(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108774
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】DCバス、DC電気機器、屋内配線システム及び配電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 1/00 20060101AFI20240805BHJP
H02J 9/00 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
H02J1/00 304H
H02J1/00 301E
H02J9/00 120
H02J9/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013333
(22)【出願日】2023-01-31
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、国立研究開発法人情報通信研究機構 Beyond 5G 研究開発促進事業、革新的情報通信技術研究開発委託研究、研究開発課題名:「Beyond 5Gのレジリエンスを実現するネットワーク制御技術の研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】山田 博仁
【テーマコード(参考)】
5G015
5G165
【Fターム(参考)】
5G015GB05
5G015HA03
5G015JA52
5G015JA59
5G015KA08
5G165AA01
5G165CA01
5G165EA02
5G165HA02
5G165HA03
(57)【要約】
【課題】直流グリッドの基線に接続される直流電気機器の使用可否を、電気機器の優先度によって設定することができるシステムを提供する。
【解決手段】電力供給の余裕度が、バスの基線電圧の高低に反映されるように構成されていることを特徴とするDCバスと、そのDCバスに接続される電気機器が、動作可能な下限電圧を設定できることを特徴とし、つまり、使用優先度によってその電気機器が何ボルト以上でなら動作するかを決め、その値(動作下限電圧)と基線電圧とを比較する電圧比較(Voltage Comparator)回路を具備し、比較の結果、基線電圧≧動作下限電圧であれば、回路ブレーカーをONにして、機器に電力を供給する。基線電圧<動作下限電圧であれば、回路ブレーカーを遮断して、機器への電力供給を遮断するような機能を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力供給の余裕度が、バスの基線電圧の高低に反映されるように構成されていることを特徴とするDCバス。
【請求項2】
バスの基線に蓄電池を直接接続することにより、蓄電池の充電率(SoC)が、蓄電池接続点付近のバスの基線電圧に反映されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のDCバス。
【請求項3】
DCバスの基線に直接接続して給電することにより動作する電気機器において、基線電圧の高低によって動作の可否を制御できるように構成されたことを特徴とするDC電気機器。
【請求項4】
DCバスの基線から受電する家屋や施設において、それら施設の屋内配線の電圧が受電するDCバスの基線電圧を反映して高低変動するようになっており、屋内配線の電圧によって動作の可否が決まる電気機器を接続して使用することを特徴とする機器使用の優先度設定可能な屋内配線システム。
【請求項5】
DCバスの基線電圧を降圧或いは昇圧して供給する配電システムにおいて、基線電圧の高低を反映するように電圧変換を行い電力供給することを特徴とする配電システム。
【請求項6】
DCバスの基線に直接接続して電力を受電する施設において、基線電圧の高低によって受電の可否を制御できるように構成されたことを特徴とするDCバス。
【請求項7】
DCバスの基線から受電する家屋や施設において、屋内配線が電気機器利用の優先度によって分けられており、DCバスの基線電圧が十分に高い時には全ての屋内配線に給電されるが、基線電圧が低くなるにつれて、優先度の低い機器用の屋内配線から給電が停止されていくことを特徴とする機器使用の優先度設定可能な屋内配線システム。
【請求項8】
非常時にはDC/DCコンバータ等によって基線電圧を変換し、機器の使用優先度を改変して使用可能にすることを特徴とする機器使用の優先度設定可能な請求項4又は請求項7に記載の屋内配線システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクログリッドからの受電方式に関し、特に災害などによる非常時に、直流マイクログリッドに接続される直流電気機器の使用可否を、電気機器の利用優先度によって設定する方法とシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
災害時などの有事に、限られた電力を、医療機器や救命救急装置等の使用優先度の高い電気機器に優先的に供給するため、ゲーム機等の娯楽機器の電力使用を制限する必要がある。このように有事において、或いは平時でも使用できる電気機器の使用に優先度を設けて、優先度の低い順に機器を使用できなくするか使用制限を設ける方法が必要となるが、現状ではそのようなシステムは存在しない。
【0003】
従来の系統電力網には、そのような電気機器の使用優先度によって強制的に使用を制限する機能は無く、災害時など電力事情が厳しい場面においても、電力供給が途絶えていなければ、個人の意思によってゲーム機等の娯楽機器を使い続けることは可能である。
【0004】
一方で、節電要請などで、各オフィスのエアコンの温度設定を、電力会社などが遠隔操作したり、不要な照明を消灯し、電力消費を抑制する仕組みなどは検討されている。
【0005】
下記の特許文献では、家庭のエアコンの設定温度を遠隔操作によって制御するデマンドレスポンスにおける電力管理装置および電力管理方法について述べている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
災害時などの有事に、限られた電力を、医療機器や救命救急装置等優先度の高い電気機器に使用させるため、ゲーム機等の娯楽機器の電力使用を制限する必要がある。このように有事において、或いは平時でも使用できる電気機器の使用に優先度を設けて、優先度の低い順に機器を使用できなくするか使用制限を設ける方法が必要となる。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、直流電気機器の使用の可否をその機器の使用優先度によって設定可能にするシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、直流基線に蓄電池を直結する直流グリッドにおいて、接続される電力負荷機器に使用優先度を設定するための簡易な方式に関する。
【0010】
バス内に存在する蓄電池の残量などの、電力供給の余裕度がバスの基線電圧の高低に反映されるように構成されているものとする。
【0011】
そのため、バスの基線に蓄電池を直接接続することにより、蓄電池の充電率(SoC)が、蓄電池接続点付近のバスの基線電圧に反映されるようにDCバスを構成してもよい。
【0012】
DCバスの基線に直接接続して給電することにより動作する電気機器において、基線電圧の高低によって動作の可否を制御できるように構成してもよい。
【0013】
DCバスの基線から受電する家屋や施設において、それら施設の屋内配線の電圧が受電するDCバスの基線電圧を反映して高低変動するようになっており、屋内配線の電圧によって動作の可否が決まる電気機器を接続して使用してもよい。
【0014】
DCバスの基線電圧を降圧或いは昇圧して供給する配電システムにおいて、基線電圧の高低を反映するように電圧変換を行い電力供給してもよい。
【0015】
DCバスの基線に直接接続して電力を受電する施設において、基線電圧の高低によって受電の可否を制御できるように構成してもよい。
【0016】
DCバスの基線から受電する家屋や施設において、屋内配線が電気機器利用の優先度によって分けられており、DCバスの基線電圧が十分に高い時には全ての屋内配線に給電されるが、基線電圧が低くなるにつれて、優先度の低い機器用の屋内配線から給電が停止するようにしてもよい。
【0017】
本発明の、機器の優先度によって機器使用の可否を決めるシステムにおいて、非常時にはDC/DCコンバータ等によって基線電圧を変換し、機器の使用優先度を改変して使用可能にもできる。
【0018】
本発明の一態様は、電気機器の使用優先度設定システムである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、直流グリッドの基線に接続される直流電気機器の使用可否を、電気機器の優先度によって設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明のコンセプトと基本動作原理について示す図である。
【
図2】本発明の構成要件の一つとしての、直流基線に蓄電池を直接接続するDCバスと、基線電圧によって電気機器の使用を制限する方法を示す図である。
【
図3】本発明の構成要件の一つとしての、施設ごとに電力を使用できる優先度を設けて、非常時に電力使用に制限を設ける方法を示す図である。
【
図4】本発明の構成要件の一つとしての、家屋や施設において、屋内配線が電気機器利用の優先度によって分けられており、DCバスの基線電圧が十分に高い時には全ての屋内配線に給電されるが、基線電圧が低くなるにつれて、優先度の低い機器用の屋内配線から給電が停止されていくことを特徴とする機器使用の優先度設定可能な屋内配線システムを示す図である。
【
図5】電気機器の使用優先度を変更する方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態によって本発明が限定されるものではない。さらに、図面の記載において、同一の部分には適宜同一の符号を付している。
【0022】
(実施形態)
図1は、本発明のコンセプトと基本動作原理を示す図である。左図のように水槽(タンク)に上下に蛇口を設けた場合、タンクに十分水が有る時は、最も上にある蛇口からも取水することができるが、水位が下がるにつれて、上方に取り付けられた蛇口から順に取水できなくなり、タンクの貯水量が最も少なくなった時は、最下位に取り付けられた蛇口のみから取水が可能で、それよりも上位の蛇口からは取水できなくなる。
これと同様に、バッテリーの残量が十分ある時は、全ての電気機器が使えるが、バッテリーの残量が少なくなるに連れて、使える機器が制限されるような仕組みを導入しようというものである。
【0023】
バッテリーの残量は、無負荷時の端子電圧からある程度は把握できるが、正確に把握するためには、Battery Management System (BMS)等のしくみが必要となる。いずれにしても、バッテリーの残量によって、使用可能な電気機器に優先度を設けて使用を制限することができるようにすることが本発明の特徴である。何らかの方法によってバッテリーの残量を把握し、残量が十分にある場合は全ての電気機器を使えるが、バッテリーの残量が少なくなるに連れて、優先度の低い機器から使えなくなる仕組みを導入することである。
【0024】
図2に示すようなバッテリーを直接バス基線に接続する直流バスにおいては、バッテリー接続点での基線電圧と接続したバッテリーの端子電圧は等しく、従って、直流バスの基線電圧を読み取ることにより、読み取り地点の近傍に存在するバッテリーの平均的残量(SoC)を把握できる。その値に基づいて、使用する機器を制限するというものである。
【0025】
電圧によって使用する機器を制限する仕組みは簡単で、
図2に示すように、使用優先度の低い電気機器は、基線電圧が十分に高い時にしか動作できないように設定し、使用優先度の高い電気機器は基線電圧が低くなっても動作できるように設定することである。
【0026】
そのような設定は簡単な電子回路で実現できる。まず、使用優先度によってその電気機器が何ボルト以上でなら動作するかを決め、その値(動作下限電圧)と基線電圧とを比較する電圧比較(Voltage Comparator)回路を構成する。比較の結果、基線電圧≧動作下限電圧であれば、回路ブレーカーをONにして、機器に電力を供給する。基線電圧<動作下限電圧であれば、回路ブレーカーを遮断して、機器への電力供給を遮断する。
【0027】
上記の方法により、バス基線に接続される各電気機器は、そのバス基線への接続点の基線電圧が、各電気機器の動作下限電圧よりも高ければ受電できて動作させることができるが、動作下限電圧を下回る場合は受電することができなく、動作させられない。
【0028】
上記の例は各電気機器ごとに使用優先度を設定する方法であったが、
図3に示すように、各施設ごとに優先度を設定することも可能である。つまり、災害時など、電力需給がひっ迫している時は、EVの急速充電スタンドや、ゲームセンターなどの娯楽施設へは給電できないように優先度を設定し、病院施設のように緊急性や優先度の高い施設には、たとえ基線電圧が低くなっても給電できるように設定するものである。
【0029】
図4に示すように、家屋や施設において、屋内配線を電気機器利用の優先度によっていくつかの系統に分けておき、平時は全ての屋内配線に給電されているが、災害時や節電要請時など、電力需給がひっ迫している時は、優先度の低い機器用の屋内配線から給電が停止されていくような屋内配線を構築し、それを利用して、電気機器を利用することも考えられる。
【0030】
この場合、利用者が自らの判断により、使用優先度が低いと思われる機器は、優先度の低い屋内配線のプラグに接続しておけば、電力需給ひっ迫時には給電が停止し、自動的に動作停止する。逆に、優先度の高い屋内配線のプラグに接続しておけば、災害時でも電力供給を受けることができる。この場合は、利用者が自らの判断によって機器使用の優先度を設定できるメリットがある。
【0031】
図2に示した電気機器の使用優先度設定に関しても、製品購入者が予め規定された工場出荷時の優先度設定を変更できない電気機器がある一方で、製品購入者が、ダイヤルツマミのようなものを回すことにより、機器使用の優先度を自由に設定できるような電気機器製品も有り得る。
【0032】
図5は、上記の仕組みによる電気機器の使用優先度設定システムにおいて、予め設定された電気機器の使用優先度を変更する方法について示したもので、昇圧型のDC/DCコンバータを用いれば、たとえ基線電圧が低かったとしても、それを昇圧して電気機器に供給すれば、優先度の低い電気機器も使用することができるというものである。この方法は、あくまで非常時の緊急避難方法としての利用に留めたい。
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0033】
1-1:水槽
1-2:蛇口
1-3:バッテリー
1-4:蓄電残量(SOC)
2-1:直流基線
2-2:蓄電池
2-3:娯楽機器
2-4:医療機器
3-1:蓄電池
3-2:EV充電スタンド
3-3:一般家屋
3-4:病院
4-1:蓄電池
4-2:降圧DC/DCコンバータ
4-3:一般家屋
5-1:蓄電池
5-2:昇圧DC/DCコンバータ
5-3:娯楽機器