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特開2024-108766作業支援方法および作業支援システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108766
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】作業支援方法および作業支援システム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20240805BHJP
   H01L 21/26 20060101ALI20240805BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
H01L21/02 Z
H01L21/26 G
G05B23/02 301Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013318
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】竹原 弘耕
【テーマコード(参考)】
3C223
【Fターム(参考)】
3C223AA05
3C223BA02
3C223BB08
3C223CC02
3C223DD03
3C223EB01
3C223FF03
3C223FF24
3C223FF42
3C223GG01
3C223HH08
(57)【要約】
【課題】基板処理装置のメンテナンス後に異常が生じたときにも適格かつ迅速な復旧作業を行うことができる作業支援方法および作業支援システムを提供する。
【解決手段】熱処理装置30のチャンバー60には、上側チャンバー窓61、下側チャンバー窓62、第1サイドカバー63、第2サイドカバー64、および、放射温度計69が取り外し可能な部位として設けられる。熱処理装置30のメンテナンス時には、現場作業員がいずれかの部位を取り外す。取り外された部位は、メンテナンス後に生じ得る異常の原因のいずれかに区分けして対応付けられる。メンテナンス後に異常が発生したときには、その異常の原因として対応付けられていた部位を抽出して表示する。現場作業員は、練度に関わらず、異常の原因に関連する部位を認識することができ、熱処理装置のメンテナンス後に異常が生じたときにも適格かつ迅速な復旧作業を行うことができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板処理装置のメンテナンス後に異常が生じたときの復旧作業を支援する作業支援方法であって、
メンテナンス作業中に基板処理装置に対して行われた作業情報を収集する収集工程と、
前記収集工程にて収集された前記作業情報をメンテナンス後に生じ得る異常の原因のいずれかに区分けして対応付ける分類工程と、
メンテナンス後に異常が生じたときに、前記分類工程にて当該異常の原因に対応付けられた前記作業情報を抽出して表示する表示工程と、
を備えることを特徴とする作業支援方法。
【請求項2】
請求項1記載の作業支援方法において、
前記表示工程では、前記作業情報に関連する支援情報をさらに表示することを特徴とする作業支援方法。
【請求項3】
請求項1記載の作業支援方法において、
前記作業情報は、メンテナンス作業中に前記基板処理装置から取り外された部位に関する情報を含むことを特徴とする作業支援方法。
【請求項4】
請求項1記載の作業支援方法において、
前記分類工程にて異常の原因ごとに区分けされた前記作業情報を作業支援端末に送信する送信工程と、
前記作業情報に基づく対処情報を前記作業支援端末から受信する受信工程と、
をさらに備えることを特徴とする作業支援方法。
【請求項5】
請求項4記載の作業支援方法において、
前記送信工程では、メンテナンス作業中に携帯端末によって撮像した画像を前記作業支援端末にさらに送信することを特徴とする作業支援方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の作業支援方法において、
前記基板処理装置は、連続点灯ランプおよびフラッシュランプからの光照射によって基板を加熱する熱処理装置であることを特徴とする作業支援方法。
【請求項7】
基板処理装置のメンテナンス後に異常が生じたときの復旧作業を支援する作業支援システムであって、
メンテナンス作業中に基板処理装置に対して行われた作業情報を収集する収集部と、
前記収集部によって収集された前記作業情報をメンテナンス後に生じ得る異常の原因のいずれかに区分けして対応付ける分類部と、
メンテナンス後に異常が生じたときに、前記分類部によって当該異常の原因に対応付けられた前記作業情報を抽出して表示する表示部と、
を備えることを特徴する作業支援システム。
【請求項8】
請求項7記載の作業支援システムにおいて、
前記表示部は、前記作業情報に関連する支援情報をさらに表示することを特徴とする作業支援システム。
【請求項9】
請求項7記載の作業支援システムにおいて、
前記作業情報は、メンテナンス作業中に前記基板処理装置から取り外された部位に関する情報を含むことを特徴とする作業支援システム。
【請求項10】
請求項7記載の作業支援システムにおいて、
前記基板処理装置と通信可能に設けられた作業支援端末をさらに備え、
前記分類部によって異常の原因ごとに区分けされた前記作業情報を前記基板処理装置から前記作業支援端末に送信するとともに、前記作業情報に基づく対処情報を前記作業支援端末から受信することを特徴とする作業支援システム。
【請求項11】
請求項10記載の作業支援システムにおいて、
撮像部および通信部を備えた携帯端末をさらに備え、
メンテナンス作業中に前記携帯端末によって撮像した画像を前記作業支援端末にさらに送信することを特徴とする作業支援システム。
【請求項12】
請求項7から請求項11のいずれかに記載の作業支援システムにおいて、
前記基板処理装置は、連続点灯ランプおよびフラッシュランプからの光照射によって基板を加熱する熱処理装置であることを特徴とする作業支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に熱処理等の所定の処理を行う基板処理装置のメンテナンス後に異常が生じたときの復旧作業を支援する作業支援方法および作業支援システムに関する。基板処理装置によって処理対象となる基板には、例えば、半導体ウェハー、液晶表示装置用基板、flat panel display(FPD)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、または、太陽電池用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスを製造する装置として、半導体ウェハーに光を照射して当該半導体ウェハーを加熱する熱処理装置が広く使用されている。特許文献1には、チャンバー内に収容した半導体ウェハーにハロゲンランプから光照射を行って予備加熱した後に、当該半導体ウェハーの表面にキセノンフラッシュランプ(以下、単に「フラッシュランプ」とするときにはキセノンフラッシュランプを意味する)からフラッシュ光を照射する熱処理装置が開示されている。
【0003】
キセノンフラッシュランプの放射分光分布は紫外域から近赤外域であり、従来のハロゲンランプよりも波長が短く、シリコンの半導体ウェハーの基礎吸収帯とほぼ一致している。よって、キセノンフラッシュランプから半導体ウェハーにフラッシュ光を照射したときには、透過光が少なく半導体ウェハーを急速に昇温することが可能である。また、数ミリ秒以下の極めて短時間のフラッシュ光照射であれば、半導体ウェハーの表面近傍のみを選択的に昇温できることも判明している。よって、フラッシュランプを用いたフラッシュランプアニール(FLA)によれば、半導体ウェハーの表面のみを極めて短時間(数ミリ秒以下)に昇温させることが可能である。
【0004】
特許文献1には、定期的に或いは不定期に熱処理装置のチャンバーのメンテナンスを行うことが開示されている。例えば、一定の処理時間が経過したときまたは一定枚数の半導体ウェハーを処理したときには、定期メンテナンスが行われる。また、チャンバー内にてウェハー割れ等の不具合が生じたときには、不定期のメンテナンスが行われる。いずれの場合であっても、メンテナンスを行う際には、チャンバーから種々の部品を取り外す作業が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-121008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
メンテナンス作業が終了した後に、熱処理装置が正常に動作するか否かの確認を行うのであるが、このときに異常が生じることがある。例えば、チャンバー内を所定の圧力まで減圧することができない、または、ウェハー温度の測定データがメンテナンス前と一致しないというような異常が生じやすい。このような異常が生じたときには復旧作業を行うのであるが、その際に現場の作業員からサポート専門の支援作業員に復旧作業の手順について問い合わせを行うことも多い。
【0007】
しかしながら、現場作業員から支援作業員にメンテナンス作業の内容に関する正確な情報を提供できないことが多い。そのため、支援作業員は異常の解析に長時間を要したり、現場作業員に対して適格な作業指示を伝えられないというケースが発生している。そうすると、装置復旧の作業が繁雑なものとなり、かつ長時間を要するという問題が生じる。現場作業員が支援作業員にメンテナンス作業の正確な情報を提供できない理由としては以下のようなものがある。緊急のトラブル、作業ボリュームの過多により、現場作業員の作業内容に関する記憶が曖昧である;複数人の現場作業員が作業を行ったときには報告漏れが生じやすい;作業の慣れに起因して作業抜けが生じる;経験の浅い作業員の場合、作業内容の情報が曖昧になりやすい;機密保持のためにメモなどによって正確な情報を持ち出すことが困難である。
【0008】
また、現場作業員と支援作業員との間で情報のやり取り自体に時間を要するため、それによっても装置復旧に要する時間が長くなることにもなっていた。このため、メンテナンス作業後に異常が発生したときにも現場作業員のみで復旧できるのが好ましい。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、基板処理装置のメンテナンス後に異常が生じたときにも適格かつ迅速な復旧作業を行うことができる作業支援方法および作業支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、基板処理装置のメンテナンス後に異常が生じたときの復旧作業を支援する作業支援方法において、メンテナンス作業中に基板処理装置に対して行われた作業情報を収集する収集工程と、前記収集工程にて収集された前記作業情報をメンテナンス後に生じ得る異常の原因のいずれかに区分けして対応付ける分類工程と、メンテナンス後に異常が生じたときに、前記分類工程にて当該異常の原因に対応付けられた前記作業情報を抽出して表示する表示工程と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る作業支援方法において、前記表示工程では、前記作業情報に関連する支援情報をさらに表示することを特徴とする。
【0012】
また、請求項3の発明は、請求項1の発明に係る作業支援方法において、前記作業情報は、メンテナンス作業中に前記基板処理装置から取り外された部位に関する情報を含むことを特徴とする。
【0013】
また、請求項4の発明は、請求項1の発明に係る作業支援方法において、前記分類工程にて異常の原因ごとに区分けされた前記作業情報を作業支援端末に送信する送信工程と、前記作業情報に基づく対処情報を前記作業支援端末から受信する受信工程と、をさらに備えることを特徴とする。
【0014】
また、請求項5の発明は、請求項4の発明に係る作業支援方法において、前記送信工程では、メンテナンス作業中に携帯端末によって撮像した画像を前記作業支援端末にさらに送信することを特徴とする。
【0015】
また、請求項6の発明は、請求項1から請求項5のいずれかの発明に係る作業支援方法において、前記基板処理装置は、連続点灯ランプおよびフラッシュランプからの光照射によって基板を加熱する熱処理装置であることを特徴とする。
【0016】
また、請求項7の発明は、基板処理装置のメンテナンス後に異常が生じたときの復旧作業を支援する作業支援システムにおいて、メンテナンス作業中に基板処理装置に対して行われた作業情報を収集する収集部と、前記収集部によって収集された前記作業情報をメンテナンス後に生じ得る異常の原因のいずれかに区分けして対応付ける分類部と、メンテナンス後に異常が生じたときに、前記分類部によって当該異常の原因に対応付けられた前記作業情報を抽出して表示する表示部と、を備えることを特徴する。
【0017】
また、請求項8の発明は、請求項7の発明に係る作業支援システムにおいて、前記表示部は、前記作業情報に関連する支援情報をさらに表示することを特徴とする。
【0018】
また、請求項9の発明は、請求項7の発明に係る作業支援システムにおいて、前記作業情報は、メンテナンス作業中に前記基板処理装置から取り外された部位に関する情報を含むことを特徴とする。
【0019】
また、請求項10の発明は、請求項7の発明に係る作業支援システムにおいて、前記基板処理装置と通信可能に設けられた作業支援端末をさらに備え、前記分類部によって異常の原因ごとに区分けされた前記作業情報を前記基板処理装置から前記作業支援端末に送信するとともに、前記作業情報に基づく対処情報を前記作業支援端末から受信することを特徴とする。
【0020】
また、請求項11の発明は、請求項10の発明に係る作業支援システムにおいて、撮像部および通信部を備えた携帯端末をさらに備え、メンテナンス作業中に前記携帯端末によって撮像した画像を前記作業支援端末にさらに送信することを特徴とする。
【0021】
また、請求項12の発明は、請求項7から請求項11のいずれかの発明に係る作業支援システムにおいて、前記基板処理装置は、連続点灯ランプおよびフラッシュランプからの光照射によって基板を加熱する熱処理装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1から請求項6の発明によれば、メンテナンス作業中に基板処理装置に対して行われた作業情報を収集し、その作業情報をメンテナンス後に生じ得る異常の原因のいずれかに区分けして対応付け、メンテナンス後に異常が生じたときには当該異常の原因に対応付けられた作業情報を抽出して表示するため、作業員は容易に異常の原因に関連する作業情報を把握することができ、基板処理装置のメンテナンス後に異常が生じたときにも適格かつ迅速な復旧作業を行うことができる。
【0023】
特に、請求項2の発明によれば、作業情報に関連する支援情報をさらに表示するため、作業員はより適切に復旧作業を行うことができる。
【0024】
特に、請求項5の発明によれば、メンテナンス作業中に携帯端末によって撮像した画像を作業支援端末にさらに送信するため、作業支援端末を操作する作業員はより迅速かつ適切に対処情報を導き出すことができる。
【0025】
請求項7から請求項12の発明によれば、メンテナンス作業中に基板処理装置に対して行われた作業情報を収集し、その作業情報をメンテナンス後に生じ得る異常の原因のいずれかに区分けして対応付け、メンテナンス後に異常が生じたときには当該異常の原因に対応付けられた作業情報を抽出して表示するため、作業員は容易に異常の原因に関連する作業情報を把握することができ、基板処理装置のメンテナンス後に異常が生じたときにも適格かつ迅速な復旧作業を行うことができる。
【0026】
特に、請求項8の発明によれば、作業情報に関連する支援情報をさらに表示するため、作業員はより適切に復旧作業を行うことができる。
【0027】
特に、請求項11の発明によれば、メンテナンス作業中に携帯端末によって撮像した画像を作業支援端末にさらに送信するため、作業支援端末を操作する作業員はより迅速かつ適切に対処情報を導き出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明に係る作業支援システムの概略構成を模式的に示す図である。
図2】熱処理装置の要部構成を示す図である。
図3】スマートグラスの外観を示す斜視図である。
図4】スマートグラス、作業支援端末および熱処理装置の制御部の機能的構成を示すブロック図である。
図5】本発明に係る作業支援方法の手順を示すフローチャートである。
図6】本発明に係る作業支援方法の手順を示すフローチャートである。
図7】熱処理装置における部位の取り外しを模式的に示す図である。
図8】取り外し可能な部位と異常の原因とを相互に関連付けたテーブルの一例を示す図である。
図9】アラーム情報の対象部位の仕分けを模式的に示す図である。
図10】異常の原因に対応する部位の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。以下において、相対的または絶対的な位置関係を示す表現(例えば、「一方向に」、「一方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」、「同軸」、など)は、特に断らない限り、その位置関係を厳密に表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる範囲で相対的に角度または距離に関して変位された状態も表すものとする。また、等しい状態であることを示す表現(例えば、「同一」、「等しい」、「均質」、など)は、特に断らない限り、定量的に厳密に等しい状態を表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる差が存在する状態も表すものとする。また、形状を示す表現(例えば、「円形状」、「四角形状」、「円筒形状」、など)は、特に断らない限り、幾何学的に厳密にその形状を表すのみならず、同程度の効果が得られる範囲の形状を表すものとし、例えば凹凸または面取りなどを有していてもよい。また、構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、「有する」、といった各表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的表現ではない。また、「A、BおよびCのうちの少なくとも一つ」という表現には、「Aのみ」、「Bのみ」、「Cのみ」、「A、BおよびCのうち任意の2つ」、「A、BおよびCの全て」が含まれる。
【0030】
図1は、本発明に係る作業支援システムの概略構成を模式的に示す図である。なお、図1および以降の各図においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。本発明に係る作業支援システムは、熱処理装置30と、スマートグラス10と、作業支援端末80と、を情報通信網5(例えば、インターネット)に接続して構成される。スマートグラス10および熱処理装置30のコントローラは無線通信にて情報通信網5に接続されている。また、作業支援端末80は有線にて情報通信網5に接続されている。情報通信網5に接続された機器間では相互に情報の送受信が可能であり、例えばスマートグラス10と作業支援端末80との間で情報の授受を行うことができる。なお、各機器と情報通信網5とを無線で接続するか有線で接続するかは上記の例に限定されるものではなく、適宜の形態とすることができる(例えば、作業支援端末80と情報通信網5とを無線で接続しても良い)。
【0031】
典型的には、熱処理装置30は半導体デバイスの生産工場7内のクリーンルームに設置されている。生産工場7には複数の熱処理装置30が設置されていても良い。生産工場7内においては、スマートグラス10を装着した現場作業員が熱処理装置30に対する作業を行う。
【0032】
一方、作業支援端末80は例えばサポート工場9内に設置される。サポート工場9は、例えば熱処理装置30を製造してその保守点検を請け負うベンダーの工場である。サポート工場9内においては、現場作業員に対するサポートを専門とする支援作業員が作業支援端末80に対する操作を行う。
【0033】
図2は、熱処理装置30の要部構成を示す図である。図2の熱処理装置30は、シリコンの円板形状の半導体ウェハーWに対してフラッシュ光照射を行うことによってその半導体ウェハーWを加熱するフラッシュランプアニール装置である。処理対象となる半導体ウェハーWのサイズは特に限定されるものではないが、例えばφ300mmやφ450mmである。
【0034】
熱処理装置30は、半導体ウェハーWを収容するチャンバー60と、チャンバー60内の半導体ウェハーWにフラッシュ光を照射するフラッシュ照射部50と、半導体ウェハーWにハロゲン光を照射するハロゲン照射部40と、を備えている。また、熱処理装置30は、装置に備えられた各部を制御してフラッシュ光照射を実行させる制御部70を備える。
【0035】
チャンバー60は、処理対象となる半導体ウェハーWを収容し、チャンバー60内にて半導体ウェハーWの熱処理が行われる。チャンバー60の上部開口には上側チャンバー窓61が装着されて閉塞されるとともに、チャンバー60の下部開口には下側チャンバー窓62が装着されて閉塞されている。チャンバー60の側壁、上側チャンバー窓61および下側チャンバー窓62によって囲まれる空間が熱処理空間65として規定される。チャンバー60の天井部を構成する上側チャンバー窓61は、石英により形成された板状部材であり、フラッシュ照射部50から出射されたフラッシュ光を熱処理空間65に透過する石英窓として機能する。また、チャンバー60の床部を構成する下側チャンバー窓62も、石英により形成された板状部材であり、ハロゲン照射部40からの光を熱処理空間65に透過する石英窓として機能する。
【0036】
チャンバー60の内部には、半導体ウェハーWを保持するサセプタ68が設けられている。サセプタ68は、石英により形成された円板形状部材である。サセプタ68の径は、半導体ウェハーWの径よりも少し大きい。サセプタ68によって半導体ウェハーWはチャンバー60内にて水平姿勢(主面の法線方向が鉛直方向と一致する姿勢)で保持される。なお、チャンバー60の内部には、サセプタ68に半導体ウェハーWを移載するための図示を省略する移載機構も設けられている。
【0037】
チャンバー60の側壁には第1サイドカバー63および第2サイドカバー64が装着されている。第1サイドカバー63および第2サイドカバー64は、熱処理装置30のメンテナンス時にチャンバー60の内部を開放するために設けられている。すなわち、メンテナンス時に現場作業員が第1サイドカバー63または第2サイドカバー64をチャンバー60から取り外すことにより、チャンバー60の内部が開放されて当該内部に対する作業が可能となる。
【0038】
図2では、図示の便宜上、2つのサイドカバーを示しているが、紙面にてチャンバー60の奥側には第3のサイドカバーが装着されている。また、チャンバー60の手前側には半導体ウェハーWの搬入および搬出を行うための搬送開口部(図示省略)が設けられている。すなわち、チャンバー60の側壁の三方にサイドカバーが装着されるとともに、残る一方に搬送開口部が設けられている。搬送開口部は、ゲートバルブによって開閉可能とされている。搬送開口部が開放されると、図外の搬送ロボットによってチャンバー60に対する半導体ウェハーWの搬入および搬出が可能となる。また、搬送開口部が閉鎖されると、熱処理空間65が外部との通気が遮断された密閉空間となる。
【0039】
また、チャンバー60の側壁の外壁面には放射温度計69が設けられている。放射温度計69は、例えばパイロメーターであり、加熱されている半導体ウェハーWから放射された赤外光を受光して当該半導体ウェハーWの温度を非接触で測定する。放射温度計69は、サセプタ68に保持された半導体ウェハーWの下面から放射された赤外光を受光して当該下面の温度を測定するために、サセプタ68の斜め下方に設けられる。そして、放射温度計69は、その光軸がサセプタ68に保持された半導体ウェハーWの下面と交差するように、水平面に対して傾斜してチャンバー60の側壁に取り付けられている。
【0040】
フラッシュ照射部50は、チャンバー60の上方に設けられている。フラッシュ照射部50は、複数本のフラッシュランプFLからなる光源と、その光源の上方を覆うように設けられたリフレクタ52と、を備えて構成される。フラッシュ照射部50は、チャンバー60内にてサセプタ68に保持される半導体ウェハーWに石英の上側チャンバー窓61を介してフラッシュランプFLからフラッシュ光を照射して当該半導体ウェハーWの表面を加熱する。
【0041】
複数のフラッシュランプFLは、それぞれが長尺の円筒形状を有する棒状ランプであり、それぞれの長手方向がサセプタ68に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように平面状に配列されている。よって、フラッシュランプFLの配列によって形成される平面も水平面である。
【0042】
フラッシュランプFLは、その内部にキセノンガスが封入されその両端部にコンデンサーに接続された陽極および陰極が配設された円筒形状のガラス管(放電管)と、該ガラス管の外周面上に付設されたトリガー電極とを備える。キセノンガスは電気的には絶縁体であることから、コンデンサーに電荷が蓄積されていたとしても通常の状態ではガラス管内に電気は流れない。しかしながら、トリガー電極に高電圧を印加して絶縁を破壊した場合には、コンデンサーに蓄えられた電気がガラス管内に瞬時に流れ、そのときのキセノンの原子あるいは分子の励起によって光が放出される。このようなフラッシュランプFLにおいては、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが0.1ミリセカンドないし100ミリセカンドという極めて短い光パルスに変換されることから、ハロゲンランプHLの如き連続点灯の光源に比べて極めて強い光を照射し得るという特徴を有する。すなわち、フラッシュランプFLは、1秒未満の極めて短い時間で瞬間的に発光するパルス発光ランプである。なお、フラッシュランプFLの発光時間は、フラッシュランプFLに電力供給を行うランプ電源のコイル定数によって調整することができる。
【0043】
リフレクタ52は、複数のフラッシュランプFLの上方にそれら全体を覆うように設けられている。リフレクタ52の基本的な機能は、複数のフラッシュランプFLから出射されたフラッシュ光を熱処理空間65の側に反射するというものである。リフレクタ52はアルミニウム合金板にて形成されており、その表面(フラッシュランプFLに臨む側の面)はブラスト処理により粗面化加工が施されている。
【0044】
ハロゲン照射部40は、チャンバー60の下方に設けられている。ハロゲン照射部40は、複数本のハロゲンランプHLを内蔵する。ハロゲン照射部40は、複数のハロゲンランプHLによってチャンバー60の下方から下側チャンバー窓62を介して熱処理空間65への光照射を行って半導体ウェハーWを加熱する。
【0045】
複数のハロゲンランプHLは、それぞれが長尺の円筒形状を有する棒状ランプであり、それぞれの長手方向がサセプタ68に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って互いに平行となるように平面状に配列されている。よって、ハロゲンランプHLの配列によって形成される平面も水平面である。なお、複数のハロゲンランプHLを上下2段に格子状に配列するようにしても良い。
【0046】
各ハロゲンランプHLは、ガラス管内部に配設されたフィラメントに通電することでフィラメントを白熱化させて発光させるフィラメント方式の光源である。ガラス管の内部には、窒素やアルゴン等の不活性ガスにハロゲン元素(ヨウ素、臭素等)を微量導入した気体が封入されている。ハロゲン元素を導入することによって、フィラメントの折損を抑制しつつフィラメントの温度を高温に設定することが可能となる。したがって、ハロゲンランプHLは、通常の白熱電球に比べて寿命が長くかつ強い光を連続的に照射できるという特性を有する。すなわち、ハロゲンランプHLは少なくとも1秒以上連続して発光する連続点灯ランプである。
【0047】
また、熱処理装置30は、チャンバー60内に所定の処理ガスを供給するガス供給部33およびチャンバー60内の気体を排出する排気部36を備える。ガス供給部33は、ガス供給源、給気バルブおよびマスフローコントローラ等を含む。ガス供給部33が供給する処理ガスとしては、例えば窒素(N)等の不活性ガス、または、水素(H)、アンモニア(NH)等の反応性ガス、或いはそれらを混合した混合ガスを用いることができる。排気部36は、排気バルブおよび真空ポンプ等を含む。ガス供給部33からガス供給を行うことなく、排気部36が密閉されたチャンバー60から気体を排出することにより、チャンバー60内を大気圧未満に減圧することができる。
【0048】
熱処理装置30において、上側チャンバー窓61、下側チャンバー窓62、第1サイドカバー63、第2サイドカバー64、および、放射温度計69等はチャンバー60から取り外すことが可能である。このため、これらの部位のそれぞれとチャンバー60とには図示省略の位置センサーが取り付けられている。位置センサーは、例えば磁気センサーを用いて構成され、上記取り外し可能な部位が正規の位置からずれたときにはアラームを発報する。
【0049】
生産工場7に設置された熱処理装置30に対して作業を行う現場作業員はスマートグラス10を装着する。スマートグラス10は、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)方式のウェアラブル端末の一種である。スマートグラス10は、AR(Augmented Reality:拡張現実)またはMR(Mixed Reality:複合現実)を実現するためのデバイスでもある。スマートグラス10としては、例えば、マイクロソフト社製の「HoloLens」(登録商標)を用いることができる。
【0050】
図3は、スマートグラス10の外観を示す斜視図である。スマートグラス10は、バイザー11およびヘッドバンド12を備える。現場作業員はヘッドバンド12を頭に付けることによってスマートグラス10を装着する。現場作業員は、自らの頭の大きさに合わせてヘッドバンド12の長さを調整することが可能とされている。また、ヘッドバンド12には、電源ボタン、明るさボタンおよびボリュームボタン等が設けられている。
【0051】
バイザー11は、各種センサーとディスプレイとを含む。そのディスプレイは、シースルーホログラフィックレンズである。すなわち、ディスプレイはホログラムによって立体映像を作業員の視野空間に表示することが可能であるとともに、通常の眼鏡レンズと同じように現実の物体からの光を透過する。従って、スマートグラス10を装着した現場作業員は、ディスプレイを通して現実の物体を視認しつつ表示された立体映像を見ることも可能である。
【0052】
バイザー11のセンサーには、例えば主にバイザー11の前方を撮像する複数の可視光カメラ、作業員の視線を追跡する赤外線カメラ、対象物までの距離を測定する深度センサー、および、慣性測定センサー等が含まれる。赤外線カメラは、スマートグラス10の装着者の眼球の動きを測定して視線を追跡する。深度センサーは、例えば、ToF(Time of Flight)方式によって対象物までの距離を測定する。慣性測定センサーは、加速度計、ジャイロスコープ、磁力計等によって構成される。
【0053】
また、スマートグラス10には、CPU、メモリおよび記憶部等を備えたコンピュータが内蔵されている。スマートグラス10には、無線通信機構も設けられており、スマートグラス10のコンピュータはその無線通信機構を使用して情報通信網5に接続する。さらに、スマートグラス10には、マイクロフォン、スピーカーおよびバッテリー等も設けられている。
【0054】
図4は、スマートグラス10、作業支援端末80および熱処理装置30の制御部70の機能的構成を示すブロック図である。スマートグラス10は、撮像部21、通信部22および表示部23を備える。撮像部21は、上述したバイザー11に設けられた可視光カメラを含む。撮像部21は、例えば前方および斜め前方を撮像する4台の可視光カメラを含んでおり、スマートグラス10を装着した作業員の視野範囲を撮像することができる。
【0055】
通信部22は、上述したスマートグラス10の無線通信機構を含む。通信部22は、情報通信網5を介して作業支援端末80および熱処理装置30の制御部70とデータの送受信を行う。なお、スマートグラス10と熱処理装置30の制御部70とは、情報通信網5を介して通信可能であるが、近距離であれば直接無線通信を行うことも可能である。
【0056】
表示部23は、上述したバイザー11のディスプレイを含む。表示部23はホログラフィック処理装置を有しており、ホログラム技術によって所定の空間位置に立体映像を表示する。なお、表示部23が表示する立体映像は三次元形状のものに限定されず、ドキュメントのような二次元のものであっても良い。
【0057】
熱処理装置30の制御部70は、熱処理装置30に設けられた種々の動作機構を制御する。制御部70のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部70は、各種演算処理を行う回路であるCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAM、および、制御用アプリケーションやデータなどを記憶しておく記憶部74(例えば、磁気ディスクまたはSSD)を備えている。制御部70のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって熱処理装置30における処理が進行する。
【0058】
制御部70は収集部71および分類部72を備える。収集部71および分類部72は、制御部70のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって実現される機能処理部である。収集部71および分類部72の処理内容については後述する。
【0059】
また、制御部70には、表示部77および入力部76が接続されている。表示部77および入力部76は、熱処理装置30のユーザーインターフェイスとして機能する。制御部70は、表示部77に種々の情報を表示する。現場作業員は、表示部77に表示された情報を確認しつつ、入力部76から種々のコマンドやパラメータを入力することができる。入力部76としては、例えばキーボードやマウスを用いることができる。表示部77としては、例えば液晶ディスプレイを用いることができる。本実施形態においては、表示部77および入力部76として、装置壁面に設けられた液晶のタッチパネルを採用して双方の機能を併せ持たせるようにしている。
【0060】
作業支援端末80は、一般的なコンピュータシステムである。作業支援端末80は、情報通信網5と通信を行う通信部を備えており、情報通信網5を介してスマートグラス10および熱処理装置30の制御部70と通信可能とされている。作業支援端末80は、生産工場7内における現場作業員の作業を支援するためのコンピュータである。支援作業員は、作業支援端末80からスマートグラス10および熱処理装置30の制御部70に対して種々の情報の送受信を行うことができる。
【0061】
次に、上述した構成を有する作業支援システムを用いた作業支援方法について説明する。図5および図6は、本発明に係る作業支援方法の手順を示すフローチャートである。熱処理装置30に対しては、定期的に或いは不定期にメンテナンスが行われる。定期メンテナンスは、例えば、装置の稼働時間が一定に到達したときまたは一定枚数の半導体ウェハーWを処理したときに行われる。不定期のメンテナンスは、例えば、フラッシュ光照射時にチャンバー60内にて半導体ウェハーWが割れるような不具合が生じたときに行われる。本実施形態においては、スマートグラス10を装着した現場作業員が熱処理装置30のメンテナンス作業を行う。
【0062】
メンテナンス作業時には、まず現場作業員が熱処理装置30のいずれかの部位を取り外す(ステップS11)。上述したように、熱処理装置30においては、上側チャンバー窓61、下側チャンバー窓62、第1サイドカバー63、第2サイドカバー64、および、放射温度計69等がチャンバー60から取り外すことが可能な部位である。現場作業員は、これらのうちからメンテナンス作業のために必要な部位を取り外す。
【0063】
図7は、熱処理装置30における部位の取り外しを模式的に示す図である。本実施形態の例では、現場作業員は上側チャンバー窓61、第1サイドカバー63および放射温度計69をチャンバー60から取り外す。
【0064】
上側チャンバー窓61、第1サイドカバー63および放射温度計69がチャンバー60から取り外されると、それらに設けられていた位置センサーが作動してアラームが発生する(ステップS12)。アラームとしては、例えば、上側チャンバー窓61、第1サイドカバー63および放射温度計69の位置が正常でない旨が表示部77に表示される。なお、取り外していない下側チャンバー窓62および第2サイドカバー64についてはアラームは発生しない。
【0065】
次に、制御部70の収集部71がアラーム情報を収集する(ステップS13)。上記の例では、収集部71は、上側チャンバー窓61、第1サイドカバー63および放射温度計69についてアラームが発生したという情報を収集する。
【0066】
続いて、制御部70の分類部72がアラーム情報を仕分ける(ステップS14)。具体的には、分類部72は、収集部71が収集したアラーム情報の対象部位をメンテナンス後に生じ得る異常の原因のいずれかに区分けして対応付ける。メンテナンス後に生じ得る異常としては、チャンバー60内を所定の圧力まで減圧することができない、または、半導体ウェハーWに熱処理を行ったときのウェハー温度測定データがメンテナンス前と一致しないというような事案が多い。チャンバー60内を所定の圧力まで減圧することができない異常の原因としてはチャンバー60のリークが考えられる。また、半導体ウェハーWの温度測定についての異常の原因としては放射温度計69の光軸ずれが考えられる。
【0067】
図8は、取り外し可能な部位のそれぞれと異常の原因とを相互に関連付けたテーブルの一例を示す図である。このような対応関係を示すテーブルは、例えば予め支援作業員が作成して制御部70の記憶部74に格納しておけば良い。或いは、テーブルは作業支援端末80の記憶部に格納されても良い。
【0068】
分類部72は、図8に示すようなテーブルに基づいて、収集されたアラーム情報の対象部位をメンテナンス後に生じ得る異常の原因のいずれかに仕分ける。図9は、アラーム情報の対象部位の仕分けを模式的に示す図である。例えば、上記の例では、アラームが発生した部位は上側チャンバー窓61、第1サイドカバー63および放射温度計69である。分類部72は、図8のテーブルに基づいて、アラームが発生した部位の一つである上側チャンバー窓61についてはチャンバー60のリークに区分けして対応付ける。同様に、分類部72は、第1サイドカバー63についてもリークに区分けして対応付ける。図9に示すように、1つの異常の原因に2つ以上の部位が対応付けられても良い。一方、分類部72は、図8のテーブルに基づいて、放射温度計69については光軸ずれに区分けして対応付ける。このような仕分けの具体的な手法としては、例えば、制御部70の記憶部74に異常の原因ごとにフォルダを作成しておき、分類部72はアラーム情報の対象部位の名称を対応付けるべきフォルダに格納すれば良い。
【0069】
その後、現場作業員は、例えばチャンバー60内の部品交換やチャンバー60内の清掃等、メンテナンスの主目的である作業を行う(ステップS15)。メンテナンスの主目的の作業が終了した後、現場作業員はステップS11で取り外した部位を元の位置に取り付ける(ステップS16)。本実施形態の例では、現場作業員はステップS11で取り外した上側チャンバー窓61、第1サイドカバー63および放射温度計69をチャンバー60の元の位置に取り付ける。
【0070】
ステップS11で取り外された部位が全て取り付けられた後、熱処理装置30の初期化を行う(ステップS17)。熱処理装置30の初期化とは、半導体ウェハーWの熱処理を開始できる状態にすることであり、具体的には例えば半導体ウェハーWを搬送するロボットのハンドを原点に戻したり、チャンバー60を減圧してから窒素パージを行ったりする。熱処理装置30の初期化には、チャンバー60内を所定の圧力まで減圧することができるか確認するフェーズも含まれる。
【0071】
初期化を行っている過程で初期エラーが発生することがある(ステップS18)。例えば、初期化の過程でチャンバー60内を所定の圧力まで減圧することができない異常が生じたときには制御部70が初期エラーを発出する。初期エラーが発生したときには、ステップS18からステップS21に進み、異常解決のための処理を行う。
【0072】
初期エラーが発生しなかった場合は、熱処理装置30が半導体ウェハーWの熱処理を行うことが可能な状態となる。この場合は、例えばダミーウェハーに対して試験的な熱処理を行ってプロセスデータを取得する(ステップS19)。ダミーウェハーは、例えば処理対象となる半導体ウェハーWと同じ形状を有するシリコンのベアウェハーである。サセプタ68に保持されたダミーウェハーにハロゲンランプHLから光照射を行ってアシスト加熱した後に、当該ダミーウェハーにフラッシュランプFLからフラッシュ光を照射する。ハロゲンランプHLおよびフラッシュランプFLによって加熱されるダミーウェハーの温度が放射温度計69によって測定されてプロセスデータとして温度プロファイルが取得される。温度プロファイルは、ウェハーの温度変化を時系列的に示したものである。
【0073】
制御部70は、ステップS19で取得された温度プロファイルとメンテナンス前に正常な熱処理が行われたときの温度プロファイルとを比較する(ステップS20)。その結果、双方の温度プロファイルの差異が所定の閾値以上であるときには、制御部70はメンテナンス後のプロセスデータがメンテナンス前と一致しない異常が発生したと判定する。かかる異常が発生したときには、ステップS20からステップS21に進み、異常解決のための処理を行う。一方、ステップS18で初期エラーが発生せず、かつ、ステップS20でも異常が認められなかったときは、一連のメンテナンス作業が問題無く行われたことを意味しており、新たな処理対象となる半導体ウェハーWの処理を開始する。
【0074】
ステップS18にて初期エラーが発生する、または、ステップS20にてメンテナンス後のプロセスデータがメンテナンス前と一致しない異常が発生したときには、現場作業員がそれら異常の原因を選択する(ステップS21)。例えば、初期化の過程でチャンバー60内を所定の圧力まで減圧することができない異常が生じたときには、異常の原因としてはチャンバー60のリークが考えられるため、現場作業員は”リーク”を選択する。また、メンテナンス後のプロセスデータがメンテナンス前と一致しない異常が発生したときには、異常の原因としては放射温度計69の光軸ずれが考えられるため、現場作業員は”光軸ずれ”を選択する。具体的には、例えば、表示部77および入力部76によって実現されるグラフィカルユーザーインターフェイス(GUI)にトラブルシューティングのメニュー画面を表示させ、そこから現場作業員が”リーク”または”光軸ずれ”を選択する。
【0075】
或いは、表示部77および入力部76によって実現されるグラフィカルユーザーインターフェイスに代えて、現場作業員が装着しているスマートグラス10を用いて異常の原因を選択するようにしても良い。具体的には、スマートグラス10の表示部23がトラブルシューティングのメニュー画面を立体映像として表示する。現場作業員は、立体映像として表示されたメニュー画面に対して手のジェスチャーによって(より具体的には、指先で触れることによって)選択すべき原因(”リーク”または”光軸ずれ”)を指定する。スマートグラス10の撮像部21がその手のジェスチャーを撮像して検知し、スマートグラス10のコンピュータはその検知結果から指定された原因が選択されたことを認識する。スマートグラス10は、通信部22を介して熱処理装置30の制御部70に選択された原因を送信する。なお、スマートグラス10は視線追跡機能(アイトラッキング機能)を備えているため、現場作業員は視線によってメニュー画面から原因を選択するようにしても良い。或いは、スマートグラス10はマイクロフォンも備えているため、現場作業員は音声入力によって原因を選択するようにしても良い。
【0076】
次に、制御部70は、ステップS21にて選択された異常の原因に対応する部位を抽出する(ステップS22)。ステップS14では、メンテナンス作業に際してアラームが発生した部位、すなわちチャンバー60から取り外された部位が異常の原因のいずれかに仕分けられている(図9)。制御部70は、ステップS14における仕分けに基づいて、異常の原因に対応する部位を抽出する。例えば、ステップS21にて異常の原因として”リーク”が選択されたときには、異常の原因に対応する部位として”リーク”に対応付けられた上側チャンバー窓61および第1サイドカバー63が抽出される。また、異常の原因として”光軸ずれ”が選択されたときには、異常の原因に対応する部位として”光軸ずれ”に対応付けられた放射温度計69が抽出される。
【0077】
続いて、表示部77は、制御部70によって抽出された部位、すなわち異常の原因に対応する部位を表示する(ステップS23)。図10は、異常の原因に対応する部位の表示例を示す図である。図10の例では、異常の原因として”リーク”が選択されており、リーク予想箇所として”リーク”に対応付けられた第1サイドカバー63が表示されている。なお、図10では記載を省略しているが、異常の原因として”リーク”が選択されているときには、リーク予想箇所として上側チャンバー窓61も表示される。
【0078】
表示部77は、異常の原因に対応する部位に付け加えて、当該部位に関するアドバイス(支援情報)も表示する。図10の例では、リーク予想箇所として第1サイドカバー63を表示するのに加えて、第1サイドカバー63に関するアドバイスとして「斜めに装着されていないか」および「Oリングは正しく装着されているか」が表示されている。このようなアドバイスは、例えば、図8に示したようなテーブルを拡張して取り外し可能な部位のそれぞれとアドバイスとを予め関連付けておけば良い。制御部70は、抽出した部位に関連付けられたアドバイスを表示部77に表示させる。
【0079】
熱処理装置30の表示部77が異常の原因に対応する部位を表示するのに代えて、スマートグラス10の表示部23が当該部位を表示するようにしても良い。この場合は、制御部70によって抽出された部位の情報が制御部70からスマートグラス10に送信される。表示部23は、受信した異常の原因に対応する部位を立体映像として表示する。
【0080】
次に、表示された異常の原因に対応する部位を目視にて確認した現場作業員が異常の原因への対処を行う(ステップS24)。現場作業員は、異常の原因に対応する部位とともに表示されたアドバイスも参考にして対処を行う。例えば、図10のような表示を視認した現場作業員は、第1サイドカバー63が正しく装着されているか否かを確認する。特に現場作業員は、アドバイスとして表示されている内容、すなわち第1サイドカバー63が斜めに取り付けられていないか、および、Oリングは正しく装着されているかについて重点的に確認する。そして、例えば、第1サイドカバー63が斜めに取り付けられていることを発見した現場作業員は、第1サイドカバー63を再度正しく取り付け直す。なお、第1サイドカバー63およびチャンバー60には位置センサーが設けられていて第1サイドカバー63が取り外されたときなどはアラームが発せられるのであるが、第1サイドカバー63が少し斜めに取り付けられている程度では位置センサーは反応しない。逆に言えば、位置センサーが反応しない程度の位置ずれであったとしてもチャンバー60からのリークは発生する。
【0081】
その後、再度熱処理装置30の初期化を行うとともに、プロセスデータを取得して異常が解消されたか否かの確認を行い(ステップS25)、異常が解消されたときには新たな処理対象となる半導体ウェハーWの処理を開始する。一方、依然として異常が解消されない、或いはステップS23にて表示された異常の原因に対応する部位に関する不具合が見つからない場合には、原因不明であるとして、現場作業員は作業支援端末80に作業履歴を送信する(図6のステップS26)。具体的には、現場作業員は入力部76を操作し、メンテナンス時に取り外した部位の情報、すなわちステップS14にて異常の原因ごとに区分けされたアラーム情報の対象部位を制御部70から作業支援端末80に送信する。なお、現場作業員はスマートグラス10を操作して作業履歴を作業支援端末80に送信するようにしても良い。
【0082】
ステップS26にて作業支援端末80に作業履歴を送信する際に、上記部位の情報に加えて、メンテナンス作業中にスマートグラス10によって作業内容を撮像した画像を作業支援端末80に送信するようにしても良い。すなわち、メンテナンス作業を行うに際して、現場作業員はスマートグラス10の撮像部21に作業内容を撮像させて画像を動画として保存させておく。そして、現場作業員はその動画をスマートグラス10から作業支援端末80に送信するのである。
【0083】
サポート工場9内の支援作業員は、生産工場7から作業支援端末80に送信されてきた作業履歴を解析して異常の原因を特定するとともに、対処方法を見出す。支援作業員は、メンテナンス時に取り外した部位の情報に加えて、メンテナンス作業の内容を撮像した動画も解析することができれば、より迅速かつ適切に対処方法を見出すことができる。
【0084】
次に、支援作業員は作業支援端末80から対処方法に関する情報を送信する。そして、熱処理装置30の制御部70は、作業支援端末80から送信された対処情報を受信する(ステップS27)。これ代えて、スマートグラス10が作業支援端末80から送信された対処情報を受信するようにしても良い。
【0085】
現場作業員は、作業支援端末80から送信された対処情報に基づいて異常への対処作業を行う(ステップS28)。作業支援端末80から送信された対処情報はサポートを専門とする支援作業員によって導き出されたものであるため、それに基づいて現場作業員が異常への対処作業を行うことにより、より効果的に異常を解消することが期待できる。
【0086】
本実施形態においては、メンテナンス作業中に熱処理装置30から取り外された部位に関する情報を収集して当該部位をメンテナンス後に生じ得る異常の原因のいずれかに区分けして対応付けている。すなわち、メンテナンス作業中の作業内容を正確に記録して想定される異常の原因に応じて分類しているのである。そして、メンテナンス後に異常が生じたときには、その異常の原因として対応付けられていた部位を抽出して表示している。このため、現場作業員は、練度に関わらず、異常の原因に関連する部位を認識することができ、熱処理装置30のメンテナンス後に異常が生じたときにも適格かつ迅速な復旧作業を行うことができる。その結果、メンテナンス後に異常が生じたときの復旧時間を短縮することができ、生産性を向上させることができる。また、メンテナンス後に異常が生じたときに、現場作業員が逐一サポート工場9に問い合わせることなく異常の原因に関連する部位を特定して対処が可能となり、サポート工場9への問い合わせ数を削減することができる。
【0087】
また、異常の原因に関連する部位を表示する際に、併せて当該部位に関するアドバイスも表示しているため、現場作業員はより適切に復旧作業を行うことができる。
【0088】
さらに、原因不明の場合にはサポート工場9の作業支援端末80に作業履歴を送信するのであるが、この際に、スマートグラス10によって撮像した作業内容の動画も送信しているため、支援作業員はより迅速かつ適切に対処方法を導き出すことができる。
【0089】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態においては、ステップS21にて現場作業員が手動にて異常の原因を選択していたが、これに代えて制御部70が自動で異常の原因を選択するようにしても良い。具体的には、メンテナンス後に生じる異常と原因とを予め対応付けておき、制御部70がその対応付けに基づいて自動で異常から対応する原因を特定すれば良い。例えば、予め減圧できない異常と”リーク”とを対応付けておき、初期化の過程でチャンバー60内を所定の圧力まで減圧することができない異常が生じたときには、制御部70が”リーク”を選択してそれに対応する部位を抽出する。
【0090】
また、制御部70の分類部72がアラーム情報の対象部位を異常の原因のいずれかに区分けして対応付ける際に、必ずしも1つの部位を1つの原因のみに対応付けることに限定されるものではなく、1つの部位を2つ以上の複数の原因に対応付けるようにしても良い。
【0091】
また、上記実施形態においては、熱処理装置30が備える制御部70がアラーム情報の収集および仕分けを行っていたが、これに代えて、制御部70と通信可能に接続された作業支援端末80がアラーム情報の収集および仕分けを行うようにしても良い。
【0092】
また、上記実施形態においては、1秒以上連続して発光する連続点灯ランプとしてフィラメント方式のハロゲンランプHLを用いていたが、これに限定されるものではなく、ハロゲンランプHLに代えて放電型のアークランプ(例えば、キセノンアークランプ)またはLEDランプを連続点灯ランプとして用いて半導体ウェハーWの加熱を行うようにしても良い。また、フラッシュランプFLはキセノンフラッシュランプに限定されるものではなく、クリプトンフラッシュランプであっても良い。
【0093】
さらに、本発明に係る作業支援技術の対象となるのは、ハロゲンランプHLおよびフラッシュランプFLを備えた熱処理装置30に限定されるものではなく、半導体ウェハーWに所定の処理を行う基板処理装置であれば良い。このような基板処理装置としては、洗浄装置、露光装置、塗布現像装置、計測装置または検査装置等が例示される。
【符号の説明】
【0094】
5 情報通信網
7 生産工場
9 サポート工場
10 スマートグラス
21 撮像部
22 通信部
30 熱処理装置
40 ハロゲン照射部
50 フラッシュ照射部
60 チャンバー
61 上側チャンバー窓
62 下側チャンバー窓
63 第1サイドカバー
64 第2サイドカバー
65 熱処理空間
68 サセプタ
69 放射温度計
70 制御部
71 収集部
72 分類部
77 表示部
80 作業支援端末
FL フラッシュランプ
HL ハロゲンランプ
W 半導体ウェハー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10