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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108770
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】ディスクブレーキ
(51)【国際特許分類】
   F16D 55/224 20060101AFI20240805BHJP
   F16D 65/097 20060101ALI20240805BHJP
   F16D 65/095 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
F16D55/224
F16D65/097 E
F16D65/095 B
F16D65/097 C
F16D65/097 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013324
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 紘之
(72)【発明者】
【氏名】高橋 克博
(72)【発明者】
【氏名】藤井 宣輝
(72)【発明者】
【氏名】宿里 光
【テーマコード(参考)】
3J058
【Fターム(参考)】
3J058AA43
3J058AA48
3J058AA63
3J058AA73
3J058AA77
3J058AA87
3J058BA16
3J058CA50
3J058CA63
3J058CA64
3J058CA65
3J058CA67
3J058FA01
(57)【要約】
【課題】摩擦パッドの引き摺りを抑制することが可能となるディスクブレーキを提供する。
【解決手段】回入側パッドスプリング24は、一対の摩擦パッド26,27のそれぞれの回入側摩擦パッド部184(a)を、回出側、および、ディスク11の回転軸線の方向においてディスク11から離れる方向に付勢する第1付勢力を発生させる回入側サイド押しバネ131を含み、回出側パッドスプリング25は、一対の摩擦パッド26,27のそれぞれの回出側摩擦パッド部184(b)を、回入側、および、ディスク11の回転軸線の方向においてディスク11から離れる方向に付勢する第2付勢力が、回入側サイド押しバネ131の第1付勢力よりも小さい回出側サイド押しバネ152を含む。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車輪と共に回転するディスクを制動するディスクブレーキであって、
前記車輪を支持する車輪支持部に固定され、前記ディスクの回転軸線に対する径方向において、前記ディスクの外周側を跨いで設けられる取付部材と、
前記取付部材に前記回転軸線の方向へ移動可能に設けられるキャリパと、
前記取付部材に設けられ、前記回転軸線の方向において、前記キャリパにより前記ディスクの両側面に押圧される一対の摩擦パッドと、
前記一対の摩擦パッドを、前記回転軸線の方向において、前記ディスクから離間する方向に付勢する戻しバネであって、
回入側戻しバネと、回出側戻しバネと、を有し、
前記回入側戻しバネは、前記一対の摩擦パッドのそれぞれの、前記ディスクに当接する先端面とは反対側にある背面の、前記ディスクの回転方向において、前記ディスクが回転して入ってくる回入側に固定されて、前記回転軸線の方向において、前記取付部材の前記回入側の回入側当接面部に当接し、
前記回出側戻しバネは、前記一対の摩擦パッドのそれぞれの、前記背面の、前記ディスクの回転方向において、前記ディスクが回転して出ていく回出側に固定されて、前記回転軸線の方向において、前記取付部材の前記回出側の回出側当接面部に当接する、
戻しバネと、
前記ディスクの回転方向において、前記取付部材と前記一対の摩擦パッドとの間に設けられるパッドスプリングであって、
回入側パッドスプリングと、回出側パッドスプリングと、を有し、
前記回入側パッドスプリングは、前記取付部材の前記回入側の取付部と前記一対の摩擦パッドとの間に設けられると共に、前記一対の摩擦パッドのそれぞれの前記回入側にある回入側摩擦パッド部を、前記回出側、および、前記回転軸線の方向において前記ディスクの方向に付勢する第1付勢力を発生させる回入側サイド押しバネを含み、
前記回出側パッドスプリングは、前記取付部材の前記回出側の取付部と前記一対の摩擦パッドとの間に設けられると共に、前記一対の摩擦パッドのそれぞれの前記回出側にある回出側摩擦パッド部を、前記回入側、および、前記回転軸線の方向において前記ディスクの方向に付勢する第2付勢力が、前記回入側サイド押しバネの前記第1付勢力よりも小さい回出側サイド押しバネを含む、
前記パッドスプリングと、
を備えるディスクブレーキ。
【請求項2】
前記回入側戻しバネは、前記回出側戻しバネと特性が同じである、
請求項1記載のディスクブレーキ。
【請求項3】
前記回入側戻しバネは、前記回出側戻しバネよりも バネ定数が高い、
請求項1記載のディスクブレーキ。
【請求項4】
前記ディスクの回転方向において、前記回出側における前記一対の摩擦パッドの回出側耳部と、前記取付部材のうち前記回出側耳部が収容される回出側耳収容部と、の間の空隙の大きさは、
前記ディスクの回転方向において、前記回入側における前記一対の摩擦パッドの回入側耳部と、前記取付部材のうち前記回入側耳部が収容される回入側耳収容部と、の間の空隙の大きさよりも、
小さい、
請求項1記載のディスクブレーキ。
【請求項5】
前記回転軸線の方向において、前記一対の摩擦パッドの前記回入側にある回入側摩擦パッド部を、前記ディスクから離れる方向に付勢する力である、前記回入側戻しバネと前記回入側パッドスプリングとの合力である回入側戻し力は、
前記回転軸線の方向において、前記一対の摩擦パッドの前記回出側にある前記回出側摩擦パッド部を、前記ディスクから離れる方向に付勢する力である、前記回出側戻しバネと前記回出側パッドスプリングとの合力である回出側戻し力よりも、
大きい、
請求項1記載のディスクブレーキ。
【請求項6】
前記一対の摩擦パッドは、それぞれが、
前記回出側の回出側耳部と、
前記回入側の回入側耳部と、
を有し、
前記取付部材は、
前記回出側耳部が収容される回出側耳収容部と、
前記回入側耳部が収容される回入側耳収容部と、
を有し、
前記回入側パッドスプリングの前記回入側サイド押しバネは、前記径方向において、前記回入側耳部の外側に配置される、
請求項1記載のディスクブレーキ。
【請求項7】
前記回出側パッドスプリングの前記回出側サイド押しバネは、前記径方向において、前記回出側耳部の外側に配置される、
請求項6記載のディスクブレーキ。
【請求項8】
前記回入側パッドスプリングは、
前記回入側における前記一対の摩擦パッドの前記回入側耳部を、前記径方向において外側に付勢する回入側押上バネを有する、
請求項7記載のディスクブレーキ。
【請求項9】
前記回出側パッドスプリングは、
前記回出側における前記一対の摩擦パッドの前記回出側耳部を、前記径方向において外側に付勢する回出側押上バネを有する
請求項7記載のディスクブレーキ。
【請求項10】
車両の車輪と共に回転するディスクを制動するディスクブレーキであって、
前記車輪を支持する車輪支持部に固定され、前記ディスクの回転軸線に対する径方向において、前記ディスクの外周側を跨いで設けられる取付部材と、
前記取付部材に前記回転軸線の方向へ移動可能に設けられるキャリパと、
前記取付部材に設けられ、前記回転軸線の方向において、前記キャリパにより前記ディスクの両側面に押圧される一対の摩擦パッドと、
前記一対の摩擦パッドを、前記回転軸線の方向において、前記ディスクから離間する方向に付勢する戻しバネであって、
回入側戻しバネと、回出側戻しバネと、を有し、
前記回入側戻しバネは、前記一対の摩擦パッドのそれぞれの、前記ディスクに当接する先端面とは反対側にある背面の、前記ディスクの回転方向において、前記ディスクが回転して入ってくる回入側に固定されて、前記回転軸線の方向において、前記取付部材の前記回入側の回入側当接面部に当接し、
前記回出側戻しバネは、前記一対の摩擦パッドのそれぞれの、前記背面の、前記ディスクの回転方向において、前記ディスクが回転して出ていく回出側に固定されて、前記回転軸線の方向において、前記取付部材の前記回出側の回出側当接面部に当接する、
戻しバネと、
前記ディスクの回転方向において、前記取付部材と前記一対の摩擦パッドとの間に設けられるパッドスプリングであって、
回入側パッドスプリングと、回出側パッドスプリングと、を有し、
前記回入側パッドスプリングは、前記取付部材の前記回入側の取付部と前記一対の摩擦パッドとの間に設けられると共に、前記一対の摩擦パッドのそれぞれの前記回入側にある回入側摩擦パッド部を、前記回出側、および、前記回転軸線の方向において前記ディスクの方向に付勢する回入側サイド押しバネを含み、
前記回出側パッドスプリングは、前記取付部材の前記回出側の取付部と前記一対の摩擦パッドとの間に設けられると共に、前記一対の摩擦パッドのそれぞれの前記回出側にある回出側摩擦パッド部を、前記回入側、および、前記回転軸線の方向において前記ディスクの方向に付勢する回出側サイド押しバネに相当するバネが無い、
前記パッドスプリングと、
を備えるディスクブレーキ。
【請求項11】
前記回転軸線の方向において、前記一対の摩擦パッドの前記回入側にある回入側摩擦パッド部を、前記ディスクから離れる方向に付勢する力である、前記回入側戻しバネと前記回入側パッドスプリングとの合力である回入側戻し力は、
前記回転軸線の方向において、前記一対の摩擦パッドの前記回出側にある前記回出側摩擦パッド部を、前記ディスクから離れる方向に付勢する力である前記回出側戻しバネの回出側戻し力よりも、
大きい、
請求項10記載のディスクブレーキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクブレーキに関する。
【背景技術】
【0002】
ロータに対向する摩擦パッドと、この摩擦パッドからの制動力を支承するサポートとを有するディスクブレーキにおいて、パッドクリップを用いたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-161395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ディスクブレーキにおいては、制動解除状態において摩擦パッドがディスクに接触する引き摺りを抑制することが望まれている。
【0005】
本発明の目的は、摩擦パッドの引き摺りを抑制することが可能となるディスクブレーキを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るディスクブレーキの第1の態様は、車両の車輪と共に回転するディスクを制動するディスクブレーキであって、前記車輪を支持する車輪支持部に固定され、前記ディスクの回転軸線に対する径方向において、前記ディスクの外周側を跨いで設けられる取付部材と、前記取付部材に前記回転軸線の方向へ移動可能に設けられるキャリパと、前記取付部材に設けられ、前記回転軸線の方向において、前記キャリパにより前記ディスクの両側面に押圧される一対の摩擦パッドと、前記一対の摩擦パッドを、前記回転軸線の方向において、前記ディスクから離間する方向に付勢する戻しバネであって、回入側戻しバネと、回出側戻しバネと、を有し、前記回入側戻しバネは、前記一対の摩擦パッドのそれぞれの、前記ディスクに当接する先端面とは反対側にある背面の、前記ディスクの回転方向において、前記ディスクが回転して入ってくる回入側に固定されて、前記回転軸線の方向において、前記取付部材の前記回入側の回入側当接面部に当接し、前記回出側戻しバネは、前記一対の摩擦パッドのそれぞれの、前記背面の、前記ディスクの回転方向において、前記ディスクが回転して出ていく回出側に固定されて、前記回転軸線の方向において、前記取付部材の前記回出側の回出側当接面部に当接する、戻しバネと、前記ディスクの回転方向において、前記取付部材と前記一対の摩擦パッドとの間に設けられるパッドスプリングであって、回入側パッドスプリングと、回出側パッドスプリングと、を有し、前記回入側パッドスプリングは、前記取付部材の前記回入側の取付部と前記一対の摩擦パッドとの間に設けられると共に、前記一対の摩擦パッドのそれぞれの前記回入側にある回入側摩擦パッド部を、前記回出側、および、前記回転軸線の方向において前記ディスクの方向に付勢する第1付勢力を発生させる回入側サイド押しバネを含み、前記回出側パッドスプリングは、前記取付部材の前記回出側の取付部と前記一対の摩擦パッドとの間に設けられると共に、前記一対の摩擦パッドのそれぞれの前記回出側にある回出側摩擦パッド部を、前記回入側、および、前記回転軸線の方向において前記ディスクの方向に付勢する第2付勢力が、前記回入側サイド押しバネの前記第1付勢力よりも小さい回出側サイド押しバネを含む、前記パッドスプリングと、を備える。
【0007】
本発明に係るディスクブレーキの第2の態様は、車両の車輪と共に回転するディスクを制動するディスクブレーキであって、前記車輪を支持する車輪支持部に固定され、前記ディスクの回転軸線に対する径方向において、前記ディスクの外周側を跨いで設けられる取付部材と、前記取付部材に前記回転軸線の方向へ移動可能に設けられるキャリパと、前記取付部材に設けられ、前記回転軸線の方向において、前記キャリパにより前記ディスクの両側面に押圧される一対の摩擦パッドと、前記一対の摩擦パッドを、前記回転軸線の方向において、前記ディスクから離間する方向に付勢する戻しバネであって、回入側戻しバネと、回出側戻しバネと、を有し、前記回入側戻しバネは、前記一対の摩擦パッドのそれぞれの、前記ディスクに当接する先端面とは反対側にある背面の、前記ディスクの回転方向において、前記ディスクが回転して入ってくる回入側に固定されて、前記回転軸線の方向において、前記取付部材の前記回入側の回入側当接面部に当接し、前記回出側戻しバネは、前記一対の摩擦パッドのそれぞれの、前記背面の、前記ディスクの回転方向において、前記ディスクが回転して出ていく回出側に固定されて、前記回転軸線の方向において、前記取付部材の前記回出側の回出側当接面部に当接する、戻しバネと、前記ディスクの回転方向において、前記取付部材と前記一対の摩擦パッドとの間に設けられるパッドスプリングであって、回入側パッドスプリングと、回出側パッドスプリングと、を有し、前記回入側パッドスプリングは、前記取付部材の前記回入側の取付部と前記一対の摩擦パッドとの間に設けられると共に、前記一対の摩擦パッドのそれぞれの前記回入側にある回入側摩擦パッド部を、前記回出側、および、前記回転軸線の方向において前記ディスクの方向に付勢する回入側サイド押しバネを含み、前記回出側パッドスプリングは、前記取付部材の前記回出側の取付部と前記一対の摩擦パッドとの間に設けられると共に、前記一対の摩擦パッドのそれぞれの前記回出側にある回出側摩擦パッド部を、前記回入側、および、前記回転軸線の方向において前記ディスクの方向に付勢する回出側サイド押しバネに相当するバネが無い、前記パッドスプリングと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、摩擦パッドの引き摺りを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態のディスクブレーキを示す斜視図。
図2】第1実施形態のディスクブレーキをスライドピン以外のキャリパの構成部品を除いて示す斜視図。
図3】第1実施形態のディスクブレーキをスライドピン以外のキャリパの構成部品を除いて示すインナ側から見た図。
図4】第1実施形態のディスクブレーキをスライドピン以外のキャリパの構成部品を除いて示すディスク径方向内方から見た図。
図5】第1実施形態のディスクブレーキをスライドピン以外のキャリパの構成部品を除いて示すディスク径方向外方から見た図。
図6】第1実施形態のディスクブレーキをキャリパを除いて示すアウタ側から見た図。
図7】第1実施形態のディスクブレーキを回入側戻しバネおよびリベットを除いてアウタ側から見た部分図。
図8】第1実施形態のディスクブレーキの回入側パッドスプリングを示す斜視図。
図9】第1実施形態のディスクブレーキの回入側パッドスプリングを示す側面図。
図10】第1実施形態のディスクブレーキの回入側パッドスプリングを示す部分側面図。
図11】第1実施形態のディスクブレーキの回出側パッドスプリングを示す斜視図。
図12】第1実施形態のディスクブレーキの回出側パッドスプリングを示す側面図。
図13】第1実施形態のディスクブレーキの第1状態を概略的に示すアウタ側から見た図。
図14】第2実施形態のディスクブレーキをスライドピン以外のキャリパの構成部品を除いて示す斜視図。
図15】第2実施形態のディスクブレーキをスライドピン以外のキャリパの構成部品を除いて示すディスク径方向外方から見た図。
図16】第2実施形態のディスクブレーキをスライドピン以外のキャリパの構成部品を除いて示すインナ側から見た図。
図17】第2実施形態のディスクブレーキをキャリパを除いて示すアウタ側から見た図。
図18】第2実施形態のディスクブレーキの回出側パッドスプリングを示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1実施形態]
第1実施形態を図1図13を参照して以下に説明する。図1に示す第1実施形態のディスクブレーキ10は、自動車等の車両用であって車両に制動力を付与するものである。ディスクブレーキ10は、具体的には四輪自動車の制動用のものである。ディスクブレーキ10は、車両の図示略の車輪と共に回転する円板状のディスク11を制動する。
【0011】
ディスクブレーキ10は、取付部材20と、キャリパ21と、回入側ピンブーツ22と、回出側ピンブーツ23と、回入側パッドスプリング24(パッドスプリング)と、回出側パッドスプリング25(パッドスプリング)と、第1摩擦パッド26(摩擦パッド)と、第2摩擦パッド27(摩擦パッド)と、を備えている。
【0012】
以下、ディスク11の中心軸線すなわちディスク11の回転軸線をディスク軸線と称す。また、ディスク軸線の延びる方向をディスク軸線方向と称す。ディスクブレーキ10内におけるディスク11のディスク軸線に対する径方向をディスク径方向と称す。ディスクブレーキ10内におけるディスク11の回転方向つまり周方向をディスク回転方向と称す。ディスク径方向におけるディスク11の中心軸線側をディスク径方向内側と称す。ディスク径方向におけるディスク11の中心軸線とは反対側をディスク径方向外側と称す。ディスクブレーキ10内におけるディスク回転方向の長さの中央側をディスク回転方向内側と称す。ディスクブレーキ10内におけるディスク回転方向の長さの中央とは反対側をディスク回転方向外側と称す。ディスク軸線と、取付部材20およびキャリパ21のディスク回転方向の中央とを通ってディスク径方向に沿う線を径方向基準線と称す。この径方向基準線はディスク軸線に直交する。この径方向基準線とディスク軸線とを含む平面を径方向基準面と称す。
【0013】
ディスクブレーキ10における、このディスクブレーキ10が設けられた車両の車幅方向における外側をアウタ側と称す。ディスクブレーキ10における、このディスクブレーキ10が設けられた車両の車幅方向における内側をインナ側と称す。このディスクブレーキ10が設けられた車両の前進走行時のディスクブレーキ10におけるディスク11の回転方向Frの入口側、すなわちディスク11が回転して入ってくる側を、前進時回入側(回入側)と称す。このディスクブレーキ10が設けられた車両の前進走行時のディスクブレーキ10におけるディスク11の回転方向Frの出口側、すなわちディスク11が回転して出ていく側を前進時回出側(回出側)と称す。前進時回入側は、このディスクブレーキ10が設けられた車両の後退走行時のディスクブレーキ10におけるディスク11の回転方向の出口側となる。車両の後退走行時のディスクブレーキ10におけるディスク11の回転方向の出口側を後退時回出側と称す。前進時回出側は、このディスクブレーキ10が設けられた車両の後退走行時のディスクブレーキ10におけるディスク11の回転方向の入口側となる。車両の後退走行時のディスクブレーキ10におけるディスク11の回転方向の入口側を後退時回入側と称す。
【0014】
図2に示すように、取付部材20は、ディスク径方向においてディスク11の外周側を跨いだ状態で、車両の図示略の車輪を支持する図3に示す車輪支持部28に固定される。図2に示すように、取付部材20は、インナ側配置部31と、アウタ側配置部32と、これらを連結する一対の回入側連結部33および回出側連結部34と、を備えている。取付部材20は、径方向基準面を基準とする略鏡面対称の形状となっている。
【0015】
ディスク11は、図4および図5に示すように、ディスク軸線方向における一方の第1側面12とディスク軸線方向における他方の第2側面13とを有している。第1側面12は、ディスク11のインナ側に配置されている。第2側面13は、ディスク11のアウタ側に配置されている。
【0016】
インナ側配置部31は、ディスク11に対しディスク軸線方向の一側に配置されて図3に示す車輪支持部28に取り付けられる。ここで、取付部材20が取り付けられる車輪支持部28は、ディスク11に対しインナ側に配置されている。よって、この車輪支持部28に取り付けられるインナ側配置部31も、ディスク11に対しインナ側に配置される。図4に示すように、インナ側配置部31は、ディスク11の第1側面12に対向する。インナ側配置部31は、図2に示す第1摩擦パッド26をディスク軸線方向に移動可能に支持する。言い換えれば、第1摩擦パッド26はディスク軸線方向に移動可能となっている。第1摩擦パッド26は、ディスク11に対してインナ側に配置される。第1摩擦パッド26は、ディスク11の第1側面12に対向して配置される。
【0017】
アウタ側配置部32は、ディスク11に対しディスク軸線方向の他側に配置される。アウタ側配置部32は、ディスク11に対してアウタ側に配置される。アウタ側配置部32は、ディスク11の第2側面13に対向する。アウタ側配置部32は、第2摩擦パッド27をディスク軸線方向に移動可能に支持する。言い換えれば、第2摩擦パッド27はディスク軸線方向に移動可能となっている。第2摩擦パッド27は、ディスク11に対してアウタ側に配置される。第2摩擦パッド27は、ディスク11の第2側面13に対向して配置される。
【0018】
回入側連結部33および回出側連結部34は、ディスク軸線方向に延びており、ディスク11の外周側をディスク軸線方向に跨いで設けられている。回入側連結部33は、インナ側配置部31およびアウタ側配置部32のディスク径方向の外側、かつ前進時回入側の端部同士を連結する。回出側連結部34は、インナ側配置部31およびアウタ側配置部32のディスク径方向の外側、かつ前進時回出側の端部同士を連結する。取付部材20は、回入側連結部33および回出側連結部34のうち、回入側連結部33が前進時回入側に、回出側連結部34が前進時回出側に設けられている。
【0019】
図3に示すように、インナ側配置部31は、ネジ穴41を有する回入側固定部42と、ネジ穴43を有する回出側固定部44と、回入側固定部42と回出側固定部44とを接続するメインビーム45と、を備えている。また、インナ側配置部31は、回入側固定部42から延出する第1取付部46(取付部)と、回出側固定部44から延出する第2取付部47(取付部)と、を備えている。回入側固定部42、回出側固定部44、メインビーム45、第1取付部46および第2取付部47は、いずれもディスク11に対しインナ側に配置され、いずれもディスク11の第1側面12に対向する。
【0020】
回入側固定部42は、インナ側配置部31において回出側固定部44よりも前進時回入側に設けられている。メインビーム45は、ディスク回転方向に延びている。ネジ穴41は、回入側固定部42にディスク軸線方向に沿って穿設されている。ネジ穴43は、回出側固定部44にディスク軸線方向に沿って穿設されている。取付部材20は、回入側固定部42および回出側固定部44が車両の非回転部である車輪支持部28に突き当てられた状態で、ネジ穴41,43に螺合される図示略のボルトによってこの車輪支持部28に取り付けられる。車両の非回転部である車輪支持部28に固定された回入側固定部42および回出側固定部44は、互いにディスク軸線方向の位置およびディスク径方向の位置を合わせる。この状態で、メインビーム45は回入側固定部42および回出側固定部44とディスク軸線方向の位置を重ね合わせる。
【0021】
第1取付部46は、回入側固定部42とディスク軸線方向の位置を重ね合わせて回入側固定部42からディスク径方向外側に延出する。第2取付部47は、回出側固定部44とディスク軸線方向の位置を重ね合わせて回出側固定部44からディスク径方向外側に延出する。第1取付部46は、第2取付部47よりも前進時回入側に配置される。
【0022】
図2に示すように、回入側連結部33は、第1取付部46のディスク径方向外側の端部から、ディスク11の外周面よりもディスク径方向外側を跨いで、アウタ側に向けディスク軸線方向に沿って延出する。回出側連結部34は、第2取付部47のディスク径方向外側の端部から、ディスク11の外周面よりもディスク径方向外側を跨いで、アウタ側に向けディスク軸線方向に沿って延出する。
【0023】
アウタ側配置部32は、回入側連結部33から延出する第3取付部51(取付部)と、回出側連結部34から延出する第4取付部52(取付部)と、第3取付部51および第4取付部52を連結するアウタビーム53と、を備えている。第3取付部51、第4取付部52およびアウタビーム53は、いずれもディスク11に対しアウタ側に配置され、いずれもディスク11の第2側面13に対向している。
【0024】
第3取付部51は、回入側連結部33のディスク軸線方向におけるアウタ側の端部から、ディスク径方向内方に延出している。第4取付部52は、回出側連結部34のディスク軸線方向におけるアウタの端部からディスク径方向内方に延出している。第3取付部51は、第4取付部52よりも前進時回入側に配置される。アウタビーム53は、第3取付部51のディスク径方向内側の端部と、第4取付部52のディスク径方向内側の端部とを連結している。アウタビーム53は、ディスク回転方向に延びている。
【0025】
図3に示す第1取付部46および第2取付部47と、図6に示す第3取付部51および第4取付部52とには、それぞれのディスク回転方向内側に、同様の形状のトルク受け部60が形成されている。図3に示す第1取付部46のトルク受け部60と第2取付部47のトルク受け部60とはディスク回転方向において鏡面対称状に配置されている。図6に示す第3取付部51のトルク受け部60と第4取付部52のトルク受け部60とはディスク回転方向において鏡面対称状に配置されている。言い換えれば、取付部材20は、ディスク回転方向両側にトルク受け部60を有している。
【0026】
同形状の4箇所のトルク受け部60について、図7に示す第3取付部51のトルク受け部60を例にとり説明する。トルク受け部60は、ディスク径方向内側から順に、第1面部61と、第2面部62と、第3面部63と、第4面部64と、第5面部65と、第6面部66と、第7面部67と、を有している。第1面部61、第2面部62、第3面部63、第4面部64、第5面部65、第6面部66および第7面部67は、いずれもディスク軸線方向に沿って広がっている。
【0027】
第1面部61は、曲面状であり、ディスク径方向に沿っている。
第2面部62は、平面状であり、第1面部61のディスク径方向外側からディスク回転方向外側に延出している。第2面部62は径方向基準線に略垂直に広がっている。
第3面部63は、平面状であり、第2面部62のディスク回転方向外側からディスク径方向外側に延出している。第3面部63は径方向基準面に平行に広がっている。
第4面部64は、平面状であり、第3面部63のディスク径方向外側からディスク回転方向内側に延出している。第4面部64は径方向基準線に垂直に広がっている。
【0028】
第5面部65は、平面状であり、第4面部64のディスク回転方向内側からディスク径方向外側に延出している。第5面部65は径方向基準面に平行に広がっている。
第6面部66は、平面状であり、第5面部65のディスク径方向外側からディスク回転方向外側に延出している。第6面部66は径方向基準線に垂直に広がっている。
第7面部67は、平面状であり、第6面部66のディスク径方向外側からディスク径方向外側に延出している。第7面部67は径方向基準面に平行に広がっている。
【0029】
第1面部61と第3面部63と第5面部65と第7面部67とは、ディスク回転方向内側に向いている。第2面部62と第6面部66とは、ディスク径方向外側に向いている。第4面部64は、ディスク径方向内側に向いている。
【0030】
連続する第2面部62と第3面部63と第4面部64とが、第1面部61および第5面部65よりもディスク回転方向外側に凹む回入側耳収容部75(a)を構成している。トルク受け部60は、回入側耳収容部75(a)の第3面部63が、第2摩擦パッド27の制動トルクを受けるトルク受け面である。
【0031】
図6に示すように、第4取付部52のトルク受け部60は、第3取付部51のトルク受け部60の回入側耳収容部75(a)と鏡面対称状の回出側耳収容部75(b)を有している。第3取付部51の回入側耳収容部75(a)および第4取付部52の回出側耳収容部75(b)は、ディスク回転方向において互いに対向しており、ディスク回転方向において互いに離れる方向に凹んでいる。第3取付部51の回入側耳収容部75(a)および第4取付部52の回出側耳収容部75(b)は、ディスク軸線方向の位置を合わせており、ディスク径方向の位置も合わせている。第3取付部51の回入側耳収容部75(a)は第3取付部51をディスク軸線方向に貫通している。第4取付部52の回出側耳収容部75(b)は第4取付部52をディスク軸線方向に貫通している。
【0032】
図3に示すように、第1取付部46のトルク受け部60は、図6に示す第3取付部51のトルク受け部60の回入側耳収容部75(a)と同様の回入側耳収容部75(a)を有している。図3に示すように、第2取付部47のトルク受け部60は、第1取付部46のトルク受け部60の回入側耳収容部75(a)と鏡面対称状の回出側耳収容部75(b)を有している。第1取付部46の回入側耳収容部75(a)および第2取付部47の回出側耳収容部75(b)は、ディスク回転方向において互いに対向しており、ディスク回転方向において互いに離れる方向に凹んでいる。第1取付部46の回入側耳収容部75(a)および第2取付部47の回出側耳収容部75(b)は、ディスク軸線方向の位置を合わせており、ディスク径方向の位置も合わせている。第1取付部46の回入側耳収容部75(a)は第1取付部46をディスク軸線方向に貫通している。第2取付部47の回出側耳収容部75(b)は第2取付部47をディスク軸線方向に貫通している。
【0033】
図6に示す第3取付部51の回入側耳収容部75(a)と、図3に示す第1取付部46の回入側耳収容部75(a)とは、ディスク径方向の位置を合わせており、ディスク回転方向の位置も合わせている。図3に示す第2取付部47の回出側耳収容部75(b)と、図6に示す第4取付部52の回出側耳収容部75(b)とは、ディスク径方向の位置を合わせており、ディスク回転方向の位置も合わせている。
【0034】
取付部材20は、図3に示すように、インナ側配置部31が、第1取付部46に設けられた回入側耳収容部75(a)と第2取付部47に設けられた回出側耳収容部75(b)とで、第1摩擦パッド26を支持する。また、取付部材20は、図6に示すように、アウタ側配置部32が、第3取付部51に設けられた回入側耳収容部75(a)と第4取付部52に設けられた回出側耳収容部75(b)とで、第2摩擦パッド27を支持する。取付部材20は、図3に示す回入側固定部42および第1取付部46と、図6に示す回入側連結部33および第3取付部51とが、前進時回入側に配置される。取付部材20は、図3に示す回出側固定部44および第2取付部47と、図6に示す回出側連結部34および第4取付部52とが前進時回出側に配置される。
【0035】
回入側パッドスプリング24および回出側パッドスプリング25は、いずれも取付部材20に一体的に設けられる。図2に示すように、回入側パッドスプリング24は取付部材20の前進時回入側に取り付けられる。その際に、一つの回入側パッドスプリング24が、いずれも前進時回入側の第1取付部46および第3取付部51の両方にわたって取り付けられる。回出側パッドスプリング25は取付部材20の前進時回出側に取り付けられる。その際に、一つの回出側パッドスプリング25が、いずれも前進時回出側の第2取付部47および第4取付部52の両方にわたって取り付けられる。つまり、一つの取付部材20に、二つの回入側パッドスプリング24および回出側パッドスプリング25が取り付けられている。
【0036】
これら回入側パッドスプリング24および回出側パッドスプリング25は、いずれも、ディスク回転方向において、取付部材20と、一対の第1摩擦パッド26および第2摩擦パッド27との間に設けられている。回入側パッドスプリング24は、取付部材20のいずれも前進時回入側の第1取付部46および第3取付部51と、一対の第1摩擦パッド26および第2摩擦パッド27との間に設けられている。回出側パッドスプリング25は、取付部材20のいずれも前進時回出側の第2取付部47および第4取付部52と、一対の第1摩擦パッド26および第2摩擦パッド27との間に設けられている。これら回入側パッドスプリング24および回出側パッドスプリング25は、取付部材20に取り付けられて第1摩擦パッド26および第2摩擦パッド27を弾性的に支持する。また、回入側パッドスプリング24および回出側パッドスプリング25は、第1摩擦パッド26および第2摩擦パッド27のディスク軸線方向の移動を案内する。
【0037】
図8および図9は、取付部材20に組み付けられる前の自然状態の回入側パッドスプリング24を示している。
【0038】
図8に示すように、回入側パッドスプリング24は、鏡面対称の形状をなしている。回入側パッドスプリング24は、一定厚さの一枚の金属製板材からプレス成形により形成されている。回入側パッドスプリング24は、一対のパッド支持部101と、これらパッド支持部101を連結する連結部102と、連結部102から延出する係合部103と、を有している。図2に示すように、回入側パッドスプリング24は、一対のパッド支持部101がディスク11に対しディスク軸線方向の両側に配置される。回入側パッドスプリング24は、連結部102がディスク11に対しディスク径方向の外側に配置される。言い換えれば、回入側パッドスプリング24は、一対のパッド支持部101の間にディスク11が配置される。
【0039】
図8に示すように、回入側パッドスプリング24において、一対のパッド支持部101は、鏡面対称の形状をなしている。このため、一方のパッド支持部101について説明する。
【0040】
パッド支持部101は、外端板部110と、外側板部111と、外側支持板部112と、壁板部113と、延出板部114と、内側板部115と、係合爪116とを有している。外端板部110、外側板部111、外側支持板部112、延出板部114、内側板部115および係合爪116は、いずれも平板状である。
【0041】
外端板部110は、パッド支持部101において連結部102側の端部にある。
外側板部111は、外端板部110の連結部102とは反対側から外端板部110に対して略垂直に連結部102とは反対側に延出している。
【0042】
外側支持板部112は、外側板部111の外端板部110とは反対側から外側板部111に略垂直に延出している。外側支持板部112は、外側板部111から、外側板部111の厚さ方向において外端板部110と同側に延出している。
【0043】
壁板部113は、外側支持板部112の外側板部111とは反対側から外側支持板部112に略垂直に延出している。壁板部113は、外側支持板部112の厚さ方向において、外側支持板部112から外側板部111とは反対側に延出している。
【0044】
図9に示すように、壁板部113は、厚さ方向に湾曲する湾曲板状である。壁板部113は、壁板部113の厚さ方向において壁板部113から外側支持板部112が延出する側に凸状に反るように湾曲している。すなわち、壁板部113は、図10に示すように、壁板部113の厚さ方向における外側支持板部112側に、0より大きい半径Rで湾曲する湾曲面部117を有している。また、壁板部113は、壁板部113の厚さ方向における外側支持板部112とは反対側にも、0より大きい半径で湾曲する湾曲面部118を有している。
【0045】
延出板部114は、壁板部113の外側支持板部112とは反対側から壁板部113に対して略垂直に延出している。延出板部114は、壁板部113の厚さ方向において、壁板部113から外側支持板部112と同側に延出している。図8に示すように、延出板部114には中間開口119が形成されている。中間開口119は、延出板部114の壁板部113側の所定範囲を延出板部114の厚さ方向に貫通している。
【0046】
内側板部115は、延出板部114の壁板部113とは反対側から延出板部114に対して略垂直に延出している。内側板部115は、延出板部114の厚さ方向において、延出板部114から壁板部113とは反対側に延出している。
【0047】
係合爪116は、壁板部113から中間開口119を通って延出板部114よりも外側支持板部112とは反対側まで突出している。係合爪116は、壁板部113に対し鈍角をなして壁板部113から突出している。係合爪116は、壁板部113の厚さ方向において延出板部114と同側に突出している。
【0048】
外端板部110と外側板部111との境界線と、外側板部111と外側支持板部112との境界線と、外側支持板部112と壁板部113との境界線と、壁板部113と延出板部114との境界線と、延出板部114と内側板部115との境界線と、は平行である。壁板部113は、これらの境界線と平行な軸線を中心として湾曲している。外側板部111と壁板部113とは、互いに略平行をなすように広がっている。図9に示すように、延出板部114は、壁板部113から離れるほど外側支持板部112から離れるように外側支持板部112に対して若干傾斜して広がっている。
【0049】
外端板部110と外側支持板部112と延出板部114とは、互いに略平行に広がっている。外側板部111と壁板部113と内側板部115とは、互いに略平行に広がっている。
【0050】
連続する外側支持板部112と壁板部113と延出板部114とが、全体として、外側板部111および内側板部115に対して凹状をなすように連結されてガイド凹部120を構成している。
【0051】
パッド支持部101は、回入側押上バネ121(a)を有している。回入側押上バネ121(a)は、このパッド支持部101の延出板部114の他のパッド支持部101とは反対側の端縁部から、この他のパッド支持部101とは反対側に延出した後、延出板部114の厚さ方向において外側支持板部112側に折り返されて、この他のパッド支持部101側に延出している。
【0052】
回入側押上バネ121(a)は、湾曲板部122と内側支持板部123とを有している。湾曲板部122は、略円筒状に湾曲している。一方のパッド支持部101において、湾曲板部122は、延出板部114の他方のパッド支持部101とは反対側の端縁部から延出している。一方のパッド支持部101において、湾曲板部122は、延出板部114から、延出板部114の厚さ方向において外側支持板部112に近づきつつ他方のパッド支持部101から離れる方向に延出する。その後、湾曲板部122は、延出板部114の厚さ方向において外側支持板部112に近づきつつ他方のパッド支持部101に近づく方向に延出する。その後、湾曲板部122は、延出板部114の厚さ方向において外側支持板部112から離れつつ他方のパッド支持部101に近づく方向に延出する。
【0053】
一方のパッド支持部101において、内側支持板部123は、湾曲板部122の延出板部114と連続する側の端縁部とは反対側の端縁部から他方のパッド支持部101の方向に直線状に延出している。一方のパッド支持部101において、内側支持板部123は、他方のパッド支持部101側ほど、延出板部114の厚さ方向において延出板部114から離れるように、湾曲板部122から延出している。回入側押上バネ121(a)は、主に湾曲板部122において弾性変形する。
【0054】
パッド支持部101は、回入側サイド押しバネ131を有している。回入側サイド押しバネ131は、このパッド支持部101の外側板部111の他のパッド支持部101とは反対側の端縁部から、この他のパッド支持部101とは反対側に延出した後、外側板部111の厚さ方向において壁板部113とは反対側に折り返されて、この他のパッド支持部101側に延出している。
【0055】
回入側サイド押しバネ131は、湾曲板部132と支持板部133とを有している。湾曲板部132は、略円筒状に湾曲している。一方のパッド支持部101において、湾曲板部132は、外側板部111の他方のパッド支持部101とは反対側の端縁部から延出している。一方のパッド支持部101において、湾曲板部132は、外側板部111から、外側板部111の厚さ方向において外側支持板部112と同側に延出しつつ他方のパッド支持部101から離れる方向に延出する。その後、湾曲板部132は、外側板部111の厚さ方向において外側支持板部112とは逆方向に延出しつつ他方のパッド支持部101から離れる方向に延出する。その後、湾曲板部132は、外側板部111の厚さ方向において外側支持板部112とは逆方向に延出しつつ他方のパッド支持部101に近づく方向に延出する。
【0056】
一方のパッド支持部101において、支持板部133は、湾曲板部132の外側板部111と連続する側の端縁部とは反対側の端縁部から他方のパッド支持部101の方向に延出している。一方のパッド支持部101において、支持板部133は、他方のパッド支持部101側ほど、外側板部111の厚さ方向において外側板部111から離れるように湾曲板部132から延出している。一方のパッド支持部101において、支持板部133は、支持板部133の厚さ方向における外側板部111とは反対側にある軸線であって、外側支持板部112に垂直状に延びる軸線を中心とする円弧状に湾曲している。
【0057】
回入側パッドスプリング24は、以上のパッド支持部101を鏡面対称状に一対有している。
【0058】
連結部102は、基端連結板部141と、中間連結板部142と、先端板部143と、を有している。基端連結板部141、中間連結板部142および先端板部143は、いずれも平板状である。
【0059】
基端連結板部141は、一対のパッド支持部101の外端板部110と同一平面状に配置されてこれらを連結している。基端連結板部141は、一対の外端板部110の外側板部111とは反対側の端縁部同士を連結している。
【0060】
中間連結板部142は、基端連結板部141の一対の外端板部110とは反対側の端縁部から、基端連結板部141の厚さ方向における一対の外側板部111とは反対側に延出している。
【0061】
先端板部143は、中間連結板部142の基端連結板部141とは反対側の端縁部から中間連結板部142の厚さ方向において基端連結板部141とは反対側に延出している。先端板部143は、中間連結板部142から離れるほど、基端連結板部141の厚さ方向において基端連結板部141から離れるように延出している。
【0062】
係合部103は、基板部145と、一対の係合突出部146とを有している。
基板部135は、基端連結板部141における一対の外端板部110の間位置から、中間連結板部142の厚さ方向において基端連結板部141から離れる方向に延出した後、基端連結板部141の厚さ方向において中間連結板部142とは反対側に折り返される。その後、基板部135は、中間連結板部142の厚さ方向において一対の外側板部111から離れ、基端連結板部141の厚さ方向において中間連結板部142から離れるように延出している。
【0063】
一対の係合突出部146は、基板部145の基端連結板部141とは反対側の端部に設けられている。一方の係合突出部146は、基板部145の一方の外端板部110側の端縁部から突出しており、他方の係合突出部146は、基板部145の他方の外端板部110側の端縁部から突出している。一対の係合突出部146は、基板部145の厚さ方向において基端連結板部141とは反対側に突出している。一対の係合突出部146は、基板部145から離れるほど互いの間隔が広くなる。
【0064】
基端連結板部141と中間連結板部142との境界線と、中間連結板部142と先端板部143との境界線と、基端連結板部141と基板部145との境界線とは、外端板部110と外側板部111との境界線と平行である。
【0065】
図11および図12は、取付部材20に組み付けられる前の自然状態の回出側パッドスプリング25を示している。回出側パッドスプリング25は、図8および図9に示す回入側パッドスプリング24とは一部異なっている。
【0066】
回出側パッドスプリング25は、鏡面対称の形状をなしている。回出側パッドスプリング25は、一定厚さの一枚の金属製板材からプレス成形により形成されている。回出側パッドスプリング25は、一対のパッド支持部101とは一部異なる一対のパッド支持部151を、一対のパッド支持部101にかえて有している。また、回出側パッドスプリング25は、一対の回入側サイド押しバネ131とは一部異なる一対の回出側サイド押しバネ152を、一対の回入側サイド押しバネ131にかえて有している。
【0067】
図12に示すように、パッド支持部151は、ガイド凹部120とは一部異なるガイド凹部153をガイド凹部120にかえて有している。ガイド凹部153は、壁板部113とは異なる壁板部154を壁板部113にかえて有している。壁板部154は、外側支持板部112および延出板部114に略垂直に広がる平板状である。すなわち、壁板部154は、壁板部154の厚さ方向における外側支持板部112側に、平坦な平面部155を有している。また、壁板部154は、壁板部154の厚さ方向における外側支持板部112とは反対側にも、平坦な平面部156を有している。パッド支持部151は、回入側押上バネ121(a)と同様の回出側押上バネ121(b)を有している。
【0068】
回出側サイド押しバネ152は、外側支持板部112に直交する方向の幅が、回入側サイド押しバネ131の外側支持板部112に直交する方向の幅よりも小さい。回出側サイド押しバネ152は、湾曲板部157と支持板部158とを有している。
【0069】
湾曲板部157は、湾曲板部132と同様に湾曲している。湾曲板部157は、外側支持板部112に直交する方向の幅が、湾曲板部132の外側支持板部112に直交する方向の幅よりも小さい。一方のパッド支持部151において、湾曲板部157は、外側板部111の他方のパッド支持部151とは反対側の端縁部から延出している。一方のパッド支持部151において、湾曲板部157は、外側板部111から、外側板部111の厚さ方向において外側支持板部112と同側に延出しつつ他方のパッド支持部151から離れる方向に延出する。その後、湾曲板部157は、外側板部111の厚さ方向において外側支持板部112とは逆方向に延出しつつ他方のパッド支持部151から離れる方向に延出する。その後、湾曲板部157は、外側板部111の厚さ方向において外側支持板部112とは逆方向に延出しつつ他方のパッド支持部151に近づく方向に延出する。
【0070】
支持板部158は、湾曲板部157から、湾曲板部132に対する支持板部133と同様に延出している。支持板部158は、外側支持板部112に直交する方向の幅が、支持板部133の外側支持板部112に直交する方向の幅よりも小さい。一方のパッド支持部151において、支持板部158は、湾曲板部157の外側板部111と連続する側の端縁部とは反対側の端縁部から他方のパッド支持部151の方向に延出している。一方のパッド支持部151において、支持板部158は、他方のパッド支持部151側ほど、外側板部111の厚さ方向において外側板部111から離れるように湾曲板部157から延出している。一方のパッド支持部151において、支持板部158は、支持板部158の厚さ方向における外側板部111とは反対側にある軸線であって、外側支持板部112に垂直状に延びる軸線を中心とする円弧状に湾曲している。
【0071】
回出側サイド押しバネ152および回入側サイド押しバネ131は、同様に湾曲する形状であって、回出側サイド押しバネ152の方が、延出方向に直交する方向の幅が、回入側サイド押しバネ131の延出方向に直交する方向の幅よりも小さい。このため、回出側サイド押しバネ152は、回入側サイド押しバネ131よりもバネ定数が小さい。
【0072】
回出側パッドスプリング25は、これら以外の構成は、図8および図9に示す回入側パッドスプリング24と同様である。
【0073】
図2に示すように、回入側パッドスプリング24は、取付部材20のいずれも前進時回入側にある第1取付部46および第3取付部51に取り付けられる。その際に、回入側パッドスプリング24は、連結部102をパッド支持部101よりもディスク径方向外側に配置した状態とされる。また、その際に、回入側パッドスプリング24は、図6に示すように、一方のパッド支持部101のガイド凹部120を、第3取付部51の回入側耳収容部75(a)に嵌合させると共に、図3に示すように、他方のパッド支持部101のガイド凹部120を、第1取付部46の回入側耳収容部75(a)に嵌合させる。これにより、回入側パッドスプリング24は、取付部材20にディスク径方向および前進時回入側への移動が規制されて設けられる。また、その際に、回入側パッドスプリング24は、図4に示すように、係合部103の一方の係合突出部146を第1取付部46の第3取付部51側の面に当接させ、他方の係合突出部146を第3取付部51の第1取付部46側の面に当接させる。これにより、回入側パッドスプリング24は、取付部材20にディスク軸線方向の移動が規制されて設けられる。言い換えれば、回入側パッドスプリング24は、取付部材20に対してディスク径方向、ディスク回転方向およびディスク軸線方向に位置決めされて取り付けられる。
【0074】
これにより、回入側パッドスプリング24は、図2に示すように、一対のパッド支持部101がディスク11のディスク軸線方向の両面側に配置される状態となる。また、この状態で、回入側パッドスプリング24は、図3に示す一方のパッド支持部101のガイド凹部120および回入側押上バネ121(a)が、取付部材20の第1取付部46の回入側耳収容部75(a)内に配置され、図6に示す他方のパッド支持部101のガイド凹部120および回入側押上バネ121(a)が取付部材20の第3取付部51の回入側耳収容部75(a)内に配置される状態となる。
【0075】
このように前進時回入側に設けられた回入側パッドスプリング24は、第1取付部46および第3取付部51に取り付けられた取付状態で、一対の回入側耳収容部75(a)に嵌合する一対のガイド凹部120がディスク回転方向外方に向けて凹む形状となる。
【0076】
取付部材20に取り付けられた取付状態の回入側パッドスプリング24は、図6に示すアウタ側のパッド支持部101が第3取付部51のトルク受け部60に、図3に示すインナ側のパッド支持部101が第1取付部46のトルク受け部60に係合している。回入側パッドスプリング24は、図6に示すアウタ側のパッド支持部101と第3取付部51のトルク受け部60との係合状態と、図3に示すインナ側のパッド支持部101と第1取付部46のトルク受け部60との係合状態とは同様である。このため、ここでは、主に図7に基づいて、回入側パッドスプリング24のアウタ側のパッド支持部101と、第3取付部51との係合状態について説明する。
【0077】
回入側パッドスプリング24のアウタ側のパッド支持部101は、ガイド凹部120の壁板部113が、このガイド凹部120におけるディスク回転方向の外側に配置される。その際に、ガイド凹部120の壁板部113は、回入側耳収容部75(a)の凹み方向奥側の第3面部63に対向し、この第3面部63に当接する。この状態で、壁板部113は、第3面部63と同様、径方向基準面に略平行に広がる。壁板部113は、上記したように湾曲しており、ディスク径方向における外端部が第3面部63に当接し、ディスク径方向における中間部が、第3面部63からディスク回転方向に離れる。壁板部113のディスク径方向における内端部は、ディスク径方向における中間部よりも小さい若干の空隙を第3面部63との間に有する。
【0078】
また、回入側パッドスプリング24のアウタ側のパッド支持部101は、ガイド凹部120の外側支持板部112が、このガイド凹部120におけるディスク径方向外側に配置される。その際に、ガイド凹部120の外側支持板部112は、回入側耳収容部75(a)のディスク径方向外側の第4面部64に対向し、この第4面部64に面当たりする。このとき、外側支持板部112は、第4面部64と同様、ディスク軸線に沿い、径方向基準線に垂直に広がる。
【0079】
また、回入側パッドスプリング24のアウタ側のパッド支持部101は、ガイド凹部120の延出板部114が、このガイド凹部120におけるディスク径方向内側に配置される。その際に、ガイド凹部120の延出板部114は、回入側耳収容部75(a)のディスク径方向内側の第2面部62に対向し、この第2面部62に面当たりする。この状態で、延出板部114は、第2面部62と同様、ディスク軸線方向に沿い、径方向基準線に略垂直に広がる。
【0080】
また、回入側パッドスプリング24のアウタ側のパッド支持部101は、図8に示す係合爪116が、ガイド凹部120におけるディスク径方向内側に配置される。この状態で、係合爪116は、図7に示す回入側耳収容部75(a)の第2面部62に当接してディスク径方向外方に弾性変形する。
【0081】
また、回入側パッドスプリング24のアウタ側のパッド支持部101は、内側板部115が延出板部114からディスク径方向内側に延出して、第1面部61とディスク回転方向に対向する。
【0082】
また、回入側パッドスプリング24のアウタ側のパッド支持部101は、外側板部111が外側支持板部112からディスク径方向外側に延出して、第5面部65とディスク回転方向に対向する。
【0083】
以上のように、回入側パッドスプリング24のアウタ側のパッド支持部101は、ガイド凹部120が回入側耳収容部75(a)に嵌合する。その際に、パッド支持部101は、外側支持板部112、壁板部113、延出板部114および係合爪116において回入側耳収容部75(a)に当接する。
【0084】
回入側パッドスプリング24のアウタ側のパッド支持部101は、外側支持板部112が壁板部113のディスク径方向外側の端縁部から、延出板部114が壁板部113のディスク径方向内側の端縁部から、それぞれ、ディスク回転方向内方に向かって広がる。外側支持板部112、壁板部113および延出板部114は、いずれもディスク軸線方向に沿って広がっている。
【0085】
また、回入側パッドスプリング24のアウタ側のパッド支持部101は、回入側押上バネ121(a)の湾曲板部122が、ディスク軸線方向において、延出板部114のディスク11とは反対側に設けられている。湾曲板部122は、延出板部114からディスク11に対して反対側に延出した後、ディスク径方向外側に折り返されることになる。そして、回入側押上バネ121(a)の図8に示す内側支持板部123は、湾曲板部122からディスク軸線方向へディスク11に近づくように延出する。
【0086】
また、回入側パッドスプリング24のアウタ側のパッド支持部101は、回入側サイド押しバネ131の湾曲板部132が、ディスク軸線方向において、外側板部111のディスク11とは反対側に設けられている。湾曲板部132は、外側板部111からディスク11に対して反対側に延出した後、ディスク回転方向内側に折り返されることになる。そして、回入側サイド押しバネ131の図8に示す支持板部133は、湾曲板部132からディスク軸線方向へディスク11に近づくように延出する。その際に、回入側サイド押しバネ131の支持板部133は、ディスク軸線方向においてディスク11に近づくほど、ディスク回転方向内方に位置するように延出する。
【0087】
図7に示すように、回入側パッドスプリング24のアウタ側のパッド支持部101は、壁板部113が、第3取付部51のトルク受け部60の第3面部63を覆っている。
回入側パッドスプリング24のアウタ側のパッド支持部101は、壁板部113が、回入側サイド押しバネ131に対しディスク径方向にオフセットしており、具体的には、回入側サイド押しバネ131に対しディスク径方向内側にオフセットしている。
【0088】
取付部材20に取り付けられた取付状態の回入側パッドスプリング24は、図3に示すインナ側のパッド支持部101が第1取付部46のトルク受け部60に、図7に示すアウタ側のパッド支持部101の第3取付部51のトルク受け部60への係合と同様に係合する。
【0089】
回入側パッドスプリング24は、取付部材20に取り付けられた取付状態で、連結部102の中間連結板部142および先端板部143が、図8に示す基端連結板部141の一対の外端板部110とは反対側の端縁部からディスク径方向外側に延出する。この取付状態で、中間連結板部142は、図7に示すように第7面部67とディスク回転方向に対向する。
【0090】
図2に示すように、回出側パッドスプリング25は、取付部材20のいずれも前進時回出側にある第2取付部47および第4取付部52に、回入側パッドスプリング24の第1取付部46および第3取付部51への取り付けと略同様にして取り付けられる。
【0091】
取付部材20に取り付けられた取付状態の回出側パッドスプリング25は、図6に示すアウタ側のパッド支持部151が第4取付部52のトルク受け部60に係合する。また、この取付状態の回出側パッドスプリング25は、図3に示すインナ側のパッド支持部151が第2取付部47のトルク受け部60に係合する。
【0092】
但し、その際に、回出側パッドスプリング25は、図6に示すように、アウタ側の平板状の壁板部154が第4取付部52の第3面部63に面接触で当接する。また、その際に、図3に示すように、インナ側の平板状の壁板部154が第2取付部47の第3面部63に面接触で当接する。
【0093】
図11に示す回出側パッドスプリング25のアウタ側のパッド支持部151は、回出側サイド押しバネ152の湾曲板部157が、ディスク軸線方向において、外側板部111のディスク11とは反対側に設けられている。湾曲板部157は、外側板部111からディスク11に対して反対側に延出した後、ディスク回転方向内側に折り返されることになる。そして、回出側サイド押しバネ152の支持板部158は、湾曲板部157からディスク軸線方向へディスク11に近づくように延出する。その際に、回出側サイド押しバネ152の支持板部158は、ディスク軸線方向においてディスク11に近づくほど、ディスク回転方向内方に位置するように延出する。
【0094】
回出側パッドスプリング25のアウタ側のパッド支持部151は、壁板部154が、回出側サイド押しバネ152に対しディスク径方向にオフセットしており、具体的には、回出側サイド押しバネ152に対しディスク径方向内側にオフセットしている。
【0095】
取付部材20に取り付けられた取付状態の回出側パッドスプリング25は、図3に示すインナ側のパッド支持部151が第2取付部47のトルク受け部60に、図6に示すアウタ側のパッド支持部151の第4取付部52のトルク受け部60への係合と同様に係合する。
【0096】
以上のようにして、回入側パッドスプリング24および回出側パッドスプリング25がディスク回転方向に離間した状態で互いにディスク回転方向に対向して取付部材20に取り付けられる。
【0097】
取付部材20に取り付けられた回入側パッドスプリング24および回出側パッドスプリング25に、図3に示す第1摩擦パッド26と、図6に示す第2摩擦パッド27とが係合される。図3に示すように、第1摩擦パッド26は、回入側パッドスプリング24および回出側パッドスプリング25を介して、取付部材20の第1取付部46および第2取付部47に支持される。図6に示すように、第2摩擦パッド27は、回入側パッドスプリング24および回出側パッドスプリング25を介して、取付部材20の第3取付部51および第4取付部52に支持される。第1摩擦パッド26および第2摩擦パッド27は、いずれも長手方向をディスク回転方向に合わせている。
【0098】
図3に示すインナ側の第1摩擦パッド26と、図6に示すアウタ側の第2摩擦パッド27とは、略同形状の部品である。
【0099】
図2に示すように、第1摩擦パッド26は裏板171を有している。第2摩擦パッド27は裏板172を有している。第1摩擦パッド26および第2摩擦パッド27は、共通形状のライニング173をそれぞれ有している。ライニング173は、裏板171,172のそれぞれの厚さ方向の一面側に貼着されている。第1摩擦パッド26は、裏板171の長手方向が長手方向となっている。第2摩擦パッド27は、裏板172の長手方向が長手方向となっている。第1摩擦パッド26は、ライニング173の裏板172とは反対側の先端面174をディスク11に対向させた状態で、裏板171が、取付部材20に、回入側パッドスプリング24および回出側パッドスプリング25を介して支持される。第2摩擦パッド27は、ライニング173の裏板172とは反対側の先端面174をディスク11に対向させた状態で、裏板172が、取付部材20に、回入側パッドスプリング24および回出側パッドスプリング25を介して支持される。
【0100】
第1摩擦パッド26の裏板171は、鏡面対象の形状をなしている。
図3に示すように、裏板171は、主体部175と、一対の回入側耳部176(a)および回出側耳部176(b)と、を有している。
主体部175は、裏板171の長手方向における中央に設けられている。主体部175は、裏板171の長手方向に長い。主体部175に、図2に示すように、ライニング173が貼着されている。ライニング173も鏡面対象の形状をなしている。
【0101】
図3に示すように、主体部175には、その長手方向両側に主体部175を厚さ方向に貫通する一対の取付穴181が形成されている。一対の取付穴181は、主体部175のライニング173が貼着されていない位置に形成されている。一対の取付穴181のうちの所定の一方には、リベット182によって摩耗センサ183が取り付けられている。摩耗センサ183は、主体部175の厚さ方向におけるライニング173とは反対側の面に取り付けられており、主体部175の外側を通って主体部175の厚さ方向におけるライニング173側の面よりライニング173側に延出する。主体部175は、長手方向における両端部に一対の回入側摩擦パッド部184(a)および回出側摩擦パッド部184(b)を有している。一対の回入側摩擦パッド部184(a)および回出側摩擦パッド部184(b)は互いに平行である。
【0102】
裏板171は、一対の回入側耳部176(a)および回出側耳部176(b)も鏡面対称の形状である。裏板171の長手方向における一端部に一方の回入側耳部176(a)が設けられている。裏板171の長手方向における他端部に他方の回出側耳部176(b)が設けられている。一対の回入側耳部176(a)および回出側耳部176(b)のうち一方の回入側耳部176(a)は、主体部175の長手方向一端側の回入側摩擦パッド部184(a)から主体部175の長手方向に沿って外側に突出しており、一対の回入側耳部176(a)および回出側耳部176(b)のうち他方の回出側耳部176(b)は、主体部175の長手方向他端側の回出側摩擦パッド部184(b)から主体部175の長手方向に沿って外側に突出している。よって、一対の回入側耳部176(a)および回出側耳部176(b)は、主体部175の長手方向の両端部から主体部175の長手方向に沿って互いに反対方向に突出している。
【0103】
図6に示す第2摩擦パッド27の裏板172は、主体部175とは一部異なる主体部185を有している。主体部185は、主体部175に対して一対の取付穴181が形成されていない点が相違している。
裏板172は、裏板171と同様の一対の回入側耳部176(a)および回出側耳部176(b)を有している。
【0104】
図3に示すように、第1摩擦パッド26の一対の回入側耳部176(a)および回出側耳部176(b)は、一方が前進時回入側の回入側耳部176(a)となり、他方が前進時回出側の回出側耳部176(b)となる。図6に示すように、第2摩擦パッド27の一対の回入側耳部176(a)および回出側耳部176(b)は、一方が前進時回入側の回入側耳部176(a)となり、他方が前進時回出側の回出側耳部176(b)となる。よって、一対の第1摩擦パッド26および第2摩擦パッド27は、それぞれが、前進時回入側の回入側耳部176(a)と、前進時回出側の回出側耳部176(b)と、を有している。
【0105】
図3に示す第1摩擦パッド26の前進時回入側の回入側耳部176(a)と、第1摩擦パッド26の前進時回出側の回出側耳部176(b)と、図6に示す第2摩擦パッド27の前進時回入側の回入側耳部176(a)と、第2摩擦パッド27の前進時回出側の回出側耳部176(b)とは、同形状である。このため、主に図7を参照して、これらのうち、第2摩擦パッド27の前進時回入側の回入側耳部176(a)を例にとり説明する。
【0106】
第2摩擦パッド27の回入側耳部176(a)は、内側面部191と、外側面部192と、先端面部193と、を有している。内側面部191、外側面部192および先端面部193は、いずれも平面状であり、いずれも裏板171の厚さ方向に沿って広がっている。
【0107】
内側面部191および外側面部192は、いずれも主体部185から裏板172の長手方向に沿って延出している。外側面部192は、主体部185の摩擦パッド部184の一端側から延出している。外側面部192は、内側面部191と平行であり、内側面部191とは反対に向いている。先端面部193は、裏板171の長手方向において、主体部185とは反対側の端部にある。先端面部193は、内側面部191および外側面部192に対し垂直に広がっている。回入側耳部176(a)には、回入側耳部176(a)を厚さ方向に貫通する取付穴194が形成されている。この取付穴194に、図6に示すようにリベット195によって回入側戻しバネ196(a)が取り付けられる。
【0108】
図3に示すように、第1摩擦パッド26には、裏板171の厚さ方向におけるライニング173とは反対側の背面161のディスク回転方向一側の回入側耳部176(a)の位置に回入側戻しバネ196(a)が、背面161のディスク回転方向他側の回出側耳部176(b)の位置に回出側戻しバネ196(b)が、それぞれが固定される。言い換えれば、第1摩擦パッド26には、ディスク11に当接する先端面174とは反対側にある背面161に、一対の回入側戻しバネ196(a)および回出側戻しバネ196(b)が固定されている。
【0109】
図6に示すように、第2摩擦パッド27には、裏板172の厚さ方向におけるライニング173とは反対側の背面162のディスク回転方向一側の回入側耳部176(a)の位置に回入側戻しバネ196(a)が、背面161のディスク回転方向他側の回出側耳部176(b)の位置に回出側戻しバネ196(b)が、それぞれ固定される。言い換えれば、第2摩擦パッド27には、ディスク11に当接する先端面174とは反対側にある背面161に、一対の回入側戻しバネ196(a)および回出側戻しバネ196(b)が固定されている。
【0110】
回入側パッドスプリング24の第3取付部51に取り付けられたアウタ側のパッド支持部101に、第2摩擦パッド27の回入側耳部176(a)が係合される。回出側パッドスプリング25の第4取付部52に取り付けられたアウタ側のパッド支持部151に、第2摩擦パッド27の回出側耳部176(b)が係合される。これにより、第2摩擦パッド27はディスク回転方向に長手方向を合わせる。
【0111】
ここで、第2摩擦パッド27が回入側パッドスプリング24および回出側パッドスプリング25を介して取付部材20に取り付けられる際に、第2摩擦パッド27の回入側耳部176(a)が、ディスク径方向内側の内側面部191において、回入側パッドスプリング24のアウタ側の回入側押上バネ121(a)の図8に示す内側支持板部123に当接し、この内側支持板部123を延出板部114に近づけるようにディスク径方向内方に弾性変形させて、回入側パッドスプリング24の図6に示すアウタ側のガイド凹部120内に挿入される。その際に、第2摩擦パッド27の主体部185が、一対の回入側摩擦パッド部184(a)および回出側摩擦パッド部184(b)のうちの前進時回入側の回入側摩擦パッド部184(a)において、回入側パッドスプリング24のアウタ側の回入側サイド押しバネ131の図8に示す支持板部133に当接し、この支持板部133を回入側パッドスプリング24の外側板部111に近づけるようにディスク回転方向外方に弾性変形させる。
【0112】
また、その際に、図6に示す第2摩擦パッド27の回出側耳部176(b)が、ディスク径方向内側の内側面部191において、回出側パッドスプリング25のアウタ側の回出側押上バネ121(b)の図11に示す内側支持板部123に当接し、この内側支持板部123を延出板部114に近づけるようにディスク径方向内方に弾性変形させて、図6に示すように、第4取付部52に配置されたガイド凹部153内に挿入される。また、その際に、第2摩擦パッド27の主体部185が、一対の回入側摩擦パッド部184(a)および回出側摩擦パッド部184(b)のうちの前進時回出側の回出側摩擦パッド部184(b)において、回出側パッドスプリング25のアウタ側の回出側サイド押しバネ152の図8に示す支持板部158に当接し、この支持板部158を回出側パッドスプリング25の外側板部111に近づけるようにディスク回転方向外方に弾性変形させる。
【0113】
このとき、いずれも第2摩擦パッド27をディスク回転方向に反対向きに付勢する回入側サイド押しバネ131および回出側サイド押しバネ152は、回出側サイド押しバネ152の方が、回入側サイド押しバネ131よりもバネ定数が小さい。このため、第2摩擦パッド27をディスク軸線方向においてディスク11から離間する方向に付勢する力は、回入側サイド押しバネ131の方が、回出側サイド押しバネ152よりも大きくなる。また、第2摩擦パッド27をディスク回転方向内方に付勢する力は、回入側サイド押しバネ131の方が、回出側サイド押しバネ152よりも大きくなる。
【0114】
以上によって、第2摩擦パッド27は、回入側耳部176(a)が、取付部材20の第3取付部51の回入側耳収容部75(a)内に挿入されて第3取付部51に支持される。それと共に、第2摩擦パッド27は、回出側耳部176(b)が、取付部材20の第4取付部52の回出側耳収容部75(b)内に挿入されて第4取付部52に支持される。言い換えれば、取付部材20は、第2摩擦パッド27の回出側耳部176(b)が収容される回出側耳収容部75(b)と、第2摩擦パッド27の回入側耳部176(a)が収容される回入側耳収容部75(a)と、を有している。
【0115】
この状態で、第2摩擦パッド27の回入側耳部176(a)は、回入側パッドスプリング24のアウタ側の回入側押上バネ121(a)の付勢力によって、ディスク径方向外方に押圧される。言い換えれば、回入側パッドスプリング24のアウタ側の回入側押上バネ121(a)は、第2摩擦パッド27をディスク径方向に弾性的に支持する。さらに言い換えれば、回入側パッドスプリング24は、前進時回入側における第2摩擦パッド27の回入側耳部176(a)を、ディスク径方向において外側に付勢する回入側押上バネ121(a)を有する。
【0116】
また、この状態で、回入側パッドスプリング24のアウタ側のパッド支持部101は、回入側サイド押しバネ131が、ディスク径方向において、第2摩擦パッド27の回入側耳部176(a)の外側に配置される。
【0117】
また、この状態で、第2摩擦パッド27の主体部185は、回入側パッドスプリング24のアウタ側の回入側サイド押しバネ131の付勢力によって、前進時回出側に押圧される。言い換えれば、回入側パッドスプリング24のアウタ側の回入側サイド押しバネ131は、第2摩擦パッド27をディスク回転方向に弾性的に支持する。
【0118】
また、この状態で、第2摩擦パッド27の回出側耳部176(b)は、回出側パッドスプリング25のアウタ側の回出側押上バネ121(b)の付勢力によって、ディスク径方向外方に押圧される。言い換えれば、回出側パッドスプリング25のアウタ側の回出側押上バネ121(b)は、第2摩擦パッド27をディスク径方向に弾性的に支持する。さらに言い換えれば、回出側パッドスプリング25は、前進時回出側における第2摩擦パッド27の回出側耳部176(b)を、ディスク径方向において外側に付勢する回入側押上バネ121(b)を有する。
【0119】
また、この状態で、回出側パッドスプリング25のアウタ側のパッド支持部151は、回出側サイド押しバネ152が、ディスク径方向において、第2摩擦パッド27の回出側耳部176(b)の外側に配置される。
【0120】
また、この状態で、第2摩擦パッド27の主体部185は、回出側パッドスプリング25のアウタ側の回出側サイド押しバネ152の付勢力によって、前進時回入側に押圧される。言い換えれば、回出側パッドスプリング25のアウタ側の回出側サイド押しバネ152は、第2摩擦パッド27をディスク回転方向に弾性的に支持する。
【0121】
以上のようにして、第2摩擦パッド27は、回入側パッドスプリング24のアウタ側の回入側押上バネ121(a)および回出側パッドスプリング25のアウタ側の回出側押上バネ121(b)の付勢力によってディスク径方向外方に向かって付勢される。このように付勢された第2摩擦パッド27は、ディスク11からの入力がない状態では、回入側耳部176(a)が、外側面部192において、回入側パッドスプリング24のアウタ側のガイド凹部120の外側支持板部112に押し付けられて面当たりする。また、この状態で、第2摩擦パッド27の回出側耳部176(b)は、外側面部192において、回出側パッドスプリング25のアウタ側のガイド凹部120の外側支持板部112に押し付けられて面当たりする。
【0122】
また、この状態で、第2摩擦パッド27の回入側耳部176(a)は、回入側パッドスプリング24のアウタ側のガイド凹部120に、ディスク軸線方向に移動可能となるように支持される。また、この状態で、第2摩擦パッド27の回出側耳部176(b)は、回出側パッドスプリング25のアウタ側のガイド凹部120に、ディスク軸線方向に移動可能となるように支持される。
【0123】
回入側パッドスプリング24のアウタ側の回入側サイド押しバネ131の付勢力によって前進時回出側に向かって付勢された第2摩擦パッド27は、ディスク11からの入力がない状態では、回出側耳部176(b)が、そのディスク回転方向外端の先端面部193において、回出側パッドスプリング25のアウタ側のガイド凹部153の壁板部154に押し付けられて面当たりする。
【0124】
また、この状態で、第2摩擦パッド27は、図7に示すように、回入側耳部176(a)の先端面部193が、回入側パッドスプリング24のアウタ側のガイド凹部120の壁板部113に接触せず、壁板部113との間にディスク回転方向の空隙Sを有する状態になる。
【0125】
よって、ディスク回転方向において、第2摩擦パッド27の前進時回出側における回出側耳部176(b)と、取付部材20のうち、この回出側耳部176(b)が収容される回出側耳収容部75(b)と、の間の空隙の大きさは、ディスク回転方向において、第2摩擦パッド27の前進時回入側における回入側耳部176(a)と、取付部材20のうち、この回入側耳部176(a)が収容される回入側耳収容部75(a)と、の間の空隙Sの大きさよりも、小さい。
【0126】
回入側パッドスプリング24のアウタ側のガイド凹部120は、第3取付部51のトルク受け部60の第3面部63から第2摩擦パッド27に向かって湾曲する壁板部113を有する。この壁板部113も、第2摩擦パッド27の回入側耳部176(a)の先端面部193が当接すると、第2摩擦パッド27をディスク回転方向に弾性的に支持する。ここで、回入側パッドスプリング24のいずれもアウタ側の回入側サイド押しバネ131および壁板部113は、回入側サイド押しバネ131のバネ定数が、壁板部113のバネ定数より小さくなっている。
【0127】
ディスクブレーキ10は、以上に述べた状態が、図13に模式的に示すように、回入側パッドスプリング24のいずれもアウタ側の回入側サイド押しバネ131と壁板部113とのうちの一方が第2摩擦パッド27と当接し、他方が第2摩擦パッド27との間に間隙Sを有する第1状態となる。回入側パッドスプリング24は、アウタ側の回入側サイド押しバネ131が、アウタ側の壁板部113よりディスク径方向外側に配置されている。この第1状態は、第2摩擦パッド27が回入側パッドスプリング24のアウタ側の回入側サイド押しバネ131の支持により回入側パッドスプリング24のアウタ側の壁板部113との間に間隙Sを有する状態である。
【0128】
回入側パッドスプリング24は、アウタ側に、第2摩擦パッド27に当接し第2摩擦パッド27をディスク径方向外側に支持する回入側押上バネ121(a)を備えている。回入側パッドスプリング24は、車両の後退制動時に、アウタ側の壁板部113の湾曲の頂点が、第2摩擦パッド27の後退時回出側の耳部176のディスク径方向基準線の方向における中央に当接する。
【0129】
図3に示すように、回入側パッドスプリング24の第1取付部46に取り付けられたインナ側のパッド支持部101に、第1摩擦パッド26の回入側耳部176(a)が係合される。回出側パッドスプリング25の第2取付部47に取り付けられたインナ側のパッド支持部151に、第1摩擦パッド26の回出側耳部176(b)が係合される。これにより、第1摩擦パッド26はディスク回転方向に長手方向を合わせる。
【0130】
ここで、第1摩擦パッド26が回入側パッドスプリング24および回出側パッドスプリング25を介して取付部材20に取り付けられる際に、第1摩擦パッド26の回入側耳部176(a)が、ディスク径方向内側の内側面部191において、回入側パッドスプリング24のインナ側の回入側押上バネ121(a)の図8に示す内側支持板部123に当接し、この内側支持板部123を延出板部114に近づけるようにディスク径方向内方に弾性変形させて、図3に示すように、第1取付部46に配置された回入側パッドスプリング24のインナ側のガイド凹部120内に挿入される。その際に、第1摩擦パッド26の主体部185が、回入側摩擦パッド部184(a)において、回入側パッドスプリング24のインナ側の回入側サイド押しバネ131の図8に示す支持板部133に当接し、この支持板部133を回入側パッドスプリング24の外側板部111に近づけるようにディスク回転方向外方に弾性変形させる。
【0131】
また、その際に、図3に示す第1摩擦パッド26の回出側耳部176(b)が、ディスク径方向内側の内側面部191において、回出側パッドスプリング25のインナ側の回出側押上バネ121(b)の図11に示す内側支持板部123に当接し、この内側支持板部123を延出板部114に近づけるようにディスク径方向内方に弾性変形させて、図3に示すように、第2取付部47に配置されたガイド凹部153内に挿入される。また、その際に、第1摩擦パッド26の主体部185が、回出側摩擦パッド部184(b)において、回出側パッドスプリング25のインナ側の回出側サイド押しバネ152の図11に示す支持板部158に当接し、この支持板部158を回出側パッドスプリング25の外側板部111に近づけるようにディスク回転方向外方に弾性変形させる。
【0132】
このとき、いずれも第1摩擦パッド26をディスク回転方向に反対向きに付勢する回入側サイド押しバネ131および回出側サイド押しバネ152は、回出側サイド押しバネ152の方が、回入側サイド押しバネ131よりもバネ定数が小さい。このため、第1摩擦パッド26をディスク軸線方向においてディスク11から離間する方向に付勢する力は、回入側サイド押しバネ131の方が、回出側サイド押しバネ152よりも大きくなる。また、第1摩擦パッド26をディスク回転方向内方に付勢する力は、回入側サイド押しバネ131の方が、回出側サイド押しバネ152よりも大きくなる。
【0133】
以上によって、第1摩擦パッド26は、回入側耳部176(a)が、取付部材20の第1取付部46の回入側耳収容部75(a)内に挿入されて第1取付部46に支持される。それと共に、第1摩擦パッド26は、回出側耳部176(b)が、取付部材20の第2取付部47の回出側耳収容部75(b)内に挿入されて第2取付部47に支持される。言い換えれば、取付部材20は、第1摩擦パッド26の回入側耳部176(a)が収容される回入側耳収容部75(a)と、第1摩擦パッド26の回出側耳部176(b)が収容される回出側耳収容部75(b)と、を有している。
【0134】
この状態で、第1摩擦パッド26の回入側耳部176(a)は、回入側パッドスプリング24のインナ側の回入側押上バネ121(a)の付勢力によって、ディスク径方向外方に押圧される。言い換えれば、回入側パッドスプリング24のインナ側の回入側押上バネ121(a)は、第1摩擦パッド26をディスク径方向に弾性的に支持する。さらに言い換えれば、回入側パッドスプリング24は、第1摩擦パッド26の前進時回入側における回入側耳部176(a)を、ディスク径方向において外側に付勢する回入側押上バネ121(a)を有する。
【0135】
また、この状態で、回入側パッドスプリング24のインナ側のパッド支持部101は、回入側サイド押しバネ131が、ディスク径方向において、第1摩擦パッド26の回入側耳部176(a)の外側に配置される。
【0136】
また、この状態で、第1摩擦パッド26の主体部185は、回入側パッドスプリング24のインナ側の回入側サイド押しバネ131の付勢力によって、前進時回出側に押圧される。言い換えれば、回入側パッドスプリング24のインナ側の回入側サイド押しバネ131は、第1摩擦パッド26をディスク回転方向に弾性的に支持する。
【0137】
また、この状態で、第1摩擦パッド26の回出側耳部176(b)は、回出側パッドスプリング25のインナ側の回出側押上バネ121(b)の付勢力によって、ディスク径方向外方に押圧される。言い換えれば、回出側パッドスプリング25のインナ側の回出側押上バネ121(b)は、第1摩擦パッド26をディスク径方向に弾性的に支持する。さらに言い換えれば、回出側パッドスプリング25は、第1摩擦パッド26の前進時回出側における回出側耳部176(b)を、ディスク径方向において外側に付勢する回出側押上バネ121(b)を有する。
【0138】
また、この状態で、回出側パッドスプリング25のインナ側のパッド支持部151は、回出側サイド押しバネ152が、ディスク径方向において、第1摩擦パッド26の回出側耳部176(b)の外側に配置される。
【0139】
また、この状態で、第1摩擦パッド26の主体部185は、回出側パッドスプリング25のインナ側の回出側サイド押しバネ152の付勢力によって、前進時回入側に押圧される。言い換えれば、回出側パッドスプリング25のインナ側の回出側サイド押しバネ152は、第1摩擦パッド26をディスク回転方向に弾性的に支持する。
【0140】
以上のようにして、第1摩擦パッド26は、回入側パッドスプリング24のインナ側の回入側押上バネ121(a)および回出側パッドスプリング25のインナ側の回出側押上バネ121(b)の付勢力によってディスク径方向外方に向かって付勢される。このように付勢された第1摩擦パッド26は、ディスク11からの入力がない状態では、回入側耳部176(a)が、外側面部192において、回入側パッドスプリング24のインナ側のガイド凹部120の外側支持板部112に押し付けられて面当たりする。また、この状態で、第1摩擦パッド26の回出側耳部176(b)は、外側面部192において、回出側パッドスプリング25のインナ側のガイド凹部120の外側支持板部112に押し付けられて面当たりする。
【0141】
また、この状態で、第1摩擦パッド26の回入側耳部176(a)は、回入側パッドスプリング24のインナ側のガイド凹部120に、ディスク軸線方向に移動可能となるように支持される。また、この状態で、第1摩擦パッド26の回出側耳部176(b)は、回出側パッドスプリング25のインナ側のガイド凹部120に、ディスク軸線方向に移動可能となるように支持される。
【0142】
回入側パッドスプリング24のインナ側の回入側サイド押しバネ131の付勢力によって前進時回出側に向かって付勢された第1摩擦パッド26は、ディスク11からの入力がない状態では、回出側耳部176(b)が、そのディスク回転方向外端の先端面部193において、回出側パッドスプリング25のアウタ側のガイド凹部153の壁板部154に押し付けられて面当たりする。
【0143】
また、この状態で、第1摩擦パッド26は、回入側耳部176(a)の先端面部193が、回入側パッドスプリング24のアウタ側のガイド凹部120の壁板部113に接触せず、壁板部113との間にディスク回転方向の空隙Sを有する状態になる。
【0144】
よって、ディスク回転方向において、前進時回出側における第1摩擦パッド26の回出側耳部176(b)と、取付部材20のうち、この回出側耳部176(b)が収容される回出側耳収容部75(b)と、の間の空隙の大きさは、ディスク回転方向において、前進時回入側における第1摩擦パッド26の回入側耳部176(a)と、取付部材20のうち、この回入側耳部176(a)が収容される回入側耳収容部75(a)と、の間の空隙Sの大きさよりも、小さい。
【0145】
回入側パッドスプリング24のインナ側のガイド凹部120は、第1取付部46のトルク受け部60の第3面部63から第1摩擦パッド26に向かって湾曲する壁板部113を有する。この壁板部113も、第1摩擦パッド26の回入側耳部176(a)の先端面部193が当接すると、第1摩擦パッド26をディスク回転方向に弾性的に支持する。ここで、回入側パッドスプリング24のいずれもインナ側の回入側サイド押しバネ131および壁板部113は、回入側サイド押しバネ131のバネ定数が、壁板部113のバネ定数より小さくなっている。
【0146】
ディスクブレーキ10は、以上に述べた状態が、回入側パッドスプリング24のいずれもインナ側の回入側サイド押しバネ131と壁板部113とのうちの一方が第1摩擦パッド26と当接し、他方が第1摩擦パッド26との間に間隙Sを有する第1状態となる。回入側パッドスプリング24は、インナ側の回入側サイド押しバネ131が、インナ側の壁板部113よりディスク径方向外側に配置されている。この第1状態は、第1摩擦パッド26が回入側パッドスプリング24のインナ側の回入側サイド押しバネ131の支持により回入側パッドスプリング24のインナ側の壁板部113との間に間隙Sを有する状態である。
【0147】
回入側パッドスプリング24は、インナ側に、第1摩擦パッド26に当接し第1摩擦パッド26をディスク径方向外側に支持する回入側押上バネ121(a)を備えている。回入側パッドスプリング24は、車両の後退制動時に、インナ側の壁板部113の湾曲の頂点が、第1摩擦パッド26の後退時回出側となる回入側耳部176(a)のディスク径方向基準線の方向における中央に当接する。
【0148】
図2に示すように、アウタ側の第2摩擦パッド27は、ライニング173の裏板172とは反対側の先端面174をディスク11のアウタ側の第2側面13に対向させた状態とされる。インナ側の第1摩擦パッド26は、ライニング173の裏板172とは反対側の先端面174をディスク11のインナ側の第1側面12に対向させた状態とされる。第2摩擦パッド27は、制動時に、ライニング173の裏板172とは反対側の先端面174においてディスク11の第2側面13に接触することになる。第1摩擦パッド26は、制動時に、ライニング173の裏板171とは反対側の先端面174においてディスク11の第1側面12に接触することになる。
【0149】
図3に示すように、インナ側の第1摩擦パッド26に取り付けられた摩耗センサ183は、第1摩擦パッド26の前進時回入側に配置される。
【0150】
インナ側の第1摩擦パッド26には、ディスク11に当接する先端面174とは反対側にある背面161の、ディスク回転方向一側の回入側耳部176(a)の位置に回入側戻しバネ196(a)が、背面161の、ディスク回転方向他側の回出側耳部176(b)の位置に回出側戻しバネ196(b)が、それぞれ固定されている。言い換えれば、インナ側の第1摩擦パッド26に設けられた一対の回入側戻しバネ196(a)および回出側戻しバネ196(b)は、第1摩擦パッド26のディスク回転方向両端側に配置される。
【0151】
一対の回入側戻しバネ196(a)および回出側戻しバネ196(b)のうち、第1摩擦パッド26の背面161の前進時回入側に固定された回入側戻しバネ196(a)は、取付部材20の前進時回入側の第1取付部46のディスク軸線方向におけるディスク11とは反対側の回入側当接面部164に、ディスク軸線方向において当接する。一対の回入側戻しバネ196(a)および回出側戻しバネ196(b)のうち、第1摩擦パッド26の背面161の前進時回出側に固定された回出側戻しバネ196(b)は、取付部材20の前進時回出側の第2取付部47のディスク軸線方向におけるディスク11とは反対側の回出側当接面部165に、ディスク軸線方向において当接する。第1摩擦パッド26に設けられた、一対の回入側戻しバネ196(a)および回出側戻しバネ196(b)は、取付部材20に対しディスク軸線方向においてディスク11側に移動した第1摩擦パッド26を、ディスク軸線方向においてディスク11から離す方向に付勢する。
【0152】
図6に示すように、アウタ側の第2摩擦パッド27には、ディスク11に当接する先端面174とは反対側にある背面162の、ディスク回転方向一側の回入側耳部176(a)の位置に回入側戻しバネ196(a)が、背面161の、ディスク回転方向他側の回出側耳部176(b)の位置に回出側戻しバネ196(b)が、それぞれ固定されている。言い換えれば、アウタ側の第2摩擦パッド27に設けられた一対の回入側戻しバネ196(a)および回出側戻しバネ196(b)は、第2摩擦パッド27のディスク回転方向両端側に配置される。
【0153】
一対の回入側戻しバネ196(a)および回出側戻しバネ196(b)のうち、第2摩擦パッド27の背面162の前進時回入側に固定された回入側戻しバネ196(a)は、取付部材20の前進時回入側の第3取付部51のディスク軸線方向におけるディスク11とは反対側の回入側当接面部167に、ディスク軸線方向において当接する。一対の回入側戻しバネ196(a)および回出側戻しバネ196(b)のうち、第2摩擦パッド27の背面162の前進時回出側に固定された回出側戻しバネ196(b)は、取付部材20の前進時回出側の第4取付部52のディスク軸線方向におけるディスク11とは反対側の回出側当接面部168に、ディスク軸線方向において当接する。第2摩擦パッド27に設けられた、一対の回入側戻しバネ196(a)および回出側戻しバネ196(b)は、取付部材20に対しディスク軸線方向においてディスク11側に移動した第2摩擦パッド27を、ディスク軸線方向においてディスク11から離す方向に付勢する。
【0154】
ディスクブレーキ10は、いずれも図3に示す第1摩擦パッド26に取り付けられた一対の回入側戻しバネ196(a)および回出側戻しバネ196(b)と、いずれも図6に示す第2摩擦パッド27に取り付けられた一対の回入側戻しバネ196(a)および回出側戻しバネ196(b)と、の4つが、ディスク軸線方向において、一対の第1摩擦パッド26および第2摩擦パッド27を、ディスク11から離間する方向に付勢する。ディスクブレーキ10は、いずれも図3に示す第1摩擦パッド26に取り付けられた一対の回入側戻しバネ196(a)および回出側戻しバネ196(b)と、いずれも図6に示す第2摩擦パッド27に取り付けられた一対の回入側戻しバネ196(a)および回出側戻しバネ196(b)と、の4つの特性が同じとなっている。すなわち、いずれも図3に示す第1摩擦パッド26に取り付けられた回入側戻しバネ196(a)および回出側戻しバネ196(b)は、特性が同じである。また、いずれも図6に示す第2摩擦パッド27に取り付けられた回入側戻しバネ196(a)および回出側戻しバネ196(b)は、特性が同じである。
【0155】
いずれも図3に示す第1摩擦パッド26をディスク回転方向に反対向きに付勢する回入側サイド押しバネ131および回出側サイド押しバネ152は、回出側サイド押しバネ152の方が、回入側サイド押しバネ131よりもバネ定数が小さい。また、いずれも図6に示す第2摩擦パッド27をディスク回転方向に反対向きに付勢する回入側サイド押しバネ131および回出側サイド押しバネ152は、回出側サイド押しバネ152の方が、回入側サイド押しバネ131よりもバネ定数が小さい。
【0156】
よって、回入側パッドスプリング24は、第1摩擦パッド26の前進時回入側にある回入側摩擦パッド部184(a)を、前進回出側、および、ディスク軸線方向においてディスク11から離れる方向に付勢する第1付勢力を発生させる回入側サイド押しバネ131を含んでいる。また、回出側パッドスプリング25は、第1摩擦パッド26の前進時回出側にある回出側摩擦パッド部184(b)を、前進回入側、および、ディスク軸線方向においてディスク11から離れる方向に付勢する第2付勢力を発生させる回出側サイド押しバネ152を含んでいる。そして、回出側サイド押しバネ152が第1摩擦パッド26に対して発生させる第2付勢力は、回入側サイド押しバネ131が第1摩擦パッド26に対して発生させる第1付勢力よりも小さい。
【0157】
また、回入側パッドスプリング24は、第2摩擦パッド27の前進時回入側にある回入側摩擦パッド部184(a)を、前進回出側、および、ディスク軸線方向においてディスク11から離れる方向に付勢する第1付勢力を発生させる回入側サイド押しバネ131を含んでいる。また、回出側パッドスプリング25は、第2摩擦パッド27の前進時回出側にある回出側摩擦パッド部184(b)を、前進回入側、および、ディスク軸線方向においてディスク11から離れる方向に付勢する第2付勢力を発生させる回出側サイド押しバネ152を含んでいる。そして、回出側サイド押しバネ152が第2摩擦パッド27に対して発生させる第2付勢力は、回入側サイド押しバネ131が第2摩擦パッド27に対して発生させる第1付勢力よりも小さい。
【0158】
加えて、いずれも第1摩擦パッド26をディスク11から離れる方向に付勢する回入側戻しバネ196(a)および回出側戻しバネ196(b)は特性が同じである。また、いずれも第2摩擦パッド27をディスク11から離れる方向に付勢する回入側戻しバネ196(a)および回出側戻しバネ196(b)は特性が同じである。
【0159】
ディスク軸線方向において、第1摩擦パッド26の前進時回入側にある回入側摩擦パッド部184(a)を、ディスク11から離れる方向に付勢する力である、回入側戻しバネ196(a)と回入側パッドスプリング24との合力を回入側戻し力とする。また、ディスク軸線方向において、第1摩擦パッド26の前進時回出側にある回出側摩擦パッド部184(b)を、ディスク11から離れる方向に付勢する力である、回出側戻しバネ196(b)と回出側パッドスプリング25との合力を回出側戻し力とする。すると、第1摩擦パッド26の回入側戻し力は、第1摩擦パッド26の回出側戻し力よりも大きい。なお、材質や形状を異ならせることによって、第1摩擦パッド26に取り付けられる回入側戻しバネ196(a)のバネ定数を、第1摩擦パッド26に取り付けられる回出側戻しバネ196(b)のバネ定数よりも高くして、回入側戻し力を回出側戻し力よりも、さらに大きくすることも可能である。
【0160】
ディスク軸線方向において、第2摩擦パッド27の前進時回入側にある回入側摩擦パッド部184(a)を、ディスク11から離れる方向に付勢する力である、回入側戻しバネ196(a)と回入側パッドスプリング24との合力を回入側戻し力とする。また、ディスク軸線方向において、第2摩擦パッド27の前進時回出側にある回出側摩擦パッド部184(b)を、ディスク11から離れる方向に付勢する力である、回出側戻しバネ196(b)と回出側パッドスプリング25との合力を回出側戻し力とする。すると、第2摩擦パッド27の回入側戻し力は、第2摩擦パッド27の回出側戻し力よりも大きい。なお、材質や形状を異ならせることによって、第2摩擦パッド27に取り付けられる回入側戻しバネ196(a)のバネ定数を、第2摩擦パッド27に取り付けられる回出側戻しバネ196(b)のバネ定数よりも高くして、回入側戻し力を回出側戻し力よりも、さらに大きくすることも可能である。
【0161】
図1に示すように、キャリパ21は、キャリパ本体201と、回入側スライドピン202と、回出側スライドピン203と、回入側取付ボルト204と、図示略の回出側取付ボルトと、図示略のピストンを備えている。
【0162】
キャリパ21は、略鏡面対称の形状となっており、径方向基準線および径方向基準面が、キャリパ21のディスク回転方向の中央位置を通る。キャリパ21は、回入側スライドピン202が回入側取付ボルト204によってキャリパ本体201に固定されている。また、キャリパ21は、回出側スライドピン203が図示略の回出側取付ボルトよってキャリパ本体201に固定されている。これら一対の回入側スライドピン202および回出側スライドピン203は、互いに軸方向の位置を合わせると共に平行に配置されている。
【0163】
取付部材20には、回入側連結部33のインナ側の端面から回入側連結部33内の途中位置までディスク軸線方向に沿って延びる図示略の回入側ピン挿入穴が形成されている。また、取付部材20には、回出側連結部34のインナ側の端面から回出側連結部34内の途中位置までディスク軸線方向に沿って延びる図示略の回出側ピン挿入穴が形成されている。キャリパ21は、回入側スライドピン202が、取付部材20の図示略の回入側ピン挿入穴に摺動可能に嵌合する。また、キャリパ21は、回出側スライドピン203が、取付部材20の図示略の回出側ピン挿入穴に摺動可能に嵌合する。
【0164】
これにより、キャリパ21は、キャリパ本体201が回入側スライドピン202および回出側スライドピン203を介して取付部材20に、ディスク軸線方向へ移動可能に設けられる。言い換えれば、取付部材20は、一対の回入側連結部33および回出側連結部34において、キャリパ21をディスク軸線方向に摺動可能に支持する。よって、キャリパ21は、取付部材20に、ディスク軸線方向に移動可能に設けられる。回入側ピンブーツ22は、回入側スライドピン202の取付部材20から突出する部分を被覆する。回出側ピンブーツ23は、回出側スライドピン203の取付部材20から突出する部分を被覆する。
【0165】
キャリパ本体201は略鏡面対称の形状となっている。径方向基準線および径方向基準面は、キャリパ本体201のディスク回転方向の中央位置を通る。キャリパ本体201は、シリンダ部221と、ブリッジ部222と、爪部223と、回入側ピン配設部224と、回出側ピン配設部225と、を備えている。
【0166】
シリンダ部221は、ディスク11に対しディスク軸線方向のインナ側に配置される。ブリッジ部222は、シリンダ部221のディスク径方向外側の部分からディスク11の外周を跨ぐようにディスク軸線方向に沿ってアウタ側に延出する。爪部223は、ブリッジ部222のシリンダ部221とは反対側の部分からディスク径方向内側に延出してディスク11よりもアウタ側に配置される。回入側ピン配設部224は、シリンダ部221よりも前進時回入側に配置される。回出側ピン配設部225は、シリンダ部221よりも前進時回出側に配置される。キャリパ本体201は、その回入側ピン配設部224に回入側スライドピン202が回入側取付ボルト204によって固定されている。キャリパ本体201は、その回出側ピン配設部225に回出側スライドピン203が図示略の回出側取付ボルトによって固定されている。
【0167】
シリンダ部221には、図示略のシリンダ孔が形成されている。図示略のシリンダ孔は、シリンダ部221のディスク軸線方向におけるディスク11側の端面からディスク11とは反対方向に凹んでいる。よって、図示略のシリンダ孔は、ディスク11側に開口している。図示略のシリンダ孔は、ディスク軸線方向に沿っている。シリンダ部221には、図示略のシリンダ孔が、ディスク回転方向に並んで複数、具体的には2箇所形成されている。これらの図示略のシリンダ孔のそれぞれに図示略のピストンが収容される。よって、キャリパ21は、2ポットタイプのキャリパとなっている。爪部223は、ディスク軸線方向においてシリンダ部221と対向して設けられている。
【0168】
図示略のピストンは、シリンダ部221の図示略のシリンダ孔に、ディスク軸線方向に移動可能となるように収容されている。図示略のピストンはディスク11の第1側面12に対向している。ディスク11の第1側面12と図示略のピストンとの間に第1摩擦パッド26が配置されている。図示略のピストンはディスク11の第1側面12に向かって前進すると第1摩擦パッド26を押圧する。
【0169】
車両の前進走行中の制動時に、ディスクブレーキ10には、図示略のブレーキ配管を介して、キャリパ21のシリンダ部221の図示略のシリンダ孔と図示略のピストンとの間にブレーキ液が導入される。すると、キャリパ21は、シリンダ部221において図示略のピストンにブレーキ液圧が作用し、図示略のピストンが、ディスク11側に前進する。このように前進する図示略のピストンは、ディスク11との間に配置されたインナ側の第1摩擦パッド26をディスク11に向かって押圧する。すると、インナ側の第1摩擦パッド26は、回入側パッドスプリング24および回出側パッドスプリング25を介して取付部材20で案内されて、ディスク軸線方向に沿ってディスク11側に移動し、図5に示すライニング173の先端面174においてディスク11の一方の第1側面12に接触してディスク11に押し付けられる。
【0170】
このようにディスク軸線方向に沿ってディスク11側に移動すると、第1摩擦パッド26は、いずれも第1摩擦パッド26に取り付けられた図3に示す回入側戻しバネ196(a)および回出側戻しバネ196(b)をディスク軸方向に弾性変形させる。第1摩擦パッド26は、それと共に、いずれも第1摩擦パッド26に当接する図5に示すインナ側の回入側サイド押しバネ131およびインナ側の回出側サイド押しバネ152をディスク回転方向に弾性変形させる。その際に、インナ側の回入側サイド押しバネ131は、支持板部133をディスク回転方向において外側板部111に近づけるように弾性変形し、インナ側の回出側サイド押しバネ152は、支持板部158をディスク回転方向において外側板部111に近づけるように弾性変形する。
【0171】
ライニング173の先端面174においてディスク11に押し付けられると、インナ側の第1摩擦パッド26は、回転するディスク11との摩擦力によって前進時回出側にも押圧される。すると、取付部材20の図3に示す前進時回出側かつインナ側の第2取付部47のトルク受け部60が回出側パッドスプリング25のインナ側のガイド凹部153の壁板部154を介して第1摩擦パッド26の回出側耳部176(b)から制動トルクを受ける。
【0172】
図示略のピストンによる第1摩擦パッド26のディスク11への押圧の反力で、図1に示すキャリパ21は、キャリパ本体201が取付部材20に対し回入側スライドピン202および回出側スライドピン203をスライドさせてディスク軸線方向に移動する。すると、キャリパ本体201の爪部223が、爪部223とディスク11との間に配置されたアウタ側の第2摩擦パッド27をディスク11に向かって押圧する。すると、アウタ側の第2摩擦パッド27は、回入側パッドスプリング24および回出側パッドスプリング25を介して取付部材20で案内されてディスク軸線方向に沿ってディスク11側に移動し、図5に示すライニング173の先端面174においてディスク11の他方の第2側面13に接触してディスク11に押し付けられる。
【0173】
このようにディスク軸線方向に沿ってディスク11側に移動すると、第2摩擦パッド27は、いずれも第2摩擦パッド27に取り付けられた図6に示す回入側戻しバネ196(a)および回出側戻しバネ196(b)をディスク軸方向に弾性変形させる。第2摩擦パッド27は、それと共に、いずれも第2摩擦パッド27に当接する図5に示すアウタ側の回入側サイド押しバネ131およびアウタ側の回出側サイド押しバネ152をディスク回転方向に弾性変形させる。その際に、アウタ側の回入側サイド押しバネ131は、支持板部133をディスク回転方向において外側板部111に近づけるように弾性変形し、アウタ側の回出側サイド押しバネ152は、支持板部158をディスク回転方向において外側板部111に近づけるように弾性変形する。
【0174】
ライニング173の先端面174においてディスク11に押し付けられると、アウタ側の第2摩擦パッド27は、回転するディスク11との摩擦力によって前進時回出側にも押圧される。すると、取付部材20の図6に示す前進時回出側かつアウタ側の第4取付部52のトルク受け部60が回出側パッドスプリング25のアウタ側のガイド凹部153の壁板部154を介して第2摩擦パッド27の回出側耳部176(b)から制動トルクを受ける。
【0175】
取付部材20に摺動可能に支持された図1に示すキャリパ21は、このようにして、図示略のピストンの作動により、図示略のピストンと爪部223とで一対の第1摩擦パッド26および第2摩擦パッド27をディスク軸線方向の両側から挟持する。そして、キャリパ21は、第1摩擦パッド26をディスク11の第1側面12に、第2摩擦パッド27をディスク11の第2側面13に、それぞれ押し付ける。その結果、ディスクブレーキ10は、ディスク11に摩擦抵抗を付与して、制動力を発生させることになる。キャリパ21は、いわゆるフィスト型(スライド型)のキャリパである。一対の第1摩擦パッド26および第2摩擦パッド27は、取付部材20に設けられ、ディスク軸線方向において、キャリパ21によりディスク11の両側の第1側面12および第2側面13に押圧される。
【0176】
制動が解除されると、キャリパ21は、図示略のピストンへのブレーキ液圧が減少する。すると、ピストンが、ディスク11からディスク軸線方向において離れると共に、第1摩擦パッド26が、いずれも第1摩擦パッド26に取り付けられた図3に示す回入側戻しバネ196(a)および回出側戻しバネ196(b)の付勢力と、いずれも第1摩擦パッド26に当接する図5に示すインナ側の回入側サイド押しバネ131およびインナ側の回出側サイド押しバネ152の付勢力とで、ディスク11からディスク軸線方向において離れるように移動する。
【0177】
図示略のピストンへのブレーキ液圧が減少すると、第2摩擦パッド27が、いずれも第2摩擦パッド27に取り付けられた図6に示す回入側戻しバネ196(a)および回出側戻しバネ196(b)の付勢力と、いずれも第2摩擦パッド27に当接する図5に示すアウタ側の回入側サイド押しバネ131およびアウタ側の回出側サイド押しバネ152の付勢力とで、ディスク11からディスク軸線方向において離れるように移動する。すると、キャリパ21は、第2摩擦パッド27で押圧されて、爪部223をディスク11からディスク軸線方向において離すようにキャリパ本体201が取付部材20に対し回入側スライドピン202および回出側スライドピン203をスライドさせてディスク軸線方向に移動する。
【0178】
このとき、回入側パッドスプリング24のインナ側の回入側サイド押しバネ131が発生させる第1摩擦パッド26の回入側摩擦パッド部184(a)を、ディスク軸線方向において、ディスク11から離れる方向に付勢する第1付勢力よりも、回出側パッドスプリング25のインナ側の回出側サイド押しバネ152が発生させる第1摩擦パッド26の回出側摩擦パッド部184(b)を、ディスク軸線方向において、ディスク11から離れる方向に付勢する第2付勢力の方が小さい。また、このとき、回入側パッドスプリング24のアウタ側の回入側サイド押しバネ131が発生させる第2摩擦パッド27の回入側摩擦パッド部184(a)を、ディスク軸線方向において、ディスク11から離れる方向に付勢する第1付勢力よりも、回出側パッドスプリング25のアウタ側の回出側サイド押しバネ152が発生させる第2摩擦パッド27の回出側摩擦パッド部184(b)を、ディスク軸線方向において、ディスク11から離れる方向に付勢する第2付勢力の方が小さい。
【0179】
よって、第1摩擦パッド26の回入側摩擦パッド部184(a)を、ディスク軸線方向において、ディスク11から離れる方向に付勢する、回入側戻しバネ196(a)と回入側パッドスプリング24との合力である回入側戻し力が、第1摩擦パッド26の回出側摩擦パッド部184(b)を、ディスク軸線方向において、ディスク11から離れる方向に付勢する、回出側戻しバネ196(b)と回出側パッドスプリング25との合力である回出側戻し力よりも大きくなる。このため、第1摩擦パッド26は、前進時回入側にある回入側摩擦パッド部184(a)の方が、前進時回出側にある回出側摩擦パッド部184(b)よりも、ディスク軸線方向において、ディスク11から離れることになる。また、第2摩擦パッド27の回入側摩擦パッド部184(a)を、ディスク軸線方向において、ディスク11から離れる方向に付勢する、回入側戻しバネ196(a)と回入側パッドスプリング24との合力である回入側戻し力が、第2摩擦パッド27の回出側摩擦パッド部184(b)を、ディスク軸線方向において、ディスク11から離れる方向に付勢する、回出側戻しバネ196(b)と回出側パッドスプリング25との合力である回出側戻し力よりも大きくなる。このため、第2摩擦パッド27は、前進時回入側にある回入側摩擦パッド部184(a)の方が、前進時回出側にある回出側摩擦パッド部184(b)よりも、ディスク軸線方向において、ディスク11から離れることになる。
【0180】
車両の後退走行中の制動時に、ディスクブレーキ10は、上記と同様に、第1摩擦パッド26をディスク11の第1側面12に、第2摩擦パッド27をディスク11の第2側面13に、それぞれ押し付ける。その際に、上記とは逆向きに回転するディスク11によって第1摩擦パッド26および第2摩擦パッド27は、上記とは逆の後退時回出側に押圧される。
【0181】
すると、第1摩擦パッド26は、回入側パッドスプリング24のインナ側の回入側サイド押しバネ131を、主体部175の後退時回出側となる前進時回入側の回入側摩擦パッド部184(a)で後退時回出側に押圧して、弾性変形させる。その後、第1摩擦パッド26は、後退時回出側の耳部176のディスク径方向基準線の方向における中央において、回入側パッドスプリング24のインナ側の壁板部113の湾曲の頂点に当接する。その後、この耳部176がその先端面部193において、この壁板部113を後退時回出側に押圧して弾性変形させる。その後、この壁板部113は最終的に平板状になり、第1摩擦パッド26の後退時回出側の耳部176の先端面部193と、第1取付部46のトルク受け部60のトルク受け面である第3面部63とに面接触する状態になる。
【0182】
ディスクブレーキ10は、この状態が、第1摩擦パッド26の移動により、第1摩擦パッド26の後退時回出側の耳部176の先端面部193と、回入側パッドスプリング24のインナ側の壁板部113との間隙が埋まる第2状態となる。第2状態となると、取付部材20の後退時回出側かつインナ側の第1取付部46のトルク受け部60が、第3面部63において回入側パッドスプリング24のインナ側の壁板部113を介して第1摩擦パッド26の後退時回出側の耳部176から制動トルクを受ける。
【0183】
また、ディスク11によって後退時回出側に押圧された第2摩擦パッド27は、図7に示す回入側パッドスプリング24のアウタ側の回入側サイド押しバネ131を、主体部185の後退時回出側となる前進時回入側の回入側摩擦パッド部184(a)で後退時回出側に押圧して、弾性変形させる。その後、第2摩擦パッド27は、後退時回出側の耳部176のディスク径方向基準線の方向における中央において、回入側パッドスプリング24のアウタ側の壁板部113の湾曲の頂点に当接する。その後、この耳部176がその先端面部193においてこの壁板部113を後退時回出側に押圧して弾性変形させる。その後、この壁板部113は最終的に平板状になり、第2摩擦パッド27の後退時回出側の耳部176の先端面部193と、第3取付部51のトルク受け部60のトルク受け面である第3面部63とに面接触する状態になる。
【0184】
ディスクブレーキ10は、この状態が、第2摩擦パッド27の移動により、第2摩擦パッド27の後退時回出側の耳部176の先端面部193と、回入側パッドスプリング24のアウタ側の壁板部113との間隙Sが埋まる第2状態となる。第2状態となると、取付部材20の後退時回出側かつアウタ側の第3取付部51のトルク受け部60が、第3面部63において回入側パッドスプリング24のアウタ側の壁板部113を介して第2摩擦パッド27の後退時回出側の耳部176から制動トルクを受ける。
【0185】
制動が解除されると、ディスクブレーキ10は、上記と同様に、第1摩擦パッド26が、いずれも第1摩擦パッド26に取り付けられた図3に示す回入側戻しバネ196(a)および回出側戻しバネ196(b)の付勢力と、いずれも第1摩擦パッド26に当接する図5に示すインナ側の回入側サイド押しバネ131およびインナ側の回出側サイド押しバネ152の付勢力とで、ディスク11からディスク軸線方向において離れるように移動する。それと共に、第2摩擦パッド27が、いずれも第2摩擦パッド27に取り付けられた図6に示す回入側戻しバネ196(a)および回出側戻しバネ196(b)の付勢力と、いずれも第2摩擦パッド27に当接する図5に示すアウタ側の回入側サイド押しバネ131およびアウタ側の回出側サイド押しバネ152の付勢力とで、ディスク11からディスク軸線方向において離れるように移動する。
【0186】
上記した特許文献1には、ロータに対向する摩擦パッドと、この摩擦パッドからの制動力を支承するサポートとを有するディスクブレーキにおいて、パッドクリップを用いることが開示されている。パッドクリップは、摩擦パッドの側縁部とサポートのアンカ部との間に装着されて摩擦パッドを支持すると共に、ロータから摩擦パッドを離隔する方向の戻し力を発生させる。そして、このディスクブレーキは、パッドクリップとして、ロータ回入側に配置されたパッドクリップと、ロータの回出側に配置されたパッドクリップと、を有している。ところで、ディスクブレーキにおいては、制動解除状態において摩擦パッドがディスクに接触する引き摺りを抑制することが望まれている。
【0187】
第1実施形態のディスクブレーキ10は、いずれも第1摩擦パッド26を、ディスク軸線方向においてディスク11から離れる方向に付勢する回入側戻しバネ196(a)および回出側戻しバネ196(b)が第1摩擦パッド26に固定されている。また、ディスクブレーキ10は、いずれも第2摩擦パッド27を、ディスク軸線方向においてディスク11から離れる方向に付勢する回入側戻しバネ196(a)および回出側戻しバネ196(b)が第2摩擦パッド27に固定されている。また、ディスクブレーキ10は、回入側パッドスプリング24が、第1摩擦パッド26をディスク軸線方向においてディスク11から離れる方向に付勢する回入側サイド押しバネ131を有している。また、ディスクブレーキ10は、回入側パッドスプリング24が、第2摩擦パッド27をディスク軸線方向においてディスク11から離れる方向に付勢する回入側サイド押しバネ131を有している。また、ディスクブレーキ10は、回出側パッドスプリング25が、第1摩擦パッド26をディスク軸線方向においてディスク11から離れる方向に付勢する回出側サイド押しバネ152を有している。また、ディスクブレーキ10は、回出側パッドスプリング25が、第2摩擦パッド27をディスク軸線方向においてディスク11から離れる方向に付勢する回出側サイド押しバネ152を有している。これらにより、ディスクブレーキ10は、制動解除状態において、第1摩擦パッド26および第2摩擦パッド27を、ディスク軸線方向においてディスク11から良好に離すことができ、引き摺りを抑制することができる。
【0188】
また、ディスクブレーキ10は、回入側サイド押しバネ131が発生させる、第1摩擦パッド26の回入側摩擦パッド部184(a)を、ディスク軸線方向において、ディスク11から離れる方向に付勢する第1付勢力よりも、回出側サイド押しバネ152が発生させる、第1摩擦パッド26の回出側摩擦パッド部184(b)を、ディスク軸線方向において、ディスク11から離れる方向に付勢する第2付勢力の方が小さくなっている。よって、ディスクブレーキ10は、制動解除状態において、第1摩擦パッド26の前進時回入側を、第1摩擦パッド26の前進時回出側よりも、ディスク軸線方向においてディスク11から離すことができる。したがって、ディスクブレーキ10は、制動解除状態において、ディスク11の振れ等に起因して、第1摩擦パッド26が、前進走行時に回転するディスク11に例え接触したとしても、回転するディスク11によるクサビ効果によってディスク11に近づくように移動することが抑制されることになる。よって、ディスクブレーキ10は、第1摩擦パッド26の引き摺りを一層抑制することができる。
【0189】
また、ディスクブレーキ10は、回入側サイド押しバネ131が発生させる、第2摩擦パッド27の回入側摩擦パッド部184(a)を、ディスク軸線方向において、ディスク11から離れる方向に付勢する第1付勢力よりも、回出側サイド押しバネ152が発生させる、第2摩擦パッド27の回出側摩擦パッド部184(b)を、ディスク軸線方向において、ディスク11から離れる方向に付勢する第2付勢力の方が小さくなっている。よって、ディスクブレーキ10は、制動解除状態において、第2摩擦パッド27の前進時回入側を、第2摩擦パッド27の前進時回出側よりも、ディスク軸線方向においてディスク11から離すことができる。したがって、ディスクブレーキ10は、制動解除状態において、ディスク11の振れ等に起因して、第2摩擦パッド27が、前進走行時に回転するディスク11に例え接触したとしても、回転するディスク11によるクサビ効果によってディスク11に近づくように移動することが抑制されることになる。よって、ディスクブレーキ10は、第2摩擦パッド27の引き摺りを一層抑制することができる。
【0190】
また、ディスクブレーキ10は、いずれも第1摩擦パッド26に固定される回入側戻しバネ196(a)および回出側戻しバネ196(b)の特性が同じである。また、ディスクブレーキ10は、いずれも第2摩擦パッド27に固定される回入側戻しバネ196(a)および回出側戻しバネ196(b)の特性が同じである。しかも、いずれも第1摩擦パッド26に固定される回入側戻しバネ196(a)および回出側戻しバネ196(b)と、いずれも第2摩擦パッド27に固定される回入側戻しバネ196(a)および回出側戻しバネ196(b)との、4つの特性が同じとなっている。よって、部品の共通化が可能になり、戻しバネ196のサブアセンブリ単位での作り分けが不要となる。したがって、ディスクブレーキ10は、コストを低減することができる。なお、第1摩擦パッド26に固定される回入側戻しバネ196(a)のバネ定数を、第1摩擦パッド26に固定される回出側戻しバネ196(b)のバネ定数よりも高くしても良い。これにより、第1摩擦パッド26が、回転するディスク11によるクサビ効果によってディスク11に近づくように移動することが一層抑制されることになる。このため、第1摩擦パッド26の引き摺りを一層抑制できることになる。また、第2摩擦パッド27に固定される回入側戻しバネ196(a)のバネ定数を、第2摩擦パッド27に固定される回出側戻しバネ196(b)のバネ定数よりも高くしても良い。これにより、第2摩擦パッド27が、回転するディスク11によるクサビ効果によってディスク11に近づくように移動することが一層抑制されることになる。このため、第2摩擦パッド27の引き摺りを一層抑制できることになる。
【0191】
また、ディスクブレーキ10は、ディスク回転方向において、前進時回出側における第1摩擦パッド26の回出側耳部176(b)と、取付部材20のうち、この回出側耳部176(b)が収容される回出側耳収容部75(b)と、の間の空隙の大きさが、ディスク回転方向において、前進時回入側における第1摩擦パッド26の回入側耳部176(a)と、取付部材20のうち、この回入側耳部176(a)が収容される回入側耳収容部75(a)と、の間の空隙Sの大きさよりも小さい。これにより、ディスクブレーキ10は、前進走行中の制動時において、第1摩擦パッド26の前進時回出側の回出側耳部176(b)と、取付部材20の回出側耳収容部75(b)との間に生じる打音を抑制することができる。
【0192】
また、ディスクブレーキ10は、ディスク回転方向において、前進時回出側における第2摩擦パッド27の回出側耳部176(b)と、取付部材20のうち、この回出側耳部176(b)が収容される回出側耳収容部75(b)と、の間の空隙の大きさが、ディスク回転方向において、前進時回入側における第2摩擦パッド27の回入側耳部176(a)と、取付部材20のうち、この回入側耳部176(a)が収容される回入側耳収容部75(a)と、の間の空隙Sの大きさよりも小さい。これにより、ディスクブレーキ10は、前進走行中の制動時において、第2摩擦パッド27の前進時回出側の回出側耳部176(b)と、取付部材20の回出側耳収容部75(b)との間に生じる打音を抑制することができる。
【0193】
また、ディスクブレーキ10は、第1摩擦パッド26の回入側摩擦パッド部184(a)を、ディスク軸線方向において、ディスク11から離れる方向に付勢する、回入側戻しバネ196(a)と回入側パッドスプリング24との合力である回入側戻し力が、第1摩擦パッド26の回出側摩擦パッド部184(b)を、ディスク軸線方向において、ディスク11から離れる方向に付勢する、回出側戻しバネ196(b)と回出側パッドスプリング25との合力である回出側戻し力よりも大きい。このため、第1摩擦パッド26は、前進時回入側にある回入側摩擦パッド部184(a)の方が、前進時回出側にある回出側摩擦パッド部184(b)よりも、ディスク軸線方向において、ディスク11から離れることになる。これにより、ディスクブレーキ10は、第1摩擦パッド26が、回転するディスク11によるクサビ効果によってディスク11に近づくように移動することが一層抑制されることになる。したがって、ディスクブレーキ10は、第1摩擦パッド26の引き摺りを、一層抑制することができる。
【0194】
また、ディスクブレーキ10は、第2摩擦パッド27の回入側摩擦パッド部184(a)を、ディスク軸線方向において、ディスク11から離れる方向に付勢する、回入側戻しバネ196(a)と回入側パッドスプリング24との合力である回入側戻し力が、第2摩擦パッド27の回出側摩擦パッド部184(b)を、ディスク軸線方向において、ディスク11から離れる方向に付勢する、回出側戻しバネ196(b)と回出側パッドスプリング25との合力である回出側戻し力よりも大きい。このため、第2摩擦パッド27は、前進時回入側にある回入側摩擦パッド部184(a)の方が、前進時回出側にある回出側摩擦パッド部184(b)よりも、ディスク軸線方向において、ディスク11から離れることになる。これにより、ディスクブレーキ10は、第2摩擦パッド27が、回転するディスク11によるクサビ効果によってディスク11に近づくように移動することが一層抑制されることになる。したがって、ディスクブレーキ10は、第2摩擦パッド27の引き摺りを、一層抑制することができる。
【0195】
また、ディスクブレーキ10は、回入側パッドスプリング24のインナ側のパッド支持部101の回入側サイド押しバネ131が、ディスク径方向において、第1摩擦パッド26の回入側耳部176(a)の外側に配置される。よって、ディスクブレーキ10は、車両前進中の制動時に生じる第1摩擦パッド26の回転モーメントを低減することができる。したがって、車両前進中の制動時に生じる第1摩擦パッド26と取付部材20との間に生じる異音の発生を抑制することができる。また、ディスクブレーキ10は、回入側パッドスプリング24のアウタ側のパッド支持部101の回入側サイド押しバネ131が、ディスク径方向において、第2摩擦パッド27の回入側耳部176(a)の外側に配置される。よって、ディスクブレーキ10は、車両前進中の制動時に生じる第2摩擦パッド27の回転モーメントを低減することができる。したがって、車両前進中の制動時に生じる第2摩擦パッド27と取付部材20との間に生じる異音の発生を抑制することができる。なお、回入側パッドスプリング24のインナ側のパッド支持部101の回入側サイド押しバネ131を、ディスク径方向において、第1摩擦パッド26の回入側耳部176(a)の内側に配置することも可能である。また、回入側パッドスプリング24のアウタ側のパッド支持部101の回入側サイド押しバネ131を、ディスク径方向において、第2摩擦パッド27の回入側耳部176(a)の内側に配置することも可能である。
【0196】
また、ディスクブレーキ10は、回出側パッドスプリング25のインナ側のパッド支持部151の回出側サイド押しバネ152が、ディスク径方向において、第1摩擦パッド26の回出側耳部176(b)の外側に配置される。よって、ディスクブレーキ10は、車両後退中の制動時に生じる第1摩擦パッド26の回転モーメントを低減することができる。したがって、車両後退中の制動時に生じる第1摩擦パッド26と取付部材20との間に生じる異音の発生を抑制することができる。また、ディスクブレーキ10は、回出側パッドスプリング25のアウタ側のパッド支持部151の回出側サイド押しバネ152が、ディスク径方向において、第2摩擦パッド27の回出側耳部176(b)の外側に配置される。よって、ディスクブレーキ10は、車両後退中の制動時に生じる第2摩擦パッド27の回転モーメントを低減することができる。したがって、車両後退中の制動時に生じる第2摩擦パッド27と取付部材20との間に生じる異音の発生を抑制することができる。なお、回出側パッドスプリング25のインナ側のパッド支持部151の回出側サイド押しバネ152を、ディスク径方向において、第1摩擦パッド26の回出側耳部176(b)の内側に配置することも可能である。また、回出側パッドスプリング25のアウタ側のパッド支持部151の回出側サイド押しバネ152を、ディスク径方向において、第2摩擦パッド27の回出側耳部176(b)の内側に配置することも可能である。
【0197】
また、ディスクブレーキ10は、回入側パッドスプリング24が、第1摩擦パッド26の回入側耳部176(a)を、ディスク径方向において外側に付勢する回入側押上バネ121(a)を有する。よって、ディスクブレーキ10は、非制動状態での第1摩擦パッド26のガタ付きを抑制することができ、これに起因した異音の発生を抑制することができる。また、ディスクブレーキ10は、回入側パッドスプリング24が、第2摩擦パッド27の回入側耳部176(a)を、ディスク径方向において外側に付勢する回入側押上バネ121(a)を有する。よって、ディスクブレーキ10は、非制動状態での第2摩擦パッド27のガタ付きを抑制することができ、これに起因した異音の発生を抑制することができる。
【0198】
また、ディスクブレーキ10は、回出側パッドスプリング25が、第1摩擦パッド26の回出側耳部176(b)を、ディスク径方向において外側に付勢する回出側押上バネ121(b)を有する。よって、ディスクブレーキ10は、非制動状態での第1摩擦パッド26のガタ付きを抑制することができ、これに起因した異音の発生を抑制することができる。また、ディスクブレーキ10は、回出側パッドスプリング25が、第2摩擦パッド27の回出側耳部176(b)を、ディスク径方向において外側に付勢する回出側押上バネ121(b)を有する。よって、ディスクブレーキ10は、非制動状態での第2摩擦パッド27のガタ付きを抑制することができ、これに起因した異音の発生を抑制することができる。
【0199】
また、ディスクブレーキ10は、前進時回入側の回入側パッドスプリング24が、いずれもアウタ側の回入側サイド押しバネ131とガイド凹部120とを有している。回入側パッドスプリング24のアウタ側の回入側サイド押しバネ131は第2摩擦パッド27をディスク回転方向に弾性的に支持する。回入側パッドスプリング24のアウタ側のガイド凹部120は、アウタ側の回入側サイド押しバネ131に対しディスク半径方向にオフセットし、アウタ側のトルク受け部60を覆い、第2摩擦パッド27をディスク回転方向に弾性的に支持する。そして、ディスクブレーキ10は、アウタ側において第1状態と第2状態とを有する。アウタ側の第1状態は、回入側パッドスプリング24のいずれもアウタ側の回入側サイド押しバネ131およびガイド凹部120のうちの一方である回入側サイド押しバネ131が、第2摩擦パッド27と当接し、他方であるガイド凹部120が、壁板部113と第2摩擦パッド27との間に間隙Sを有する。アウタ側の第2状態は、第2摩擦パッド27の移動により、この間隙Sが埋まる。このため、ディスクブレーキ10は、車両の前進時の制動状態から後退時の制動状態になった際に、アウタ側において、第1状態から、第2摩擦パッド27が、後退時回出側に移動し、回入側パッドスプリング24のアウタ側の回入側サイド押しバネ131を弾性変形させる。その後、第2摩擦パッド27が、回入側パッドスプリング24のいずれもアウタ側の回入側サイド押しバネ131およびガイド凹部120の壁板部113を共に弾性変形させて、この壁板部113と第2摩擦パッド27と間の間隙Sを埋める第2状態となる。よって、回入側パッドスプリング24が、段階的に弾性変形して、第2摩擦パッド27の取付部材20への衝突エネルギを吸収する。その結果、ディスクブレーキ10は、車両の前進時の制動状態から後退時の制動状態になったときに、第2摩擦パッド27が取付部材20内で動いて取付部材20との間で発生させる打音、いわゆるクロンク音のような異音の発生を抑制することができる。
【0200】
また、ディスクブレーキ10は、前進時回入側の回入側パッドスプリング24が、いずれもインナ側の回入側サイド押しバネ131とガイド凹部120とを有している。回入側パッドスプリング24のインナ側の回入側サイド押しバネ131は第1摩擦パッド26をディスク回転方向に弾性的に支持する。回入側パッドスプリング24のインナ側のガイド凹部120は、インナの回入側サイド押しバネ131に対しディスク半径方向にオフセットし、インナ側のトルク受け部60を覆い、第1摩擦パッド26をディスク回転方向に弾性的に支持する。そして、ディスクブレーキ10は、インナ側においても第1状態と第2状態とを有する。インナ側の第1状態は、回入側パッドスプリング24のいずれもインナ側の回入側サイド押しバネ131およびガイド凹部120のうちの一方である回入側サイド押しバネ131が、第1摩擦パッド26と当接し、他方であるガイド凹部120が、壁板部113と第1摩擦パッド26との間に間隙を有する。インナ側の第2状態は、第1摩擦パッド26の移動により、この間隙が埋まる。このため、ディスクブレーキ10は、車両の前進時の制動状態から後退時の制動状態になった際に、インナ側において、第1状態から、第1摩擦パッド26が、後退時回出側に移動し、回入側パッドスプリング24のインナ側の回入側サイド押しバネ131を弾性変形させる。その後、第1摩擦パッド26が、回入側パッドスプリング24のいずれもインナ側の回入側サイド押しバネ131およびガイド凹部120の壁板部113を共に弾性変形させて、この壁板部113と第1摩擦パッド26と間の間隙を埋める第2状態となる。よって、回入側パッドスプリング24が、段階的に弾性変形して、第1摩擦パッド26の取付部材20への衝突エネルギを吸収する。その結果、ディスクブレーキ10は、車両の前進時の制動状態から後退時の制動状態になったときに、第1摩擦パッド26が取付部材20内で動いて取付部材20との間で発生させる打音、いわゆるクロンク音のような異音の発生を抑制することができる。
【0201】
ディスクブレーキ10は、非制動状態では、第1状態となることで、第2摩擦パッド27を回入側パッドスプリング24のアウタ側の回入側サイド押しバネ131によって前進時ディスク回転方向回出側に押圧しておくことができる。よって、ディスクブレーキ10は、車両前進中の非制動状態からの制動時に第2摩擦パッド27が取付部材20内で前進時ディスク回転方向回出側に動いて取付部材20との間で発生させる異音の発生を抑制することができる。
【0202】
また、ディスクブレーキ10は、非制動状態では、第1状態となることで、第1摩擦パッド26を回入側パッドスプリング24のインナ側の回入側サイド押しバネ131によって前進時ディスク回転方向回出側に押圧しておくことができる。よって、ディスクブレーキ10は、車両前進中の非制動状態からの制動時に第1摩擦パッド26が取付部材20内で前進時ディスク回転方向回出側に動いて取付部材20との間で発生させる異音の発生を抑制することができる。
【0203】
ディスクブレーキ10は、制動解除時には、第1状態となることで、回入側パッドスプリング24のいずれもアウタ側の回入側サイド押しバネ131およびガイド凹部120の壁板部113のうちの一方である回入側サイド押しバネ131のみによって第2摩擦パッド27を前進時ディスク回転方向回出側に押圧することになる。よって、ディスクブレーキ10は、制動解除時の第2摩擦パッド27と回出側パッドスプリング25のアウタ側のガイド凹部120との摩擦力を小さくすることができ、制動解除時の第2摩擦パッド27のディスク11への引き摺りを抑制することができる。
【0204】
また、ディスクブレーキ10は、制動解除時には、第1状態となることで、回入側パッドスプリング24のいずれもインナ側の回入側サイド押しバネ131およびガイド凹部120の壁板部113のうちの一方である回入側サイド押しバネ131のみによって第1摩擦パッド26を前進時ディスク回転方向回出側に押圧することになる。よって、ディスクブレーキ10は、制動解除時の第1摩擦パッド26と回出側パッドスプリング25のインナ側のガイド凹部120との摩擦力を小さくすることができ、制動解除時の第1摩擦パッド26のディスク11への引き摺りを抑制することができる。
【0205】
なお、ディスクブレーキ10は、回入側パッドスプリング24のいずれもアウタ側の回入側サイド押しバネ131およびガイド凹部120のうちの一方であるガイド凹部120の壁板部113が、第2摩擦パッド27と当接し、他方である回入側サイド押しバネ131が、第2摩擦パッド27との間に間隙を有する第1状態と、第2摩擦パッド27の移動により、この間隙が埋まる第2状態とを有するようにしても良い。また、ディスクブレーキ10は、回入側パッドスプリング24のいずれもインナ側の回入側サイド押しバネ131およびガイド凹部120のうちの一方であるガイド凹部120の壁板部113が、第1摩擦パッド26と当接し、他方である回入側サイド押しバネ131が、第1摩擦パッド26との間に間隙を有する第1状態と、第1摩擦パッド26の移動により、この間隙が埋まる第2状態とを有するようにしても良い。これらいずれの場合も、上記と同様の効果を奏する。
【0206】
ディスクブレーキ10は、回入側パッドスプリング24において、アウタ側の回入側サイド押しバネ131が、アウタ側のガイド凹部120よりディスク半径方向外側に配置され、上記した第1状態は、アウタ側の回入側サイド押しバネ131が、第2摩擦パッド27と当接し、アウタ側のガイド凹部120は、壁板部113と第2摩擦パッド27との間に間隙Sを有する。このため、ディスクブレーキ10は、非制動状態では、第1状態となることで、第2摩擦パッド27を、回入側パッドスプリング24においてアウタ側のガイド凹部120よりディスク半径方向外側に配置されたアウタ側の回入側サイド押しバネ131によって前進時ディスク回転方向回出側に押圧しておくことができる。よって、ディスクブレーキ10は、車両前進中の非制動状態での第2摩擦パッド27のガタ付きを効果的に抑制することができる。
【0207】
また、ディスクブレーキ10は、回入側パッドスプリング24において、インナ側の回入側サイド押しバネ131が、インナ側のガイド凹部120よりディスク半径方向外側に配置され、上記した第1状態は、インナ側の回入側サイド押しバネ131が、第1摩擦パッド26と当接し、インナ側のガイド凹部120は、壁板部113と第1摩擦パッド26との間に間隙を有する。このため、ディスクブレーキ10は、非制動状態では、第1状態となることで、第1摩擦パッド26を、回入側パッドスプリング24においてインナ側のガイド凹部120よりディスク半径方向外側に配置されたインナ側の回入側サイド押しバネ131によって前進時ディスク回転方向回出側に押圧しておくことができる。よって、ディスクブレーキ10は、車両前進中の非制動状態での第1摩擦パッド26のガタ付きを効果的に抑制することができる。
【0208】
ディスクブレーキ10は、回入側パッドスプリング24において、アウタ側の回入側サイド押しバネ131のバネ定数が、アウタ側のガイド凹部120の壁板部113のバネ定数より小さい。このため、ディスクブレーキ10は、制動解除時には、回入側パッドスプリング24においてバネ定数がアウタ側のガイド凹部120の壁板部113よりも低いアウタ側の回入側サイド押しバネ131によって第2摩擦パッド27を前進時ディスク回転方向回出側に押圧する。このため、ディスクブレーキ10は、第2摩擦パッド27の制動解除時のディスク11への引き摺りを一層抑制することができる。
【0209】
また、ディスクブレーキ10は、回入側パッドスプリング24において、インナ側の回入側サイド押しバネ131のバネ定数が、インナ側のガイド凹部120の壁板部113のバネ定数より小さい。このため、ディスクブレーキ10は、制動解除時には、回入側パッドスプリング24においてバネ定数がインナ側のガイド凹部120の壁板部113よりも低いインナ側の回入側サイド押しバネ131によって第1摩擦パッド26を前進時ディスク回転方向回出側に押圧する。このため、ディスクブレーキ10は、第1摩擦パッド26の制動解除時のディスク11への引き摺りを一層抑制することができる。
【0210】
ディスクブレーキ10は、回入側パッドスプリング24のアウタ側のガイド凹部120が、アウタ側かつ前進時回入側のトルク受け部60のトルク受け面である第3面部63から第2摩擦パッド27に向かって湾曲する壁板部113を有する。このため、ディスクブレーキ10は、回入側パッドスプリング24のアウタ側のガイド凹部120の壁板部113の形状を湾曲させるという簡素な構造で上記効果を奏することができる。
【0211】
また、ディスクブレーキ10は、回入側パッドスプリング24のインナ側のガイド凹部120が、インナ側かつ前進時回入側のトルク受け部60のトルク受け面である第3面部63から第1摩擦パッド26に向かって湾曲する壁板部113を有する。このため、ディスクブレーキ10は、回入側パッドスプリング24のインナ側のガイド凹部120の壁板部113の形状を湾曲させるという簡素な構造で上記効果を奏することができる。
【0212】
ディスクブレーキ10は、前進時回入側の回入側パッドスプリング24が、第2摩擦パッド27に当接し第2摩擦パッド27をディスク半径方向外側に支持するアウタ側の回入側押上バネ121(a)を備えている。そして、回入側パッドスプリング24は、車両の後退制動時に、アウタ側のガイド凹部120の壁板部113の湾曲の頂点が、第2摩擦パッド27の前進時回入側のトルク受け部60内に配置される回入側耳部176(a)の中央に当接する。このため、ディスクブレーキ10は、回入側パッドスプリング24のアウタ側のガイド凹部120の壁板部113によって効果的に第2摩擦パッド27への付勢力を発生させることができる。
【0213】
また、ディスクブレーキ10は前進時回入側の回入側パッドスプリング24が、第1摩擦パッド26に当接し第1摩擦パッド26をディスク半径方向外側に支持するインナ側の回入側押上バネ121(a)を備えている。そして、回入側パッドスプリング24は、車両の後退制動時に、インナ側のガイド凹部120の壁板部113の湾曲の頂点が、第1摩擦パッド26の前進時回入側のトルク受け部60内に配置される回入側耳部176(a)の中央に当接する。このため、ディスクブレーキ10は、インナ側のガイド凹部120の壁板部113によって、効果的に第1摩擦パッド26への付勢力を発生させることができる。
【0214】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態を主に図14図18を参照して第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
【0215】
図14図18に示すように、第2実施形態のディスクブレーキ10Aは、回出側パッドスプリング25とは一部異なる回出側パッドスプリング25A(パッドスプリング)を回出側パッドスプリング25にかえて有している。回出側パッドスプリング25Aは、回出側パッドスプリング25と同様、ディスク回転方向における、取付部材20のいずれも前進時回出側の第2取付部47および第4取付部52と、一対の第1摩擦パッド26および第2摩擦パッド27との間に設けられる。
【0216】
回出側パッドスプリング25Aは、一対のパッド支持部151とは一部異なる一対のパッド支持部151Aを一対のパッド支持部151にかえて有している。一対のパッド支持部151Aには、図8に示す一対の回出側サイド押しバネ152がいずれも設けられていない。言い換えれば、回出側パッドスプリング25Aは、回出側パッドスプリング25の、一対の第1摩擦パッド26および第2摩擦パッド27のそれぞれの前進時回出側にある回出側摩擦パッド部184(b)を、前進時回入側、および、ディスク軸線の方向においてディスク11から離れる方向に付勢する回出側サイド押しバネ152に相当するバネが無い。
【0217】
そして、ディスクブレーキ10Aは、ディスクブレーキ10と同様、第1摩擦パッド26を、ディスク11から離間する方向に付勢する回入側戻しバネ196(a)および回出側戻しバネ196(b)と、第2摩擦パッド27を、ディスク11から離間する方向に付勢する回入側戻しバネ196(a)および回出側戻しバネ196(b)と、の4つの特性が同じとなっている。
【0218】
ディスク軸線方向において、第1摩擦パッド26の前進時回入側にある回入側摩擦パッド部184(a)を、ディスク11から離れる方向に付勢する力である、回入側戻しバネ196(a)と回入側パッドスプリング24との合力を回入側戻し力とする。また、ディスク軸線方向において、第1摩擦パッド26の前進時回出側にある回出側摩擦パッド部184(b)を、ディスク11から離れる方向に付勢する力である回出側戻しバネ196(b)の力を回出側戻し力とする。すると、第1摩擦パッド26の回入側戻し力は、第1摩擦パッド26の回出側戻し力よりも大きい。
【0219】
ディスク軸線方向において、第2摩擦パッド27の前進時回入側にある回入側摩擦パッド部184(a)を、ディスク11から離れる方向に付勢する力である、回入側戻しバネ196(a)と回入側パッドスプリング24との合力を回入側戻し力とする。また、ディスク軸線方向において、第2摩擦パッド27の前進時回出側にある回出側摩擦パッド部184(b)を、ディスク11から離れる方向に付勢する力である回出側戻しバネ196(b)の力を回出側戻し力とする。すると、第2摩擦パッド27の回入側戻し力は、第2摩擦パッド27の回出側戻し力よりも大きい。
【0220】
第2実施形態のディスクブレーキ10Aは、第1実施形態のディスクブレーキ10と同様の効果を奏する。すなわち、例えば、ディスクブレーキ10Aは、いずれも第1摩擦パッド26を、ディスク軸線方向においてディスク11から離れる方向に付勢する回入側戻しバネ196(a)および回出側戻しバネ196(b)が第1摩擦パッド26に固定されている。また、ディスクブレーキ10Aは、いずれも第2摩擦パッド27を、ディスク軸線方向においてディスク11から離れる方向に付勢する回入側戻しバネ196(a)および回出側戻しバネ196(b)が第2摩擦パッド27に固定されている。また、ディスクブレーキ10Aは、回入側パッドスプリング24が、第1摩擦パッド26をディスク軸線方向においてディスク11から離れる方向に付勢する回入側サイド押しバネ131を有している。また、ディスクブレーキ10Aは、回入側パッドスプリング24が、第2摩擦パッド27をディスク軸線方向においてディスク11から離れる方向に付勢する回入側サイド押しバネ131を有している。これらにより、ディスクブレーキ10Aは、制動解除状態において、第1摩擦パッド26および第2摩擦パッド27を、ディスク軸線方向においてディスク11から良好に離すことができ、引き摺りを抑制することができる。
【0221】
また、ディスクブレーキ10Aは、回出側パッドスプリング25に、第1摩擦パッド26をディスク軸線方向においてディスク11から離れる方向に付勢する回出側サイド押しバネ152に相当するバネが無い。よって、ディスクブレーキ10Aは、制動解除状態において、第1摩擦パッド26の前進時回入側を、第1摩擦パッド26の前進時回出側よりも、ディスク軸線方向においてディスク11から離すことができる。したがって、ディスクブレーキ10Aは、制動解除状態において、ディスク11の振れ等に起因して、第1摩擦パッド26が、前進走行時に回転するディスク11に例え接触したとしても、回転するディスク11によるクサビ効果によってディスク11に近づくように移動することが抑制されることになる。よって、ディスクブレーキ10Aは、第1摩擦パッド26の引き摺りを一層抑制することができる。
【0222】
また、ディスクブレーキ10Aは、回出側パッドスプリング25に、第2摩擦パッド27をディスク軸線方向においてディスク11から離れる方向に付勢する回出側サイド押しバネ152に相当するバネが無い。よって、ディスクブレーキ10Aは、制動解除状態において、第2摩擦パッド27の前進時回入側を、第2摩擦パッド27の前進時回出側よりも、ディスク軸線方向においてディスク11から離すことができる。したがって、ディスクブレーキ10Aは、制動解除状態において、ディスク11の振れ等に起因して、第2摩擦パッド27が、前進走行時に回転するディスク11に例え接触したとしても、回転するディスク11によるクサビ効果によってディスク11に近づくように移動することが抑制されることになる。よって、ディスクブレーキ10Aは、第2摩擦パッド27の引き摺りを一層抑制することができる。
【0223】
また、ディスクブレーキ10Aは、第1摩擦パッド26の回入側摩擦パッド部184(a)を、ディスク軸線方向において、ディスク11から離れる方向に付勢する、回入側戻しバネ196(a)と回入側パッドスプリング24との合力である回入側戻し力が、第1摩擦パッド26の回出側摩擦パッド部184(b)を、ディスク軸線方向において、ディスク11から離れる方向に付勢する、回出側戻しバネ196(b)の回出側戻し力よりも大きい。このため、第1摩擦パッド26は、前進時回入側にある回入側摩擦パッド部184(a)の方が、前進時回出側にある回出側摩擦パッド部184(b)よりも、ディスク軸線方向において、ディスク11から離れることになる。これにより、ディスクブレーキ10Aは、第1摩擦パッド26が、回転するディスク11によるクサビ効果によってディスク11に近づくように移動することが一層抑制されることになる。したがって、ディスクブレーキ10Aは、第1摩擦パッド26の引き摺りを一層抑制することができる。
【0224】
また、ディスクブレーキ10Aは、第2摩擦パッド27の回入側摩擦パッド部184(a)を、ディスク軸線方向において、ディスク11から離れる方向に付勢する、回入側戻しバネ196(a)と回入側パッドスプリング24との合力である回入側戻し力が、第2摩擦パッド27の回出側摩擦パッド部184(b)を、ディスク軸線方向において、ディスク11から離れる方向に付勢する、回出側戻しバネ196(b)の回出側戻し力よりも大きい。このため、第2摩擦パッド27は、前進時回入側にある回入側摩擦パッド部184(a)の方が、前進時回出側にある回出側摩擦パッド部184(b)よりも、ディスク軸線方向において、ディスク11から離れることになる。これにより、ディスクブレーキ10Aは、第2摩擦パッド27が、回転するディスク11によるクサビ効果によってディスク11に近づくように移動することが一層抑制されることになる。したがって、ディスクブレーキ10Aは、第2摩擦パッド27の引き摺りを、一層抑制することができる。
【符号の説明】
【0225】
10,10A…ディスクブレーキ、11…ディスク、20…取付部材、21…キャリパ、24…回入側パッドスプリング(パッドスプリング)、25…回出側パッドスプリング(パッドスプリング)、26…第1摩擦パッド、27…第2摩擦パッド、28…車輪支持部、46…第1取付部(取付部)、47…第2取付部(取付部)、51…第3取付部(取付部)、52…第4取付部(取付部)、75(a)…回入側耳収容部、75(b)…回出側耳収容部、121(a)…回入側押上バネ、121(b)…回出側押上バネ、131…回入側サイド押しバネ、152…回出側サイド押しバネ、161,162…背面、164,167…回入側当接面部、165,168…回出側当接面部、174…先端面、176(a)…回入側耳部、176(b)…回出側耳部、184(a)…回入側摩擦パッド部、184(b)…回出側摩擦パッド部、196(a)…回入側戻しバネ(戻しバネ)、196(b)…回出側戻しバネ(戻しバネ)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18