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特開2024-108776移動通信用基地局、アンテナシステム及び運転方法
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  • 特開-移動通信用基地局、アンテナシステム及び運転方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108776
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】移動通信用基地局、アンテナシステム及び運転方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/04 20060101AFI20240805BHJP
【FI】
H04B1/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013336
(22)【出願日】2023-01-31
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、国立研究開発法人情報通信研究機構 Beyond 5G 研究開発促進事業、革新的情報通信技術研究開発委託研究、研究開発課題名:「Beyond 5Gのレジリエンスを実現するネットワーク制御技術の研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】山田 博仁
【テーマコード(参考)】
5K060
【Fターム(参考)】
5K060BB04
5K060BB07
5K060CC04
5K060LL01
5K060MM06
(57)【要約】
【課題】災害時など、限られた電力供給能力下でも電力を有効に使い、アンテナシステムを効果的に機能させることを目的とする。
【解決手段】災害時など、電力に余裕がないアンテナの電力消費を抑えるために、アンテナの送信電力を抑制し、逆に比較的電力供給に余裕があるアンテナの送信電力を、平時の定格値から若干増加させた運転を行うことによって、全体としてのアンテナがカバーするサービスエリヤを大きく損なうことなく、アンテナ機能を維持させるアンテナの運転方法。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源状況に応じて、アンテナの送信電力を変化させることを特徴とする移動通信用基地局。
【請求項2】
電源状況に応じて、アンテナの送信電力を変化させることを特徴とするアンテナシステム。
【請求項3】
請求項1に記載の移動通信用基地局又は請求項2に記載のアンテナシステムにおいて、アンテナへの電力供給能力に余裕がない時は送信電力を通常時よりも低減し、逆にアンテナへの電力供給能力に余裕がある場合には通常時と同じが若干増加させて送信することを特徴とする運転方法。
【請求項4】
電源状況に応じて、アンテナの運転時間を変化させることを特徴とする移動通信用基地局。
【請求項5】
電源状況に応じて、アンテナの運転時間を変化させることを特徴とするアンテナシステム。
【請求項6】
請求項4に記載の移動通信用基地局又は請求項5に記載のアンテナシステムにおいて、アンテナへの電力供給能力に余裕がない時はアンテナの運転時間を制限し、逆にアンテナへの電力供給能力に余裕がある場合には通常時と同様に制限しないことを特徴とする運転方法。
【請求項7】
請求項4に記載の移動通信用基地局又は請求項5に記載のアンテナシステムの運転方法において、アンテナへの電力供給余力に応じて、夜間の一定時間アンテナを停波させることを特徴とする運転方法。
【請求項8】
請求項4に記載の移動通信用基地局又は請求項5に記載のアンテナシステムの運転方法において、アンテナへの電力供給余力に応じて、1時間ごとのある一定時間アンテナを停波させることを特徴とする運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、災害時など、限られた電力供給能力下でも電力を有効に使い、アンテナシステムを効果的に機能させることを目的とする無線基地局および分散アンテナの送信電力制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
災害時などで、移動通信システムの無線基地局や中継局、リモートアンテナへの電力供給が途絶えた場合でも、バックアップや予備電源のバッテリーに残された電力だけでも可能な限り長期間、基地局やアンテナ機能を維持させる必要がある。
【0003】
既存の移動通信システムにおいては、バックアップや予備電源によって3日間程度は基地局やアンテナ機能を維持できるが、電源が枯渇したアンテナから停波していってしまう。
【0004】
そのような状況下において、電力供給能力に余裕が無い基地局やアンテナでは、送信電力を通常よりも低減した運転(縮退運転)を行うことにより、基地局やアンテナの消費電力を少なくすることによって、スループットが低下したり、カバーするエリヤは狭くなったりするものの、長時間アンテナ機能を維持させることができるものと思われる。
【0005】
その逆に、まだ電力供給能力に余裕がある基地局やアンテナでは、通常の電力かそれよりもやや増大させて運転(拡大運転)することにより、カバーエリヤを拡大させ、電力供給能力に余裕が無い基地局やアンテナのエリヤをもカバーすることができるものと思われる。
【0006】
或いはまた、電力供給能力に余裕が無い基地局やアンテナにおいては、アンテナ運転時間を短縮したり間欠運転をすることにより、予備電源のバッテリーの電力を温存しつつ、より長い日数アンテナ機能を維持できる。災害時などには、そのような運用も必要かと思われる。
【0007】
本発明は、そのような災害時など、限られた電力供給能力下でも電力を有効に使い、アンテナシステムを効果的に機能させることを目的とする。
下記の文献1では、キャリアセンスによってチャネルを割り当てる移動通信システムにおいて、新たに発生した呼によるチャネル割当要求の場合は希望波レベルが低いときのみ高い送信電力とし、それ以外は低い送信電力とする送信電力制御方法について紹介している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5-206927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
災害時などで、移動通信システムの無線基地局やアンテナへの電力供給が途絶えた場合でも、バックアップや予備電源のバッテリーに残された電力だけでも可能な限り長期間、基地局やアンテナ機能を維持させる必要がある。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、災害時などの有事において、電源状況に合わせてモバイル基地局や分散アンテナの送信電力を増減させたり、基地局やアンテナとしての稼働時間を調整したりする運用方式を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
スマホや携帯電話等の現行の移動通信システムにおいては、端末と通信を行うための無線基地局や分散アンテナに、系統電力網から電力を供給することによってアンテナ機能を維持している。しかし、災害などによって系統電力網が停電となるなど、電力供給が途絶えた場合、アンテナ機能を維持できなくなる。そのため、ある程度の時間アンテナを稼働させることができるようにバックアップ電源や予備電源が備えられている。
【0012】
しかし、それらバックアップ電源や予備電源のバッテリーの容量、ディーゼル発電機の燃料にも限りがあるため、停電時にはできる限りバッテリーの電力を温存するような運用が求められる。
【0013】
無線基地局や分散アンテナの電力消費で大きな割合となっているのは、主にアンテナに高周波信号電力を送るための送信機やブースターアンプ等の動作によるものである。従って、一般的には送信電力が大きくなる程消費電力も大きくなる。それらは必ずしも比例関係にある訳ではないが、アンテナの送信電力と共に増加すると考えてよい。従って、アンテナへの送信電力を低減すれば、基地局やアンテナの電力消費が抑えられ、限られた電力しか残されていない場合、アンテナの運転時間を長くすることができる。
【0014】
しかし、アンテナからの送信電力を低減すれば、そのアンテナがカバーするサービスエリヤは狭くなってしまうし、通信スループットは低下する。従って、通常は電力供給に余裕がある場合、そのようなアンテナの縮退運転を行うことはない。
【0015】
しかし、災害時など、電力に余裕がない場合には、電力消費を抑えるためにアンテナの送信電力を抑制する縮退運転も考えられる。勿論その分、アンテナのカバーするエリヤは狭くなるしスループットも低下する。
【0016】
ところで、災害時においても、比較的電力供給に余裕がある基地局や分散アンテナもあるものと思われる。その場合、電力供給能力に余裕がある基地局や分散アンテナにおいては、通常(平時)の送信電力から若干増加させた運転を行うことによって、アンテナがカバーするサービスエリヤを維持するか若干広げることもできる。その場合、送信電力の低減によって狭くなったアンテナのサービスエリヤまでカバーすることも可能となってくる。
【0017】
送信機やブースターアンプの送信電力は、一時的であれば1割や2割程度増加された運転を行っても大丈夫なように設計されている。それは、安全を見越した設計マージーンである。災害時などの緊急時には、そのような運転を行うことは、ある程度やむを得ないと思われる。
【0018】
本発明の一態様は、無線基地局および分散アンテナの送信電力制御方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、災害時など、限られた電力供給能力下でも電力を有効に使い、アンテナシステムを効果的に機能させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】平時において、アンテナ用電源の電力供給能力に余裕がある場合の、定格送信電力でセルを構成する様子を示す図である。
図2】アンテナの送信電力と共に、消費電力およびカバーエリヤが変化する様子を示す図である。
図3】本発明の構成要件の一つとしての、災害時等、アンテナ用電源の電力供給能力に偏りが生じた場合、電力状況に合わせて送信電力を調整してセルを再構成する方法を示す図である。
図4】本発明の構成要件の一つとしての、災害時等、アンテナ用電源の電力供給能力に偏りが生じた場合、電力状況に合わせてアンテナ運転時間を調整する方法を示す図である。
図5】本発明の構成要件の一つとしての、災害時等、アンテナ用電源の電力供給能力に偏りが生じた場合、電力状況に合わせてアンテナ運転時間を調整する方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態によって本発明が限定されるものではない。さらに、図面の記載において、同一の部分には適宜同一の符号を付している。
【0022】
(実施形態)
図1は、平時において、アンテナ用電源の電力供給能力に余裕がある場合のセル構成を示すもので、全てのセルのアンテナが正常に稼働しており、定格送信電力で送信しているためバランスの良いアンテナのカバーエリヤが形成されており、通信のスループットも高い値が出ている。
【0023】
図2は、アンテナ機器の消費する電力と、アンテナからの送信電力との関係を示す図である。無線送信装置やアンテナ機器は、たとえ送信出力がゼロであっても、制御回路を動かすための最低限の電力が必要であるため、一定の電力を消費する。その値から送信出力を増加させていくと、それに伴い消費電力も増加していく。その関係はほぼ直線的と見なすことができる。一方、アンテナのカバーするエリヤのサイズは、アンテナからの送信出力にほぼ比例すると考えて良い。従って、それらの間には図2に示すような関係がある。
【0024】
図3は、本発明の一つとしての電源状況に基づいたアンテナの送信電力制御の方法を示すものである。災害時、アンテナに電力を供給している系統電力網が停電となり、アンテナのバックアップ電源や予備電源でアンテナを運転せざるを得ない場合を想定する。この場合、電源状況(アンテナへの電力供給能力)が厳しいアンテナもあるし、逆に電源状況に余裕のあるアンテナもあるかも知れない。
【0025】
その場合、図に示す様に、電源状況が厳しいアンテナの送信電力を下げて、逆に電源状況に余裕のあるアンテナの送信電力を増加させる。
【0026】
そのような操作を行うことにより、電源状況が厳しいアンテナの電力消費は抑制され、電源の電力を温存できる。逆に電源状況に余裕のあるアンテナの電力消費は増加する。
【0027】
またそれにより、電源状況が厳しく、送信出力を低下させたアンテナのカバーするエリヤは狭くなるが、逆に電源状況に余裕があり、アンテナの送信電力を増加させたアンテナのカバーするエリヤは広くなり、前者の送信出力を低下させたアンテナが、送信電力を下げる前にカバーしていたエリヤの一部をカバーすることができる。
【0028】
このように、電源状況に応じてアンテナの送信電力を制御すれば、カバーエリヤを損なうことなく、アンテナ機能を持続させることが可能となる。
【0029】
図4は、本発明の第二の例としての電源状況に基づいたアンテナの送信電力制御の方法を示すものである。
【0030】
図3では、電源状況に基づいて送信出力を増減させたが、この例では送信出力は定格出力の一定とし、アンテナを動作させる時間を増減させている。
【0031】
つまり、電源状況が厳しいアンテナの動作時間を図に示すように、電源状況に応じて増減させ、電源状況が厳しいアンテナは、電源状況に応じて停波させる時間を長くし、電源状況に余裕のあるアンテナは、停波させる時間を短くするかゼロにする。
【0032】
このようにすることによる、停波させている時間帯は、そのアンテナのカバーするエリヤは無くなってしまうが、電源の電力を温存させることができる。
【0033】
図5は、本発明の第三の例としての電源状況に基づいたアンテナの送信電力制御の方法を示すものである。
【0034】
図4の方法と異なるのは、アンテナを停波させる時間の設定方法である。図4の方法では、部分的に停波させるアンテナでは、一日の内のあるまとまった時間帯しかアンテナとして機能しないが、図5は、一日の内の毎時間帯の、例えば0分から20分の20分間アンテナとして機能するので、災害時などの人命救助などはこの方がやり易いかも知れない。
【0035】
いずれにしても、災害時などは電源の電力を温存できるので、限られた電力においても災害から長い日数、アンテナ機能を維持できる。
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0036】
1-1:アンテナ
1-2:RU
1-3:電源
1-4:カバーエリヤ
2-1:アンテナの消費電力
2-2:アンテナの送信電力
2-3:アンテナのカバーエリヤのサイズ
3-1:アンテナ
3-2:RU
3-3:電源
3-4:カバーエリヤ
4-1:アンテナ
4-2:RU
4-3:電源
4-4:停波
4-5:運転
5-1:アンテナ
5-2:RU
5-3:電源
5-4:停波
5-5:運転
図1
図2
図3
図4
図5