成し、管理装置300に送信することで、通知情報を管理者等に対して出力させる。これにより、送電装置10は、複数の受電装置20の中のバッテリ不足の受電装置20を認識させることで、当該受電装置20の迅速な対処に貢献することができる。
【0071】
なお、図9に示す一例では、送電装置10は、給電スケジュールSC1、給電スケジュールSC2、給電スケジュールSC3の順序で用いる場合について説明したが、これに限定されない。例えば、送電装置10は、バッテリ不足の第1受電装置を検知した場合、給電スケジュールSC2を用いずに、給電スケジュールSC3に基づいて第2電磁波を送電するように構成してもよい。
【0072】
[実施形態1に係る送電装置の処理手順]
図11は、実施形態に係る送電装置10が実行する処理手順の一例を示すフローチャートである。図11に示す処理手順は、送電装置10の制御部17がプログラム16Aを実行することによって実現される。図11に示す処理手順は、制御部17によって繰り返し実行される。
【0073】
図11に示すように、送電装置10の制御部17は、受信部14を介して、複数の受電装置20から規定信号1000を受信する(ステップS101)。例えば、制御部17は、送信時間帯において、アンテナ11で受信した電磁波から規定信号1000を取得する。制御部17は、ステップS101の処理が終了すると、処理をステップS102に進める。
【0074】
制御部17は、全ての受電装置20から規定信号1000を受信したか否かを判定する(ステップS102)。例えば、制御部17は、受信した全ての規定信号1000が示す識別情報が管理データ16Cの識別情報と一致する場合に、全ての受電装置20から規定信号1000を受信したと判定する。制御部17は、全ての受電装置20から規定信号1000を受信したと判定した場合(ステップS102でYes)、処理をステップS103に進める。
【0075】
制御部17は、給電スケジュールSCに基づいて、複数の受電装置20に対する電力伝送を制御する(ステップS103)。例えば、制御部17は、給電スケジュールSCが示す受電装置20ごとに、受電装置20に対応したウェイトを送信部13に設定し、送信信号生成部12が生成した送信信号を含む電磁波2000をアンテナ11から放射させる。これにより、送信部13は、複数の受電装置に対して電力供給用の電磁波2000を順次送電する。制御部17は、ステップS103の処理が終了すると、図11に示す処理手順を終了させる。
【0076】
また、制御部17は、全ての受電装置20から規定信号1000を受信していないと判定した場合(ステップS102でNo)、処理をステップS104に進める。制御部17は、バッテリ不足の第1受電装置を検知する(ステップS104)。例えば、制御部17は、複数の受電装置20のうち、送信時間帯において規定信号1000を受信していない受電装置20を第1受電装置として検知する。制御部17は、ステップS104の処理が終了すると、処理をステップS105に進める。
【0077】
制御部17は、第1受電装置の近傍の第2受電装置を検知する(ステップS105)。例えば、制御部17は、管理データ16Cの位置情報に基づいて、ステップS104で検知した第1受電装置に最も近い受電装置20を第2受電装置として検知する。制御部17は、ステップS105の処理が終了すると、処理をステップS106に進める。
【0078】
制御部17は、第2受電装置に給電する第2電磁波を、第1受電装置及び第2受電装置の給電が可能なように変更する(ステップS106)。例えば、制御部17は、第1受電装置と第2受電装置との位置関係に基づいて、第2受電装置に送電する第2電磁波で第1受電装置の受電が可能となるように、第2電磁波のビーム幅2100を変更する。制御部17は、第2電磁波で第1受電装置及び第2受電装置を給電するため、第2電磁波を放射する時間が変更前よりも長くなるように、給電スケジュールSCを変更する。制御部17は、第2電磁波の変更に基づいて給電スケジュールSCを変更すると、処理をステップS107に進める。
【0079】
制御部17は、変更した給電スケジュールSCに基づいて、複数の給電装置に対する電力伝送を制御する(ステップS107)。例えば、制御部17は、変更した給電スケジュールSCが示す受電装置20ごとに、受電装置20に対応したウェイトを送信部13に設定し、送信信号生成部12が生成した送信信号を含む電磁波2000をアンテナ11から放射させる。これにより、送信部13は、第1受電装置及び第2受電装置に対してビーム幅2100を広げた第2電磁波を送電し、他の受電装置20の各々には、受電装置20に対応した電磁波2000を順次送電する。制御部17は、ステップS107の処理が終了すると、処理をステップS108に進める。
【0080】
制御部17は、第1受電装置から規定信号1000を受信したか否かを判定する(ステップS108)。例えば、制御部17は、受信部14で受信した規定信号1000の識別情報が第1受電装置の識別情報と一致する場合に、第1受電装置から規定信号1000を受信したと判定する。制御部17は、第1受電装置から規定信号1000を受信したと判定した場合(ステップS108でYes)、処理をステップS109に進める。
【0081】
制御部17は、変更した第2電磁波及び給電スケジュールSCを元に戻す(ステップS109)。例えば、制御部17は、ステップS106で変更した第2電磁波のビーム幅2100及び給電スケジュールSCを変更前のビーム幅2100及び給電スケジュールSCに戻す。制御部17は、ステップS109の処理が終了すると、図11に示す処理手順を終了させる。
【0082】
また、制御部17は、第1受電装置から規定信号1000を受信していないと判定した場合(ステップS108でNo)、処理をステップS110に進める。制御部17は、判定時間が経過したか否かを判定する(ステップS110)。例えば、制御部17は、ステップS107で第2電磁波を送電してからの時間が設定された判定時間以上になった場合に、判定時間が経過したと判定する。制御部17は、判定時間が経過していないと判定した場合(ステップS110でNo)、処理を既に説明したステップS108に戻し、処理を継続する。また、制御部17は、判定時間が経過したと判定した場合(ステップS110でYes)、処理をステップS111に進める。
【0083】
制御部17は、検知したバッテリ不足の受電装置20の通知処理を実行する(ステップS111)。通知処理は、例えば、検知したバッテリ不足の受電装置20を通知する通知情報を生成する処理、当該通知情報を管理装置300等に送信する処理等を含む。制御部17は、通知処理を実行することで、検知したバッテリ不足の受電装置20を管理装置300等に通知する。制御部17は、ステップS111の処理が終了すると、図11に示す処理手順を終了させる。
【0084】
(実施形態2)
実施形態2に係るシステム1は、実施形態1と同様に、送電装置10と、複数の受電装置20と、管理装置30と、を備える。送電装置10及び受電装置20は、基本構成が実施形態1の送電装置10及び受電装置20と同一の構成になっている。以下の説明では、実施形態1と異なる構成について説明する。
【0085】
送電装置10は、上述した図5に示したアンテナ11、送信信号生成部12、送信部13、受信部14、推定部15、記憶部16及び制御部17を備える。制御部17は、検知部17A及び送電制御部17Bの機能部を有する。実施形態2に係る送電装置10は、送電制御部17Bが以下の機能を有する。
【0086】
送電制御部17Bは、複数の受電装置20のうちバッテリ不足の第1受電装置を検知した場合に、第1受電装置の設置方向を含む全方向放射の第3電磁波を、送信部13に送電させる。送電制御部17Bは、検知部17Aが第1受電装置を検知した場合に、第1受電装置の設置方向を含む全方向放射の第3電磁波を送信部13に送電させる。送電制御部17Bは、複数の受電装置20に対する給電スケジュールSCに基づいて、複数の受電装置20に対する第1電磁波または第3電磁波の送電を制御する。送電制御部17Bは、複数の受電装置20のうちバッテリ不足の第1受電装置を検知した場合に、第1受電装置に対する給電スケジュールSCを停止した後、第1受電装置の設置方向を含む全方向放射の第3電磁波を送信部13に送電させる。送電制御部17Bは、バッテリ不足の第1受電装置の給電スケジュールSCの時間帯において、第3電磁波を送信部13に送電させる。
【0087】
このように、本開示では、たとえ受電装置20が移動したとしても、バッテリが低下した受電装置20に対して、他の給電対象の受電装置20になるべく影響のないように、近くの受電装置20へのビーム幅を広げてバッテリが低下した受電装置20に給電を行うことができる。また、バッテリが失われた受電装置20が移動してしまうと、その受電装置20からパイロット信号などで位置を特定することが出来ない。これに対して、送電側にカメラを設置し、カメラから見える範囲で、給電対象の受電装置20を認識し、カメラによってバッテリが失われた受電装置20の位置を特定し、近くの給電対象である受電装置20へのビーム幅を広げることで、バッテリが失われた受電装置20が移動していてもその受電装置20に給電することができる。
【0088】
また、本開示では、カメラの設置不可、あるいは、カメラ設置してもカメラの見える範囲外に、バッテリが失われた受電装置20が移動している場合、管理装置30(記録装置)に登録されている情報を元に、ビーム幅を広げることで電波が放射される範囲を広げて、カメラにより見えない範囲であっても電波エネルギーを受電装置20に給電することができる。
【0089】
本開示では、バッテリが失われた受電装置20へ、ビーム幅を広げて給電する場合に、制限時間(例えば10秒とか)を設けて、まずは現在給電対象となっている複数の受電装置20に対して順番にビーム幅を広げることができる。また、本開示では、なるべく全体に影響を与えないよう制御することを優先的に行い、制限時間内にバッテリが失われた受電装置20から応答がなければ順番にビーム幅を広げる対象の受電装置20を切り替え、それでもバッテリが失われた受電装置20から応答がなければ、全方向放射のタイムインターバルを使って電力伝送する、という制御にすることができる。
【0090】
[実施形態2に係る送電装置の給電動作例]
図12は、実施形態2に係る送電装置10の給電スケジュールSCを説明するための図である。図13は、実施形態2に係る送電装置10の全方向放射の一例を説明するための図である。図12及び図13では、送電装置10は、上述した4台の受電装置20A、受電装置20B、受電装置20C及び受電装置20Dに対して電力伝送用の電磁波2000を送電することを前提とする。
【0091】
本開示の全方向放射には、送電装置10から球面状態で放射される電磁波を含むとしてよい。すなわち、本開示の全方向放射には、3次元的な送信原点に対して空間球対象の電磁波の場合や、2次元的な送信原点をとおる所定z軸方向に対して軸対称な電磁波を含むとしてよい。空間球対象の電磁波は、互いに直行する軸をx軸、y軸、z軸とし、原点からの距離をr、z軸とのなす角をθ、xy平面でのx軸とのなす角をφとした場合の球座標とした場合に、座標(r,θ,φ)での電磁波Eが、rにのみ依存する電磁波E(r)であるとしてよい。
【0092】
また、本開示の全方向放射には、送信する電磁波のビームフォーミングされている方向が、互いに直行する軸をx軸、y軸、z軸とし、原点からの距離をr、z軸とのなす角をθ、xy平面でのx軸とのなす角をφとした場合に、送信する電磁波のビームフォーミング方向が、所定周期Tでφ方向について0から2πまで変化する放射であるとしてよい。また、この場合、電磁波は、所定周期Tでφ方向について0から2πまで離散的、もしくは連続的にビームフォーミング方向が変化するとしてもよい。
【0093】
送電装置10は、受電装置20A、受電装置20B、受電装置20C及び受電装置20Dから規定信号1000を受信すると、図12に示す給電スケジュールSC1に基づいて、電力伝送用の電磁波2000を順次送電する。これにより、送電装置10は、受電装置20A、受電装置20B、受電装置20C及び受電装置20Dの各々に適した電力量の電磁波2000によってワイヤレス電力伝送を行う。
【0094】
その後、受電装置20Dは、バッテリ不足が発生し、規定信号1000を送電装置10に送信できない状態になっている。この場合、送電装置10は、受電装置20A、受電装置20B及び受電装置20Cの各々からの規定信号1000を受信でき、受電装置20Dからの規定信号1000を受信できないため、受電装置20Dをバッテリ不足の第1受電装置として検知する。送電装置10は、受電装置20A、受電装置20B及び受電装置20Cのうち、受電装置20Dの近傍の受電装置20Cを第2受電装置として検知する。送電装置10は、給電スケジュールSC1を受電装置20Dに電力伝送を行わない給電スケジュールSC2に変更する。送電装置10は、変更した給電スケジュールSC2に基づいて、受電装置20A、受電装置20B及び受電装置20Cに対応した電力伝送用の電磁波2000を順次送電する。
【0095】
送電装置10は、受電装置20Dから規定信号1000を受信できない状態が継続した場合、給電スケジュールSC2を第2受電装置である受電装置20Cに全方向放射の第3電磁波を送電する給電スケジュールSC4に変更する。送電装置10は、変更した給電スケジュールSC4に基づいて、電力伝送用の電磁波2000を受電装置20A、受電装置20B及び受電装置20Cに順次送電する。給電スケジュールSC4は、給電スケジュールSC1の電力伝送TDの部分を、全方向放射のスケジュールに変更されている。このため、送電装置10は、以下のように、全方向放射の電磁波を送電する制御を行う。
【0096】
図13に示すように、送電装置10は、バッテリ不足の受電装置20Dの設置方向2200を含む全方向放射の第3電磁波2300を送電する。設置方向2200は、例えば、自機からバッテリ不足の受電装置20Dへの方向を含む。設置方向2200は、管理データ16Cが示す受電装置20Dの位置情報に基づいて推定する。本実施形態では、第3電磁波2300は、自機から複数の受電装置20の全てへ向かう全方向になっているが、これに限定されない。第3電磁波2300は、例えば、自機を中心とした360度の方向を全方向として放射する電磁波でもよい。送電装置10は、例えば、アンテナ11における所定のアンテナ素子のパワーを増加させることで、全方向放射の第3電磁波2300を送電する。これにより、送電装置10は、第3電磁波2300を受電装置20Dにも到来させることで、バッテリ不足の受電装置20Dが当該電磁波2000を受信してバッテリ24を充電することができる。
【0097】
受電装置20Dは、バッテリ24を充電すると、規定信号1000を送電装置10に対して送信する。そして、送電装置10は、受電装置20Dから規定信号1000を受信すると、受電装置20Dのバッテリ不足が解消したと判定し、給電スケジュールSC3を通常の給電スケジュールSC1に変更する。その後、送電装置10は、受電装置20A、受電装置20B、受電装置20C及び受電装置20Dから規定信号1000を受信すると、給電スケジュールSC1に基づいて、電力伝送用の電磁波2000を順次送電する。
【0098】
以上により、送電装置10は、受電装置20Dからの定期的な規定信号1000がなくなると、受電装置20A、受電装置20B、受電装置20C及び受電装置20Dの全てに対する第3電磁波2300で電力伝送を行うことができる。これにより、送電装置10は、全方向放射の第3電磁波2300によってバッテリ不足の受電装置20を充電することができるので、電力を失った受電装置20の給電を改善することができる。
【0099】
また、送電装置10は、第1受電装置を検知した場合に、第1受電装置の設置方向2200を含む全方向放射の第3電磁波2300を送信部13に送電させる。これにより、送電装置10は、全方向放射の第3電磁波2300を用いることで、バッテリ不足の受電装置20を充電できる可能性が向上し、電力を失った受電装置20の給電を改善することができる。
【0100】
また、送電装置10は、複数の受電装置20に対する給電スケジュールSCに基づいて、複数の受電装置20に対する第1電磁波または第3電磁波2300の送電を制御する。これにより、送電装置10は、第1受電装置及び第2受電装置のスケジュールを用いて、全方向放射の第3電磁波2300を第2受電装置に送電できるので、バッテリ不足の受電装置20を充電させる可能性をより一層高めることができる。
【0101】
また、送電装置10は、バッテリ不足の第1受電装置の給電スケジュールの時間帯(1周期)において、第3電磁波2300を送信部13に送電させる。これにより、送電装置10は、複数の受電装置20に電磁波2000を送電する場合も、給電スケジュールの変更を最小限に抑えることができるので、他の受電装置20への影響を最小限にし、バッテリ不足の受電装置20を給電することができる。
【0102】
また、送電装置10は、第3電磁波2300を送信部13に送電させた後、第1受電装置から規定信号1000を受信した場合に、第3電磁波2300の送電を終了する。これにより、送電装置10は、第1受電装置のバッテリ不足の救済を確認し、通常のスケジュールに戻すことができるので、メンテナンスを不要とすることができる。
【0103】
また、送電装置10は、全方向放射の第3電磁波2300を受電装置20Dにも到来させたにもかかわらず、受電装置20Dから規定信号1000を受信できない状態が継続する場合、バッテリ不足と判定した受電装置20Dを通知する。これにより、送電装置10は、複数の受電装置20の中のバッテリ不足の受電装置20を管理者等に認識させることで、当該受電装置20の迅速な対処に貢献することができる。
【0104】
[実施形態2に係る送電装置の処理手順]
図14は、実施形態2に係る送電装置10が実行する処理手順の一例を示すフローチャートである。図14に示す処理手順は、送電装置10の制御部17がプログラム16Aを実行することによって実現される。図14に示す処理手順は、制御部17によって繰り返し実行される。
【0105】
図14に示す処理手順は、図11に示したステップと実質的に同一のステップには同一の符号を付している。図14に示す処理手順は、ステップS101からステップS104及びステップS107からステップS111の処理が、図11のステップS101からステップS104及びステップS108からステップS111と同一であるため、説明を省略する。
【0106】
図14に示すように、送電装置10の制御部17は、全ての受電装置20から規定信号1000を受信していないと判定した場合(ステップS102でNo)、処理をステップS104に進める。制御部17は、バッテリ不足の第1受電装置を検知する(ステップS104)。制御部17は、ステップS104の処理が終了すると、処理をステップS120に進める。
【0107】
制御部17は、全方向放射を含むように給電スケジュールSCを変更する(ステップS120)。例えば、制御部17は、給電スケジュールSCにおける第1受電装置のスケジュールを全方向放射のスケジュールに変更する。制御部17は、ステップS120の処理が終了すると、処理をステップS121に進める。
【0108】
制御部17は、変更した給電スケジュールSCに基づいて、複数の給電装置に対する電力伝送を制御する(ステップS121)。例えば、制御部17は、変更した給電スケジュールSCが示す受電装置20ごとに、第1受電装置以外の受電装置20に対応したウェイトを送信部13に設定し、送信信号生成部12が生成した送信信号を含む電磁波2000をアンテナ11から順次放射させる。そして、制御部17は、全方向放射に対応したウェイトを送信部13に設定し、送信信号生成部12が生成した送信信号を含む全方向放射の第3電磁波2300をアンテナ11から放射させる。制御部17は、ステップS121の処理が終了すると、処理をステップS108に進める。
【0109】
制御部17は、第1受電装置から規定信号1000を受信したか否かを判定する(ステップS108)。制御部17は、第1受電装置から規定信号1000を受信したと判定した場合(ステップS108でYes)、処理をステップS109に進める。
【0110】
制御部17は、変更した第2電磁波及び給電スケジュールSCを元に戻す(ステップS109)。例えば、制御部17は、ステップS106で変更した第2電磁波のビーム幅2100及び給電スケジュールSCを変更前の給電スケジュールSCに戻す。制御部17は、ステップS109の処理が終了すると、図14に示す処理手順を終了させる。
【0111】
また、制御部17は、第1受電装置から規定信号1000を受信していないと判定した場合(ステップS108でNo)、処理をステップS110に進める。制御部17は、判定時間が経過したか否かを判定する(ステップS110)。制御部17は、判定時間が経過していないと判定した場合(ステップS110でNo)、処理を既に説明したステップS108に戻し、処理を継続する。また、制御部17は、判定時間が経過したと判定した場合(ステップS110でYes)、処理をステップS111に進める。
【0112】
制御部17は、検知したバッテリ不足の受電装置20の通知処理を実行する(ステップS111)。制御部17は、通知処理を実行することで、検知したバッテリ不足の受電装置20を管理装置300等に通知する。制御部17は、ステップS111の処理が終了すると、図14に示す処理手順を終了させる。
【0113】
上述した実施形態1及び実施形態2では、システム1は、送電装置10が独立した給電装置である場合について説明したが、これに限定されない。電子機器は、例えば、給電用電磁波を放射可能な給電装置を制御する制御装置、給電装置に内蔵されたコンピュータ等で実現してもよい。また、システム1は、ワイヤレス電力伝送システムである場合について説明したが、これに限定されない。例えば、システム1は、電磁波伝搬環境で無線通信を行うシステム等に適用することができる。
【0114】
添付の請求項に係る技術を完全かつ明瞭に開示するために特徴的な実施形態に関し記載してきた。しかし、添付の請求項は、上記実施形態に限定されるべきものでなく、本明細書に示した基礎的事項の範囲内で当該技術分野の当業者が創作しうるすべての変形例及び代替可能な構成を具現化するように構成されるべきである。本開示の内容は、当業者であれば本開示に基づき種々の変形および修正を行うことができる。したがって、これらの変形および修正は本開示の範囲に含まれる。例えば、各実施形態において、各機能部、各手段、各ステップなどは論理的に矛盾しないように他の実施形態に追加し、若しくは、他の実施形態の各機能部、各手段、各ステップなどと置き換えることが可能である。また、各実施形態において、複数の各機能部、各手段、各ステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。また、上述した本開示の各実施形態は、それぞれ説明した各実施形態に忠実に実施することに限定されるものではなく、適宜、各特徴を組み合わせたり、一部を省略したりして実施することもできる。
【0115】
[付記1]
受電装置に接続されたバッテリに電力を供給可能な電磁波である第1電磁波、または前記第1電磁波より広い範囲に電力を供給可能な第2電磁波を送信可能な送信部と、
前記受電装置のうち、前記バッテリに蓄積された電力が所定以下の第1受電装置を検出した場合、前記第1受電装置の近傍に位置し、前記バッテリに蓄積されたエネルギーが所定以下でない第2受電装置へ前記第2電磁波を送信する送電制御部と、
を有する送電装置。
[付記2]
前記第2電磁波は、前記第1受電装置に接続された前記バッテリと前記第2受電装置に接続された前記バッテリとに、電力を供給可能な電磁波である、
付記1に記載の送電装置。
[付記3]
前記受電装置が送信した規定信号を受信可能な受信部と、
前記規定信号の送信が確認できない前記受電装置を、前記バッテリに蓄積された電力が所定以下であると判断する検知部と、
を有する付記1に記載の送電装置。
[付記4]
前記送電制御部は、前記第2電磁波として、前記第1電磁波よりもビーム幅が広い電磁波を送電させる、
付記3に記載の送電装置。
[付記5]
前記検知部は、前記第1受電装置から最後に受信した前記規定信号に基づいて、前記第2受電装置を検知する、
付記4に記載の送電装置。
[付記6]
前記送電制御部は、前記受電装置に対して前記第1電磁波を送信する順序またはタイミングを規定する給電スケジュールに基づいて、前記受電装置に対する前記第1電磁波または前記第2電磁波の送電を制御する、
付記5に記載の送電装置。
[付記7]
前記送電制御部は、前記受電装置から受信した前記規定信号に基づいて、前記給電スケジュールを生成または変更する、
付記6に記載の送電装置。
[付記8]
前記送電制御部は、前記第1受電装置を検知した場合に、前記第1受電装置に対する前記給電スケジュールによる前記第1電磁波の送信を停止し、前記第2受電装置に対して、前記第2電磁波を前記送信部に送信させる、
付記7に記載の送電装置。
[付記9]
前記送電制御部は、前記第1受電装置の前記給電スケジュールに規定された送信タイミングにおいて、前記第2電磁波を前記送信部に送電させる、
付記8に記載の送電装置。
[付記10]
前記送電制御部は、前記第2電磁波を前記送信部に送電させた後、前記第1受電装置から前記規定信号を受信した場合に、前記第2電磁波の送電を終了する、
付記9に記載の送電装置。
[付記11]
前記第1受電装置は、前記第2受電装置に送信された第2電磁波によって前記バッテリに電力を供給可能な範囲に位置する、
付記1に記載の送電装置。
[付記12]
受電装置に接続されたバッテリに電力を供給可能な電磁波である第1電磁波、または前記第1電磁波より広い範囲に電力を供給可能な第3電磁波を送信可能な送信部と、
前記受電装置のうち、前記バッテリに蓄積された電力が所定以下の第1受電装置を検出した場合、前記第1受電装置の近傍に位置し、前記バッテリに蓄積されたエネルギーが所定以下でない第2受電装置へ前記受電装置の設置方向を含む全方向放射の前記第3電磁波を送信する送電制御部と、
を有する送電装置。
[付記13]
複数の前記受電装置が送信した規定信号を受信可能な受信部と、
前記受電装置から前記規定信号を受信しない場合、当該受電装置を前記バッテリ不足の前記第1受電装置として検知する検知部と、
をさらに備え、
前記送電制御部は、前記検知部が前記第1受電装置を検知した場合に、前記第1受電装置の設置方向を含む全方向放射の前記第3電磁波を前記送信部に送電させる、
付記12に記載の送電装置。
[付記14]
前記送電制御部は、複数の前記受電装置に対する給電スケジュールに基づいて、複数の前記受電装置に対する前記第1電磁波または前記第3電磁波の送電を制御する、
付記13に記載の送電装置。
[付記15]
前記送電制御部は、複数の前記受電装置のうちバッテリ不足の第1受電装置を検知した場合に、前記第1受電装置に対する前記給電スケジュールを停止した後、前記第1受電装置の設置方向を含む全方向放射の前記第3電磁波を前記送信部に送電させる、
付記14に記載の送電装置。
[付記16]
前記送電制御部は、前記バッテリ不足の前記第1受電装置の前記給電スケジュールの時間帯において、前記第3電磁波を前記送信部に送電させる、
付記15に記載の送電装置。
[付記17]
前記送電制御部は、前記第3電磁波を前記送信部に送電させた後、前記第1受電装置から前記規定信号を受信した場合に、前記第3電磁波の送電を終了する、
付記15に記載の送電装置。
[付記18]
受電装置に接続されたバッテリに電力を供給可能な電磁波である第1電磁波、または前記第1電磁波より広い範囲に電力を供給可能な第2電磁波を送信可能な送信部を有する送電装置が、
前記受電装置のうち、前記バッテリに蓄積された電力が所定以下の第1受電装置を検出した場合、前記第1受電装置の近傍に位置し、前記バッテリに蓄積されたエネルギーが所定以下でない第2受電装置へ前記第2電磁波を前記送信部に送信させる、送電方法。
[付記19]
受電装置に接続されたバッテリに電力を供給可能な電磁波である第1電磁波、または前記第1電磁波より広い範囲に電力を供給可能な第3電磁波を送信可能な送信部を有する送電装置が、
前記受電装置のうち、前記バッテリに蓄積された電力が所定以下の第1受電装置を検出した場合、前記第1受電装置の近傍に位置し、前記バッテリに蓄積されたエネルギーが所定以下でない第2受電装置へ前記受電装置の設置方向を含む全方向放射の前記第3電磁波を前記送信部に送信させる、送電方法。
[付記20]
受電装置に接続されたバッテリに電力を供給可能な電磁波である第1電磁波、または前記第1電磁波より広い範囲に電力を供給可能な第2電磁波を送信可能な送信部を有する送電装置に、
前記受電装置のうち、前記バッテリに蓄積された電力が所定以下の第1受電装置を検出した場合、前記第1受電装置の近傍に位置し、前記バッテリに蓄積されたエネルギーが所定以下でない第2受電装置へ前記第2電磁波を前記送信部に送信させるステップを実行させる、プログラム。
[付記21]
受電装置に接続されたバッテリに電力を供給可能な電磁波である第1電磁波、または前記第1電磁波より広い範囲に電力を供給可能な第3電磁波を送信可能な送信部を有する送電装置に、
前記受電装置のうち、前記バッテリに蓄積された電力が所定以下の第1受電装置を検出した場合、前記第1受電装置の近傍に位置し、前記バッテリに蓄積されたエネルギーが所定以下でない第2受電装置へ前記受電装置の設置方向を含む全方向放射の前記第3電磁波を前記送信部に送信させるステップを実行させる、プログラム。
[付記22]
送電装置と、
前記送電装置から受信した電磁波によって電力が給電される複数の受電装置と、
を備え、
前記送電装置は、
電力を供給可能な第1電磁波を複数の受電装置に送電可能な送信部と、
複数の前記受電装置のうちバッテリ不足の第1受電装置を検知した場合に、該第1受電装置の近傍の第2受電装置に給電する第2電磁波を、前記第1受電装置及び前記第2受電装置の給電が可能なように変更して前記送信部に送電させる送電制御部と、
を備える、システム。
[付記23]
送電装置と、
前記送電装置から受信した電磁波によって電力が給電される複数の受電装置と、
を備え、
前記送電装置は、
電力を供給可能な第1電磁波を複数の受電装置に送電可能な送信部と、
複数の前記受電装置のうちバッテリ不足の第1受電装置を検知した場合に、前記第1受電装置の設置方向を含む全方向放射の第3電磁波を、前記送信部に送電させる送電制御部と、
を備える、システム。
【符号の説明】
【0116】
1 システム
10 送電装置
11 アンテナ
12 送信信号生成部
13 送信部
14 受信部
15 推定部
16 記憶部
16A プログラム
16B ウェイトデータ
16C 管理データ
16D スケジュールデータ
17 制御部
17A 検知部
17B 送電制御部
20 受電装置
21 アンテナ
22 生成部
23 変換部
24 バッテリ
30 管理装置
1000 規定信号
2000 電磁波
2100 ビーム幅
2200 設置方向
2300 第3電磁波
SC 給電スケジュール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14